2021年01月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



779 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:41:15 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月1日(金)

「あー……」
起床すると、午後三時を回っていた。
当然と言えば当然である。
初日の出を待って、午前八時に床に就いたのだから。
「あ、おはよー」
案の定、うにゅほは起きていた。
「おはよ。何時に起きた?」
「おひるくらい」
「睡眠時間、足りてるか。四時間くらいしか寝てないだろ」
うにゅほが苦笑する。
「ちょっとねむい……」
「眠いなら寝る」
「わ」
うにゅほの手を引き、寝室側へと取って返す。
「正月なんだから、だらだらしたっていいんだよ」
「お正月だもんね」
綺麗に整えられたうにゅほのベッドに近付き、掛け布団をめくる。
「あ」
「どうかした?」
「◯◯のベッドでねたいなって」
「いいけど……」
「やた」
うにゅほが嬉しそうに微笑む。
「臭いかもしれないぞ」
「だいじょぶ」
「枕カバー、変えたほうがいいかな」
「だいじょぶ」
軽く抵抗などしてみたが、うにゅほの意志は固いようだった。
仕方ない。
俺のいぎたなさを如実に表したかのような乱れに乱れたベッドを整える。
「寝ていいよ」
「うん」
うにゅほが、掛け布団と敷布団のあいだに身を滑らせる。
「あったかー……」
「そりゃ、数分前まで寝てたからな」
なるほど、得心が行った。
人肌の布団で快適に眠りたかったのだろう。
「寝られそう?」
「うん……」
既に、返事がとろんとしている。
「おやすみ」
「……おや、すみ」
ベッドから離れ、書斎側へと向かう。
三時間ほどたっぷりと睡眠をとったうにゅほだったが、今夜は無事眠ることができるのだろうか。
強靱な生活サイクルを持つとは言え、いささか心配である。








780 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:41:44 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月2日(土)

今日の昼食は蕎麦だった。
年越し蕎麦として用意したものだが、母親が出すのを忘れていたのだと言う。
「これじゃ年越した蕎麦だな」
と、ゆるいオチで本日の日記を終えようと思っていたのだが、それどころではなくなってしまった。
豪雪である。
「……これ、降り過ぎじゃないか?」
「うん……」
午後十時。
しんしんと降り積もる雪は、既に、五十センチ以上の層を成していた。
膝丈よりも高いとなれば、雪国の人間ならずとも、雪かきの大変さを想像できるだろう。
しかも、こんな日に限って、両親は外出してしまっている。
「──ゆきかき、しよう」
うにゅほが、決意を秘めた目をこちらへ向けた。
「そう、だな……」
気は進まない。
気は進まないが、朝までに一度は除雪しなければ、余計に面倒なことになる。
「……するか」
「うん」
防寒用のツナギを着込み、外へ出る。
「うわー……」
道が、なくなっていた。
雪が降り始めてから、まだ一台も車が通っていないのだろう。
せめて轍があれば道と認識できるのだが、それすらないことに心を折られかける。
「すごいねえ……」
「久々だな、この感じ」
「うん、ひさびさ」
何にせよ、除雪用具がなければ雪かきどころではない。
意を決し、玄関の外へと踏み出す。
ばふ、ばふ。
粉雪を掻き分けながら、家の横に立て掛けてあったジョンバを手に取った。
「××、これ使いな」
「うん」
「俺は──どうしようかな」
「ダンプ?」
「いや、俺もジョンバにする」
ジョンバは、幅の広い除雪用のシャベル。
スノーダンプとは、雪を押して運ぶことができる除雪用具だ。
「この様子じゃ、まともに雪かきしても終わらないよ」
「でも、しないと……」
「××、向こう見えるか」
「?」
家の前の公園、そのさらに向こうを指差す。
「オレンジ色の明かりが動いてるだろ」
「うん」
「あれ、除雪車。この豪雪だからな。お呼びが掛かったんだろ」
「おー」
「あれが家の前を通るから、雪は全部道に出しておけばいい。わざわざ捨てに行かなくても大丈夫だ」
「わかった!」
元気よく頷いたうにゅほと共に、豪雪へと立ち向かう。
本来、氷点下の環境における雪は、空気を含んで軽いものだ。
だが、ここまで積もれば関係ない。
雪は自重によって圧縮され、密度を増し、ジョンバを握る手に負荷を掛けていく。
家の前の雪をすべて道路に出し終えるころには、握力が半分ほどなくなっていた。
「はー……」
うにゅほが、家の外壁に寄り掛かる。
「つかれた……」
「右手、大丈夫か?」
「ぷるぷるする……」
「俺も」
顔を見合わせ、苦笑する。
達成感はあるが、もう二度とやりたくはない。
儚い願いであることを知りつつ、倦んだ瞳でいまだ降り続ける雪を眺めるのだった。







