2018年10月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



877 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:51:04 ID:we2gTWrQ0

2018年10月1日(月)

「──よし」
作務衣を着替え、外出の準備を整える。
「××。俺、ちょっと出掛けてくるから」
「あ、まって」
いそいそと、うにゅほが肩にバッグを提げる。
「どこいくの?」
「──…………」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「……えーと、俺ひとりだけで行こうかと」
「!」
があん。
ショックを受けたのか、うにゅほが目をまるくする。
「ともだち、あいにいくの……?」
「違うけど」
「じゃあ、どこ?」
「──…………」
「──……」
「……病院」
「!」
があん。
ショックを受けたのか、うにゅほがすこしよろめいた。
「◯◯、どっかわるいの……?」
「──…………」
目を逸らす。
「わるいんだ……」
「……まあ」
「どこわるいの? いたい?」
「──…………」
「どこ……?」
ああ、もう。
丸坊主の頭を掻きむしりながら、はっきりと告げた。
「尻が痛いから、肛門科行くの!」
「あ」
「ちょっと恥ずかしいから、言いたくなかったんだよ……」
「ごめんなさい……」
「……いや、××は心配してくれただけだから」
変に隠そうとせず、素直に言えばよかった。
「じゃあ、行ってくる」
「がんばってね……」
何を?
診察の結果、痔ではなく、ただ炎症を起こしているだけだった。
ひとまず安心である。
今後も気をつけていきたいものの、何をどうすればいいのかよくわからないのだった。








878 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:52:00 ID:we2gTWrQ0

2018年10月2日(火)

「んー……」
Amazonのページを見ながら、低く唸る。
「ほんかうの?」
「どうしようかなって」
「ほん、いつもすぐかうのに、めずらしいねえ」
「本だけは、買うのに躊躇しないことにしてるからな」
漫画に小説、学術書──欲しいと思った本はすぐに購入する。
本こそが今の自分を形作っていると信じているからだ。
「ただなあ……」
「?」
小首をかしげるうにゅほに告げる。
「この本、Kindle版と、中古しかないんだよ」
「きんどる」
「スマホとかタブレットで読める電子書籍な」
「あー」
「電子書籍は便利だけど、肌に合わないっていうか……」
「わかる」
「読みにくいよな、あれ」
「うん」
タブレットならまだしも、スマホだと、画面が小さすぎる。
外出先で読めるという利点もあるにはあるが、たいていうにゅほと一緒なので、外で本を読む機会はあまりない。
「じゃあ、ちゅうこでかう?」
「──…………」
マウスを操作し、ポインタで価格を指し示す。
「一万四千円」
「いちま!」
「プレミアついちゃってるんだよ」
「そんなことあるんだ……」
「本一冊に一万円出せるほど、お金持ちじゃないし」
「せんげつディスプレイかったから、こんげつせつやくだもんね」
「だから、Kindleで買うべきか否か、迷ってるってとこ」
「なるほど」
「……まあ、保留かな。重版されるかもしれないし」
されないと思うけど。
欲しいものを、いくらでも、迷わず買えるようになりたいものだ。







879 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:52:51 ID:we2gTWrQ0

2018年10月3日(水)

俺は、在宅ワーカーである。
比較的自由が利く仕事ではあるのだが、今日は机に張り付きっぱなしだった。
緊急の案件が大量になだれ込んできたのだ。
「……この量を、週末までに……」
このまま行くと、三連休までなくなってしまうかもしれない。
「◯◯、だいじょぶ……?」
「大丈夫、大丈夫」
図面を引きながら、心配そうなうにゅほに答える。
「普段楽してるんだから、たまにはな……」
「がんばってね」
「頑張る」
「かたもむ?」
「あとで、腰と背中揉んでくれ」
「わかった」
数時間が経ち、今日こなすべき最低ラインの半分ほどを消化したころ、会社から連絡が入った。
「──…………」
通話を終えたのち、仕事机に突っ伏す。
「はは、ははは……」
「どしたの?」
「いまやってる仕事、やらなくてよくなった……」
「えっ」
「あーもー、夜に回せばよかった!」
「──…………」
うにゅほが眉をひそめる。
「◯◯、がんばったのに……」
「しゃーない、こういうこともある」
「でも」
「この数時間は無意味だったけど、この先の数十時間が空いたんだ。俺としては、そっちのほうが嬉しい」
「そか……」
「全部こなしたあとに言われたら、さすがに怒ったけどな」
「それは、わたしもおこる」
「××が怒ると、怖いからなあ」
「うん」
さて、空いた時間で何をしようか。
自由って素晴らしい。
 






