2018年08月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2014/03/07(金) 20:24:10 ID:t2nls1YA0

ニュー速VIPの転載禁止に伴い、こちらに専用スレを立てました

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



813 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:42:36 ID:qG93Fw2k0

2018年8月1日(水)

「──…………」
「──……」
柔らかな風が、そよそよと肌を撫でていく。
暑い。
だが、不思議と心地よい。
「なんか、今日、あれだな……」
「あれ?」
「いい感じ……」
「うん、いいかんじ……」
黙っていても汗が吹き出る。
肌に触れると、ぺたりと貼り付く。
されど、不快ではない。
俺たちの求める夏が、ここにあった。
「××、いま何度?」
「いまー?」
「うん」
うにゅほが、大儀そうに温湿度計を覗き込む。
「わ」
「どした」
「いま、さんじゅうさんど……」
「……ワーオ」
普段であれば確実にエアコン案件である。
「湿度は?」
「うーとね、よんじゅうにぱーせんと」
「低い」
「うん、ひくい」
「それでか……」
いくら気温が高くとも、湿度が低ければ不快にはならない。
むしろ体調がいいくらいだ。
「この湿度が続いてくれないかなあ……」
「ねー」
「よし、くっつくか」
「!」
ぽんぽんと膝を叩いてみせると、うにゅほがホイホイ寄ってきた。
「うへー」
膝の上に腰掛けたうにゅほを、ぎゅうと抱き締める。
「──あつ!」
「はちーねえ……」
「××、ぺたぺたしてる」
「ぺたぺた」
さすがに、十分ほどで耐えきれなくなって、離れた。
夏を舐めてはいけない。








814 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:43:15 ID:qG93Fw2k0

2018年8月2日(木)

「ふー……」
手のひらでパタパタと首筋をあおぐ。
「なんか、暑くない?」
「すずしいとおもうけど……」
エアコンのおかげで、室温は27℃を維持している。
湿度もそう高くはない。
にも関わらず、体が妙に火照っていた。
「暑い……」
「んー」
うにゅほが、俺の額に手を当てる。
「ねつあるきーする……」
「マジで」
「うん」
「風邪っぽい感じ、あんまりしないんだけど……」
「──…………」
すんすん。
「かぜのにおい、しない」
「しないか」
「うん」
「熱だけ測ってみよう」
「たいおんけい、もってくるね」
「頼む」
体温計を腋窩に挟むことしばし、
「……37.5℃」
「ねつあった……」
「夏バテかなあ」
「ねよ」
「眠くないんですが」
「よこになったほう、いいとおもう」
「せっかくなので、××も測ってみましょう」
「わたしも?」
「せっかくなので」
測ってみた。
「36.1℃」
「ねつないね」
「××、平熱もっと高かった気がするんだけど……」
「うーん」
この猛暑で、自律神経が狂い始めているのかもしれない。
夏はまだ続く。
栄養だけは、しっかり摂ろう。







815 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:43:49 ID:qG93Fw2k0

2018年8月3日(金)

両手で前髪を掻き上げながら、呟く。
「髪、切りに行かないとなあ……」
「えー」
うにゅほが口を尖らせる。
「××、それ反射的に言ってない?」
「そんなことないよ」
「……冷静に考えて、今この髪ぼっさぼさな状態って、カッコいいと思うか?」
「──…………」
「──……」
しばしの沈黙ののち、
「もっとのびたら……」
うにゅほは俺の髪型をどうしたいのだろう。
「切ります」
「はーい……」
しかし、ひとつ問題がある。
「新しい床屋、探さないとなあ」
「とこやのおじさん、やめちゃったもんね……」
「ああ」
床屋を経営していた伯父が、高齢を理由に店を畳んでしまったのだ。
「床屋はいくらでもあるけどさ。どこが腕いいかとか、どこが俺に合ってるのかなんて、行ってみなけりゃわからないからなあ……」
「うん……」
幼いころから床屋と言えば伯父の店一択だったため、勝手がまったくわからない。
ノーヒントであるにも関わらず、選択を失敗すると一ヶ月弱は微妙な髪型を強制される。
これがゲームならクソゲーと言わざるを得ない。
「わたしとおかあさんいってるびようしつ、いく?」
「美容室か……」
「うん」
「××の行ってるとこ、男性客見たことある?」
「ないかなあ」
「じゃあ、やめといたほうが無難だな」
「そか……」
「誰か、知り合いにでも紹介してもらうか」
まったくのノーヒントより、少しはましだろう。
「だれ?」
「──…………」
「──……」
「まあ、それは今から考えるとして」
実際に髪を切るのは、いつになることやら。
 






