2015年01月18日

1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2014/03/07(金) 20:24:10 ID:t2nls1YA0

ニュー速VIPの転載禁止に伴い、こちらに専用スレを立てました

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



412 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:37:08 ID:lHevsfMg0

2015年1月1日(木)

母方の実家へ赴き、年始の挨拶を済ませてきた。
去年の四月に生まれた従姉の赤ちゃんもだいぶ大きくなり、手足がむちむちとしていたのが印象的だった。
「はー……」
ぷにり。
うにゅほが、赤ちゃんのほっぺたを指の腹で優しくつつく。
「だんりょくすごい……」
「パンパンでしょ」
「はい、すごいです、すごい」
ぷにぷにぷに。
連打である。
赤ちゃんを抱いた従姉とうにゅほのやり取りを聞くともなしに聞いていると、弟が自嘲気味に口を開いた。
「……◇◇、俺の顔見ると一瞬で泣くんだよね」
「お前、なんかしたの?」
「してないって」
「そんなことってあるかなあ……」
生後一年に満たない赤ちゃんって、それほど視力も良くなかったはずだし。
「××、ちょいと失礼」
「うん」
膝に手をつき、赤ちゃんの顔を覗き込む。
「──…………」
「──…………」
じ。
イノセントな瞳が俺を見つめ返している。
大人しい子だ。
「……泣かないな」
「なかない」
弟を手招きする。
「知らないからな……」
溜め息と共に、弟が腰を上げた。
数歩ばかり近づいた瞬間、
「──……ひェ」
赤ちゃんの顔が僅かに歪み、呼気が湿り気を帯びた。
弟が慌てて後退ると、元に戻った。
「……なにが悪いんだろう」
大きくて怖いと言うのであれば、俺のほうが身長は高い。
顔が怖いと言うのであれば、父親のほうが強面だ。
「うーん……」
うにゅほが大きく首をかしげ、
「……ひげ、かなあ」
と言った。
「ヒゲだな」
「うん、たぶんヒゲじゃないかな」
俺と従姉も同意する。
「剃ろうかな……」
遠い目で思案する弟の姿に、皆で笑いをこぼすのだった。








413 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:39:18 ID:lHevsfMg0

2015年1月2日(金)

「はー……」
タイルカーペットの上に寝そべりながら、至福の吐息を漏らした。
「やあーっと、正月ってかんじ」
「だらしないねえ」
うにゅほがくすくすと笑い声を漏らす。
「大掃除をしたばかりの今だから、こんなことも許されてしまうのだー」
「わ」
ごろごろと転がり、うにゅほの足にすがりつく。
「お年玉をよこせー」
「いくら?」
「本当にくれようとするなー」
ごろんごろん。
「ふへへ」
ぽす。
背中にやわらかな重み。
「おとしまっさーじ、あげます」
「それを言うなら──」
おとしだマッサージのほうがいいのではないか。
そう言いかけて、口をつぐんだ。
それは、おっさんのセンスである。
「いうなら?」
「……なんでもないです、よろしくお願いします」
「はーい」
ぐい、ぐい。
うにゅほの親指が、凝り固まった肩の筋を刺激する。
もともと力がない上に、痛くないよう過度な配慮をするものだから、なにひとつ効かない。
しかし、
「──…………」
親指が押し込まれるたび、全身が床に沈み込んでいくような、不思議な感覚がある。
「──……は」
目を開いて、自分の目蓋が下りていたことに驚いた。
「××、俺寝てた?」
「? ねてたの?」
意識を手放したのは、ほんの一瞬のことらしい。
「今度、眠れないときに頼もうかなあ」
「いいよー」
「……ああ、でも、眠れないからって、いちいち××を起こすわけにもな」
「おこしてもいいよ?」
「──…………」
そう言ってくれる娘だからこそ、起こせないのである。
「──いよし!」
「わ、わ、わ」
背中にうにゅほを乗せたまま、ゆっくりと四つん這いになった。
「次は、俺のマッサージを受けるがいい」
「おねがいします」
交代交代で去年の疲れを落とし合う俺たちなのだった。







414 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:40:55 ID:lHevsfMg0

2015年1月3日(土)

