2018年09月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



846 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:33:04 ID:kGUjljG20

2018年9月1日(土)

「……九月になってしまいました」
「なってしまいました」
「月が変わると、いよいよ秋めく感じがするよな」
「する」
「秋が終わって、すぐ冬で、あっという間に雪が降る」
「たのしみだねえ」
「いや、俺はあんまり……」
「えー」
「寒いし、ウィンタースポーツするわけじゃないし、寒いし、雪道危ないし、いいことひとつもない」
「ゆきかきは?」
「大嫌い」
「えー……」
不満げである。
「わたし、◯◯とゆきかきするの、すき」
「……まあ、××と一緒にするぶんには、そこまで嫌じゃないけどさ」
「うへー」
「でも、大雪は勘弁だよ。一時間コースは問答無用で嫌い」
「いちじかんは、うん……」
「十分くらいでササッと終わる量なら毎日降ったっていいけど、悲しいけどここ北海道なのよね」
「かなしいの?」
「ごめん。ガンダム見たこともないのにガンダムネタ使った」
「そなんだ……」
「──って、さすがに気が早いか。まだ9月1日なのに」
「ふゆ、すきだけど、あきもすきだよ」
「夏は?」
「すき」
「春」
「すき」
「梅雨」
「なつのはじめ、つゆみたいだったね」
「もし、あれが一ヶ月続くとしたら……?」
「……いやかも」
さしものうにゅほも、じめじめするのは嫌いらしい。
「なんにせよ、過ごしやすいのはいいことだ」
「うん」
「ほら、秋さんにご挨拶は?」
「おひさしぶりです」
「一年ぶりですねえ」
「そうですねえ」
去るものは去る。
来るものは来る。
時の移ろいを楽しみたいものだ。








847 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:33:57 ID:kGUjljG20

2018年9月2日(日)

新しいチェアの肘掛けに右手で頬杖をつきながら、左手で文庫本をパラパラと開く。
小泉武夫の「奇食珍食」。
虫、爬虫類、軟体動物──世界中の珍しい食の生態を、作者が自分の舌で取材したレポートだ。
興味深く読んでいると、
「──◯◯、◯◯」
肘掛けの下から、うにゅほがひょこりと顔を出した。
「んー?」
「わたしも、それ、してみたい」
「……ドジョウ地獄鍋?」
「なにそれ」
本の内容のわけがないか。
「それって、どれさ」
「うーと、◯◯みたいに、かたてでほんよむの」
自分の左手を見やる。
たしかに、片手で文庫本を開き、片手でページをめくっている。
あまりに日常過ぎて、指摘されるまで気がつかなかった。
「どやってやってるの?」
「どうって──」
我ながら、どうやっているのだろう。
自分の動きを意識してみる。
親指で左のページを支え、小指で右のページを開く。
中指と薬指は背表紙に引っ掛け、曲げた人差し指を裏表紙に押し当てる。
これが基本の姿勢だ。
めくるときは、人差し指と親指で左のページを湾曲させ、その反動を利用する。
めくられたページは、また小指で押さえる。
「──と、この繰り返しなんだけど」
「やってみる」
うにゅほが、本棚から適当な文庫本を取り、見よう見真似で開いてみせる。
「く」
「できそう?」
「こ、ゆび、つる……!」
「……無理しないほうがいいと思うぞ」
そもそも、手の大きさが違うのだし。
「これむり……」
「横着しないで、両手で読めってことだな」
「◯◯、ずるいー」
「ずるくなーい」
うにゅほの手に合った方法もあるのかもしれないが、それを開発するには長い時間がかかりそうだ。







848 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:34:55 ID:kGUjljG20

2018年9月3日(月)

