2020年11月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



713 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 18:59:13 ID:guiw0n2E0

2020年11月1日(日)

キーボードが薄汚れてきたため、綺麗に掃除することにした。
キープラー片手にキートップをすぽんすぽん引き抜いていると、
「あ、そうじするの?」
「だいぶ汚くなってきたからな」
「わたしもぬきたいな」
「いいけど」
どうにも気持ち良さそうな作業に見えるらしい。
「やり方、わかるか?」
「うん、おぼえてる」
うにゅほが、キープラーの針金を、キートップの角に引っ掛ける。
「ん!」
と引っ張るが、外れない。
「ぬけない……」
「そうそう壊れないから、もっと力込めていいぞ」
「わかった」
うにゅほが、再度力を込める。
やがて、Mキーがすぽんと抜けた。
「ぬけたー!」
「コツ掴んだか?」
「うん」
「じゃ、悪いけど引き抜いててくれないか。俺はキートップ拭いてるから」
「わかりました!」
仕事を与えられたのが嬉しいのか、うにゅほがやる気満々で取り掛かる。
うにゅほが引き抜いたキートップを、流れ作業で拭き清めていく。
やがて、
「──これ、とっていいもの?」
と、うにゅほがキーボードを指差した。
覗き込むと、その指は、スペースキーを指し示していた。
「キープラー、引っ掛からない?」
「すっごくむりしたら……」
「無理していいよ。××が思ってるより丈夫だから」
「うん……」
「まごまごしてると、俺が抜いちゃうぞ」
「──…………」
うにゅほが、残念そうな顔をする。
「嘘だよ。でかいの引き抜くの、なんかわくわくするもんな」
「うん!」
図星だったらしい。
「じゃ、キープラーを限界まで広げて──」
うにゅほが、指示通りに、キープラーをスペースキーの角と角とに引っ掛ける。
「えい!」
す……、ぽん!
「ぬけた!」
少々引っ掛かったが、無事に取れた。
「おめでとう」
「うへー」
「拭くのも手伝ってくれるか」
「うん!」
うにゅほのお手伝いによって、キーボード掃除はたいへん捗ったのであった。








714 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 18:59:42 ID:guiw0n2E0

2020年11月2日(月)

「──……?」
LINEに珍しく通知が来ていた。
開くと、
「ヤマトだ」
「やまと?」
「クロネコヤマト」
「くろねこやまとと、らいんこうかんしたの?」
「した覚えないけど……」
ないけど、来るのだ。
「登録した記憶もないのに、荷物のお届け予定のお知らせが届くんだよな」
「え、こわい……」
「うん、ちょっと怖い」
どこから個人情報が漏れ出しているのだろう。
「しらべたほうがいいきーする……」
「……そうだな」
以前から気になってはいたし。
適当に検索すると、ヤマト運輸のFAQにそれらしい質問を見つけることができた。
"友だち登録していないのに、ヤマト運輸LINE公式アカウントから荷物のお届け予定が届きました。なぜですか"
このFAQによれば、
「LINEアプリに登録してる電話番号情報と、荷物の送り状に書かれてる電話番号情報を照合して送ってるらしい」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「そういうの、いいんだ」
「いいみたい。よくわからないけど」
おかしな形で個人情報が流出したわけではないが、どこか腑に落ちない感じもする。
「便利は便利だけど、なんか素直に喜べない……」
「わかるきーする」
「通知を切れば来なくなるんだけど、そういう問題じゃないんだよな。上手く言葉にできないけど」
「うん……」
なんとなく、もやっとする。
だが、それは、俺が古い人間だからなのかもしれない。
恐らく、今の十代は、この違和感を理解できないだろう。
妙なところで年齢を感じるのだった。







715 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:00:19 ID:guiw0n2E0

2020年11月3日(火)