健康が取り柄の父親が高熱に臥せってしまった。
そういえば、去年の正月は弟が風邪を引いていた気がする。※1
毎年毎年幸先の悪いことだ。
「おとうさん、だいじょぶかなあ……」
「大丈夫だろ」
「でも、いんふるえんざかもって」
「タミフル貰ってきたし、大丈夫だと思うぞ」
なにしろ丈夫な父親である。
治りかけの時期に雪かきをしないよう釘を刺すくらいが丁度いい。
「それより──」
ふたりぶんの使い捨てマスクを取り出し、うにゅほにひとつ手渡した。
「本当にインフルだと怖いから、部屋でもマスクを着けること」
「へやでも?」
「ああ」
「おとうさん、マスクしてねてるよ?」
「……えー、と」
首の後ろを撫でる。
なんと説明すればいいだろう。
「××、潜伏期間って知ってる?」
「しらない」
ふるふると首を振る。
「インフルエンザに限らないけど、感染してから症状が出るまで、時間がかかるものなんだ」
「ふうん……?」
あ、わかってない。
「つまり、俺も、××も、症状が出てないだけで、既にインフルエンザになってるかもしれないってこと」
「!」
あ、理解した。
「わたしかんせんしてたら──」
「俺に伝染るかもしれない」
逆もまた然りである。
「マスクしないと!」
うにゅほがいそいそとマスクを装着する。
「できた」
「鼻が出てる」
つまむ。
「ぷー……」
俺も、うにゅほも、他の家族も、父親が完治するまで無事に過ごせればいいのだが。

※1 2014年1月1日(水)参照
 






415 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:42:31 ID:lHevsfMg0

2015年1月4日(日)

「──ゲほ、えほッ」
左手でマスクを押さえながら、体温計の表示部に視線を落とす。
「なんど? なんど?」
「36.8度……」
どうやら熱はないようだ。
俺は基本的に体温を測らない主義なのだが、インフルエンザの可能性があるとなればそうも言っていられない。
「インフル──では、ないのかな」
たぶん。
父親もピンピンしているし。
「でも、ねたほういいよ」
「それはそうなんだけど、うーん……」
腕を組み、天井を仰ぐ。
頭を悩ませているのは、うにゅほの処遇についてだった。
あからさまに風邪を引いてしまった以上、同じ部屋で過ごすべきではない。
しかし、父親も同様の症状を呈しているわけで、自室から締め出したとしても大差ないように思える。
第一、昼間はそれでいいとしても、寝るときはどうする?
リビングに布団を敷くことは可能だが、できるできないを問う前にそんなことさせられるはずもない。
「──……××」
「?」
「寝る場所について、ちょっと悩んでるんだけど──」
「わたし、◯◯のソファでねるよ?」
「……ありがとう」
うにゅほの頬に手を添える。
「うへー……」
質問の意図とは異なる上に催促したような形になってしまったが、たいへんありがたい。
これはもう、どうしようもあるまい。
うにゅほに風邪が伝染らないよう、気休めながらマスクを二重にしておこう。







416 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:44:19 ID:lHevsfMg0

2015年1月5日(月)

「ざんじゅうななど、はちぶ……」
「──…………」
うにゅほに体温計を手渡し、はだけていた半纏を羽織りなおす。
いよいよもってインフルエンザの様相が強くなってきた。
「……××、ぎょうは、父ざん母ざんの寝室で寝たほうがいいと思う。父さん完治したし」
声が出ない。
喉が完全にやられている。
「──……や」
うにゅほがふるふると首を振る。
だろうと思った。
高熱は不安を連れてくる。
伝染らないように距離を置いてほしいのは事実だが、隣にいてほしいのもまた事実だ。
だから、強くなんて言えない。
言えるはずがない。
「……じゃあ、いぐつか約束な」
「やくそく?」
「部屋では、絶対にマスクを外さないごど」
「はい」
「あんまり近づかないごと」
「はい」
「ベットボトルに口をつげないこと」
「はい」
「……古畑任三郎でしだ」
「ふるはた?」
「いや、声の枯れ方が似でるかと思って」
「にてないー」
うにゅほが笑ってくれたことに安心して、布団にもぐりこんだ。
熱、下がればいいな。
どうかな。







417 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:46:04 ID:lHevsfMg0

2015年1月6日(火)

