2017年10月17日

1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



490 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:28:17 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月1日(日)

「──……はあ」
カレンダーをめくり、溜め息を漏らす。
「もう半分かあ……」
「はんぶん?」
「今年度が、半分過ぎた」
うにゅほが指を折り曲げる。
「しー、ごー、ろく、なな、はち、きゅう──あ、はんぶんだ」
「六月から七月は、夏に浮かれてるからか、あんまり意識しないんだけどさ」
「うん」
「九月から十月は、なんか切ないかんじがします」
「わかるかも」
うにゅほがうんうんと頷く。
「◯◯、あさ、ふとんけっとばしてないもんね」
「そうなんだ」
「うん」
「……それ、切なさと関係ある?」
「かけてあげるの、すき」
「そうなんだ……」
頑張って蹴っ飛ばそう。
「まあ、でも、秋はわりと好きかな」
「わたしも」
「××が好きなのは冬じゃないの?」
「ふゆもすき」
「夏は?」
「なつもすきだよ」
「春」
「はるもすき」
「嫌いな季節は?」
「たいふう……」
季節じゃないけど、気持ちはわかる。
「……俺も、台風ダメだわ。なんとも思ってなかったけど、ダメになった」
「ひこうき?」
「うん」
「たいふうのとき、ひこうき、もうのったらだめだよ」
「乘りません」
自動車は、安全運転をすることで事故率を下げることができる。
だが、飛行機は、自らの命をパイロットに預けることしかできない。
一介の乗客の身では、何をしても無駄なのだ。
それが怖い。
「ともあれ、残り半分もよろしくな」
「うん、よろしくおねがいします」
小さく頭を下げあうふたりなのだった。








491 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:31:00 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月2日(月)

床に座り込んで作業をしていると、うにゅほが物珍しげに覗き込んできた。
「あ、のーとぱそこんだ」
「はい、ノートパソコンです」
「ひさしぶり」
うにゅほがノートの端を撫でる。
「メインマシンが壊れでもしない限り、使う機会がないからなあ」
「なにしてるの?」
「──ああ、××に確認を取ったほうがいいか」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「友達のPCが壊れたんだけど、買い換えるお金がないんだって」
「うん」
「だから、このノートを貸そうと思うんだけど、いいかな」
「……?」
うにゅほが、更に深く首をかしげる。
「なんでわたし?」
「ノートを買ったとき、これは××用にするって、言った、ような、気が……」
「そうだっけ……」
互いに記憶が曖昧である。
「なので、いちおう尋ねた次第です」
「そか」
「いいかな」
「うん、いいよ」
「ありがとう」
うにゅほの頭を撫でてやる。
「うへー……」
「では、作業に戻りましょう」
「なにしてるの?」
「見られたら困るデータとか、あらかじめ消しておかないと」
「どんなでーた?」
「──…………」
しまった。
もっと言い方を工夫すべきだった。
「……えーと、ほら、クレジットカード番号とか、あるじゃん」
「あー」
「そういうところは、ちゃんとしとかないとな」
「そだね」
それも消すので、嘘ではない。
本当に消したいものが別にあるだけだ。
ともあれ、あとは送るだけである。
友人の役に立てばいいのだが。







492 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:31:50 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月3日(火)

「──つッ、あー……」
唐突な目の痛みに、目薬を求めて手を伸ばす。
「わ、どしたの?」
「××、悪い、目薬取って……」
「うん!」
疲れ目だろうか。
たしかに、最近、目を酷使していた気がする。
「はい、めぐすり……!」
「ありがと」
うにゅほから目薬の容器を受け取り、ひねってキャップを外す。
そのまま点眼しようとして、
「……うん?」
ふと、違和感を覚えた。
目薬にしては大きく、目薬にしては重く、目薬っぽくない形状をしている。
薄目を開けて確認すると、目薬じゃなかった。
「あ、はなしゅー!」
点鼻用スプレーだった。
「まちがえた! めぐすりこっち!」
「うん、ありがとう」
改めて目薬を受け取り、点眼する。
まばたきをしながら薬液を目に慣らしていると、
「──…………」
うにゅほが自分のほっぺたを両手で包み込んでいた。
恥ずかしがっているらしい。
「……まあ、ほら、似てるし。隣にあったし」
「そだけど……」
「俺のせいで慌ててたんだし、仕方ないよ」
「……でも」
うにゅほが俺を心配そうに見上げる。
「◯◯、まちがって、めにしゅーしてたらどうしようって……」
「いや、しないから。間違ってもしないから」
「ほんと?」
「目薬するのとスプレーするのは、指の動きがまったく違うだろ!」
「そだけど……」
心配してくれるのは嬉しいが、ポイントがいまいち的外れである。
そんなところが可愛いのだけれど。
 