880 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:53:44 ID:we2gTWrQ0

2018年10月4日(木)

「──……つ」
「◯◯、いたい?」
「痛いけど、まあ、ちょっとだし……」
右膝の外側が痛み出したのは、今朝からのことだ。
歩かなければ気にならない。
だが、それは、歩けば気になることの裏返しでもある。
「ねちがえたのかなあ……」
「……足を?」
どんな寝相だ。
「ともあれ、今日は安静にしとこう。なるべく動かないように……」
「ごはんとか、もってくる?」
「そこまで重症じゃないよ」
「そか……」
階段の上り下りを最低限にしたいのは確かだが、あまり大事にしたくないのも本心だ。
「びょういん、いく?」
「うーん……」
行きたくないなあ。
「とりあえず、二、三日は様子を見よう。痛みがひどくなったら、すぐに整形外科へ行く」
「はやくいかないと、ておくれなるかも……」
どんな病気を想定してるんだ。
「医療費をケチるつもりはないけど、なんでもかんでもすぐ病院じゃ財布がもたないよ」
「そだけど」
「初診料だけならともかく、検査となるとけっこう取られるしなあ」
「うん……」
「だから、膝が痛いあいだは、××がお世話してくれ」
「うん!」
ふんすふんすと鼻息荒く、うにゅほが頷いた。
やる気満々である。
「ね、ね、なにしたらいい?」
「えーと……」
急に言われても、用事は特に──
「あった」
「なに?」
「空きペットボトルに、水を汲んできてくれないか。冷蔵庫で冷やすからさ」
「わかった!」
ペプシの空きペットボトルを二本抱え、うにゅほが階下へ駆け出していく。
「転ぶなよー」
「はーい!」
張り切りすぎて、怪我でもしなければいいのだが。







881 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:54:37 ID:we2gTWrQ0

2018年10月5日(金)

右足をかばうように歩く俺の様子を見てか、うにゅほが心配そうに尋ねる。
「◯◯、ひざ、だいじょぶ……?」
原因はわからないが、昨日から右膝が痛むのだった。
「大丈夫──ではない」
「ではないの……」
「ではないけど、悪化もしてない。歩かなければ痛くないし」
「びょういん……」
「二、三日は様子を見るって言ったろ。まだ一日しか経ってないって」
「そだけど」
「心配してくれるのは嬉しいけどな」
うにゅほの頭を、ぽんぽんと撫でる。
「しかし、この足だと出歩けないなあ……」
「うん」
「車の運転くらいはできると思うけど、すこし歩くと痛むから」
「むりしたらだめだよ」
「しない、しない」
俺は、無理と無茶をするのが何より嫌いな男である。
などと言いつつ、けっこう無理も無茶もしているような気がするのはご愛嬌だ。
「期限を決めようか」
「きげん?」
「二、三日だから、明後日までに良くならなかったら病院へ行こう」
「あさって……」
しばし思案し、うにゅほが言う。
「あさって、にちよう」
「あ」
そうだった。
ついでに言うと、月曜日も祝日だ。
「……9日までに良くならなかったら?」
「ておくれなるかも……」
だから、どんな病気を想定してるんだ。
「まあ、すぐ治るさ。大丈夫大丈夫」
「うん……」
俺は楽観的で、うにゅほは悲観的である。
ふたりの意見を足して2で割れば、きっとちょうどよくなるはずだ。







