さあーて、二記事連続投稿だよ!
ラストスパートだね!わっしょいわっしょい!



「ら行」と「わ行」、here we go!






●らく
(「ら」は存続の助動詞「り」の未然形、「く」は接尾語。)
~てしまっていること。



さ牡鹿(をしか)の 小野の草伏し いちしろく 我が問はなくに 人の知れらく

訳:牡鹿が野の草に横になったのが明らかなように、はっきりと私はあなたのもとに行ったのではないのに人に知られてしまっていることだ。






出典は、万葉集10巻・2268です。

誰かにフライデーされちゃったんでしょうか。浮き名が立っちゃったんですね。
でも、火のないところに煙は立たぬっていうからには
まったく何もないのに噂が立つなんて…ねえ?






●竜華三会(りゅうげ-さんゑ)
弥勒菩薩が、釈迦の入滅後56億7千万年後の未来の世に姿を現し、竜華樹(=竜が百宝を吐くように、百宝の花を開くという想像上の木)の下で悟りを得て三度説法し、人々を救済すること。



弥勒の出世の竜華三会の朝(あした)にこそは驚かせ給はめ。

訳:(弘法大師は)弥勒菩薩が出現して、竜華三会の行われる朝に目をお覚ましになるであろう。





出典は、栄花物語「うたがひ」です。

なんというか、宗教の持つ世界観ってすごいですよね。
世界観というより、ストーリーの方がしっくり来るでしょうか。
56億7千万年後にも、まだ人間がこの世界にいることを想定してるっていうのがすごいですよね。






●流転(る-てん)
衆生が迷い続けること。煩悩のために極楽往生できず、迷いの世界に生き死にを繰り返すこと。



妻子といふもの、無始曠劫(むしくわうごふ)よりこのかた、生死に流転するきづななるがゆゑに。

訳:妻子というものが、遥か彼方の無限の過去からずっと今も、生死を繰り返して極楽往生させない絆のようなものであるから。






出典は、平家物語10巻「維盛入水」です。

現代では「移り変わり続けること」あるいは「生死を繰り返すこと」など、そこまで否定的なニュアンスが入っているような単語ではありませんが
本来の意味では、極楽往生を妨げられている状態を指し示すものだったんですね。

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極楽での安息って、そんなにいいものなんでしょうか。






●寮試(れう-し)
大学寮の試験。
大学寮では、紀伝(史学・文学)・明経(みょうぎょう、哲学・倫理学)・明法(みょうぼう、法学)・算(数学)の四道の学生は、入学すると「学生(がくしょう)」という身分になる。



今は寮試受けさせむとて、まづ我が御前にて試みさせたまふ。

訳:(源氏は息子の夕霧に)まもなく大学寮の試験を受けさせようと思って、まずご自分の前で模擬試験を行わせになる。





出典は、源氏物語「少女」です。

平安時代、最も人気が高かった紀伝道の入学後最初の試験として「寮試」がありました。
これは「大学頭(だいがくのかみ)」が監督し、「史記」「漢書」「後漢書」の三史のうちの一史、
さらにその中の5か条中3か条に通じていれば合格、となるものでした。


光源氏はダメ男として語られがちですが、教育熱心なパパでもあったんですね。






●ろ(間投助詞)
(上代東国方言)~なことよ。(中世以降)~しなさいよ。



白雲の 絶えにし妹を あぜせろと 心に乗りて ここばかなしげ

訳:(仲が)途絶えてしまったあの娘なのに、どうせよというのか、心にかかってこんなにも愛しいことよ。






出典は、万葉集14巻・3517です。

仲が悪くなってしまったからこそ、恋しさが募ることってありますよね。
どうしてこう、人間関係ってうまくいかないんでしょう。
悩まずにいられたら、だいぶ楽になると思うのになあと、思ったり思わなかったり。









●侘び(わび)
わびしく思うこと、思い煩うこと、切ないこと。
中世以降、茶道や俳諧などでの中心的な理念。質素で落ち着き、しみじみとした境地。



わびぬれば 身をうき草の 根を絶えて 誘ふ水あらば 去なむとぞ思ふ

訳:辛い思いで過ごしているので、我が身を辛いものと思い、いっそ浮き草のように根なしになって、誘ってくれる水があるなら、どこへでも流れてゆこうと思います。






出典は、古今和歌集・雑下・938。詠み手は平安の西野カナ、小野小町さんです。


どうやらこの歌、三河国の掾(じょう、三等官のこと)になった文屋康秀(ふんやのやすひで)が
「三河国まで田舎見物に来ませんか」と小野小町を誘った際、返事として彼女が送ったものだとのこと。

お?恋の予感か?とも思われますが
恋の歌をまとめた巻ではなく、雑の部に入っているものなので、両者とも軽い挨拶程度の歌を交わしたものとされています。

ほんとにそうなのかな。小野小町、恋多そうだけどな。






●笑まひ(ゑまひ)
微笑み。



思はぬに 妹がゑまひを 夢(いめ)に見て 心の内に 燃えつつそ居(を)る

訳:思いもよらずあなたの微笑みを夢に見て、心の中で激しく燃えています。





出典は、万葉集4巻・718。

みんな、夢の中じゃ結構自由なんですね。
夢の中で好きな人から笑いかけられた日には、現実と比べて少し寂しくなりつつも
一日、テンション高くなっちゃうんじゃないでしょうか。へへ。






●復ち返る(をち-かへ-る)
元に戻る、繰り返す。若返る、復活する。



朝露の 消易(けやす)き我(あ)が身 老いぬとも また復ち返り 君をし待たむ

訳:朝露のように儚い我が身は、たとえ年老いても、また若返り、あなたを待ちましょう。





出典は、万葉集11巻・2689です。

不老不死っていうわけじゃなさそうですが、この人の精神力は凄そうですね。
誰を待っているのか明確な描写はありませんが、ひたすらに、静かに待ち続けるだけでなく
「あなた」に会う時は若い自分でいたい、という気持ちが見え隠れします。

若い自分でいたい、と思わなくても
会いたい人と会っている自分って、なんとなく心が若返っているというか
常に張り切った感じになってるんじゃないかなあ、と思うんですがいかがでしょう。

あっ、もしかしてこの詠み手の方は、ちょっと年を重ねて肌ツヤが気になってる人なんでしょうか。
それだったら、若返り願望は強いんでしょうね。








さて、以上でやさしい古典が全て終わりました!
長らくのご愛読、ありがとうございました。

次に私の名前を見る時がございましたら
恐らくそれが、本当にこのブログで私が書き記す最後の記事になると思います。
今日が4月1日だからといって、これは嘘じゃないよ!たぶん!




では、またそう遠くない未来にお会いしましょう!
さらば!