2020年10月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



680 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:20:44 ID:EA.COn8M0

2020年10月1日(木)

「今日、眼鏡の日なんだってさ」
「めがねのひ……」
僅かに小首をかしげたあと、うにゅほが呟く。
「じゅー、とお、いー、いち、めがね、めがね……」
「あ、語呂合わせじゃなくて」
「ちがうんだ」
「さすがに無理がある」
「そだね……」
「語呂合わせじゃないけど、気は利いてるぞ」
スマホのメモアプリを開き、"1001"と打ち込む。
「せんいち?」
「10月1日で、1001だな」
「うん」
「1を眼鏡のつる、0をレンズに見立てる」
「──…………」
「眼鏡に見えないか?」
「みえない……」
「見えないか……」
"0"を"◯"に置き換える。
「これならどうだ」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「いいたいことはわかる」
「そんなわけで、眼鏡の日なんだってさ」
「へえー」
眼鏡を外し、うにゅほに差し出す。
「掛けてみる?」
「うん」
うにゅほが眼鏡を受け取り、掛ける。
「う」
くらり、とうにゅほの首がかしぐ。
「くらくらするう……」
「──…………」
いざやってみて、気付く。
「……眼鏡がないから、眼鏡掛けた××の顔が見えない」
「まえのめがねにする?」
「そうしよう」
眼鏡を掛けたうにゅほは、すこし知的に見えた。
ふと思い出す。
以前、伊達眼鏡にハマって、よく掛けていた時期があったっけ。
「にあう?」
「似合う似合う」
「うへー……」
「でも、視力は大切にしような。悪くなってからじゃ遅いから」
「うん」
似合うは似合うが、眼鏡がないほうが可愛い。
そちらも本音なのだった。








681 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:21:39 ID:EA.COn8M0

2020年10月2日(金)

さけるチーズを裂きながら、言う。
「最近、とうがらし味もいいかなって思うようになったんだ」
「からいのに?」
「うん」
「ガーリックあじは?」
「ガーリックが一番」
「でしょ」
「でも、とうがらし味は二番かな」
うにゅほが目をまるくする。
「そんなに……」
「そんなに」
「◯◯、からいのすきだっけ」
「辛いのは普通かな」
「だよね」
「とうがらし味は、辛いから好きってわけじゃないんだ」
「そなの?」
「辛いのはあくまでアクセントとして、なんだかミルク感とコクが他のさけるチーズより濃い気がして」
「んー……」
「食べてみるか?」
「からくない?」
「そりゃ、ちょっとは辛いけど」
「たべてみる……」
「はい」
とうがらし味のさけるチーズを適当に裂いて、うにゅほの眼前に差し出す。
「あーん」
「あー」
ぱく。
「どうだ?」
「……ちょっとからい」
「ちょっとな」
「あじは、おいしい」
「だろ?」
「でも、プレーンとあんましかわんないきーする」
「そうかなあ」
「わかんないけど……」
「そう言えば、最近プレーン買ってないな」
「そだね」
「今度買って、食べ比べてみるか」
「うん」
ちなみに、一番微妙な味はバター醤油味であると、見解が一致している。
味こそ悪くないのだが、噛むとなんだかキュムキュム鳴るからだ。
あれ、なんなんだろう。







682 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:22:22 ID:EA.COn8M0

2020年10月3日(土)