「──37.6度、か」
体温計の電源を切り、ケースに仕舞う。
「ごべんねえ……」
ずひ。
病床のうにゅほが鼻をすする。
「なんとなく、こうなる気はしてたんだ」
「ごべんなざい……」
「××のせいじゃないよ」
「◯◯、まだなおっでないのに、ごべんねえ……」
「だから、××のせいじゃないっての」
気を遣っているわけではなく、本当に違うのだ。
「結局、俺はインフルエンザだったわけだろ」
「うん……」
「弟もインフルエンザだろ」
「うん」
「潜伏期間を鑑みると、俺たちみんな父さんに伝染されてたんだって」
当の本人は今日も元気に仕事へ行ってしまったが。
「だから、××のせいじゃありません」
「はい……」
「それより、大変だぞ。同じ症状なら、今日明日でもっと熱が上がる」
「──…………」
ずびー。
うにゅほが鼻をかむのを待ち、言葉を継いだ。
「でも、その峠を越すと、俺みたいに多少は楽になるから」
「わがった」
額に貼りついた前髪を払ってやりながら、告げる。
「してほしいことがあったら、遠慮せずに言いなさい。大概のことはしてやれるから」
「……ありがと」
しばらく目蓋を閉じたあと、うにゅほが言った。
「い゙っしょにいてほしい……」
「はいはい」
「あ、でも、◯◯もねないど……」
「××が寝たあとな」
「◯◯も、ねよう」
「一緒に寝るのは無理だぞ」
倫理的な理由もあるが、高熱のある状態で同衾した場合、布団の中が灼熱地獄になる未来が目に見えているためである。
「◯◯、となりで……」
「……隣で?」
敷布団を敷いて、ということだろうか。
「──…………」
俺も、まだ熱がある。
いくらシーツを敷くとは言え、ソファで眠るのは、すこしつらい。
「……わかった、今日だけな」
「わあー」
というわけで、枕を並べることにした。
特になにをするわけでなくとも、すぐ隣に親しい人の気配があるということは、けっこう安眠を誘うものらしい。
たまにはいいかもである。







418 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:48:14 ID:lHevsfMg0

2015年1月7日(水)

「──…………」
熱い。
重い。
苦しい。
ひどく圧迫感のある夢を見て、目を覚ました。
「う……──」
耳元で、苦しげに喘ぐ声。
そういえば、昨夜はうにゅほの隣に布団を敷いて寝たのだっけ。
それにしても、熱い。
当然だ。
派手に吹っ飛ばされたうにゅほの布団が、軒並み俺にのしかかっていたのだから。
「うぅ……」
当のうにゅほは、一枚だけ残された丹前を抱き締めながら、寒さに打ち震えている。
露出した腕を取ると、すこし冷たかった。
額に触れると、熱かった。
熱がすこし上がったようだ。
うにゅほが起きたら、かかりつけの病院へ連れて行き、イナビルを処方してもらわなければなるまい。
そんなことを考えていたときだった。

──……ごご……ご……

大気が鳴動し、家が大きく揺れた。
カーテンを薄く開き、外を覗く。
地獄のような光景が、そこにあった。
吹雪。
吹雪。
吹雪。
刷毛で乱暴に描いた絵画のような、粗く荒い世界。
時刻を確認する。
午前十時。
こんなに暗いのに、まだ午前中なのか。
「──……はあ」
ひどい年明けだ、と思った。
うにゅほの布団を掛け直し、再び横になる。
俺も、まだ眠い。
ちいさな手のひらを優しく握り締めながら、そっと目蓋を閉じた。







419 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:50:31 ID:lHevsfMg0

2015年1月8日(木)

「おらが部屋に冷蔵庫がやってきた!」
でん!
自室の中央に運ばれたそれは、黒く、雄々しく、光り輝いていた。
当然だが、貰い物である。
脳内で「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のサビを再生しながら、冷蔵庫の頭をぽんと叩く。
「きた!!」
「──……ぶー」
マスクをつけたうにゅほが、うつろな目で鼻を鳴らした。
すこしでも元気づけようと無理に上げたテンションが、見る間にしおしおとしおれていく。
「……これ、どこ置こうか」
「……おけるの?」
「たとえば、扉の近くとか──」

置いてみた。

「……ないな」
「ちょっど、じゃまくさい」
「じゃあ、空気清浄機どけてみるとか」
「ようふくだんす、あぐ?」
「……開かないな」
「──……ぶー」
「ソファと小箪笥のあいだに、入りそうな隙間があるんだけど」
「……じゃ、そこ」

