2017年08月17日

1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



426 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:47:23 ID:B..2D8KI0

2017年8月1日(火)

空になったペプシのダンボール箱を畳んでいたときのことである。
「──ぐッ!」
胸を衝く痛み。
「◯◯……?」
俺の呻きを聞きつけてか、うにゅほが、読んでいた本から顔を上げる。
「──…………」
「どしたの?」
「……いや、なんでもない」
畳み終えたダンボール箱を、箪笥と壁のあいだに挿し込む。
「◯◯、ぐ、っていった」
「言ってないよ」
「きこえた」
「──…………」
「◯◯、けが、してない?」
「してないって」
「ほんと?」
心の底から心配そうに、うにゅほがこちらの顔を覗き込む。
言えない。
ダンボール箱のカドが乳首にクリーンヒットしただなんて、恥ずかしくて言えない。
しかし、うにゅほの追求は容赦ない。
「◯◯のこえ、いたそうだった……」
「う」
「ほんとに、けがしてない?」
「怪我は、してない」
「──…………」
じ。
上目遣いで見つめられる。
「──と、思う。そのはず」
「てー、きってない?」
「手じゃないよ」
「どこ?」
しまった、墓穴を掘った。
「──…………」
「どこ?」
「……乳首」
「ちくび」
「はい。カドで乳首を打ちました……」
なんだこの羞恥プレイ。
だが、うにゅほの反応は、予想を遥かに越えていた。
「みして」
「……はい?」
「ちくび、みして。けがしてるかも……」
「──…………」
「はい」
ぺろん。
うにゅほが、俺の甚平の上衣をめくる。
「ぎゃー!」
思わず後じさる。
「自分で確認するから勘弁してください!」
「えー」
どうして残念そうなんだよ。
うにゅほ、恐ろしい子。







   

427 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:48:16 ID:B..2D8KI0

2017年8月2日(水)

「ふー……」
ペダルを漕ぐ足を止め、首に掛けたタオルで汗を拭う。
表示パネルには「20.00k」の文字。
一日一時間のエアロバイクは、俺の日課である。
「おつかれさまです」
「いえいえ」
「おちゃ、つめたいの、のむ?」
「飲む」
「いまだすね」
差し出されたタンブラーの中身を一気にあおる。
「──ッ、はー……、美味い!」
喉から染み入る冷たさが、四肢の末端まで行き渡るかのようだった。
「◯◯、すごいねえ」
「何が?」
「えあろばいく、まいにちこいで」
「毎日漕いでるわりには痩せないけどな」
「まいにちこぐのがすごい」
「だったら、××のが凄いだろ」
「?」
「掃除、料理、家事全般。毎日やってるじゃん」
「わたしのしごとだもん」
うにゅほが小さく胸を張る。
自分の仕事に誇りを持っているのだ。
「しごとだったら、◯◯も、まいにちしてすごいよ」
「……まあ、お金のためだけどな」
手放しで褒められるのは、なんとなく照れくさい。
「おかねかせげるの、すごいとおもう」
「世の中の大抵の人は、お金を稼いで生きてるんだぞ」
皮肉げな俺の言葉に、うにゅほが、てらいのない笑顔で答えた。
「だったら、みんな、すごいんだね」
「──…………」
言葉にできない暖かいものが、腹の底から溢れてくる。
「××」
「?」
「××は、癒し系だな」
「うへー……」
凄いのは、うにゅほの方だと思う。
この子を独り占めしている自分は、なんて罪深いのだろう。
そんなことを考える八月の午後だった。







428 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:49:01 ID:B..2D8KI0

2017年8月3日(木)

