2017年03月17日

1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



264 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:09:18 ID:28A1ghjw0

2017年3月1日(水)

「あ!」
仕事部屋にしている仏間で図面を引いていると、隣で暇そうにしていたうにゅほが唐突に声を上げた。
「えい」
なにやら手のひらを畳に押しつけている。
「どうかした?」
「むし」
「虫がいたのか」
「うん」
「潰したのか」
「うん」
「……どのくらいの虫?」
「ちいちゃいむし」
「そっか」
大きい虫、苦手だもんな。
俺もだけど。
「あー……」
自分の手のひらを覗き込んだうにゅほが、ティッシュで虫の残骸を拭い取る。
「虫が出てきたってことは、そろそろ春だな」
「そだねえ」
「あったかくなってきたもんなあ」
「うん」
「言うなれば、春告虫ってところかな」
「はるつげむし?」
「春を告げる虫。春告鳥はウグイスで、春告草は梅。春告魚は──なんだったか」
「はるつげむし……」
「まあ、潰しちゃったけどな」
「つぶさないほう、よかったかなあ」
「いや、潰してくれ」
「いいの?」
「春を告げようが何しようが、虫は虫です」
「はい」
「見敵必殺!」
「けんてきひっさつ!」
「私は仕事に戻るので、××隊員は他に虫がいないかチェックしてくれたまえ」
「はい!」
今年は自室にエアコンがあるので、窓を開けずに済む。
害虫を見ずに済めば良いのだが。







   

265 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:10:52 ID:28A1ghjw0

2017年3月2日(木)

ネット通販で、革製のブーツを購入した。
購入したはいいのだが、
「……めっちゃきつい」
「きついの……」
「纏足になりそう」
爪先に血が流れていないのではないかと心配になるくらい、きつい。
「サイズ、まちがった?」
「いや、間違ってはいないんだよ」
「?」
「27.0-27.5cmってサイズを買ったんだけど、その次のサイズが28.0-28.5cmだったんだ」
「あいだ、ないの?」
「ない」
「おおきいくつ、くつずれなるしねえ」
「そうなんだよ」
「せっかくかったのにねえ……」
うにゅほが顔を曇らせる。
けっこうしたからなあ。
「まあ、でも、さして問題はない」
「……?」
「靴に限らず、革製品は、伸びる」
「そなの?」
「めっちゃ伸びる」
「めっちゃ……」
「サイズのあいだがないのも、伸びるのを見越してのことだろうな」
「そうなんだ」
たぶん。
「このまま外を歩くのはちょっとつらいから、しばらく部屋で慣らそう」
「へやではくの?」
「そう。革が伸びてきたら、靴下を重ねて履いて、更に伸ばす」
「おー」
「いつの間にか、サイズがピッタリになってるって寸法よ」
「なるかな」
「ならないと、困る」
「こまるねえ……」
けっこうしたもんなあ。
「大丈夫、大丈夫」
「うん」
「……大丈夫と信じ続けよう」
「うん……」
あまりのきつさにちょっぴり不安がよぎる俺だった。







266 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:12:07 ID:28A1ghjw0

2017年3月3日(金)

「──これでよし、と」
L字デスクの上に、陶器でできた熊の雛人形を飾る。
五年前、百円ショップで購入したものだ。
「まあ、あんまりよくはないけど……」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いや、ほら、首だけになっちゃってるからさ」
よりにもよって、お雛さまの方が、である。
数ヶ月前、床に落として胴体を割ってしまったのだった。
「おだいりさま、◯◯」
「ああ」
「おひなさま、わたし」
「そうだな」
「わたし、せーちいさいから、これでだいじょぶ」
「……でも、首だけだぞ?」
「だいじょぶ!」
ああ、気を遣わせてしまっている。
「本当に、ちゃんとしたお雛さまいらないの?」
「うん」
「父さんと母さんに言えば、買ってくれると思うけど……」
「おとうさんとおかあさん、かってくれるっていったけど、いらないっていったの」
「そうなんだ」
家族なんだから、遠慮しなくていいのに。
内心が顔に表れたのか、うにゅほが言い訳するように口を開いた。
「だって、おひなさま、あんましかわいくない……」
「まあ、そういうものじゃないしなあ」
「どういうもの?」
「……どういうものなんだろう」
改めて尋ねられると、困る。
「だからね、よくわかんないから、そんなにいらない」
「あー……」
納得。
遠慮していたのではなく、本当に欲しくなかったらしい。
「……不二家でケーキでも買ってくる?」
「うん!」
雛人形がいらないのなら、今日はうんと甘やかしてやろう。
いつもと変わらないような気もするが、それはそれで気のせいということにする。
 