781 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:42:13 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月3日(日)

「あー……」
ごろんごろん。
「三が日が終わるゥー……」
「じかんたつの、はやいね」
「本当だよ」
年々、時が加速している。
体感時間で言うならば、二十歳が人生の折り返し地点だと聞いたことがある。
信じたくはないが、あながち的外れでもないのかもしれない。
「三が日が終われば、1月4日になる」
「うん」
「1月4日が終われば、1月5日になるだろ」
「うん」
「1月5日は仕事始めなんだよ……」
「ふゆやすみ、もうおわり?」
「終わり」
「え、みじかい……」
「短いよな。あと一週間くらいあってもバチは当たらないよな」
「それはながいきーするけど……」
「じゃあ、××だったら何日くれる?」
「うと、みっかくらい」
「1月7日まで冬休みが延長されるわけだ」
「うん」
「7日は木曜日、9日は土曜日だから、8日が休みになれば土日も巻き込める」
「あ、そか」
「さらに、11日は成人の日だ。四日くれたら一週間延びる」
「じゃあ、よっかあげる」
「ありがたき幸せ」
「──…………」
「──……」
「ほんとにあげられたらいいのにね」
「うん……」
想像上の休日をもらったところで、虚しさが募るばかりだ。
「仕方ない。前向きに考えよう」
「いいね」
「四日行けば、三日休み」
「おー」
「来週も、四日行けば二日休みだ」
「いちにちみじかいんだ」
「その通り。仕事始めにはちょうどいいだろ」
「すこし、らくだね」
「すこしだけな」
だが、楽なことは事実だ。
それだけをよすがに、仕事始めを乗り切ろう。
 






782 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:42:38 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月4日(月)

カレンダーを見る。
1月4日。
スマホで確認する。
1月4日。
タスクバーを凝視する。
1月4日。
「この日が来てしまったか……」
「あした、しごと?」
「うん……」
「ふゆやすみ、おわりかー……」
「終わってみれば短かった。入る前は永遠に続くような気がしていたのに」
「おおげさ」
12月27日から1月4日までの、九連休。
社会人としては十分な長さの冬休みだが、つい学生の頃と比較してしまう。
最後に学生をしていたのは十年以上前なのに、不思議だ。
「みんな、何してるかな……」
「みんな?」
「ほら、専門学校を病気で中退したことは話しただろ」
「わたし、くるまえ?」
「そう」
「うん、なんかいか」
「友達たくさんいて、毎日楽しかったからさ。みんな、今どこで何してるのかなって」
「れんらくさき、しらないの?」
「……知らない」
「しらないの……」
「いや、仲は良かったんだぞ。ただ、別れ方が悪かったからさ」
「ちゅうたい?」
「中退したやつと連絡取りにくいだろ。俺は病気でそれどころじゃなかったし……」
「きづいたら、えんどおくなっちゃったんだ」
「そんな感じ」
「すこしさみしいね」
「そうだな……」
もしかすると、人生で最も充実していた時期かもしれない。
「あえるとしたら、あう?」
「……どうかな。悩むけど、結局会わない気がする」
「そなんだ……」
「向こうは覚えていないかもしれないし、覚えていても話は弾まなそうだから」
それに、今は今で充実している。
過去に手を伸ばす必要は、必ずしもないのだ。
そんなことを、うにゅほの顔を見つめながら思うのだった。







