2020年02月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



420 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:50:56 ID:VMWSRCsU0

2020年1月31日(金)
2020年2月1日(土)

大腸内視鏡検査の結果、大腸にごく小さなポリープが発見された。
その場で切除、焼灼され、一泊二日の入院と相成った。
「はー……」
止血剤の入った点滴を受けていると、ベッドサイドのうにゅほが溜め息をついた。
「ぽりーぷ、あってしまったねえ……」
「残念ながら」
「いっぱく、にゅういんだねえ……」
「申し訳ない……」
「◯◯のせいじゃないもん」
「そうだけどさ」
「いちばんつらいの、◯◯……」
「──…………」
入院と言っても、たかだか一泊だ。
明日の朝九時に退院できるとなれば、さして嫌でも苦でもない。
むしろ、寂しがりのうにゅほのほうが、俺なんかよりダメージを受けている気がする。
「うーん……」
なんか、こう、ないかな。
うにゅほが寂しがらずに済む方法。
「──あ、今夜は俺のベッドで寝るとか」
多少男臭いかもしれないが、俺の匂いがすることで多少落ち着くかもしれない。
「◯◯いないとき、いつも◯◯のベッドでねてる」
「寝てるんだ……」
まあ、俺も時々うにゅほのベッドで寝るしな。
お互い様である。
「じゃあ、寝るまでLINEするとか」
「しょうとう、くじ……」
「俺が九時に眠れると思う?」
「おもわない」
「だろ」
「でも、おこられない?」
「基本、相部屋の人に迷惑かけなければ問題ないはず」
「あいべやのひと、いないね」
病室は二人部屋だが、今日は俺ひとりしかいない。
iPhoneやiPadをいじるくらい、大目に見てもらえるはずだ。
「……かえったら、らいんするね?」
「ああ」
「あさもしていい?」
「いいけど、九時に退院だぞ」
「わたし、おきるのろくじ」
「……頑張って返信するよ」
「うん」
午後八時、母親がうにゅほを迎えに来て、日を跨ぐまでLINEでやり取りをしていた。
翌朝、午前六時半に起床すると、すでにメッセージが届いていた。
時刻はすぐに午前九時を迎え、
「──ただいまー」
「おかえり!」
帰宅すると同時、うにゅほに抱き締められた。
「うへー……」
「そんなに寂しくなかったろ」
「うん」
うにゅほを置いて外泊する際は、今回くらい密に連絡を取ろう。
そう決意する俺だった。








421 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:51:28 ID:VMWSRCsU0

2020年2月2日(日)

「もう二月か……」
「はやい」
「いろいろあったような、そうでもないような」
「しごと、たくさんあったね」
「一日当たり多めにこなしてるから、締め切りの2月10日を待たずに終わると思う」
「さすが」
「ポリープは見つかったけど、大腸内視鏡も無事終わったし」
「にがつ、なにあるかな」
「バレンタイン」
即答である。
「◯◯、どんなチョコたべたい?」
「えーと、ナッツが入ってるチョコだと嬉しいかな」
「わかった!」
うにゅほが笑顔で頷く。
楽しみだ。
「あ、あした、あれだよ」
「あれ?」
「せつぶん」
「あー」
そういえば、そんな行事もあったな。
「まめまいて、えほうまきたべるよ」
「どっちかでいいんじゃないか?」
「でも、まめまくし、えほうまきたべるとおもう」
「母さん、やたらと豆撒きたがるからなあ」
理由はよくわからない。
ただ単に好きなだけかもしれない。
「二月のイベントと言えば、それくらいかな」
「たぶん」
「三月は、ひな祭りとホワイトデーか」
「にがつとおなじひだね」
2月3日と、3月3日。
2月14日と、3月14日。
「たしかに……」
「いみあるのかな」
「バレンタインとホワイトデーは関係ありそうだけど、節分とひな祭りはたまたまじゃないか」
「そか……」
そんな話題に花を咲かせていると、春が近付いているという実感が湧いてきた。
早いところ、冬とはおさらばしたいものだ。







422 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:52:03 ID:VMWSRCsU0

2020年2月3日(月)