「あぢー……」
首筋の汗を手の甲で拭いながら、ベッドを下りる。
「あ、おきた」
「起きました」
「おはようございます」
「おはよ」
「あついねえ……」
「なんか、じっとりしてるよな」
「ペプシのむ?」
「飲む」
「はーい」
タンブラーにゆっくりとペプシを注ぐうにゅほを横目に、タオルで上半身を拭う。
「なんか、変な夢見たなあ……」
「どんなゆめ?」
「えーと──」
夢の記憶は、毎秒消えていく。
取り留めのないその内容は、手探りで掴んだとしても、言葉にするのは難しい。
「……たしか、鬼が」
「おに?」
「あーいや、鬼は忘れてくれ。あんまり関係なかった」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
気持ちはわかる。
「あ、そうだ。コロが出てきたぞ」
「!」
コロ。
数年前に死んだ愛犬の名だ。
「出てきてくれたのは嬉しいけど、まとわりつかれて暑いのなんのって──」
「◯◯、すごい」
「何が?」
「わたしも、コロのゆめみたの!」
「マジか」
「まじ」
「お盆が近いから、帰ってきたのかな」
「そか……」
「お墓に、ビーフジャーキーでもお供えしておくか」
「うん!」
ただの偶然だ。
そんなことはわかってる。
でも、偶然に意味を見出すのは、俺たちの勝手だ。
父親の酒の肴をこっそり拝借して、庭にある愛犬の墓に供えた。
「犬用じゃないけど、ま、いいだろ」
「うん」
ビーフジャーキーをはぐはぐ食べる愛犬の姿に思いを馳せる一日だった。
 






429 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:50:09 ID:B..2D8KI0

2017年8月4日(金)

「◯◯、えんぜるでた?」
「残念ながら」
「そか……」
「××も?」
「きいろ」
うにゅほが、チョコボールのくちばしを開いてみせる。
黄一色である。
「えんぜる、ぜんぜんでないねえ……」
「こないだなんて、一日に三枚も出たのにな」※1
「とりすぎたのかな」
「絶滅危惧種じゃあるまいし」
乱獲によってエンゼルの生息数が激減したとか、あまりに夢のない話である。
「あたらしいおもちゃのかんづめね、なでたらしゃべるんだって」
「そうなんだ……」
この子、何歳だったっけ。
「◯◯、ほしくない?」
「××は欲しいんだろ」
「うん」
「じゃあ、頑張って集めよう」
「うん」
頑張ると言っても、おやつにチョコボールを食べるだけだけど。
「◯◯の、なにあじ?」
「期間限定のやつだな。ココアビスケット、だって」
「おいしい?」
「まだ食べてない」
「あ、そか」
チョコボールを一粒、口に放り込む。
さく、さくさく。
「美味い」
「いっこ」
「はいはい」
「キャラメル、いる?」
「銀歯が取れるからいらない」
「そか」
果たして、金のキョロちゃん缶をゲットすることはできるのだろうか。
それは、エンゼルのごきげん次第である。

※1 2017年5月3日(水)参照







430 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:51:15 ID:B..2D8KI0

2017年8月5日(土)

「──××、ウナコーワどこだっけ」
「あるよー」
どこからか、うにゅほがウナコーワクールを取り出す。
「か、さされたの?」
「参ったよ。玄関先で友達と話してたらさあ」
「ぬったげるね。みして」
「えーと、まず──」
「まず?」
小首をかしげるうにゅほに、左手を差し出す。
「左手が、三ヶ所」
「わあ!」
「めっちゃ刺された」
「たいへんだ……」
「痒い」
「いまぬるね!」
さり、さり。
ウナコーワクールのもろこしヘッドが、患部を優しく刺激する。
「きもちい?」
「気持ちいい」
「ほか、どこさされたの?」
「右足の甲と、あと、確認してないけど太腿も痒い」
「そか……」
さり、さり。
さり、さり。
「あー、そこそこ」
「もうさされてない?」
「たぶん」
刺されているかもしれないが、痒くないから問題ない。
「はい」
「?」
差し出されたウナコーワクールを受け取る。
「わたしも、ぬってほしいな」
「××も刺されたのか?」
「ううん」
「あせもとか」
「できてないよ」
「……もろこしヘッドで掻いてほしいだけか」
「うへー……」
図星らしい。
「じゃあ、液が出ないように掻こう」
「はい」
「どこがいい?」
「うーとね、じゃあ──」
しばしのあいだ、もろこしヘッドでよきところを掻き合うふたりなのだった。