882 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:55:36 ID:we2gTWrQ0

2018年10月6日(土)

「ろくがつ、むいかに、あめざあざあ、ふってきてー」
雨のそぼ降る窓の外を眺めながら、うにゅほがたどたどしく歌う。
「かわいいコックさん?」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「それ、かわいいコックさんの絵描き歌だろ」
「そなの?」
「知らないで歌ってたのか……」
「あめのうただとおもってた」
「雨の歌かどうかは微妙なところだな」
「えかきうたなの?」
「そうだよ」
「かいて!」
「はいはい」
かわいいコックさんの歌い出しを思い返しながら、メモ帳とペンを用意する。
「えーと、棒が一本あったとさ」
メモ帳に、横棒を一本引く。
「葉っぱかな、葉っぱじゃないよ、カエルだよ」
カエルの顔が出来上がる。
「カエルじゃないよ、アヒル──アヒル?」
「どしたの?」
「待って、思い出す」
たしか、このフレーズで顔の輪郭を描いたような。
全体を丸で囲み、続きを口ずさむ。
「6月6日に雨ざあざあ降ってきて……」
なんとか形になってきた。
「──…………」
「?」
「……あっという間にかわいいコックさん」
頭に帽子をかぶせる。
「おわり?」
「いや、明らかに下半身が足りない」
「ほんとだ」
「仕方ない。こんなときは検索だ!」
Google先生に尋ねると、あっという間にかわいいコックさんの歌詞が表示された。
「──三角定規にヒビいって、あんぱんふたつ、豆みっつ、コッペパンふたつくださいな」
「あっというまに、かわいいコックさん!」
随分とあいだが抜けていたものだ。
「かわいいコックさん、あんましかわいくないねえ」
俺もそう思う。
「これ、種族はなんなんだろうな。人間ではないと思うんだけど」
「……あひる?」
「アヒルにこんなでかい耳ないだろ」
「そか……」
暇つぶしがてら、メモ帳に落描きをして遊ぶふたりだった。







883 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:56:37 ID:we2gTWrQ0

2018年10月7日(日)

「──◯◯。あし、どう?」
「足か」
チェアに腰掛けたまま、右足を持ち上げる。
「歩くのは問題ないかな。小走りくらいなら大丈夫」
「はしったらだめだよ……」
「数歩だよ、数歩」
苦笑する。
相変わらず過保護だ。
「ただ、歩くのは問題ないけど、ひねるとまだ痛いんだよな」
「びょういん」
「よくはなってるから……」
「そだけど」
本当に過保護である。
「しかし、本当に原因がわからん。覚えがない」
「やっぱし、ねちがえたのかなあ」
「──…………」
そんな気がしてきた。
「こう、半分ベッドから落ちかけながら寝たら、あるいは寝違えられるんじゃないか」
「ねぞうわるい」
「そんな寝方してるの、見たことある?」
「ない……」
「さすがに起こすよな」
「うん、おこす」
「××は、どんな寝方したら、足を寝違えると思う?」
「……んー、と」
うにゅほがベッドに上がり、右足を折り畳んだまま仰向けに寝そべった。
「こんなかんじ?」
「××、体柔らかいなあ」
「うへー」
「俺がそれやったら、たしかに筋は痛めると思うけど……」
「おもうけど?」
「その前に、激痛で起きる」
「そかな」
「俺、××が思ってるより体硬いぞ」
「でも、ぜんくつして、てのひらゆかにとどく」
「前屈しかできないとも言う」
「わたしとはんたい」
「××は、体柔らかいけど、前屈だけできないもんな」
「なんでだろねえ……」
「暇だし、一緒にストレッチでもするか」
「するー」
思い出したようにストレッチをしても、すぐさま効果が表れるわけではない。
だが、やらないよりはましだろう。
右膝も、早いところ完治してくれればいいのだが。