節分である。
うにゅほと母親が家中に落花生を撒くのを見届けたあと、拾い集めるのを手伝った。
西南西を向いて恵方巻きにかぶりつくも、今年は父親からの妨害もなく、無事に食べ終えることができた。
「節分、無事に終わったな」
「うん……」
「どした?」
「なんか、ものたりない」
「あー……」
ちょっとだけ、わかる。
「父さん、気まぐれだからな。去年も、一昨年も、邪魔してやろうと手ぐすね引いて待ってたわけじゃない」
「ことし、テレビにむちゅうだったね」
「ドラマが気になってたんだろうな」
「うん……」
物憂げな表情で、うにゅほが呟く。
「せつぶん、おわりかあ……」
「そんなに楽しみにしてたのか」
「ふつう」
「普通……」
「でも、あっけなかったなって……」
「じゃあ、柊の小枝に鰯の頭でも差すか?」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「柊鰯って言うんだけど」
「ひいらぎいわし……」
「豆撒きは、鬼を追い出して福を追い込むだろ」
「うん」
「柊鰯は、魔除け。そもそも鬼を家の中に入れないための風習なんだ」
「ほおー……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「そんなのあるんだ」
「西日本の風習だったかな。北海道でやってるとこは見たことないけど」
「へんだね!」
「西日本の人に怒られるぞ」
「きいてないよ?」
「いや、日記に書いて全世界に発信するし……」
「えー!」
西日本の人たち、怒らないであげてください。
悪気はないんです。
 






423 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:52:37 ID:VMWSRCsU0

2020年2月4日(火)

「いやー、ごっそり降ったな……」
「うん!」
マフラーを口元まで巻いたうにゅほが、鼻息荒く頷いた。
これまで力を溜めていたかのような、どかんとコシのある大雪だった。
「ゆきかき、ゆきかき」
「はいはい」
父親が粗く掻いていったとは言え、まだまだ雪は残っている。
「俺がジョンバで集めるから、××はスノーダンプで運んでってくれな」
「はーい」
ジョンバ。
木製の柄にプラスチックの面が取り付けられた除雪用シャベルのことである。
「──しょっ、と」
玄関先に降り積もった雪を、ジョンバで次々跳ね飛ばしていく。
雪をまとまった状態で飛ばすには、いささかコツがいる。
故に、俺がジョンバを担当しているのだ。
「ね、ね、◯◯」
「んー?」
雪かきを半分ほど終えたころ、うにゅほが物言いたげに俺を見上げた。
「ジョンバ、やってみたい……」
「いいけど」
「やた!」
ジョンバをうにゅほに手渡す。
「よーし……」
花壇の隅にねらいをつけたうにゅほが、ジョンバで雪を跳ね飛ばす。
粉雪が宙に散り、
「──わぷ!」
折悪く吹いた風が、玄関先でつむじを描いた。
「××……」
コートが真っ白になってしまった。
「ごめんなさい!」
「いや、いいけど」
よくあることだ。
「◯◯、どやってやってるの……?」
「貸してみ」
「うん」
ジョンバを受け取り、雪を掻く。
綺麗にまとまった新雪が、弧を描き、雪の小山のてっぺんに覆い被さった。
「おおー……」
「こんな感じ」
「……どんなかんじ?」
「こう」
再び、雪を掻いてみせる。
「やってみ」
「うん」
うにゅほが、雪を掻く。
粉雪が舞い散る。
「おしえて……」
「えーと、俺、どうやってるんだっけ……」
物を教えることは、難しい。
自分の動作を改めて確認しながら、そんなことを思うのだった。







424 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:53:05 ID:VMWSRCsU0

2020年2月5日(水)