783 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:43:06 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月5日(火)

帰宅し、玄関で靴を脱いでいると、うにゅほがぱたぱたと駆け下りてきた。
「おかえり!」
「ただいま」
「しごとはじめ、どうだった?」
「初日だしな。楽なもんだったよ」
「そか」
安心したように、うにゅほが微笑む。
「それと、こんなものもらったんだけど……」
「?」
うにゅほに左手を差し出す。
それは、直径20cmほどの大きなせんべいだった。
薄い包装に、
「ねむろめいか、オランダせんべい……」
と、書かれている。
「同僚が実家帰って、そのおみやげ」
「おいしそう」
「触ってみ」
「さわるの?」
うにゅほが、オランダせんべいに触れる。
ぐに。
「あ、やらかい!」
「柔らかいんだよ」
「なんか、うすいワッフルみたいだね」
「わかる」
表面に、ワッフル状の凹みがあるのだ。
「夕食前だけど、一枚食べてみようか」
「てーあらってね」
「はい」
しっかりと手洗いうがいを済ませ、オランダせんべいを一枚取り出す。
半分に分けようとして、
「──これ、思ったよりしっかりしてるぞ」
「そなの?」
「ワッフルだと甘く見たら、やられる」
「やられるの……」
せんべいをなんとか引き千切り、半分をうにゅほに渡す。
「いただきます」
「いただきます」
端を噛み切り、咀嚼する。
味は、美味しい。
かすかに今川焼きの風味が漂い、初めて食べるのに懐かしい味だ。
だが、
「あご、つかれる……」
「異様に丈夫だな、これ……」
「でも、おいしいね」
「だな」
根室銘菓、オランダせんべい。
悪くない。
 







784 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:43:47 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月6日(水)

冬休みが明けて、今日で二日目。
正月気分はすっかり抜けて、仕事の勘も取り戻しつつあるように思う。
たかだか九連休、されど九連休。
油断は禁物だ。
職場の同僚が追加でくれたオランダせんべいを噛み千切りながら、うにゅほに尋ねる。
「今日は何の日か、わかる?」
「いちがつむいか?」
「そう」
「うと……」
カレンダーに視線を向けたうにゅほが、ほとんど即答する。
「いろのひ!」
「正解!」
「ふふん」
うにゅほが胸を張る。
「さすがに簡単だったかな。そのままだし」
「うん、かんたん」
「ちなみに、1月6日には、いまいち納得の行かない語呂合わせの記念日が存在します」
「むりあるパターン?」
「いや、無理はない。単純でそのまま」
「いー、むー……、いろく、ひむー……」
うにゅほの思考が明後日の方向へと飛躍していく。
ネタばらしと行こう。
「実は、語呂合わせ自体は同じなんだよ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「1月6日で、色。これは変わらない」
「ちょっと、いみが……」
気持ちはわかる。
「今日は、"い(1)ろ(6)"の語呂合わせで、カラーの日なんだってさ」
「──…………」
うにゅほが眉根を寄せる。
「いろのひと、カラーのひ、べつにあるの……?」
「うん」
「おなじひに?」
「うん」
「ちょっと……」
「言うまでもないが、11月16日は、いい色の日だぞ」
「──…………」
うにゅほが黙ってしまった。
読者諸兄は、軽々に記念日を増やさないように。
 







785 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:44:24 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月7日(木)