「レコーディングダイエットかあ……」
「?」
「食べたものを記録したら痩せるらしい」
「うーん……」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんで?」
「不思議だね」
「うん」
「まあ、理に適ったダイエット法だとは思う」
「そなの?」
「太るひとは、太るべくして太ってる。間食、暴食、夜食。食生活に問題がある」
「うん」
「何をどれだけ食べているのかを客観的に把握することで、食生活の改善を図るというのが、レコーディングダイエットの主旨だ」
「なるほど……」
「最近は、アプリで簡単にできるから、ちょっとやってみようかと思って」
「たのしそう」
「××、こういうデータ取る系の好きだよな」
「すき」
「じゃあ、入力は××にお願いしよう」
「はーい」
適当なアプリをインストールし、スマホをうにゅほに手渡す。
「きょう、なにたべたっけ」
「今日は初期設定だけして、レコーディングは明日からでいいんじゃないかな」
「そだね」
うにゅほがぽちぽちとアプリをいじる。
「◯◯、いまなんキロ?」
「──…………」
「?」
「……それ、言わなきゃダメ?」
「いれるとこある……」
「マジか」
マジか。
「……体重測るの、明日でいい?」
「いいけど……」
「あと、今日は晩御飯なしで」
「……?」
ほんの数百グラムでも見栄を張りたい俺だった。
 






849 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:35:40 ID:kGUjljG20

2018年9月4日(火)

風が強い。
台風が近づいているらしい。
「──…………」
「──……」
「……かぜ、すごいね」
「すごいな」
「いえ、ゆれてるね……」
「揺れてるな」
ぎゅ。
うにゅほが、俺の腕に抱き着いたまま離れない。
「相変わらず、家が揺れるのダメなのな」
「だって、こわい……」
共感はできないが、理解はできる。
家は安心の象徴だ。
それが容易に揺らぐのが、理屈抜きで恐ろしいのだろう。
「……しかし、暑いな」
額を拭うと、すこし濡れていた。
「ごめんなさい……」
「いや、××が抱き着く抱き着かない以前に、今日やたら蒸さない?」
「うと」
ふたり揃って温湿度計を覗き込む。
「さんじゅうどある……」
「窓、ちょっと開けてみるか」
「えー……」
「雨は降ってないし、ちょっとだけ」
腕に貼り付くうにゅほを率い、南西側の窓を開く。
その瞬間、

──ぶおッ!

「おふ!」
強風が顔面を煽り、俺は思わずたたらを踏んだ。
「しめて! しめて!」
言われるまでもない。
慌てて窓を閉じ、ほっと一息つく。
「やー、すごかったな……」
「うん……」
台風が直撃したら、どうなってしまうのだろう。
不謹慎だとわかってはいるが、非日常の予感に心が躍る俺だった。







850 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:36:18 ID:kGUjljG20

2018年9月5日(水)

昨夜のことである。
台風に怯えるうにゅほを膝の上であやしていると、

──ブツン!

「わ!」
唐突に、視界が真っ暗になった。
停電である。
「◯◯! ◯◯!」
「はいはい、停電停電。すぐ復旧するって」
「◯◯ぃ……」
俺の首根っこに抱き着いて、半泣きである。
だが、
「……停電、直らないな」
「うん……」
五分経っても、
十分経っても、
明かりは一向に戻らない。
「──…………」
「──……」
暴風が家を揺らす。
豪雨が窓を痛打する。
「これ、どっかの電線が切れたんだな……」
「……でんき、なおらない?」
「朝まで待たないとダメかも」
「うー……」
「しゃーない、寝るか。眠くないけど」
「◯◯、いっしょにねよ……」
「──…………」
あまり同衾はしないようにしているのだが、今回ばかりは仕方ない。
「……××が寝るまでな」
「あさまで……」
「──…………」
「──……」
溜め息をひとつつき、
「わかった」
「やた」
根負けである。
うにゅほに腕を取られながら、布団の中で物思う。
はっきり言って、眠くない。
普段の就寝時刻より数時間早い上に、台風直撃の物音のなか、さらにうにゅほと密着しているとなれば、ぐっすり眠れるほうがどうかしている。
もっとも、当のうにゅほはさっさと熟睡してしまったのだけれど。
浅い眠りを繰り返し、朝を迎えてなお、電気は復旧していなかった。
「しゃーない。冷蔵庫の霜取りでもするか……」
「そだねえ」
霜、随分と大きくなってたし。
ようやく通電したのは、正午を大きく回ってからだった。
やはり、災害は災害である。
来ないに越したことはない。
非日常に高揚した前日の自分を恥じる俺だった。