「──…………」
しんしんと雪が降り積もる。
果てしなく、果てしなく。
「……降り過ぎじゃない?」
「うん……」
「さっき雪かきしたばっかなんだけど……」
白くひらひらと舞い落ちる粉雪が、窓からの景色を埋め尽くしている。
美しい光景ではあるのだろう。
だが、雪かきと紐付けられてしまっては、もはや溜め息しか出ない。
「ゆき、たまってたのかなあ……」
「そうかもなあ……」
「……ゆきかき、いちにちいっかいがいいな」
ついにうにゅほが音を上げた。
一時間かけて綺麗にした玄関先を三十分で元通りにされてしまえば、心も折れるというものだ。
「降るにしても、降らないにしても、極端が過ぎる」
「うん」
「中間でいいんだよ、中間で」
「わかる」
「……できれば、中間の、ちょっと降らない寄り」
「それもわかる……」
「運動不足が解消できるスポーツ感覚の雪かきがいちばんいいよな」
「いちにちいっかい、さんじゅっぷん」
「それくらいなら、まあ、してもいいか」
「ゆきふらないとゆきかきできないのが、こんごのかだい」
「やはり、毎日できるリングフィットのほうが」
「ゆきかき、たのしいし……」
「リングフィットだって楽しいぞ」
「そだけど」
「春夏秋冬、一年中できるし」
「それ」
うにゅほが俺を指差した。
「ゆきかき、ふゆしかできないから、ふゆはゆきかきすべき!」
「……なるほど」
季節限定というのは見過ごせない要素だ。
「成長したな、××」
「うへー」
まあ、雪かきは否応なくしなければいけないのだけれど。







425 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:53:35 ID:VMWSRCsU0

2020年2月6日(木)

朝起きると、iPhoneに付けていた愛用のストラップがなくなっていた。
「またか……」
すこし前にも似たようなことがあった。※1
そのときは、さんざん探したあとに、ポケットの中で見つかったのだった。
「──…………」
ポケットに手を入れる。
ない。
コートのポケットも探す。
ない。
「どしたの?」
「ストラップがない……」
「ポケットは?」
「なかった」
「いえのなかかな」
「だと思う……」
昨日、仕事をしながら音楽を聴いていたときは、あったはずだ。
その時点でなければ、さすがに気付くはずだ。
たぶん。
「じゃあ、へやかなあ」
「枕元かもしれない。朝方に起きたとき、携帯で時間を確認した記憶があるから」
「さがしてみましょう」
「うん」
うにゅほと共に、枕元を探す。
ない。
ベッドサイドを探す。
ない。
マットレスを持ち上げ、ベッドの下の衣装ケースをどかし、ベッドの周囲を探し尽くす。
ない。
「ここらへんじゃないのか……」
「これだけさがしてなかったら、べつのとこだね」
「──…………」
昨日の記憶を洗い出す。
「……やっぱ、部屋の中だと思う。でも、具体的にどこかはわからない」
「じゃあ、へやじゅうさがそう」
「付き合わせてごめん……」
「いいから、さがそ」
「はい」
だが、部屋中を引っ掻き回しても、ストラップは出てこない。
「ないねえ……」
「部屋の中じゃないとすれば、家の中かな」
「さがそう」
「とりあえず、仕事部屋から──」
思い当たる場所すべてを探し尽くしても、ストラップは見つからなかった。
「どこだろ……」
「しゃーない、いったん諦めよう」
「あきらめるの……?」
「探すのをやめたとき、見つかることもよくあるって言うし」
「あー」
「家の中にはあるはずだから、そのうち出てくるって」
「そだね……」
井上陽水を信じ、ストラップの捜索を打ち切った。
そのうち不意に見つかることを祈る。

※1 2019年12月20日(金)参照







426 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:54:04 ID:VMWSRCsU0

2020年2月7日(金)

「まーた雪降ってる……」
「ほんとだ……」
わさわさ降り続ける粉雪が恨めしくて仕方がない。
「マジで勘弁してほしい……」
「ねー……」
「さしもの××もうんざりしてきたか」
ぽんぽんとうにゅほの頭を撫でる。
「◯◯、リングフィットすき?」
「好きだぞ。運動になるし、楽しいし」
「いちにち、にかいとか、さんかいとか、やれっていわれたら?」
「……嫌だな」
「そんなかんじ……」
「わかる」
「きらいじゃないけど、もういい……」
「カレー好きだからって、毎日カレーだったら飽きるもんな」
「ちょっとちがうきーする」
「夏が好きだからって、沖縄に移住するようなもんだな」
「とおくなってきた」
「毎日お正月だとさすがに太るしな」
「かんぜんにちがうはなし……」
「××、ツッコミが上手くなってきたんじゃないか」
「うへー」
うにゅほがてれりと笑う。
「……まあ、現実逃避だけどな」
「うん……」
雪はやまない。
降り続ける。
「外見てても仕方ないや。やることやらんと」
「しごと、おわりそう?」
「明日には終わる」
「おー!」
「頑張ったから、終わったら褒めてくれ」
「うん、ほめる」
「よし」
やる気が出てきた。
雪かきの方のやる気は一向に湧いてこないが、積もるのならば仕方あるまい。
これが最後の大雪になりますように。







