東方projectに関する2ちゃんねる・ふたば☆ちゃんねるのスレをまとめているサイト。
2016年05月17日
- 1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2014/03/07(金) 20:24:10 ID:t2nls1YA0
- ニュー速VIPの転載禁止に伴い、こちらに専用スレを立てました
うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます
- ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/
- 936 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:44:51 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月1日(日)
- 「ヤマダ電機、けっこう混んでたなあ」
- 「ごーるでんうぃーく」
- 「そうそう」
- 「なにかったの?」
- 「これか」
- 小さな紙袋を掲げてみせる。
- 「16GBのUSBメモリだよ」
- 「ゆーえすびー……」
- 「メモリ」
- 「めもり」
- 「簡単に言うと、データを入れておくケースみたいなものだな」
- 「おんがくとか、はいるの?」
- 「入るよ」
- 「きけるの?」
- 「聞けないけど」
- 「?」
- うにゅほが小首をかしげる。
- 「おんがく、あいふぉんにいれればいいのに」
- 「えーと……」
- なんと説明すればいいだろう。
- 「USBメモリには、データならなんでも入るから」
- 「でーた」
- 「写真の画像とか」
- 「あいふぉん、はいらないの?」
- 「入りますね……」
- 例えが悪かった。
- 「……パソコンには、いろんなデータが入ってるだろ」
- 「うん」
- 「音楽、画像、動画以外にも、いろんな種類のデータがあるんだ」
- 「そうなんだ」
- 「仮にデータを液体だとすると、他のパソコンに移すとき、どうしたらいいと思う?」
- 「うーと……」
- しばしの思案ののち、うにゅほが口を開く。
- 「……コップにくんで、もってく?」
- 「そのコップが、USBメモリ」
- 「はー……」
- うにゅほが感嘆の声を漏らす。
- 「わかったいただけましたか」
- 「とてもよくわかりました」
- ぺこり。
- 「いえいえ、こちらこそ」
- ぺこり。
- 何故か頭を下げ合うふたりなのだった。
- 937 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:45:53 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月2日(月)
- 「火元だけ気をつけてね!」
- 「わかった」
- 「行ってきます!」
- 「ああ、行ってらっしゃい」
- 「いってらっしゃーい」
- 両親が、三泊四日の東北旅行へと出掛けていった。
- 「んー……、はァ」
- 大きく伸びをして、深呼吸をひとつ。
- 「なーんか開放感あるよなあ」
- 「うん、ある……」
- うへへとすこし笑いながら、うにゅほがこちらを見上げる。
- 「大して部屋から出ないから、あんまり変わらないんだけどな」
- 「おおきいテレビ、いつでもみれるよ」
- 「先週のナイトスクープでも見るか」
- 「みる!」
- 軽やかに階段を駆け上がっていくうにゅほに、ふと尋ねる。
- 「今日の晩ごはんは?」
- 「ざんぎ!」
- 「お、いいな」
- 「さっき、おかあさんと、しこみしたの。あと、あげるだけ」
- 「うむ、台所は任せたぞ」
- 「まかされた!」
- ぴ、と敬礼する。
- 「××がいなかったら、俺も弟もろくなもん食べないだろうな……」
- カップめんと外食だけで三日間を過ごす姿が目に見えるようだ。
- 「◯◯、りょうりできるのに」
- 「できるからって、するとは限らない」
- 「?」
- 小首をかしげる。
- 「要するに、めんどい」
- 「えいようかんがえないと、だめだよ」
- 「××がいるから、いいじゃん」
- 「うーん……」
- 「頼りにしてます」
- 「──……うへー」
- てれりと笑う。
- ちょろくて可愛いなあ。
- こうして、両親のいない三日間がスタートしたのだった。
- 938 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:47:50 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月3日(火)
