2017年07月17日

1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
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393 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:11:36 ID:eJXmlFGk0

2017年7月1日(土)

不穏な音と共にシーリングライトが点かなくなったのが、昨夜のことである。
丸型LED灯の口径を確認するためにカバーを外したところ、あることに気がついた。
「ネジが打ってある」
「ねじ」
「これ、そもそも交換できないのでは……」
「そうなのかな」
「型番で調べてみよう」
「うん」
「読み上げるから、メモってくれるか」
「かくのもってくるね」
型番で検索したところ、NECのLIFELED'Sというシリーズであることがわかった。
「あー……」
「わかった?」
「わかった。これ、LEDだけ交換できないやつだ」
「まるごと?」
「まるごと」
「おかねかかるねえ……」
「このシーリングライト、いくらだったっけ」
それがわかれば、予算を組める。
「ぱそこん、でない?」
「生産終了してるから──いや、検索ワード工夫すればわかるか」
再度検索する。
「7,690円だって」
「けっこうするねえ」
「まあ、必要経費だ。割り切ろう」
「うん」
「買いに行くとしたら、ヨドバシだけど──」
窓の外を見やる。
スコールじみた大雨が世界を煙らせていた。
「……明日にしようか」
「うん……」
「それにしても、今日は蒸すなあ」
甚平の上衣をパタパタさせる。
「エアコン、つけよ」
「……いいのかな」
「もう、しちがつだよ?」
「言われてみれば」
7月は、夏だ。
我慢する必要はあるまい。
エアコンを26℃に設定して、始終だらだらと過ごした。
涼しかった。
文明の利器、ばんざい。







   

394 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:13:22 ID:eJXmlFGk0

2017年7月2日(日)

壊れたシーリングライトを買い換えるため、ヨドバシカメラへと赴いた。
「8畳、10畳、12畳──寝室だから6畳あればいいんだけど」
「ろくじょう、あんましないね」
あるにはあるのだが、価格帯が8畳のものと大差ない。
「素直に6畳のを買うと、損した気分になりそう……」
「わかる」
うにゅほがうんうんと頷く。
「8畳の部屋に6畳のライトだと暗いかもしれないけど、6畳の部屋に8畳のライトでも明るすぎるってことはないだろう」
「じゅうじょうは?」
「さすがに落ち着かないかも」
価格帯も二千円くらい変わるし。
「じゃあ、はちじょうで、やすいの」
「高くなければいいよ」
「はちじょうで、たかくないの」
「あとはデザインかな」
「はちじょうで、たかくなくて、かっこいいの」
「そうなりますね」
「はい」
照明コーナーを、ぐるりと一周する。
「あ」
すると、うにゅほが不意に足を止めた。
「これ、かわいいねえ」
「これか」
「うん」
うにゅほが指差したのは、カバーに蔓のイラストが描かれたものだった。
「じゃあ、これにしようか」
「いいの?」
「気に入ったんだろ」
「うん……」
「なら、決まりだ」
「……うへー」
うにゅほが俺の腕を取る。
「寝る部屋にはちょっともったいないから、こっちを書斎に取り付けよう」
「ねるへやは?」
「書斎のをお下がりにする」
「なるほどー」
こうして、俺たちの部屋は、夜の明かりを取り戻したのだった。
あと、ちょっとおしゃれになった。







395 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:14:46 ID:eJXmlFGk0

2017年7月3日(月)

「──……うー」
あまりの不快さに目を覚ます。
首筋に手をやると、指の付け根まで寝汗で濡れた。
ベッドを下り、書斎へ向かう。
「あ、おきた」
「起きた」
「おはようございます」
「おはよう……」
冷蔵庫を開けて、1.5Lのペプシをラッパ飲みする。
げっぷをひとつこぼし、うにゅほに尋ねた。
「……なんか、すげー暑くない?」
「そかな」
本棚の温湿度計を覗き込む。
26.5℃、56%。
「そうでもない……」
「うん」
「えらい寝汗かいたんだけど」
「ほんとだ……」
うにゅほが箪笥を開き、タオルをこちらへ差し出した。
「ふいて」
「ありがとう」
「◯◯、あせ、すごいねえ……」
「……暑くも蒸してもいないのに、なんでこんなに汗まみれなんだろう」
「やなゆめみた?」
その瞬間、記憶の蓋が開いた。
「──見た、見ました」
「どんなゆめ?」
「……××には言ってなかったけど、昨夜、玄関でゲジを見たんだよ」
「!」
うにゅほの表情が強張る。
「外に逃がしたし、侵入口に虫コナーズ噴霧したから大丈夫」
「そか……」
「それとは別に、寝る前に、毛虫の画像を見てしまってな」
「──…………」
「どんな夢か、聞きたい?」
「いいです……」
賢明である。
「今年はエアコンあるし、なるべく窓は開けないようにしような」
「うん」
望まない遭遇は、互いにとって損失だ。
どうか入ってきませんように。
 






