こんばんは、今日で3月も終わりですね。
3月が終わりということは、私が学生でいられるのも今日が最後ということです。
私と入れ違いに大学へ入学される皆さん、ご入学おめでとうございます。
今日は皆さまのご入学、それから一部の方を除いて進級をお祝いして
このブログも特別に!記事を豪華2本立てでお送りします!
いやあ、めでたいですね!
2本立てにする理由が他にあるだなんて
そんなことないんで!書くべきものが貯まってただなんて、そんな理由じゃないんで!
それでは行きましょう、まず一本目は「ま行」&「や行」編!
●惑ふ(まど-ふ)
(心が)惑う、乱れる。(進路や判断などに)迷う、途方に暮れる。慌てる。ひどく~する。
思ひやる さかひはるかに なりやする 惑ふ夢路に 逢ふ人のなき
訳:あの人をあれこれ思う私の想像は、ずっと遠くまで行き過ぎたのだろうか。あちこち迷う夢路にあの人がいないとは。
出典は、古今和歌集・恋1巻・524です。
詠み手の妄想のはかどりようが伺えますね。
ポルノグラフィティの曲で「ドリーマー」という歌があるんですが、歌詞は…まあ、こんな感じの中身です。
今も昔も、「夢」という形の中に自分の妄想を見る、というのは変わらないのかなと。
ある意味、人間の性のようなものなのでしょうか。
●三熊野の浦(みくまののうら)
紀伊国から伊勢国にかけての海岸。
いまの和歌山県の熊野三山付近から三重県志摩郡麦崎にかけての海岸線。
み熊野の 浦の浜木綿(はまゆふ) 百重(ももへ)なす 心は思へど ただに逢はぬかも
訳:み熊野の海辺の浜木綿が見事に咲き重なっている。そのように幾重にも心の中では思うけれども、直接には会えないことだ。
出典は、万葉集4巻・496。詠み人は柿本人麻呂です。

これが浜木綿(はまゆう)の花です。
ヒガンバナ科だそうな。確かに、花の形が少し似ていますね。
花言葉は「どこか遠くへ」「汚れのない」だそうです。

で、これが「三熊野の浦」。
天気のせいもあるかも知れませんが、少し殺風景な場所のような気もします。
柿本人麻呂は、このなんとなく寂しい海岸に浜木綿が咲き連なるのを見て
より心の中の寂しさが増したのでしょうか。
●胸走り火(むね-はしりび)
胸がどきどきしたり、胸騒ぎがするのを火に例えていう語。
人に逢はむ 月のなき夜は 思ひおきて 胸走り火に 心焼けをり
訳:あの人に会う「付き(=手段)」のないことは、月のない夜と同じで、夜通しあの人を思いながら起きていて、心の中は胸騒ぎの火で焼けている。
出典は、古今和歌集・雑体・1030。
もう、なんという恋愛脳の持ち主なんでしょう。
色々考えるのはわかるけど、ちょっとは寝ようね。
どきどきとか胸騒ぎを火で例えるなんて、なんかもう「分かってるね!!!!」って感じしません?
この、なんか、うまく言えないけど、どうしようもなくなる感じって
ぶわあって燃え広がる火の勢いとも似てますよね。
考えついた人が誰だかわからないですけど、リスペクトっすね。まじ。
●目並ぶ(め-なら-ぶ)
よく見る、多くの人の目で見定める。見比べる。
花がたみ 目並ぶ人の あまたあれば 忘られぬらむ 数ならぬ身は
訳:花かごの目がみっしりと並ぶように、あなたにはいくらでも見比べる人がいますので、忘れられてしまうでしょうよ。ものの数ではない私は。
出典は、古今和歌集・恋5巻・754です。
恋における、嫉妬と拗ねが混ざった歌です。なんというか、いじらしいですね。
私がこの歌われた「あなた」だったら「そんなこと言わせてごめんね!」って
頭をもみくちゃに撫で回したくなります。

好きな人から忘れられるのと、好きな人から嫌われるのでは
どちらが苦しいことなのでしょう。
●専ら(もはら)
ひたすら、まったく。全然~ない、一向に~ない。
逢ふことの 専ら絶えぬる 時にこそ 人の恋しき ことも知りけれ
訳:あの人に逢うことがまったく絶えてしまった今こそ、恋しいということもわかったのだなあ。
出典は、古今和歌集・恋5巻・812。
いなくなってから分かっちゃったアレですね。よく最近のラブソングでも描かれてる情景です。
たとえ精神的には遠くなくても、物理的な距離が開くと、なんとなく変わるものがありますよね。
そばにいる時って、その人の存在の大きさとかよく分からないものです。

そばにいられる時間を、もっと大切にしなきゃ。
●焼く(や-く)
火で焼く、燃やす。胸を焦がす、心を悩ます。人を上手におだてる、機嫌をとる。
我(あ)が心 焼くも我なり はしきやし 君に恋ふるも 我が心から
訳:自分の胸を焦がすのも私だし、ああ、愛しいあなたに恋い焦がれるのも私の心のせいです。
出典は、万葉集13巻・3271です。
色々と恋の歌をここに載せてきて
「どうして私の気持ちに気付いてくれないんですか!」とか「なんで逢ってくれないの!」とかいう心の叫びを聞いてきましたが
結局はここに尽きるんだと思います。
恋って、結局は自分の中で生まれた気持ちのうちの一つにすぎないんですけど
得てして他人を振り回すものだから、厄介だし迂闊に相手に言えないんですよね。
難しいなあ。
●ゆくりなし
思いがけない。不意である。突然である。
ゆくりなく 今も見が欲し 秋萩の しなひにあらむ 妹が姿を
訳:不意に、今にも見たいと思う。秋萩のようにしなやかであろう恋人の姿を。
出典は、万葉集10巻・2284です。
詠み手には、急に何が起こったのでしょう。
植物から恋人を連想することはなかなかないと思いますが、きっと萩から連想されるようなしなやかな人なんでしょうね。
しなやか…?
●縦しゑやし(よし-ゑ-やし)
上代語。不満足だが、やむを得ない。もしたとえ、仮に~としても。
里人も 語り継ぐがね 縦しゑやし 恋ひても死なむ 誰(た)が名ならめや
訳:里の人も私の死を語り継ぐがよい、ええいままよ、恋い焦がれて死んでしまおう。
それで浮き名が立つのは誰の名だろう、他ならぬお前なのだぞ。
出典は、万葉集12巻・2873です。
これはまた、思い切りましたね。
葬式の席で「あいつ、○○のことが好きすぎて死んだらしいぜ」とか、友人にこそこそ言われるんでしょうか。
なんだか恥ずかしい気もしますし、好きな相手がこの事実を知ったらどう思うんでしょう。
以上、「ま行」に続けて「や行」をお送りしました!
またのちほど!
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