267 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:13:13 ID:28A1ghjw0

2017年3月4日(土)

「──ふー……」
ペダルを漕いでいた足を止め、首に掛けたタオルで汗を拭く。
TSUTAYAで借りてきた映画を観ながらエアロバイクを漕いでいたのだった。
「……疲れたあ」
「とうぜんとおもう……」
うにゅほが、呆れと心配とをないまぜにした表情を浮かべる。
「……まあ、俺も、二本連続で漕ぐのはやり過ぎかなと思った」
興が乗ってしまったのだ。
「どのくらいこいだの?」
「えーと」
モード切替ボタンを数回押し、走行距離を確認する。
「……70km」
「ななじゅっきろ……」
我ながらアホである。
「ななじゅっきろって、どこまでいけるの?」
「何年か前、バイクで積丹行ったろ」※1
「いった」
「お昼に海鮮丼食べたろ」
「おいしかったねえ」
「あの寿司屋くらい」
「すごい……」
バイクで一時間以上かかる距離を走破したのだから、相当なものだ。
「おかげで、ブーツもだいぶ足に馴染んだみたい」
「ほんと?」
サドルに腰掛けたまま、足を組む。
「ほら──って、見てもわからないか」
革を伸ばすため、ブーツを履いたまま漕いでいたのである。
「これなら、外歩いても問題なさそう」
「よかったー……」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「でも、こんどから、ちゃんとしちゃくしてかおうね」
「はい……」
今回は本革製だからなんとかなったが、普通の靴はそれほどサイズが変わらない。
やはり、靴は店頭で買うのがいちばんである。
「××の春靴も、そろそろ買いに行こうか」
「うん!」
雪解けが近い。
新しい靴で出歩くのは、とても気分がいいものだ。

※1 2013年9月23日(月)参照







268 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:14:41 ID:28A1ghjw0

2017年3月5日(日)

「ケツが痛い」
「けつが……」
「……ケツはよくない、おしりにしよう」
「おしり」
「よろしい」
「はい」
「おしり、いたいの?」
「痛い」
「ぢ?」
「そっちが痛かったら、××に内緒で肛門科に行きます」
「ないしょにしなくていいのに」
「恥ずかしいの」
「そか……」
「そっちじゃなくて、尻っぺたのほうが痛いんです」
「えあろばいく、のりすぎとおもう」
「まあ、そうなんだけど」
今日も既に30kmほど漕いでいる。
「あんまし疲れないから、ずっと漕いでいられるんだよなあ」
「すごい……」
「××がすぐダウンしたのって、負荷が大きかったからだと思うぞ」
「そなの?」
「最初は7にしてたけど、いまは5だしな」
高負荷短時間より、低負荷長時間運動のほうが良いと判断したのだ。
「よんにしたら、のれるかな」
「やってみるか?」
「……こんど」
苦手意識がついてしまったらしい。
「それはいいとして、ケツが痛い」
「けつが」
「おしりな」
「おしり」
「皮膚が痛いわけじゃないから、軟膏も意味ないしなあ」
「まっさーじする?」
うにゅほが両手をわきわきさせる。
「頼もうかな……」
「はーい」
思うさま尻を揉まれたら、幾分かは楽になった気がする。
サドルにクッションでも乗せようかな。







269 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:16:33 ID:28A1ghjw0

2017年3月6日(月)

「あれ……」
「ん?」
「きょう、えあろばいくしないの?」
「今日はおやすみ」
「おしりいたいから?」
「いや、足の筋肉がパンパンでさ」
「のりすぎとおもう……」
「俺もそう思う」
「だから、おやすみ?」
「しっかり休養を取らないと筋肉がつかないって聞いたことあるし」
「そなんだ」
「そこらへんは諸説あるみたいだけどな」
「あし、さわっていい?」
「いいよ」
うにゅほの小さな手のひらが、ふくらはぎのあたりを這い回る。
「うひ」
「あし、ふといねえ」
「太いぞ」
「あし、ぱんぱんだねえ」
「パンパンだぞ」
「もみもみしていい?」
「いいぞ」
もみもみ。
「いたい?」
「そんなには」
「きもちい?」
「わりと」
「じゃあ、もっともみもみするね」
「お願いします」
もみもみ。
「あ、左足も」
「はーい」
もみもみ。
「あしのうら、いいんだって」
「足裏マッサージか」
「うん」
「お願いしていいですか」
「でも、いたいかも」
「大丈夫」
「やってみるね」
ぐい、ぐい。
「いたい?」
「いや、まったく」
「きもちいい?」
「うん、気持ちいい」
「そか」
そんな具合に、ひととおりマッサージをしてもらった。
疲れが取れた気がした。