396 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:15:47 ID:eJXmlFGk0

2017年7月4日(火)

近所のセイコーマートでレジを待っていたときのことである。
「──その、すみません」
唐突に、人好きのする笑顔を浮かべた老爺に声を掛けられた。
「え、あ、俺ですか?」
老爺がこくりと頷く。
知らない人に話し掛けられるのなんて、何年ぶりだろう。
思わず声が上ずってしまった。
「市役所へは、どちらへ行けばいいでしょう」
「──……」
「──…………」
うにゅほと顔を見合わせる。
老爺の年齢は、見るからに八十を越えており、もしかすると九十に届いているかもしれない。
「あの、歩いて行かれるんですか?」
「はい、歩いて行くのです」
「歩くには、少々遠いと思いますが……」
「大丈夫です」
老爺が、その場で軽く足踏みしてみせる。
健脚である。
「……◯◯、しやくしょまで、どのくらい?」
「5kmくらいかなあ」
「5kmなら、ほら」
老爺が再び足踏みをする。
やはり、健脚である。
「では、まず、ここを出たら左へ行って──」
市役所までの道のりは、すこし遠いが単純だ。
説明には一分と掛からない。
「とまあ、そうすれば右手に見えてくるはずなので」
「ありがとうございます」
老爺が、深々と頭を下げる。
「あ、いえいえ」
「いえいえー」
俺とうにゅほも、頭を下げ返す。
老爺の背中を見送ったあと、レジを済ませて店を出た。
「おじいさん、しやくしょ、つけるかなあ」
「元気そうな人だったし、大丈夫だろ」
「そだね」
なんとなく心温まる出来事だった。







397 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:16:54 ID:eJXmlFGk0

2017年7月5日(水)

Amazonから、新しい甚平が届いた。
「Lサイズが俺で、××はMサイズ。Sサイズなかったから、そこは我慢な」
「うん」
うにゅほが、レディース用の甚平は嫌だと言うから仕方ない。
デザインが気に入らなかったらしい。
「生地が薄くて、涼しそうだな」
「なつのかんじ」
「透けないとは思うけど、シャツは着ないとダメだぞ」
「わかった!」
ハサミでタグを切ったあと、うにゅほが遠慮がちに言った。
「きてみたいな……」
「是非是非着てくださいな」
「◯◯も……」
「俺も?」
「うん」
まあ、いいか。
「××は、書斎で着替えな。俺は寝室で着替えるから」
「うん!」
数分後、
「じゃーん」
大きめの甚平を着こなしたうにゅほが、その場でくるりと回ってみせた。
「うん、似合う似合う」
「うへー……」
「俺は?」
「にあう!」
「そっか、よかった」
「いえー」
「いえー」
うにゅほとハイタッチを交わす。
「──まあ、それはそれとして、だ」
「うん」
甚平の袖口を鼻先に寄せる。
「……なんか、酸っぱい匂いがしませんか?」
「します……」
「これ、いったん洗濯しないとだな」
「そだね」
新しい服は、洗ってから身に着けたほうがいいらしい。
次から気をつけましょう。







398 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:18:02 ID:eJXmlFGk0

2017年7月6日(木)