今日は祝日、お休みである。
「……今日、何の日だっけ?」
「うと」
うにゅほがカレンダーを覗き込む。
「あ、まだじゅうがつ」
「めくっといて」
「はーい」
カレンダーをめくり、改めて確認する。
「ぶんかのひ、だって」
「文化の日……」
記憶を探る。
「……そんな日、あったっけ?」
「あったよー」
「地味じゃない?」
「じみとはおもう」
「地味でもなんでも、祝日は嬉しいけどさ」
「だね」
「……他にも忘れてる祝日あるのかな」
「しらべてみる?」
「ああ」
"国民の祝日"で検索し、Wikipediaを開く。
「元日」
「がんじつ、しゅくじつなの?」
「いちおうな」
「へえー」
「成人の日は、わかるだろ」
「わかる」
「建国記念の日」
「いつかわかんないけど、あったのはわかる……」
「2月11日だって」
「へえー」
うんうんと頷く。
「天皇誕生日。令和になったから、2月23日にずれたな」
「うん、わかる」
「春分の日、秋分の日」
「だいたいわかる」
「……なんで、夏至と冬至は祝日じゃないんだろうな」
「さあー……」
「昭和の日──昭和の日? そんなのあったっけ」
「あったよー」
「……あ、元みどりの日なのか」
「そなの?」
「あれ、みどりの日はみどりの日で別にある。どういうこっちゃ」
「うーん」
「こどもの日は、わかる」
「わかる」
「海の日はわかるし、山の日は最近新設されたんだよな」
「たしか」
「敬老の日はわかるし、体育の日がスポーツの日に名前変わったのも覚えてる」
「ことしだけ、ずらしたんだよね」
「東京オリンピック、開催できそうにないけどな」
「うん……」
「で、十一月の文化の日と勤労感謝の日で、国民の祝日はおしまい」
「あれ、じゅうにがつは?」
「令和になって天皇誕生日が変わったから、祝日はないよ」
「あ、そか」
「改めて調べてみると、文化の日と昭和の日の記憶が曖昧だったな……」
うにゅほが小さく胸を張る。
「わたし、おぼえてた」
「すごいすごい」
「うへー」
2007年に新設された昭和の日はともかく、生まれたときからあった文化の日を覚えていなかったのは、少々情けない。
こうして日記にしたためたからには、覚えられるだろうか。
来年も同じこと言ってたりして。
 






716 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:01:07 ID:guiw0n2E0

2020年11月4日(水)

初雪が降った。
「あき、みじかかったね」
「夏を九月の半ばまでとすると、秋は一ヶ月半だからな」
「みじかい……」
「長い長い冬の始まりだ」
「ゆきかきしないと」
ふんす。
鼻息荒く、うにゅほが言った。
「今年もまた、賽の河原で石積みか……」
「うんどうになるよ」
「単純に運動するだけなら、リングフィットでいいじゃん」
「リングフィット、さいきんしてない」
「──…………」
痛いところを突かれた。
「やらないとなあ……」
「ねー」
「習慣づけると楽なんだけど、習慣づくまでが大変なんだよな」
「にっきとか?」
「そうそう」
「にっき、かいたりかかなかったりになっちゃう……」
うにゅほは、スマホで日記を書いている。
「ちゃんと続いてるんだ」
「いちおう……」
「偉い偉い」
頭を撫でる。
「でも、だんだんみじかくなってきて……」
「見ていい?」
「いいよ」
うにゅほが自分のスマホを取り出し、日記を開く。

11月3日
文化の日だった

「──…………」
カレンダー?
日付を遡る。

11月2日
荷物届いた
サラダチキンたくさん
冷蔵庫になんとかはいった

「……前、もっと書いてなかったっけ」
「かいてた……」
「書くことなくなっちゃったか」
「◯◯、すごいね。まいにちあんなにかくんだもん」
「そこは慣れかな」
うにゅほとの生活も、そろそろ九年だ。
十年目が見えてきた。
随分と年を取ったなあ。







717 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:01:35 ID:guiw0n2E0

2020年11月5日(木)