270 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:17:59 ID:28A1ghjw0

2017年3月7日(火)

「やる気スイッチが欲しい」
「やるきすいっち?」
「やる気スイッチ」
「やるきすいっちって、なに?」
「押すとやる気が出る」
「すごい」
「凄いんだ」
「どんなしくみ?」
「いや、知らんけど」
「いくら?」
「……売ってないんです」
「そうなんだ」
「そもそも、実在しないものだから」
「ないのにほしいの?」
「ないから欲しいの」
「あー」
「あったら連打するのになあ」
「いま、やるきないの?」
「あんまりない」
「えあろばいくしてるのに」
「やるべきことから逃げるために漕いでるんです」
「そうなんだ……」
「エアロバイクだから、漕いでも漕いでも逃げられないんですけどね」
「──…………」
うにゅほが座椅子から腰を上げる。
そして、俺の背後ににじり寄り、腰のあたりを指で押した。
「ぴ」
「……?」
「やるきすいっち、おした」
「おー」
「やるき、でた?」
「出ないなあ」
「でないかー……」
「そこは、やる気スイッチではなく、よる気スイッチでした」
「よるきって、なに?」
「知らんけど」
「しらんの……」
「やる気スイッチは別の場所です」
「!」
「さて、どこでしょう」
「どこかなー」
うにゅほが肩甲骨のあたりを押す。
「ぴ」
「そこは、ぬる気スイッチですね」
「ぴ」
「そこは、ねる気スイッチです」
「ねるの?」
「ちょっと眠くなりました」
「ぴ」
「そこは、ある気スイッチです」
「あるくの?」
「歩きます」
「どこいくの?」
「トイレです」
トイレから帰ってきてからも、いろいろなスイッチを押しまくられた。
やる気スイッチは見つからなかったけれど、楽しかったので良しとしよう。







271 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:19:46 ID:28A1ghjw0

2017年3月8日(水)

「──…………」
上体を起こし、前髪を掻き上げる。
夢を見た。
内容は記さない。
日記を読み返したとき、思い出したくないからだ。
「あ、おきた」
「──…………」
「……やなゆめみた?」
「見ました」
「そか……」
相当に険しい顔をしていたらしい。
「──うし!」
ぱん!
両手で自分の頬を張り、立ち上がる。
「顔洗ってくる!」
「うん」
冷たい水で顔を雪ぎ、自室に戻る。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「どんなゆめ、みたの?」
「……秘密」
「そか」
口にしたくもない。
「××は、嫌な夢って覚えてる?」
「うと」
うにゅほがしばし考え込む。
「いやなゆめ……」
「たとえば、俺が死ぬ夢とか」
「やだ」
険しい顔で首を振る。
俺も、こんな表情を浮かべていたのだろう。
「……嫌な夢なんて、さっさと忘れるに限る」
「うん」
「というわけで、朝ごはんだ」
「はーい」
今日の朝ごはんは、チーズオムレツだった。
美味しかった。







272 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:21:04 ID:28A1ghjw0

2017年3月9日(木)

