2019年10月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
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288 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:22:46 ID:FI098Ndg0

2019年10月1日(火)

資格試験の期日が近付いてきた。
「◯◯、しけん、だいじょぶ……?」
「んー」
テキストを読み漁りながら答える。
「行けるような、行けないような、難しいような……」
「むずかしいの?」
「単なる覚えゲーならどうにでもなるんだけど、高校数学も入ってくるからなあ」
「すうがく……」
「卒業して十数年経ってるから、さすがに忘れてる」
「あー」
高校時代、数学は得意なほうだったが、勉学の場から離れてしまえばこんなものだ。
「まあ、残り期間で過去問解きまくれば、なんとかなる──と、思う」
「そか」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「安心するのは早いぞ、××」
「?」
「逆に言うと、過去問を解きまくらなければ、受かる道理はないわけだ」
「うん」
「正直、めっちゃサボりたい」
「が、がんばって!」
「頑張りたくない……」
ぐでー。
デスクに突っ伏す。
「うー……」
しばし唸ったあと、うにゅほが言った。
「……でも、がんばりたくないなら、がんばらなくていいとおもう」
「──…………」
「らいねんもあるし……」
「……頑張ろ」
「がんばるの?」
「頑張りたくないっての、半分冗談だし」
「えー!」
「頑張りたくないのは本当だけど、それでも頑張るよ。自分のためだもん」
「そか」
うにゅほが、小さく笑みを浮かべる。
この笑顔を見ていると、頑張れる気がしてくる。

……こんなこと書いといて落ちたらいい笑い者なので、ますます頑張らねば。








289 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:23:19 ID:FI098Ndg0

2019年10月2日(水)

目が乾いたので、目薬をさすことにした。
眼鏡を外し、手探りで容器を探す。
だが、デスクの上は物で溢れ返っており、なかなか見つけ出すことができなかった。
「──…………」
ごそごそ。
「?」
ひょい。
うにゅほが、俺の顔を覗き込む。
「どしたの?」
「目薬探してる」
「めぐすり……」
デスクの上に視線を走らせたうにゅほが、目薬の容器を手渡してくれた。
「はい」
「ありがとう」
「めがね、かければいいのに」
「なんか負けた気がして……」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんに?」
「──…………」
考えてみれば、何にだろう。
なんだか自分の行動が馬鹿らしく思えてきた。
「今度から、素直に眼鏡掛け直そうかな」
「うん」
「……いや、そもそも、目薬取ってから眼鏡外せばいいんだけどさ」
「くせなんだっけ」
「癖になってる。なかなか直らない」
「わたしは、つくえのうえ、かたづけたほういいとおもう」
「あー……」
たしかに。
「そしたら、めがねはずしてからさがしても、すぐみつかる」
「あるいは、目薬の置き場所を決めておくとか」
「うん」
「目薬、いちばん上の引き出しに入れておこうかなあ……」
「それはそれとして、つくえのうえ、かたづけたほういいとおもう」
「……はい」
うにゅほ的に、我慢ならない状態だったらしい。
デスクの上を綺麗に片付けてから、試験勉強に戻るのだった。







290 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:23:51 ID:FI098Ndg0

2019年10月3日(木)