うにゅほがカレンダーを覗き込む。
「きょう、とうさんのひ?」
「父の日、別にあるからなあ」
「じゃ、とうさんのひ」
文字に起こすと同じだが、アクセントが違う。
最初は"父さんの日"で、次は恐らく"倒産の日"だろう。
「そういう縁起悪いのは記念日にしないと思うけど」
そう思いつつも、検索してみる。
「あ、登山の日だって」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「そっちか」
「そっちでした」
「おしい」
登山の日の説明を、なんとなく読み上げる。
「登山の日。日本アルパイン・ガイド協会の、重野──これなんて読むんだ」
「どれ?」
上体を傾け、うにゅほがディスプレイを覗き込めるようにする。
「しげの、たー……」
しばし思考停止し、
「……なんてよむの?」
「さあ……」
日本アルパイン・ガイド協会、重野 太肚二。
「素直に読めば、"たとじ"かなあ」
「まんなかのじ、とってよむの?」
「音読みはな。訓読みだと、"はら"」
「ふとっぱら、かも」
「それだと、"二"が浮くな」
「ふとっぱらに……」
「一号がいそう」
検索し、読み方を調べてみた。
「たつじ、だって」
「たつじ」
「肚って、"つ"とは読まないんだけどな……」
「へんなの」
「まあ、キラキラネームなんてあるから、今更ではあるけど」
「きらきらねーむ」
「七音って書いて、"どれみ"とか」
「あ、かわいい」
「そうかなあ……」
あまり語ることはしないけれど、一発で読めない名前だと一生を通じて苦労しそうだと思うのだった。
 






683 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:23:23 ID:EA.COn8M0

2020年10月4日(日)

「──…………」
右肩をぐりぐりと回す。
「……んー?」
「どしたの?」
「なんか、右肩が痛い」
「どこ?」
うにゅほが俺の右肩を揉む。
「ここ?」
「いや、まだ下。肩甲骨の上くらい」
「けんこうこつのうえ……」
ぐい、ぐい。
うにゅほの親指が、肩に食い込む。
「あ、そこだ」
「ここ、せなか……」
「ギリ肩じゃない?」
「かたと、せなかの、あいだくらい」
「そこが微妙に痛いんだよな」
「どのくらい?」
「我慢はできるけど、気になるくらい」
「うっとうしいかんじ」
「そうそう」
「いつからいたいの?」
「たぶん、起きたときから……?」
「ねちがえたのかな」
「寝違えたのかも」
「どうしたらいいかな。しっぷはる?」
「お願いできる?」
「うん」
シャツを脱ぎ、うにゅほに背中を向ける。
「はるよー」
「うん」
「ぺたし」
謎の擬音と共に、ロキソニンテープが貼られる。
「あ、たわんじゃった……」
「いいよ、少しくらい」
「ごめんね」
「いいってば。ありがとな」
「うん」
「風呂から上がったら、また貼ってほしい」
「こんどはきれいにはるね」
綺麗だろうが、たわんでいようが、効能が確かならばさほど気にもならないのだが。
変なところで完璧主義なうにゅほである。







684 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:23:58 ID:EA.COn8M0

2020年10月5日(月)

「あめだー……」
雨粒が窓ガラスを叩く。
雨音が心地良い。
「今週、わりと愚図つくみたいだな」
「そなんだ」
「明日が雨、明後日が晴れ、明明後日がまた雨」
「たいふうくるって」
「北海道には届かないと思うけど、気圧がな……」
「うん……」
どうにも気圧の変動に弱い体である。
「きあつでぐあいわるいって、どんなかんじなの?」
「そうだなあ」
しばし思案を巡らせ、答える。
「重力が1.5倍になって、さらに睡眠薬を盛られた感じ……?」
途端、うにゅほが心配顔になる。
「……だいじょぶなの?」
「大丈夫と言えば、大丈夫。悪化して別の病気になることはないから」
「そうかもだけど……」
「台風が近くなって、俺がベッドから出てこなくなったら、察して」
「うん……」
ぽん、とうにゅほの頭を撫でる。
「ごめんな、いつも心配かけて」
「──…………」
「でも、気圧はまだましだよ。動けないし、眠いだけで、苦しくはないから」
「……そなの?」
「これが風邪なり咳なりになると、体力奪われるからな。つらい」
「わかる」
「気圧は避けようがないから、仕方がない。でも、風邪やコロナには気を付けないとな」
「ほんとね……」
「でも、コロナのおかげで──って言うと変だけど、インフルエンザの患者がめちゃくちゃ減ったらしいぞ」
「あ、テレビでみた。すーごいへったって」
「いいことなんだか、なんなんだか」
「いいことだよ」
「……まあ、いいことだな」
トータルで見ると、どうかわからないが。
「外出時には、マスク。帰宅したら、手洗いうがい。徹底しような」
「うん」
ただでさえ病弱なのだ。
これ以上、うにゅほに心配を掛けないようにしよう。







