2018年11月03日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2014/03/07(金) 20:24:10 ID:t2nls1YA0

ニュー速VIPの転載禁止に伴い、こちらに専用スレを立てました

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



894 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:36:39 ID:YsQ.2l560

2018年10月16日(火)

「ない」
「……ないねえ」
近所のホームセンターに、ダンボール箱入りのペプシが入荷していない。
震災のあとから急に品揃えが悪くなった気がする。
「しゃーない、別の店を探そう」
「そだね」
慣れたものだ。
ホームセンターを出ると、パラパラと降っていた小雨がやんでいた。
ミラジーノに乗車し、駐車場を出る。
「あのサツドラは確実に置いてるけど、ちょっと遠いんだよなあ」
「うん」
「アークスは近いけど、数が不安定だし」
「かいんず、なんでないんだろうねえ……」
「スペースと値札はあるんだよな」
「あった」
「にも関わらず常にないってことは、入荷が少ない上に、タイミングが悪いんだと思う」
「そか……」
しばしミラジーノを走らせていると、
「──……?」
うにゅほが口をつぐみ、前方に目を凝らした。
「どした」
「なんか、にじいろ……」
「虹色?」
運転をおろそかにしない程度に、ほんのすこし目を細める。
「……たしかに、うっすら虹色がかってるな」
虹色の光が街を覆っているように見える。
「にじかなあ」
「虹にしては太すぎないか?」
「ふといにじ……」
「そんなの、あるのかな」
「わかんない」
だが、虹の太さが一定と決まっているわけでもあるまい。
「なんか、珍しいものを見た気がする」
「そだね」
「いいことあるかもよ」
「なにかな」
「五百円拾うとか」
「うーん……」
「千円拾うとか」
「おかねからはなれたい」
「図書カード拾うとか」
「きのうもらった……」
少なくとも、気分は悪くない。
虹を見るのもいいものだ。








895 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:37:04 ID:YsQ.2l560

2018年10月17日(水)

ブウゥ────ン……

左手でパワーボールを回しながら、ぼんやりと動画を眺める。
「◯◯、それ、よくまわせるねえ……」
「慣れじゃないかな」
「なれ……」
「慣れる以前に、まずコツを掴む必要があるとは思うけど」
「うーん」
「──って、腕パンパンだ」
パワーボールの回転を止めて、左腕を揉む。
「"ながら"でできるわりに、負荷大きいんだな……」
「そなの?」
うにゅほが俺の左腕に触れる。
「わ、かたい」
「筋肉痛になりそう」
「そんな、すごいうんどうに、みえないのにねえ……」
「傍から見れば、ボール持って手首回してるだけだからな」
「うで、そんなつかれるの?」
「いちおう、最大で16kg相当の負荷がかかるらしい」
「じゅうろっきろ」
「ペプシのダンボール箱を片手で持つよりすごいってことになる」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「そんなにすごいの?」
「数値上は」
「……ほんとに?」
「あくまで数値上はな」
「ちがうの?」
「実際、ダンボール箱を片手で持ったほうが腕に来ると思う」
「そなんだ……」
「回したあと、持ってみる?」
「みる」

ブウゥ──────ン……!

右手でパワーボールを可能な限りの高速で回転させる。
「両手出して、落とさないように」
「はい!」
パワーボールを、うにゅほに手渡す。
「──わッ! わ、わわ!」
うにゅほの両手の中で、パワーボールが暴れる。
やがて、内部のボールに指が触れたのか、回転が徐々に止まっていった。
「ふー……」
「これを握力で制御しながら、ずっと回し続ける」
「うで、ぱんぱんなるはずだねえ……」
「だろ」
デスクで手軽に筋力トレーニング。
なかなかに悪くない。







896 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:37:46 ID:YsQ.2l560

2018年10月18日(木)