- 「──あれ、綿棒切れてる」
- 綿棒の容器がカラであると気づいたのは、風呂上がりのことだった。
- 「××、買い置きってあったっけ」
- 「どうだっけ……」
- うにゅほが小箪笥の引き出しを開ける。
- 「あ、あった」
- 「ナイス」
- 「はい、めんぼう」
- 未開封の容器を受け取り、綿棒を取り出す。
- 「♪~」
- 鼻歌まじりに耳の穴を掃除しようとして、
- くにゃり。
- 「……?」
- 妙な感触に綿棒を検めると、軸が大きく曲がっていた。
- 「──…………」
- 容器を確認する。
- ダイソー。
- 「……××」
- 「?」
- 「100円ショップの綿棒は、駄目だ」
- 「まがってる……」
- 「軸棒、フニャフニャだぞ」
- 綿棒を手渡す。
- 「ほんとだ、ふにゃふにゃだ」
- 「ドラッグストアで買うべきだったなあ」
- 「このめんぼう、どうしよう」
- 「綿棒より、耳の穴をどうにかしたいんだが……」
- 風呂上がりに耳掃除をするのが習慣になっているので、どうにも耳の中が気持ち悪い。
- 「みみかき、つかう?」
- 「それしかないか」
- 「みみかき、していい?」
- 「……俺の?」
- 「うん」
- 「まあ、いいけど」
- 眼鏡を外し、うにゅほの膝に頭を預ける。
- 「浅めでお願いします」
- 「はい」
- プラスチック製の耳かきが、外耳道に進入する。
- さり、さり。
- 「きもちいい?」
- 「くすぐったい」
- 「くすぐったい?」
- 「もうすこし強くして」
- かり、かり。
- 「そうそう、それくらい」
- 「はい」
- 綺麗になっている気はまったくしないが、耳の穴の痒みは取れた。
- 耳かきしてもらうのも、いいなあ。
-
- 939 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:48:52 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月4日(水)
- 「わあー……」
- うにゅほが伸ばした右手の先で、満開の桜が枝先を広げていた。
- 「ほら、濡れるぞ」
- 傘の下へとうにゅほを引き戻す。
- 「さくら、きれいだねえ」
- 「そうだな」
- 雨模様でさえなければ、もっと綺麗なのだろうけど。
- 「桜の時期が終わる前に、新川の桜並木も見ておきたいな」
- 「あ、みたい」
- 「できれば、晴れの日に」
- 「あめのさくらも、きれいだよ」
- 「綺麗だけど、写真映えしないからなあ」
- 「しゃしん、とっていいの?」
- 「せっかくデジカメあるんだから、使わないともったいないだろ」
- 「そだね」
- 俺もうにゅほもインドア派だから、写真を撮る機会があまりないのだ。
- 「今年はバイクの自賠責取るから、いろいろ出掛けような」
- 「どこ?」
- 「ぜーんぜん、決めてない」
- 「きめてないの」
- 「行きたい場所あったら、遠慮無く言ってくれな」
- 「いきたいばしょ……」
- しばしの思案ののち、
- 「おもいつかない……」
- うへーと苦笑する。
- 「いますぐじゃなくていいって」
- 「いいの?」
- 「行きたい場所なんて、無理に決めるものじゃないんだから」
- 「そか」
- 「──さ、そろそろ買い物行こう」
- 「なにかうんだっけ」
- 「さけるチーズ、とか」
- 「◯◯、おとうさんのさけるチーズ、ぜんぶたべちゃうから……」
- 「補充しとけばバレないんだから、いいんだよ」
- 「いいけど」
- 「あと、晩ごはんの材料かな」
- 「なにたべたい?」
- 「軽いものでいいよ」
- 「たとえば?」
- 「たとえば──」
- 今日の晩ごはんは、かき揚げ蕎麦だった。
- 美味しかったです。
- 940 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:49:49 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月5日(木)
- 「はー……」
- 「……ふいー」
- だらだら、だらだら。
- 寝間着のままで着替えもせずに、ふたりだらだらと時間を過ごす。
- 「……たまには、こういうのも、いいなあ」
- 「うん」
- 正月以外にこんなことをしていると、まず間違いなく叱られる。
- 「どうでしょうリターンズでも見るかー」
- 「みるー」
- 羽毛布団を引きずりながらリビングへと移動し、ふたりくるまってテレビをつける。
- 「あ、たいけつれっとうだ」
- 「DVDで見たな」
- 「うん」
- 「でも、暇だし見よう」
- 「うん」
- 二、三番組ほどハシゴするころには、だんだんと目蓋が重くなってくる。