427 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:54:27 ID:VMWSRCsU0

2020年2月8日(土)

一月上旬、山ほどの仕事が舞い込んだ。
その数、実に1200件。
土日返上で働き続け、本日ついに、
「──終わったー!」
勝利の雄叫びを上げるに至ったのであった。
「◯◯、おつかれさま!」
「疲れた……」
「がんばった」
「褒めて」
「うん」
うにゅほが、俺の髪に触れる。
なでなで。
「◯◯、すごい。すごいがんばった。しめきり、あさってだよね」
「早め早めと思ってさ」
「けいかくてき」
「だろー」
「しごと、あんなにあったのに……」
「カッコいい?」
「かっこいい」
「惚れる?」
「ほれる!」
「いえー」
「いえー」
パン、とハイタッチを交わす。
「青田上げの仕事だから、しばらく楽だぞ」
うにゅほが小首をかしげる。
「あおた?」
「……専門用語なのかな」
「そうかも」
まあ、解説するほどのことでもない。
「つまり──」
「つまり」
「明日から自由ってことだ!」
「おー!」
「どっか行きたいけど、コロナウイルスが怖いな……」
「ごろごろしよ」
「そうしますか」
「そうしましょう」
というわけで、明日はうにゅほとゴロゴロ過ごすことにした。
久し振りの休日を楽しもう。







428 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:54:52 ID:VMWSRCsU0

2020年2月9日(日)

「──……んが」
三度寝から起床する。
窓の外はまだ明るく、昼食後に布団に潜ってから、それほどの時間は経っていないように思われた。
「おふぁよう……」
あくびを噛み殺しながら、自室の書斎側で読書をしていたうにゅほに挨拶する。
「おはよー」
「だらだらするのも久し振りだ……」
「すーごいねてたね」
「? 一時間くらいじゃ──」
壁掛け時計に目を向ける。
四時半。
「……日、長くなったなあ」
「ほんとだねえ」
しみじみ。
「寒波は来てるみたいだけど」
「あさひかわで、マイナスさんじゅうろくどだって」
「うわあ……」
「じゅうきゅうねんぶりだって」
「バナナで釘が打てそう」
「うてそう……」
「正直、人の生きる地で出しちゃいけない気温な気がする」
「どんだけさむいんだろ」
「寒さ自体は-10℃くらいと大差ないと思う」
「そなの?」
「沸騰したお湯と高温の油、どっちに指入れても熱いとしか感じないだろ」
「あー」
「違いはと言えば、冷える速度かな。あっと言う間に体温を奪われるだろうから」
「なるほど……」
iPhoneを取り出し、天気アプリを開く。
「いま外は-11℃だから、擬似的に旭川を体験できるぞ」
「──…………」
「行く?」
「いい……」
「だよな」
観光客じゃあるまいし。
「じゃ、リングフィットでもするか」
「うん」
三日坊主の俺たちにしては、リングフィットは続いているほうだ。
このまま継続していきたい。







429 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:55:24 ID:VMWSRCsU0

2020年2月10日(月)

「ただいまー」
「おかえり……」
所用で外出し、帰宅すると、うにゅほが心配そうな顔をして言った。
「おとうさん、ぽりーぷみっつあったって……」
「ポリープ……」
一瞬考え込み、すぐに思い出す。
「ああ、今日は父さんの大腸内視鏡検査だったっけ」
「うん……」
「じゃあ、今日は帰ってこれないな」
「だいじょぶかな……」
心配性だなあ。
「父さん、明日には退院できるんだろ」
「うん……」
「俺が大丈夫だったんだから、父さんも大丈夫だって」
うにゅほの頭をぽんぽんと撫でる。
「さみしくないかな……」
「あとで電話でもしてあげたら?」
「うん、する」
「消灯は九時だったと思うから、それまでに」
「はちじにでんわしたらいいかな」
「消灯前ならいつでもいいと思うけど……」
「びょういんにでんわするの、なんか、きんちょうする。いけないきーする……」
「俺とはずっとLINEしてたじゃん」
「らいんはいいの」
そうなんだ。
「可愛い娘から電話が来たら、父さんもすぐ良くなるさ」
「……はやくでんわしたほういい?」
時計を見る。
「今は、たぶん、点滴中かな。あと二時間もすれば手持ち無沙汰になる」
「けいけんしゃはかたる」
「××もそのうち経験しないとな」
「う」
うにゅほが自分のおしりを押さえる。
「覚悟しておくように」
「はい……」
まあ、しばらくは必要ないと思うけど。
そのときは女医を探さないとなあ。