431 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:52:29 ID:B..2D8KI0

2017年8月6日(日)

「◯◯ー」
ウナコーワクールを手にしたうにゅほが、こちらへ歩み寄ってきた。
「てーだして」
「あー……」
うにゅほの気持ちはありがたいのだが、
「もう大丈夫だよ」
「えー」
うにゅほが不満げに口を尖らせる。
「いまかゆくなくても、またかゆくなるかも……」
「それ以前の問題でして」
「?」
左手を差し出す。
「──…………」
「な?」
「あとかたもない……」
どこに塗ればいいのかすら、判然としない。
非の打ちどころのない完治である。
「……◯◯、ずるい」
「すみません……」
うにゅほは、蚊に刺されると、数日は腫れる体質なのだ。
「でも、よかった」
ほにゃりと笑う。
「ずるいけど、かゆくないのがいちばんだもんね」
「まあなー」
「わたしさされたら、◯◯、ウナコーワぬってくれる?」
「毎日だって塗ってやるぞ」
「うへー」
「キンカンでもいいぞ」
「きんかん?」
「臭いウナコーワみたいの」
「くさいの……」
「臭いけど、好きな人は好きかも」
「そなんだ」
子供の頃はよくキンカンを使っていたので、夏の香りという気がしないでもない。
「ウナコーワがなくなったら、キンカンだな。たしか、どっかにあったから」
「はーい」
もろこしヘッドがないから、うにゅほには物足りないかもしれないなあ。
でも、もろこしヘッドは生産中止になったという話も聞くし、こればかりは仕方ないだろう。
要は、刺されなければいいのだ。
うにゅほが蚊に狙われないよう、細心の注意を払って窓の開閉を行わねば。







432 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:53:38 ID:B..2D8KI0

2017年8月7日(月)

「あち、あち」
トイレより帰還したうにゅほが、エアコンの風下に立つ。
「すずしー……」
「トイレ、そんなに暑かった?」
「あつい!」
「そうなのか」
「きょう、すーごいあついよ」
「へえー」
暑い、らしい。
起きてから一度も自室を出ていないので、よくわからない。
「人類は堕落した……」
ごろんごろん。
ベッドの上で寝転がりながら、スマホの画面をタップする。
本日の気温は30℃超。
絶対部屋から出たくない。
「去年まで、扇風機だけで過ごしてたんだよなあ……」
「うん」
「信じられん」
「ことし、せんぷうきつけてないね」
「必要ないからなあ」
「──…………」
「──……」
「……つけていい?」
言うと思った。
「では、今日は扇風機デーにしましょう」
「はい!」
エアコンを切り、窓を開け、部屋の隅で壁に向かっていた扇風機の電源を入れる。
ふわり。
うにゅほの髪が、風になびいた。
「ふいー……」
「涼しい?」
「すずしいねえ……」
「俺も俺も」
「うん」
うにゅほの隣に陣取り、一緒に風を受ける。
「おー……」
エアコンの鋭い涼気とは違う、柔らかな風。
「……たまには扇風機もいいなあ」
「ね」
夏は、まだ続く。
大いに堪能しようではないか。
 







433 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:54:38 ID:B..2D8KI0

2017年8月8日(火)