「……寒い、気がする」
冬用の靴下を履き、半纏を羽織り、ブランケットを膝に掛けている。
だが、それでも寒い。
「いま何度?」
「うーと、にじゅうにど」
「22℃でこれか……」
これから先が思いやられる。
「××は寒くないの?」
「はだざむい、かなあ」
「うーん。冷蔵庫でキンキンに冷やした水をがぶ飲みしてるからかなあ……」
「それだとおもう……」
俺もそう思う。
「そんなにのどかわくの?」
「渇くわけじゃないけど、あると飲んじゃう」
「かたづけとく?」
「そうだな。冷蔵庫に入れといて」
「わかった」
うにゅほが、半分ほど中身が減ったペットボトルを冷蔵庫に仕舞う。
「みずは、のどかわいたらにしましょう」
「はい」
「よろしい」
「それはそれとして寒いのは変わらないから、膝に──」
途中で言葉を止める。
「?」
うにゅほが小首をかしげた。
「そんなんどうだっていいから、冬のせいにして、暖め合おう!」
「はい」
うにゅほが膝の上にちょこんと座る。
「まだふゆじゃないけど、さむいもんね」
俺の台詞に違和感はないらしい。
「いや、いまの、なんかの歌の歌詞でさ」
「へえー」
T.M.Revolutionだっけ。
「じゃあ、あたためあわない?」
「暖め合おう、うん」
うにゅほを背中から抱き締める。
暖かい。
「あったかいねえ」
「持つべきものは人肌よなあ」
「うん」
うにゅほには、今年も湯たんぽになってもらおう。
 






897 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:38:33 ID:YsQ.2l560

2018年10月19日(金)

Amazonから荷物が届いた。
「なにかなー」
「なんだと思う?」
「わかんない!」
考える素振りすら見せない。
「まあ、開ければ済む話だもんな」
「うん」
「では、開封の儀を執り行う」
ダンボール箱を開き、中身を取り出す。
「あ、これ、ふっきんのやつ?」
「そう、腹筋のやつ」
腹筋のやつことアブローラーである。
「したにあるのに……」
「まあ、そうなんだけど」
父親がドン・キホーテで買ってきたアブローラーが、いまでも一階に置いてある。
「あれ、弟が使ってるじゃん」
「うん」
「勝手に持ってくると、怒るじゃん」
「うん」
「でも、自分の部屋でやりたいじゃん」
「なるほど……」
「それに、安いんだよな、これ」
「そなの?」
「千円ちょっと」
「やすい……」
「部屋にあれば、暇なときやるかと思って」
「ふっきん、ばきばきにするの?」
「バキバキにする」
「おー」
「××も、バキバキにする?」
「しない」
「それがいい」
ムキムキマッチョマンのうにゅほというのも、あまり見たくはないし。
「多少は鍛えておいたほうが、スタイルはよくなるらしいけどな」
「そなんだ」
「お腹、ぽっこりしてない?」
「してない」
「本当に?」
「……と、おもう」
「どれ」
「うひ」
うにゅほのお腹を撫でる。
「お腹、へこませてない?」
「ない」
「じゃあ、大丈夫かな……」
「でしょ」
とは言え、油断はできない。
たまには一緒に筋トレするのもいいだろう。







898 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:39:09 ID:YsQ.2l560

2018年10月20日(土)

予定があったので、午前十時にアラームをセットした。
起床すると、まだアラームは鳴っていなかった。
「──…………」
むくり。
「あ、おきた」
「いま何時……」
「うーと、じゅうじ、じゅっぷんまえ」
「……あと十分寝れるな」
「おきないの?」
「あと十分寝る……」
ばたん。
「おきたらいいのに……」
うにゅほの言うことも、よくわかる。
だが、それでも人は、僅かな睡眠を尊ぶのだ。
もともと半寝ぼけだった意識が、あっという間に夢へと滑り落ちていく。

──長い、長い夢を見た。

その内容は、日記を書いている今や、思い出すことは叶わない。
だが、一大叙事詩とは行かずとも、長編小説の一編ほどの長さはあっただろう。
起きた瞬間に感じたのは、ある種の満足感と、焦燥感。
確実に寝過ごした。
慌てて飛び起き、充電しっぱなしのiPhone引っ掴んで時刻を確認する。
「──…………」
「やっぱしおきるの?」
「……××、いま何時?」
「くじ、ごじゅうごふんくらい」
「マジで」
「なにが?」
うにゅほが首をかしげる。
「リアル邯鄲の夢だ……」
「かんたんなゆめ?」
「いま、この五分で、すごい長い夢を見てたんだよ」
「すぐおきたのに」
うにゅほにとっては五分でも、俺にとっては遥かに長い時間だったのだ。
「……起きるか」
「あとごふんあるよ」
「まあ、うん。目、覚めちゃったし」
「そか」
アラームを鳴る前に解除して、うんと伸びをする。
面白い体験だった。







