2020年09月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
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648 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 15:55:24 ID:77xhgad20

2020年9月1日(火)

9月1日より、昇進した。
給与は上がるが、仕事も増え、責任も大きくなる。
ずっとヒラでいたかったが、こればかりは仕方がない。
「はー……」
溜め息と共に帰宅する。
「──おかえり!」
玄関の開閉音を聞きつけたか、うにゅほが駆け下りてくる。
「ただいま、××」
「どうだった……?」
「思ってたよりは大変じゃないかな。面倒は面倒だけど」
「そか……」
在宅ワークの身に通勤の義務が発生した時点で面倒極まりないが、会社での仕事はそう多くない。
大半の仕事は今まで通りだ。
純粋に通勤仕事が増えただけとも言えるが、業務内容が大きく変わらないのはありがたい。
「まあ、これで給料が増えるんなら、そう悪くないかも」
「いくらふえるの?」
「耳貸して」
「うん」
うにゅほの耳に、そっと息を吹き掛けた。
「ひぅ!」
うにゅほが仰け反る。
「なにー……」
「ごめん、つい出来心で。ほら、もっかい耳貸して」
「……もうしない?」
「もうしない」
再び近付いてきたうにゅほに、そっと耳打ちをする。
具体的な額は、ここでは明かさない。
「ほー……」
うにゅほが目をまるくする。
「けっこうあがる……」
「だろ」
「ちょきん、たくさんできるね」
「欲しいものも買えるし」
「なにほしいの?」
「今は、特にないかなあ。××は?」
「わたしもとくに……」
いまいち物欲のないふたりである。
「まあ、老後に備えるのは大切だから」
「そだね」
欲しいものができたときのために、お金は貯めておけばいい。
あればあるだけ困らない。
慎ましく生きていこう。








649:名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 15:56:17 ID:77xhgad20

2020年9月2日(水)

「うーしょ、と」
うにゅほが、一抱えほどもあるダンボール箱を自室へと運び込む。
「なんかとどいたー」
「重くなかったか? 大きい荷物なら、呼べばよかったのに」
「そんなおもくなかったから、だいじょぶ」
「そっか」
「これ、なんだろ」
「覚えはある。まあ、開けてみるか」
「うん」
ダンボール箱を開封する。
中には、個包装された食品が三十パック。
「サラダチキン?」
「サラダチキン」
「セブンイレブンのとちがう……」
「いろんな味があるやつ、試しに買ってみたんだ」
「へえー」
がさごそと、うにゅほが適当なパックを手に取る。
「とりめし、だって」
「コーンポタージュもあるぞ」
「やきそば!」
「ペペロンチーノ味ってどんなだ……」
「おいしそう」
「ひとつ、試しに食べてみたいけど──」
冷凍便で届いたため、そのすべてがガチガチに凍りついている。
「うーと」
うにゅほが、付属の紙を読み上げる。
「れいぞうこで、しぜんかいとうしてください、だって」
「だよなあ……」
無闇に解凍すると、味が落ちる。
そういうものだ。
「しゃーない。冷蔵庫に入れて、しばらく放置しようか」
「うん」
三十パックのサラダチキンを、自室の冷蔵庫に入れる。
冷蔵庫での解凍は時間が掛かるもので、十時間経ってもまだまだ凍りついたままだ。
今日はもう夕飯を食べてしまったし、サラダチキンの味見は明日に回すことにしよう。
まずは何味を試そうかな。
うにゅほに選んでもらおうか。







650 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 15:56:59 ID:77xhgad20

2020年9月3日(木)