試験勉強の息抜きを兼ねて、前のPCを売りに行くことにした。
「××、後ろのドア開けてー」
「はーい」
後部座席の足元にPCを置き、運転席を後ろに下げる。
PCを座席で挟む形だ。
「よし」
「これでたおれないね」
「振動モロに食らいそうだけど、砂利道を走るわけでもないしな」
「マンホールとか、よけないと」
「たしかに……」
売りに行くまでに故障してしまっては、元も子もない。
「いつも以上に安全運転で行きましょう」
「そうしましょう」
目指すはドスパラ札幌店だ。
隣接する有料駐車場にコンテカスタムを停め、PCを運び込む。
「査定、二時間くらいかかるかな」
「もっとかかるかも……」
「待ってるあいだ、喫茶店にでも行こうか」
「うん!」
エレベーターで四階へ上がり、買取カウンターへと向かう。
しばしのやり取りののち、
「──査定が終わるまで一週間ほどかかりますが、よろしいですか?」
「一週間……」
単位がひとつ吹き飛んだ。
だが、いまさら他の店へ持って行くのも面倒だったため、
「お願いします」
と、素直に頼むことにした。
「一週間後、ご来店なさるのが面倒であれば、銀行振り込みでのお支払いも承っておりますが」
「自動的に振り込まれるんですか?」
「こちらからお電話を差し上げて、金額に納得していただけた場合のみ、振り込む形となっております」
随分と楽になったものだ。
「じゃ、それで」
「了解しました」
書類に必要事項を記し、座って待っていたうにゅほと共に階下へ下りていく。
「一週間かかるって」
「いっしゅうかん……」
「混んでたのかも」
「きっさてん、いけないねえ……」
うにゅほが、残念そうに呟く。
楽しみにしていたらしい。
「喫茶店は喫茶店で、帰りに寄ればいいじゃん」
「いいの?」
「気分転換が目的なんだから、いいんだよ」
「やた!」
そんなわけで、うにゅほと一緒に行きつけの喫茶店に立ち寄ってから帰宅した。
窯焼きスフレとフレンチトースト、美味しかったです。
 






291 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:24:22 ID:FI098Ndg0

2019年10月4日(金)

過酷な試験勉強に耐えかねて、思わず休憩を差し挟んだ。
「はー……」
よく冷えた水を飲み下し、溜め息を漏らす。
「おつかれさま」
「勉強、まだまだしないとダメだけどな」
「うかりそう?」
「頑張り次第じゃないかなあ……」
「◯◯、がんばってるから、うかるね」
「ならいいんだけどな」
苦笑し、うにゅほの頭を撫でる。
「さーて、休憩中に何しよう」
「かみん?」
「たしかに疲れは取れるけど、どちらかと言えば気分転換したい」
「たいそうとか」
「なるほど、ストレッチはいいかもな」
チェアから腰を上げ、大きく伸びをする。
「んあー……!」
上体を反らし、前屈をし、腰をひねる。
伸びていく筋肉が心地よい。
「──よし、ストレッチ終わり!」
「きぶんてんかん、なった?」
「そこそこ」
「よかったー」
「でも、休憩入ってまだ五分くらいだからな。他にも何かしたい」
「じゃんけんする?」
「罰ゲームありなら」
「ばつゲーム」
「負けた××は、俺の代わりに勉強する」
「それ、いみあるの?」
「ない」
「やっぱし……」
「意味のある罰ゲームなんて、世の中にはないんだぞ」
「まけた◯◯は?」
「勉強する」
「きゅうけいなってない……」
「ははは」
「からかった?」
「はい」
「もー……」
そんな感じで、三十分ほど雑談したのち、試験勉強に戻った。
うにゅほと言葉を交わすのが、何よりの気分転換である。







292 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:24:54 ID:FI098Ndg0

2019年10月5日(土)

「づー、がー、れー、だー……」
デスクに突っ伏し、いやいやと首を振る。
「しけん、あしただもんね」
「はい……」
「きょう、ゆっくりやすんで、あしたにそなえましょう」
「そういうわけにも行かない」
「いかないの……?」
「単純に時間が足りない。可能なら、このまま徹夜で詰め込みたいくらい」
「てつや、だめだよ」
「大丈夫、徹夜はしない。多少は睡眠取らないと、記憶が定着しないからな」
「ならいいけど……」
「ただ、睡眠時間は削る。三時間くらい寝ればいいだろ」
「──…………」
うにゅほが、眉をひそめ、なんとも言えない顔をする。
「それ、てつやっていう」
「そうかな」
「ちゃんとねないと……」
「これ逃すと、一年待たないといけない。たった一日の睡眠不足でどうにかなるんなら、喜んで朝まで勉強するよ」
「うー……」
うにゅほの頭を、ぽんぽんと撫でる。
「心配してくれるのは嬉しいけど、いずれ必要になる資格だからさ」
「そだけど」
「それに、取ったら給料上がるぞ」
「うん……」
「嬉しくない?」
「うれしいけど……」
表情が晴れない。
どうしても心配らしい。
「──わかった」
「ねる?」
「試験が終わって、帰ってきたら、即寝る。夜まで寝る。それで辻褄合わせよう」
「うーん……」
「ダメ?」
「……わかった。かえってきたら、ちゃんとねてね」
「了解です、サー」
さあ、日記を書いたら朝まで勉強だ。
これまでサボってきたツケを支払わなければ。