「ただいまー」
「おかえり!」
帰宅し、自室の壁掛け時計を見上げると、午後五時過ぎを指し示していた。
「……?」
スマホを取り出し、時刻を確認する。
午後五時四十分。
「とけいね、ずれてるの」
「電池、換えたばかりなのに」
「うん……」
「壊れたかな」
「そうかも」
「──…………」
思案し、
「よし、電波時計を買おう」
「!」
「欲しい欲しいと思って何年も経ってるし、いい機会だ」
「でんぱどけいって、ずれないやつだよね」
「ずれない──というか、正しい時刻に自動で補正されるって言い方が正しいかな」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「よどばし、いく?」
「うーん……」
行きたいのは山々なのだが、仕事が増えて余裕がない。
「ネット通販にするか……」
「おつかれ?」
「うん」
「じゃ、そうしましょう」
「ごめんな」
「あやまることないのに」
うにゅほが苦笑する。
「……ポイントあるし、ヨドバシドットコムにしようか」
「だめなとこ……」
「でも、ポイントあるし」
俺も、うにゅほも、ヨドバシドットコムのサポートに良い印象を持っていない。
だが、ヨドバシであれば、ポイントだけで購入できてしまうのだ。
「まあ、それはいいとして──」
"電波時計 壁掛け"で検索をかけると、516件ヒットした。
「たくさんあるけど、どれがいい?」
「すごいある……」
「××が決めていいよ」
「わたしが?」
「うん」
普段は俺がすぐに決めてしまうから、たまにはいいだろう。
「うと……」
「急がなくていいよ。ゆっくり決めてくれれば」
「うん、わかった」
うにゅほのスマホを借り受け、ヨドバシドットコムのページを開く。
「いいの、えらぶね」
「××のセンスの見せどころだな」
「プレッシャー……」
さて、うにゅほはどんな時計を選ぶのか。
期待しつつ、本日の日記を終える。
 







718 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:02:15 ID:guiw0n2E0

2020年11月6日(金)

「◯◯……」
「ん?」
うにゅほが、スマホを手に、緊張の面持ちで立っている。
「どした」
「あの、とけい……」
「ああ、決まったのか」
「うん」
「どれ?」
「うと……」
そっと、スマホを差し出す。
「これ、ほしい……」
そこに表示されていたのは、アイボリーの四角い掛け時計だった。
シンプルなデザインで、どこにでも合いそうだ。
「お、センスいいな」
「……ほんと?」
「俺はそう思うよ」
「うへー……」
うにゅほが、てれりと笑みを浮かべる。
「あ、ひとついいか?」
「なに?」
「"これ欲しい"って、もっかい言って」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「××って、あんまり物を欲しがらないからさ。たまにはねだられたくて」
「いいけど……」
よくわからない、という顔をしながら、うにゅほが口を開く。
「これ、ほしい……」
「もう一度」
「これ、ほしい」
「あと一回」
「これ、ほしいなー」
「よし、なんでも買ってやるぞ!」
「◯◯、たまに、そのモードになるよね」
「××を甘やかしたいんだよ……」
「あまやかされてるきーする……」
「それ以上に健気だから、釣り合いが取れない」
「そかな」
「そうだよ」
これからも、隙を見ては、うにゅほを甘やかしていきたい所存である。







719 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:02:49 ID:guiw0n2E0

2020年11月7日(土)

「××さん」
「はい?」
「今日は何の日でしょー……、か!」
「なんのひしりーずだ」
うにゅほが、カレンダーに目を向け、今日の日付を確かめる。
「じゅういちがつ、なのか」
「11月7日」
「……いいなのひ?」
「惜しい」
「おしいんだ……」
「"いい"までは合ってる」
「じゅういちがつ、ぜんぶそれ」
「たしかに……」
十一月の語呂合わせは、九分九厘、"いい◯◯の日"だ。
作りやすいんだろうな。
「うーとね」
しばし思案し、うにゅほが答える。
「いいなべのひ、とか……」
「お!」
「せいかい?」
「正解は、"い(1)い(1)もつな(7)べ"の語呂合わせで、もつ鍋の日でした」
「──…………」
うにゅほが、見たこともないような複雑な表情を浮かべる。
「もつ、どこからでてきたの……」
「さあー……」
「それいいなら、なになべでもいいとおもう」
「キムチ鍋でも、坦々ごま鍋でもいいよな」
「もやもやパターン……」
また新しいパターンが出てきた。
だが、気持ちはわかる。
「すっきりパターン、ないの?」
「普通に鍋の日でもあるよ」
「えー……」
「でも、こっちは語呂合わせじゃないんだよ」
「ちがうの?」
「11月7日が、立冬になる年が多いから、だって」
「いいなべのひ、じゃないんだ……」
「微妙にもやっとするよな」
「もやっとする」
「それが、大人になるということさ」
「てきとういってる」
バレた。
でも、理解されているようで、それもまた嬉しいのだった。
 







