2017年11月17日

1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
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523 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:47:12 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月1日(水)

「11月だなあ」
「じゅういちがつだねえ……」
「11月と言えば? ──はい、××さん」
「え!」
「五、四、三、ニ──」
「うと、うと、じゅうにがつのまえ……」
11月が聞いたら泣くぞ。
「まあ、あんまりイベント感のある月ではないよな」
「うん」
淡々と過ぎ去っていくイメージがある。
「1月は?」
「いちがつは、◯◯のたんじょうび!」
「お正月もあるな」
「うん」
「2月は?」
「えほうまき」
先にバレンタインが出てほしかった。
「3月」
「はる」
「4月」
「さくら!」
「5月」
「うと、ごーるでんうぃーく……」
「6月」
「──…………」
うにゅほが考え込む。
「……たしかに、6月もイベント感ないな」
「うん……」
「7月」
「なつ!」
「8月」
「はかまいり」
「9月」
「あき」
7月が夏で9月が秋であるあたり、北海道である。
「10月」
「とりっく、おあ、とりーと」
「ハロウィンな」
「はろうぃん」
「11月は、コロの命日くらいしかないな」
「うん……」
今年もビーフジャーキーを供えてあげよう。
「とりあえず、6月と11月には、もうすこし頑張ってもらわないとな」
「そだね」
何がどうなれば頑張ったことになるのかはわからないが、是非頑張ってほしい。








524 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:48:29 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月2日(木)

「××、××」
「?」
「来てみ」
「はーい」
うにゅほを膝に乗せ、YouTubeの再生ボタンを押す。
「わ」
「ポメラニアンの赤ちゃん」
の、動画。
「かわいー……」
うにゅほが、食い入るように画面を見つめる。
「しろいこ、わたあめみたい」
「美味しそうだな」
「たべちゃだめだよ」
「食べないよ」
二分程度の動画が終わると、次のおすすめ動画が自動的に再生された。
今度は、ポメラニアンにシャンプーをする動画だった。
「しなしなだ」
「洗い立てはな」
一分後、
「ふわふわだ!」
「美味しそうだな」
「たべちゃだめだよ?」
「食べないって」
そんな会話を交わしていると、次の動画が始まった。
「はりねずみのおふろ、だって」
「どれどれ」
「はりねずみ、とげとげだねえ」
「ハリネズミだからな」
「いたいかな」
「優しく触れば大丈夫じゃないか?」
「はな、ぴくぴくしてる」
「可愛いな」
「うん、かわいい」
動画が終わり、また次の動画が始まる。
しまった、これ永遠に見れるやつだ。
そんなこんなで、二時間ほど、うにゅほと一緒に可愛い動物動画を楽しんだのだった。
また見よう。







525 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:49:29 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月3日(金)

「うへー……」
「わ」
ぐでんぐでん。
負ぶさるように、うにゅほに抱きつく。
「お、も、いー……!」
「頑張れ」
「がんばるー……」
うにゅほの負担にならない程度にかける体重を調整しつつ、自室へ向かう。
「◯◯、やきにくのにおいする」
「焼肉食べてきたからなあ」
「おさけのにおいもする」
「お酒も飲んできたからなあ」
「だいじょぶ?」
「大丈夫!」
「ほんとかな……」
「では、証明してみせよう!」
ぱ。
うにゅほから身を離し、しばし屈伸運動をする。
「なにするの?」
「片足でしゃがんで、そのまま立つ! 立ってみせる!」
「むり、むり」
うにゅほが苦笑する。
「シングルレッグスクワットといって、実際にあるトレーニングだぞ」
「でも、あぶないよ」
「危ない」
「うん」
「だが、男には、やらねばならないときがあるのだ」
「それ、いま?」
「今!」
「いまなんだ……」
「行きます!」
右足で廊下を踏みしめ、左足を高く掲げる。
いくら酔っていたとしても、この程度でふらつくような鍛え方はしていない。
「だいじょぶ……?」
「まあ、見ていなさい」
ゆっくりと右膝を曲げていき、やがてかかとが尻につく。
「おー……」
「待て、ここからだ……」
ぐ。
ぐぐぐ、ぐ。
「──ハイ!」
なかば無理矢理に立ち上がる。
「おー!」
ぱちぱちぱち!
「つ、足攣りそう……」
「わ、だいじょぶ?」
うにゅほが俺の右足に触れる。
「いや、なんか、左足の太腿が……」
「え、ひだり?」
「左」
「なんでだろ」
「わからん……」
証明したのは、酔っていないことではなく、むしろ酔っていることではあるまいか。
酒の勢いでおかしなことを始めるのは、危ないのでやめましょう。
 