430 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:55:49 ID:VMWSRCsU0

2020年2月11日(火)

「きょう、しゅくじつだねえ」
「四連休気分だな」
「うん」
「ところで、今日って何の日だっけ」
「うーと」
うにゅほがカレンダーを覗き込む。
「けんこくきねんのひー、だって」
「建国記念の日?」
「うん」
「建国記念日じゃなくて?」
「けんこくきねんのひー、ってかいてる」
ふと気付く。
神代にまで遡る日本の歴史において、正確な建国記念日を特定できるものなのだろうか。
「調べてみるか」
「うん」
Googleを開き、"建国記念の日"で検索する。
「へえー……」
「なんてかいてた?」
「日本では、実際の建国日が定かではないため、建国を祝う日として、建国記念の日が定められたんだって」
「けんこくしたひじゃないの?」
「いちおう、初代天皇である神武天皇の即位日をグレゴリオ暦に換算したのが2月11日ってことらしいけど」
「なるほど……」
「日本って、現存する最古の国だからな。あんまり古すぎて、建国した日すらちゃんと残ってないんだろう」
「さいこのくになの?」
「そうだよ」
「そなんだ……」
「ギネスにも載ってる」
「ギネスにのってるならほんとだね」
ギネスブックへの熱い信頼が冴え渡る。
「建国をしのび、国を愛しながら、だらだらするかー……」
「うん」
たまには出掛けたいと思わないでもないが、やはりコロナが怖い。
騒ぎが落ち着くまで引きこもっていよう。







431 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:56:12 ID:VMWSRCsU0

2020年2月12日(水)

ファンヒーターをつけていないのに、なんだか部屋が暖かい。
二重窓を開き、顔を出す。
「寒くない……」
頬をくすぐる風が、絶妙に生ぬるかった。
「きょう、あったかい」
「うん、あったかい」
「さいこうきおんね、ろくどだって」
「……マイナス?」
「ぷらす」
「知ってた」
しかし、二月に入ってからの冷え込みようからすれば、マイナスのほうが自然ではある。
「今年は荒れるなあ、ほんと……」
「そだねえ」
「明日には真冬日に戻ってたりして」
「うん」
「……冗談として成立してないな、これ」
「じょうだんだったの?」
「冗談じゃない」
「えと、ごめんなさい?」
「いや、そっちの"冗談じゃない"じゃなくて、冗談のつもりで言ったけど結果的に冗談じゃなかったって意味で」
「にほんご、むずかしい……」
まったくだ。
「ま、いいや。あったかいうちに空気の入れ換えをしておこう」
「コロナ、だいじょぶかな……」
「窓から入ってくるレベルの感染力なら、世界なんてとっくに終わってそうだな」
「◯◯、なんか、そんなゲームしてた」
「ゲーム?」
「すまほ」
「ああ、Plague Incか」
随分前にハマってたなあ。
「今だと不謹慎って言われそう」
「いわれてそう……」
「悪趣味とは思うけど、伝染病がどのようにして拡散されていくかを学ぶためのツールと思えば有益だと思う」
「なるほど……」
ゲームの目的は人類の絶滅だけど。
澱んだ部屋の空気が押し出され、新しい空気が肺を満たす。
心地いい。
今日のような日和が続いてくれればと願わずにはいられない。
そんな日々のことを、人は"春"と呼ぶのだ。







432 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:56:40 ID:VMWSRCsU0

2020年2月13日(木)