293 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:25:24 ID:FI098Ndg0

2019年10月6日(日)

「──…………」
午後六時、起床する。
試験会場から直帰し、そのままベッドに飛び込んだのだった。
「あ、おはよ」
「……おはよう」
「あんまし、きーおとさないでね?」
「いや、まだ落ちたって決まったわけじゃないから……」
試験に手応えを感じなかったわけではない。
この数日でこなした十年分の過去問から何問も出題されていたし、それらを取りこぼさなかった自信もある。
ただ、単純に、それ以外の問題が多かっただけだ。
「こたえ、いつわかるの?」
「明日かな」
「あしたかー……」
「でも、非公式なら速報が出てるかも」
「おー」
「調べてみよう」
PCを起動し、検索すると、既に解答速報が発表されていた。
「……自己採点、してみるか。怖いけど」
「うかってたらいいね……」
「ほんとな」
苦笑し、問題冊子と赤ペンを取り出す。
「えーと、問1は──と」
×、◯、×、◯、◯。
比較的◯は多いが、合格ラインは60点だ。
◯、×、×、◯、◯。
このまま行くと、ギリギリ過ぎる。
だが、
×、◯、◯、◯、◯、◯、◯、◯、◯、◯──
「わ、まるばっか!」
「……これ行けんじゃね?」
しばしののち、採点を終え、シーリングライトを仰ぎ見る。
「68点だ……」
「うと、うかった、よね?」
「ああ、受かった。8点も多けりゃ間違いない」
「やた!」
うにゅほが俺に抱きつく。
「◯◯、おめでと!」
「ありがとな」
慈しみを込めて、うにゅほの頭を撫でる。
「……いやほんと、ギリギリまで頑張ってよかった。何度か諦めようと思ったもん」
「あきらめないで、よかったね」
「でも、まだ終わらないぞ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「筆記をパスしたら、技能がある」
「あー……」
「講習、受けないとな……」
「がんばったら、うかるよ。きょうみたいに」
「はい、頑張ります」
ひとまず峠は乗り越えた。
技能試験まで、しばし日がある。
束の間の休息に身を委ねても構うまい。







294 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:25:53 ID:FI098Ndg0

2019年10月7日(月)

「あ゙ー……」
昼前に起床し、冷蔵庫を漁る。
だが、調理せずに食べられるものは見当たらなかった。
「めだま、やく?」
「お願いします」
「はーい」
「黄身、潰してくれな」
「うん」
完熟寄りの焼き加減が好きな俺は、目玉焼きの黄身を潰して焼くのが好きである。
それを"目玉"焼きと呼べるかどうかはともかくとして、白身を焦がさず完熟にできるのが、この調理法の素晴らしい点だ。
「♪~」
エプロンを着けたうにゅほが、慣れた手つきで卵を割る。
「あ、ふたごだ」
お椀の内側で、小さな黄身がふたつ、白身の中を泳いでいた。
「本当だ」
「めずらしいねえ」
言いながら、二個目の卵を割る。
「あ!」
「どした」
「またふたごだ!」
「マジで」
お椀を覗き込むと、黄身が四つに増えていた。
「へえー、こんなことあるんだな」
「いいことあるかも」
「一日遅い気もするけど……」
「たしかに」
「双子を産みやすい鶏の卵なのかもしれない」
「おや、おなじなの?」
「わかんないけど、同じ養鶏場だろうし」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「じゃ、やいちゃうね」
ちゃかちゃかちゃか。
うにゅほが菜箸で卵を軽く掻き混ぜる。
「あっ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いや、なんでもない……」
「そか」
ちょっとだけ、もったいない気がしてしまったのだった。
うにゅほの目玉潰し焼きは、相変わらず絶妙な焼き加減だった。
簡単な調理とは言え、それを鼻歌交じりでやってのけるのだから、料理上手になったものだ。