526 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:50:26 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月4日(土)

「──××、今日は何曜日?」
「うーと、どようび」
「そうなんだよ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「もう二日休んでるのに、明日も休みなんだよ!」
「さんれんきゅう、だもんね」
「毎週三連休だったらいいのに……」
ごろんごろん。
「あ、そうだ。こないだ借りたDVD観る?」
「なんだっけ」
「"アイヒマンの後継者"って映画と、"ゾンビランド"ってやつ」
「ぞんび……」
「ゾンビは出るけど、観て楽しいのは"ゾンビランド"のほうだと思うぞ。ホラーコメディだし」
「そなの?」
「むしろ、精神的にきついのは、"アイヒマンの後継者"のほうだと思う」
アイヒマンの後継者。
スタンレー・ミルグラムの電気ショック実験を描いた映画である。
エンタメ作品としては、どう考えたって、ゾンビランドに軍配が上がるだろう。
「じゃあ、ぞんびみる……」
「そうしましょう」
トレイにDVDをセットしたあと、膝の上にうにゅほを乗せる。
「だっこしてて……」
「はいはい」
左腕でうにゅほを抱き締め、右手でマウスを操作する。
メニュー画面で字幕を消し、日本語吹き替えにして、本編再生ボタンを押した。

一時間半後──
「はー……」
「面白かったな」
「おもしろかった!」
うにゅほが笑顔でこちらを振り返る。
ゾンビ映画だから、多少はグロいし、ゴア描写もある。
だが、それを補って余りあるほどの勢いのある映画だった。
「……ていうか、ぜんぜんホラー映画じゃなかったな」
ゾンビが出てくるアクション映画、という感じだ。
「こわくないほういいよ」
「俺は、怖いのけっこう好きなんだけど」
「うーん……」
よくわからん、という顔をされた。
面白いのになあ。
押しつける気はさらさらないけれど。







527 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:51:16 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月5日(日)

「寒い……」
「さむいねえ」
ぽんぽんと膝を叩く。
「××」
「はーい」
以心伝心。
うにゅほが俺の膝に腰掛ける。
「あったかいな」
「あったかいねえ……」
じんわりと、うにゅほの体温が伝わってくる。
「いんたーねっとしていい?」
「いいぞ」
無害なまとめサイトを開き、うにゅほにマウスを譲る。
「変なページを開いたら言うように」
「はーい」
読みさしの文庫本を開き、うにゅほの肩越しに文字を追う。
しばしののち、
「……?」
うにゅほが、とあるGIF画像をぼんやりと見続けていることに気がついた。
それは、キャンドルの火をパンチで消している猫の画像だった。
たしかに可愛いが、二分も三分も見入るものではない。
「どした」
「んー……」
うにゅほがこちらを振り返る。
「コロも、これしてたなって」
コロ。
数年前に亡くなった愛犬の名だ。
「ひーついたたばこ、おとうさんがすてたら、ばしっ、ばしって、きえるまで」
「あー、やってたなあ」
何が気に入らなかったのか、あるいは逆に気に入ったのか、火を見るや、前足で叩いて消す犬だった。
「懐かしいな」
「うん」
こくりと頷き、うにゅほが言葉を継ぐ。
「ぽいすて、だめだよねえ」
「……そっち?」
「?」
小首をかしげる。
「まあ、うん、それは今度言っておこう」
「そだね」
命日が近づいているためか、愛犬のことを思い出すことが増えた。
センチメンタルな季節である。







528 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:52:25 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月6日(月)