884 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:57:06 ID:we2gTWrQ0

2018年10月8日(月)

「体育の日だなあ」
「たいくのひだねえ」
「……あんま関係ないな」
「ね」
運動しようにも、足を痛めている。
無理して悪化させては事だ。
「体育の日とはまったく関係ないけど、マウスがそろそろまずいかもしれない」
「ぷしゅーってする?」
以前調子が悪くなったとき、マウスホイールの隙間にエアダスターを噴射して直したことがあったのだ。※1
「いや、何度かやったんだけど……」
「だめ?」
「ダメみたい」
「そか……」
「この型、まだ売ってるかな。新型は買いたくないし」
「しんがた、だめなの?」
「ロジクールの旧型にしかない機能があるんだよ。ワンタッチサーチっていうんだけど」
「わんたっちさーち」
「そうだなあ」
昨日の日記を開く。
「この、"ストレッチ"って単語をGoogleで検索したいとする」
「うん」
「単語をドラッグして範囲選択、右クリックしてコピー、ブラウザを開いて、アドレスバーに貼り付けて、エンターキーを押す」
ブラウザに検索結果が表示される。
「これが検索の手順になる」
「うん」
「でも、ワンタッチサーチ機能を使うと──」
単語を範囲選択し、親指でマウスのスイッチを押す。
先程の経緯をすっ飛ばし、ブラウザに検索結果が表示された。
「はや!」
「手軽だろ」
「うん、すごい……」
「新型だと、この機能がない」
「なんで?」
「わからない。わからないけど、PC界隈って、アップデートで改悪されるのが当たり前って風潮あるから……」
「へんなの……」
「俺もそう思う」
幸い、同じ型番の製品は、まだ定価で売っていた。
完全に壊れたときのために、予備としてひとつ買っておこう。

※1 2018年8月15日(水)参照







885 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:57:35 ID:we2gTWrQ0

2018年10月9日(火)

「長崎くんち……」
「?」
唐突な俺の呟きに、うにゅほが小首をかしげる。
「だれ?」
「うん、そうなるよな」
「……?」
「長崎くんちは、長崎くんの家じゃない」
「だれのいえ?」
「長崎で行われるお祭りの名前だ」
「──……?」
うにゅほの首の傾きが、どんどん深くなっていく。
「俺もいま知ったばかりだから、ぜんぜん詳しくないんだけどさ」
「うん」
「"くんち"というのが、お祭りの名前らしい」
「うん?」
「長崎の"くんち"だから、長崎くんち」
「あー……」
「なんとなくわかった?」
「なんとなくわかった」
うんうんと頷く。
「なんで、ながさきくんち?」
「今日やってるらしくて」
「へえー」
「──…………」
「──……」
「まあ、だからなんだってこともないけど」
「にっき、かくことなかったの?」
見透かされていた。
「だって、足もほとんど完治して病院行く必要ないし、だからって病み上がりに出歩くのもなんだし、特に書くこと思い浮かばなかったんだ……」
「かくことないとき、やすんだらだめなの?」
「ずっと毎日続けてきたことだから、そう簡単に変えたくないなあ」
「そなんだ」
「まあ、こうやって雑談してれば、その内容を書き留めるだけで済むんだけどさ」
「そんなんでいいんだ」
「急に変な話題を振るときは、たいていそれ」
「あー」
心当たりがあるらしい。
「これからも、急に変な話題を振り続けていくから、面白いリアクション頼むな」
「むずかしい……」
うにゅほは、うにゅほであればいい。
でも、頑張って面白いリアクションを取ろうとする姿も見たい。
業の深い俺だった。







886 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:58:44 ID:we2gTWrQ0

2018年10月10日(水)