「──お、溶けてる溶けてる」
冷蔵庫で解凍されたサラダチキン。
そのすべてが、本来の柔らかさを取り戻していた。
「一日ひとつずつ食べていきたいと思うんだけど、一日目はどれがいい?」
「わたし、えらんでいいの?」
「ああ。半分こするつもりだしな」
「うへー……」
微笑みながら、うにゅほが冷蔵庫を覗き込む。
「きになってたのね、いろいろあるの」
「どれとか?」
「うーとね、コーンポタージュと、とりめし。あとペペロンチーノ」
「あー」
思わず頷く。
「想像できないもんな」
「あじは、そのあじなんだとおもうけど……」
ただ、それがサラダチキンのフレーバーとなると、話は別だ。
「◯◯、どれきになる?」
「その中だと、鶏めしかなあ。チキンだから鶏なのは間違いないんだけど、サラダチキンとは程遠い調理法だし」
「とりめし、たべてみる?」
「食べてみるか」
「うん」
鶏めし味のサラダチキンの包装を開き、匂いを嗅ぐ。
「……鶏めしだ」
「とりめし」
「嗅いでみ」
「うん」
すんすん。
「とりめしだ!」
「思った以上に鶏めしだぞ、これは」
「たべてみて」
「うん」
サラダチキンの端を囓る。
鶏めしが口内で香り、コリコリとした食感が歯を楽しませる。
「ゴボウ入ってる……」
「すごい」
「ほら、食べてみ」
「うん」
うにゅほが、遠慮がちに、サラダチキンを口にする。
「とりめしだ……!」
「再現度すごいな」
「おいしい」
「明日はコーンポタージュ試してみるか」
「うん!」
一日の楽しみがひとつ増えた。
我ながら安上がりである。
 






651 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 15:57:43 ID:77xhgad20

2020年9月4日(金)

夕食後、自室に戻ったときのことだ。
「あっつ……」
襟元をパタパタと開閉し、内側に空気を送り込む。
「なんか、俺たちの部屋だけ暑くない?」
「あつい……」
俺の真似をしてか、無意識か、うにゅほも襟元をパタパタさせる。
「いまなんど……?」
「えーと」
温湿度計を覗き込む。
「31℃」
「なんで?」
「知らんがな」
「くがつはいったのにねえ……」
「残暑ってやつかな」
「でも、うちのへやだけだよ」
「日当たりの問題だろうな」
南東と南西に窓のある俺たちの部屋は、日中、常に陽射しに晒される。
その輻射熱が夜まで残っているのだろう。
「おひるのほうが、すずしかったきーする」
「風あったからな」
「かぜ、やんじゃったもんね」
「窓開けてても、ぜんぜん空気入ってこないよ……」
「エアコンつける?」
「つけよう」
「はーい」
ぴ。
自室のエアコンが稼働を始める。
「ふぶふぃー……」
エアコンの真下で冷風を受け止めながら、うにゅほが頬を緩ませる。
「結局、今年も、エアコンに頼りきりだったな」
「エアコンなかったら、しんじゃうかも」
「死にはしなくとも、軽い熱中症にはなってたかもしれない」
「あつかったもんね……」
「リフォーム前とか、よくエアコンなしで凌いでたと思うよ……」
「どうしてたっけ」
「たしか、薄着で、ひっつくみたいに、扇風機の風に当たってた気がする」
「──…………」
ぴと。
うにゅほが俺に身を寄せる。
「こんなかんじ?」
「いや、こんな感じ」
そう言って、うにゅほをぎゅっと抱き締める。
「うへー……」
結局のところ、磁石のように、互いにくっつきたがるのが俺たちである。
エアコンの有無は関係ないのかもしれない。







652 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 15:58:10 ID:77xhgad20

2020年9月5日(土)