899 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:39:46 ID:YsQ.2l560

2018年10月21日(日)

「──…………」
うと、うと。
マウスを握りながら、船を漕ぐ。
「◯◯?」
「!」
はッ、と姿勢を正す。
「ねむいの?」
「寝てない……」
「ねてたの?」
「……ちょっと寝てた」
うたた寝していたことを指摘されると、つい反射的に否定してしまうのは何故なのだろう。
かすかな罪悪感でも覚えているのだろうか。
「ぽかぽか陽気で、あったかくて……」
「ねるなら、ちゃんとねたほう、いいとおもう」
「そうなんだけどな」
うたた寝はうたた寝で心地よいのだ。
あふ、と小さくあくびをして、
「……なーんか、今日、ずっと眠いや」
「ほんとねむそうだね」
「休日はたいてい眠いけど、今日は特に」
「ねるの、おそかったの?」
「そうでもないと思うんだけど……」
「なんじかんねた?」
しばし思案する。
「……合計、六時間くらい?」
「あんましねてない……」
「あんまり寝てなかった」
「ねむいはずだねえ」
「たしかに」
たっぷり寝た気がしていたのは、ただの気のせいだったらしい。
「やっぱし、ちゃんとねたほういいよ」
「そうだな……」
うたた寝では睡眠のうちに入らない。
ベッドでまるくなると、うにゅほが布団を掛けてくれた。
「あとでおこす?」
「とりあえず、三十分で」
「わかった」
結局、あと十分、あと二十分と繰り返し、二時間ほど寝入って気づけば夕方なのだった。
気持ちよかったし、後悔はない。







900 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:40:11 ID:YsQ.2l560

2018年10月22日(月)

「ただいまー!」
母親と一緒に出掛けていたうにゅほが、意気揚々と帰宅した。
「おかえり。どこ行ってたんだ?」
「うへー……」
ぴたりと身を寄せて、上目遣いでこちらを覗き込む。
「わたし、なんか、ちがわない?」
「──…………」
じ、とうにゅほを観察する。
言われてみれば、たしかに、普段とはすこし雰囲気が違う気がする。
「美容室──じゃ、ないよな。髪型変わってないし」
「うん、ちがう」
「……もしかして、化粧した?」
なんだか目元がハッキリしたように感じる。
「おしい」
「惜しいのか……」
「わかんない?」
「参った、わからない」
両手を挙げて、降参の意を示す。
「まつげパーマ、してきたの」
「……まつげパーマ?」
聞いたことのない単語だ。
「かお、よこからみて」
「ああ」
うにゅほの横顔を注視して、ようやく理解する。
「──まつげがカールしてる!」
「うん」
もともと長めなうにゅほのまつげが、くるんと上に曲がっていた。
「へえー、けっこう印象変わるもんだな」
「でしょ」
どちらかと言えば素朴な印象を受けるうにゅほの顔が、すこし華やいで見える。
「◯◯も、まつげパーマ、する?」
「俺はいいよ」
どうでも。
「そか……」
「でも、まだまだ弟の域には手が届かないな」
「(弟)、まつげながいもんねえ」
「ラクダみたいだもんな」
「らくだ……」
弟のまつげは、人種が違うんじゃないかってくらいに長い。
「あれにパーマかけたら面白そう」
「おもしろそう!」
「絶対嫌がるけどな」
「そだねえ……」
ひと笑いのためにサロンへ行くほどサービス精神旺盛な性格はしていない。
想像に留めておこう。
 







901 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:40:36 ID:YsQ.2l560

2018年10月23日(火)

病院からの帰り際、古着屋へ立ち寄った。
「なにかかうの?」
「んー……」
特に目当ての品があったわけではない。
「まあ、秋用のジャケットとか」
「さむいもんね」
「××、気になるものある?」
「わたしはないかなあ……」
「そっか」
数着のジャケットを試着してみたものの、いまいちしっくり来ない。
「……帰るか」
「そだね」
駐車場へと足を向けたとき、ふと、古靴のコーナーが気になった。
「靴見てっていい?」
「くつかうの?」
「ひとまず見るだけな」
中古の靴は、現品限りだ。
デザインが好みでも、サイズが合うとは限らない。
だが、
「──このスエードのブーツ、悪くないんじゃないか。28cmだし」
「はける?」
「試してみる」
左足の靴を脱ぎ、靴下を履き直して、ブーツに爪先を差し込んだ。
「お」
「はけた!」
「いいな、これ。履き心地も悪くない」
「かう?」
「買いましょう」
お買い上げである。
ホクホク顔で車に戻ると、心配顔でうにゅほが言った。
「でも、だいじょぶかな」
「うん?」
「みずむし」
「──…………」
たしかに。
「……帰ったら、内側をアルコール消毒しよう」
「そのほういいとおもう」
頼むぞ消毒用エタノール。
白癬菌を駆逐するのだ。