720 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:03:15 ID:guiw0n2E0

2020年11月8日(日)

荷物が届いた。
うにゅほが、そわそわしながらダンボールを開封していく。
「とけいかな……」
「たぶん」
恐らく、二日前に注文した壁掛け時計だろう。
うにゅほが選んだものだ。
いささか過剰包装気味の箱を開くと、
「わ」
アイボリーの四角い掛け時計が現れた。
「けっこうおっきい……」
「近くで見ればそんなもんだよ」
うにゅほが、壁掛け時計を手に取る。
「……いいね」
「そうだな」
「いいよね?」
「ああ、いいと思う。掛けてみようか」
「うん!」
三十分前の時を刻む壁掛け時計を外し、新しい電波時計を設置する。
「おー……」
うにゅほが、感嘆の声を上げる。
「いいね……」
「うん」
「……いいよね?」
「壁の色に馴染んでるし、質感も壁紙に似てる。気に入りました」
「うへー……」
てれりと笑う。
「時計ひとつ変わるだけで、部屋の雰囲気がぐっと変わる気がする」
「わかる」
もっとも、住んでいる当人にしかわからない程度の微妙な差異に過ぎないのだろうけど。
電波時計を設置してしばし、
「──…………」
ちら。
時折、用もないのに電波時計を見てしまう。
「なんか、つい見ちゃうな」
「みちゃう」
「いいな、この時計」
「いいよね……」
お気に入りの時計になりそうである。
 







721 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:03:45 ID:guiw0n2E0

2020年11月9日(月)

──遠雷。
空が輝き、轟音が響く。
雷を伴った雪のことを、雷雪と称する。
珍しい気象現象だ。
「ひ」
うにゅほが俺の腕を抱く。
無理もない。
吹雪で家は軋み、遠くでは雷が鳴り響いているのだ。
片方だけなら慣れたものだが、その両方ともなると、キャパシティが限界を超えるらしい。
「抱き着いてないで、膝に座るか?」
「すわる……」
うにゅほを膝に乗せ、その矮躯を抱き締める。
「ふいー……」
「すこしは落ち着いたか?」
「うん」
「雷雪なんて、久し振りだな」
「らいせつ……」
「雷を伴った雪のこと」
「めずらしいきーする」
「滅多にないよ」
「だよね」
日記を確認すると、八年ほど前に一度だけ記述があった。
希有な現象であることは確かだ。
「──しかし、冷え込んだよなあ」
「うん……」
外はもう雪景色。
たったの一日で、完全に冬である。
「初雪は根付かないから一時的なものだろうけど、本格的に冬が来たって感じがするよな」
「ほんとだね」
「今日の日記、なんて書くんだ?」
「うと、ゆきふったことと、かみなりなったことと、さむくなったこと、かく」
「書くことたくさんだな」
「うん」
「怖くて俺に抱き着いてたことは書かないのか?」
「……かかない」
「書けばいいのに」
「ちょっとはずかしい……」
可愛いので、抱き締める腕に力を込める。
「まだ怖い?」
うにゅほが首を横に振る。
「こわくないよ」
「よかった」
うにゅほにとって、俺は、恐怖を和らげるに足る存在なのだ。
どこか誇らしい気持ちになるのだった。







722 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:04:23 ID:guiw0n2E0

2020年11月10日(火)