露出した腕を手荒く撫でながら、呟く。
「涼しいどころか、肌寒くなってきたなあ……」
「そかな」
うにゅほが温湿度計を覗き込む。
「うーと、にじゅうさんてんはちど」
「……そうでもないな」
「そうでもない」
「じゃあ、単にダイエット中だからか」
「そうかも……」
横っ腹を掴む。
「これ、さっさと落とさないとなあ」
夏のあいだに随分と太ってしまった。
ダイエットをする時期と太る時期との繰り返しで、体重を一定に保つことができない。
ゼロかイチかの極端な性格のためだ。
「あんましむりしないでね……」
「無理はする、と思う」
「──…………」
うにゅほが口を尖らせる。
「でも、無理のし過ぎは、なるべくないようにする」
「ほんと?」
「……なるべく」
「──…………」
「──……」
「むりしたら、とめるからね」
「お願いします」
うにゅほというストッパーがいてくれるのは、本当にありがたい。
自分ひとりだと、肉体の限界を易々と飛び越えてしまいかねないからだ。
「よし、適度に無理して痩せるぞ!」
「むりするの、てきどじゃないとおもう……」
「多少は無理しないと痩せないんだもん」
「そだけど」
「このまま延々と太り続けて体重三桁とか、××も嫌だろ」
「うーん……」
しばしの思案ののち、
「……いやかも」
「だろ」
「むり、しすぎないでね」
「わかった」
物心ついてからもう何度目かわからないダイエット生活が、始まる。







887 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:59:19 ID:we2gTWrQ0

2018年10月11日(木)

「お、おう……」
腹部を強く押さえながら、前傾姿勢で耐える。
「腹が、腹がぐるんぐるん言いよる……」
「だいじょぶ……?」
「……まあ、大丈夫」
「だいじょぶじゃなさそう……」
「完全に下ってますね、これは……」
「といれは?」
「弟が入ってた……」
「いっかいの、といれ」
「いや、ノックしたら、すぐ出るって言うから」
「そか……」
便意は強いが、一刻を争うほどではない。
「なんか、わるいものたべた?」
「皆と一緒のものしか食べてないし、そもそもダイエット中だから量も控えてる……」
「そだよね……」
「うッ」
ぐるぐる。
胃腸が蠕動している。
「やっぱし、いっかいのといれ──」
うにゅほがそう言い掛けたとき、二階のトイレから水を流す音がした。
「行ってきます……!」
「いってらっしゃい」
俺は、うにゅほに敬礼すると、小走りでトイレに駆け込んだ。

しばしののち、
「ふー……」
スッキリ。
洗面所で手を洗っていると、階下からうにゅほが現れた。
「はい、あかだま」
常備薬の、赤玉はら薬だ。
「ありがとな」
うにゅほの頭を撫でようとして、やめる。
ちゃんと手を洗ったとは言え、トイレから出たばかりだ。
「へんなのたべてないなら、おなかだしてねてたのかなあ……」
「可能性はある」
「おなかなでる?」
「お願いします」
どうにも腹の調子が悪い一日だった。







888 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 16:59:47 ID:we2gTWrQ0

2018年10月12日(金)

「ふー……」
以前に書いた小説の改稿作業を終え、大きく伸びをした。
「おわったの?」
「終わった」
「おつかれさま!」
ここ二週間ほどかかりきりだったのだが、ようやく手が空いた。
もっとも、やるべきことは幾らでもあるのだけれど。
「とりあえず、今日はゆっくりしようかな。読書もいいし、ゲームでも──」
そう言い掛けたとき、
「──うッ」
唐突に、右腕が重くなった。
「どしたの?」
「いや、なんか……」
何が起こったのか、自分でもよくわからなかった。
「右腕が、急にだるくなって」
「きゅうに?」
「ああ」
「みして」
作務衣の右袖をまくり上げ、うにゅほに右腕を差し出す。
もみ、もみ。
うにゅほが俺の右腕を揉んだ。
「うで、ぱんぱん……」
「マジで」
「にのうでも、かたも、すーごいかたい」
「左は?」
「んーと」
もみ、もみ。
「ひだりは、そうでもない」
どうして右腕だけ。
「◯◯、みぎてだけでうでたてふせとか、した?」
「してない。できないし」
「だよねえ……」
「悪いけど、ちょっとマッサージしてくれるか。だるくてつらい……」
「わかった」
うにゅほのふわふわマッサージをしばらく受けていると、だるさがだんだん取れてきた。
「……ありがとな。だいぶよくなった」
「もうだいじょぶ?」
「たぶん」
「つらくなったら、いってね」
「遠慮なく言うぞ」
原因はよくわからなかったが、治ったからいいや。