「──……あふ」
午前十時ごろ起床し、あくびを噛み殺しながら書斎へと向かう。
「あ、おはよー」
「おは──、よ、う……」
思わず絶句する。
「××さん」
「はい」
「なんか、髪型変わってません?」
「うん」
具体的に言うなら、毛先にウェーブが掛かっている。
「びんぼうパーマ、してみたの」
「貧乏パーマ」
はて。
聞いたことがあるような、ないような。
「うーとね、みつあみおさげにしてね、そのままねるの」
「あー」
思い出した。
「たしか、髪が傷みそうだからしないって言ってなかったっけ」
「うん」
「でも、してみたんだ」
「うん」
うにゅほが、上目遣いで俺に尋ねる。
「……その、にあう?」
「──…………」
「◯◯?」
その仕草に、しばし胸中で悶え苦しんだのち、答える。
「……似合う。お嬢さまっぽい」
「おじょうさま……」
ほっぺたを両手で包み、うにゅほが照れる。
可愛いなあ。
「××、お嬢さまっぽいこと言って」
「え!」
「ほらほら」
「ぱ、パンがなければ……」
お嬢さまではなく王妃さまではないかと思ったが、そのまま泳がせてみる。
「……その、つくればいいじゃない?」
「──…………」
「うへー……」
あ、笑って誤魔化した。
許す。
うにゅほの髪型がすこし変わっただけで、なんとなくそわそわしてしまう俺だった。







399 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:19:21 ID:eJXmlFGk0

2017年7月7日(金)

本日、札幌管区気象台は、最高気温33.2℃を記録した。
文句なしの真夏日である。
しかし、
「涼しいなあ……」
「ふふふぃー……」
エアコンの真下に陣取り、ふたりでごろごろする。
「文明の利器、万々歳だなあ……」
「うん……」
ごろんごろん。
設定温度は、26℃。
暑くなく、寒くもない、ちょうどいい室温だ。
「外は30℃超えてるってさ」
「おとうさん、だいじょぶかなあ……」
「いまごろカーエアコンガンガンにかけてガリガリ君でも齧ってるよ」
「そかな」
無理をして熱中症になるような性格ではない。
「といれー」
「行ってら」
不要な宣言と共に、うにゅほが自室を後にする。
しばらくして、
「……はちー……」
額に汗を光らせながら、うにゅほが戻ってきた。
「トイレ、そんなに暑い?」
「うん、あつい……」
「へえー」
興味が湧いた。
尿意はさほどないが、行けば行ったで多少は出るだろう。
「俺も、トイレ行ってくるな」
「うん」
自室を出た瞬間、
──むわっ!
と、熱気が体の前面を襲う。
「──…………」
ばたん。
「あれ、といれいかないの?」
「後にする」
「?」
日が傾いてから、我慢しきれずトイレへと向かった。
死ぬほど蒸し暑かった。
いくら自室が快適でも、夏から逃げ切れるわけではないのだ。
 







400 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:20:38 ID:eJXmlFGk0

2017年7月8日(土)

「──……ん」
目を覚ましたあと、しばしベッドの上でまどろんでいると、
「うー……」
書斎のほうから小さな唸り声が聞こえてきた。
「……どしたー」
ベッドを下り、声の主の元へと向かう。
「かゆい……」
すると、うにゅほが自分の二の腕をつねっている光景と出くわした。
「蚊?」
「たぶん……」
「窓、開けてないのになあ」
「……うー」
掻かないのは偉いが、見ているこちらまで辛くなってくる。
「ウナコーワ、塗った?」
「ぬった……」
「もう一度塗ろうか」
「ぬって……」
うにゅほが二の腕をこちらに差し出した。
「ウナコーワは?」
「はい」
ウナコーワクールの容器を受け取り、蓋を外す。
「もろこしヘッド!」
「はやくー」
「はい」
さり、さり。
「ほー……」
うにゅほが気持ちよさそうに吐息を漏らす。
「はい、おしまい」
「もっと」
塗ってほしいというより、掻いてほしいのだろう。
しかし、いくらもろこしヘッドと言えども、掻き過ぎには注意である。
「……ちょっとだけだぞ」
「うん」
さり、さり。
さり、さり。
「はー……」
「今度こそ、おしまい」
「──…………」
うにゅほが、潤んだ瞳でこちらを見上げる。
「う」
「──…………」
「……もうすこしだけだぞ」
「うん!」
少々甘すぎるだろうか。
痕が残らなければいいのだが。







401 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:22:13 ID:eJXmlFGk0

2017年7月9日(日)