風呂から上がり、自室に戻ると、うにゅほがiPadに見入っていた。
「YouTube?」
「うん」
「最近ハマってるな」
「おもしろい」
「気になるな。どんな動画見てるんだ?」
「はい」
うにゅほが、イヤホンを片方外し、こちらへ差し出した。
イヤホンを受け取り、隣に腰を下ろす。
画面に映し出されていたのは、親の饅頭より見た饅頭たちの姿。
ゆっくり解説動画だった。
このジャンルをうにゅほに教えたのは俺だから、そのこと自体に驚きはない。
だが、
「──相対性理論について?」
「うん」
「おお……」
まさか、ガチの科学解説動画を見ているとは思わなかった。
「難しくない?」
「だいじょぶ、と、おもう」
「わからなかったら聞いてくれ。そのあたり、苦手じゃないから」
「◯◯、なんでもしってるもんね」
言い過ぎである。
「科学系の動画ばっか見てるのか?」
「いろいろみてるよ」
「たとえば?」
「くそげーのどうがとか」
「──…………」
確実に俺の影響を受けている。※1
「解説動画だと、ゆっくりとかボイロのほうが見やすいよな」
「うん」
「最近、VTuberの動画は追ってないのか?」
「みてるけど、すくなくなった……」
「そっか」
そのときそのときで見る動画の傾向が変わるのはよくあることだ。
時間が有限である以上、どうしても絞り込む必要は出てくる。
「つぎは、つきがなくなったらどうなるかのどうが、みるんだよ」
「面白そうだ。俺も一緒に見ていいか?」
「うん!」
そうして、しばしのあいだ、うにゅほと共にiPadに見入るのだった。

※1 2020年12月26日(土)参照







786 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:45:06 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月8日(金)

「はー……」
職場から一時帰宅し、愛車を車庫に納める。
本日、豪雪。
雪かきの途中で出勤したのだが、家の前はすっかり綺麗になっていた。
うにゅほと父親が頑張ってくれたのだろう。
「ただいまー」
玄関で靴を脱いでいると、
「──◯◯!」
うにゅほがリビングから慌てて顔を出した。
「よかった、しんぱいしてた……」
「ごめんな」
「うん」
連絡を忘れていた。
この豪雪で、普段より一時間弱も帰宅が遅れれば、心配にもなるだろう。
「職場でも、軽く雪かきしてたんだ」
「あー……」
「向こう、うちより積もってるよ」
「そんなに?」
「いつも通る中道があるだろ。トウモロコシ畑の」
「あ、わかる」
「途中で車が並んでたから、何事かと思ったらさ」
「うん」
「あまりの積雪でタイヤがスタックして動けなくなった車が一台……」
「わあ……」
「あれ、JAF呼ばないと無理だわ」
同情こそすれ、優先すべきは仕事である。
結局素通りして出勤したのだった。
「ゆき、ひどいね……」
「同僚から、遅刻するって連絡が入ってさ。雪で車が出せないんだって」
「……ちこくですむの?」
「頑張って雪かきするんだと思う」
「そか……」
「××は平気か? 疲れてない?」
「うん、だいじょぶ」
「ならよかった」
手洗いとうがいを済ませ、自室に戻る。
「……あのね」
「うん?」
うにゅほが、思い詰めた顔で言う。
「ゆき、ふってほしいって、おもわなかったらよかったね……」
「──…………」
思わず苦笑する。
「いいんだよ、思って。××が降らせたわけじゃないんだから」
「でも」
「三十分仮眠取るけど、一緒に寝るか?」
「……ねる」
寒いと余計なことを考えてしまうものだ。
そんなときは、暖かくして寝るに限る。
 







787 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:45:35 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月9日(土)

「寒い……」
すこぶる寒かった。
寒すぎて、ファンヒーターをつけても室温が一定以上にならないのだ。
冷気と熱とが拮抗しているらしい。
「××さん」
「はい」
「本日の最高気温は何℃でしょうか」
「……マイナス?」
「さて」
「──…………」
うにゅほが俺の顔を窺う。
「マイナスだ……」
何故わかる。
「マイナス、──さんど?」
「ファイナルアンサー?」
「マイナスにど?」
「……俺の反応見てる?」
「マイナスよんど」
「──…………」
「マイナスごど……」
「だから」
「あ、マイナスごどだ」
「──…………」
「マイナスごどでしょ」
今のやり取りのどこで確信したんだ。
「……俺、そんなにわかりやすいか?」
うにゅほが小首をかしげる。
「どうだろう……」
「ポーカーフェイスとは言わないまでも、そうそう顔に出る性格でもないと思うんだけど……」
「でも、うそついたらわかるよ」
「……そんなに?」
「うそね、わかりやすい」
「どんなふうに?」
「めーそらすし、へんじちょっとおそい」
「──…………」
ぐうの音も出なかった。
「気を付けないと……」
「きーつけなくていいよ?」
「そういうわけにもな」
気を付ける程度でどうにかなるものか、さっぱりわからないけれど。
ひとまず心に刻みつけておこう。