295 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:26:36 ID:FI098Ndg0

2019年10月8日(火)

ドスパラ札幌店から連絡があった。
「××、PC買取の査定出たって」
「お」
うにゅほが背筋を伸ばし、聞く体勢を整える。
「おいくらでした?」
「63,500円」
「ろ!」
目と口をまるくする。
「おもったより、おたかい……」
「五万円くらいで売れれば御の字と思ってたから、嬉しい誤算だったな」
「あたらしいぱそこん、にじゅうまんえんちょっとだから、じっしつ、じゅうごまんえんくらい?」
「そうなりますね」
「しゅっぴ、だいぶへった!」
「よし、回らない寿司でも食べに行くか」
「むだづかい、だめです」
「はい……」
厳しい。
「でも、こうなると、他にも何か売りたくなるよな」
「ほか?」
うにゅほが小首をかしげ、部屋をぐるりと見渡した。
「うーと、ほんとか?」
「古本は二束三文で買い叩かれるよ」
「じゃあ、なんだろ」
「たとえば、使ってないキーボードとか……」
「たくさんあるもんねえ」
REALFORCE、HHKB、Majestouch──クローゼットには高級キーボードがわんさか眠っている。
キーボード沼に落ちた者の末路だ。
「でも、前に買った三万円のキーボード、売るとき五千円だったんだよな……」
「むせんのやつ?」
「そう。なんかブツブツ切れるからって売ったやつ」
「ろくぶんのいち……」
「……いま思えば、初期不良で交換してもらえばよかったなあ」
「そだね……」
それはそれとして、こう、不要品を高く売る方法はないだろうか。
メルカリとかやってみようかなあ。







296 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:27:09 ID:FI098Ndg0

2019年10月9日(水)

「んあー……」
がっくんがっくんと首を振る。
「暇だ!」
「ひまなの?」
「試験勉強に費やしてた時間がまるまる空いたからなあ」
「なるほど」
「仕事が終わったあと、何してたっけ……」
「ぱそこんしてたよ」
「それはそうなんだけど……」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「パソコンで何してたとか、あるじゃん」
「どうがみたり」
「うん」
「ゲームしたり」
「うん」
「……どうがみたり?」
「だいたい動画見てたんだな、俺……」
「わりと」
自分の生活を省みてしまいそうだ。
「あとは、にっきかいたり」
「うん」
「なんかかいたり」
「うん」
「えーかいたり」
「絵、最近描いてないなあ」
「わたし、あれすきだった」
「どれ?」
「ゲームの、かわいいえ」
「ゲームの……」
「ねこみたいの」
「あー、OneShotの絵か」
「たぶんそれ」
「あれ、たぶん、一年以上前だよな……」
「あんなえ、またみたいな」
「題材が見つかったら、また描くか。暇だし」
「うん」
暇だ暇だと嘆くより、何かしたほうが生産的である。
そんなことを考えながら、今日も日記を書くのだった。







297 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:27:46 ID:FI098Ndg0

2019年10月10日(木)