「……あー」
溜め息とも吐息ともつかない声が口から漏れる。
「DVD観ないとなあ……」
「みないの?」
「観る。観るけど、いまはちょっと気分じゃないかなあ」
「かえすの、いつだっけ」
「明日」
「みないの?」
「観ないとなあ……」
観たくて借りたものなのに、いつしか義務になっている。
百円だから気にしなくても良いと言えば良いのだが、同じ作品は二度は借りないものだ。
「明日観るか、夜観るか」
「こわいやつだっけ」
「怖くはないけど、観ててスカッとする映画ではないと思う」
「うーん……」
「××向けではないかな」
「どんなの?」
「ミルグラム実験って知ってる?」
「しらない」
知ってたら逆に驚く。
「本棚にも何冊か資料があるけど、人間はどのくらい権威に服従してしまうか、という実験なんだ」
「ふうん……」
「スカッとすると思う?」
「おもわない」
「だろ」
「◯◯、そういうのすきだねえ」
「大好き」
「そか」
うにゅほが鷹揚な笑みを浮かべる。
俺とうにゅほの好みは違う。
けれど、否定しあったり、押しつけあったりはしない。
特に気をつけているわけでもないが、自然とそうなってしまった。
「……大切なことだよなあ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんでもない」
そう告げて、うにゅほの頭を撫でる。
さて、DVDはどうしようか……。







529 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:53:46 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月7日(火)

ローソンに立ち寄ったときのことである。
「あ、まかろん」
「本当だ」
「なんか、ひさしぶりにみたきーする」
「ローソン自体が久々だからな」
うにゅほが、上目遣いでこちらを見上げる。
「たべたいな……」
「えーと、和栗とピスタチオか」
最初に食べたときも、この組み合わせだった記憶がある。
「和栗とピスタチオ、どっちがいい?」
「うと、どっちかなあ」
「両方?」
「……りょうほうがいいな」
「了解」
二個入りのマカロンをふたりぶん購入し、車内に戻る。
「たべていい?」
「食べよう食べよう」
コンビニの前で食べれば、ゴミを持ち帰らずに済むのだし。
「いただきます」
「いただきます」
さく。
軽い食感の皮の下に、ねっとりとした濃厚な生地。
秋らしい栗の匂いが口内から鼻腔へと香る。
「美味い」
「おいしいねえ……」
顔を見合わせ、笑い合う。
笑顔になれるお菓子ほど、素敵なものはないだろう。
機嫌よく食べ進めていると、

──ガリッ!

なにか、硬いものを噛んだ。
「──…………」
嫌な予感がする。
俺は、この感触を知っている。
舌先で歯列をなぞると、
「……あー」
「どしたの?」
やはりだ。
それを吐き出し、うにゅほに見せる。
「銀歯取れた……」
「こないだいれたやつ?」
「いや、ぜんぜん関係ないとこみたい」
「はいしゃいこ」
「空いてるか、電話してみるか」
「うん」
せっかく幸せな気分だったのに、空気を読まない銀歯である。
歯医者は明日だ。
銀歯を接着し直すだけで済めばいいのだが。







530 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:55:09 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月8日(水)

銀歯を接着するために歯医者へ行くと、案の定虫歯が見つかった。
「──と、いうわけで、削ってまいりました」
「おつかれでした」
ぺこり。
うにゅほが小さく頭を下げる。
「ま、ちょびっとだけだけどな」
「ちいちゃいむしば?」
「そう。取れた銀歯で隠れてたみたい」
「そか……」
「おかげで銀歯、作り直しだよ」
「おかね、かかるねえ」
「ごめんな。俺の歯磨きが甘いせいで……」
「そんなことないけど……」
だが、事実だ。
「……うーん、ちゃんと磨いてるつもりなんだけどなあ」
「──…………」
うにゅほがしばし思案し、
「◯◯、はーみがくの、いつ?」
「寝る前かな」
「わたしも、ねるまえ」
「磨いてるな」
「わたしといっしょに、はーみがく?」
「あー……」
虫歯ゼロのうにゅほに、歯の磨き方をご教示願うのもいいかもしれない。
「うん、そうしようかな」
「わかった!」
「よろしくお願いします、××先生」
「うへー……」
うにゅほが照れる。
うにゅほに何かを教えることはあっても、教わることは珍しい。
歯磨きの様子は、明日の日記で詳しく述べることにしよう。







531 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:56:15 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月9日(木)