「あ」
靴下を履こうとして、気がついた。
「穴空いてる」
「どこ?」
「ほら、親指のとこ」
冬用の厚手の靴下に、直径1cmほどの小さな穴が空いている。
「ほんとだ……」
「何年くらい履いたっけ」
「にねんくらい?」
「二年も履けば十分でしょう」
「あな、とじないの?」
「うーん……」
「こないだ、べつのくつしたのあな、おさいほうしてた」
「あれは、引っ掛けて空けた穴だからなあ」
「ちがうの?」
「今回は、経年劣化で薄くなって空いた穴だから、根治が難しい」
「こんち」
「ほら、見てみな」
靴下を手に履かせ、穴のあたりに指を添える。
「穴の周辺の生地が薄くなってるの、わかるか?」
「わかる」
「薄くなっているということは、そこに重点的に力が加わっているということ」
「うん」
「穴を塞ぐことはできるけど、またすぐに空く可能性が高い」
「そか……」
「この場合、有効なのは、裏から布を当てることかな」
「それ、しないの?」
「しません」
「しないの……」
「履き心地が悪くなるし、そもそもそこまでするような品じゃない」
靴下なんて、所詮は消耗品である。
うにゅほが手編みした靴下とかなら繕ってでも大事に使うけど、単なる既製品だし。
「あと、まったく同じデザインの靴下、もう一組あるし……」
「そだねえ」
そちらはほぼ未使用なので、あと二年は使えるだろう。
次に靴下を買うのは、いったいいつになることやら。







273 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:22:03 ID:28A1ghjw0

2017年3月10日(金)

「──…………」
右の奥歯の付け根を舌でなぞる。
気になる。
とても気になる。
「◯◯、へんなかおしてる」
「してないよ」
「してる」
「……奥歯がな」
「いたいの?」
「痛くはない」
「ほんと?」
「痛くはないが、気になるんだ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「舌で触れると、こう、ざらついてるというか」
「うん」
「こんなこと言うとあれなんだけど」
「うん?」
「有り体に言って、虫歯になってる気がするというか……」
「はいしゃいこ」
「待て、待ってくれ」
「いかないの?」
「行くけど待ってくれ」
「まつけど……」
「ほら、気のせいかもしれないし」
「はーみして」
「奥歯の裏側だから、さすがに見えないよ」
「そか……」
「そうそう」
「じゃあ、つめたいの、しみる?」
「──…………」
「しみる?」
「もともと知覚過敏ですし……」
「はいしゃいこ」
「……歯医者かあ」
「はやくいかないと、むしばひどくなるよ」
「それは、そうなんだけど……」
憂鬱この上ない。
「……今日はもう遅いから、明日にでも予約の電話をします」
「はい」
歯医者かあ……。
嫌だなあ……。







274 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:22:51 ID:28A1ghjw0

2017年3月11日(土)

ばたん。
両親と弟の姿が、玄関の向こうに消える。
「くくく……」
「?」
隣のうにゅほが首をかしげる。
「自由だ!」
「わ!」
うにゅほを肩に担ぎ、階段を駆け上がる。
「なにするの?」
「家族がいるときにはできないことに決まってる」
「あー」
うんうんと頷く気配。
「さ、準備準備」
自室に戻り、うにゅほを下ろす。
そして、PC本体背面の配線を点検する。
「よし、繋いだ!」
「つかうの、ひさしぶりだねえ」
「父さんがいると、うるさいって言われるからな……」
「うん」
「聞きたい曲あるか?」
「スピッツ!」
「了解」
家族がいるときには、できないこと。
それは、サブウーファー付きのサラウンドスピーカーを使って、大音量で音楽を聴くことである。
マイミュージックからwavファイルを開くと、ウーファーを載せているデスクがビリビリと震え始めた。
「はくりょくあるねえ……」
「ほんとな」
迫力があり過ぎるせいで、普段は使えないのだけれど。
「──…………」
「──……」
スピッツを二、三曲聴いたあたりで、再生ソフトをそっと閉じる。
「もういいかな……」
「そう?」
「わりと満足」
「そか」
ロジクール製の2.1chスピーカー、宝の持ち腐れのような気がしなくもない。







275 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:24:32 ID:28A1ghjw0

2017年3月12日(日)

「あー……」
チェアの背もたれに体重を預け、天井を振り仰ぐ。
「だらだらしてると、日曜ってすぐに過ぎてくな……」
「そなんだ」
「……××、休日ないもんなあ」
家事に休みはない。
これは、大変なことだ。
「家族で相談して、今度、××にお休みを作ろうか」
「おやすみ?」
「そう」
「でも、ごはんつくらないと」
「母さんにまかせよう」
「おさらあらう」
「それくらい、俺がするよ」
「せんたく」
「次の日にまとめてやればいい」
「そうじ……」
「一日くらい、しなくたって大丈夫」
「そかな」
「そんで、一緒にだらだらしよう」
「──…………」
うにゅほが、困ったように笑みを浮かべる。
長い付き合いだ。
その表情が何を意味しているかくらい、わかる。
「あんまり気が乗らない?」
「うん……」
「そっか」
「ごめんなさい……」
「謝らない、謝らない」
うにゅほの頭に手を伸ばし、優しく撫でる。
「家事をしてたほうが、落ち着く?」
「わたしのしごと、だから」
そう告げるうにゅほの瞳には、矜持が宿っていた。
「……いらんこと言っちゃったな」
「ううん」
ふるふると首を横に振る。
「◯◯とだらだらするの、すき」
「そうかそうか」
「ごはんのじかんまで、だらだらしよ」
うにゅほが、ぽんぽんと自分の膝を叩く。
「どうぞ」
「では遠慮なく」
うにゅほに膝枕をしてもらいながら、全力でだらだらした。
有意義な一日だった。