「──…………」
ふらふらと起床し、顔を洗う。
眠い。
眠いが、さすがにこれ以上は寝ていられまい。
顔を拭き、自室に戻る。
「おはよー」
「……おはよう」
「ねてたねえ」
「寝てた。休みの日、ほんと眠い……」
寝溜めに意味はないと聞くが、寝溜めをするつもりは毛頭なく、ただ眠いから寝ているだけだ。
「あさ、ちょっとおきてたよね」
「八時くらいに、いったんな」
「いま、さんじ」
「三時だな……」
「なんじかんねたのかな」
うにゅほが、俺の左手首の活動量計に視線を向ける。
「見てみるか」
「うん」
スマホを取り出し、Fitbitのアプリを起動する。
「……9時間35分寝てる」
「ねてる!」
「めちゃくちゃ寝てるじゃん……」
「きのうは?」
「えーと、6時間14分か。平日はだいたいこんなもんかな」
「いってんごばいねてる」
「××はどのくらい寝てるんだ?」
「うーとね」
うにゅほがスマホを取り出し、アプリを起動する。
「ごじかんにじゅうにふん、ねてる」
「昨日は?」
「きのうは、しちじかんごふん……」
「あれ?」
記憶を探る。
「一昨日、一時くらいまで起きてなかったか?」
うにゅほの起床時間は、常に早朝六時。
普通に考えれば五時間、寝入るまでの時間を考えると四時間台でも不思議ではない。
「えと……」
うにゅほが、恥ずかしそうに口を開く。
「おひるねしたの……」
「そうだったんだ」
「……うへー」
「なんで照れるの」
「なんとなく……」
「朝早いんだし、昼寝くらいしたっていいだろ」
「そうなんだけど……」
それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいらしい。
女心は複雑だ。







653 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 15:58:54 ID:77xhgad20

2020年9月6日(日)

「妹の日」
「いもうとのひ……」
「妹の日だぞ」
「さんかげつきざみなんだっけ」
「その通り」
弟の日は、3月6日。
兄の日は、6月6日。
妹の日は、9月6日。
姉の日は、12月6日。
理由こそはっきりしないものの、三ヶ月ごとに兄弟姉妹の日があることは確かだ。
「──と、いうわけで」
「はい」
「お兄ちゃんって呼んでみて」
「おにいちゃん?」
「うっ」
心臓にダメージが入る。
「……もっかい呼んでみて」
「おにいちゃん……」
「妹よ!」
「わ」
思わずうにゅほを抱き寄せる。
「よし、なんでも買ってやるぞ!」
「どしたの?」
「思わず……」
妹の魔力にやられてしまった。
「おにいちゃんって、よんだら、うれしい?」
「どうだろう」
「うれしくないの?」
「単に、いつもと違う呼び方が新鮮ってだけかもしれない」
「いつもとちがうよびかた……」
数秒ほど思案し、うにゅほが口を開く。
「……あなた?」
「ウッ!!」
心臓に大ダメージが入る。
「そ、それはダメだ。破壊力が」
「そか……」
「こう、幼馴染っぽく、ちゃん付けで呼んでみて」
「◯◯ちゃん?」
「あ、ちょっといい……」
「そなんだ……」
よくわからんという顔をするうにゅほに付き合ってもらって、いろいろな呼び方を検証する。
「◯◯さん」
「お」
「◯◯くん」
「いいぞ」
「◯◯っち?」
「……いまいちだな」
しかし、結局のところ、普段通りがいちばんという結論に至るのだった。
そんなものだろう。







654 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 15:59:35 ID:77xhgad20

2020年9月7日(月)

「ぐえー……」
だるい。
あまりにも、だるい。
仕事の合間に横になっているが、回復が追いつかない。
「だいじょぶ……?」
うにゅほが、俺の額に手を乗せる。
「ねつないとおもうけど、いちおうたいおんはかるね」
ぴ。
うにゅほが、一ヶ月ほど前に両親が購入した非接触式の体温計を俺の額にかざす。
「さんじゅうろくてん、ろくど」
「だろうな……」
風邪と似てはいるが、違う。
熱っぽさはないし、喉も痛くない。
風邪の諸症状からだるさだけを抽出して静脈注射されたような感覚だ。
「ねれるうち、ねとこ。むりしたらだめだよ」
「そうする……」
切りの良いところまで終わらせた仕事を背に、自室へ戻る。
「もしかして、あれかなあ……」
「どれ?」
「たいふう」
「……あー」
台風9号は西に大きく逸れ、既に温帯低気圧となっている。
だが、その影響が消え去ったわけではない。
「気圧、かもなあ……」
「うん……」
気圧の変化にすこぶる弱い俺である。
「できること、ないかな……」
「──…………」
気圧差からは逃げられない。
ただただ堪え忍ぶのみだ。
だが、してほしいことはある。
「……ちょっと、手握っててくれないかな」
「ん」
うにゅほが俺の左手を取る。
「これでいい?」
「ありがとう……」
手を握る。
根治は不可能だし、対症療法ですらない。
だが、それだけで、心がすっと軽くなる。
「ねるまでにぎってるね」
「……うん」
うにゅほがつらいときには、手を握ってあげよう。
普段から気に掛けているけれど、改めてそう思うのだった。