889 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 17:00:28 ID:we2gTWrQ0

2018年10月13日(土)

「──あ、そうだ」
「?」
「明後日、××の誕生日じゃん」
「うん」
「誕生日デートで、映画観に行こうぜ」
「いく!」
うにゅほが目を輝かせる。
「まえいってたやつ?」
「そう。"カメラを止めるな!"ってやつ」
「ぞんびでるやつだっけ……」
「"ゾンビランド"は面白かっただろ」
「おもしろかった!」
「総製作費300万円だから、出てきても安っぽくて怖くないんじゃないかな」
「それ、おもしろいの?」
「この映画の面白さは、お金をかけられる部分とは関係ない──らしい」
「らしいの」
「だって、まだ観てないもん」
「そだね」
「先にひとりで観たら怒るだろ」
「おこる」
映画を観るだなんて、俺たちにとっては一大イベントだ。
うにゅほを置いてひとりで行くなんて選択肢は、はなから存在しない。
「さて、上映時間は──」
キーボードを叩き、行きつけのシネコンのサイトを開く。
「げ」
「どしたの?」
「朝からと夜からしか上映してない」
「ひるは?」
「すっぽり抜けてる」
「あー……」
「夜だと絶対混むよな」
「こんでるの、やだな……」
「じゃあ、朝一択だ」
「◯◯、おきれる?」
「頑張る」
「そか」
「起きなかったら、叩き起こしていいから。思いきりビンタしていい」
「しないけど……」
「つねってもいいぞ」
「それくらいなら」
「起きれなかったら、絶対後悔するからな……」
「……わかった。ほんきでおこす」
「頼むな」
「うん!」
うにゅほが、覚悟を決めた表情で頷く。
起きなかったら何をされるのか、怖いような、興味があるような。
 







890 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 17:01:00 ID:we2gTWrQ0

2018年10月14日(日)

パワーボールというトレーニング器具を購入した。
「……?」
俺の手に握り込まれたパワーボールを、うにゅほが不思議そうに覗き込む。
「これなに?」
「パワーボール」
「ぱわーぼーる」
「これを使って、前腕部の筋肉を鍛えるのだ」
「……にぎにぎするの?」
「にぎにぎしない」
「どうやるの?」
「見てな」
野球のボールより一回り小さいそれの内部には、更に小さいボールが内蔵されている。
一部露出した内部のボールを、両手の親指を使って矢印の方向にしばらく回し、指を離す。
すると、

ぶいー……

「──まわった!」
内部のボールが回転を始めた。
「そうしたら、手首を使ってパワーボール自体を回転させて──」

ブウゥ──────ン……

内部のボールの回転に合わせて手首を動かすことで、回転数が徐々に上がっていく。
回転数の上昇は、高くなっていく音でも判断することができる。
「おー……」
「とまあ、こんな感じ」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんで、うで、きたえれるの?」
「回転数が上がると負荷が上がって──まあいいや。やってみればわかるよ」
パワーボールをうにゅほに手渡す。
「矢印の方向にボールを回して」
「うん」
「止まるまで回して」
「んッ、んッ!」
「回したら、指を離す」