「××さん」
「?」
「映画を観ましょう」
「こないだかりたやつ?」
「そう」
「こわいやつ……」
「コワクナーイ、コワクナーイ」
「ほんとかな」
「真面目に答えると、人は死ぬ」
「う」
「ゾンビは出ない」
「おばけは?」
「わからない」
「……なんてやつ?」
「ファイナル・デスティネーション」
「ふぁいなる、です、なに?」
「ファイナル・デスティネーション」
「──…………」
あ、諦めた。
「とりあえず、予告編だけでも見てみるとか」
「うん」
うにゅほを膝に乗せ、ファイナル・デスティネーションのトレーラーを再生する。
「──…………」
「──……」
「こわい」
「怖いかー……」
そうでもないと思うのだが。
「じゃ、やめとく?」
「──…………」
「見る?」
「……こわいとこなったら、めーとじていい?」
「もちろん」
「そか……」
「なんなら目隠ししてあげようか」
「おねがいします……」
そんなわけで、死亡シーンのたびにうにゅほに目隠ししつつ、ファイナル・デスティネーションを観賞したのだった。
「はー……」
「けっこう面白かったな」
「うん」
「ところで、続編も借りてあるんだけど」
「……!」
うにゅほが固まる。
「……今日はやめとくか」
「はい……」
気力の限界らしい。
返却期限までに観ることができればいいのだけど。







434 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:57:00 ID:B..2D8KI0

2017年8月9日(水)

「おあー……」
でろん。
四分の一ほどベッドからはみ出したまま、目を閉じる。
だるい。
とにかくだるかった。
「──…………」
なでなで。
俺の頭を撫でながら、うにゅほが心配そうに問う。
「……◯◯、だいじょぶ?」
「やー、だいじょばないですね……」
今日の天気は、曇り時々雨。
台風5号は、昨夜、温帯低気圧に変わったと言う。
「でも、低気圧は低気圧なんだよなあ……」
気圧が低いと、体調が悪い。
子供のときからそうなのだ。
「……寝る」
「ひざまくら、していい?」
「いや、仮眠じゃなくてガチ寝するから……」
「そか……」
膝枕は三十分まで。
それ以上は、足が痺れてしまう。
「……てーにぎってていい?」
「気持ちは嬉しいけど、それじゃ漫画も読めないだろ」
「──…………」
「──……」
「あし、ひっつけてていい?」
わかった。
くっついていなければ、不安で仕方がないのだ。
「××」
「はい」
ベッドの端に身を寄せ、空いたスペースをぽんぽんと叩く。
「一緒に寝るぞ」
「!」
「腕枕は、痺れるから無しで」
「はーい」
もぞもぞ。
「おじゃまします……」
「うい」
「……うへー」
うにゅほが、隣で、満足げに笑う。
「とりあえず、二時間くらいで起こして……」
「わかった」
うにゅほの体温を懐に感じながら、目蓋を閉じる。
次に目を覚ましたのは、案の定、三時間後だった。
「──……すう」
熟睡するうにゅほを横目に、今度から、面倒がらずにアラームを設定しようと決意する。
うにゅほの生活サイクルが乱れないか、心配だ。







435 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:58:34 ID:B..2D8KI0

2017年8月10日(木)

今日のぶんの仕事を終え、ぐっと伸びをする。
「──よー、やっと、夏休みだー!」
「おー!」
伸びのついでにうにゅほとハイタッチを交わし、立ち上がる。
「なつやすみ、いつまで?」
「15日まで」
「あしたから、いつかかん」
「……まあ、明日と明後日は墓参りだけどな」
「そしたら、みっかかん?」
「──…………」
8月11日は、山の日だ。
12日と13日は、もともと土日である。
「もしかして、純粋な夏休みって──」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「……いや、やめよう。考えないようにしよう」
考えても虚しくなるだけだ。
「よし、楽しいことだけ考えましょう」
「そうしましょう」
「××さん、楽しいことはありますか?」
「はかまいり!」
「──…………」
そういえば、うにゅほは墓参りエンジョイ勢だった。
「それ以外で」
「それいがい……」
「あ、ニコ生でシャークネードやるぞ」
「しゃーくねーど?」
「竜巻でサメが飛んでくる映画」
「……?」
よくわからないらしい。
言ってる俺も、よくわからない。
「サメ映画だし間違いなくゴア描写あるから、××は駄目かも」
「ごあ?」
「血しぶきとか、肉片とか」
「むり」
だろうなあ。
「とりあえず、今日はゆっくりしよう。明日は墓参りだし」
「そだね」
明日から五日間、仕事がない。
たったそれだけのことで、こんなにも心が晴れやかだ。
やりたいこと、すべきことは、山ほどある。
でも、半分もこなせないんだろうなあ。