816 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:44:14 ID:qG93Fw2k0

2018年8月4日(土)

今日も今日とて自室でくつろいでいると、うにゅほが廊下から顔を出した。
「◯◯、◯◯!」
「んー?」
「なんか、はなさいた!」
「なんか?」
「うん」
「なんの?」
「なんかへんなはな」
「──…………」
「きて!」
いまいち要領を得ないので、素直についていくことにする。
手を引かれて向かった先は、玄関先の花壇の中でもひときわ目立たない一角だった。
「これ」
うにゅほが指さした先にあったものは、
「変な花だ……」
「でしょ」
なんと表現すればいいのだろう。
まず、この植物は、いわゆる多肉植物だ。
多肉植物とは、サボテンやアロエに代表される、肉厚な茎や葉の内側に水分を貯めることができる植物である。
緑色の分厚い葉が小さな渦を巻き、それが幾つも密集して土壌に貼り付いている──
以上が普段の姿である。
この平べったい姿であれば、俺も見覚えがある。
だが、渦のひとつが赤く染まり、
それが縦に数十センチも伸びて、
二股に分かれた先にそれぞれ赤い花を咲かせているとなれば、
うにゅほが「なんかへんなはな」としか表現できなかったのも、無理からぬことだろう。
「これ、なんてはなかな」
「……この条件から逆引きするのって、厳しくない?」
「◯◯でもわかんない?」
「やってみるけど」
iPhoneで、「多肉植物 花」などのワードで画像検索をしてみる。
すると、
「……センペルビウム、かなあ」
「せんぺるびうむ」
「ちょっと違う気もするけど、花の咲き方はそっくりだ」
うにゅほにiPhoneを見せる。
「ほんとだ」
「センペルビウムか、その仲間だろうな」
「へえー」
数年前に亡くなった祖母が植えたのだろうが、まさかこんな花を咲かせようとは。
びっくり箱を開けたような心持ちだった。







817 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:45:08 ID:qG93Fw2k0

2018年8月5日(日)

晴れの日は、部屋が暑い。
南東と南西に窓がある関係上、日中常に直射日光に晒されているためだ。
隣家に遮られて日の射さない弟の部屋と比べると、室温が平気で5℃くらい違ったりする。
「……さすがに暑いな」
「あついねえ」
「エアコンつけるか」
「つけましょう、つけましょう」
ぴ。
エアコンが稼働を開始する。
「これで、しばらくすれば──」

十分後、
「暑い……」
「はちいねえ……」
おかしい。
普段であれば、とっくに冷風がこちらへ届いているころだ。
温湿度計を覗き込む。
「……34℃」
「さんじゅうよん……」
「エアコン、壊れてないよな」
「こまる……」
エアコンのなかった数年前まで、俺たちはどのようにして過ごしてきたのだろう。
"便利"を手に入れた結果、"不便"を忘れてしまった。
まあ、過去の日記でも漁れば、いくらだって思い出せるのだけど。
「まさか、間違って暖房入れたりしてないよな」
「まさかー」
「──…………」
「──……」
確認してみる。
「……暖房だった」
案の定である。
「へんなボタン、おしちゃったのかな」
「そうらしい」
「こわれてなくて、よかったね」
「うん」
「きーつけないとね……」
「うん……」
真夏に暖房は洒落にならない。
注意せねば。