ぶいー……

「まわった!」
「中のボールが回ったら、パワーボールを握り込んで、手首を使って回す」
「んッ! んにッ!」
「──…………」
「んいッ! いッ!」
内部のボールの回転が止まる。
「まわらない……」
「手首、回ってなかったぞ」
「!」
「上下にしか動いてなかった」
「もっかい」
何度やっても回らない。
「つかれた……」
「……まあ、うん」
不器用だなあ、とは言わないでおこう。
「あ、つかれたから、きんにくつくかも」
「そういう道具じゃないです」
「そか……」
まあ、前腕部ムキムキのうにゅほなんて見たくないから、これでよかったと思うことにしよう。
 







891 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 17:01:40 ID:we2gTWrQ0

2018年10月15日(月)

「──…………」
目を覚ます。
「あ、おきた」
寝顔を見ていたのか、うにゅほがベッドサイドに立っていた。
「いま何時?」
「うーと、はちじ、にじゅうごふん」
「余裕だな」
「はちじはんになったら、おこそうとおもってた」
「ビンタされずに済んだか……」
「しないよー」
うにゅほが苦笑する。
「××」
「?」
「誕生日、おめでとう」
「うん!」
今日は、うにゅほの誕生日である。

「"カメラを止めるな!"、面白かったな!」
「おもしろかった!」
「これはたしかにネタバレ厳禁だわ」
「おかあさんに、どんなえいがかきかれたら、どうしよう」
「父さんと一緒に観に行けって言えばいいよ」
「そか」
「帰り際、喫茶店でも寄ってくか。お昼も食べたいし」
「いつものとこ?」
「いつものとこは逆方向。今日は、別のチェーン店を開拓しよう」
「いいねー」
ケーキ以外の甘いものに舌鼓を打ちながら、一時間ほど映画の話で盛り上がる。

古着屋、本屋、ゲームセンター──
デートをたっぷり楽しんで帰宅すると、既に日が暮れかけていた。
夕飯はカレーだった。
カレーとバースデーケーキの食い合わせはどうなんだろうと思ったが、うにゅほが喜んでいたのでなんだっていいや。
両親からの誕生日プレゼントは、安定の図書カード。
弟からのプレゼントは、ネイルケアセットだった。
「ほんやいくの、あしたにすればよかったね」
「たしかに」
俺からのプレゼントは、
「ちょっとお高めのヘアケアシャンプーと、トリートメントのセットです」
「わあ!」
「弟のネイルケアセットと合わせて、いい女になるがいい」
「うん、いいおんなになる」
うにゅほと出会って、ちょうど七年。
幸せな毎日を過ごしている。
 






892 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/10/16(火) 17:02:33 ID:we2gTWrQ0

以上、六年十一ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2018年10月17日 19:43  ID:CFQkzYLm0
    なんかなごむ


  • 2  Name  名無しさん  2018年10月17日 20:11  ID:VIdTzkwP0
    定期検診


  • 3  Name  名無しさん  2018年10月17日 20:17  ID:GboiHJ4g0
    作者シネや
    キモいんだよ


  • 4  Name  名無しさん  2018年10月17日 20:46  ID:w6cgzN4g0
    早苗に唯一守谷を信仰しなくてもいいと言われた男


  • 5  Name  名無しさん  2018年10月17日 20:48  ID:ClrztRp80
    ブログサイトの日記見てみたけど、
    どれもコメントついてなくて草

    これからもがんばってください(小並感)


  • 6  Name  名無しさん  2018年10月17日 20:49  ID:buGHo5dv0
    コメントだけ見に来た定期


  • 7  Name  名無しさん  2018年10月17日 21:19  ID:RVz6ckkQ0
    狂気の定期便


  • 8  Name  名無しさん  2018年10月17日 21:31  ID:07.OGHic0
    5 3,お前こそ死ね


  • 9  Name  名無しさん  2018年10月17日 22:11  ID:A2SaqOu70
    作者がいるなw


  • 10  Name  名無しさん  2018年10月17日 22:14  ID:bBZ4ISoB0
    本当に皮肉抜きで尊敬するわ 創作者の鑑ですね


  • 11  Name  名無しさん  2018年10月17日 22:39  ID:cOOw8wlY0
    これ10年目いくのでは?