436 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 20:59:46 ID:B..2D8KI0

2017年8月11日(金)

疲れた。
本当に、疲れた。
あまりに疲弊しきっているもので、本日の日記は最低限としたい。
まず、今日は父方の墓参りだった。
朝六時起床の六時半出立で、三時間かけて菩提寺へ。
行きの車内で睡眠時間を確保するつもりだったのだが、揺れがひどくて眠れず。
昼食後、温泉へ向かうものの、源泉の温度が30℃でかえって目が冴える。
伯父の家でのんびりするつもりが、従姉のやんちゃな子供たちに付き合わされて、残りHPがドット単位に。
アルコールの入った両親の代わりに帰途の運転を担当し、慣れない車幅のランクルを駆ること三時間、午後十時過ぎにようやく帰宅し、今に至る。
「──…………」
チェアの上で斜めになりながらキーボードを叩いていると、
「はい、◯◯」
とん。
デスクの上に、麦茶の入ったタンブラーが置かれた。
「ありがとう……」
「きょう、おつかれさまでした」
もみもみ。
「おあー……」
うにゅほの小さな手のひらが、凝り固まった肩の筋肉を揉みほぐす。
握力はないが、心地いい。
「……××、今日、楽しかった?」
うにゅほにとって、墓参りとは、家族皆で出掛ける夏の一大イベントだ。
俺だって、子供のころは、毎年楽しみにしていた記憶がある。
いつしか食傷してしまったけれど。
「たのしかった!」
「そっか」
その一言で、今日一日の疲れが報われる。
だが、
「──明日は、母方の墓参りですね」
「う」
「さしもの××も、二日連続はきついか」
「ちょっとだけ……」
母方の墓のある霊園は、父方のものより程近い。
今日ほどは疲れないはずだ。
たぶん。







437 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 21:01:23 ID:B..2D8KI0

2017年8月12日(土)

母方の墓参りは、三時間で終わった。
午前十一時に家を出て、帰宅したのは午後二時過ぎ。
父方の片道ぶんで行って帰ってこれるとは、子孫に優しいご先祖さまである。
「──とは言え、疲れた……」
正確には、昨日の疲れが抜け切っていないのだ。
だが、夕方には、友人と会う約束がある。
午後四時には家を出なければならない。
ひと眠りしたい。
したいのだが、
「日記を、日記を書かねば……」
帰宅がいつになるか、わからない。
であれば、最低でも半分は書いてから家を出ねば、あとで困るのは自分である。
問題があるとすれば、今日という一日がまだ終わっていないことだろう。
「……それって日記なのか?」
自問しながらキーボードを叩いていると、
「──…………」
うにゅほがそっと腕の下をくぐり、俺の膝の上でうつ伏せになった。
はみ出た四肢がだらんと垂れている。
「うへー」
「なんか猫っぽい」
「……そかな」
不満そうだ。
「お手」
「わん」
「犬っぽい」
「わふー」
うにゅほが満足げに唸る。
猫より犬と呼ばれたほうが、明らかに嬉しそうだ。
「この泥棒猫!」
ぺしぺし。
手頃な位置にあったおしりを叩いてみる。
「どろぼうしてないよ」
「知ってる」
「ねこじゃないよ」
「犬?」
「わんわん」
「このメス犬!」
ぺしぺし。
「わふー」
なにをやっているんだろう。
まあ、でも、日記が埋まったからいいか。







438 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 21:02:38 ID:B..2D8KI0

2017年8月13日(日)