685 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:24:30 ID:EA.COn8M0

2020年10月6日(火)

ぽつ、ぽつ。
愚図つく空から、断続的に雨粒が降り注ぐ。
「きょうもあめ」
「雨は好き?」
「ふつう」
「好きな天気は?」
「はれ!」
「俺も」
「おんなじだ」
「晴れの日は、たいていの人が好きだと思うけどな」
「じゃ、おんなじのさがそう」
「同じの?」
「すきなたべものとか」
「カレー」
「カレーすき」
「同じだな」
「でも、カレーきらいなひといない……」
「いるとは思うけど、少ないな」
「すきなパン」
「甘いのかな」
「わたしも、あまいのすき」
「しょっぱいのは?」
「しょっぱいのもすき」
「同じは同じだけど、狭い範囲で重ならないな……」
「じゃあ、すきなおすし」
「大トロ」
「ほたて……」
「合わない」
「うー」
あ、機嫌悪くなってきた。
「じゃあ、こうしよう」
「?」
「好きな人」
「◯◯」
うにゅほが即答する。
「××」
俺も即答する。
「……うへえー」
うにゅほが、両手でほっぺたを包み、くねくねする。
機嫌が戻ったらしい。
「同じじゃなかったな」
「おなじじゃなくても、いい……」
「ならよかった」
こういうとこ、ちょろい。
でも可愛い。







686 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:24:56 ID:EA.COn8M0

2020年10月7日(水)

「さむみを感じる……」
「かんじる」
「寒くない?」
「はだざむい……」
「十月だしな……」
露出した腕を撫でさする。
「さすがに半袖は、もうつらいか」
「それはそう……」
「だよな」
作務衣の上を羽織る。
「××も、そろそろあれを出す時期じゃないか?」
うにゅほが小首をかしげる。
「あれ?」
「あれ」
「どれ?」
「ほら、厚手のネグリジェ。何枚かあるだろ」
「あー」
うんうんと頷く。
「あれ、あったかいし、らくですき」
「冬の××と言えば、あれだよな」
海外の子供みたいで可愛いのだ。
「最初に買ったとき、サイズが大きすぎて、オバQみたいになってたよな」
「(弟)にすーごい笑われた……」
「あれ、もう捨てたの?」
「うーとね、すそ、ぼろぼろになっちゃったから」
「あー……」
あれだけ長ければ、そうなるだろう。
「何度も裾踏んでたし、転びそうで怖かった記憶があるなあ」
「なんかいか、ころんだきーする……」
「サイズ違いのやつ買えばよかったのに」
「でも、◯◯、かわいいって」
「……言っただろうな」
無責任に。
「可愛いより、安全。これで行こう」
「えー……」
不満げである。
「じゃあ、可愛くて安全」
「それなら」
納得してくれたようだ。
ちょっとくらい危なくても可愛さを求めるあたり、うにゅほも女の子なのだなあ。







687 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:25:50 ID:EA.COn8M0

2020年10月8日(木)