655 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:00:23 ID:77xhgad20

2020年9月8日(火)

ペットボトルに汲んで冷やしておいた水を、自室の冷蔵庫から取り出す。
「んー……」
ぺたぺたとペットボトルに触れたのち、うにゅほに差し出した。
「××、これ触ってみて」
「?」
うにゅほがペットボトルを受け取る。
「あれ……」
そして、そのまま頬に当てた。
「なんか、冷えてないよな」
「みず、いついれたの?」
「昨日かな」
「おかしいね」
「なんか、あれっぽい」
うにゅほが小首をかしげる。
「どれ?」
「前の冷蔵庫も、たまに冷えなくなったじゃん」
「あー」
「あれって、たしか、霜がついてたからなんだよな」
「でも、このれいぞうこ、しもつかないやつ……」
「そのはずだけど……」
冷凍機能はないから、霜はつかない──はずだ。
「百聞は一見に如かず。調べてみよう」
「うん」
冷蔵庫を開き、中を覗き見る。
「おわ!」
「すごい……」
冷蔵庫の奥に霜がついていた。
それも、ごっそり。
「角度の関係で見えなかったんだ……」
床置きの小型冷蔵庫の奥なんて、覗き込まない限りは見えないものだ。
「しも、つかないやつなのに」
「ついたもんは仕方ないよ。なんとかしないと」
「しもとり、する?」
「──…………」
今日は、ちょっとめんどい。
もう夜だし。
「明日にしよう」
「はーい」
ちゃんとやるんだぞ、明日の俺。
明後日に回さないように。







656 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:01:14 ID:77xhgad20

2020年9月9日(水)

昨日の俺に釘を刺されたので、冷蔵庫の霜取りをちゃんと行うことにした。
まず、コンセントを抜く。
冷蔵庫の中身をいったん取り出し、その前に雑巾を複数枚重ねて置く。
「こんなもんか」
「これでだいじょぶ……?」
うにゅほが、不安そうに俺を見上げる。
「バケツとか、いらない?」
「前の冷蔵庫のときは、霜が上に固まってたから、バケツが使えたけど……」
冷蔵庫を覗き込み、奥を指差す。
「今回は、全部奥に貼り付いてるだろ。バケツ入れても意味ないよ」
「そだね……」
「霜を解かして、雑巾で受けて、ある程度吸ったら取り替える。これが現実的かな」
「ぞうきん、こまめにしないとね」
「そうだな」
霜の大きさから見て、こまめに交換しなければ水害が起こるだろう。
二階で床上浸水だなんて、縁起でもない。
「じゃ、しばらくほっとくか」
「うん」
冷蔵庫の扉を開けたまま、日常生活を送る。
だが、その平穏な日常は、
「──つめた!」
という、うにゅほの声で唐突に終わりを告げた。
「どした?」
「みず、こっちきてる!」
足を座椅子に引っ込め、うにゅほが床を示す。
そこにあったものは、水溜まり。
それ以外に呼びようのないものだった。
「さっき雑巾確認したぞ……」
開けてから二時間は経っている。
解けて流れてもおかしくないが、雑巾ぶんの猶予があるはずだ。
冷蔵庫の前に重ね置かれた雑巾に触れる。
だが、濡れていない。
「……どこから漏れた?」
わからない。
わからないが、由々しき事態であることはわかる。
「とりあえず、拭こう。まずはそれからだ」
「うん……」
拭きに拭いた結果、ある仮説へと辿り着いた。
「……これ、下から漏れてないか?」
「そうかも……」
どういう経路を辿ったのかはわからないが、前から出ていない以上、下からとなる。
「漏電が怖いなあ」
いくらコンセントを抜いてあるとは言え、電化製品であることに変わりはない。
「仕方ない。ありったけの雑巾、冷蔵庫の下に突っ込もう」
「わかった!」
かなりの時間と労力をかけて、なんとか霜取りに成功した。
霜のつかないタイプの冷蔵庫だと思ってたんだけどなあ。