788 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:46:15 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月10日(日)

「──…………」
べ。
卓上鏡を覗き込みながら、舌を出す。
思った通りだ。
「どしたの?」
「口内炎」
「みして」
「はい」
うにゅほに向き直り、舌を突き出す。
「ほんとだ……」
つん。
「つつくな、つつくな」
「いたかった?」
「痛くはないけど……」
「こうないえんには、ビタミンびーつーだよね」
「よく覚えてたな」
「うへー」
「まあ、ビタミン剤切らしてるんだけど」
「かいいく?」
「めんどい……」
「なおり、おそくなるよ?」
「大して痛くもないしな」
「◯◯がいいならいいけど……」
「ドラッグストアには用事があるから、仕事の帰りにでも寄ってくるよ」
「なにかうの?」
「歯ブラシとか、いろいろ」
「わたしもいきたいな」
「──…………」
しばし思案する。
「なら、今行こうか」
「いいの?」
「仕事から帰ったあと、××を拾ってドラッグストア行くほうが手間だろ」
「そだけど……」
「ほら、準備して」
「うん」
"めんどい"の一言で済ませると、いつまでも何もやらない気がする。
そこまで見越しての発言ではないのだろうが、動くきっかけを作ってくれたうにゅほには感謝しなければなるまい。
購入してきたビタミン剤を飲み下し、
「──うん。これで、数日中には治るはず」
「ビタミン、すごいね」
「痛くなる前に意識できればいいんだけどな」
「うん……」
健康には気を遣いたいものである。







789 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:46:49 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月11日(月)

今日は祝日。
昼過ぎに起床、うにゅほと挨拶を交わし、眠い目を擦りながらPCへと向かう。
「……あれー?」
マウスカーソルが見当たらない。
ないはずはないのだが、ない。
思うに、理由はみっつ。
単純に目が霞んでいること。
4Kディスプレイにしてからマウスカーソルが小さくなってしまったこと。
そして、サブディスプレイと液晶タブレットのぶんだけ画面面積が広がっていることだ。
マウスを左上に動かし続けること十数秒、ようやくマウスカーソルが視界に現れた。
「はあ……」
俺の小さな溜め息を、うにゅほが見咎める。
「どしたの?」
「起きた直後って、よくマウスカーソルを見失うんだよ。それで」
「ふうん……」
うにゅほがディスプレイを覗き込む。
「たしかに、ちいちゃいもんね」
「不便だよな」
「おっきくできないの?」
「──!」
たしかに。
大きくすれば、万事解決だ。
どうして気が付かなかったのだろう。
「設定いじろう。たぶんできる」
「あ、できるんだ」
「ありがとう。その発想なかったわ」
「◯◯、なんでもわかるけど、たまにぬけてる……」
「……うん」
自覚はある。
Googleで方法を検索し、マウスカーソルの設定画面を開く。
「へえー、サイズだけじゃなくて色も変えられるんだ」
「いちばんおっきくしたら、どのくらいおっきくなるの?」
「やってみるか」
やってみた。
「でか!」
元の十倍以上にまでマウスカーソルが膨れ上がっていた。
「つかいにくそう……」
「実際、使いにくい」
カーソル自体は巨大なのに、判定は最小サイズと同じなのだ。
感覚が狂う。
「一段階大きくして、これで様子を見ようか」
「うん」
たかが一段階、されど一段階。
設定をいじったことで、マウスカーソルの存在感がぐっと増した。
これで寝起きにカーソルを見失うこともないだろう。
ないと思う。
 