Amazonで注文してあった新しい作務衣が届いた。
「おー……」
うにゅほが作務衣を袋から取り出す。
「くるめおり、だって」
「いい生地じゃん。よさそう」
「きてみて!」
「はいはい」
古い作務衣を脱ぎ捨て、新しい作務衣に袖を通す。
「あ、着心地いいな」
「ほんと?」
「サイズもぴったりだし、これはいいや」
姿見の前に立ち、両腕を左右に伸ばす。
袖の長さもちょうどいい。
「にあう、にあう」
「ならよかった」
「いっちゃくしかかってないの?」
「値段もそれなりにするからな。もし合えば、色違いのを買うつもりだったんだよ」
「なにいろかう?」
「どうしようかな……」
Amazonの注文履歴から、当該ページを開く。
「今回買ったのがネイビーで、残りはグリーンとブラウン」
「あ、グリーンいいいろかも」
「わりといいよな」
かすれた青緑といった様相で、たいへん良い色合いである。
「ブラウンも、わるくないけど……」
「グリーンには劣るかな」
「うん」
「ネイビーとグリーン、色が近いから悩んでたけど、××がお気に入りならグリーンにするか」
「そうしましょう」
喜々として注文を行う。
「でも、ちょっとおたかいね。はっせんきゅうひゃくえん」
「安物買いの銭失い。安いのはすぐ生地が破れたりするものだからな」
「あ、そだ」
名案という顔で、うにゅほがこちらを覗き込む。
「これ、かってあげる」
「××が?」
「うん」
「いや、誕生日でも──」
そこまで言って、ふと思う。
お金を使う機会を奪うのは、よくないのではないか。
使いたいと言うのだから、そうさせてあげるのが正しい行いではないだろうか。
「……じゃあ、買ってもらおうかな」
「うん!」
うにゅほの嬉しそうな顔を見て、俺の判断が間違っていなかったことを確信する。
お金を使う快感というのは、たしかにある。
要は、使い過ぎなければいいのだ。
金銭感覚のしっかりしたうにゅほだから、さして心配もしていないけれど。







688 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:26:15 ID:EA.COn8M0

2020年10月9日(金)

「週、末、だー!」
「わ」
うにゅほを抱き締め、持ち上げる。
そのまま、足が浮き上がって家具にぶつからないよう慎重に回転し、下ろす。
「週末だ!」
「しゅうまつだー!」
「週末と言えば!」
「いえば?」
「寝る」
「かみん?」
「じゃぱん、がばめん、ふぉるもさ、ううろんち、わんかぷ、てんせんす、かみんかみん」
「……?」
「気にしないで。一万人に一人もわからないネタだから」
「そなんだ」
気にするなと言えば、気にしない。
うにゅほは素直である。
「三十分くらい仮眠しようかなって」
「いっしょにねていい?」
「いいけど……」
「うへー」
俺のベッドにダイブしたうにゅほが、自分の隣をぽんぽんと叩いた。
眼鏡を外し、うにゅほの隣に潜り込む。
「はい、あいますく」
「ありがとう」
「つけてあげるね」
「いや──」
受け取ろうとするのだが、問答無用で着けられる。
「──…………」
なんだろう。
今日のうにゅほは、母性に溢れている。
「はい、ねましょうね」
ぎゅ。
顔が、それなりにふくよかな胸に包まれる。
良い香りがする。
「いいこ、いいこ」
実の親にだってされた覚えのない可愛がられ方をしながら、そのまま意識が溶けていく。
たった三十分の仮眠であったにも関わらず、三時間寝たような気分だった。
睡眠の質をよくする鍵は、うにゅほにあったのかもしれない。







689 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:26:55 ID:EA.COn8M0

2020年10月10日(土)

「──10月10日か。昔は体育の日だったんだけどな」
「じゅうがつとおかだっけ」
「今は第二月曜日になったから」
「あー」
「あと、名前が変わってスポーツの日になった」
「……あれ?」
うにゅほが小首をかしげる。
「しちがつくらいに、あったきーする」
「東京オリンピック関連で、七月にずらしたんだよ」
「そなんだ」
「だから、今年は十月に祝日がない」
うにゅほがカレンダーに視線を向ける。
「ほんとだ……」
「ずらすんじゃなくて、増やしてくれればよかったのに」
「ほんとだね」
怨嗟の声も届きはしない。
「ただ、今日は語呂合わせもいっぱいあるみたいだぞ」
「あてる!」
「どうぞ」
「──…………」
しばし思案し、うにゅほが口を開く。
「ととで、おとうさんのひ……?」
思わず苦笑する。
「だから、父の日は別にあるって」
「そだった……」
「でも、そんな感じ」
「──…………」
再び思案し、
「せん、とおで、せんとうのひ……」
「正解」
「やた!」
「他にも、スポーツ振興くじのtotoの日とか、トートバッグの日とか」
「とと、はあってたんだ」
「Tenと十で、転倒防止の日とか、お好み焼きをジュージュー焼くからお好み焼きの日ってのもある」
「おこのみやきいがいも、じゅーじゅーなるとおもう……」
「それは、うん」
記念日界ではよくあることだ。
「萌えの日、なんてのもあるぞ」
「もえ?」
「漢字で十月十日を組み合わせると、"萌"の字になるから」
「あー!」
うにゅほが、うんうん頷く。
「きれい」
「すっきりパターンだな」
「うん、すっきりパターン」
うにゅほ的に高得点だったらしい。
このように、上手いこと言った感じの記念日が増えてくれないものか。