657 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:01:47 ID:77xhgad20

2020年9月10日(木)

新しいクレジットカードが届いた。
「ほら、これ」
「?」
以前までのクレジットカードと新しいクレジットカードを比べて、うにゅほが小首をかしげる。
「そっくり……」
「まあ、デザインは似てるよな」
「なにちがうの?」
「古いほうは、ゴールドポイントカード。ヨドバシが発行してるクレジットカードだ。ブランドはVISA」
「びざ」
「新しいほうは、オリコカード・ザ・ポイント。発行元はオリエントコーポレーションで、ブランドはMastercard」
「ますたーかーど」
うにゅほが、再び小首をかしげる。
「……なにちがうの?」
「まあ、用途としては何も変わらないんだけど……」
「だよね」
「ゴールドポイントカードは、どんな用途に使っても、1%のゴールドポイントが還元される」
「よどばしのポイント?」
「そう。十万円使ったとすれば、千円がヨドバシで使えるポイントになるわけだ」
「べんり」
「便利だけど、こないだの一件でヨドバシに嫌気が差したからな……」※1
「あー……」
ヨドバシドットコムのサポートは、本当にひどい。
「あたらしいほう、なんかもらえるの?」
「1%のポイントがもらえる。入会後半年間に限っては、2%」
「なんのポイント?」
「オリコポイントっていって、Amazonギフト券とかiTunesカードと交換できる。実質的に金券だな」
「どっちのがいいのかな」
「ゴールドポイントはヨドバシでしか使えないから、オリコポイントのほうが使い道は多い」
「あたらしいのが、いいんだね」
「何もかもすべて上回ってるわけじゃないけど、こっちをメインにしようかって」
「どっちでもいいけど、むだづかいだめだよ?」
「はーい」
昇進して給料が上がったとは言え、べつに高給取りというわけではない。
地道に貯金して行かねば。

※1 2020年8月18日(火)参照







658 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:02:22 ID:77xhgad20

2020年9月11日(金)

「そだ。◯◯、あせものとこみして」
「あ、うん」
作務衣の下衣の裾をたくし上げ、膝の裏をさらけ出す。
「なおってる、かな。もうかゆくない?」
「痒くないよ」
「あせものくすり、すごいねえ」
「一週間経たずして、だからな」
「せんようは、すごい」
「××も痒いとこないか? 最近暑かったけど……」
「うと」
全身に視線を巡らせたあと、うにゅほがシャツの袖をちらりとめくる。
「わきの、ここ、かゆいかも」
「ほう」
僅かに覗くうにゅほの腋を、まじまじと観察する。
「……ちょっと赤いな」
「あせもかな」
「あせもってほどじゃないけど、いちおう塗っておくか?」
あせも用の軟膏を手に取る。
「──…………」
じ。
うにゅほがジト目でこちらを見やる。
「……くすぐんない?」
「信用ないなあ」
「しんようあるけど、くすぐるきーする」
「──…………」
にやり。
「ぜったいくすぐる!」
「まあまあ」
「うー……」
「ほら、めくってて」
「うん……」
軟膏を指に取る。
そして、ぺとりとうにゅほの腋に触れた。
「うふ」
優しく、優しく、くすぐったくないように、患部に軟膏を塗り込んでいく。
「ひー……」
「ほら、くすぐってないだろ?」
うにゅほが、気まずそうに視線を逸らす。
「……ごめんなさい」
「いや、××が何も言わなかったら絶対くすぐってたけど」
「もー!」
「はい、塗り終わった」
「ありがと」
「……自分で塗ればよかったのに」
俺の言葉に、うにゅほが微笑む。
「◯◯にぬってほしいし……」
「くすぐられても?」
「うん」
「じゃあ、今度はくすぐるな」
「だめー!」
可愛いなあ、この子は。







659 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:02:56 ID:77xhgad20

2020年9月12日(土)