入れてみた。

「──おお!」
「おー……」
そのための隙間であったかのように、ぴったりと収まった。
「ここしかないな」
「うん」
「──…………」
「……ぶー」
「すこし横になるか?」
「うん……」
うにゅほの手を取り、寝床までエスコートする。
「……ねるまで、いでほしい」
「はいはい」
「──……ぶー」
すっかり甘えっ子になってからに。
冷蔵庫の感動を分かち合うのは、もうすこし元気になったあとにしよう。







420 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:52:19 ID:lHevsfMg0

2015年1月9日(金)

「けっこうでっかいねえ……」
うにゅほが、腰の高さほどもある冷凍庫の頭をぺたぺたと撫でる。
「開けてみるか?」
「うん」
振動と共に、冷蔵庫の扉が開く。
「わあー」
「広いだろ?」
「ひろい!」
1.5リットルのペットボトルであれば、優に十数本は入りそうだ。
「おちゃとペプシがはいってます」
「他に入れるものもないからな……」
「おやつとかは?」
「俺たち、食べるぶんしか買わないじゃん」
「あー……」
なにより、そういったものを備蓄し始めると、肥え太る未来しか見えないし。
「れいとうこないの?」
「冷凍庫あるぞ」
「──……?」
小首をかしげる。
「これ、ワンドアだから上のほうが冷凍庫になってるんだよ」
「へえー!」
うにゅほが、冷蔵庫の最上段に手を突っ込み、
「しゃりしゃりしてる……」
と呟いた。
「しゃりしゃり?」
「つめたい」
「え」
うにゅほに詰めてもらい、同じように手を差し入れる。
「……もう霜がついてる」
「しも?」
「コンビニの冷凍庫なんかにもついてるだろ、これ」
「あー」
うんうんと頷く。
「なんでつくの?」
「夏になると、ペットボトルが汗かくだろ。あれと原理は同じだよ」
「あれがこおってるの?」
「そういうこと」
それにしても、たったの一日でもう霜ができるとは。
霜を取るなり防ぐなり、なにか対策を講じなければなるまい。







421 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:54:20 ID:lHevsfMg0

2015年1月10日(土)

──ぴぴぴぴ!
うにゅほが、電子音の発信源を腋の下から取り出した。
表示部に目を落とし、
「……えー?」
不満げに首をかしげる。
「何度だった?」
「さんじゅうななど、さんぶ……」
「おー、下がったじゃないか」
「もうなおったとおもったのに……」
インフルエンザは、普通の風邪よりずっと症状が重い。
ピーク時の体調を基準にすると、まだ微熱があっても復調したと感じてしまうのだろう。
かく言う俺もそうである。
「まだまだ無理はできないな」
「うー……」
うにゅほの髪を手櫛で梳きながら、優しく言う。
「大丈夫、××を置いて、ひとりで出掛けたりしないから」
去年図書館で借りた二冊のハードカバーに視線を向け、ちいさく溜め息をついた。
返却期限を十日以上もぶっちぎってしまっているのだが、こればかりはもう巡り合わせが悪かったとしか。※1
「でも、あさって◯◯のたんじょうびなのに」
「──……あー」
そうだった。
思い出した。
忘れてた。
「そっか、また年をとるのか……」
「いや?」
「誕生日が来るのは、まあ、嬉しいけどさ」
祝ってくれる人がいる限り、それは変わらない。
「……誕生日が来ると年齢がひとつ減る仕組みなら、もっと嬉しい」
「えー」
「××は嫌か?」
「あかちゃんになっちゃう」
「赤ちゃん好きだろ」
「すき」
うへー、と笑う。
「◯◯、あかちゃんになったら、どうしよう……」
「適当に育ててくれたまえよ」
ぽんぽんと頭を撫でる。
「さあ、布団に戻りましょうねー」
「ねむくない」
「眠らなくてもいいから」
「はい……」
うにゅほを寝かしつけたあと、俺もすこし横になることにした。
全快まで、もうひと押しである。

※1
2014年12月27日(土)
2014年12月29日(月)参照







422 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:55:58 ID:lHevsfMg0

2015年1月11日(日)

