2018年05月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



715 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:25:07 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月1日(火)

限界までリクライニングしたチェアに寝そべり、うとうとと口を開く。
「ゴールデンウィークだなあ……」
春風に長髪をそよがせながら、うにゅほが答える。
「ごーるでんうぃーくだねえ」
今年のゴールデンウィークは、平日二日を潰して九連休なのだった。
「あー……」
ごろん。
チェアの上で寝返りを打つ。
「……どっか行きたい気もする、けど」
「けど?」
「ねむい……」
「そか」
顔は見えないが、うにゅほが苦笑しているのがわかる。
「次の日が休みだと、つい夜更かししてしまう……」
「◯◯、まいにちよふかし」
「……朝更かし?」
「あさふかし」
「まあ、それはそれとして」
上体を起こし、軽く伸びをする。
「バイクの保険も戻したし、明日はどこか出掛けようか」
「んー……」
「?」
喜んでくれるかと思いきや、うにゅほが神妙な表情を浮かべた。
「うとね、あした、あめって」
「マジか」
風邪を引く恐れを押してまで雨の日に強行するほど、俺はバイク好きではない。
まして、うにゅほと一緒なら尚更だ。
「じゃあ、明後日かなあ」
「あさっても……」
「──…………」
リクライニングを戻し、PCで天気予報を確認する。
「げっ、5日までずっと雨か」
「うん」
「ごめん、今日出掛けてればよかったな」
時刻は既に午後四時で、外の空気は肌寒くなり始めている。
今からでは、いささか遅いだろう。
「むいか、はれ?」
「6日は晴れって出てるな」
「じゃあ、むいか、どっかいこ」
「そうだな。予報が変わって晴れたら、その日でもいいし」
「うん」
どうせ、予定はひとつもないのだ。
5日の夜は、早めに寝よう。







   

716 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:26:14 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月2日(水)

座椅子に腰を下ろしたうにゅほが、反り返って窓の外を見上げる。
「くもりー……」
「雨が降るのは夜だってさ」
「そか」
「今のうち、どっか行く?」
「んー」
軽く思案し、うにゅほが答える。
「でかけたあと、あめがふらないともかぎらない……」
「たしかに」
出先で降られるのがいちばん困る。
「バイクにこだわってるわけじゃないから、車で出掛けてもいいけど」
「うとね」
うにゅほが、申し訳なさそうに言う。
「わたし、みたいのあるの」
「見たいの?」
「うん」
「何が見たいんだ?」
「さくら……」
「あー」
なんとなく理解する。
「もしかして、晴れてるときに見たいとか」
「そう」
なるほど。
「じゃあ、晴れるのを待たないとなあ……」
「うん……」
キーボードを叩き、天気予報を開く。
「予報、変わってないな。6日まで待たないとダメみたい」
「そか」
「なんかする?」
「なんか?」
「なんも思いつかないけど」
「でも、なんかしたいね」
「トランプ」
「トランプ……」
「大統領じゃないほう」
「うん」
「──…………」
「──……」
「考えてみたら、ふたりでトランプってしたことないな」
「ないとおもう」
「やってみるか」
「うん」
「えーと、ふたりでできるゲームってなんだろ。ジジ抜きとかかな」
「じじぬき?」
「待って、いまトランプ探すから」
ふたりでやったジジ抜きは、それなりに盛り上がった。
ふたりで遊べるトランプゲームを幾つか見繕ってみようかな。







717:名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:27:27 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月3日(木)

「……えー、残念なお知らせがあります」
「?」
ディスプレイを丁重に指し示す。
「6日、雨になりました」
「!」
「ほんとごめん。一昨日出掛けてれば……」
眠いだのなんだのと言ってる場合ではなかった。
「ずっとあめ?」
「7日まで、ずっと雨みたい」
週間天気の欄に、曇り時々雨のマークがずらりと並んでいる。
「そか……」
うにゅほの表情が目に見えて翳る。
「8日は晴れる、らしい」
五日後の天気予報など、どれほど信頼できるかわかったものではないが。
「……さくら、ちっちゃわないかなあ」
「そこだよな」
「うん……」
「仕方ない、こうしよう」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「晴れ間が差し次第、急いで出掛ける」
「いそいで」
「いつ雨が降り出すかわからないから、バイクはやめて車で吶喊だ」
「うーん……」
「ダメ?」
「くるまでもいいけど、もすこしゆっくりみたい……」
ですよね。
「いずれにしても、まず晴れないとなあ」
「うん」
「……てるてる坊主でも作る?」
「つくる」
「そう言えば、作ったことないな。ティッシュで作れるかな」
「やってみましょう」
「そうしましょう」
かくして、自室の窓際にふたつ、小さなてるてる坊主が鎮座することとなった。
本当、晴れてくれればいいのだが。
 