窮屈な洗面台を、ふたり並んで覗き込む。
「では、はーみがきます」
「お願いします」
前回までのあらすじ。
虫歯ゼロのうにゅほから、正しい歯の磨き方を学ぶことになったのだった。
「いーして」
「前歯から?」
「うん」
「いー」
「いー」
口角を真横に開き、歯磨き粉をつけた歯ブラシでガッシガッシと前歯を磨く。
「だめ」
「?」
手を止める。
「もっとやさしく」
「優しく……」
「はぐき、ちーでちゃう」
「あー」
たまに出る。
「ねもと、やさしく、ながくみがくの」
「わかりました」
なるほど。
豪快に磨くから、磨き残しが出るのか。
歯の一本一本を注意して磨くことで、力を入れずとも、確実に歯垢を除去することができる。
「おくばのうらはね、はのすきまに、けさきをいれるの」
「ほうは」
「そう」
ごしごし。
「はぶらしは、ちょちょちょってうごかすんだよ」
「ほう?」
ごしごし。
「そんなかんじ、そんなかんじ」
歯ブラシを大きく動かすと、歯と歯の隙間がおろそかになる。
言われてみれば当たり前なのだが、指摘されなければなかなか気づかないものだ。
「はい、おしまい」
「おー……」
たっぷり五分ほどかけて歯を磨き終えると、生まれ変わったような心地になった。
「わかった?」
「わかった、けど……」
これを毎日かあ。
「あしたも、いっしょにみがこうね」
「はい」
まあ、慣れだ慣れ。
うにゅほと一緒に虫歯ゼロを目指そう。







532 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:57:04 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月10日(金)

今日は、特に何もない一日だった。
記すべきことも、さほどない。
「あー……」
キーボードに向かいながら、首をがくんがくんと揺らす。
「書くことが、なー、いー……」
「ないの」
「ない」
「ばんごはん、ステーキだったよ?」
「うん」
会話をしながら、キーボードを叩く。
ネタがないときの最終手段だ。
「今日、他に何あったっけ」
「うーと、どくたーえっくすみた」
「それ、俺は見てないからなあ」
録画してあるドラマを両親と一緒に見るのが、うにゅほの日課のひとつである。
「おもしろいよ?」
「ドラマ、あんまり興味ない……」
「そか」
「あと、何したっけ」
「まいにちしてるの、なし?」
「掃除とか?」
「おふろとか……」
「なしで」
うにゅほが大きく首をかしげる。
「……なにしたっけ」
「何もしてないわけじゃないけど、書くことがない……」
「なにかする?」
「するか」
「あたまとり、する?」
「あたまとり、××やたら強いからなあ」
「しりとり」
「しりとりになると、今度は俺が強すぎる」
「そだねえ」
「なんか、新しい遊びが欲しいよな」
「ほしいねえ……」
何かないかとうんうん唸っていると、今日の日記が仕上がった。
「──とりあえず、日記はこれくらいでいいや」
「かけた?」
「書けた」
「よかったー」
うにゅほがほにゃりと笑う。
新しい遊びは新しい遊びで、何か考えておこう。







533 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:58:10 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月11日(土)

今日は、うにゅほとふたりでカラオケに行った。
「あー、歌った歌った!」
「うたったー!」
「××も、レパートリー増えてきたな」
「うへー」
基本はやはりデュエットだが、ひとりで一曲歌いきることも珍しくなくなってきた。
「あ、プライズ見てこうぜ」
「うん」
併設されているゲームコーナーへと足を向ける。
ぐるりと一周したところ、東方Projectのぬいぐるみが気になった。
「フランとこいしは持ってるけど、アリスとパチュリーは取ってなかったなあ」
「とる?」
「アームの強さを試してみよう」
財布から百円玉を取り出し、筐体に投入する。
操作すること、しばし。
「……弱いな」
「だめ?」
「一発で取るのは無理だけど、横向きにすれば鷲掴みできると思う」
「そなんだ」
「試しに、千円いい?」
「うん」
千円札を両替し、百円玉を五枚投入する。
アームの操作に集中していると、
「──兄ちゃん、頑張っとるか」
唐突に、見知らぬお爺さんに話し掛けられた。
「!」
うにゅほがぺこりと頭を下げる。
「んー、なかなか難しいですね……」
「ほうか、ほうか」
お爺さんは、好々爺然とした笑みを浮かべると、
「彼女にちゃあんと取ってやれよ!」
と、俺の尻を軽く叩いて、その場を後にした。
「かのじょ、だって」
「そう見えたんだな」
珍しい。
普段はだいたい兄妹に見られるからなあ。
「……うへえー」
ばんばん!
うにゅほが俺の背中を叩く。
照れているらしい。
アリスとパチュリーは、二千円ちょっとで取れた。
フラン、こいしと、並べて飾ることにする。