- 「──…………」
- うと、うと。
- 「……◯◯、ねむい?」
- 「眠い……」
- 「ひざまくら、する?」
- 「頼むう」
- うにゅほの膝に頭を乗せて、欲求の赴くままに目を閉じる。
- 「……父さん母さん、今日、帰ってくるなあ……」
- 「うん」
- 「嬉しいか?」
- 「うれしい」
- 「そっか」
- 「◯◯は?」
- 「……まあ、無事に帰ってきてくれるなら、それはそれで嬉しいけどさ」
- 「けど?」
- 「あと数日くらいなら、ゆっくりしてきてくれてもいい」
- 「……うへー」
- うにゅほが苦笑する。
- 「ちょっとわかる……」
- 「だよなー」
- 「うん」
- 両親が帰宅したのは、午後十時を過ぎたころだった。
- 少々残念な気もするが、ともあれ無事を喜ぼう。
- 941 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:50:54 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月6日(金)
- 「ぶー……」
- ずひ。
- 鼻水をすする。
- 「はい」
- 「ありがとう……」
- 差し出されたティッシュを受け取り、鼻をかむ。
- 「かふんしょう?」
- 「たぶん違う」
- 「かぜ?」
- 「たぶんそう」
- 「ねたほういいよ」
- 「そうする……」
- のそのそと寝床に戻り、布団をかぶる。
- 「……暑い」
- 「まど、すこしあけるね」
- しばしして、
- 「寒い……」
- 「まど、しめるね」
- 「待って」
- 「?」
- 南西側の窓へと向かいかけたうにゅほが、足を止める。
- 「わかった、これ、駄目なやつだ」
- 「だめなやつ?」
- 「なにをしても暑いか寒いかで、ちょうどいい温度がないやつだ」
- 「あー……」
- うんうんと頷く。
- 「かぜのとき、あるよね」
- 困ったような笑顔を浮かべながら、うにゅほが窓を閉める。
- 「きりがないから、次は開けなくていいよ」
- 「ううん」
- ふるふると首を横に振る。
- 「あつくなったら、いってね」
- 「いいって」
- 「あせかいたら、からだ、きもちわるいでしょ」
- 「まあ……」
- 「さむかったら、かぜ、ひどくなるし」
- 「うん……」
- 「あけしめくらい、するから」
- 「……ありがとう」
- その甲斐あってか、夕方には、すこし体調がよくなっていた。
- 今日は早く寝よう。
- 942 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:52:25 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月7日(土)
- 「──◯◯、◯◯!」
- ペラ紙を一枚ひらひらさせながら、うにゅほが自室へ戻ってきた。
- 「これみて」
- 「えーと、間取り図?」
- 「うん」
- 「どれどれ」
- 日記では触れていなかったが、来月から自宅をリフォームすることになっている。
- 工事期間は約二ヶ月。
- そのあいだ、家族が一時的に身を寄せる家を探していたのだった。
- 「……3LDKか」
- 「うん、さんえるでぃーけー」
- 「4LDKは見つからなかったって?」
- 「みつからなかったって!」
- うにゅほがニコニコと笑顔を浮かべている。
- 「3LDKってことは、だ」
- 「うん」
- 「両親が一部屋、弟が一部屋、残りの一部屋が俺たちってことになるな」
- 「うん」
- 「いまの部屋は、十畳あるな」
- 「うん」
- 「引越し先の部屋、六畳しかないんだけど」
- 「うん」
- 「……どう考えても狭いぞ」
- 「うん」
- 「いいのか」
- 「いい」
- 「そうか」
- 「うん」
- いいならいいんだ、うん。
- 「4LDKあれば、部屋を分けられたんだけどな……」
- 「──…………」
- ふと、うにゅほが目を伏せる。
- 「わたしといっしょ、いや?」
- 「嫌なわけないだろ」
- 「……うへー」
- うにゅほがてれりと笑う。
- 嫌ではない。
- 嫌ではないけれど、
- 「六畳間にふたり、か……」
- いろいろとつらい気がするのは、俺だけなのだろうなあ。
- 943 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:54:01 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月8日(日)
- 母の日である。
- 「──さて、どうすべきか」
- 「うん……」
- 忘れていたわけではない。