「──……ゔー」
ここ数日の疲れが噴出したのか、寝ては起き、起きては寝てを繰り返す一日だった。
「……眠い……」
「ぶえ」
背後からうにゅほにのしかかる。
「お、も、い゙ー……」
「ごめんごめん」
うにゅほが潰れてしまう前に、離れて、ベッドに腰掛ける。
「◯◯、ねむいの?」
「眠い」
「ねむいとき、ねたほういいよ」
「俺もそう思う」
「ねましょう」
うにゅほが、俺の肩に丹前を掛ける。
「でも、このやり取りも、今日だけで三度目だからな……」
「うん」
「もう五時だし」
「うん」
「……さすがに起きようかと」
「ねむくない?」
「眠いけど、用事があるし」
「──…………」
うにゅほの表情が、見るからに翳る。
「……◯◯、また、やくそくあるの?」
「あー……」
勘違いさせてしまったようだ。
「××も、一緒に行こう」
「?」
「TSUTAYAにDVD返しに」
「いく」
「用事ってのは、それだけだよ」
「そか……」
うにゅほの頭をぽんと撫でる。
「しばらくは、××を置いて出掛けないよ」
「──…………」
「出掛けるときは、一緒に行こうな」
「うん!」
寝癖を整え、普段着に着替えて、ふたりでTSUTAYAへ赴いた。
帰り際に食べた自販機のアイスが、そこそこ美味しかった。
 







439 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 21:03:52 ID:B..2D8KI0

2017年8月14日(月)

「んあー……」
チェアの背もたれに体重を預けながら、天井を振り仰ぐ。
夏休み、四日目。
やりたいことはある。
すべきこともある。
だが、
「なーんもやる気起きねえー……」
キーボードを叩くのが億劫だ。
マウスすら重い。
動画をぼけーっと眺めているだけで一日が終わるのは、この上なく自堕落な休日の過ごし方と言えるだろう。
膝の上にちょこなんと腰を据えたうにゅほが、自信満々に口を開く。
「やすみは、やすむひ」
「そうだけどさ」
「やすまなかったら、やすみじゃないよ?」
言い得て妙である。
「でも、夏休みに入ってから、何もしてない気がする……」
「いちにちめと、ふつかめは、はかまいりいった」
「行ったな」
「みっかめは、ひろうかいふく」
「物は言いようだなあ」
確かにそんな感じだったけど。
「よっかめは、ほんとのおやすみ」
「ふむ」
「だから、やすんでいいんだよ」
「──…………」
うにゅほを、ぎゅーと抱き締める。
「……じゃあ、休む」
「うん」
五日目は、どうしようかな。
晴れたらふたりで出掛けるのもいいな。
夏休みに入ってから、ずっと天気が悪い気がする。
一日くらいは、晴れ間を見たいものだ。
 







440 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 21:04:58 ID:B..2D8KI0

2017年8月15日(火)