902 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:41:08 ID:YsQ.2l560

2018年10月24日(水)

PCに向かい、キーボードに指を乗せながら、うにゅほに話し掛ける。
「××さん」
「はい」
「なんか話して」
「あ、かくことないやつだ」
「書くことないやつです」
「きょう、なにもなかったっけ」
「特筆すべきことは特に思い浮かばないなあ」
「ばんごはん、ゆどうふだったよ」
「湯豆腐だったな」
「おいしかった」
「美味しかったけど、美味しかったとしか書くことないぞ」
「だめなの?」
「いちおう人が読むことを想定してるから、食べたものを羅列するだけってのもなあ」
「むずかしいねえ……」
「難しいんです」
「あ、ふっきんのころころ、やった?」
「アブローラーか」
「うん」
「あれ、毎日やると逆によくないんだって」
「そなの?」
「らしい」
あいだに超回復を挟むことで、より効果が見込めるのだとか。
「(弟)、まいにちやってる」
「やってるな」
「でも、ふっきん、われてない」
「毎日やってるからかな……」
「そうかも」
なんとなく、刃牙のジャック・ハンマーを思い出す。
「よし、だいぶ書けたぞ」
「よかった」
「××のおかげだな」
「でも、それ、にっきなの?」
「──…………」
痛いところを突く。
俺は、ブラウザを呼び出し、辞書を引いた。
「日記。日々の出来事や感想などを一日ごとに日付を添えて、当日またはそれに近い時点で記した記録」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「日々の出来事や感想には違いないから、なにも問題ないな!」
「そか」
この日記は、"うにゅほとの生活"と題している。
たとえ会話に終始したとしても、それはうにゅほとの生活を描いたものに他ならないのだ。
文句があるなら法廷で会おう。







903 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:41:33 ID:YsQ.2l560

2018年10月25日(木)

落ち込むことがあった。
「──…………」
膝の上のうにゅほを、ギュウと抱き締める。
「どしたの?」
「うん……」
「だいじょぶ?」
「うん……」
「ほんとに?」
「うん……」
「そか」
「うん……」
うにゅほが、俺の右手に手を重ねる。
「よし、よし」
「……子供じゃないって」
「しってる」
苦笑する気配。
「おとなは、よしよししたらだめ?」
「──…………」
しばし思案し、答える。
「……いいけど」
「◯◯、いったんはなして」
「あ、うん」
抱き締める腕を緩めると、うにゅほが立ち上がり、今度は対面するように膝にまたがった。
そして、
「よし、よし」
俺の頭を、優しく撫でた。
「──…………」
「だいじょぶ、だいじょぶ。◯◯、つよいこ」
「子供じゃないんですけど……」
「つよいおとな」
「……強い大人、かなあ」
決してそうとは言い切れない。
むしろ、大人としてはだいぶ弱いほうな気がする。
そんなことを考えていると、うにゅほが俺を抱き締めた。
「ぎゅー」
「──…………」
「つよいこも、つよいおとなも、だめなときあるから」
「……ああ」
その一言で、すこし救われた気がする。
うにゅほが落ち込んだときは、俺が励ましてあげようと思った。







904 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:42:01 ID:YsQ.2l560

2018年10月26日(金)