「××さん」
「はい?」
「今日は何の日でしょー……か!」
「うーと」
うにゅほがカレンダーに視線を向ける。
「くー、いー、にー、きゅー、いち……」
「ヒント、今してること」
「?」
しばし小首をかしげ、
「──あ、クイズのひ!」
「正解!」
「だからクイズけいしきだったんだ」
「第二問!」
「!」
「9月12日はクイズの日──ですが、他には何の日でしょうか。次の三択からお答えください」
「うん!」
「A、宇宙の日」
「うちゅうのひ……」
「B、水路記念日」
「すいろ」
「C、マラソンの日」
「マラソン……」
「回答者、答えを」
「し、しー……」
「シシー」
「C!」
「──…………」
「──……」
徐々に顔を近付けていき、
「……正解!」
「やた!」
「というか、全部正解」
「えー……」
こつん。
「た」
頭突きされた。
「では、第三問」
「ててん」
「俺がいちばん好きな、さけるチーズの味は──」
「ガーリック!」
「早い」
「ガーリックだけにこかうもん」
「よく見てるなあ」
「うへー」
「次は××が出してもいいんだぞ」
「うと、ちょっとかんがえる……」
「ああ」
思いついてはクイズを出し、考えては答える。
今日は、そんなことを繰り返していた。







660 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:03:30 ID:77xhgad20

2020年9月13日(日)

「そう言えばさ」
「?」
iPadで動画を見ていたうにゅほが、顔を上げる。
「冷蔵庫の霜取ったじゃん」
「うん」
「頑張ったよな」
「がんばった」
「霜、もうつき始めてる」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「冷蔵庫の奥、触ってみ」
「うん……」
冷蔵庫を開いたうにゅほが、その細腕を奥まで差し込む。
ざりっ。
「あ」
「霜ってこのペースでつくんだな。気付かなかっただけで」
「とる?」
「この量なら、へらか何かで簡単にこそげ落とせると思うけど、正直きりがないよ」
「そだね……」
「給料上がったし、ツードア式の冷蔵庫でも買う?」
「でも、このれいぞうこ、いちねんしかつかってないし……」
「弟が、冷蔵庫欲しいって言ってたからさ」
「いってた」
「これは、あいつにあげてさ。新しいの買うのもいいんじゃないかな」
「──…………」
「××は反対?」
「……ん」
軽く頷いたあと、言葉を選ぶようにうにゅほが答える。
「ふたりでえらんだのだし……」
「あー」
そこを気にしていたのか。
「ほんと、霜さえつかなければな」
「うん……」
「冷凍庫ついてないのに、どうして霜がつくんだろう」
「うーん……」
考えてわかるものなのだろうか。
「まあ、もうすこし様子見てみるか。霜のつき具合を確かめたい」
「うん」
霜取りは本当に面倒だ。
漏電の可能性を考えれば、危険ですらある。
悩ましい。
 







661 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:04:02 ID:77xhgad20

2020年9月14日(月)

「うーん……」
スマホに視線を落としながら、小さく唸る。
「睡眠の質って、どうやったら上がるんだ?」
「かつどうりょうけい?」
「ああ」
「どれどれ」
うにゅほがスマホを覗き込む。
「すいみんスコア、ごじゅうよん……」
睡眠スコアとは、睡眠の質を百点満点で表したものだ。
54点は、かなり低い。
「××は?」
「うーと、わたしはね」
うにゅほが、自分のスマホを拾い上げ、活動量計のアプリを開く。
「きょうは、はちじゅうろく」
「高い……」
「すごい?」
「すごい」
「うへー」
「いいなあ……」
「なにちがうんだろうね」
俺とうにゅほの、詳細な睡眠レポートを比較する。
「まず、××は途中であんまり起きてないな」
「◯◯、なんかいもおきてる」
「寝付きは思ったほど悪くないんだけど……」
「あいますくしてるのにね」
「耳栓もしたほうがいいのかな」
「まえしてたよね」
「してたけど……」
「?」
「異物感で、逆にスコアが下がる気がする」
「あー……」
「リフォームでリビングが一階になったから、生活音がうるさくて起きるってこともなくなったしな」
「むずかしい」
「××、よく寝るコツってないの?」
「こつ」
「コツ」
「めーとじて、ねたら、ゆめちょっとみて、そしたらあさ……」
「──…………」
「……ごめん、わかんない」
「いや、そりゃわかんないよな」
コツがあったとして、実践できるかも怪しいし。
一朝一夕でどうにかなるのであれば、睡眠障害なんてこの世にはないのだ。
「寝る前にストレッチでもするかな」
「うん」
だが、睡眠の質の可視化ができるのは良いことだ。
少しずつでも改善できればいいのだが。
 