690 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:27:20 ID:EA.COn8M0

2020年10月11日(日)

昼過ぎに起床し、朝食を求めて階下へ向かう。
「あ、おはよー」
リビングでテレビを眺めていたうにゅほが、俺に向かって微笑んだ。
「おはよ。何見てんの?」
「なんかニュースのやつ」
特にこだわりがあって見ているわけではないらしい。
「父さんと母さんは?」
「きょう、ゴルフだって」
「あー」
そんなこと言ってたっけ。
台所へ向かうと、食パンが半斤置いてあった。
「……?」
だが、やけにサイズが小さい。
普通の食パンより、二回りほど細い。
袋から一枚取り出し、よく見てみると、薄い黄色をしていることに気付く。
高級な食パンなのだろうか。
そういうこともあるだろうと、コップに牛乳を注ぎ、食パンを口に運ぶ。
「──あっま!」
高級な食パンの自然な甘み、ではない。
明らかに砂糖の甘さだ。
「××、この食パン甘いんだけど……」
「?」
うにゅほがこちらへやってくる。
「××は食べた?」
「たべてない……」
「食べてみ」
「うん」
うにゅほの口に食パンを運ぶ。
あむ。
「……あまい」
「甘いよな」
「これ、しょくパン……?」
「ええと……」
食パンの袋を確認する。
小さなラベルには、
「……角食風カステラ」
と、書かれていた。
「これ、カステラなの」
「そうみたい」
「こんなカステラ、あるんだ」
「俺も初めて食べた……」
なるほど、カステラと言われればカステラの味だ。
食パンだと思って食べたから異常に甘く感じたが、これはこれで美味しい。
「なんか、マーガリン塗って焼きたくなるな」
「やく?」
「いや、普通のパンより脆いし、上手く塗れないと思う」
「そだね……」
マーガリンまみれのぼそぼそが散乱する未来しか見えない。
二枚ほど食べて満足し、うにゅほと一緒に自室へ戻った。
二度寝した。







691 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:27:48 ID:EA.COn8M0

2020年10月12日(月)

「◯◯」
PCに向かって作業していると、うにゅほが俺の顔を覗き込んだ。
「どした」
「わかんないことばあって」
「なに?」
「みかじめりょう」
「みかじめ料……」
何故そんな言葉を。
「えーと、暴力団とかに払うお金、かな」
「ぼうりょくだん……」
「お店を出店するときに、その地域の暴力団が回収しに来るんだ。みかじめ料を払えば見逃してやる、払わなければ知らないぞって」
「いいの……?」
「ダメ」
「だよね」
「一種の恐喝だよな。払わないと嫌がらせするってんだから」
「けいさつは?」
「地域によるんじゃないかな。警察の立場が弱い場所もあるし」
「こわいね……」
「怖いけど、お店を出す予定ないからな?」
「そだけど」
うにゅほの頭をぽんぽんと撫で、ふと思う。
「……みかじめってなんだろ」
「なんだろ」
「調べてみるか」
「うん」
調べてみた。
「──みかじめは、管理、監督、取り締まりって意味の言葉らしい」
「とりしまられるほう……」
「それは、うん」
その通りではある。
「元々は、用心棒をしてやるから金を寄越せって感じだったみたい」
「へえー」
「今となっては別に用心棒を雇いたいくらいだから、皮肉な言葉だよな」
「じんじゃとかにはらうおかねだとおもってたのに……」
「響き的に?」
「うん」
わからないではない。
みかじめ料、できれば一生関わり合いになりたくないものである。







