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(写真:H27年度農林水産省「農」のある暮らしづくりアドバイザーの林正剛先生)

「農業と福祉の連携による障がい者の工賃アップの可能性」をテーマとしたセミナーが1月21日、ホテルサンルート白河で開催されました。主催はしらかわ地域自立支援協議会就労支援部会、共催は社会福祉法人こころん。参加者は企業・団体・個人事業者・学校関係者および白河地域における福祉就労系事業者など約40名。

 講演の演題は「地域の課題に応える障がい福祉サービス事業者の役割について」、講師は林 正剛先生(H27年度農林水産省「農」のある暮らしづくりアドバイザー、一般社団法人日本基金)。

(以下、講演要旨)

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「農福連携に取り組むとはどういうことか」

◆農業、福祉に対する国の考え
 ○国(厚労省)が農業に期待していたこと
  ・能力や特性を活かした職域の拡大
  ・農家に雇用、担い手不足を解消
  ・低工賃打開のあたらしい仕事
  ・農業の繁忙期の労働力

 ○国(農水省)が福祉に対し考えていたこと
  ・健康づくり
  ・セラピー、リハビリ効果
  ・農家へのお手伝い
  ・都市部の福祉農園としての活用(管理など)

◆福祉としてやってきた農福連携とこれからのテーマ
 これまで福祉として実施されてきた農福連携は、①障害者の仕事づくりの一環、②障害者の体力維持、③障害者の余暇活動、④施設内で消費する食料の確保、⑤施設内で6次産業化した事業として取り組まれてきましたが、これからは「農を“業”として考えず、まずは、地域における役割を考えてみる」が「農」との連携で目指すテーマになると思います。

 それは「農家の高齢化、継承者の不在で課題となる生産量の縮小、遊休農地や耕作放棄地の拡大、農家の廃業」などの課題に施設が応え「農」にかかわるということです。

 連携として農とするなら、地域での役割を考えることが第一歩。地域の課題を「支援のプロ」である福祉の視点で考える。例えば高齢者、地域交流、農業の問題など。例えば高齢者問題に着目し、交流を持つにしたがって、農地や農具を支援していただけるようになるかもしれません。

◆設備のない農家との事業連携
 農家で作られた(小ロットの)とれすぎ野菜、規格外果物などを食品加工の設備・技術を持つ施設が受け、加工食品の製造を行うことで1次×2次の連携を作る。また、高速道路SAや道の駅などで、おみやげ品、地産地消商品、B級グルメなど地域特産品として販売することで、地域の活性化が期待できると思います。

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(写真:講演の様子)

◆福祉施設が今後、目指していきたいこと
「地域における役割」を視点に考えると、「商業」「観光」「環境」「教育」・・・連携の先には多様な可能性があります。また「福」の持つ力を地域で発揮し、多様な連携の形をつくることがポイント。

 そのほか「外部」との連携も考えられます。例えば現在、食品の表示がきびしくなっており、そうすると自分たちだけではなく、商品表示のプロなどとの連携も考えられるのではないでしょうか。

 工賃15,000円が80,000円になることは夢みたいですが、決して不可能ではありません。お互いの強いところと、弱いところを補い合う。施設の多くは自分たちだけに閉じこもりがちです。既にできている者と、それで困っている者とを連携する。施設の視点で、利用者の力を活かしながら、地域と連携をしていくことが大切です。

(文責:高澤)

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