851 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:37:10 ID:kGUjljG20

2018年9月6日(木)
2018年9月7日(金)

それが起こったのは、9月6日午前3時7分のことだった。
そろそろ寝ようかと腰を上げかけたとき、

家が、揺れた。

最初は、小さな揺れだったと思う。
揺り返しのたび大きくなっていく地震の渦中、自分がどんな気分でいたか、どうしても思い出せない。
放心していたのかもしれない。
あとから知るのだが、このときの震度たるや、実に5弱。
俺にとっても、うにゅほにとっても、初めて体験する規模の地震であったことは間違いない。
棚の上のぬいぐるみが落ち、平積みしてあった本の山が崩れる。
屋内の被害がこの程度で済んだのは、不幸中の幸いと言えるだろう。
「……××?」
揺れが収まったのち、恐る恐る、うにゅほのベッドへと歩み寄る。
俺の顔を見た瞬間、うにゅほが顔をくしゃくしゃにした。
「──こあ、あッ……、う、ああ……ッ!」
うにゅほが俺に抱きつく。
「大丈夫、大丈夫。もう怖くない」
「ふぶ……、う、う……」
しばしうにゅほをあやしていると、停電が起きた。
台風に続き、二日連続となる。
悪いことは重なるものだ。
こうなると、できることなど何もない。
家族の安否と被害を確かめたのち、うにゅほを抱き締めながら、その日は床に就いた。

この停電が、北海道全域に渡ることを知ったのは、翌日のラジオ放送でのことだった。

「……◯◯」
「ん」
「でんき、ぜんぶなおるまで、いっしゅうかんだって……」
たびたび起こる余震に怯えてか、うにゅほは、俺の腕を離さなくなった。
仕方あるまい。
俺だって、余震が来るたびに肝が冷えるもの。
「……一週間は、つらいなあ」
「うん……」
「まあ、漫画でも読んで過ごすさ。積ん読たくさんあるし」
停電はしても、断水はしていない。
食料も十分にある。
東日本大震災などに比べれば、被災としては穏やかなものだろう。
ランタンの明かりのなかで夕食を終え、家族でラジオに聞き入っていたとき、タバコを吸いに出ていた父親が俺たちを呼んだ。
「──おい、お前ら来い! 星すげえぞ!」
好奇心を覚え、家の前の公園に出る。
すると、
「わあ……!」
眼前に、北斗七星が輝いていた。
「そうか、北海道全域が停電だから……」
天球。
瞬く無数の星々が、本で見た通りの形に並んでいる。
「××」
「?」
「あれが、北斗七星。向こうのW型の星座が、カシオペアだ」
「あ、きいたことある!」
「北斗七星とカシオペアは、北極星を挟んでおおよそ反対の位置にある。だから──」
うろ覚えの知識で、うにゅほに夜空の案内をする。
不謹慎かもしれないが、楽しかった。
蚊に食われながら、小一時間ほども星を眺めていたときのことだ。
──パッ、と。
公園の街灯が、白く輝いた。
周囲の家々の窓から、次々と光が漏れ始める。
「わ、ついた!」
「やった……!」
思わず、うにゅほとハイタッチを交わす。
一週間ならずとも三日は覚悟していたため、人工の光がたまらなく嬉しかった。
だが、この夜空の下で、いまも暗闇に怯えているひとたちがいる。
俺たちの地域は、たまたま復旧が早かった。
運がよかっただけなのだ。
一刻も早い全戸復旧を、心から祈っている。