818 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:45:51 ID:qG93Fw2k0

2018年8月6日(月)

「──…………」
「──……」
ぐでー。
「……窓開けてても33℃かあ」
「しつどひくいから、がまんできるけど……」
「これはエアコン案件ですね」
「ですね」
「では、間違って暖房にしないように──」
そこまで口にして、ふとあることを思いついた。
「……窓閉めたら、何度くらいになるかな」
「なんどだろ」
「──…………」
「──……」
「試してみたくない?」
「みたい……」
好奇心、猫を殺す。
だが、気になってしまったものは仕方がない。
「では、実験してみましょう」
「はい!」
「××助手、そちらの窓を」
「わかりました」
自室にあるふたつの窓を、手分けして閉める。
もうこの時点で暑い。
「下で、一時間くらいテレビでも見るか」
「みるー」
みぞれアイスを食べながら一階で時間を潰し、自室へ戻る。
「では、扉を開けたいと思います」
「はい……」
緊張の一瞬だ。
自室の扉を開け放つと、

むわっ!

「あッづ!」
「あつい!」
サウナを思わせる熱気が自室から溢れ出した。
「なんどかなあ」
わくわくと瞳を輝かせるうにゅほと共に温湿度計を確認すると、
「──38℃!」
「すごい!」
「大台には乗らなかったか」
「でも、すごい」
「本州はこれ以上に暑かったんだよな……」
今年の猛暑はヤバい。
俺は改めてそう思った。







819 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:46:41 ID:qG93Fw2k0

2018年8月7日(火)

ローソクだーせー、だーせーよー……

だーさーないとー、かっちゃくぞー……

遠くから、子供たちの歌声が聞こえてくる。
「あ、ろーそくだせきた」
「もうそんな時期か」
ローソクもらいとは、子供たちが近所の家々を歌いながら訪問し、お菓子を貰い歩くという北海道の行事である。
「こどものころ、◯◯も、ろーそくだせしたの?」
「したした。向こう一ヶ月のおやつは、これで稼いだもんだ」
「へえー」
「××も混ぜてもらってきたら?」
「むり、むり」
うにゅほが、苦笑交じりに首を横に振る。
「小学生のふりは、さすがに無理か」
「うん」
「……中学生のふりなら行けるんじゃないか?」
「わかんないけど……」
「よし」
意を決し、立ち上がる。
「ローソク出せごっこでもするか」
「ごっこ?」
「俺が、お菓子用意して部屋で待ってるから、××は歌いながら入ってきて」
「えー……」
「やりたくない?」
「うたうの、ちょっとはずかしい……」
「頑張れ」
「がんばる」
やる気はあるようだ。
子供たち用のお菓子をすこしだけちょろまかし、自室で待機する。
すると、こんこんと遠慮がちなノックのあとに、
「……ろ、ろーそくだーせー、だーせーよー……」
と、か細い歌声が聞こえてきた。
「だーさーないとー、かっちゃくぞー……」
「──…………」
「おーまーけーにー、…………、ぞー」
歌詞がわからなかったらしい。
扉を開き、コアラのマーチの小袋を手渡す。
「はい、よくできました」
「うへー……」
うにゅほがてれりと笑う。
「◯◯も、ろーそくだせやる?」
「……俺はいいかな」
「そか」
さすがに恥ずかしい。
夏の風物詩を手軽に楽しむ七夕の夜だった。







820 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:47:18 ID:qG93Fw2k0

2018年8月8日(水)