  • 12  Name  名無しさん  2018年10月17日 22:56  ID:.RUbhWHV0
    現実社会でどんな職業に就いてるか気になる
    無職だと思う存分


  • 13  Name  名無しさん  2018年10月17日 23:21  ID:mwTkmJuK0
    この荒れかけのコメ欄見るとホッとする。


  • 14  Name  名無しさん  2018年10月17日 23:26  ID:GboiHJ4g0
    絶対この糞作者コメントで自演してるだろ
    頼むから早くしんでくれ


  • 15  Name  名無しさん  2018年10月18日 01:03  ID:WxXmOUTT0
    わりとやべーやつだと思うわ


  • 16  Name  名無しさん  2018年10月18日 01:31  ID:CrBSUmqS0
    強く生きて
           ┃ ┃
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    KONAMI感


  • 17  Name  名無しさん  2018年10月18日 01:59  ID:arf5IBki0
    管理人の古い友人が書いてるとかなんかな
    結構歳いってる奴が書いてそうなのがまた


  • 18  Name  名無しさん  2018年10月18日 03:20  ID:.B5KIK.y0
    これを待ってた


  • 19  Name  名無しさん  2018年10月18日 04:09  ID:SffRXw9d0
    これほんとすき


  • 20  Name  名無しさん  2018年10月18日 10:32  ID:CtnGxzrj0
    実言うと管理人が書いてるとか
    だったら怖いよな


  • 21  Name  名無しさん  2018年10月18日 10:38  ID:xkSuP.NE0
    管理人が作者説に一票


  • 22  Name  名無しさん  2018年10月18日 14:52  ID:vEhfjP.40
    闇が不快から載せないでほしい


  • 23  Name  名無しさん  2018年10月18日 16:23  ID:otQQUpO90
    俺からのプレゼントは、
    「ちょっとお高めのヘアケアシャンプーと、トリートメントのセットです」
    「わあ!」
    「弟のネイルケアセットと合わせて、いい女になるがいい」
    「うん、いいおんなになる」
    うにゅほと出会って、ちょうど七年。
    幸せな毎日を過ごしている。


    うにゅほと出会って、ちょうど七年。
    幸せな毎日を過ごしている。

    幸せな毎日を過ごしている。

    幸せな毎日を過ごしている。

    幸せな毎日を過ごしている。


  • 24  Name  名無しさん  2018年10月18日 18:18  ID:LKyu.2Hg0
    コメントが本編の珍しいタイプのまとめ


  • 25  Name  名無しさん  2018年10月18日 18:29  ID:.0onDWUZ0
    この作者の顔見てみたいわ
    典型的なオタク顔だと思う


  • 26  Name  名無しさん  2018年10月19日 06:01  ID:0IuC2tdw0
    何でもかんでもアニメやゲームってだけで叩くマスゴミよりは遥かにマシ


  • 27  Name  名無しさん  2018年10月19日 06:24  ID:Akgc4g990
    ほんとすごいと思うけど、いったい何が彼(?)をそこまで突き動かすのか
    コレガワカラナイ


  • 28  Name  名無しさん  2018年10月19日 13:45  ID:OrooPnTl0
    変な小説ヤロー


  • 29  Name  名無しさん  2018年10月19日 23:07  ID:3aCY3dhW0
    twitterあるし誰か質問してきてくれ


  • 30  Name  名無しさん  2018年10月23日 16:08  ID:5p2iLJVP0
    不快とか気持ち悪いって東方ファンが言えた事じゃねーだろ


  • 31  Name  名無しさん  2018年10月23日 19:19  ID:u39Jn1BU0
    こいつ東方原作やってるのか?


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