493 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:32:46 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月4日(水)

朝起きると、冷蔵庫の上に妙なものがあった。
「……くじ引き?」
かすかに色づく透明な液体の入った瓶に、やたらと長い棒が数本突き立っている。
「あ、それ、おかあさんおいてったの」
「芳香剤か」
「うん、ほうこうざい」
数本の棒が液体を吸い上げ、揮発させる。
ちょっとオシャレなデザインだ。
「◯◯、すごいね」
うにゅほが感心したようにこちらを見上げる。
「なにが?」
「わたし、においかぐまで、ほうこうざいってわかんなかった……」
「どっかで似たようなのを見たことがあるだけだよ」
「そなんだ」
「……俺たちの部屋、臭かったのかな」
そうでもないと思うのだが。
「べーじ、ぜんぶのへやにおくんだって」
「べーじ?」
「これ」
うにゅほが芳香剤を指差す。
ラベルには「VAGE」と記されている。
「……これ、ベージって読むのかな」
「おかあさん、べーじっていってたよ」
「どちらかと言えば、ベージュって感じに読める」
でも、ベージュのスペルってBから始まってたような気がするんだよな。
「ネットで調べてみるか」
「うん」
便利な世の中になったものだ。
アカシックレコードとは、インターネットのことではあるまいか。
「──出た。VAGEと書いて、バーグだって」
「ばーぐ……」
うにゅほが渋い顔をする。
納得行かないらしい。
実に同感である。
「なにごなのかなあ……」
「わからん」
あまり英語っぽくないことは確かだ。
ともあれ、
「母さんに、ベージじゃなくてバーグだって教えておかないとな」
「うん」
母親に恥を掻かせるわけにも行くまい。
香りに文句はないのだけど。







494 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:33:41 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月5日(木)

「──すもももももももものうち」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「もももも?」
「すももも、ももも、もものうち」
「あー」
うんうんと頷く。
理解したらしい。
「すもも、ももだもんね」
「さっき、ふと思ったんだけどさ」
「?」
「スモモって、本当に桃なのかな」
「ちがうの?」
「××、スモモ食べたことある?」
「ない……」
「プラムは?」
「あ、たべたことある」
「スモモって、プラムなんだよ」
「──…………」
うにゅほが絶句する。
「ぷらむは、すもも……」
「うん」
「すももは、もも?」
「調べてみるか」
Wikipediaの当該ページを開く。
「桃は、バラ目バラ科モモ亜科モモ属モモ」
「ばらなの?」
「桃がバラ科なのは聞いたことあるな」
「へえー」
「次、スモモ」
「うん」
「スモモは、バラ目バラ科スモモ亜科スモモ属スモモ」
「……うーん?」
「近い種類ではあるけど、桃のうち、とは言えないかな……」
衝撃の事実である。
「ぷらむ、すももだったんだねえ……」
そこなんだ。
「プラム、たしかに酸っぱいもんな」
「うん」
そんな、小さな発見をした一日だった。







495 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:34:43 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月6日(金)

「──◯◯、◯◯」
不意に肩を揺さぶられる。
「んが」
「いすでねたら、かぜひくよ」
「……寝てた?」
「ねてた」
姿勢を正す。
首が痛い。
かなり不自然な体勢で寝落ちしていたようだ。
「ねるの、おそかったの?」
「いや──まあ、××基準では遅いだろうけど、普段通りだよ」
「そか……」
「春も眠いけど、秋も眠いんだよなあ」
「なんでだろね」
「気候の急激な変化で、自律神経がうんぬん」
「じりつしんけい……」
「気温やら湿度やら気圧やらが一気に変わる時期だから、体が慣れるまで時間がかかるのだな」
「へえー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「だから、秋は眠い」
「うん」
「春も眠い」
「うん」
「あと、冬も眠い」
「ふゆはなんで?」
「冬は、寒いから眠い。哺乳類の本能です」
「なつは?」
「夏は眠くない。気候が安定してるし、活動的になれる」
「うん」
「だから、俺は、夏が好きです」
「またらいねん、だねえ」
「まあ、冬は冬で好きだけどな」
「うん、ふゆすき」
「××は、台風以外ぜんぶ好きだろ」
「うへー……」
うにゅほが照れたように笑う。
季節には、季節それぞれの楽しみ方がある。
雪かきまで楽しんでしまううにゅほは、そのエキスパートなのかもしれないと思った。