「──…………」
「──……」
うにゅほと目配せを交わす。
「……暑い、とは思う。この部屋は、たしかに暑い。それは間違いない」
「うん」
「でも──」
本棚の最下段に設置した温湿度計を見やる。
室温の数値が、33℃から36℃までの範囲で激しく増減していた。
「……これはおかしいよなあ」
「おかしい」
どう考えても壊れている。
「こわれてたの、いつからかなあ……」
「……実は、心当たりがある」
「いつ?」
「一昨日」
「おととい……」
「窓閉め切って、室温が何度まで上がるか試したとき」※1
「……あー」
「あのとき、センサーがぶっ壊れたんじゃないかな」
「そうかも……」
アホな遊びをするんじゃなかった。
「──よし! 気を取り直して、新しいのを注文しましょう」
「つうはん?」
「行くのめんどい」
「そか……」
ネット通販は人を堕落させる。
ヨドバシドットコムで商品検索していると、よさそうな温湿度計を見つけた。
「××、これなんてどうだ」
「どんなの?」
「その日の気温と湿度の推移を記録して、グラフにしてくれるみたい」
「へえー」
うにゅほが目を輝かせる。
「面白そうだろ」
「おもしろそう!」
「寝てるあいだの室温がわかれば、いつ毛布出せばいいかわかるし」
「べんり」
「よし、これにしましょう」
「おいくら?」
「四千円ちょっとするけど、ポイントあるから千円くらいになる」
「ポイントすごいね」
「まあな」
出費のほとんどをヨドバシのクレジットカードで賄っているので、これくらいにはなる。
土曜日には届くそうなので、楽しみだ。

※1 2018年8月6日(月)参照







821 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:48:04 ID:qG93Fw2k0

2018年8月9日(木)

先日購入した漫画の新刊をすべて読み終えたうにゅほが、ふとディスプレイを覗き込んだ。
「ね、なにみてるの?」
「んー……」
「ゆーちゅーぶ?」
「……むかーしのゲームのOPとかEDを見て、心にダメージ受けてるの」
「だめーじを……」
「はい」
「だめーじうけるのに、みるの?」
「××も、いつかわかるさ」
「そか……」
うにゅほが俺の膝に腰掛ける。
「わたしもみていい?」
「いいぞ」
耳掛けイヤホンを片方渡す。
「いまから流すのは、俺が学生のころにプレイしてたゲームのOPムービーだ」
「へえー」
「では、再生」
再生ボタンをクリックする。
観賞することしばし、
「──ぐあー!」
「!」
「懐かしさと時の流れの残酷さに殺される……ッ!」
「だいじょぶ……?」
「冗談はさておき」
「うん」
「あれから、もう、十数年が経つんだなあ……」
しみじみ。
「2018年なんて、ちょっとした近未来SFの舞台だったはずなのに」
「そなんだ」
「いま見たゲームも、たしか、2017年って設定」
「すぎちゃったんだね」
「そうなんだよ」
テラバイトディスクは普及しなかったなあ。
「まあ、べつに、昔に戻りたいとはあんま思わないけどな」
「そなの?」
「学生時代に戻ったら、××がいない」
「……うへー」
うにゅほがてれりと笑う。
俺は、俺の現在に納得している。
変えるべきは未来であって、過去ではないのだ。
「一ヶ月くらい前になら、戻ってもいいけどな」
「かえたいの、あるの?」
「祭りとか、もっかい楽しみたいし」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
同意してくれるらしい。
夏も、既に折り返しを過ぎた。
すこし涼しくなってきたら、またどこかへ出かけよう。







822 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:48:53 ID:qG93Fw2k0

2018年8月10日(金)