790 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:47:18 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月12日(火)

今日は、俺の誕生日だ。
家族で行きつけのステーキハウスへと赴き、満足感と共に帰宅すると、うにゅほがベッドの下から包みを取り出した。
「一昨日届いたやつだな」
「ばれてる……」
苦笑し、俺に包みを差し出す。
「たんじょうび、おめでとね」
「ありがとうな」
包みを受け取り、開く。
そこには、幾本もの青い小瓶が並んでいた。
「──これ、アロマオイル?」
「うん」
うにゅほが頷き、小瓶を一本手に取る。
「どれいいかわかんないから、てあたりしだい」
「高かったんじゃないか?」
「そうでもないよ」
そうは言うものの、一万円前後の出費は間違いない。
「××、ありがとうな。新しいアロマオイル買おうと思ってたから、ちょうどよかった」
「うへー……」
「えーと、何があるかな」
小瓶の蓋を確認する。
「ゼラニウム、ローズマリー、パチュリ、マジョラムスイート──」
まだまだある。
ここまで揃うと蒐集欲が掻き立てられてしまうが、コンプリートにいくらかかるやら。
「ね、ね、かいでみよ」
「だな」
アロマオイルの蓋を開き、順に香っていく。
やはり、原液の匂いは癖が強い。
だが、一本だけ、そのままでも香りのよいオイルがあった。
「──これ、いい匂いだな。スイートオレンジ」
「あまいみかんのにおいする」
「わかる」
嗅ぎ慣れたもののほうが、良い香りであると感じやすいのだろうか。
「じゃ、アロマランプで熱してみるか」
「うん」
アロマテラピーの面白さは、調合にあると思っている。
アロマオイルをブレンドして、さらに良い香りを作り出すのだ。
うにゅほからのプレゼントのおかげで、組み合わせのパターンが爆発的に増えた。
しばらくは飽きずに済みそうである。
 







791 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:47:49 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月13日(水)

「──……?」
iPhoneのメモアプリを開き、首をかしげる。
「××」
「はーい?」
「また、謎メモが出てきた」
「なぞメモ」
「たぶん、寝起きに夢の内容をメモしたんだろうな……」
「たまにあるやつだ」
「興味ある?」
「みたいみたい」
うにゅほがiPhoneを覗き込む。
メモにはこう書かれていた。

"将棋の駒にマヨネーズ和えて食べる夢"
"格ゲーが強くなる"
"食べてない"

「な?」
「いみわかんない!」
うにゅほが、からからと笑う。
「そういう夢を見たのはわかるけど、メモした理由がわからん」
「おもしろかったのかな」
「面白かったんだろうな……」
目を覚ました今となっては、何が面白かったのか理解できないが。
「そう言えば、むかーし、夢日記を書いてた時期があってさ」
「ゲーム?」
「そっちではなく」
「うへー」
「そのせいか、今でも覚えてる夢があるよ」
「どんなゆめ?」
「欽ちゃんの仮装大賞ってあるだろ」
「あったきーする」
「父さんがあれの審査員をしてる夢なんだけどさ」
「うん」
「父さんが、なんらかの理由で不正をするんだ。つまらないのに満点をつけてしまう。それで、俺は罪悪感に苛まれるんだ」
「◯◯はふせいしてないのに……」
「で、それが何度も何度も永遠に繰り返される。そんな悪夢」
「……あくむなの?」
「めっちゃうなされて起きたから、悪夢は悪夢。内容は大したことなくても、無限ループって精神ガリガリ削られるからな」
「たしかに、いやかも……」
「悪夢にもいろんな種類があるから……」
「しょうぎのこま、たべるゆめとか?」
「……それ、悪夢だったのかなあ」
夢の内容どころかメモをした記憶すらないから、覚束ない。
まあ、ちょっと面白かったのでよしとしよう。
 







792 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:48:18 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月14日(木)