496 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:35:50 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月7日(土)

ゲームセンターで、星のカービィのブランケットをゲットした。
「ふー……」
ブランケットを膝に掛けた途端、思わず溜め息が漏れる。
「ブランケットって、あったかいんだな……」
「そなの?」
「××、使ったことなかったっけ」
「ない、とおもう」
「使ってみる?」
「うん!」
うにゅほが隣へやってきて、
「う、しょ」
俺の膝に腰掛けた。
「××さん」
「?」
「ブランケットの上に座ってどうする」
「すわりごこち、いい」
「まあ、ふかふかしてるしな」
「うん」
「……わかっててやってますね?」
「うん!」
うへーと笑う。
「じゃ、いったん下りて」
「はい」
膝の上、おしりの下にあったブランケットを手に取り、再びうにゅほを座らせる。
「膝に掛けるんだぞ」
「うん」
ふぁさ。
「おー……」
「あったかいだろ」
「うん、あったかい」
「六百円で取れたとは思えないぞ」
「でも、おしりのほうがあったかいな……」
「そりゃな」
人肌だもの。
「◯◯は、わたしと、ぶらんけっと、どっちあったかい?」
「××」
「うへー……」
ブランケットより暖かいと言われただけで、嬉しそうだ。
なんというか、ちょろ可愛いなあ。







497 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:36:55 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月8日(日)

「──なんか、今日、暑くない?」
作務衣の共襟をパタパタと動かし、内側に空気を送り込む。
「あついかも……」
「何度?」
「うと、ちょっとまってね」
うにゅほが温湿度計を覗き込む。
「にじゅうななてん、ごど!」
「夜なのに随分暑いな」
「なつみたい」
「窓開けたら、さすがに寒そうだ」
なんだかんだ、もう十月だし。
「弟とか、大丈夫かな。暑さにやられてるんじゃないか」
「◯◯、へやにいないから、だいじょぶとおもう」
「……?」
言ってる意味がよくわからない。
「◯◯いるへや、あったかくなるから」
「……そうなの?」
「そだよ?」
初耳である。
「弟の部屋に行ってみよう」
「うん」
こんこん。
「あーい」
返事を待って、弟の部屋の扉を開ける。
「どうかしたの?」
「……涼しいな」
「うん、すずしい」
「何?」
「この部屋って、温度計ある?」
「あるよ」
弟が、PC本体の上を指す。
「何度?」
「24℃」
「──…………」
「……何?」
「うーとね、◯◯のいるへや、あったかいねって」
「いや、もしかして、俺の部屋は××と俺でふたりいるからでは──」
「昔からそうだよ」
「昔からそうなの……?」
「兄ちゃんのいる部屋、冬でも暑いから」
「……なんかショックなんだけど」
べつに、汗かきでも、平熱が高いわけでもないのに。
「ふゆ、あったかくていいよ」
「夏は?」
「わたし、あついのすき」
「夏は俺の部屋来ないでね」
「うるせー」
なんだろう、そんな体質があるのだろうか。
言われてみれば、俺の部屋は、冬でもストーブなしで20℃弱はある。
普通はもっと寒いのかもしれない。
謎だ。







498 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:39:16 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月9日(月)