本日の日記を書くため、キーボードに向かう。
「──……?」
手が動かない。
「あれー……」
「どしたの?」
「書くこと忘れちゃった」
「わすれちゃったの……」
「今日、何あったっけ」
「うと」
うにゅほが、小首をかしげ、思案する。
「あさおきたら、◯◯、もうおきてた」
「起きてたというか、ぜんぜん眠れなかったんだよな……」
「ねないでかいしゃいったの……」
「一時間くらいは横になったけど」
「それ、ねたっていわない」
「はい……」
「でも、ねれないの、しかたないし……」
「あんだけ目が冴えて眠れないの、久し振りだったよ」
「ねむり、あさいけど、ねるのはやいのにね」
「お茶飲み過ぎたかな……」
「そうかも」
健康のため、ペプシをやめてお茶を飲むようにしたのだが、こんなところで弊害が出るとは思わなかった。
「かえってきて、かみんとって、しごとしたよね」
「したした」
「なんかあったっけ……」
「荷物が来たくらい?」
「あ、にもつきたね」
「(弟)のな」
「なんだったんだろ」
「漫画だろ、たぶん」
「そか」
「夕方にまた出勤して、退勤して、帰ってきたのが六時過ぎかな」
「にかいもいくの、たいへん……」
「ずっと会社で仕事してる人たちのほうが大変だと思う」
「それは、うん」
「××も寂しがるしな」
「それも、うん……」
「で、夕飯食べて、風呂入って、だらだらしたらこんな時間だろ」
「そだね」
「なーんか書くこと決めてたと思うんだけど……」
「わすれちゃった」
「忘れちゃった」
「そのままかいたら?」
「そのまま書くか……」
そのまま書いた日記がこちらになります。
このくらいゆるいほうが、日記は続けられるのである。






723 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:04:49 ID:guiw0n2E0

2020年11月11日(水)

「あけてー」
「?」
廊下からの声に自室の扉を開くと、うにゅほが冬用の羽毛布団を抱えて立っていた。
「ありがと」
「夏布団じゃ限界だったもんな……」
「さむい」
「手伝うよ」
「じゃあ、なつぶとん、カバーとってね」
「わかった」
二人ぶんの夏布団からカバーを外していく。
ずれ防止用の紐を外すのが面倒だが、なければないで困るものだ。
「これ、洗濯に出してくるよ」
「はーい」
階下へ降り、脱衣所の洗濯カゴに布団カバーを丸めて入れる。
自室へ戻ると、うにゅほが、新しい布団カバーに上半身を潜り込ませていた。
ずれ防止紐を結んでいるらしい。
「──…………」
小さなおしりが揺れている。
俺は、気付かれないようゆっくり近付くと、
──ぺぺぺぺぺぺん!
「わ!」
うにゅほのおしりを、痛くない程度に、両手で連打した。
「なんでおしりたたく……」
「いや、なんか可愛かったから」
「──…………」
数秒の沈黙ののち、
「かわいいっていったら、なんでもごまかされるわけじゃないよ……?」
誤魔化されかけていた気もするが。
「ごめんごめん」
「いいけど」
「いいんだ」
──ぺぺぺぺぺぺん!
「わ!」
「いいって言うから」
「そういういいじゃないよー……」
「ははは」
「もう、じゃましないでね」
「はーい」
冬用の羽毛布団は分厚くて、いかにも暖かそうだった。
寝るのがちょっと楽しみである。






724 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:05:22 ID:guiw0n2E0

2020年11月12日(木)

「ふひー……」
帰宅し、ベッドに倒れ込む。
「おつかれ?」
「お疲れ……」
今日は一日、外仕事だった。
歩き仕事のようにわかりやすく疲れるわけではないが、それでも普段よりは疲弊する。
出勤するようになったとは言え、基本は在宅ワーカー。
体力があろうはずもない。
「……ちょっと寝る」
「ふく、きがえたほういいよ」
「めんどい」
「うと……」
うにゅほが困っているのが気配でわかる。
「……仕方ない」
ふらふらと立ち上がり、作務衣に着替える。
「ごめんね、つかれてるのに……」
「いや、××が俺のために言ってくれたのわかるから」
事実として、普段着よりも作務衣のほうが楽だ。
休むのであれば、着替えたほうがいい。
「──うん、こっちのほうがいいや」
改めて、ベッドに倒れ込む。
「ありがとうな、××」
「ふくでねたら、ごわごわするから」
わかる。
「でも、着替えたおかげで眠気が取れたかも」
「う」
うにゅほが固まる。
「さしでがましいことをもうしまして……」
「どこでそんな言葉を」
「……ごめんね」
「いや、謝ることないけど」
「うと、ひざまくらとかしたら、ねれる……?」
何か勘違いしている。
眠気があったから横になりたかっただけであって、別に寝たかったわけではないのだ。
眠気が取れたのなら、それはそれでいい。
だが、それを口にしても、うにゅほは納得しないだろう。
数秒ほど思案し、
「じゃあ、抱きまくらになって」
「……いいの?」
「なりなさい」
「はい」
うにゅほを胸に抱き、羽毛布団に潜る。
「あったかー……」
「羽毛布団に加えて、湯たんぽまでいる。暑いくらいかも」
「あつかったらいってね」
「体温調節できる?」
「ふとん、ばさばさする」
「……できるかな、それ」
抱き締めてるのに。
「ま、いいや。おやすみ」
「おやすみなさい」
そのまま一時間ほど仮眠を取り、起きたころにはお互い汗だくだった。
同衾には早かったかもしれない。
 