276 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:27:31 ID:28A1ghjw0

2017年3月13日(月)

「……ない」
DACアンプをどかし、キーボードを持ち上げ、液晶タブレットを裏返す。
「ないなあ……」
「なにさがしてるの?」
「毛抜き」
「けぬき……」
「××、知らない?」
「しらない」
ふるふると首を横に振ったうにゅほが、デスクの下に這い入る。
「したにおちてないかな」
「なるほど」
「ちょっとまってね」
ごそごそ。
「ありそう?」
「ない……」
「落としたわけでもないのか」
どこへ行ったのやら。
「さいごにみたの、いつ?」
「いつだっけ……」
「さいごにつかったのは?」
「最近、使ってなかったと思う」
「そか」
「ごめん、なんのヒントにもならなかったな」
「ひきだしは?」
「引き出しは、最初に探したんだ」
「そか……」
「まあ、毛抜きくらい、買い直せばいいんだけどさ」
百円ショップで買ったやつだし。
「でも、きになるねえ」
「あるとしたら、デスク周りのはずなんだけど……」
冷蔵庫を開こうと、チェアから腰を上げる。

ちゃりん。

「なんかおちた」
そう言ってうにゅほが拾い上げたものは、探し求めていた毛抜きだった。
服に挟まっていたらしい。
「──…………」
「──……」
「……灯台もと暗し」
「うん」
間抜けなオチがついたが、見つかったことは素直に喜ばしい。
気になっていた指毛をさっそく根絶する俺だった。
 







277 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:28:45 ID:28A1ghjw0

2017年3月14日(火)

ホワイトデーである。
「××、これ」
「?」
「ホワイトデーのお返し。去年と同じ、ちょっと高いマカロン」
「!」
うにゅほが目をぱちくりさせる。
忘れていたらしい。
「ありがと!」
「今年のバレンタイン、すごく凝ってたからさ。迷ったんだけど──」
ポケットから、三枚の紙切れを取り出す。
「これもあげよう」
「……?」
うにゅほが、受け取った紙切れを読み上げる。
「なんでもいうこときくけん」
「なんでも言うこと聞くぞ」
「おー……」
「ただし、その場ですぐにできることに限ります」
「そのばですぐ?」
「長生きしてね、とかは駄目ってこと」
「そか……」
「あと、能力的に難しいことも拒否します」
「たとえば?」
「フルマラソンしてきて、とか」
「いわないよー」
「たとえばね、たとえば」
「うん」
「それ以外のことなら、たいてい聞きます」
「いちまいつかっていい?」
「お、いいぞ」
「うへー……」
はにかみながら、うにゅほが口を開く。
「ひざ、すわりたいな」
「──…………」
俺は、大きくかぶりを振った。
「もったいない!」
「だめ?」
「駄目じゃない、駄目じゃないけど、つーかそれ券いらないからな!」
「わ」
うにゅほの手を引き、膝の上に座らせる。
「券を使うのは、もっと特別なことにしなさい」
「とくべつなこと……」
「そう、特別なこと」
「──…………」
考え込んでしまった。
「まあ、期限はないから、ゆっくり考えたまえ」
「うん」
たまにはわがままを言ってほしい。
そう考えて作った券だ。
どんな使われ方をするか、楽しみにしておこう。
 







278 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:30:32 ID:28A1ghjw0

2017年3月15日(水)