そのとき、俺に電流走る。
「──今日、鳩の日だ」
「はとのひ?」
「8月10日で、鳩の日」
「はとのひだ……」
「まあ、だからなんだってこともないけど」
「そだね」
わりとどうでもよかった。
「鳩の日って、なにやるんだろうな」
「はと……」
しばし小首をかしげたのち、うにゅほが口を開く。
「へいわとか、いのる?」
「あー」
そのへんでポッポポッポ言ってる土鳩を想像していたので、平和の象徴という発想がなかった。
「8月10日、他にも語呂合わせがありそうだよな」
「しらべてみましょう」
「そうしましょう」
調べてみた。
「やーと、どーで、宿の日だってさ」
「あ」
うにゅほが、それがあったかという顔をする。
「あと、健康ハートの日だって」
「はーと、とー?」
「鳩の日と同じだな」
「うん」
「あと、ハットで帽子の日」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「思ったとおり、語呂がいい日みたいだ」
「ほかにもある?」
「えーと──」
マウスを操作し、ページをスクロールする。
すると、
「……焼き鳥の日」
「やー、き、とー、りで、やきとり?」
「よりにもよって、鳩の日と焼き鳥の日が同じなのか……」
諸行無常である。
「はと、やくの?」
「鳩は焼かないんじゃないかな」
そんな話をしていると、鳩サブレが食べたくなった。
ないけど。







823 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:49:40 ID:qG93Fw2k0

2018年8月11日(土)

「──……む」
貪り食っていたビーフジャーキーが、上の奥歯に挟まった。
「××、爪楊枝取ってー」
「はーい」
うにゅほから爪楊枝を受け取り、奥歯の隙間に突っ込む。
「んー……」
なかなか取れない。
左手で口元を隠しながら、爪楊枝で該当部分を掻き回していると、

かぽ。

そんな音が、どこかから聞こえた気がした。
「──…………」
口内に、異物。
取り出してみる。
「銀歯取れた……」
「あらー」
歯の隙間に挟まっていたビーフジャーキーも取れたが、あまり嬉しくはない。
「はいしゃいこ」
「そうだな。さっそく予約入れて──」
そこまで言って、ふと気づく。
「土曜じゃん」
「あっ」
「明日、日曜じゃん」
「あー」
「そもそも、今日からお盆休みじゃん……」
「タイミングわるい」
誰かが言った。
歯が痛むのは、たいてい土曜日の夜である──と。
誰の言葉かはよく覚えていないが、内容は非常に頷ける。
「お盆明けるまで、奥歯このままか……」
「だいじょぶ?」
「右側で硬いものを噛まなければ、たぶん」
「きーつけないとね」
「そうだな」
痛むわけではないのが、不幸中の幸いといったところだ。
しばらく爪楊枝が友達になりそうである。







824 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:50:33 ID:qG93Fw2k0

2018年8月12日(日)

昨日、新しい温湿度計が届いた。
一日の気温と湿度の推移を記録し、グラフ化してくれるスグレモノだ。
「××。昨日からずっと、窓閉めてないよな」
「うん」
「当然、エアコンもつけてない」
「つけてない」
人為の介在しない環境で、俺たちの部屋の温度と湿度はどのように変化しているのだろうか。
わくわくしながらグラフを覗く。
「まず、これが温度だ」
「あんまかわってない?」
「だいたい横這いだけど、朝方はすこし涼しいみたいだな」
「にじゅうななどくらい」
「それは予想通りなんだけど……」
現在の室温へと視線を向ける。
「日が沈んでからガンガン暑くなってるの、どうしてなんだろう」
「いま、さんじゅういちど……」
午後二時の室温は30℃弱だから、1.5℃ほどの上昇が見られる。
日が照っているときのほうが暑くなりそうなものだが、なかなかに不可解だ。
「では、湿度を見てみよう」
「はい」
切り替えボタンを押す。
「うーと、よるがたかくて、ひるがひくいかんじ」
「低くて55%、高くて65%だから、こっちも横這いかな」
「そだね」
「でも、そうか……」
「?」
「気温も湿度も低いんだから、この部屋は昼間のほうが過ごしやすいんだなって」
「ふしぎ……」
うにゅほが首をひねる。
「外は涼しいのにな」
「かぜ、ないからかなあ」
「そもそも、俺たちの部屋だけこんなに熱されてるのも謎だし」
「うん……」
廊下も、弟の部屋も、両親の寝室も涼しいのだ。
この部屋だけが、暑い。
「計測終わったし、エアコンつけるか」
「おんど、もすこしきになる」
気になるなら仕方ない。
「扇風機、中にしとこう」
「うん」
うにゅほは考える葦である。