- その証拠に、カーネーションの一輪ならば、既に贈呈済みである。
- 俺たちの頭を悩ませているのは、母親の誕生日のことだ。
- 「5月26日……」
- 「すぐだね」
- 「母の日のぶんも合わせていいもの贈るって、啖呵切っちゃったもんなあ」
- 「うん……」
- 予算はべつにいい。
- 一、二万円くらいなら、喜んで出そう。
- 問題は、なにをプレゼントすればいいか、まったく思いつかないことである。
- 「……なにがいいと思う?」
- 「う、と……」
- 「思いつかない?」
- 「おもいつかない……」
- 「俺も」
- 完全にノープランである。
- 「おかあさんに、ほしいの、きく?」
- 「うーん……」
- 「きかない?」
- 「なにを贈るか悩むのも、プレゼントのうちだって思うんだよな」
- 「あ、わかる」
- 「明確に欲しいものがあるならまだしも、無理にひねり出してもらうのも、なんか違う気がしてさ」
- 「どうしようねえ……」
- 「ほんとな……」
- 高い酒を贈れば喜んでくれる父親が可愛く思えてきた。
- 「とりあえず、あと二週間ある」
- 「うん」
- 「××は、母親との何気ない会話から、欲しいものを割り出してくれ」
- 「はい!」
- 「俺はネットでよさそうなものを探してみるから」
- 「わかった」
- 「いぇー」
- 「いぇー」
- こつんと拳を合わせる。
- 同じ金額を出すのなら、良いプレゼントにしたいものだ。
- 944 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:56:32 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月9日(月)
- 「ぬあー」
- ぼふ。
- 帰宅して早々、羽毛布団に倒れ込む。
- ふしゅー……。
- 布団から空気が抜けていく感触が心地いい。
- 「新川の桜並木、綺麗だったなー」
- 「うん」
- 「散り際だったけど……」
- 「またらいねん」
- 「だな」
- 目蓋を閉じる。
- 自分の体が液体になって、とろけていくような錯覚。
- 「……◯◯、つかれた?」
- 「なんか、うん」
- 「ごめんなさい……」
- 「なんで謝る」
- 「さくら、みたいって、むりいったかなって」
- 「──…………」
- 上体を起こし、うにゅほの手を取る。
- 「頼むから、謝るなよ」
- 「うん……」
- 「謝られたら、楽しかったことが、楽しくなかったことになる」
- 「……?」
- 「××のために無理したわけじゃない」
- 「──…………」
- 「ちょっとくらい体調が悪くても、××と桜を見たかったんだよ。俺が、そうしたかったの」
- 「そか……」
- 「よくわからない?」
- 「はんぶんくらい、わかる」
- 「なら、これからは謝らないように」
- 「はい」
- 「そして、俺にマッサージを施すように」
- 「はい」
- やたらと疲れていたせいもあってか、わずか五分で眠りの世界に飛ばされる俺なのだった。
- 945 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:57:48 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月10日(火)
- 近所のスーパーマーケットに1000円カットの店がオープンしていたので、試しに髪を切ってもらうことにした。
- 結果、
- 「──…………」
- 「なんか、でこぼこしてるね」
- 「してるな」
- 「ひだりのほうが、みじかいね」
- 「短いな」
- 「こういうかみがた?」
- 「そう思う?」
- 「おもわない……」
- 苦笑を浮かべながら、うにゅほが首を横に振る。
- 「はあ……」
- 前髪を掻き上げる。
- なんだかガタガタしているような気がする。
- 「……1000円だから、こんなもんなのかなあ」
- 「でも、とこやのおじさんとこも、せんえんだよ」
- 「親戚価格だからな」
- 「おじさんとこのが、いいね」
- 「行くの面倒だからって、手近で済ませるなってことだな……」
- 「うん」
- しっとりとしたうにゅほの髪の毛を指のあいだに絡ませて、尋ねる。
- 「××は、しばらく伸ばすのか?」
- 「うん」
- 「ロングヘアの××、楽しみにしてるな」
- 「うん」
- 頭頂部に鼻先を埋めてシャンプーの香りを楽しんでいると、うにゅほが言った。
- 「つぎ、わたしね」
- 「次?」
- 「あたまかぐの」
- 「いいぞ」
- 互いの匂いを嗅ぎ合うのって、なんか犬っぽいよな。
- まあ、それはいい。
- さっさと床屋の伯父のところへ行って、髪を切り直してもらわなくては。