「カラオケ行ってないなあ……」
「ね」
「カラオケ行きたい」
「でも、ころなだし……」
「××、知ってるか」
「?」
「カラオケボックスでクラスターが発生した例は一件もないんだぞ」
「あれ……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「あったきーする」
「それ、たぶん、カラオケ喫茶だな」
「ちがうの?」
「俺も詳しくはないけど、喫茶店がメインだよ。カラオケの設備とステージのある」
「ぜんぜんちがう……」
「この業態だと、そりゃ唾液も飛ぶわ」
「たしかに」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「よーく考えてみたまえ」
「うん」
「カラオケボックスは部屋が区切られている。隣の部屋にコロナの人がいたとして、慌てて逃げる必要はあると思うか?」
「あっ」
絶対に安全とは言い切れないが、危険性はそう高くないはずだ。
「そりゃ、不特定多数と同じ部屋で騒げば危ないだろうけど……」
だが、それはカラオケに限るまい。
どこでも同じである。
「ヒトカラ、フタカラくらいまでなら、外出を伴う娯楽でこれほど安全なものもないんじゃないか」
「カラオケ、いく?」
「さすがに今日は無理かな」
夜だし。
「気が向けば、土日に行くかも。行かないかも」
「いかないかもなんだ」
「出不精になっちゃってるな……」
「いいことなんだけどね」
時流に合った気質ではあるが、一長一短ある。
未来の自分の気が向くことを祈ろう。
 







793 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:48:43 ID:eZ1KSCqY0

2021年1月15日(金)

「いっしゅうかん、おつかれさま!」
「お、ありがとな」
うにゅほの頭を、ぽんと撫でる。
「がんばった◯◯に、いいものがあります」
「?」
「じゃーん」
うにゅほが差し出したのは、桃の缶チューハイだった。
「おおー!」
「さっき、おかあさんとかいものいったとき、かってきたの」
「気が利きますね」
「きんようびだから、のみたいとおもって」
「よくわかってらっしゃる」
「うへー……」
「一本だけ?」
「れいぞうこに、もいっぽんあるよ」
「二本か……」
少々物足りない気もしたが、思い直す。
「そのくらいが、ちょうどいいのかもしれないな」
「うん、そうおもって」
「ありがとう。風呂から上がったらいただくよ」
「うん」
再び頭を撫でると、うにゅほがくすぐったそうに微笑んだ。
夕食ののち、風呂に入って一週間の疲れを取り、自室へ戻る。
「さて、チューハイ飲もうかな」
「ひえてるよ」
うにゅほが手渡してくれた缶チューハイを、カシュッと開栓する。
ひとくち啜ると、桃の風味と微炭酸とが口の中を洗い流した。
「ふー……」
「おいしい?」
「美味しい」
「◯◯、ももすきだよね」
「桃の香りって、××っぽいんだよな。なんとなく」
「そかな」
うにゅほが、すんすんと、自分の手の甲を匂う。
「自分じゃわからないだろ」
「うん」
「ほら」
両腕を開く。
ぽす。
うにゅほが、何の疑問も躊躇もなく、身を預けてくれる。
首筋に鼻を押し当て、一呼吸。
「──うん、やっぱり桃っぽい」
「そなんだ……」
要は、桃が好きというより、うにゅほが好きなのである。
照れくさいので、そうそう口にはしないけれど。
 







794 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/01/16(土) 17:50:08 ID:eZ1KSCqY0

以上、九年二ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



19:30|この記事のURLコメント(20)したらば | このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2021年01月17日 19:33  ID:hvEuvLQR0
    お ま た せ


  • 2  Name  名無しさん  2021年01月17日 19:39  ID:bWyum.Kp0
    管理人の家族を解放しろ


  • 3  Name  名無しさん  2021年01月17日 19:57  ID:k4qyXwdQ0
    もう少しで十年経つのかよ(震え声)