エアコンは、涼しい。
だが、エアコンの効いた部屋でだらだら過ごすばかりでは、駄目になってしまう気がする。
「──と、言うわけで、今日はバイクで出掛けましょう」
「はい!」
暑さの厳しい日中を、バイクに乗ってやり過ごし、涼しくなってから悠々と帰宅する。
完璧なプランである。
「日焼け止めは?」
「ぬった!」
「では出発!」
「おー!」
図書館で涼み、ゲームセンターをはしごし、喫茶店で休憩して、ようやく帰途についた。
家族に帰宅を告げたあと、自室の扉を開ける。
「ただい──、ま……」
ばたん。
閉じる。
「どしたの?」
「──…………」
無言でうにゅほに先を譲る。
「?」
小首をかしげながら、うにゅほが扉を開ける。
「わ」
ばたん。
閉じる。
「すごいあつい……」
「これは、あれですね」
「あれ?」
「窓を開けるのを忘れたまま、出掛けたみたいですね」
「ですね……」
「ちょっくら入って、エアコンつけてくるよ」
「おねがいします……」
意を決して自室に押し入ると、一瞬で首筋に汗が浮いた。
エアコンを稼働させ、ついでに温湿度計を覗き込む。
36.4℃。
「うへえ……」
人肌かよ。
リビングでしばし涼んでから自室へ戻ると、快適な室温になっていた。
今年の夏は、エアコンから離れられなくなりそうだ。







402 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:23:34 ID:eJXmlFGk0

2017年7月10日(月)

「──…………」
六月分のクレジットカードの利用明細をブラウザで開き、愕然とする。
「いくらだったー?」
「!」
慌ててページを閉じる。
「どしたの?」
「なんでもないです」
「……?」
うにゅほが、きょとんと小首をかしげた。
「……こないだのゆっくり実況、新作来てたから一緒に見ようか」
「くれじっとかーど、いくら?」
「──…………」
「わかんないと、かけいぼつけれない……」
「××さん」
「はい」
「最近、僕たちは、日常生活における支払いのほとんどをクレジットカードに頼っていますね」
「うん」
「だから、少々高くても仕方がないのです」
「いくら?」
利用明細を、再びブラウザで開く。
ディスプレイを覗き込んだうにゅほが、
「──……!」
数分前の俺のように、口を開けたまま絶句した。
「……こんなにつかった?」
「みたいです……」
「こまかくみれる?」
「はい」
詳細を表示する。
「これは?」
「バイク用のヘルメットですね」
「あまぞん」
「いろいろ買いましたね……」
「──…………」
「──……」
「コンビニ、おおいね」
「たぶん、原因はそれかと……」
出掛けるたび、コンビニへ。
小腹が空くたび、コンビニへ。
コンビニエンスとは「便利」という意味だが、明らかに利用し過ぎである。
「……きーつけようね」
「はい……」
来月分の明細を笑顔で開けるよう、頑張ろう。







403 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:25:10 ID:eJXmlFGk0

2017年7月11日(火)

母親が、仕事中、脚立から落ちた。
その一報が舞い込んだのは、正午過ぎのことだった。
落ち着かない様子のうにゅほを宥めながら母親の帰宅を待っていると、やがて玄関から物音がした。
「!」
俺に抱き着いたまま離れようとしなかったうにゅほが、慌てて玄関へと駆け出す。
「ただいまー」
「──おかあさん!」
父親に連れられて帰宅した母親は、思いのほか元気そうだった。
右手を包む真新しい包帯が、痛々しい。
「おかあさん、だいじょぶ……?」
パタパタと左手を振りながら、母親が答える。
「大丈夫大丈夫。手首にヒビ入ったけど、MRIで見ないとわからないくらいだから」
「そか……」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「全治までは?」
「一ヶ月くらいだって」
「おかあさん、きーつけてね……?」
「はい、すいません」
「そもそも、なんで脚立から落ちたのさ」
「……荷物持ったまま脚立下りようとして、段数間違って」
「間が抜けてるなあ」
「うるさいよ」
ともあれ、軽口を叩ける程度の怪我で済んでよかった。
包帯の下は、添え木をしているだけで、ギプスで固めてもいないらしい。
「××さん」
「はい」
「しばらく、母さんの代わりを頼むな」
「うん、私からもお願い」
「……わかった!」
うにゅほが、ぴっと背筋を伸ばす。
「まずは、今日の晩御飯からね」
「はい!」
「まあ、俺は食べられないけどな」
「なんで?」
「明後日、大腸内視鏡検査だから」
「あー……」
憂鬱である。
ポリープが見つからなければ良いのだけど。







404 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:26:24 ID:eJXmlFGk0

2017年7月12日(水)