「……右膝が痛い」
「まえとおなじとこ?」
「同じとこ」
「なおってなかったんだ……」
「そうみたい……」
眉をしかめ、うにゅほが言う。
「……ずっといたかったの?」
「いや、いったん治ったんだ。それは本当」
「そか」
「……実は、心当たりがまったくないわけじゃないんだよな」
「そなの?」
「エアロバイクを漕いだ次の日、痛んでる気がする。たまたまかもしれないけど」
「じゃあ、えあろばいく、だめ」
言うと思った。
「でもさ」
「?」
「エアロバイクって、膝に負担が掛からない運動の代表例みたいなものなんだよ」
「そなんだ……」
「そのエアロバイクで膝を痛めるのもおかしな話だよなって」
「うーん」
うにゅほが、大きく首をかしげる。
「……へんなこぎかた、してる?」
「エアロバイクで変な漕ぎ方って、よほどだと思うけど……」
「ぱそこんみながらこいでる」
「テレビ見ながら漕ぐのと同じだろ。キーボード打ってるならともかく」
「そだねえ……」
「ともあれ、一週間くらいはエアロバイクやめとこうか」
「びょういん」
「もう夜だし、明日土曜だし……」
「……まえもそうだった」
「う」
前回、膝を痛めたときも、同じ理由で病院へ行かなかったのだ。
「びょういんいきたくないから、いわなかったの?」
「そういうわけじゃ──」
すこしある。
「……あんまし、あるかないようにね」
「はい」
「しっぷ、はる?」
「お願いします」
しばらく安静にしていよう。







905 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:42:30 ID:YsQ.2l560

2018年10月27日(土)

──けたたましい音と共に、目を覚ました。
枕元のiPhoneが、緊急速報のアラートをがなり立てたのだ。
「◯◯! ◯◯……!」
うにゅほが駆け寄ってきて、俺の腕に抱き着いた。
血の気が引く。
震災から一ヶ月半、あの地震の恐怖を拭い去るにはまだ時間が必要だ。
「──…………」
うにゅほの肩に手を添えながらしばし固まっていたが、覚悟していた揺れは来なかった。
「……地震、じゃ、ないのか」
「そうなのかな……」
アラートの止まったiPhoneを手に取り、緊急速報の内容を確認する。
「──土砂災害?」
「どしゃ?」
「雨で、どこか土砂崩れを起こしたらしい」
「どこ?」
「……ここから車で一時間くらいのところかな」
「──…………」
うにゅほが、なんとも言えない表情を浮かべた。
「大変だし、大切なことだけど、もうすこし範囲を絞って──」
再びアラート。
「わ!」
「えーと、土砂災害の避難準備、だって」
「──…………」
うにゅほが、また、なんとも言えない表情を浮かべた。
「……もうすこし、範囲絞ってほしいな」
「うん……」
うち、関係ないし。
その後も、幾度も繰り返しアラートが鳴るものだから、すっかり目が冴えてしまった。
「まあ、地震じゃなくてよかったよ」
「そだね」
また地震が来るくらいなら、取り越し苦労のほうが百倍ましだ。

午後六時過ぎ、本日幾度めかのアラートが鳴り響いた。
「……避難の解除、だって」
「えー……」
「解除で音鳴らす必要なくない?」
「わたしもそうおもう……」
心臓に悪い一日だった。







906 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:42:59 ID:YsQ.2l560

2018年10月28日(日)

「……うーん」
ディスプレイの前で腕を組む。
「どしたの?」
「今日は、10月28日だ」
「うん」
「さて、何の日でしょう! ──を、やろうと思ったんだけど」
「なんのひしりーずだ」
「何の日だと思う?」
「うーと」
首をひねりながら、うにゅほが思案する。
「じゅう、じゅう、と、にーや、にや、にーはち、とにはち、とにや──」
しばしののち、答える。
「……とつやのひ?」
「とつやって?」
「ちめい……?」
十津谷。
ありそうだけど、存在しない。
「こたえ」
「速記記念日」
「そっき?」
「特殊な記号を使って、人の発言を書き記す手法のことだな」
「とつや……」
「とつやは関係ない」
「ごろあわせ、ないの?」
「語呂合わせ、ないんだよ」
「そか……」
「だから、あんまり面白くないなあって」
「ごろあわせ、したいな」
「すこし遡ってみるか」
「うん」
調べてみると、
「お、10月26日に語呂合わせあった」
「おー」
「これは難しいぞ」
「とにろ、とにむ、じゅにむ、じゅにろく、とつろく、とにむ、とにむ──」
しばしののち、答える。
「……じゅげむのひ?」
「"げ"はどっから出た」
「……うへー」
笑って誤魔化した。
「こたえは?」
「これ、絶対出ないよ。青汁の日、だって」
「あおじる……」
「青汁」
「じ、る、はわかるけど、あお、わかんない」
「"10"を、アルファベットの"I"と"O"に見立てて、青、だって」
「あいと、おー?」
「そう」
「……いおじる?」
「そうなるよなあ」
「むりがあるとおもう……」
「同じく」
アサヒ緑健さん、ゴリ押しが過ぎますよ。
しばらくのあいだ、10月の記念日を遡りながら談笑するのだった。
 