「こたつ」
「うん?」
「こたつ」
「欲しいの?」
「こたつ、はいってみたい」
テレビかなにかで見たのだろうか。
「こたつない?」
「あるけど、車庫の二階の奥のほうだよ」
「あー……」
掘り出すだけで一時間はかかるだろう。
「じゃ、いい……」
うにゅほが、しおしおとソファに座り込む。
ちょっと可哀想だと思ったので、なんとかしてあげることにした。
「……えー、ニセコタツならできるけど」
「にせ?」
「コタツモドキとも言う」
「もどき……」
「やる?」
「やる!」
まず、仕事用の折りたたみテーブルを広げる。
次に、その上に布団を乗せる。
最後に、布団乾燥機の送風口を布団の端に差し入れる。
「──はい、ニセコタツの完成です」
「おー!」
うにゅほの瞳がきらきらと輝いた。
「天板はないけど勘弁な」
「こたつ! すごいこたつ!」
「俺も、思ったよりこたつっぽくなって驚いてる」
「はいっていい?」
「どうぞどうぞ」
タイルカーペットの上に腰を下ろしたうにゅほが、布団のなかに恐る恐る爪先を入れていく。
「あ、あったかい……」
布団乾燥機の温風は、足に直接当たらないように調整してある。
ちゃんと靴下も履いてるし、ヤケドすることはないだろう。
「◯◯、◯◯!」
ぱんぱん!
端のほうに詰めたうにゅほが、自分の隣を叩いて示す。
入れと。
「狭いと思うんだけど」
「あったかいよ」
「はいはい」
並んで入ったニセコタツはぎゅうぎゅうで、布団乾燥機なんてすぐに必要なくなった。
意外と実用的かもしれない。







423 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:57:26 ID:lHevsfMg0

2015年1月12日(月)

目を開けると、ぼやけた天井。
「──……ふぁ、ふ」
手探りで見つけた眼鏡を掛けて、あくびを噛み殺す。
眠い。
しかし、起きてしまったものは仕様がない。
リビングへ赴くと、うにゅほがソファの上でぼーっとしていた。
「××、おはよ」
「!」
びん、と音がしそうなほど一瞬で背筋を伸ばし、うにゅほが挨拶を返す。
「おっ、はよう、がざいます!」
「……がざいます?」
「──…………」
目が合う。
「──…………」
「──…………」
もじもじしている。
「えー……と、どうかした?」
「……きづいてない?」
「なにが」
「──……はー」
溜め息。
なんだろう、様子がおかしい。
「……えと、なにか、なかった?」
「なにか?」
「めがねのとこに……」
「──…………」
ふと、記憶に引っ掛かるものを感じた。
眼鏡のところ。
眼鏡の傍。
なにか、見覚えのないものがあったような気がする。
自室へ取って返し、枕元に視線を落とした。
「……あった」
青い小箱。
それを見た瞬間、思い出した。
「そうか、俺──」
「たんじょうび、おめでとう!」
振り返ると、笑顔のうにゅほがそこにいた。
「これ、プレゼント?」
「うん!」
起きたときに気づけなくて申し訳ない。
「開けていいか?」
「いいよ」
それなりに高級そうな小箱を開くと、
「うお、時計だ!」
「うへへ」
それは、男性用の自動巻腕時計だった。
文字盤は大きいがデザインは俺好みで、少なくとも一万円前後はしそうな代物だ。
うにゅほの誕生日に腕時計を贈ったから、そのお返しなのだろう。
「はー……」
着けてみると、ずしりと重い。
「似合う?」
「にあう、にあう。よかったー」
「ありがとうな」
「うへー……」
左手で、うにゅほの頭を撫でる。
素直に嬉しかった。
「──それにしても、いつ買ったんだ?」
今年に入ってからはずっと臥せっていたのだから、買いに行くことなどできるはずがない。
やはり、便利なネット通販だろうか。
そんな予想を立てていると、
「きょねん、おかあさんとかいにいった」
「去年……」
「じゅういちがつくらい」
「十一月!」
そんなに前から隠してあったのか。
それなら早めにもらっておけば──などと益体もないことを考えなくもないが、それはそれで風情がないものである。
せっかくのプレゼントだ。
ありがたく使わせていただこう。







424 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 02:59:54 ID:lHevsfMg0

2015年1月13日(火)