「……暑い」
「あちーねえ……」
大きく開いた窓から夜風が入り込み、静かに頬を撫でていく。
エアコンは快適だが、たまにはこうして自然の空気に触れるのも良いものだ。
「それにしても、暑い……」
「うん」
「──…………」
「──……」
「さて、問題です」
「はい」
「夜風は涼しいのに、どうして暑いのでしょうか」
「くっついてるから」
「正解!」
「うへー……」
「うへーではなく」
それも、尋常なくっつき方ではない。
ダッコちゃん人形の如く、俺の左半身にべったりと抱き着いているのだ。
役得な位置にある左腕だが、だんだん感覚が麻痺してきた。
「暑い……」
「あちーねえ」
「××さん」
「はい」
「せめて、膝の上に来ませんか。腕が痺れてきた」
「うん」
うにゅほが、俺の膝に腰を下ろす。
こちらを向いて。
「××さん」
「はい」
ぎゅー。
正面から抱き締められる。
嬉しいが、暑い。
「今日は、随分と甘えっ子だなあ……」
「だって」
「だって?」
「あした、◯◯、だいちょうないしゅちょう……」
言えてない。
「あー、ポリープ見つかったら一泊二日の入院だからか」
「うん……」
それが寂しくて仕方がないらしい。
「大丈夫──と、言いたいんだけどなあ」
断言したいのだが、ポリープがある気がしてならないのだった。
「あした、がんばってね……」
「頑張る」
ポリープが見つかった場合、明日の日記はお休みとなります。
御了承をば。







405 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:27:40 ID:eJXmlFGk0

2017年7月13日(木)

内視鏡を慎重に引き抜いたあと、医師が告げた。
「今回ですが、大腸内にポリープは見つかりませんでした」
「マジですか」
「ええ」
「では、入院は……」
「しなくて結構ですよ」
心の中でガッツポーズを決める。
検査料金を支払い、病院を後にした。
「暑い……」
札幌は、今日も晴れ。
日陰に逃げ込み、母親に電話を掛ける。
呼び出し音、しばし。
「──◯◯!」
受話口から響いたのは、うにゅほの声だった。
「おー、××」
「どうだった……?」
「なんと!」
「なんと……」
「ポリープ、ありませんでした!」
「……!」
はっと息を呑む音がして、
「よかったー……」
「これで、入院せずに済むな」
「うん!」
「母さんに、迎えに来てって伝えてくれるか」※1
「わたしもいくね」
車で十分の距離なのに?
いいけど。
「ついでだし、そこの牧場でソフトクリーム食べたいな」
「◯◯、おなかぺこぺこだもんね」
そう言って、うにゅほがくすりと笑いをこぼす。
「じゃあ、切るな」
「あ」
「どした?」
「◯◯、おつかれさま」
「……うん、ありがとうな」
「うへー」
帰り際、三人で食べたソフトクリームは、身震いするほど美味しかった。
空腹は最高の調味料とは、よく言ったものである。

※1 右手首を負傷したばかりの母親だが、運転に支障はないらしい。
 







406 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:29:05 ID:eJXmlFGk0

2017年7月14日(金)

午後九時ごろ帰宅し、静かに玄関を開く。
「ただいまー……」
「!」
物音を聞きつけたのか、うにゅほがリビングから顔を出した。
「おかえりなさい!」
「うん、ただいま」
本州から友人が遊びに来たので、観光案内がてら遊びに出掛けていたのだった。
「きょう、どこいったの?」
「小樽」
「おたる……」
「映画館があるところ」
「あ、わかった」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「うみのほう」
「そうそう」
「なにしてあそんだの?」
「海鮮丼食べたり、喫茶店でだべったり、ガラスの工芸品を見たりもしたな」
「たのしそう……」
「あと、オルゴール堂にも行った」
「おるごーるどー?」
「オルゴールの専門店。明治に建てられた古い建物で、雰囲気あったなあ」
「──…………」
「××?」
「うー……」
あ、ぶーたれてる。
当然か。
「……おみやげ」
「お土産は、ありません。買おうか迷ったんだけどな」
「──…………」
うにゅほが、ますますぶーたれる。
だが、土産を買わなかったことには、ちゃんとした理由がある。
「オルゴール堂も、大正硝子館も、いいところでさ」
「──…………」
「だから、××と一緒に来たいなって、思ったんだよ」
「……えっ」
「夏のあいだに、バイクで行こう。ふたりでさ」
「──…………」
うにゅほが無言で俺に抱き着く。
「……ごめんなさい」
「なんで謝る」
「なんとなく……」
「じゃあ、俺もごめん」
「なんで?」
「なんとなく」
「……うへー」
うにゅほが照れ笑いを浮かべる。
俺は、その笑顔を、ずっと見ていたいのだ。
 