662 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:04:36 ID:77xhgad20

2020年9月15日(火)

「……なーんか、微妙に足ひねった気がする」
「いたいの?」
「痛いような、痛くないような……」
「どっち?」
「マジで微妙でさ」
「うーん?」
うにゅほが小首をかしげる。
「××、ちょっと手貸して」
「はい」
差し出されたうにゅほの手を取り、親指と人差し指のあいだをもにもにする。
「痛い?」
「いたくない」
「じゃ、これくらいは?」
すこしだけ力を込める。
「いたきもちい」
「そのくらい」
「きもちいの?」
「気持ちよくはない。痛みだけ、このくらい」
「ふうん……」
「ぜんぜん深刻じゃないし、歩いてるときもさして気にならないんだけど、たまに"あ、痛いかも?"ってなる」
「ほんとにびみょうだ」
「微妙なんだよ……」
「しっぷはる?」
「貼って悪くなることはないだろうし、貼ろうかな」
「とってくるね」
うにゅほが腰を上げ、階下へと軽やかに駆けていく。
しばしして、
「とってきたよ!」
「貼ってくれー」
「はーい」
右足を差し出す。
「どこらへん?」
「んー……」
足首をぐねぐねと動かし、
「ちょっと、甲側なのかな」
「このへん?」
「そうそう」
「はるね」
「ああ」
うにゅほが、ロキソニンテープをぺたりとし、馴染ませるように撫でる。
「なおりますように」
「ありがとな」
「いいえー」
もったいないほど良い子なのだった。
 






663 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/09/16(水) 16:05:38 ID:77xhgad20

以上、八年十ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



19:30|この記事のURLコメント(37)したらば | このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2020年09月17日 19:31  ID:efXBijk00
    東方のまとめにオリキャラの記事を出すとはどういうことですか?
    観測所だかなんだが知りませんが東方ファンの私どもとしては非常に残念です
    失望しました。やはりおねえちゃんまとめが一番です。
    まとめたい速報より酷いですね
    二度と観測所さんは、東方のスレをまとめないで下さい
    これは、東方ファン全ての意思です


  • 2  Name  名無しさん  2020年09月17日 19:40  ID:vKV8MeFV0
    現代のネクロノミコン定期


  • 3  Name  名無しさん  2020年09月17日 19:41  ID:iSBcQA4d0
    コメント欄しか読んでない定期


  • 4  Name  名無しさん  2020年09月17日 19:44  ID:NCT3Joei0
    類は友を呼ぶ


  • 5  Name  名無しさん  2020年09月17日 19:53  ID:rM2x.pTu0
    マジで怖い…


  • 6  Name  名無しさん  2020年09月17日 19:54  ID:kLgqKqXQ0
    ヴォイニッチ手稿定期


  • 7  Name  名無しさん  2020年09月17日 19:58  ID:TiT2Rswq0
    深淵を覗くときどうたらこうたら定期


  • 8  Name  名無しさん  2020年09月17日 20:11  ID:j8FJX4MI0
    でたわね


  • 9  Name  名無しさん  2020年09月17日 20:16  ID:NAvJYTrJ0
    忘れた頃にいつも登場する


  • 10  Name  名無しさん  2020年09月17日 20:24  ID:kLgqKqXQ0
    管理人脅されてまとめてる説好き


  • 11  Name  名無しさん  2020年09月17日 20:29  ID:JiPQUEwX0
    「引き続き、お楽しみください」で毎回締めてるけど、
    誰も楽しみにしていない定期