「──◯◯、◯◯」
うにゅほが肘掛けの下から顔を出す。
「んー?」
「だいどこ、みないでね」
「なんで?」
「ひみつ」
ふと、カレンダーに視線を向ける。
「あ、バレンタインか」
「ひみつー」
「絶対バレンタインだ」
「どうでしょう」
「バレンタインだな……」
「ちがうかも」
そんな会話を交わしつつ、コートを羽織る。
「どっかいくの?」
「床屋」
「あー」
うにゅほが、俺の前髪をつまむ。
「のびたもんねえ」
「仕事が忙しくて、ずっと行けなかったから」
「ほんとね……」
まる一ヶ月、休みがなかったのだ。
散髪になど行けるはずもない。
「どのくらいきるの?」
「うーん」
「まるぼうず?」
「丸坊主は嫌だなあ……」
「ざんねん」
「ヘッドホンで癖がつくの嫌だから、梳くだけ梳いてそこまで短くはしないかも」
「みじかいと、へこむもんね」
「長いとぺったりするけど、そこだけ凹むよりはマシだもんな」
「よこからみたとき、すごかった」
「すごかったか……」
「うん」
ちょっと見てみたかった。
「今のヘッドホン気に入ってるから、しばらくは短くしないと思う」
「やた」
「××、長いほうが好きなんだっけ」
「ながいのと、ぼうずすき」
「極端だなあ……」
「うへー」
散髪を済ませ、消耗品を買い足し、コンビニで買い食いをして帰宅すると、チョコ作りは既に終わっていた。
明日が楽しみである。
 







433 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:57:01 ID:VMWSRCsU0

2020年2月14日(金)

「──◯◯、◯◯」
「んー?」
「めーとじて」
「嫌だ」
「とじて!」
「嫌だ!」
「もー……」
うにゅほが、腰の後ろに隠していた箱を開いてみせる。
ひとくちサイズの、丸い、すこし歪なチョコレートが、綺麗に列を成していた。
「◯◯、くちあけて」
「あー」
「くちはあけるんだ……」
「口開けないと食べられないだろ」
「いやいやモードかとおもった」
「なんだそのモード……」
「たまにある」
「記憶にない」
「はい、あーん」
「あー」
素直に口を開くと、チョコレートが押し込まれた。
柔らかく、ねっとりとした生地のチョコレートに、ナッツがたっぷりと練り込まれている。
「美味い……」
「よかったー」
「生チョコ?」
「なまチョコに、カシューナッツくだいていれたの」
「これは美味いわ」
「うへー……」
「天才!」
「うへへ」
「もう一個!」
「はい、あーん」
「あー」
口の中が幸せで満たされる。
「あと一個!」
「きょう、あといっこだけだよ」
「うん」
「たべたらかくすからね」
「わかりました」
「はい、あーん」
「あー」
バレンタイン万歳、である。
 







434 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:57:31 ID:VMWSRCsU0

2020年2月15日(土)

「××、××」
「?」
「チョコを寄越せー」
「はーい」
うにゅほが座椅子から立ち上がり、寝室側へと向かう。
「あ、めーとじててね」
「はい」
「すなお」
「俺は素直だぞ」
「きのう、いやいやしてた……」
「なんとなく」
「まっててね」
寝室側から、しばし、がさごそと音が響く。
目を開き、そちらを覗き込む。
「あ!」
「バレた」
「めーとじててっていったのに……」
「閉じてたぞ。開けただけで」
「へりくつ」
「チョコを寄越せ!」
「めーとじないと、あげないよ」
「それはおかしい」
「?」
「昨日の段階で、チョコは既に俺のものになってるはずだ。俺のものを渡さないのは横暴なのでは」
「へりくつ!」
「寄越せー」
「だって、かくしとかないと、◯◯すぐたべちゃうんだもん」
「それは否定しない」
「もー」
「美味しいから仕方ない……」
「たべたらなくなるよ」
「う」
「ぜんぶたべたら、あしたたべれないよ」
「ぐ」
「めーとじる?」
「閉じます……」
「よろしい」
アホみたいなやり取りだが、これが楽しい。
「はい、あーん」
「あー」
うにゅほ謹製のチョコを頬張りながら、幸せについて考える俺だった。
 






435 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/02/16(日) 01:59:01 ID:VMWSRCsU0

以上、八年三ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2020年02月17日 19:35  ID:JxMqIEj70
    作者はよ4ね


  • 2  Name  名無しさん  2020年02月17日 19:36  ID:p0HNZ.3Z0
    何か、うん、すごい


  • 3  Name  名無しさん  2020年02月17日 19:42  ID:Vpwx9Gio0
    妄想もここまで行くと凄いわ
    痛いけど


  • 4  Name  名無しさん  2020年02月17日 19:44  ID:rR91Nvek0
    お空はこれで稼いでるってマジ?