725 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:05:48 ID:guiw0n2E0

2020年11月13日(金)

──カシュッ!
缶チューハイのプルタブを開く。
「今週も、頑張りました!」
「おつかれでした!」
「いえー!」
「いえー!」
イヌモコうにゅほとハイタッチを交わす。
缶チューハイをひとくちあおり、
「金曜日の夜に飲むチューハイは美味いなあ……」
と、しみじみ呟いた。
「そんなにおいしい?」
「ひとくち飲むか?」
「うん」
うにゅほに缶チューハイを渡す。
「おとこうめサワー」
「男梅サワーだな」
「うめしゅ?」
「梅酒、なのかなあ……」
梅のお酒だが、梅酒ではないと思う。
「うめしゅ、あまくて、おいしいよね」
「それ、甘くなくて、むしろしょっぱいぞ」
うにゅほが目をまるくする。
「しょっぱいの?」
「しょっぱくて、酸っぱい。塩辛いってほどじゃないけど」
「……そうぞうできない」
「飲んでみればわかるよ」
「うん」
ちびり。
うにゅほが男梅サワーをひとくち飲む。
「──…………」
「どうだ?」
「んー……」
ちびりと、もうひとくち。
「しょっぱいし、すっぱい……」
「だろ」
「おいしいのかな」
「好き嫌いは分かれそうだけど、俺は好きだよ」
「そか」
缶チューハイを返してもらい、ひとくち飲む。
やはり美味い。
「おつまみ、いる?」
「チーズか何かがあれば嬉しいかな」
「わかった!」
居酒屋なんかに行かなくても、宅飲みがいちばんである。
家にはうにゅほがいるのだから。
 







726 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:06:14 ID:guiw0n2E0

2020年11月14日(土)

うにゅほを膝に乗せ、のんびりと動画サイトを巡る。
午後の優雅なひとときだ。
「あ、そだ」
「うん?」
「きょう、いいいしのひかな」
カレンダーに視線を向け、今日の日付を確かめる。
「ありそうだな」
確認のため検索すると、今日はたしかに、いい石の日だった。
「でも、いちがつよっか、いしのひだよね」
「たぶん……」
「いいいしのひと、いしのひ、べつにあるんだ」
「石の日と、いい石の日か」
きずぐすりと、いいきずぐすりみたいな。
「どっちがつよいのかな」
「そりゃ、普通の石といい石なら、いい石のほうじゃないか?」
強いも弱いもないと思うけど。
「でも、いしのひのほうが、ちめいどありそう」
「……わかる」
「ね」
「ピカチュウとライチュウみたいな」
うにゅほが小首をかしげる。
「らいちゅう?」
「ピカチュウが進化したら、ライチュウになるんだ」
「へえー」
「ライチュウのほうが強いけど、微妙に可愛くないからな……」
「みして」
「はいはい」
"ライチュウ"で画像検索をかける。
「……うーん」
ライチュウの姿を見て、うにゅほが唸る。
「かわいい、けど……」
「なんか、こう、コレジャナイ感が」
「ちょっとわかる」
「あと、微妙にでかいんだよな。0.8メートルだって」
「はちじゅっせんち」
「うん」
「ピカチュウは?」
「0.4メートル」
「ばいだ」
「体重は五倍」
「おもい!」
「なんとなく、不人気なのもわかる気がするだろ」
「うん……」
話題が明後日の方向にすっ飛んだが、話すことが目的の雑談なんてこんなものである。
そんなこんなで土曜日はゆっくりと過ぎていくのだった。
 