825 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:51:20 ID:qG93Fw2k0

2018年8月13日(月)

カリカリ、カリカリ。
マウスホイールを回す音が、静かな自室に響く。
「なんか、調子悪いなあ……」
「!」
うにゅほが立ち上がり、俺の額に手を当てる。
「ねつない」
「いや、俺じゃなくて」
「?」
「マウスの調子が悪いなーって」
「あー」
うんうんと頷く。
「こわれた?」
「壊れたってほどじゃないんだけど……」
ディスプレイを指し示し、マウスホイールをカリカリと回す。
「──こんな感じで、ページをスクロールすると、一瞬だけ反対側に戻される」
「はー」
「よくわからない?」
「よくわかんない」
素直である。
「ぜんぜん使えるんだけど、なんかこう、微妙にストレスが」
「そなんだ……」
「喩えるなら、気に入ってる服のタグが、たまにチクチクして鬱陶しい感じ」
「あ、わかる!」
「わかってくれたか」
「うん」
上手く喩えられてないような気もするが、些末な問題である。
「あたらしいの、かうの?」
「このマウス、なんだかんだ四千円くらいするからなあ」
「たかい」
「それに、いま売ってる新モデルだと、俺の好きな機能が削られててさ」
「なんで?」
「……バージョンアップすることでどんどん悪くなっていくことが、PC業界では多々ありましてな」
直近だとSkype。
「まあ、騙し騙し使ってみるよ」
「そか……」
ワンタッチサーチとのお別れも近いのかもしれない。
 







826 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:52:10 ID:qG93Fw2k0

2018年8月14日(火)

今日は、父方の墓参りだった。
朝六時起床、六時半出発で、三時間かけて菩提寺へ。
懇意にしているメロン農家でメロンをたらふく食わされたあと、両親の友人宅へ挨拶回りを行った。
最後に焼肉を食べて帰途についたのだが、
「──……すう」
ランクルの後部座席で、俺の膝を枕にうにゅほが寝入ってしまった。
終始楽しそうにしていたのだが、さすがに体力が尽きたらしい。
「ごめんな、父さん。帰り俺が運転するはずだったのに……」
「気にすんな。ちゃめ起こすわけにも行かねえし」※1
「そうそう」
父親の言葉に、母親が頷く。
「それにしても、意地でも(弟)には寄り掛からねえんだな」
「うッ」
うにゅほを挟んで反対側の弟が、痛いところを突かれたという顔をする。
「……俺が××に嫌われてるみたいな言い方やめてくんない?」
「違うのか」
「違うって! ……違うよね?」
同意を求められた。
「俺とお前だから俺に寄り掛かってるのであって、お前と知らん人だったらお前に寄り掛かってるよ」
「知らん人と比べられても……」
そりゃそうか。
「おう、◯◯。俺と(弟)だったら、どっちに来ると思う?」
「父さんと弟か……」
難しい問題だ。
「……父さんと母さんだったら、母さんに行くと思う」
「あら嬉しい」
「弟と母さんでも、母さんかな」
「××、母さんにも懐いてるもんね」
「で、俺と(弟)なら?」
「うーん……」
しばし黙考し、
「……そもそも、寝ないんじゃない?」
「──…………」
「──……」
ずうん。
父親と弟がふたり揃って落ち込むSEが、どこかから聞こえた気がした。
「いや、実際のところはわからんからね。ただの予想だから……」
弁解の言葉が、虚しく車内に響く。
真実を握る少女は、気持ちよさそうに夢の中。
そんなこんなで今年の墓参りは終わりを告げたのだった。
疲れた。