407 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:30:23 ID:eJXmlFGk0

2017年7月15日(土)

森永から、おもちゃのカンヅメが届いた。
「わあ……!」
「ダマされちゃうカンヅメ、だって」
金属製の箱に、五つの鍵穴。
同梱されていたキーホルダーには、プラスチック製の鍵が三つと、細長いプレートが括られている。
「このかぎであけるのかな」
「どうだろう」
カンヅメの名前からして、一筋縄では行かない気がする。
「うーと……」
うにゅほが、鍵穴と鍵の総当たりを始める。
しばしして、
「──あ、まわった!」
「開く?」
ぐいぐい。
「あかない……」
たぶん、騙されてるんだろうなあ。
「◯◯、あけてー」
「はいはい」
カンヅメを受け取り、観察する。
「……あー」
「わかった?」
「たぶん、これをここに差し込んで──」
カチッ。
「あいた!」
「開いたな」
中身は、知恵の輪とジグソーパズル、おまけにスーパーボールだった。
「大したものじゃないな……」
「そだね」
謎解きは面白かったけど。
「これなんだろ」
うにゅほが、カンヅメの底から小冊子を取り出す。
「きみは、まだ、だまされてる、だって」
「まだ……?」
カンヅメを調べる。
「あ、蓋が二重になってる」
「ほんとだ!」
「どうやって開けるんだ……?」
今度は、謎を解くまで数分ほど掛かってしまった。
森永、なかなかやりおる。
何が入っていたかは、秘密である。
 







408 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/07/16(日) 21:31:54 ID:eJXmlFGk0

以上、五年八ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 


       


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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2017年07月17日 18:47  ID:puWCq9vm0
    微笑ましさに恐ろしさが勝ってる


  • 2  Name  名無しさん  2017年07月17日 19:03  ID:G8SWsiM50
    本当のキチガイですわ


  • 3  Name  名無しさん  2017年07月17日 19:25  ID:4VCWZMEw0
    五年七ヶ月という歳月だけで凄い

    Wind Beneath My Wings


  • 4  Name  名無しさん  2017年07月17日 20:10  ID:kuvL7Pk30
    楽しみやで


  • 5  Name  名無しさん  2017年07月17日 20:23  ID:17n69Tpb0
    尊敬します


  • 6  Name  名無しさん  2017年07月17日 20:24  ID:rrHn3kOj0
    もう少し進展ないんかと思うけど無理やろうなあ…


  • 7  Name  名無しさん  2017年07月17日 20:24  ID:S7yAl2Rx0
    既に別世界に旅立ってるんやな


  • 8  Name  名無しさん  2017年07月17日 20:41  ID:fL6qSuiD0
    で、これって霊烏路空となんか関係あるの?


  • 9  Name  名無しさん  2017年07月17日 22:34  ID:Nl7CY62L0
    東方キャラの性格なんて二次創作者次第やろ


  • 10  Name  名無しさん  2017年07月17日 23:47  ID:E8.TQ9Oh0
    最早みんな優しくて草


  • 11  Name  名無しさん  2017年07月18日 01:48  ID:kHOxWb3G0
    新しいチョコボール買ったかな50周年の特別版
    http://www.morinaga.co.jp/kyorochan/shaberu/


  • 12  Name  名無しさん  2017年07月18日 02:25  ID:i.RSuJ.q0
    うにゅほは実在してるんだろ?
    だけどうにゅほであってうにゅほじゃないからうにゅほと呼べないんだろ?
    お父ちゃん全部知ってるんだから


  • 13  Name  名無しさん  2017年07月18日 06:40  ID:Zci8yIZs0
    継続は力なり


  • 14  Name  名無しさん  2017年07月18日 08:49  ID:3NifAcGC0
    正直これだけ続けられると尊敬する


  • 15  Name  名無しさん  2017年07月18日 18:04  ID:lKtq4ExJ0
    彼の頭の中にはガチで実在してるんだろうなあ


  • 16  Name  名無しさん  2017年07月18日 23:20  ID:dKwq.Rl30
    中3の時の俺は丁度こんな感じの妄想を毎日してた


  • 17  Name  名無しさん  2017年07月19日 00:42  ID:Qxge2r250
    普通に考えて嫁か彼女だろ


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