727 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:06:39 ID:guiw0n2E0

2020年11月15日(日)

加湿空気清浄機が古くなってきたので、買い換えることにした。
「──とは言うものの、べつに空気清浄機じゃなくてよくないか?」
「かしつき?」
「うん」
「くうき、せいじょうにしなくて、だいじょぶ?」
「タバコ吸わないし……」
「そだね」
「最近使ってなかったけど、何が変わったわけでもない」
「たしかに……」
「それより、加湿だよ加湿。コロナも怖いけどインフルも怖いからさ」
「ね、どんなのかう?」
「超音波式は避けたいな」
「ちょうおんぱしき……」
「超音波で水滴を散らす方式のこと」
「ちょうおんぱしき、だめなの?」
「雑菌がな……」
超音波式加湿器は、常温で使用し、フィルターなども通さない構造のため、場合によっては繁殖した雑菌を振りまく殺人機械と化す。
逆効果になりかねないのだ。
「やっぱ、スチーム式にしよう」
「すちーむしき」
「原理としては、だるまストーブの上にやかんを置くのと変わらない。沸騰させて加湿するんだ」
「あ、だから、すちーむ」
「その通り」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「ヨドバシのポイントの残り、全部突っ込んじゃおう」
「おー!」
ヨドバシドットコムを開き、いい感じのスチーム式加湿器を探す。
「タンクが大容量のほうがいいよな。水入れに行くの、面倒だし」
「だね」
容量、デザイン、価格──多方面から判断した結果、TOSHIBAのKA-Y45を購入することにした。
「これ、アロマオイルも使えるんだって」
「すごい」
「試してみるか」
「うん!」
うにゅほが、わくわくした様子で頷く。
Amazonでラベンダーのアロマオイルを注文し、準備は完了。
あとは届くのを待つばかりだ。
楽しみだなあ。
 







728 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2020/11/16(月) 19:07:35 ID:guiw0n2E0

以上、九年め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



19:30|この記事のURLコメント(29)したらば | このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2020年11月17日 19:37  ID:BItqX3LH0
    ネクロノミコン


  • 2  Name  名無しさん  2020年11月17日 19:39  ID:TpUAEeL.0
    東方裏見てたけどすぐ飽きた
    同じネタが延々と使い回されそれが何故か毎回伸びて勢いが保たれてる感じ
    要するに単細胞の集まりなんだろうな


  • 3  Name  名無しさん  2020年11月17日 19:48  ID:.N25889k0
    キチガイ速報


  • 4  Name  名無しさん  2020年11月17日 20:00  ID:qBUR.FDY0
    あーん!易者が死んだ!
    易者さまよいしょ本&易者F.Cつくろー!って思ってたのに…
    くすん…美形薄命だ…

    ・゚・(ノД`)・゚・うっうっう…ひどいよお…ふえーん!!
    この間「今、時代は易鈴だ!」の葉書きを出してまだ2週間じゃないですか!
    どーして、どーして!?あれで終わり!?嘘でしょ!?
    信じられないよおっあんな巫女ごときに殺られるなんてっ!!
    霖之助と差がありすぎるわっ!!生き還りますよね?ね?ね?
    ……泣いてやるぅ・゚・(ノД`)・゚・

    私はあのおそろしく鈍い彼が(たとえ怨霊でもさ!ヘン!)大好きだったんですよっ!!
    易者さまあっ!死んじゃ嫌だああああああっ!!
    春河もえのカバッ!!え~ん・゚・(ノД`)・゚・

    P.S '14 紫・マミゾウは小鈴とくっつきすぎだ!!