718 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:28:09 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月4日(金)

ペプシの備蓄が切れた。
補充しようとホームセンターへ向かう際、雲の切れ間から陽光が射し込み、あたり一面が明るく晴れ渡った。
「──はれた!」
「よし」
対向車がいないことを確認し、Uターンする。
「わ」
「桜、見に行くぞ」
「うん!」
環状線を左折し、新川沿いを南下する。
すると、
「あ、さくら!」
10.5kmに及ぶ新川の桜並木が見えてきた。
「でも、散り際だな……」
「そだねえ……」
今年の桜は早咲きなのだと言う。
悪天候も重なり、例年より早く散ってしまったのだろうか。
「──…………」
「──……」
しばし無言で車を走らせていると、視界の端に白く瞬くものがあった。
「××、あれ!」
品種が違うのか、はたまた狂い咲きなのか。
枝振りのよい満開の桜が、花吹雪の向こうに悠然と立っていた。
「わあー……!」
車道の端に停車し、窓を開ける。
「きれい!」
「綺麗だな」
「うん!」
スマホを掲げる観光客を横目に、しばし見事な桜に見入る。
「急いで来て、よかったな」
「うん……」
「天気予報を信じて8日まで待ってたら、散ってたかも」
「◯◯」
「ん?」
「ありがと!」
「ん」
たっぷり桜を堪能したのち、帰宅した。
作務衣に着替えてくつろいでいると、ふと何かが脳裏をよぎった。
「……なんか忘れてる気がする」
「あれ、ペプシ……」
「あっ」
面倒だ。
ホームセンターへは、明日また行こう。







719 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:29:13 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月5日(土)

ホームセンターで購入したペプシのダンボール箱を玄関に運び入れていると、ふとあることに気がついた。
「……名前、変わってる?」
「なまえ?」
「ほら」
ダンボール箱を持ち上げ、側面を示す。
「じぇいこーら、ぜろ」
「ストロングゼロじゃなくなってる」
「ほんとだ……」
「つーか、最初はペプシネックスだったよな」
「あじ、ちがうのかなあ」
「同じか、違っても大差ないと思う」
「そなの?」
「そこまで有意に違うのなら、まずは別フレーバーとして出すだろ」
「そだねえ」
「つまり、そういうこと」
「ふうん……」
「要するに、"新発売!"って名目で売り上げを伸ばしたいのさ」
「ずるい」
「俺もそう思う」
苦笑し、階段を上がる。
「ゴールデンウィークも、残り二日かあ」
「きょう、こどものひだって」
「俺たちには関係ないな」
「うん」
「明日は何の日だっけ」
「にちようび」
「あー……」
曜日感覚が完全に狂っている。
「ジャンプが水曜日発売だったのが悪い」
「あはは」
「九日間も休みだと、すんなり仕事に戻れるか不安だなあ」
「だいじょぶだよ」
「根拠は?」
「うん」
「ないんかい」
「うへー」
そんなこんなで、今日ものんびり過ごしました。







720 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:30:20 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月6日(日)

「んあー……」
ソファの背もたれに沿って反り返りながら、上下反転した台所を見やる。
「?」
フリトレーのポップコーンの袋を抱えたうにゅほが、俺の顔を覗き込んだ。
「のびしてるの?」
「ゴールデンウィークの終わりを嘆いている……」
「あしたから、しごとだもんね」
「うッ」
思わず胸を押さえる。
「……仕事もせずに給料だけもらえる仕事をしたい」
「それ、しごと?」
「仕事とはいったい……」
哲学的思考に陥った俺を見て、うにゅほが苦笑する。
「ポップコーン、たべる?」
「食べる」
「あーん」
「あー」
バター醤油味のポップコーンが、舌でバウンドして上顎をノックする。
さく、さく。
「おいしい?」
「あー」
再び口を開く。
「はいはい」
ポップコーンが再び投入される。
さく、さく。
「あー」
さく、さく。
「あー」
「たくさんたべるねえ」
「美味い」
「そか」
しばしポップコーンを食べ進めるうち、
「ぐ」
「どしたの?」
「歯に挟まった……」
「つまようじ、いる?」
「お願いします」
姿勢を正し、爪楊枝の先を奥歯の隙間に突き立てる。
だが、
「……取れない」
「だいじょぶ?」
「××、あれなかったっけ。フロス」
「ぐろす?」
「デンタルフロス。糸。歯の隙間を掃除するやつ」
「なかったとおもう……」
「──…………」
舌先で奥歯をつつく。
妙な挟まり方をしたのか、異物感が尋常ではない。
「……ツルハ行く」
「ふろす、かいいくの?」
「行く」
「わたしもいく」
妙な姿勢でものを食べてはいけない。
ゴールデンウィークの最終日に、なにをやっているんだか。