852 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:37:48 ID:kGUjljG20

2018年9月8日(土)

電気が復旧してから二日が経過した。
余震はまだ続いているが、うにゅほもようやっと落ち着きを取り戻したようだった。
「ガソリンスタンド、ずっと並んでるってさ」
「そか……」
「停電はほとんど解消されたけど、まだ手放しで喜べる状況じゃないみたい」
「……いっしゅんだね」
「うん?」
「じしん、じゅうびょうくらいだったのに……」
「……そうだな」
どんなに積み重ねても──否、積み重ねれば積み重ねるほど、崩れ去るのは一瞬だ。
「大きな余震が来たときのために、大切なものを決めて、すぐ持ち出せるようにしないとな」
「たいせつなもの」
「そう」
「◯◯の、たいせつなもの、なに?」
「××」
「うへー……」
うにゅほがてれりと笑う。
「でも、××には足があるから、自分で頑張ってもらうとして」
「えー」
「財布と、預金通帳と、スマホと、時計と、バックアップ用の外付けHDDかなあ……」
「たくさんあるね」
「××の大切なものは?」
「◯◯!」
「ありがとうございます」
「でも、◯◯には、あしがあるから……」
「頑張ります」
「わたし、たいせつなのまとめてあるから、そのはこ」
「あー、あれか」
俺が勝手に"うにゅ箱"と命名したチェック柄のケースのことである。
「◯◯からもらったの、たくさんはいってる」
「腕時計とか、つげの櫛とかな」
「うん」
「余裕があれば、日用品一式も欲しいな。下着とかタオルとか歯ブラシとか」
「あ、みずもほしい」
「ペットボトルたくさんあるから、できるだけ汲んでおこう」
「あと──」
会話を交わすうちに、どんどん荷物が多くなっていくふたりだった。







853 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:38:19 ID:kGUjljG20

2018年9月9日(日)

九月も二週目に入り、だいぶ涼しくなってきた。
「昼間はまだ暑いけど──」
窓を閉めながら、うにゅほに話し掛ける。
「日が暮れたあとも開けっ放しだと、肌寒くて仕方ないや」
「あきだねえ……」
「秋と言えば、さっき、石焼き芋の車が来てたな」
「うん、きてた」
「すこし早い気もするけど、そもそも五月くらいにも営業してたからなあ……」※1
うちの近所の焼き芋屋は、どうにも商売熱心らしい。
「みんな、げんきづけるために、きたのかも」
「元気づけるため?」
「うん」
「……焼き芋で?」
「うーと」
しばし思案したのち、うにゅほが答える。
「いしやきいものこえしたら、いつもどおりなきーするから」
「あー……」
そうかもしれない。
「それは、素敵な考え方だな」
「そかな」
「いまなら売れると踏んだからかもしれないけど」
「そかも……」
こればかりは、聞いてみないとわからない。
「そう言えば、石焼き芋って、××と一緒に買えた試しがないな」
「そだねえ」
「何度か買おうとしたけど、タイミングがいまいち合わないんだよなあ……」
いざと財布を握り締めているときに限って、遠ざかっていくことが多い。
「……そもそも、うちの前は通ってないのかも」
「えー」
「遠くから聞こえてるだけ」
「なまごろし……」
「次に石焼き芋が聞こえたら、窓の傍で張ってみようか。はっきりする」
「うん」
聞こえ次第、車で追うという手もあるが、そこまで必死になることでもない気がするし。
果たして、今年は石焼き芋が買えるのだろうか。
乞うご期待。

※1 2018年5月18日(金)参照







854 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:38:58 ID:kGUjljG20

2018年9月10日(月)