外出の準備を終え、立ち上がる。
「──さて、行くかな」
「うん」
「──…………」
一緒に出掛けようとしたうにゅほの肩を押し戻す。
「××は、行かない」
「?」
なに小首かしげてんだ。
「さて、問題です」
「はい」
「俺は、何をしに行くでしょうか」
「わたしの、たんじょうびプレゼント、かいに」
「わかってるじゃないですか」
「うん」
「──…………」
部屋を出ようとするうにゅほの肩を押し戻す。
「言ったろ。一緒に選ぶのもいいけど、今年は当日に驚かせたいって」
「うん……」
「ふたりで出掛けたら、わかっちゃうだろ」
「かうとき、めーとじるとか……」
「無理があるね?」
「はい……」
「買うものは決めてあるから、すぐ帰ってくるよ」
「ほんと?」
「おみやげに、チョコボールも買ってくるから」
「わかった……」
肩に提げていたポシェットを、ようやく下ろす。
「どこいくの?」
「ヨ──」
「よ?」
「……秘密」
危ないところだった。
「じゃあ、行ってくるから」
「いってらっしゃい……」
指でも咥えそうな表情で見送られ、家を出る。
小一時間で帰宅し、プレゼントは階段下の収納スペースに隠しておいた。
あとは当日を待つばかりである。







499 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:40:14 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月10日(火)

「──…………」
頭を右に傾ける。
かぱ。
開く。
「──…………」
頭を左に傾ける。
ぱた。
閉じる。
「……うーん」
かぱ。
ぱた。
かぱ。
ぱた。
「なにみてるの?」
俺の肩越しに、うにゅほがディスプレイを覗き込む。
だが、開いているのは、なんら変哲のないニュースサイトだ。
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いや、耳掛けイヤホンの右側だけ、開閉が緩くなってるみたいでさ」
右に傾ける。
かぱ。
左に傾ける。
ぱた。
「ほんとだ」
「困ったなあ……」
高かったのに。
「◯◯、のりのりなのかとおもった」
「ノリノリ?」
「あたまふってるから」
「あー……」
後ろからだと、そう見えるかもしれない。
実際は、ノリノリどころかションボリである。
「あ、そうだ」
「?」
「買ってまだ一年経ってないから、保証効くかも」
「おー」
クローゼットからイヤホンの箱を取り出し、レシートと保証書の有無を確かめる。
「──あった!」
「なおる?」
「直る、はず。大丈夫なはず」
煩雑な手順を経て、イヤホンをオーディオテクニカサービスセンターへと送付した。
しばらくは予備で我慢することにしよう。







500 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:41:03 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月11日(水)

「──…………」
PCで作業中、ふと喉が渇いた。
冷蔵庫に近いのはうにゅほだが、読書の邪魔をする気にはなれない。
いつものようにチェアのキャスターを滑らせ、

──ぶつん!

イヤホンから垂れ流していた作業用BGMが、唐突に途切れた。
「あー……」
またやってしまった。
今日だけで、既に三回目である。
「くび、だいじょぶ?」
「首は大丈夫だけど……」
心配なのは、イヤホンジャックのほうだ。
「このイヤホン、修理に出したのよりコード短いんだよなあ」
修理に出したイヤホンのコードの長さが染み付いてしまっているため、たびたびプラグを引っこ抜いてしまうのである。
「◯◯、あれないの?」
「あれ?」
「うーとね、せん、ながくするやつ」
「延長コードか」
「それ」
「あるよ」
全部繋げば部屋のどこへでも行くことができるくらい、ある。
「つかわないの?」
「さすがに使ったほうがいいかもなあ」
「なんか、だめなことあるの?」
「延長コードって、最低でも1mはあるんだ」
「うん」
「今度は長すぎて、キャスターに絡まる」
「あー……」
「まあ、注意して使えばいいんだけどさ」
だが、そんなことを言い出してしまえば、コードが短くても注意して使えばいい、となる。
それができていないから現状があるわけで、恐らく延長コードには、キャスターに絡まる未来が待っているのだろう。
「しゅうり、はやくおわったらいいね」
「まったくだ」
音質だけでなく、コードの長さまでベストだったとは。
失って初めて気づくことは、やはりあるのだなあ。







501 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:41:56 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月12日(木)