「はー、さむさむ……」
摩擦熱で暖を取るために、両手をすりすりと擦り合わせる。
「三月も半ばなのに、まだ寒い」
「そだねえ……」
「膝カモン」
「はーい」
うにゅほを膝の上に乗せ、そのほっぺたを両手で挟む。
「ふめたい」
「冷たいんだよ」
むにむに。
「うぶぶ」
「××のほっぺたも冷たいなあ」
「うん」
「××の手は?」
「はい」
小さなうにゅほの手のひらが、さらに上から俺の手に添えられる。
「冷たい」
「つめたいの」
うにゅほには冷え性の気がある。
「その様子だと、爪先はもっと冷たそうだなあ」
「うん……」
「靴下履かないから」
「う」
「まあ、俺も履いてないけどさ」
どうにも靴下の嫌いなふたりである。
「ストーブをつけよう」
「うん」
チェアを滑らせ、ストーブの前に移動する。
「ぴ」
うにゅほが爪先で電源を入れる。
見事な連携プレイである。
「はやく春が来ないかなあ……」
「すぐくるよ」
「明日?」
「そんなにすぐじゃないかも……」
長い冬にはもう飽きた。
雪解けを願う。
 







279 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/03/17(金) 11:32:10 ID:28A1ghjw0

以上、五年四ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 


       


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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2017年03月17日 16:44  ID:YUbp8EAx0
    まとめおつー


  • 2  Name  名無しさん  2017年03月17日 17:02  ID:wSSC72X.0
    恒例


  • 3  Name  名無しさん  2017年03月17日 17:06  ID:34PrrF8B0
    ↓以下、性懲りもなく煽る暇人の戯言


  • 4  Name  名無しさん  2017年03月17日 17:56  ID:Sh4QW3260
    5 日記を5年間以上続けられるのは凄いと思った(小並感)


  • 5  Name  名無しさん  2017年03月17日 17:59  ID:nsFXEjXh0
    これ面白い?
    面白いならイッキ見するわ


  • 6  Name  名無しさん  2017年03月17日 18:34  ID:VtkQQvG70
    こんな純粋な人が存在するならマジで会いたいわそして嫁にしたい


  • 7  Name  名無しさん  2017年03月17日 18:35  ID:S.LRmFi90
    人間も動物なのだから基本的にはだらけていたい
    必要なく動き回ってエネルギーを浪費する生き物は
    自然界に適さないからそれが自然ではないだろうか
    まあイメージだけど

    おせばやる気がでるスイッチはなくとも
    集中力やランナーズハイなど
    動き出したあとにそれを持続たせるための機能はある
    やり始めればやる気がでるというやつだね


  • 8  Name  名無しさん  2017年03月17日 18:45  ID:YUbp8EAx0
    >5
    面白いけどめっちゃ長いぞ
    俺は途中で挫折した


  • 9  Name  名無しさん  2017年03月17日 20:42  ID:bLNIgULk0
    これ見て今年から俺も想像日記始めたけどこの人の文章やっぱすごいなって思う


  • 10  Name  名無しさん  2017年03月18日 00:00  ID:G06DW8tI0
    ほんとこれ楽しみにしてるんだけど俺だけじゃないよな?


  • 11  Name  名無しさん  2017年03月18日 00:05  ID:yPq45DNO0
    うにゅおじすき


  • 12  Name  名無しさん  2017年03月18日 00:05  ID:Z65QL2HO0
    特定のキャラに対してこれだけ創作を持続させてるのは尊敬する
    本当に空好きなんだろうね


  • 13  Name  名無しさん  2017年03月18日 00:20  ID:oeJ.zF5a0
    人間も動物なのだから基本的にはだらけていたい
    必要なく動き回ってエネルギーを浪費する生き物は
    自然界に適さないからそれが自然ではないだろうか
    まあイメージだけど

    おせばやる気がでるスイッチはなくとも
    集中力やランナーズハイなど
    動き出したあとにそれを持続たせるための機能はある
    やり始めればやる気がでるというやつだね

    ↑これ感動


  • 14  Name  名無しさん  2017年03月18日 00:23  ID:yPq45DNO0
    スマホアプリにしたら受けるかも
    日記を開くとショート劇場がみられる
    演出は紙芝居ギャルゲで十分
    話は5年分あるから新しく書かなくていい


  • 15  Name  名無しさん  2017年03月19日 00:51  ID:JJ9VTMyA0
    一人のキャラで続けられるのが凄い
    俺なら五年のうちに5,6回浮気してる


  • 16  Name  名無しさん  2017年03月21日 02:19  ID:hip4mgSa0
    ※6
    どっちとかな…


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