現代部活の諸事情

 

「落第」

 みんなは身を震わせた。

「渡辺。言葉は選ぶべきじゃないのか。こいつらはEクラスの馬鹿だ」

「そ……そうでしたか。以後気を付けます」

 僕は頭を下げた。

「ラクダ」

 するとまた140CMに満たない小さな少女が椅子から飛んだ。

「田島 リアだよ。職業は……」

 彼女は間を置き息を吐く。

「心の冒険家さ」

 それはただの高校生じゃないのか。僕だって、やりたいことも見つからない迷子。高校生なんてそんなものでいいのさ。

 いつか行き当たりバッタリに素敵な何かに巡り合うことがあった時に素直に道を選べばいい。

 僕が高校生らしい事を考えていると、またしても順番は回って来ていた。

(さ。さ。さ)

「サケ」

 みんなは、そろそろ余裕もなくなってきたらしくポケットから携帯を取り出し影で検索を始めていた。

「圏央道」「上野動物…」

 どうやらキーワード補助の項目から引きずりだしてきているみたいだ。

「う~上野駅」

「きた~私の番」

 室内が静まり返った。

「一人一回までやり直しOK?

 みんなが首を横に振った。

「う~」

 スーツの少女は横髪を右手で回し、突如目を開いた。

「きた~私の番号は2番の木村 有沙(ありさ)出席番号だからね。職業プロの小説家」

 ふ~と息を吐くと有紗は椅子に座った。

 僕を含めてあと二人。

 この知識の乏しいメンバーで乗り切れるのかな。

「カチューチャ」「やか……野菜」「委員長」「右折」「壺」「盆踊り」「リアル」「ルビー」「ビール」

 中々僕と僕の手を握っていた女性のひらがなが回ってこない。

 

僕は今、部室の前に立っている。

 入るべきか入らざるべきだか検討しているのだ。決意をしても、僕の足は部室を拒否反応を起こして震えが止まらない。

 僕は一息ついて、空いた方の手で部室の戸を開いた。

 中ではまちまちに好き勝手な事をしていた。

 巫女服姿の女性は、はぁはぁと掛け声を上げ部屋中を巡回していて、スーツ姿の女性は原稿用紙を前に独り言を大声で呟き、入学式の時に俺の手を握っていた彼女は扉の前でワンと吠えた。「よしよし」と扉の前で頭を撫でる女の子も。

 なんだこの劇団は……

 僕はこの光景に目を回した。

「部長来ましたよ」

「そうなの」

「王子様」

「いいこね」

 全く統一性が感じれない挨拶に困りながらも僕は空席を見つけ腰を下ろした。

 煙臭さに咳き込んだ。

 窓着を見ると数学担当員の教師が窓際でタバコを吹かしていた。

「先生学校内は禁煙ですよ」

「校則にはそんな規定ないぞ」

 そう言いながらも再びタバコを咥えた。先生は煙を吐きながらこう言った。

「だんまりで、面白くない。自己紹介でもしたらどうだ」

 4人はふんともすんとも言わず、定位置?に座った。

「しりとり」「りんご」「ごりら」

 みんなの視線が刺さる。

「ら……ラッパ」

 みんなは、ため息を着いた。

 どうやらこのしりとりには何かしらの趣旨が設けられているようだ。

「パンダ」「団子」「ごろ寝」「粘土」「ドサンコ」「コーヒー」

 僕の右脇の女性は立ち上がり次の答えを出した。

「冴島(ひじま) 幽香(ゆか)。職業は巫女です」

 巫女服を着て腰まで黒髪を下ろす美人さんはそう答えると紙切れが着いた棒を振り回した。

「鎧」「インコ」「こあら」

「ライオ……」

 みんなの視線が僕の言葉を止めされる。

「ラ……らせ」

 僕も馬鹿さ加減にみんなはため息を零す。

 そして、スーツを着た女性がおもむろにこう言った。

「趣旨わかったますか。しりとりついでに自己紹介してあげてるんですよ?

「なんとなく理解してたけどしりとりする必要あるのかな」

「「「「それじゃつまらないじゃない」」」」

「そうですね」

 僕は残念そうに答えると、らで始まる言葉を連想した。

 

「そんな僕の高校生活は……」

「よしよし」と先生は僕の背中を摩ってくれる。

 僕は顔を上げ抗議を始めた。

「待ってください。なぜ、僕なんですか。Aクラスには僕より成績がいい人は山の様にいるじゃないですか」

「違うな。わかってない」

 先生は顔を左右に振った。

「君は抜擢されたのでなく、君自身の素質を買われたんだ」

「?」

 僕は疑問符を浮かべ、両手で頭を抱えた。

(僕って特技あったけ)

 考えていると不意に先生こんなことを言い出した。

「クラスの中でも君は全体評価が悪い。それは中学時代の成績表が物語っている。だがなぜ、君はAクラスに入れたのか」

「……」

 僕は言葉も出ないで立ち尽くした。

「君はね。彼女たちと同じく、異質な存在なんだよ」

 彼女たちと同じと言われた僕は肩を落とした。だってそうだろ。入学式も落ち着いていられないあの4人と同レベル扱いなんて酷すぎるじゃないか。

「納得がいったかな」

「断固拒否です。あそこだけは嫌ですよ~」

 先生の足にしがみついた。

「選択肢を用意しようか」

 先生は手をぐーにして僕に見せた。

「まずその1。今の部活で満足する」

 人差し指が立ち上がる。

「その2。天才とお嬢様が集まる動機不明な部活に入る」

 僕は最後の指に期待をした。

「その3。学園を牛耳る生徒会に入る」

 先生は指を三本立たせ詰め寄ってきた。

「3択とも異常だぞ。渡辺はどれが希望かな」

 僕は目を閉じ首を上げて叫んだ。

「もう、今のままでいいです」

 僕は泣きながら保健室を飛び出すと階段を駆け上がった。

 そこには金属製の扉があり話し声が聞こえる。

「部長いつになったら来るのかな」

「根性なしに部長の座は荷が重いですよ」

「あんにゃろ~のせいで、小説が進まないじゃないか」

「あんにゃろ~って何ですか。私の白馬の王子様に向かって」

 思ったより、みんな明るい元気な子みたいで僕は安心した。僕はううんと声を整える様に息を吐くとドアノブに手を掛けた。

「お待たせしました」

 僕の周りに4人は駆け寄ってくる。

 僕は入学式の時のような雲無き快晴に決意を馳(は)せた。

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