「……それじゃ、お願いします」
「はい」
看護婦に一礼し、病院を後にする。
「──…………」
空を見上げた。
寒くはない。
ただ、ぼんやりとした不安が胃の奥で澱んでいた。
帰宅し、玄関の扉を開くと、うにゅほが上がり框に腰掛けて待っていた。
「◯◯……」
「ただいま」
「あの、おばあちゃんは?」
「点滴だって」
「かえってくる?」
「大丈夫だ。終わったら、ちゃんと迎えに行くよ」
「……そか」
安心したのか、うにゅほが肩の力を抜いた。
「──…………」
祖母の体調が芳しくない。
詳細は省くが、長くはないように思う。
俺は、いい。
俺は大丈夫だ。
心配なのは、うにゅほのことだった。
愛犬が死んだとき、あれほど落ち込んだうにゅほが、祖母の死に耐えられるだろうか。
それだけが気にかかる。
「ほら、寒いから部屋に戻るぞ」
「うん」
うにゅほの頭をぽんぽんと撫でて、階段の踏み板に足を掛ける。
「──よっ、しょ!」
「うお、お、お、お!」
後ろから背中を押され、うにゅほと一緒に階段を駆け上がることになってしまった。
「こら、危ないだろ」
「うへー……」
うにゅほが苦笑する。
「──…………」
不安、なのだと思う。
いくら大丈夫と口にしたところで、伝わってしまうものがある。
俺たちは家族だ。
互いを知り過ぎている。
祖母が完治してくれればと思うが、それはきっと、都合のいい願いに違いないのだろう。
 






425 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 03:02:11 ID:lHevsfMg0

2015年1月14日(水)

「あー……」
入念に洗ったはずの手のひらから、依然として灯油臭がする。
ストーブの油タンクに給油する際、垂れた灯油を手のひらで拭ってしまったのである。
「──…………」
これでは、灯油のにおいが好きなうにゅほが大喜びしてしまうなあ。
喜ぶのはいいのだが、たまに離してくれないから困るのだ。
前世は犬だな、うん。
「ただいまー……」
「!」
自室へ戻ると、案の定うにゅほが見えないしっぽを振っていた。
うん、犬だ。
「てーかいでいい?」
「ああ」
うにゅほの眼前に右手を差し出し、
「──…………」
ふと気が変わって、うにゅほの顔面にアイアンクローをかましてみた。
「ぶ」
もちろん力は込めていない。
「ははは、好きなだけ嗅ぐがいい」
「うぶー……」
ふんすふんす、
はー。
ふんすふんす、
はー。
「んふぅ」
吐息があたたかい。
うにゅほは、アイアンクローなど意に介さず、素知らぬ顔で鼻を鳴らしている。
もっとびっくりするかと思ったんだけどなあ。
そんなことを考えていたときだ。
「──…………」
ちら、と俺の顔を見上げたうにゅほが、
「……れる」
いたずらっぽく手のひらを舐めた。
「おひ!」
全身の毛穴が一瞬で総毛立ち、俺は思わずたたらを踏んだ。
「?」
うにゅほが小首をかしげている。
「──手、手のひらは駄目なんだ、昔から、俺は」
「ごめんなさい」
「いや、謝るほどのことじゃないけど……」
俺は、ふと、愛犬に手を舐められたときのことを思い出していた。
やっぱ犬だわ、この子。
 






426 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 03:03:56 ID:lHevsfMg0

2015年1月15日(木)

祖母の入院の手続きを済ませ帰宅すると、時刻は既に正午を回っていた。
「──…………」
ソファに背中を預け、だらしなく天井を見上げる。
疲れた。
いつもより早起きをし、いつもとは違うことをしたのだから、当然だ。
「……ね、◯◯」
「んー」
俺の隣で膝を抱えたうにゅほが、そっと口を開いた。
「おばあちゃん、だいじょぶかな」
「家にいるよりかはな」
祖母の衰弱は、インフルエンザに罹患し胃腸の機能が低下したことに起因する。
インフルエンザの症状はとうに治まっているので、点滴などで栄養を摂取することができれば、差し当たって死ぬことはない。
「さみしくないかな」
「ちょっと休憩したら、お見舞い行こうな」
「うん」
「毎日行けば、寂しくないだろ」
「……うん」
「──…………」
「──…………」
自室を、静寂が包み込む。
ぴこぴこと動くうにゅほの爪先をじっと見つめていると、唐突に、わけもなく不安に駆られた。
「そー……、りゃ!」
「わう」
うにゅほの膝と腰に腕を回し、すくうように抱き上げる。
そして、自分の膝の上に乗せた。
「どしたの?」
「……膝が寒かったんだよ」
人の重みは、安心する。
しばらくのあいだ、そうしてうにゅほの体重と体温とを感じていた。







427 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2015/01/16(金) 03:05:26 ID:lHevsfMg0

以上、三年二ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください 
 




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