  • 12  Name  名無しさん  2020年09月17日 20:36  ID:JFaf2JnY0
    手紙で言うなら時候の挨拶みたいな役割を担ってるらしい


  • 13  Name  名無しさん  2020年09月17日 20:44  ID:oep9.HT30
    暦の代わりになるから要る。


  • 14  Name  名無しさん  2020年09月17日 20:50  ID:wKB7dvEh0
    作 者 の オ ○ ニ ー


  • 15  Name  名無しさん  2020年09月17日 21:09  ID:yQtZXZjY0
    たまには読んでみようかと思ったけど3ページあって諦めた


  • 16  Name  名無しさん  2020年09月17日 21:13  ID:wUulBzDJ0
    煉獄


  • 17  Name  名無しさん  2020年09月17日 21:21  ID:xH8lT9kf0
    ちょうど切らしてた


  • 18  Name  名無しさん  2020年09月17日 21:23  ID:ZQHFiXyZ0
    管理人の家族を解放しろ


  • 19  Name  名無しさん  2020年09月17日 21:42  ID:lmMzk.Zd0
    これを書く時間をもっと有意義に使えよ


  • 20  Name  名無しさん  2020年09月17日 21:50  ID:JEi9NehL0
    怖い定期


  • 21  Name  名無しさん  2020年09月17日 22:01  ID:6myLJ17y0
    「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」をそのまま地で行く案件定期


  • 22  Name  名無しさん  2020年09月17日 22:09  ID:udQSQSKW0
    これってマジで書いてるのか…


  • 23  Name  名無しさん  2020年09月17日 22:27  ID:TiT2Rswq0
    >>16
    逃れる術はない


  • 24  Name  名無しさん  2020年09月17日 23:09  ID:AnZc.lZp0
    管理人さん!ワイはいつも頑張って1ページ分は読んでるで!


  • 25  Name  名無しさん  2020年09月18日 00:16  ID:EdpnTENR0
    目障りなだけ



  • 26  Name  名無しさん  2020年09月18日 00:40  ID:6Kre.rvb0
    ガチで八年前からやってるから凄い
    彼の愛は本物だ彼自身を狂わせる程度に


  • 27  Name  名無しさん  2020年09月18日 02:14  ID:CELqMHMc0
    控えめに言わなくても狂ってる


  • 28  Name  名無しさん  2020年09月18日 02:42  ID:Rp1qh7z00
    いつかはとこいつでバトルしてほしい


  • 29  Name  名無しさん  2020年09月18日 07:56  ID:hAxZQ7dO0
    >>1
    まあ、確かにこれは……ね


  • 30  Name  名無しさん  2020年09月18日 10:37  ID:8TzPcE4S0
    この作者は探偵東風谷の続きあくしろよ


  • 31  Name  名無しさん  2020年09月18日 15:46  ID:Uf.9MoBO0
    いつかまとめて出版するんやろか


  • 32  Name  名無しさん  2020年09月18日 17:12  ID:aHvhj.Mz0
    >>1
    言いたいことはわかるがどこの馬の骨かわからん一個人が代表面しているのは不快の極み


  • 33  Name  名無しさん  2020年09月18日 21:19  ID:5mZCiUlp0
    マチカネタゾ!やっぱりこのまとめがないと気が引き締まらない


  • 34  Name  名無しさん  2020年09月19日 01:07  ID:vQkMEPwL0
    >>1
    ファン全てってw
    ほら、人それぞれだし
    代表面して堂々と管理人叩いて
    イキってる姿見てるとw
    笑いが止まらないぞ俺w


  • 35  Name  名無しさん  2020年09月20日 08:44  ID:3k9vKWjA0
    観測所唯一の汚点


  • 36  Name  名無しさん  2020年09月26日 04:34  ID:cs.uaOdI0
    エ イ ボ ン の 書


  • 37  Name  名無しさん  2020年09月28日 12:26  ID:frZ8KdMl0
    むしろある時ぱったりとこれが止まったら
    かえって心配する


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