  • 4  Name  名無しさん  2021年01月17日 20:17  ID:O2teAIE90
    継続はパワー


  • 5  Name  名無しさん  2021年01月17日 20:23  ID:MbG6WKrw0
    死ぬとき寂しくなさそう


  • 6  Name  名無しさん  2021年01月17日 20:27  ID:8lHghdId0
    でたわね


  • 7  Name  名無しさん  2021年01月17日 20:39  ID:aI5X0Jla0
    自分自身はまだ正常だと確認できるまとめ。


  • 8  Name  名無しさん  2021年01月17日 20:41  ID:bg.kwZNS0
    また管理人の家族を解放しろって書き込む作業が始まるお・・・


  • 9  Name  名無しさん  2021年01月17日 20:52  ID:G8m31ZJg0
    継続は力なり


  • 10  Name  名無しさん  2021年01月17日 21:10  ID:YQyshvvk0
    でたわね


  • 11  Name  名無しさん  2021年01月17日 21:19  ID:.6N59El20
    もう管理人の家族は開放しなくていいよ


  • 12  Name  名無しさん  2021年01月17日 21:52  ID:rX6LetaF0
    「やあ、久しぶりね」
    レミリア「え…ど、どなた?」 
    魅魔「あぁ、若手は私のこと知らないのね。私、自機とかやったことあるのよ?」
    幽々子「…で、その自機さんが幻想郷に何の用ですか?」
    魅魔「何…って、私も来年から復活を考えようと思うから、どこをねぐらにしようかと思ってね」
    紫「えっと、お気持ちはありがたいですが、貴女にそんな権限ないですしお引き取りを…」
    魅魔「何よ、OGよ?若手の君らに幻想郷のいろはを叩き込んであげようとしてるのよ?」
    魔理沙「魅魔様…」
    魅魔「ああ、魔理沙。あなたもすっかり立派になったわ!ねえ、あなたからもこの世間知らずに言ってくれないかしら」
    魔理沙「帰ってくれないか」
    魅魔「え?」
    魔理沙「ここは魅魔様が幅を効かせていた頃の幻想郷じゃなく、私たちがゼロから作り上げた幻想郷だ。魅魔様の力はもう必要無いんだよ」
    魅魔「なに?ねえ、たかが脇役のくせにいい気にならないほうがいいわよ?」
    魔理沙「昔の威光にすがるだけの魅魔様が言う資格は無いぜ。もう一度言う。帰ってくれ」
    さとり「そ、そうよ!魔理沙の言う通りよ!出ていけ!」
    一同「そうだ!そうだ!」
    魅魔「く、くそっ…覚えてなさい」
    魔理沙「悪いけど忘れるぜ、魅魔様が私たちのことを忘れたようにな」

     

    翌日、魔理沙は魅魔に憑依され、アリスは自宅で静かに息を引き取った。


  • 13  Name  名無しさん  2021年01月17日 22:19  ID:lbjtIkeb0
    初めてみたけどこいつやべえwwwwwwwwwww


  • 14  Name  名無しさん  2021年01月17日 22:59  ID:AAc.YyUx0
    明けましておめでとう御座いません。
    今年も宜しくお願い致しません。


  • 15  Name  名無しさん  2021年01月17日 22:59  ID:wcqmvKNG0
    オリキャラでやれや。
    お空の名前を使うな。


  • 16  Name  名無しさん  2021年01月18日 05:48  ID:9PJPh4TT0
    なんか10年目で終わりそうな予感がする
    それはそれで寂しい


  • 17  Name  名無しさん  2021年01月18日 06:01  ID:nGtwgGKA0
    押し込み強盗してうにゅほちゃん誘拐したい


  • 18  Name  名無しさん  2021年01月18日 21:45  ID:yBDhK9B60
    よくやるなぁ もはや尊敬の域


  • 19  Name  名無しさん  2021年01月18日 22:50  ID:5gsNPBC50
    来やがったな、イカレ野郎


  • 20  Name  名無しさん  2021年01月19日 02:15  ID:wTdO.hO50
    もういい、もういいんだ管理人
    おそらく君の家族は、すでに……


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