「──晴れた!」
カンカン照りとは行かないものの、ここ数日の空模様を考えれば、十分過ぎる好天だ。
「××!」
「わ」
うにゅほの手を引き、立ち上がらせる。
「出掛けるぞ」
「どこいくの?」
「小樽」
「おたる……」
「連れて行くって、言っただろ」※1
「!」
うにゅほの瞳が、ぱあっときらめいた。
「いく!」
「よーし、準備だ。まずは着替えだな」
「きがえ?」
「バイクで行くから、ホットパンツはまずい。ジーンズに穿き替えよう」
「はーい」
「あと、日焼け止めはきちんと塗るように」
「わかった!」
しっかりと準備を整えたのち、タンデムシートにうにゅほを乗せて出発する。
「──…………」
ぎゅう。
発進するとき俺の背中に顔を押しつける癖は、いつまで経っても直らない。
日焼け止めクリームがライダースジャケットにべったりくっついていそうで、それはそれで気に掛かるが、まあいいや。
国道5号線を西進し、小樽市へ着くころには、ちょうど昼時になっていた。
「こないだ、◯◯、かいせんどんたべたの?」
「はい、食べました」
「わたしもたべたいな……」
「同じ店でいいか?」
「うん!」
先月、友人たちと辿った道を、うにゅほとふたりで辿り直す。
北一ヴェネツィア美術館に足を運び、ルタオでパフェに舌鼓を打ち、あれやこれやと会話しながら大正硝子館をはしごする。
最後に赴いたのは、小樽オルゴール堂の本館だった。
「わあー……!」
高い天井、広い空間、クラシカルな店内が、無数のオルゴールに彩られている。
数十万点、あるいはそれ以上あるかもしれない。
「床、滑りやすいから気をつけろよ」
「わかっ、──ほあ!」
「ちょ!」
言った傍から滑ったうにゅほを、慌てて胸元に引き寄せた。
「ごめんなさい……」
「気をつけるように」
「はい……」
オルゴール堂の店内を、おっかなびっくり歩いていく。
「これ、ぜんぶ、おるごーる?」
「そう」
「ぬいぐるみも?」
「たぶん……」
「すごいねえ、すごいねえ!」
「せっかくだし、ひとつ買っていくか」
「うん!」
ふたりで三十分ほど迷った結果、小さな12角オルゴールをひとつ購入することにした。
バイクだから、大きすぎると持って帰れないし。
曲目は「虹の彼方に」。
理由は、なんとなく気に入ったからだ。
今日という一日が、うにゅほにとって、素晴らしい夏の思い出となれば幸いである。
美しいオルゴールの音色を聞きながら、そんなことを思うのだった。

※1 2017年7月14日(金)参照







441 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/08/16(水) 21:06:05 ID:B..2D8KI0

以上、五年九ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 


       


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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2017年08月17日 18:32  ID:6wDXoE5G0
    筆者にはなにが見えているんだろう…こんなにリアルな文章書けるって


  • 2  Name  名無しさん  2017年08月17日 19:03  ID:dau8FQTJ0
    この文章書く力と継続力いかしたらラノベ作家とか余裕だと思うの…


  • 3  Name  名無しさん  2017年08月17日 20:34  ID:A0dKIRsd0
    久々に東方に戻ってきたがまだ書いてんのか…
    素直に尊敬する


  • 4  Name  名無しさん  2017年08月17日 20:53  ID:ifltaDHj0
    この根気…半分ほど執念を感じる…


  • 5  Name  名無しさん  2017年08月17日 20:57  ID:lARgwY6P0
    すげーなこの執念


  • 6  Name  名無しさん  2017年08月17日 21:04  ID:E6wL3SsD0
    10年続いたら一流の域に入ると思う
    既にきらら辺りで日常系漫画の原作とかできそうだよな
    よくもまあこれだけ書くこと見つかるわ


  • 7  Name  名無しさん  2017年08月17日 21:07  ID:Niqyipkt0
    もはやうにゅほがいるんだろうな、すぐ側に


  • 8  Name  名無しさん  2017年08月17日 21:14  ID:a4Xux4Ol0
    筆者はたぶん具現化系だと思う


  • 9  Name  名無しさん  2017年08月17日 23:47  ID:F4yCac4r0
    墓参りエンジョイ勢ってなんか癖になる単語だな


  • 10  Name  名無しさん  2017年08月18日 13:30  ID:PDA4KY.50
    なんかワロタ


  • 11  Name  名無しさん  2017年08月18日 15:02  ID:OafptI.f0
    ...w


  • 12  Name  名無しさん  2017年08月19日 03:20  ID:sGJMPJf10
    また君か壊れるなぁ


  • 13  Name  名無しさん  2017年08月19日 13:32  ID:q14kENxl0
    具現化系って書こうとしたら既に書かれてた


  • 14  Name  名無しさん  2017年08月19日 13:34  ID:hLx8VnhJ0
    謎の安心感


  • 15  Name  名無しさん  2017年08月19日 21:44  ID:roozcU.Q0
    そろそろ筆者さん幻想入り出来るんじゃないかな……


  • 16  Name  名無しさん  2017年08月20日 09:50  ID:Ku.5ZPme0
    正気にて大業ならず


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