907 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:43:29 ID:YsQ.2l560

2018年10月29日(月)

両手を擦り合わせながら、呟く。
「さあ、末端が寒い季節がやってまいりました」
「そだねえ……」
俺も、うにゅほも、冷え性の気がある。
冬場はなかなかつらいのだ。
「そろそろ初雪が降るかもなあ」
「じゅういちがつだもんね」
「積もるのはずっと後だろうけど、そう考えると憂鬱だ……」
「そかな」
「××は、雪好きだもんな」
「すき」
「俺は嫌い」
「えー」
「正確に言うと、見るのは好き。かくのは嫌い」
「わたし、ゆきかきすき」
「知ってる」
「うへー」
へんなやつである。
うにゅほにとっては、雪遊びの一環なのかもしれない。
「除雪機あるから、だいぶ楽にはなったけどな」
「じょせつき、すごい。ばーって」
「ほんとな」
ジョンバで雪をまとめスノーダンプで雪捨て場へ運ぶのが馬鹿らしくなる効率である。
「でも、究極はあれだよ」
「どれ?」
「ロードヒーティング」
「あー」
雪かきをしたくないなら、そもそも積もらせなければいい。
面倒くさがりの発想である。
「だが、究極に思えるロードヒーティングにも、ひとつ問題がある」
「なに?」
「考えてみよう」
「うーと、たかい……」
「それもある」
「ひとつじゃない」
「気にしない」
しばしの思案ののち、うにゅほが首を横に振った。
「わかんない……」
「では、答えだ」
「うん」
「大雪のとき、雪の積もっていない敷地内と、積もっている道路とのあいだに段差ができる」
「あ」
「北海道の積雪量だと、下手すりゃ雪の壁になるな」
「くるま、でれない……」
「スロープを作るために、結局、雪かきみたいなことをする羽目になるわけだ」
「うまくいかないね」
雪のないところに住めば、今度は大きな虫が出てくる。
ままならないものだ。
 







908 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:44:01 ID:YsQ.2l560

2018年10月30日(火)

「はーさむさむ……」
帰宅し、階段を駆け上がる。
「おかえりー」
物音を聞きつけたのか、うにゅほが部屋の扉を開けて出迎えてくれた。
「は、どうだった?」
「虫歯じゃなかった。銀歯取れただけ」
「よかった」
「ガムの噛みすぎも問題だな……」
ダイエット中なので、ガムの消費が非常に激しい。
「ぎんば、くっつけたばっかだから、きょう、ガムかまないほうがいいかも……」
「そうする」
自室へ入り、作務衣に着替える。
「──って、部屋も寒いじゃん」
「うん、さむい……」
「ストーブ、灯油入ってないしなあ」
「うん……」
見れば、うにゅほも半纏を羽織っている。
「……エアコン、つけちゃう?」
「いいの?」
「必要なとき使わずに、なんのための家電か」
「たしかに……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「真冬になると使えなくなるんだから、いまのうちに酷使しておかないと」
「でんきだい」
「込み込みで家賃払ってますし……」
「そだった」
「そんなわけで、スイッチオン!」
ぴ。
エアコンが駆動音を響かせる。
しばらくして、
「おー……」
「文明の利器、ばんざい……」
痺れるような温風が頬を撫でていく。
「真冬まではこれで凌ごう」
「うん」
もう、エアコンのない生活には戻れない。
そんなことを思うのだった。
 







909 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:44:27 ID:YsQ.2l560

2018年10月31日(水)

「うーん………」
PCを睨みながら、うんうん唸る。
「どしたの?」
「PCの調子が悪い」
「だいじょぶ?」
「悪いから、WindowsUpdateをした」
「あっぷでーと」
「したら、もっと悪くなった」
「えー……」
うにゅほが、呆れたような顔をする。
「俺も同じ気持ちだよ……」
WindowsUpdateなど、もとより罠みたいなものだ。
それでも、不要な更新、有害な更新はチェックを外して行ったというのに、結果はご覧の有り様である。
「もう絶対やんねえ」
固く心に誓う。
「ちょうしわるいの、どうするの?」
「システムの復元しかないかなあ……」
「ふくげん、できるの?」
「機能としては」
「そなんだ」
「まあ、何度かやったことあるし、すぐに終わるさ」