- 946 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 21:58:46 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月11日(水)
- 自宅をリフォームするということは、家財をすべて、いったん外に出す必要があるということだ。
- 「──…………」
- 「──……」
- 部屋の中央に立ち、ぐるりと本棚を見渡した。
- 「……これ、全部運び出すのか」
- 「なんさつあったっけ……」
- 「たぶんだけど、2,500冊くらい……」
- 「──…………」
- はあ。
- ふたり同時に溜め息をつく。
- 「……りふぉーむ、たいへんだねえ」
- 「本当だよ」
- できればしたくないけれど、家の寿命を延ばすためには仕方のないことだ。
- 「◯◯、りふぉーむ、はじめて?」
- 「初めて」
- 「いっしょ」
- うにゅほが、うへーと笑ってみせる。
- 「うち、ちくなんねん?」
- 「三十年くらいかな」
- 「へえー」
- 「お兄さんだな」
- 「うん」
- 「お姉さんかもな」
- 「どっち?」
- 「どっちがいい?」
- 「うと……」
- しばし思案し、答える。
- 「おねえさんが、いいな」
- 「お姉さん、いないもんな」
- 「うん」
- 「──…………」
- 「──……」
- 現実逃避をしてみたところで、本棚は、厳然としてそこにある。
- リフォームの開始まで三週間。
- 時間はあるのだから、ちまちま進めていこう。
- 947 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 22:00:44 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月12日(木)
- 「に!」
- 「──……?」
- 唐突に、うにゅほが妙な声を上げた。
- 「──…………」
- 「──……」
- 「にっ!」
- 「それ、しゃっくり?」
- 「たぶん……」
- 随分と可愛らしいしゃっくりである。
- 「××のしゃっくりって、初めて聞いたかも」
- 「ひさ、にっ、ひさしぶ、みッ」
- 「大変そうだな」
- 「うん……」
- 「息を止めたら、止まるらしい」
- 「──…………」
- 五秒後、
- 「……にっ」
- 「駄目か」
- 「がま、ひっ、がまん、できな、な、にっ」
- 「舌を引っ張る」
- 「れ」
- うにゅほがこちらに舌を伸ばす。
- 引っ張れ、ということらしい。
- 「失礼して」
- 親指と人差し指で、うにゅほの短い舌を挟む。
- ぬる。
- 「あっ」
- つるん。
- 「駄目だ、滑りがよくて掴めない」
- 「ひっしゅ、てぃっしゅ……」
- 唾液を拭い取り、
- 「れ」
- 再びこちらに舌を伸ばす。
- 「掴むぞ」
- 「ん」
- ぷにぷにの舌を指で挟み、軽く引っ張る。
- 「むい」
- 「痛くない?」
- こくこく。
- 「──…………」
- 「──……」
- 「これ、どれくらい引っ張ってればいいんだろうな」
- うにゅほが小首をかしげる。
- 「──…………」
- 「──……」
- 「なあ」
- 「?」
- 「しゃっくり、止まってない?」
- 「あっ」
- 「ていうか、けっこう前から止まってた気がするんだけど……」
- 「あー……」
- 引っ張り損である。
- いや、得かもしれない。
- いずれにしても、うにゅほのしゃっくりが止まってよかった。
- 948 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 22:02:38 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月13日(金)
- 「──んー……、はっ!」
- 座椅子の背もたれに体重を預け、精一杯に伸びをする。
- 「今週の仕事、終わり!」
- 「おつかれさまー」
- 「××も、手伝ってくれてありがとうな」
- 「うん」
- ひとりで作業しているとあちらこちらへ散らばってしまう作図用具を手渡してくれる助手の存在は、実はけっこうありがたかったりする。
- 「……あふ」
- 口元を隠し、ちいさくあくびをする。
- 「◯◯、ねむい?」
- 「ちょっとな」
- 「それなら、ひざ──」
- 自分のふとももを叩こうとして、うにゅほが不意に手を止める。
- 「あ、だめだ……」
- 「駄目か」
- 「うん……」
- 理由は、なんとなくわかる。
- 聞いてはいけないたぐいのことだ。
- 「じゃ、三十分くらいしたら起こしてくれるか」
- 「はい」