「──あ、ガム切れた」
推定200粒は入っているボトルガムだが、噛んでいればいつかはなくなるものだ。
「からっぽ?」
「うん」
「あんなにからいのに……」
「最初の辛さを乗り切れば、あとはけっこう甘かったりするんだよ」
「……ほんと?」
「本当は本当だけど、試さないほうがいいんじゃないかな……」
すぐに吐き出してしまうのがオチである。
「なんかのついでに、また買ってこないと」
「あ」
うにゅほがぴょんと立ち上がる。
「ものおきにね、あたらしいのあったよ」
「マジか」
「もってくる!」
小走りで自室を後にしたうにゅほが、ほんの一分少々で戻ってくる。
「あった!」
右手には、クロレッツのビッグボトルが掲げられていた。
「はい」
「ありがとな」
うにゅほの頭をぽんぽんと撫でて、ボトルを受け取る。
「うへー」
買わずに済んで、嬉しい。
取ってきてくれて、ありがたい。
だが、女の子にガムをもらうと、口くせーんだよおめーという含意が脳裏をよぎるのだ。
もちろん、うにゅほはそんな子ではない。
俺自身も、女性に限らず、人からガムをもらった経験すらあまりない。
では、この被害妄想はどこから来たのだろう。
「……ネットかなあ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いや、なんでもない」
情報と共に偏見まで取り入れてしまうのは、インターネットの功罪である。
とは言え、こうして不特定多数の方々に日記を閲覧してもらえるのも、ネットがあるからに他ならない。
「──…………」
うにゅほがネットに興味を持ったら、止めるべきか、止めざるべきか。
いまから悩んでも仕方がないけれど。







502 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:43:05 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月13日(金)

「いてて」
「だいじょぶ……?」
「皮一枚だし、大丈夫だよ。血もほとんど出なかったし」
風呂場でヒゲを剃る際、T字カミソリで手のひらを切ってしまったのだった。
「おろないんぬるね」
「お願いします」
「はい」
うにゅほに右手を差し出す。
「──それにしても、不思議なんだよなあ」
「ふしぎ?」
ぬりぬり。
「誰がどんな剃り方したって、右の手のひらなんて切れるはずないんだよ」
「◯◯、ひげそるの、へたっぴいだから……」
「へたっぴいだとしても!」
「そなの?」
「そうなのです」
「うーん……」
納得が行かないようだ。
「第一に、俺は右利きだ」
「うん」
「××が右手で包丁持ったとき、右手に怪我するか?」
「しない……」
「これだけでも、ちょっと不思議だろ」
こくこく。
うにゅほが頷く。
「第二に、最近のT字カミソリは横滑りに強い」
「よこすべり」
「刃物を横にスッと動かすと、切れるだろ」
「あぶない」
「それを防止するガードが付いてる」
「へえー」
「第三に、手のひらは平らである」
「たいら……」
「ヒゲ剃りで難しいのは、口まわりのデコボコした部分だ」
「◯◯、よく、ちーだしてる」
「逆に、滑らかな曲面であるほっぺたは切らない」
「うん、あんましちーでてない」
俺、そんなにヒゲ剃るの下手だと思われてるのか。
「考えられるとしたら、刃の部分をぎゅっと握るくらいだけど──」
「したの?」
「したらアホだと思う」
「──…………」
うにゅほが苦笑する。
ノーコメントらしい。
でも、無意識ながらそれをした可能性があるんだよなあ。
俺、アホなのかもしれない。
 







503 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:44:28 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月14日(土)

「あし、さむいー……」
座椅子に腰掛けたうにゅほが、伸ばした足を擦り合わせる。
「俺も、足冷たい」
「ね」
「部屋はわりかしあったかいんだけどなあ」
「うん」
「何度ある?」
うにゅほが、本棚の最下段に設置してある温湿度計を覗き込む。
「うーとね、にじゅうよんてんごど」
「そこそこだな」
「そこそこ」
「でも、足冷たい」
「つめたい」
「何故だろう」
「くつしたはいてないから……」
「正解!」
「うへー」
「なーんか履く気にならんよな、靴下」
「うん」
靴下嫌いなふたりである。
夏場は良いのだが、冬場はつらい。
それでも履きたくないのだから、筋金入りだ。
まあ、本格的に冬が到来してしまえば、そうも言っていられなくなるのだけど。
「××、足こっち」
チェアを回して、下半身をひねる。
そして、うにゅほに向けて両足を突き出した。
「!」
即座に意図を理解したうにゅほが、俺の足に自分の足を重ねる。
「◯◯のあし、つめたいねえ」
「××の足も冷たいぞ」
「◯◯のあし、おおきいねえ」
「××の足は小さいな」
しばしくっつけたままでいると、
「あ、あったかくなってきた」
「なってきたな」
「くつしたいらないね」
「いや、いるだろ」
「いるかー」
まだ履かないけど。
束縛感のない靴下はないものか。
 