692 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:28:12 ID:EA.COn8M0

2020年10月13日(火)

目の前を羽虫が横切った。
蚊だろうか。
この時期に珍しいと思いながら、両手で羽虫を叩き潰す。
「……?」
死なない。
蚊にしては、随分と頑丈だ。
改めてよく見てみると、
「──羽アリだ」
「えっ」
うにゅほが目をまるくする。
「あり、いたの……?」
「××、最近窓開けた?」
「あけてない……」
「──…………」
「──……」
では、この羽アリはどこから侵入したのだろう。
俺たちには、覚えがある。
リフォーム以前、どこかから溢れるように自室に現われたアリの群れ。
もし同じルートを辿ったのであれば──
「……◯◯ぃ」
うにゅほが、不安げに、俺の肩に手を乗せる。
「大丈夫──だと、思う」
「ほんと?」
「去年にも、羽アリが部屋に迷い込んできたことあったろ」※1
「……あった」
「あのときも大丈夫だったし、何より、アリはこれから冬眠の時期だ。冬場に活動するアリはいない」
「うん……」
「ルートがあるのは確かだけど、たまたま迷い込んできただけだよ」
「……そか」
うにゅほが、安心したように微笑む。
「──…………」
そうは言ったが、確証はない。
人にとっては密閉空間でも、アリからすれば隙間だらけだ。
道しるべフェロモンでルートを確立されてしまえば、全面戦争の始まりである。
生ゴミやお菓子のカスは放置するべからず。
読者諸兄も気を付けてほしい。

※1 2019年8月6日(火)参照
 







693 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:28:39 ID:EA.COn8M0

2020年10月14日(水)

「──…………」
うにゅほがそわそわしている。
具体的に何かをしているわけではないのだが、雰囲気でわかる。
俺くらいになると、理由までわかる。
「××」
「?」
「明日が楽しみで仕方ないんだろ」
「!」
明日は、うにゅほの誕生日だ。
俺たちが出会ってから九年目の記念日でもある。
「もちろん、誕生日プレゼントは既に買ってあります」
「なんだろ……」
「それは明日のお楽しみ」
「……うへー」
たいへん嬉しそうで、たいへん可愛い。
「どこか食べに行きたいとか、あるの?」
「うと」
しばし思案したのち、うにゅほが答える。
「ケーキたべたい……」
「ケーキは不二家で予約してあるぞ」
「やた!」
「特になければ、いつものステーキハウスになるけど」
「うん、いいよ」
「了解」
行きつけのステーキハウスは、平日であれば予約の必要もない。
並ぶことはまずないだろう。
「──ところで、話は変わるんだけどさ」
「?」
「今って、六時五十分だっけ……」
「いま、しちじ──」
うにゅほが、壁掛け時計を見上げる。
「……ろくじごじゅっぷんだ」
「違うよな」
「ちがうきーする……」
うにゅほがスマホを取り出し、時刻を確認する。
「しちじじゅっぷんだもん」
「やっぱりか」
よく見れば、秒針がやっとこさ動いている。
電池切れだ。
「電波時計欲しいなあ……」
「かう?」
「そのうち」
そのうちそのうちと思い続けて、もう数年経っている気がする。
我ながら、さっさと買ってしまえばいいのに。
 







694 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:29:01 ID:EA.COn8M0

2020年10月15日(木)