721 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:31:22 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月7日(月)

「──よし、今日の仕事終わり!」
「おつかれさま」
うにゅほが俺の肩を揉む。
もみもみ。
「こってますねえ……」
「凝ってますか」
「しごと、ひさしぶりだからかな」
「そうかも」
元から凝っていたような気もするが、そういうことにしておこう。
「みちのえき、あたらしいのできたんだって」
「道の駅?」
「さっきテレビでみたの」
「へえー」
「すーごいこんでるんだって」
「道の駅が?」
「うん」
「まあ、ゴールデンウィーク中に開業したなら、そんなもんか」
「じゅうたい、ななキロだって」
「……道の駅が?」
「うん」
よほど娯楽がないのだろうか。
「××さん」
「はい」
「その道の駅、行きたい?」
「?」
肩を揉む手が止まり、小首をかしげる気配がした。
「べつに……?」
「そう……」
本当に、ただテレビで見たことを話したかっただけらしい。
「まあ、そのうちバイクでどっかは行きたいよな」
「うん」
「行きたい場所、ある?」
「きっさてん、いきたいなあ」
「あー」
そう言えば、最近行っていない気がする。
「じゃあ、そのうち」
「そのうち」
「モスバーガーも忘れてないぞ」
「うん」
出掛ける予定が溜まっていく。
順々に消化して、また新しい予定を詰め込もう。







722 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:32:36 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月8日(火)

「××さん」
「はい?」
「ふと思ったんだけど」
「はい」
「俺は男だし胃袋でかいからいいけど、ハンバーガーって普通は一食として数えるよな」
「そうかも」
「いま、午後三時じゃないですか」
「さんじ」
「おやつとして、行けそう?」
「もすばーがー?」
「うん」
「いく!」
うにゅほがその気なら、否やはない。
手早く支度を整えて、近場のモスバーガーへと車を走らせた。
「まえあたったの、なんだっけ」
「普通のモスバーガーとペプシかな」
「◯◯、なんにするの?」
「メニュー見てから決めるけど、いまのところは安定のテリヤキ」
「てりやき、おいしいもんねえ」
そんなこんなで最寄りの店舗に着くと、期間限定クリームチーズテリヤキバーガーののぼりが立っていた。
「──…………」
「──……」
視線が絡み合い、どちらともなく頷き合う。
クリームチーズテリヤキバーガーふたつとフレンチフライポテトが運ばれてきたのは、注文してからほんの五分後のことだった。
「思ってたより早いな」
「そだねえ」
以前は、もうすこし待たされた気がするのだけど。
「では、いただきます」
「いただきます」
大口を開けて、クリームチーズテリヤキバーガーにかぶりつく。
美味い。
正面のうにゅほを見やると、小さな口を一所懸命に開きながら、攻略すべき場所を見定めているところだった。
こう言ってはなんだが、可愛い。
口が小さいと、ハンバーガーを食べるのも一苦労らしい。
帰り際の車中、
「おいしかったねえ……」
うにゅほが満足げにおなかを撫でた。
「晩御飯、食べられるか?」
「だいじょぶ」
俺の心配をよそに、夕飯の麻婆春雨をぺろりとたいらげるうにゅほなのだった。
見た目より食べるんだよなあ、この子。







723 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:34:04 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月9日(水)