534 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 15:59:07 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月12日(日)

葉の落ちた公園の木々を窓から眺めながら、呟く。
「11月、か……」
「ゆき、ふるかな」
「昨夜、××が寝たあと、霰降ってたぞ」
「あられ?」
「霙かも」
「みぞれ……」
うにゅほが小首をかしげる。
「どうちがうの?」
「氷の粒が霰で、雨混じりの雪が霙」
「そなんだ」
「そうなのだ」
「はつゆき?」
「このあたりだと、初雪かも」
「みたかったなあ……」
「風は強いわ雨は混じるわで、びちゃびちゃだったぞ」
「……んー」
うにゅほが苦笑する。
思っていた初雪の光景とは、少々趣が異なっていたらしい。
「◯◯、なにかんがえてたの?」
「アイス食べたいなあと」
「アイス……」
「ほら、もう11月だろ。いつものジェラート屋、まだやってるのかなって」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「せんもんてん、だもんね」
「冬は経営が厳しそうだ」
「いく?」
「無駄足になるかも……」
「そしたら、ドライブしたいな」
「……そっか」
雪が積もったら、そうそう出歩けないものな。
「んじゃ、行くか」
「うん!」
ドライブがてらジェラート屋へと赴いたところ、正月以外は営業しているとのことだった。
「冬にアイスって、なんか贅沢な感じするよな」
「そんなきーする」
「黒糖ひとくち」
「はい」
ジェラートは、相変わらず美味だった。







535 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 16:00:49 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月13日(月)

所用で外出したときのことである。
「──あ、やべ!」
慌ててアクセルを踏み込むが、間に合わない。
早々に諦めて、赤信号で停止する。
「この道通ると、たいていここで引っ掛かる……」
「そんなきーするね」
「ここの信号、長いんだよなあ」
「うん、ながいきーする」
「実際長いんだよ。こっちが生活道路、向こうが幹線道路だから」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「向こうの道路のほうが、太いし、車通りも多いだろ」
「うん」
「だから、向こうの道路が優先されて、そのぶんこっちは待ち時間が長くなる」
「なんか、ずるい」
「ずるいかどうかは知らんけど……」
苦笑し、ハンドルから手を離す。
「それにしたって、ここは長いよな。知ってる道でいちばん長い」
「そだねえ」
実際は二、三分なのだろうが、五分くらいに感じる。
「いつも、なかみちとおるよね」
「いつもはな」
「きょうは?」
「ほら、下校時間だからさ。子供がいたら危ないし」
「あー……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「こうえん、あるもんね」
「公園の傍は、できれば通りたくないな」
「うちのまえは?」
「うちの前の公園は、通らないと帰れないだろ」
「そか」
「気をつけてます」
「あぶないもんね」
などと幾許かの会話を交わしても、眼前の信号は、いまだに赤い光を灯らせたままだ。
「……ながいねえ」
「長い」
理由はわかるのだが、もうすこしなんとかならないものか。
一度測ってみたいものだ。
 







536 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 16:01:47 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月14日(火)

趣味のお絵かきのために、デッサンフィギュアを購入した。
しかし、
「……思ったより小さいな」
「ちいちゃいねえ」
可動域はすごいのだが、せいぜい15cmほどしかない。
手のひらの上に、すっぽりだ。
「うーん……」
ポーズを取らせてみる。
だが、どうにも上手く行かない。
「けっこう難しい」
「わたしもやってみていい?」
「いいぞ」
デッサンフィギュアをうにゅほに手渡す。
「おー……」
ぐりぐり。
「からだ、かたいね」
「そうか?」
「ゆかにてーつかない」
「……××、ついたっけ?」
「ついたことあるよ」
「最近は?」
「……うへー」
あ、笑って誤魔化した。
「またも、わたしのほうひらくよ」
「前屈以外は柔らかいもんな」
「うん」
「──…………」
「──……」
「もしかして、自分をモデルにしろって言ってる?」
「や」
うにゅほがふるふると首を横に振る。
「はずかしい……」
恥ずかしいんかい。
デッサンフィギュアに対抗意識はあれど、実際にモデルにされるのは面映いらしい。
複雑な乙女心である。
「まあ、写真に撮って使うんだから、サイズはそれほど気にならないかな」
「そなんだ」
文句ばかり言っていないで、しばらく使ってみよう。
 