「ふひー……」
ぽん、ぽん。
うにゅほが、自分のおなかを撫でる。
「おなかいっぱい……」
「随分食べたなあ」
「うん」
今日は、うにゅほの誕生日。
いつものステーキハウスでたらふく肉を食べたのだった。
「えい」
おなかを軽く押す。
「ふぐ」
あ、苦しいときの声だ。
「おさないでー……」
「ごめんごめん」
「もー」
「(弟)からのプレゼントは、なんかお菓子の詰め合わせだったよな」
「うん。なんか、かわいいの」
「父さん母さんからのは?」
「うと、こすめせっとだって」
「化粧品か」
「たぶん……」
「たぶんて」
まあ、うにゅほは普段からノーメイクだしなあ。
「では、俺からのプレゼントを」
「わ!」
待ってましたとばかりに、うにゅほが姿勢を正す。
ベッドの裏から包みを取り出し、
「誕生日おめでとう!」
と言って、うにゅほに手渡した。
「あけていい?」
「開けてくれ」
「はーい!」
うにゅほが、がさごそと包みを開く。
「ふくだ」
「服だよ」
「もこもこしてる」
「その通り。ジェラピケのイヌモコルームウェアだ!」
「みみついてる、かわいい……」
「そうだろう、そうだろう」
いつかうにゅほにジェラピケを着せるのが俺の野望だったのだ。
「きていい?」
「着てくれ」
「はーい!」
いったん自室を出て、うにゅほの着替えを待つ。
しばしして、
「いいよー」
「ああ」
わくわくしながら自室へ戻ると、可愛い生き物がいた。
犬耳パーカーをかぶり、
「わん!」
と鳴く、もこもこした生き物だ。
「かわ……!」
鼻血が出そう。
「うへー、かわいい……」
「可愛い。買ってよかった……」
うにゅほへのプレゼントと言うより俺への御褒美だが、構うまい。
これで毎日眼福である。
 







695 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/10/16(金) 01:29:52 ID:EA.COn8M0

以上、八年十一ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2020年10月17日 19:33  ID:dE2odAZ30
    これを見に来た


  • 2  Name  名無しさん  2020年10月17日 19:42  ID:qPNkLAeT0
    このために来てる


  • 3  Name  名無しさん  2020年10月17日 19:54  ID:wvT4CWVi0
    >>1
    嘘松


  • 4  Name  名無しさん  2020年10月17日 20:15  ID:.tY5LdLU0
    いつまでも過去振り返ってばかりなとしあきより作者の方が人間性は上だよな
    糞閻魔だかwa4だか繰り返して「プスなあ」とか「うnうn」「知ってる?」って
    少しでもウケたスレは定期的に立て直して
    みんなそれに飛びついて同じような内容のレスをまたひたすら繰り返す
    とっくの昔にサ終したCBスレですら毎日立て直して毎日同じような話を繰り返して
    いつまでも今と向き合えないとしあきより現実と向き合って毎日話題を作れる作者の方がずっと上


  • 5  Name  名無しさん  2020年10月17日 20:25  ID:Bjx6tq3O0
    >>4
    作者乙
    下との比較なんてしても客観的評価は変わらんぞ?


  • 6  Name  名無しさん  2020年10月17日 20:37  ID:OLBrmhl10
    受け入れた八雲紫の責任問題定期


  • 7  Name  名無しさん  2020年10月17日 20:49  ID:NA9Sm6jQ0
    冷静に考えると八年十ヶ月てヤバない?
    神霊廟辺りからずっと続けてるんだぞ


  • 8  Name  名無しさん  2020年10月17日 21:00  ID:n.h912i60
    観測所管理人:お空をお題にした怪文書を何度も晒し上げてヘイトを集める

    おねえちゃんまとめ管理人:地霊殿ファンを自称しながら人気投票でお空にだけ投票せず余った票はモブ妖精に入れる。理由は「人気が下がりそうなキャラに入れたかったから」。なお結果は地霊殿組でお空だけ順位が下がっていた