一時間後──
「……終わらない」
「おわらないねえ……」
「アップデート直後だから、復元するものが多いのかもしれない」
以前は数分で終わった記憶があるのだが、それは考えないことにする。

二時間後──
「終わらない!」
「ながいねえ……」

三時間後──
「終わってくれえ……」
「わたし、そろそろねるね」
「おやすみ……」
「おやすみなさい」
ぺこりと一礼して、うにゅほがベッドへ向かう。
時刻はすでに十二時半。
MacBookで書いているこの日記は、果たして投稿できるのだろうか。






910 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2018/11/02(金) 22:45:09 ID:YsQ.2l560

以上、六年十一ヶ月め 後半でした

引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
 



19:30|この記事のURLコメント(21)したらば | このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2018年11月03日 19:50  ID:OtUsISv.0
    うにゅほから出る放射線でおかしい頭がさらにおかしくなっているのだろう


  • 2  Name  名無しさん  2018年11月03日 20:12  ID:a47iFMz80
    あーつまんね


  • 3  Name  名無しさん  2018年11月03日 20:19  ID:J2GVDs4A0
    最後でゾッとした
    部屋にもうおるやん


  • 4  Name  名無しさん  2018年11月03日 20:26  ID:ZWTDjaRm0
    コメント欄がメイン定期


  • 5  Name  名無しさん  2018年11月03日 20:53  ID:lZwfDa.10
    つまんね、作者はよ4ね


  • 6  Name  名無しさん  2018年11月03日 21:54  ID:OtUsISv.0
    2018年10月22日(月)

    「ただいまー!」
    母親と一緒に出掛けていたうにゅほが、意気揚々と帰宅した。

    母親と一緒??????????


  • 7  Name  名無しさん  2018年11月03日 22:12  ID:J2GVDs4A0
    患者の経過観察と一緒やな
    コメント蘭の我々はみな研究者なわけで、そう思うと結構興味深い


  • 8  Name  名無しさん  2018年11月03日 22:37  ID:m6XhUufQ0
    リハクの目をもってしても視えない者が視えるやべー奴


  • 9  Name  名無しさん  2018年11月03日 22:51  ID:QitQQgdN0
    今回も良かった
    次も楽しみ


  • 10  Name  名無しさん  2018年11月03日 23:22  ID:uG6WfNMZ0
    この人にはどうか長生きしてほしい


  • 11  Name  名無しさん  2018年11月04日 03:22  ID:pPYb41XP0
    何が彼をそこまで駆り立てるのだろうか 素晴らしい熱意だ


  • 12  Name  名無しさん  2018年11月04日 04:05  ID:9whY2LQk0
    1人のキャラにここまで入れこめるのホント羨ましい


  • 13  Name  名無しさん  2018年11月04日 08:05  ID:8ursFgeB0
    深夜帯になってからの怒濤の擁護で草生える


  • 14  Name  名無しさん  2018年11月04日 09:37  ID:cpLYGi860
    チャリや歩きや飯食いながらスマホ弄るゲェジとインスタ蠅ゲェジなんかよりよっぽど好感持てる


  • 15  Name  名無しさん  2018年11月04日 10:50  ID:aGarlvvl0
    みんな本編読まずにコメントだけ付けてるよね


  • 16  Name  名無しさん  2018年11月04日 11:31  ID:x.BVBtYX0
    深夜に称賛コメント
    絶対に作者の自演だろ


  • 17  Name  名無しさん  2018年11月04日 17:17  ID:jBtZf81R0
    もうすぐ7年目に突入することを考えるとすげぇな
    この継続力は尊敬する


  • 18  Name  名無しさん  2018年11月04日 18:26  ID:1fjR.OaB0
    正直いつも楽しみにしてる


  • 19  Name  名無しさん  2018年11月04日 21:51  ID:C7HoXUoV0
    こんなのまとめんでいい


  • 20  Name  名無しさん  2018年11月04日 23:10  ID:8ursFgeB0
    ※14
    ネタなんだろうけど比較対象がゲェジしかいない時点で全然援護になってない


  • 21  Name  名無しさん  2018年11月14日 15:26  ID:Bs3vo0nR0
    多分この人発達か何か入ってんだろうな


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