シムビコートタービュヘイラーが切れかけていたので、呼吸器外来のある病院を三度訪れた。
診察の際、医師がこう言った。
「喘息のある方は、インフルエンザの予防接種を受けることをおすすめしますよ」
医師の判断であれば、一も二もない。
うにゅほともども予防接種を受けていくことにした。
「うー……」
接種したあとは、待合室で、三十分ほど安静にしていなければならない。
「いたかった……」
「まだ痛い?」
「もういたくないけど、いたかった……」
「仕方ない、仕方ない。インフルにかかるよりマシだろ」
「そだけど」
「それより、具合悪くなったりしてないか?」
「うん、だいじょぶ」
「ならよかった」
予防接種を受けるのも、もう何度目かわからない。
何事もなく帰宅し、チェアに腰を落ち着けた。
「うー……」
うにゅほが、二の腕を押さえながら、不安げに口を開く。
「さしたとこ、はれて、ちょっとあつい……」
「俺は、ちょっとかゆい」
「だいじょぶかな」
「大丈夫だって」
ワクチンの中身は毎年異なっているのかもしれないが、表れる副反応はいつも同じだ。
「二、三日で治るって、看護師さんも言ってたろ」
「うん……」
「毎年受けてるだろうに」
苦笑する。
「◯◯、うでさわって……」
「どれ」
袖をまくった二の腕に触れる。
「あー、たしかに熱いな」
「あつい」
「去年と同じだな」
「きょねんよりあついきーする……」
「それ、去年も言ってた」
「そだっけ」
二の腕から手を離し、代わりに頭を撫でてやる。
「もし××が本当に具合悪くなったら、深夜だろうが早朝だろうが車飛ばして病院連れてくから、安心しな」
「ありがと……」
そこまで言って、ようやく、安心したように微笑みを浮かべた。
ほんと、心配性だなあ。
能天気すぎるのも問題だけれど。







298 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:28:21 ID:FI098Ndg0

2019年10月11日(金)

体温計の表示部を読み上げる。
「──38.2℃」
「さんじゅうはってんにど……」
原因はわかっている。
インフルエンザの予防接種だ。
「まさか、こんなに重く出るとは……」
毎年のように予防接種を受けてきて、初めてのことである。
布団に入れば、暑い。
布団から出れば、寒い。
中間がないのが、つらい。
「びょういん、いく?」
「行ったところでなあ……」
予防接種の副反応だから、二、三日で症状がなくなることはわかっているのだ。
せいぜい解熱剤を処方されて終わりだろう。
「……××は大丈夫なのか?」
「うん、だいじょぶ……」
「なら、よかったよ」
「──…………」
うにゅほが、布団からはみ出た俺の手を取る。
「てー、あつい」
「38.2℃だからな……」
「よぼうせっしゅ、うけなかったらよかったね」
「そういうわけにも行かないだろ」
「でも」
「二、三日風邪っぽくなる程度でインフルエンザにかからずに済むなら、そっちのほうがいい」
「そだけど……」
「××は、心配しすぎ。俺なら平気だから」
「……ほんと?」
「今日の仕事はできそうにないけど、三連休があるし、どうにでもなる」
「うん……」
「それより、汗かいて気持ち悪いや。タオル濡らして持ってきてくれないか」
「わかった!」
うにゅほが階下へと駆け出していく。
過度に心配しているときは、仕事を頼んで気を逸らすのがいい。
うにゅほと暮らす上で身についた知恵である。
「はい、うえぬいで」
「……自分で拭いちゃダメ?」
「だめ」
「ダメなんだ……」
「うん」
仕方ない。
上半身を優しく拭われながら、なんとなく気恥ずかしい思いをするのだった。







299 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:28:47 ID:FI098Ndg0

2019年10月12日(土)

台風19号が接近している。
「──…………」
記録的豪雨、土砂災害、河川の増水、氾濫──次々と溢れ出る速報に、うにゅほが俺の腕を抱く。
「たいふう、こわい……」
「怖いな……」
「これ、うちくるの……?」
「直撃はしないみたい」
「そか……」
強張ったうにゅほの表情が、ほんのすこしだけ弛緩する。
「でも、心配だな。関東に何人か友達いるから……」
「だいじょぶかな」
「距離が距離だから、祈ることしかできない」
「うん……」
うにゅほを膝に乗せ、抱き締める。
「東京には、荒川って川があってな」
「うん」
「ここが氾濫すると、すごいことになるんだってさ」
「……どうなるの?」
「荒川付近のかなり広い範囲が、5m以上浸水する」
「ごめーとる……」
「うん」
「……たかさ?」
「高さ」
「ごめーとるって、どのくらい?」
「屋根より高い」
「──…………」
抱き締めた矮躯の背筋が伸びる。
「荒川の傍に、ふたり友達が住んでてさ」
「!」
「心配だなって」
「しんぱい……」
「ほんと、何事もなく過ぎてくれないかな……」
「うん……」
自然に対し、個人はあまりにも無力だ。
台風の被害が最小限で済むことを祈る。