月曜日である。
「あ、ジャンプ買いに行かないと」
「そだね」
「一週間、やたらと長かった気がするなあ」
「ながかった……」
台風、停電、地震に余震──気の休まる暇がない一週間だった。
「──って、コンビニいま大丈夫なのか?」
「あ」
「宅配便は来てるから、物流は問題なさそうだけど……」
「うーん」
「とりあえず、行ってみる?」
「いく」
電動シャッターを開き、愛車のミラジーノに乗り込む。
「このシャッターも、開かなくて困ったっけなあ」
「てーであけれたらいいのにね」
最寄りのセイコーマートの駐車場に車を停めると、見慣れない光景が目についた。
窓から覗く陳列棚に、商品がひとつもないのだ。
「──…………」
「──……」
うにゅほと顔を見合わせる。
非日常。
我が家が普段通りだから、油断していた。
ここは、紛れもなく被災地なのだ。
「……帰るか」
「うん……」
ジャンプという気分でもなくなってしまった。
普段であれば、気分転換に、どこか遠くへ足を伸ばすのだが、いまばかりは余計に気が塞ぎそうだ。
「帰ったら、なんかして遊ぼう」
「!」
うにゅほが目を輝かせる。
「ね、なにする?」
「なにして遊ぶか決める遊び」
「たのしそう」
それでいいのか。
そして、案の定楽しいのだった。







855 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:39:38 ID:kGUjljG20

2018年9月11日(火)

小用を足して戻ってくると、床にゴミが落ちていた。
拾い上げる。
「……?」
糸くずの塊かと思っていたが、なんだか固い。
よくよく見てみると、虫の死骸だった。
「──うおッ!」
思わず取り落とす。
「どしたの?」
「いや、虫が──」
「……むし、どこ?」
うにゅほが臨戦態勢に入る。
俺からの合図があれば、いつでもキンチョールを探しに行ける構えだ。
「いや、大丈夫。死んでる」
「そか……」
ほっと胸を撫で下ろしたうにゅほが、浮かしかけた腰を座椅子に落ち着ける。
「……しかし、けっこうでかいな」
虫の死骸をティッシュにくるみ、ゴミ箱に捨てる。
「かってにはいってきて、かってにしなないでほしい……」
ひどい言い草だが、まったくである。
「乾いてたから、だいぶ前に死んだみたい」
「そなんだ」
「ベッドの下から、風で転げ出てきたのかな」
「──…………」
うにゅほが眉をひそめる。
「どした?」
「……うと、みえないとこにいて、みえないとこでしんだんだよね」
「そうなるな」
「いまも、みえないとこに、むしいるのかなあ……」
「──…………」
「──……」
「……その考え方は、やめよう。見えないものはいない。いいね」
「うん……」
いるかいないかわからないものを恐れ出したら、地獄の始まりだ。
「ただし、アリは除く」
「のぞく」
「侵入された時点で手遅れだからな……」
今年は大丈夫そうだが、まだ安心はできない。
冬になるまで警戒は怠らないでおこう。







856 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:40:47 ID:kGUjljG20

2018年9月12日(水)

「あああああああああー……」
両耳を軽く叩きながら、うるさくない程度に声を上げる。
「!」
唐突な俺の奇行に、うにゅほが目をまるくする。
「◯◯、どしたの」
「あ、いや」
「だいじょぶ……?」
真剣に心配されてしまった。
「大したことじゃないんだ。ほら、イヤーワームってあるだろ」
「あたまのなかで、おんがくなるやつ?」
「そう。止まらなくて……」
「なんのきょく?」
「……きよしのズンドコ節」
「あー……」
「テレビでも見てない、ネットでも聞いてないのに、なんで脳内再生が止まらないんだ……」
「うわがきしたらいいのかなあ」
「上書きしたい。××、なんか歌って」
「なんか……」
「なんでもいいよ」
「うと」
しばし思案したのち、うにゅほが歌い出す。
「……あるーひ、あるーひ、もりのーなーか、もりのーなーか」
森のくまさん。
選曲が、うにゅほらしい。
「くまさーんに、くまさーんに、であーった、であーった」
ひとりで輪唱までしてしまうあたりも、たいへんうにゅほらしい。
「はなさーく、もーりーのーみーちー、くまさーんに、であーったー……」
「おー」
ぱちぱちと拍手を送る。
「うわがき、できた?」
「──…………」
十秒ほど沈黙し、
「……いや、まだ。きよしが強い」
「だめかー……」
「先生、二曲目お願いします」
「はい」
イヤーワームを言い訳に、うにゅほリサイタルを心ゆくまで楽しむ俺だった。