右手に提げた買い物袋から、中身を取り出す。
「キュウリを買ってきました」
「きゅうりを……」
「本格的にダイエットをしようかと思いまして」
「きゅうりダイエット?」
「食前にキュウリを食べるだけで、痩せるらしい。なんかで見た」
「えー……」
うにゅほが胡散臭そうな顔をする。
「実を言うと、俺も信じてない」
「そなの?」
「なに食べるだけで痩せるとか、どれするだけで痩せるとか、そんなん聞き飽きたよ」
うにゅほが不思議そうに首をかしげる。
「なんできゅうりかってきたの?」
「そのダイエットの話を聞いて、間食を我慢する方法を思いついたんだ」
「ふんふん」
「まず前提として、俺はキュウリが嫌いだ。トマトと同じくらい嫌いだ」
「うん」
「なので、間食をする前に、キュウリを一本まるまる食べるという習慣をつけることにした」
「うん?」
「シュークリームだろうがモスバーガーだろうが事前にキュウリを食べなければいけないので、自然と間食が減るという寸法だ」
「うまくいくかなあ……」
「わからん」
実験的手法である。
自分自身に対する躾みたいなものだ。
「きゅうりたべたくないから、おやつたべなくなる?」
「そういうこと」
「おやつたべたいから、きゅうりたべるのすきになったりしない?」
「──…………」
「?」
その発想はなかった。
「……そのときは、ほら、好き嫌いがひとつなくなるから」
「あー」
「ともあれ、まずは一本食べてみよう」
「なんかつける?」
「塩でいいや」
というわけで、塩のみでキュウリをまるまる一本食べてみた。
「……うぶ」
「だいじょぶ?」
「吐きそう……」
「わあ」
これをするくらいなら、間食なんてクソ食らえだ。
しばらく続けてみようと思った。







724 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:35:46 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月10日(木)

「──…………」
布団の下からのそりと這い出し、スマホの通話履歴を確認する。
父親の名前は、ない。
安堵の息を漏らすが、まだ夢と決まったわけではない。
「××」
「あ、おはよ」
「おはよう」
挨拶を交わし、本題に入る。
「父さん、事故ってないよな」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「わかんないけど、じこってないとおもう……」
「……そっか」
ここに来て、ようやく、ほっと胸を撫で下ろす。
「いや、妙にリアルな夢見てさ……」
「どんなゆめ?」
「父さんから電話が掛かってきて、人を轢いたって言うんだよ」
「わ……」
「その言い方とか、そのときの感情の動きとかが、いかにもありそうでさ」
「こわいね……」
「夢でよかったよ、本当」
「うん」
「──…………」
ふと、ある可能性に思い至る。
家族の誰かが気を利かせて、うにゅほに話を通していないだけなのではあるまいか。
「……ちょっと、弟の部屋行ってくる」
「?」
弟に同様のことを尋ねると、
「それ、夢」
一蹴されてしまった。
「でも、あり得ないことじゃないから、怖いと言えば怖いね」
「だろ」
「兄ちゃんも安全運転しろよ」
「してるよ……」
運転免許証、青だけど。
自動車は、人を容易に殺傷し得る、"走る凶器"だ。
悪夢ひとつでそれを再認識できたことは、もしかすると僥倖だったのかもしれない。







725 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:36:39 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月11日(金)

「◯◯、さんぽうろくたべる?」
「三方六……」
三方六とは、ミルクチョコレートとホワイトチョコレートで外皮を包んだバウムクーヘンである。
そのマーブル模様で白樺の木肌を表現しているらしい。
甘いもの好きの俺からすれば、垂涎の品である。
だが、
「……いい」
「たべないの?」
「食べない」
三方六を見た瞬間、その美味しさより先に、喉元から鼻腔へ突き抜ける青臭さが想起されてしまったのだ。
「きゅうり、や?」
「嫌だ、食べたくない……」
「そんなに」
「……××、昔、豆乳ダメだったろ。そんな感じ」
「でも、いまのめるよ」
うにゅほが小さく胸を張る。
「だから、◯◯も、きゅうりたべれるようになるよ」
「それだと本末転倒なんですが……」
「あ、そか」
「まあ、キュウリが食べられるようになったら、トマトでやるだけなんだけどな」
「◯◯、トマトきらいだもんね」
「生のトマトは、キュウリと同じかそれ以上に嫌い」
「あおくさいのがだめなのかな」
「たぶん」
「でも、りこぴんがふくまれています」
「××、リコピンが具体的にどう体にいいのかわからないで言ってるだろ」
「うへー……」
誤魔化すように、てれりと笑う。
「俺のぶんの三方六は、××が食べてくれ」
「んー」
しばし思案し、うにゅほが答える。
「わたしも、やめとく」
「気にしなくていいのに」
「いっしょにたべたほう、おいしい」
「そっか」
手早くダイエットを成功させて、うにゅほと優雅なティータイムと洒落込みたいものである。