504 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:45:26 ID:LiyNQJIQ0

2017年10月15日(日)

「──…………」
目を覚ます。
晴れ。
張り詰めた秋の朝の空気に、思わず身を震わせる。
「あ、おはよー」
半纏を羽織ったうにゅほが、とてとてとベッドへ歩み寄る。
朝の挨拶より先に、言いたいことがあった。
「誕生日おめでとう、××」
「!」
「あと、おはよう」
「──うん!」
この極上の笑みを見ることができただけで、早起きをした甲斐があったというものだ。
「誕生日プレゼントがあります」
「はい」
ベッドの下から、綺麗に包装された小箱を取り出す。
「なにかなあ……」
「開けてみて」
「あけていいの?」
「開けなきゃ使えないよ」
「あけるね」
「どうぞ」
包装紙すらプレゼントの一部とばかりに、うにゅほが恐る恐る包みを開けていく。
「しろいはこだ」
「白い箱だな」
「だぶりゅー、あい、しー、しー、えー」
「ウィッカ」
「あけていい?」
「いいってば」
「──…………」
かぱ。
「あ!」
うにゅほが目をまるくする。
「とけいだ!」
「はい、腕時計です」
「でも、わたし、とけいもってるよ?」
「三年くらい前にプレゼントしたやつな」
「うん」
「みっつも年を重ねれば、着けるべき時計も変わります。あれはすこし子供っぽい気がして」
「そかな」
「こっちは大人っぽいだろ」
「うん、かっこいい」
「しかも、ソーラー電波時計で、電池交換も時刻合わせも不要」
「おー!」
「服装によって、前の時計と使い分けてください」
「まえのとけい、まだ、つけていいの?」
「××は俺の着せ替え人形じゃない。好きなときに好きなほうを使えばいいよ」
「……うん」
うにゅほが小箱ごと腕時計を抱き締める。
「◯◯、ありがと」
「どういたしまして。あとでサイズ調整するから」
「はーい」
午後にふたりでケーキを買いに行って、夜は家族みんなで手巻き寿司を食べた。
両親からのプレゼントは相変わらずの図書カード、弟からは合わせやすそうなシンプルなマフラーだった。
年を取るのは、良いことばかりではない。
けれど、祝わない理由にはならない。
特別な日を特別な相手と過ごすことに、喜びが伴わないはずがない。
来年は、何を送ろうかな。
今から悩むのは、さすがに気が早いけれど。
 






505 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/10/16(月) 20:46:25 ID:LiyNQJIQ0

以上、五年十一ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2017年10月17日 18:09  ID:q52PVmEV0
    これ全部読んできた猛者は果たして何人いるのだろうか


  • 2  Name  名無しさん  2017年10月17日 18:23  ID:b2qntnY70
    十年超えたら尊い存在になれそうだ


  • 3  Name  名無しさん  2017年10月17日 18:32  ID:NQnbn2Cm0
    まとめて出版してくれたら喜んで揃えるんだがなぁ


  • 4  Name  名無しさん  2017年10月17日 19:42  ID:1rkRa6wC0
    一周まわって萌えるわ


  • 5  Name  名無しさん  2017年10月17日 20:00  ID:d0inCs3L0
    いつも思うんだが狂気だよな


  • 6  Name  名無しさん  2017年10月17日 20:06  ID:Wcxd878O0
    いつまで続くんだこれ


  • 7  Name  名無しさん  2017年10月17日 20:57  ID:HFaT18re0
    薄い本のネタとしてはいいんじゃない
    という訳で新刊下さい管理人さん


  • 8  Name  名無しさん  2017年10月17日 21:37  ID:zghqc8U90
    純粋に怖いと思った
    これも愛の形か


  • 9  Name  名無しさん  2017年10月18日 22:51  ID:UJtihU5T0
    これ定期的にまとめられてるけど、面白いの?
    俺は、長くて読む気にならないけど


  • 10  Name  名無しさん  2017年10月18日 23:06  ID:C4esJANp0
    波長が合えば一からでも全部読むだろうし、合わないやつは一日分も読めないんじゃないの


  • 11  Name  名無しさん  2017年10月19日 20:08  ID:nEFOksyR0
    個人的に結構好き。二次創作の一環と思えば違和感はない…と思う


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