- 「気持ちよさそうに寝てても、叩き起こしてくれていいから」
- 「たたかないよ」
- 「なら、揺さぶって起こしてくれ」
- 「はい」
- ぼふ。
- マットレスにうつ伏せに倒れ込み、外した眼鏡をうにゅほに手渡す。
- 「──…………」
- 「──……」
- なでなで。
- 頭を撫でられる心地いい感覚と共に、意識が薄れていく。
- 三十分は、まさに一瞬だった。
- 疲れていたのだろう。
- 「おはよ」
- 「……おはよう」
- 目が覚めたとき、信頼できる誰かが傍にいるのは、素晴らしいことだと思った。
- 949 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 22:04:16 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月14日(土)
- 「◯◯、◯◯」
- 「んー?」
- 「いやほんとって」
- 「ん」
- 耳掛け型のイヤホンを外す。
- 「どうかした?」
- 「うへー……」
- 俺の右耳に手を添えて、うにゅほがそっと耳打ちをする。
- 「……さけるチーズ、なにあじすき?」
- 「!」
- ぞくっ。
- 柔らかな吐息と声に、全身の皮膚が軽く粟立つ。
- なるほど、今日はこういう遊びか。
- 「××、××」
- 「はい」
- うにゅほの左耳に手を添えて、そっと耳打ちを返す。
- 「……プレーン」
- 「くふ」
- 大した会話でもないのに、不思議と楽しい。
- 「……わたし、バターしょうゆ、すき」
- 「……俺も好き」
- 「……からいの、きらい」
- 「……スモークは?」
- 「……すき」
- 「──…………」
- 「──……」
- しばらく互いに耳打ちし合ったあと、不意にイタズラを仕掛けてみることにした。
- 「……ふー」
- うにゅほの耳に、優しく息を吹き掛けてみる。
- 「うひ」
- うにゅほが妙な声を上げた。
- 「◯◯、もっかいふーってして」
- 「ふー……」
- 「いしし」
- 「くすぐったい?」
- 「……ふー」
- うにゅほが俺の耳に息を吹き掛ける。
- 「おふ」
- ぞわっ!
- 再び、鳥肌が全身を覆う。
- 「……俺、耳弱いかもしれない」
- 「そなの?」
- 「わからないけど」
- 「ふー」
- 「のふ!」
- あ、弱いわ。
- 950 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 22:05:17 ID:dqhC3jCI0
- 2016年5月15日(日)
- 「あ、ありだ」
- 「アリ?」
- 「えい」
- ぷち。
- うにゅほが人差し指を強く床に押しつける。
- 「潰した?」
- 「はい」
- 「いや、見せなくていいけど」
- ティッシュをドローし、うにゅほに渡す。
- 「だいぶ春めいてきたし、窓から迷い込んできたのかな」
- 「そうかも──あっ!」
- ぷち。
- せっかく拭った指を、今度は冷蔵庫の扉に押しつける。
- 「またありだ」
- 「……二匹も?」
- 嫌な予感がする。
- 視線をデスクに戻すと、三匹目がそこにいた。
- 「うあ!」
- 慌ててつまみ取り、ティッシュにくるんでゴミ箱に捨てる。
- 「これ、どこから入り込んで来てるんだ……?」
- 窓はしっかりと閉じているし、見つかった場所に統一性がない。
- 「どっか、あなあいてるのかなあ」
- 「かもしれない」
- 「もうすぐりふぉーむするから、あな、なおるね」
- 「それはいいんだけどさ……」
- 「?」
- うにゅほが小首をかしげる。
- 「このまま大量に忍び込んできて、パソコンのなかに入られたら──」
- 「こわれる!」
- 「壊れたら?」
- 「おかねかかる!」
- うにゅほの顔色が蒼白になる。
- 「な、なんとかしないと……」
- 「ああ」
- ふたりでアリの侵入経路を捜索したのだが、一向に見つからない。
- 「ないねえ……」
- 「侵入口がわからないと、アリの巣コロリも置けないしなあ」
- 困った。
- ろくに食べ物のない部屋だから、さっさと見限ってくれればいいのだが。
- 346 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/05/16(月) 22:06:14 ID:dqhC3jCI0
- 以上、四年六ヶ月め 前半でした
- 引き続き、後半をお楽しみください
-
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- うにゅほとの生活を書き連ねた日記
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