726 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:37:48 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月12日(土)

「晴れた!」
「はれた!」
「暖かい!」
「あったかい!」
「絶好のバイク日和だ!」
「だ!」
「いえー」
「いえー」
うにゅほとハイタッチを交わす。
「いつもの喫茶店行って、スフレパンケーキ食べるか。考えごと、まとめておきたいし」
「うん!」
「ちょっと待って、キュウリ食ってくる」
「たいへんだねえ……」
だが、自分で決めたことだ。
河童のようにキュウリを貪り食ったのち、久方ぶりにバイクに跨った。
俺の腰にぎゅうと抱き着いたうにゅほを労るように、ゆっくりとアクセルを回していく。
「わあ……!」
二速、三速、四速、五速。
景色が左右に流れていく。
「きもちいねー!」
「そうだなー」
条件さえ整えば、バイクほど爽快な乗り物もそうあるまい。
本当のバイク好きは、冬であろうと悪天候であろうと構わず乗り回すのだろうが、そこまで行くと理解できない。
片道三十分ほどかけて、行きつけの喫茶店へと辿り着く。
いつものように注文を済ませ、さっそくとばかりにカバンからポメラを取り出した。
「ほら、iPhone。イヤホンも」
「ありがと」
「最近、なんの動画見てるんだ?」
「うーとね、まいんくらふとのやつ」
「よゐこの面白かったもんな」
「うん」
時折追加注文をしつつ、頭の中身をポメラに出力していく。
曖昧だったアイディアが、言語という形を得て、広がり、そして、まとまり始める。
「ふー……」
コーヒーカップの底に溜まったグラニュー糖を噛み潰し、小さく伸びをする。
あっと言う間に二時間が経過していた。
「かんがえごと、できた?」
「ああ」
「きっさてん、もっとちかくにあればいいのにねえ」
「わかる」
太りそうだけれど。
バイクの初乗りもできたし、喫茶店にも行けたし、なかなか有意義な一日だった。







727 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:39:21 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月13日(日)

母の日である。
今年は、ふたりでお金を出し合って、瓶詰めにしたカーネーションのハーバリウムをプレゼントした。
「はーばりむ」
「ハーバリウム」
「はーばりうむ」
「そう」
うにゅほが小首をかしげて言う。
「はーばりうむ、きれいだけど、なんていみ?」
「植物標本のことらしい」
「ひょうほん……」
「ドライフラワーをオイルに漬け込んで、長持ちさせてるんだってさ」
「へえー」
うんうんと頷く。
「おかあさん、よろこんでたね」
「喜ぶのはいいけど……」
「けど?」
「あそこに飾るのは、どうかな」
「ストーブのうえ?」
「ああ」
「へんかなあ」
「変じゃないけど、危ない。いまはいいけど冬場はマズい」
「あ、そか」
ぽん。
うにゅほが胸元で手を合わせた。
「オイルって、あぶらだもんね」
「しかも、縦長の瓶だからな。地震で倒れてストーブに落ちたら、一発で火事だ」
「あぶない……」
「寝室にでも置いてもらおう」
「うん」
両親の寝室が油まみれになるぶんには、単に清掃が面倒なだけで済む。
「……問題は、母さんの誕生日に何を贈るかだ」
「そだね……」
母親の誕生日は、母の日から二週間と離れていない。
かと言って、ひとまとめにするほど近くもないので、何をプレゼントすべきか毎年悩むのである。
「せめて、一ヶ月くらいあればなあ」
「うん……」
通販を利用するのなら、あと一週間少々で決めなければならない。
喜んでもらえるように頑張ろう。
 







728 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:40:14 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月14日(月)