    アニメイト:東方コラボカフェで紅魔勢と地霊勢ばかり取り上げるもののお空(と美鈴)は集合絵にすら入れない

    公式:智霊ではさとりとお燐が活躍するもお空は全然出てこれず


  • 9  Name  名無しさん  2020年10月17日 21:08  ID:7s1HnDFX0
    >>4
    現実と向き合ってたらこんなもん書かないだろw


  • 10  Name  名無しさん  2020年10月17日 21:21  ID:LVDAZjsy0
    ウケてもないのに上げ続ける作者よかマシだしとしあき叩きもつまらないからやめろ


  • 11  Name  名無しさん  2020年10月17日 21:22  ID:LVDAZjsy0
    >>4
    ウケてもないのに上げ続ける作者よかマシだしとしあき叩きもつまらないからやめろ


  • 12  Name  名無しさん  2020年10月17日 21:50  ID:lZPLIttP0
    管理人の家族を解放しろ


  • 13  Name  名無しさん  2020年10月17日 22:03  ID:X.v18HTU0
    高田健志は宇宙そのものだ。地球は彼の胃袋の中に在り、我々はただ消化されるのをじっと待つ肉の塊でしかない。我々はその全体像を把握できないまま、緩慢な死を迎えるのだ。


  • 14  Name  名無しさん  2020年10月17日 22:13  ID:AS50hl2.0
    やっと見れて安心したゾ


  • 15  Name  名無しさん  2020年10月17日 22:38  ID:QgSZa2vf0
    >>4
    どこを縦読みすればいいの?


  • 16  Name  名無しさん  2020年10月17日 23:50  ID:7Xblme080
    なんで10/15がお空の誕生日なの?


  • 17  Name  名無しさん  2020年10月18日 00:12  ID:zoht8X.e0
    あー、うん
    なんか・・・ごめんね・・・?
    としあきもそーゆうことするもんね・・・お、男の子だもんね・・・







    シネ


  • 18  Name  名無しさん  2020年10月18日 02:17  ID:wpze.9l90
    これのせいでお空見たらうわあって思うようになったわ


  • 19  Name  名無しさん  2020年10月18日 10:18  ID:IwsHDu8s0
    定期的な深淵観察


  • 20  Name  名無しさん  2020年10月18日 10:33  ID:1LQ67wxP0
    コメ蘭だけ見に来た


  • 21  Name  名無しさん  2020年10月18日 11:46  ID:BTRO.bo20
    お空ちゃん、変な奴に粘着されて可愛そう
    名誉毀損で訴えたほうがいい


  • 22  Name  名無しさん  2020年10月18日 12:25  ID:Nevq2VAr0
    >>21
    何も無条件で粘着しているわけではない

    我々も「この作品を掲載していただけないでしょうか」と事前にお伺いを立てている

    どういった文章を掲載するかという決定権はお空さんサイドにある

    その上でご自分の意志で掲載していらっしゃるのだからすなわち責任はお空さんサイドにある

    なぜ我々が責められなければならないのか

    なぜ我々がお空さんに謝罪せねばならないのか

    むしろお空さんこそが我々に謝罪すべきではないだろうか


  • 23  Name  名無しさん  2020年10月18日 12:45  ID:SrrjGAXe0
    >>7
    神霊廟が9年前…?嘘だろ…?


  • 24  Name  名無しさん  2020年10月18日 12:46  ID:0ufQuBAx0
    二次創作で一番きらい


  • 25  Name  名無しさん  2020年10月18日 13:03  ID:rHK7xybV0
    今回のコメント欄は特に品が無いな。


  • 26  Name  名無しさん  2020年10月18日 14:26  ID:ofEf3QPB0
    継続は力なり


  • 27  Name  名無しさん  2020年10月18日 16:51  ID:cFNUJuB00
    >>6
    もう一回土下座したほうがいいレベル


  • 28  Name  名無しさん  2020年10月18日 20:10  ID:lWUEJu3e0
    これ作者がここの管理人なんだよね


  • 29  Name  名無しさん  2020年10月20日 16:51  ID:qgmUHXlK0
    これの更新がされると、ああ今月もそんな時期か、
    という気がする


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