857 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:41:31 ID:kGUjljG20

2018年9月13日(木)

「……部屋に、ぬいぐるみが多すぎる気がする」
「そかな」
「成人男性の部屋としては異常な量かと」
ゲームセンターのプライズで言うところのビッグサイズのぬいぐるみが、十数体ほど。
サイズを問わなければ、優に三十を超えるぬいぐるみが所狭しと飾られている。
「すこしくらいならあってもいいけど、こんなにはいらないよなあ……」
「◯◯、たくさんとってくるから」
「取れそうだと、つい」
同じ理由で、未開封のフィギュアの箱も、クローゼットに押し込められている。
「どうしようかな。ぬいぐるみって捨てられないし」
「だれかにあげるとか」
「誰に?」
「──…………」
「──……」
「うん」
思いつかなかったらしい。
「あげるにしても、お気に入りは取っておきたいなあ」
「おきにいり、どれ?」
「東方系のぬいぐるみはあげたくないし、けもフレも取っておきたいし、猫系のは愛着あるし」
「おおい」
「敢えて言うなら、このマンガ肉のぬいぐるみはいらないかな……」
「なんでとったんだっけ……」
「俺の記憶が正しければ、××がやたらとおだてるから」※1
「そだっけ」
記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっているらしい。
「ぬいぐるみおくへや、あったらいいのにね」
「ほんと、もう一部屋欲しいよな」
「うん」
「──…………」
ふと思う。
「もう一部屋あったら、××の部屋になるんじゃないか。順当に考えて」
「!」
「物置にはしないだろ」
「……もうひとへや、なくていいかな」
うにゅほは寂しがりだから、部屋にひとりではいられない。
「まあ、増築なんてそもそもできやしないんだから、安心しなさい」
「はい」
ぬいぐるみ、どうしようかな。
減らせないのだから、せめて、増やさないようにしなければ。

※1 2017年5月9日(火)参照







858 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:42:15 ID:kGUjljG20

2018年9月14日(金)

「──……う、ぐ」
帰宅早々ベッドに倒れ込み、大きく膨らんだ腹を撫でる。
「わ、おなかすごい」
「友達が、おごってくれるって言うから……」
「なにたべたの?」
「ジャンボ生ちらし、3,580円」
「じゃんぼ……」
「写真見る?」
「みる!」
iPhoneを取り出し、先程撮った写真を見せる。
「こんもりしてる……」
「山だろ」
「やま」
刺し身やいくら、生うにといった魚介が、桶の倍以上の高さを誇る小山を形作っている。
「これ、内側はほとんど酢飯で、具材はただ貼り付けてある感じなんだよな」
「へえー」
「丼二杯ぶんくらいの酢飯を盛り付け始めたのを見たときは、正直後悔した……」
「たべれたの?」
「残さず食べたぞ」
「すごい」
「……ここだけの話、酢飯だけで700gあったらしい」
「──…………」
うにゅほが、ぽかんと口を開ける。
「具材を入れれば、1kgは余裕で超えますね」
「……ダイエットちゅうなのに?」
「ダイエット中なのに」
友人と会ったときくらいは、好きなものを食べてもいいだろう。
限度がある気がしないでもないが。
「ダイエットのアプリ、なんキロカロリーってすればいいんだろ……」
「……2,000kcalくらい?」
「それ、いちにちぶん……」
「晩ごはん、絶対入らないし」
「ぽんぽん」
うにゅほが、俺の腹を撫でる。
「うッ」
「あ、ごめんなさい」
「ちょっと牛になる……」
久し振りに暴食の限りを尽くした。
美味しかったが、二度は食べるまい。
 