「──……はー」
ぐったりとチェアに座り込む。
起床してからたったの数分で、ここまで疲れたことはない。
「どしたの……?」
うにゅほが心配そうに尋ねる。
「ごめんな、バタバタして」
「でんわきてたけど……」
「うん。最初から説明する」
iPhoneを両手で弄びながら、言葉を探す。
「──まず、電話な。母さんからだった」
「おかあさん」
「着信音で叩き起こされて電話に出たんだけど、母さん何も言わなくてな」
「うん」
「時折、くっ、くっ、みたいな感じで、泣き声みたいな音が聞こえてきたんだ」
「え……」
うにゅほの顔が青ざめる。
「あー、心配しなくていい。結果的には何もなかったから」
「……ほんと?」
「あったら、こんなのんびりしてないよ」
「そか……」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「何を言っても返答ないから、いったん切って父さんに掛けたんだ。ほら、父さんが事故った夢見たばっかだし」※1
「うん」
「父さんに何事もなかったことを確認して、母さんに掛け直したらさ」
「かけなおしたら?」
「……普通に出た」
「ふつうに……」
「なんか知らんうちに俺に掛けてたらしくて、泣き声みたいのは歩いてるときの物音じゃないかってさ」
「あー」
「無駄に心配して、無駄に疲れた……」
「おつかれさま」
うにゅほが俺の頭を撫でる。
「でも、なにもなくてよかったねえ」
「そうだな……」
電話に出た瞬間、日常の壊れる音を聞いた気がした。
取り越し苦労で、本当によかった。
「……半端に起こされたから、眠い」
「おやすみなさい」
二度寝して起きると、正午だった。
寝過ぎた。

※1 2018年5月10日(木)参照
 







729 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:41:02 ID:Q.6ByI7U0

2018年5月15日(火)

「あちー……」
「はちーねえ……」
ぐでー。
フローリングの床が、冷たくて気持ちいい。
「いま何度ー……?」
「うと」
隣に寝そべっていたうにゅほが上体を起こし、温湿度計を覗き込んだ。
「にじゅうはってん、ごど……」
「……窓開いてる?」
「あいてる」
「だよなあ」
さっき俺が開けたばかりだもの。
「うーしょ」
「うぐ」
「ほー」
俺の背中に覆いかぶさったうにゅほが、耳元でほっと息を吐く。
くすぐったい。
「××さん、××さん」
「はい」
「暑くない?」
「あついねえ……」
「──…………」
「──……」
下りる気はないらしい。
仕方ない。
体温でぬくまった床に別れを告げ、より涼しい場所を求めてにじにじと匍匐前進を始める。
「おー!」
楽しそうだ。
せっかくなので、更に楽しませてみよう。
「よいしょ、と」
「わ」
うにゅほを背中に乗せたまま、四つん這いになる。
どたどた。
「あはははは! すごい!」
しばし這い回った結果、
「──……あつ……」
「はちーねえ……」
ぐでー。
我ながら、何をやっているのだか。
楽しいからいいけど。
 





730 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/05/16(水) 16:42:15 ID:Q.6ByI7U0

以上、六年六ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 


       


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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2018年05月17日 18:04  ID:WxrVlpS.0
    本当大好き!応援してます!
    最初はどうかなって思ったし、まとめられてるし目立つはで色々大変だったと思うんですけど…
    継続してやる事の素晴らしさを感じます!
    これからも頑張って下さい!
    読んだことはありませんが


  • 2  Name  名無しさん  2018年05月17日 18:06  ID:aacM20rq0
    タイシタモンジャナイカ


  • 3  Name  名無しさん  2018年05月17日 19:01  ID:mo.iAGWZ0
    これはあれだチベットの守護精霊作る奴やってんじゃないだろうかとか思えてきた
    意図的に自律神経失調症を起こして自分にだけ見える幻覚を作る奴


  • 4  Name  名無しさん  2018年05月17日 19:26  ID:MVImTtvc0
    うにゅーの 法則が 乱れる!


  • 5  Name  名無しさん  2018年05月17日 20:52  ID:NEl1jeN50
    タルパとタルパーかな?それにしても良くここまで続けられるなぁ…


  • 6  Name  名無しさん  2018年05月18日 12:46  ID:EprU6d2D0
    ※3はタルパだよな?
    アレ客観的視点さえ維持できれば捗るぞ
    他人にオススメはできないけど

    この人の場合は日常と物語を結びつけて生活してるっぽいしタルパとは少し違うと思う。


  • 7  Name  名無しさん  2018年05月19日 00:24  ID:8PXcA7qr0
    継続力


  • 8  Name  名無しさん  2018年05月19日 01:29  ID:yuqXB5u20
    こわい


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