  • 5  Name  名無しさん  2020年11月17日 20:03  ID:5k0LFZVx0
    夫婦というのは長く生活すると同じ生活サイクルの繰り返しになる。
    「同じ生活の繰り返しだと、つまらないでしょ」
    という人もいるかもしれないが、それは違う。同じ生活の繰り返しだからこそ、「小さな違い」に気づくことができるのだ。
    うにゅほとの生活とはそういう作品だと思う。


  • 6  Name  名無しさん  2020年11月17日 20:27  ID:hVk.hsrh0
    幻想郷に行かなくとも幻想に生きることはできるのだな…


  • 7  Name  名無しさん  2020年11月17日 20:46  ID:VmhSgu580
    でやがったな


  • 8  Name  名無しさん  2020年11月17日 20:54  ID:uK6eQbH90
    本文を読むとSAN値が擦り減るので感想欄だけ見てます^^


  • 9  Name  名無しさん  2020年11月17日 20:58  ID:JQq3PO8j0
    軌跡のカーニバル


  • 10  Name  名無しさん  2020年11月17日 21:47  ID:wfNreFpS0
    まとめ続ける管理人もよく飽きないよな


  • 11  Name  名無しさん  2020年11月17日 21:49  ID:ADGQk5VE0
    コメント欄が面白すぎる


  • 12  Name  名無しさん  2020年11月17日 22:06  ID:3n7Af78v0
    でたわね


  • 13  Name  名無しさん  2020年11月17日 22:12  ID:TqCsrr5a0
    たぶんこれコメント欄だけ読みに来る人結構いるよね


  • 14  Name  名無しさん  2020年11月17日 22:25  ID:NjrUi0eN0
    >>13
    むしろ本文読んでる人とか著者以上にアレな人しかいないのでは


  • 15  Name  名無しさん  2020年11月17日 22:31  ID:kqIwkNQe0
    コメント欄の罵詈雑言が面白い
    みんなのストレス解消記事


  • 16  Name  名無しさん  2020年11月18日 00:12  ID:SoWjSSPC0
    拷問官「これを全部読め」


  • 17  Name  名無しさん  2020年11月18日 00:21  ID:hgaGgB040
    月告本定期


  • 18  Name  名無しさん  2020年11月18日 00:37  ID:y7T7CRNd0
    もうすぐ三連休だし一気見挑戦するか


  • 19  Name  名無しさん  2020年11月18日 01:36  ID:6Ha0swG70
    読んだことないけど継続できてるのは凄いよ


  • 20  Name  名無しさん  2020年11月18日 02:47  ID:TLJpZwYN0
    ネタにして弄ろうという気も起きないつまらなさ



  • 21  Name  名無しさん  2020年11月18日 02:56  ID:7ARAciOQ0
    タルパ
    別表記:トゥルパ

    現実世界に何らかの形で「実体化」させることを目的として創り上げられる、空想上の人物を意味する語。タルパ(トゥルパ)の名は、チベット密教における同名の概念に由来するとされている。より実在の人間に近いタルパを創る過程で、「会話のオート化」によるタルパとの会話や、「視覚化」によるタルパの視認ができるようになることもあるといわれている。また、幽体離脱に類似した方法で精神世界に入り込む(ダイブする)ことにより、タルパとより密に接触することができる人もいるという。


  • 22  Name  名無しさん  2020年11月18日 06:18  ID:qnMEGLYk0
    実際何文字くらいあるんだコレ


  • 23  Name  名無しさん  2020年11月18日 07:43  ID:632Sl6Vd0
    暗号化された犯罪指示文書


  • 24  Name  名無しさん  2020年11月18日 07:57  ID:iBzYuzdS0
    管理人の家族を返せ!


  • 25  Name  名無しさん  2020年11月18日 08:05  ID:XWvqUApm0
    ● <ウニュホ!ウニュホ!HEY!HEY!
    |/









  • 26  Name  名無しさん  2020年11月18日 09:28  ID:COqBurir0
    もうこれ現代の妖怪だろ


  • 27  Name  名無しさん  2020年11月18日 22:51  ID:7xtL0yQ90
    う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!


  • 28  Name  名無しさん  2020年11月19日 00:18  ID:ylKR0wYn0
    怖くて読めない


  • 29  Name  名無しさん  2020年11月20日 22:34  ID:ZPB2kOvi0
    精神病患わってそう


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