859 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:42:58 ID:kGUjljG20

2018年9月15日(土)

「んー……」
卓上鏡を覗き込みながら、あっかんべーの要領で下目蓋を開く。
「よくわからんなあ……」
「どしたの?」
「なんか、右目の下の目蓋がピクピクするんだ」
「ぴくぴく……」
「見ててみ」
「うん」
「──…………」
「──……」
二、三分ほど見つめ合ったのち、
「……まあ、今はピクピクしなかったけど、たまにするんだ」
「しなかったね……」
見せたいときに常に症状が出るとは限らない。
「疲れ目かなーと思って目薬とかさしてるんだけど、ここ数日治らなくてさ」
「びょうきかな」
「目の病気、嫌だなあ……」
「ておくれにならないうちに、びょういんいかないと」
「まあ待て。まずはネットで調べてみよう」
「うん」
適当なワードで検索すると、眼科のサイトがヒットした。
「眼瞼ミオキミア、だと……!」
「こ、こわいびょうき?」
「いや、なんかカッコいい名前だなーと思って」
「──…………」
あ、呆れてる。
「えーと、自然に治まるから、特に治療の必要はないってさ」
「よかったー……」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「……眼瞼ミオキミアって、漫画のタイトルみたいじゃない?」
「わかるけど」
「能力バトルとかしそう」
「あー」
とりあえず、持病が増えたわけではなさそうで、よかった。
 





860 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/09/16(日) 17:43:56 ID:kGUjljG20

以上、六年十ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2018年09月17日 18:12  ID:jNDM.xXV0
    これがイッツルナティックターイムですか


  • 2  Name  名無しさん  2018年09月17日 18:16  ID:OHlbLD9W0
    北海道の方だったのか
    無事で良かった


  • 3  Name  名無しさん  2018年09月17日 18:59  ID:kGIVq1s50
    ふぅ


  • 4  Name  名無しさん  2018年09月17日 19:38  ID:DXKrw7v20
    これをまとめるためにこのサイトがあると言っても過言ではない


  • 5  Name  名無しさん  2018年09月17日 20:19  ID:mztk1C1x0
    この人、揺れの中で
    「おい!大丈夫か!?」
    とか一人で叫んでたんだろうか。


  • 6  Name  名無しさん  2018年09月17日 20:47  ID:nLdOyZdC0
    ヒェ…


  • 7  Name  名無しさん  2018年09月17日 23:06  ID:uechDfYq0
    自身に巻き込まれても停電になっても更新を欠かさない姿勢


  • 8  Name  名無しさん  2018年09月17日 23:50  ID:ImGTk4uP0
    結局これ誰が書いてるんだよ?


  • 9  Name  名無しさん  2018年09月18日 01:21  ID:XGXL2ovr0
    もしジャンボ寝そべりお空が発売されたら作者さん「普段用、保存用、予備、予備、予備……」と買い込みそう


  • 10  Name  名無しさん  2018年09月18日 02:16  ID:wvstNScz0
    *8
    それは、ひょっとしたら貴方の他人格かもしれません。


  • 11  Name  名無しさん  2018年09月18日 06:44  ID:XR3bM1pA0
    無事だけど無事じゃない


  • 12  Name  名無しさん  2018年09月18日 15:19  ID:mqQPj0Mp0
    AIの自動執筆やろなあ


  • 13  Name  名無しさん  2018年09月23日 02:25  ID:lncUi80Z0
    これほんま狂気
    もはや霊烏路空とは別の存在が見えてそう


  • 14  Name  名無しさん  2018年10月01日 15:31  ID:ZZzZssbw0
    *11
    体は無事だけど頭は無事じゃないもんな。


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