※1 父親はうにゅほのことを「ちゃめ」と呼ぶ。
 







827 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:52:58 ID:qG93Fw2k0

2018年8月15日(水)

「んー……」
マウスホイールの隙間から、マウスの内側を覗き込む。
「どしたの?」
「マウスの調子悪いって話しただろ」
「うん」
「この、ホイールの芯の部分に、ゴミが絡まってるのが原因らしい」
「みえる?」
「よく見えない……」
貯金箱の投入口から中身を窺うようなものである。
「分解、あんまりしたくないんだよなあ」
「ぶんかい……」
「さらに壊れる気しかしない」
「そだねえ」
「見えない場所のゴミを取る方法、か……」
「うーん」
ふたり並んで思案する。
「あ、ふーってするとか」
「息で?」
「うん」
「なるほど」
わりと良いアイディアかもしれない。
「でも、隙間が細いからな……」
「あー」
貯金箱の投入口に息を吹き込むようなものである。
「──いや待て。いいものがある」
「?」
本棚の下段の隅を漁り、
「じゃーん、エアダスター!」
「あ、ぷしゅーってするやつ」
「これなら威力もバッチリだろ」
「おー」
「××、やってみるか?」
「いいの?」
「誰がやっても同じだし」
「やる!」
うにゅほが、エアダスターのノズルをマウスホイールの隙間に合わせる。
そして、
「ぷしゅー!」
エアダスターが唸りを上げた瞬間、隙間からぽろりと何かが転げ落ちた。
それは、ほんの小さなホコリの塊だった。
「これ、ひっついてたのかなあ」
「かもしれない」
カリカリとマウスホイールを回し、動作を確認する。
「──あ、直ってる!」
「やた!」
「いえー」
「いえー」
うにゅほとハイタッチを交わす。
愛用のマウスだけに、あと二、三年は頑張ってほしいものだ。
 







828 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/08/16(木) 15:53:50 ID:qG93Fw2k0

以上、六年九ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2018年08月17日 19:13  ID:nbjWgvle0
    まさかの前半戦


  • 2  Name  名無しさん  2018年08月17日 20:43  ID:yNQovvK40
    リスポーン地点


  • 3  Name  名無しさん  2018年08月17日 21:13  ID:aLs0nldU0
    おつかれ


  • 4  Name  名無しさん  2018年08月17日 22:53  ID:ZjM4pR1I0
    もういい、もういいだろ……


  • 5  Name  名無しさん  2018年08月17日 23:24  ID:ZFoQm3l80
    ※4
    氷川さん…


  • 6  Name  名無しさん  2018年08月18日 00:35  ID:90uVMh.P0
    5 嫌いじゃあないけど好き


  • 7  Name  名無しさん  2018年08月18日 16:29  ID:rVjNklfj0
    季節のイベントを全部やってるのが怖い


  • 8  Name  名無しさん  2018年08月18日 21:03  ID:MrTyVo.v0
    おつおつ


  • 9  Name  名無しさん  2018年08月18日 23:31  ID:zVVCC14z0
    夢の世界から脱出できてないみたいですね…


  • 10  Name  名無しさん  2018年08月19日 06:30  ID:s8GOn8nK0
    後世の歴史家に狂気の産物として紹介されそう


  • 11  Name  名無しさん  2018年08月20日 10:31  ID:gNzuSK..0
    こいつまだやってたのか…
    最初からなのか知らんが完全に原作空とはキャラがまるで違うから「東方の空が好き」でやってるんじゃなくて「俺の脳内嫁とイチャイチャ妄想すること」だけが唯一の楽しみなんだろうなあ怖い


  • 12  Name  名無しさん  2018年08月21日 00:30  ID:VXevXaEW0
    まだ現役だったのか…すごい…
    学生時代に見てた記憶が…


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