  • 5  Name  名無しさん  2020年02月17日 19:55  ID:buNGGse.0
    作者糖質?


  • 6  Name  名無しさん  2020年02月17日 20:00  ID:36.nVBFo0
    >>1
    はいはい、脅迫罪ね


  • 7  Name  名無しさん  2020年02月17日 20:03  ID:pcV3EaVa0
    ヘンリー・ダーガーがどうのこうの


  • 8  Name  名無しさん  2020年02月17日 20:06  ID:htB6SOFa0
    >>4
    お空とうにゅほとやらを一緒にしてはいけない
    平野文と平野レミくらい違うぞ


  • 9  Name  名無しさん  2020年02月17日 20:28  ID:Fr.pce.X0
    うんち!


  • 10  Name  名無しさん  2020年02月17日 20:36  ID:RdEINrDp0
    いつもの


  • 11  Name  名無しさん  2020年02月17日 21:00  ID:nMX7yT6i0
    どういった経緯でこの方の作品をまとめ始めたのでしょうか…


  • 12  Name  名無しさん  2020年02月17日 21:38  ID:cloMqKzw0
    気持ち悪い記事まとめんなカス


  • 13  Name  名無しさん  2020年02月17日 21:46  ID:1Ck4tl.H0
    うつほじゃなくてうにゅほやぞ
    別個体や


  • 14  Name  名無しさん  2020年02月17日 23:06  ID:ad3Hx0GG0
    何で東方と全然関係ない、ヘンな妄想記事をまとめてんの?



  • 15  Name  名無しさん  2020年02月17日 23:20  ID:2uvUiKVh0
    >>14
    作者が管理人を脅してる


  • 16  Name  名無しさん  2020年02月18日 00:31  ID:C.owAlui0
    >>6
    「死ね」は脅迫罪にはならないぞ


  • 17  Name  名無しさん  2020年02月18日 01:20  ID:3AXmVCEh0
    >>14
    管理人の飼い犬が人質に取られている


  • 18  Name  名無しさん  2020年02月18日 01:37  ID:AlZaePSz0
    ゆ…ゆっくり!!ゆっくり!!ゆっくr


  • 19  Name  名無しさん  2020年02月18日 01:55  ID:aItFj0Tk0
    現代が生み出した悲しきモンスター


  • 20  Name  名無しさん  2020年02月18日 04:16  ID:fYt99hPK0
    なにこの気持ち悪い記事って思ってたら関連記事の量にビビった


  • 21  Name  名無しさん  2020年02月18日 05:38  ID:Py7Vx3Oo0
    まってた


  • 22  Name  名無しさん  2020年02月18日 06:38  ID:KLvPvxsw0
    ガチで8年続いてるんだよな
    ここまできたら本人には事実になって即


  • 23  Name  名無しさん  2020年02月18日 08:57  ID:aNYyIIof0
    >>16
    「死ね」と言って、その相手がホントに自殺でもしたら教唆罪になる
    まぁ、そんなんで死ぬ奴は多分いないと思うけど



  • 24  Name  名無しさん  2020年02月18日 09:49  ID:bj3o3yZS0
    捕まる可能性のある危ないことはするなって話
    リテラシーがなさすぎる


  • 25  Name  名無しさん  2020年02月18日 16:57  ID:g8krBXH.0
    聖典


  • 26  Name  名無しさん  2020年02月18日 22:53  ID:szjPykRN0
    おい!管理人!
    この糞作者から脅迫されてるなら警察に相談しろよ!


  • 27  Name  名無しさん  2020年02月23日 02:01  ID:nSSGf6yN0
    >>3
    気持ち悪いんだけどその気持ち悪いモチベーションがここまで続けられるのは羨ましい
    俺も一つくらいここまで熱中できるものがほしい


  • 28  Name  名無しさん  2020年02月23日 10:12  ID:heLmPfF20
    作者はよタヒね


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