友人の話。

俺の友人Aは、小さい頃から長い休みになると毎回父方の田舎に一人で帰省していた。
Aが中学2年生のとき、数日前から体調を崩して寝込んでいた爺さんが、
Aと叔母さん(A父の姉)にこんなことを言った。


「夜中に目を覚ますと、死んだ◯◯や××たちが布団の横に並んでみんなで睨めつけてくる。恐ろしい」と。


風邪のせいで怖い夢でも見たのだろうと、その場は二人で爺さんをなだめた。
5日後、爺さんは体調を悪化させて死んだ。



それから2年経ち、高校1年生のとき。
盆前に両親より一人早めに帰省したAが、夜にコンビニから戻ると、
9時過ぎには床に着いたはずの婆さんの部屋からうめき声がする。


「どうした?婆様」


と部屋を覗くと、Aの姿を見た婆さんは泣きながら抱きつき、


「爺さんたちが布団を囲んでジーっと睨んでくる」


と言い、また泣き出した。
2年前の爺さんの話を思い出してすこし怖くなったが、


「大丈夫、夢でも見たんだよ」


と落ち着かせ、婆さんが眠りにつくまで傍に付いていた。
3週間後、婆さんは脳梗塞で急逝した。


その年の冬、帰省したAが、
従兄弟(A父の弟の息子。Aと同い年でAが帰省するのは主に従兄弟と遊ぶため)と遊んでいると、


「そういや昨日すっげー怖い夢見てさぁ、死んだ爺さん婆さんと、
 他にも何人か見たことある人が俺の部屋の中に居てさ、みんなで睨んでくんのよ」


これはヤバイと思ったAは、従兄弟を連れて先祖の墓参りに行き、寺で経を唱えてもらった。
2日後、従兄弟は交通事故に遭い死んだ。


それ以後、Aは正月と盆に家族と共に帰省する以外は田舎に行かなくなった。

従兄弟が死んでから5年後、叔母さんから電話があった。


『Aちゃん、お爺ちゃんとお婆ちゃん、それにBちゃん(従兄弟)が亡くなったときのこと覚えてる?』


「亡くなった親戚の人達に睨まれたってやつですか?」


『そうそれ、叔母さんね…見ちゃったのよ』


「!?」


『それでね、怖いの我慢しながら睨んでる人たちをよーく見てみたんだけど、全部で9人くらいかしらね、
 お父さんにお母さん(爺さん婆さん)Bちゃんに◯◯さんに××おじさん…みんなウチの親戚の人なのよ。
 でもね、一人だけ全然知らない人が居たの。
 スーツを着た40歳くらいの男の人で、けっこう痩せた感じの人だったわね。
 しかもその人だけ笑ってるのよ、ニタニタって…気持ち悪い感じで』


「叔母さん、あの…気をつけてというかその……」


『わかってるわよ、とりあえずいろいろ探してお祓いしてもらったり、事故にも気をつけるわ。
 急な病気じゃどうしようもないけどね。
 それじゃ、Aちゃんも気をつけてね…』


これが今から2ヶ月前の話。
お盆にも会ったけど、叔母さんはピンピンしてたみたい。
お祓いに行った先ではとくになにも言われなかったみたいだけど、祓えたのかねぇ…



【終わり】