300 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:29:26 ID:FI098Ndg0

2019年10月13日(日)

資格試験の筆記をパスした自分へのご褒美として、新しいDACアンプを購入した。
「やー、DACは届くし、台風は逸れるし、今日は良い日だな」
「ほんとだねー」
うにゅほが、のほほんと相槌を打つ。
もちろん、DACアンプを注文する際には、うにゅほの許可を取ってある。
合法だ。
「──よし、と」
古いDACアンプを外し、新しいものと繋ぎ換えて、ほっと一息つく。
「これ、いいおとするやつだよね」
「そうそう。デジタルアナログコンバータ兼ヘッドホンアンプ」
「でじたるあなろぐ──……あんぷ」
あ、途中で諦めたな。
「まえのより、いいおとするかな」
「どうだろ。いちおう、前のよりワンランク上の価格帯のを選んだけど」
「いいおと、しないの?」
「正直、気分の問題が大きい気がする……」
「えー……」
「まあまあ、聞き比べしてみようじゃないか」
「するけど……」
「ちょっと待って。いま、リモコンで初期設定とかするから」
「うん」
そう告げて、デスクの上に置いてあったリモコンを手に取ろうと──
「……あれ、リモコンないな」
「りもこん……?」
不思議そうな表情を浮かべながら小首をかしげたあと、うにゅほが周囲を見渡す。
「へんなとこ、おいたのかなあ」
「悪いけど、一緒に探してくれるか」
「うん」
さまざまな場所に目を通す。
デスクの上は言うに及ばず、開封した箱、ベッド、本棚、果ては冷蔵庫の中に至るまで探したが、目当てのリモコンは見当たらない。
「え、こんな短時間で失くす……?」
自分で自分が信じられなかった。
「……俺、部屋から出てないよね」
「うん……」
「××、触ってないよね」
「さわってない……」
「ほんと、どこ──」
髪を掻きむしりながら、幾度も見たデスクに視線を落とす。
「──…………」
絶句する。
リモコンがあった。
それも、物陰などではなく、堂々とデスクの上に置かれていた。
「マジか……」
自分で自分が信じられなかった。
「えー……と、××、リモコンあったんだけど……」
「えっ」
「××も気付かなかったの……?」
だとすれば、もはや怪奇現象だ。
「◯◯さがしてたリモコン、それだったの?」
「うん」
「わたし、ちがうやつのさがしてるのかとおもった……」
「……てことは、ずっと、机の上にあった?」
「うん」
「マジか……」
若年性痴呆でも発症してしまったのだろうか。
ショックのためか、音質の違いがよくわからない俺だった。
 







301 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:30:10 ID:FI098Ndg0

2019年10月14日(月)