537 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 16:02:45 ID:YRlcd/ZQ0

2017年11月15日(水)

「──あ!」
うにゅほが窓に走り寄る。
「ゆきだ!」
「おー」
ふわりと大きな牡丹雪が、空から無数に舞い落ちている。
「はつゆき、じゃないけど、はつゆき!」
「××にとっては初雪だな」
「うん!」
「道理で寒いと思ったよ……」
半纏を羽織っても、なお寒い。
体の芯から冷えるようだ。
「××、寒くない?」
「さむい!」
「……嬉しそうだな」
「うへー」
本当に雪の好きな子だ。
「えい」
「わ!」
背後からうにゅほを抱きすくめる。
「二人羽織しようぜ」
「するする」
半纏の紐を解き、うにゅほに覆い被せる。
袖口から伸びたうにゅほの手が、軽く中空をさまよった。
「てーにぎっていい?」
「ああ」
小さな手のひらと、指を絡ませる。
「◯◯のてー、あつい」
「平熱は同じくらいだと思ったけどな」
「わたし、ひえしょうかも……」
「あー」
わりと冷え性の気があるんだよな、うにゅほ。
「靴下、ちゃんと履かないとな」
「──…………」
「──……」
「……うへー」
誤魔化した。
「まあ、そのうち言ってられなくなるし」
「そだねえ……」
北海道の冬は、厳しい。
床暖房があればなあ。







538 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2017/11/16(木) 16:04:03 ID:YRlcd/ZQ0

以上、六年め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2017年11月17日 18:04  ID:ksEtLyVw0
    頭おかしなるでホンマ


  • 2  Name  名無しさん  2017年11月17日 18:11  ID:sjK5yJk20
    いつもの


  • 3  Name  名無しさん  2017年11月17日 18:27  ID:Sqm3UMVv0
    ここまで続けられるってすごいよな


  • 4  Name  名無しさん  2017年11月17日 18:44  ID:.nDT5mKU0
    ホントすごい
    これが蓮メリだったら・・と思う


  • 5  Name  名無しさん  2017年11月17日 19:15  ID:YB2nncMb0
    神様通信定期


  • 6  Name  名無しさん  2017年11月17日 19:17  ID:ic1f5W4m0
    これあれだろ
    妄想のイメージを固めまくって頭の中で実際に会話ができるようになるっていう技術

    そうでもないと説明ができん


  • 7  Name  名無しさん  2017年11月17日 19:41  ID:E28pTjN.0
    羨ましい精神力と忍耐


  • 8  Name  名無しさん  2017年11月17日 20:24  ID:TWlJSD0t0
    更新無くなったら死亡を疑っていいレベル


  • 9  Name  名無しさん  2017年11月17日 20:31  ID:yvlwZUEV0
    ※6
    そういうのをタルパと呼ぶ


  • 10  Name  名無しさん  2017年11月17日 20:31  ID:cHoUYwzf0
    ここが深層Webちゃんですか


  • 11  Name  名無しさん  2017年11月17日 22:31  ID:FBKl4meu0
    念能力に目覚めてそう


  • 12  Name  名無しさん  2017年11月17日 23:04  ID:P26xlt.f0
    楽しそうでなによりです


  • 13  Name  名無しさん  2017年11月18日 01:35  ID:XUv.zpU60
    なんか羨ましい
    見てて涙出てきた。羨ましくて。
    俺も個人的にやってみようかな


  • 14  Name  名無しさん  2017年11月18日 02:19  ID:GiL5XatY0
    タルパは冗談抜きで生きる希望になる
    嫌なことあったらずっと話聞いてくれるし、悪い事したら諭してくれる
    いなかったら高校中退してたかもしれん
    今はほぼ同化したから集中しないと会えないけども

    この日記の人は完全にオート化してそうだ


  • 15  Name  名無しさん  2017年11月18日 13:34  ID:XWL6Pv650
    あいも変わらず謎日記


  • 16  Name  名無しさん  2017年11月18日 19:23  ID:vNdG8TJ20
    はたしてどこまで続くんだろう


  • 17  Name  名無しさん  2017年11月19日 13:01  ID:.xr1kDOH0
    うにゅほかわいい


  • 18  Name  名無しさん  2017年11月24日 00:09  ID:9lExfYdE0
    なんか羨ましいな
    ちょっとタルパやってみようかな


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