両手を擦り合わせながら、呟くように声を上げる。
「──寒い!」
「さむいねえ……」
「台風過ぎたら冷え込むとは聞いてたけど……」
覚悟の如何に関わらず、寒いものは寒い。
「しゃーない、あれするか」
「あれ?」
「半纏二人羽織」
「するするー」
「半纏取って」
「はーい」
半纏を着込み、うにゅほに覆い被さる。
うにゅほの両腕が袖を通ると、二人羽織の完成だ。
「座るぞー」
「うん」
チェアに腰を下ろすと、うにゅほがつられて俺の膝頭に腰掛けた。
「うしょ」
そのままずりずりとおしりを動かし、いつものように深く座る。
「うへー」
「あったかい」
「あったかー……」
熱すぎず、冷えることもなく、常に最適な温度を保つ。
触れれば柔らかく、良い香りがして、なんだか心まで熱を帯びてくる最高の暖房器具。
それが、うにゅほである。
「ほっぺた、もちもちしていい?」
「いいよ」
腕を上げ、うにゅほの頬に触れる。
「むい」
ぺたぺた。
もちもち。
「いいほっぺただ……」
「◯◯、てー、ふめはい」
「おっと」
慌てて離す。
「冷たかったか」
「てーつなご」
「うん」
両手の指を絡め、恋人繋ぎにする。
「あったかいね」
「あったかいな……」
しばらくのあいだ、何もせず、ただただ体温を交換するのだった。
 







302 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:30:57 ID:FI098Ndg0

2019年10月15日(火)

ワインレッドのハーフコートを羽織ったうにゅほが、その場でくるりと回ってみせる。
「ね、ね、にあう?」
「似合う似合う。ちょっと大人っぽいな」
「うへー……」
浮かべた照れ笑いも、ほんのすこしだけ大人びて見える。
「でも、あとで行くステーキハウスには着て行かないほうがいいな。肉汁跳ねるから」
「そだね」
今日は、うにゅほの誕生日だ。
このハーフコートは、両親からのプレゼントである。
「(弟)からは、マフラーだっけ」
「うん」
「合わせてみ」
「はーい」
プレゼント用の紙袋を開くと、薄手のフリンジマフラーが現れた。
色は、白寄りのアイボリーだ。
「どう?」
マフラーを軽く巻いたうにゅほが、上目遣いでこちらを見やる。
「なんか、十二月って感じがする」
「じゅうにがつ?」
「赤と白で、サンタっぽい」
「あー」
「でも、コーデとしては悪くないよ。鏡見てみな」
うにゅほの肩に手を置き、姿見の前まで押して行く。
「ほら」
「ほんとだ、サンタさんぽい」
「な」
「いいかんじ!」
「だろ」
姿見の前で軽くポーズを取るうにゅほを横目に、クローゼットから小さめの包みを取り出す。
「はい、俺からのプレゼント」
「!」
「開けていいよ」
「うん!」
期待にか、すこし慌て気味に、うにゅほが包装を解いていく。
中から出てきたものは、
「──さいふだ!」
シックな花柄の三つ折り財布だった。
「わー……!」
「××の財布、無駄に大きいだろ。いつかプレゼントしようと狙ってたんだ」
「ありがとう!」
うにゅほが、満面の笑みを浮かべながら、心からのお礼の言葉を述べる。
これだから、プレゼントのしがいがあるのだ。
「はながら、かわいいねえ」
「気に入った?」
「はい、きにいりました」
「よかった。子供っぽくも、おばさんくさくもないラインって、けっこう難しくてさ」
「おかねいーれよ」
ふんふんと鼻歌を漏らしながら、うにゅほが財布の中身を移していく。
その様子が、どうしてか微笑ましくて、ずっと眺めていた。
うにゅほと出会って、八年が経つ。
「××」
「んー?」
「ありがとな」
「なにが?」
「いや、いろいろと」
「……?」
うにゅほが、首をかしげる。
わからなくてもいいのだ。
俺は、うにゅほに救われているのだから。
 





303 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2019/10/16(水) 01:32:03 ID:FI098Ndg0

以上、七年十一ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2019年10月17日 19:53  ID:5Z50bGVV0
    東方界隈のやべーやつ


  • 2  Name  名無しさん  2019年10月17日 19:54  ID:KqkewcW00
    まだ続けてたのか……
    お前がナンバーワンだよ


  • 3  Name  名無しさん  2019年10月17日 20:13  ID:X506ilwq0
    これいる?


  • 4  Name  名無しさん  2019年10月17日 20:19  ID:i3Eie1kS0
    謎定期


  • 5  Name  名無しさん  2019年10月17日 20:21  ID:0O6MCCx20
    クッキーよりひどい


  • 6  Name  名無しさん  2019年10月17日 20:21  ID:mC4plfBI0
    俺はもうやばいと思う


  • 7  Name  名無しさん  2019年10月17日 20:24  ID:hxgfpBIz0
    いつもの


  • 8  Name  名無しさん  2019年10月17日 20:41  ID:2o3ceHkd0
    うんち!


  • 9  Name  名無しさん  2019年10月17日 22:13  ID:XcrUMtHk0
    脳が腐りそうよ。


  • 10  Name  名無しさん  2019年10月17日 22:45  ID:J2Y.S8kA0
    うんこもれそうになるからやめて



  • 11  Name  名無しさん  2019年10月18日 00:04  ID:Brc2nSke0
    >>3
    いらない
    何で管理人がまとめてるのかも、全く理解不能



  • 12  Name  名無しさん  2019年10月18日 00:24  ID:rshXWfei0
    >>11
    きっと管理人はこのレベルのデムパを感じちゃう同類のガイジなんやろうなあw


  • 13  Name  名無しさん  2019年10月18日 01:15  ID:GSg8d1G.0
    キチガイ定期


  • 14  Name  名無しさん  2019年10月18日 01:19  ID:6L3gY69i0
    でも無くなったら寂しい(狂気に囚われた末路)


  • 15  Name  名無しさん  2019年10月18日 01:55  ID:2zZWbh3j0
    ヘッドラインに出てくるだけで不快になるレベルでいらない



  • 16  Name  名無しさん  2019年10月18日 02:37  ID:81VgwvJi0
    七年経ってるのになんでこの生物成長しないんや?
    自分のエゴで成長させなくしとるんか?


  • 17  Name  名無しさん  2019年10月18日 07:40  ID:YbGVVtrm0
    >>3
    自ら投稿した怪文書を見てもらうことで快感を覚える管理人の性癖


  • 18  Name  名無しさん  2019年10月18日 09:08  ID:SeZY2EgH0
    寿司くらい行ってもいいと思う


  • 19  Name  名無しさん  2019年10月18日 10:06  ID:cAt7a.Br0
    読んでないけどコメントだけ見にきた


  • 20  Name  名無しさん  2019年10月18日 10:26  ID:X7kaPJV40
    陰キャ童貞特有の女性にマウント取りたい症候群が随所に表れててキモい


  • 21  Name  名無しさん  2019年10月18日 12:16  ID:TvjvdOwM0
    作者はよ4ね


  • 22  Name  名無しさん  2019年10月18日 17:06  ID:6.Hizsrb0
    聖典


  • 23  Name  名無しさん  2019年10月18日 18:38  ID:ucOrV1Mb0
    管理人が書いてんだろ
    言わせるなよ恥ずかしい



  • 24  Name  名無しさん  2019年10月18日 19:55  ID:CyRsunAv0
    青葉予備軍


  • 25  Name  名無しさん  2019年10月18日 23:05  ID:HkOzZLPs0
    コメント欄見るのすし


  • 26  Name  名無しさん  2019年10月19日 07:19  ID:wlUJdnhZ0
    ちょっとまってねえ
    うにゅって何?
    うにゅってトーホーとどんな関係?
    劇場化された?
    何?


  • 27  Name  名無しさん  2019年10月20日 09:13  ID:n5HENUYw0
    作者地獄に落ちろ


  • 28  Name  名無しさん  2019年10月20日 15:32  ID:bPsOU..80
    もう約8年続けてるのはつよい


  • 29  Name  名無しさん  2019年10月20日 18:25  ID:CwxyULQu0
    >>21
    >>27
    アウト


  • 30  Name  名無しさん  2019年10月23日 10:39  ID:gg87j6430
    流石にモデルになってる人とかいるんだろ
    七年もただの空想書けねえよ


  • 31  Name  革命的正邪  2019年10月24日 02:52  ID:K.Nz20mr0
    作者さん変な事件とか起こさないでね


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