2021年03月02日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



828 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:13:45 ID:W67Klhm60

2021年2月16日(火)

「──…………」
昨日に引き続き、死にかけていた。
「◯◯……」
「大丈夫、大丈夫。原因はわかってるんだから……」
「そだけど」
原因とは、言わずもがな、爆弾低気圧である。
「ていきあつ、すごいよ。テレビでもやってた」
「なんて?」
「このくらいのすごいていきあつ、ななねんぶりだって」
「あー……」
心の底から納得する。
そりゃ、具合も悪くなるわけだ。
「あとね、しんすいしたり、かぜでバスがおうてんしたんだって……」
「……台風並みじゃん」
「うん、たいふうなみ」
「東北、大丈夫かな。このあいだ地震があったろ」
「うん、あった……」
泣きっ面に蜂。
悪いことほど重なるものである。
「じしん、やだな。こないでほしい」
「俺だってそうだよ」
ふと、二年半前の北海道胆振東部地震を思い出す。
北海道全域が停電したあの地震は、俺が体験した最大の震度だった。
「揺れ自体も嫌だけど、二次災害のほうがきついよな。津波なんかもそうだし、停電もかなり堪えた」
「ていでん、こわかったね……」
「夏だったからまだよかったけど、今の時期に停電したら人死にが出るぞ」
「さむいもんね」
「実際、停電あったらしいしな。すぐ復旧したけど」
「そなんだ」
東日本大震災から、もうすぐ十年。
忘れるなと言わんばかりの今回の地震だ。
「……神様がいたら、絶対性格悪いよな」
「それは、そうかも」
できるなら、災害などに巻き込まれることなく、穏やかに暮らしたいものである。








829 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:14:12 ID:W67Klhm60

2021年2月17日(水)

ぐるんぐるんと肩を回し、伸びをする。
「んあー……」
一昨日、昨日より、随分と楽になってきた。
爆弾低気圧はいまだ居座っていると聞くが、肉体のほうが先に順応したらしい。
「ごめんな、××。心配かけて」
うにゅほが、ふるふると首を横に振る。
「きにしないで」
「そうは言うけどな……」
「チョコたべる?」
「食べる」
クソ体調のせいで食べ進められなかったバレンタインチョコを、朝食代わりにいただく。
「ほんと美味いな、これ……」
「うへー」
「ありがとうな」
「うん」
「じゃ、着替えるかな」
そう言って、畳んであった着替えを拾い上げようとしたときのことだった。

──つるん!

「えっ」
足の裏が乾燥していたのか、フローリングが氷のように滑った。
完全に油断していたため、無様に尻餅をつく。
「──…………」
「◯◯!」
うにゅほが、こちらに手を差し出してくれる。
「だいじょぶ……?」
「……部屋の中でこけた……」
「◯◯?」
「なんだろう、すげー落ち込む……」
今冬は、まだ一度も転んでいなかったのに。
よりにもよって、自室で転んだ。
情けないにも程がある。
「──……はぁ……」
うにゅほの手を取り、立ち上がる。
「おしり、いたくない?」
「尻より心が痛い。部屋で転ぶか普通……」
「きーつけてね」
「はい……」
幸いにも、どこかを痛めるようなことはなかった。
痛めていたら、数日は立ち直れなかったかもしれない。
マジで気を付けよう。







830 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:14:35 ID:W67Klhm60

2021年2月18日(木)

記念日のサイトを開く。
「へえー、今日は冥王星の日か」
「そなんだ」
「冥王星が惑星から準惑星に降格されたのは知ってるだろ」
「うん。◯◯いってた」
「言ってたっけ……」
日記を調べたところ、半年ほど前に言っていた。※1
「でも、冥王星が惑星になる場所がある」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「どういうこと?」
「冥王星を見つけた人の故郷、だったかな。その州の州法で、"冥王星がその州を夜空を横切るときは惑星に昇格する"って決まったんだ」
「……それ、いいの?」
「まあ、その州が勝手に決めたことだから」
「でも、ちょっといいはなしかも」
「冥王星の軌道の関係で、その州の上空を通ることはないらしいけど」
「……えー」
うにゅほが、なんとも言えない顔をする。
「いいはなしじゃなかった……」
「聞きかじりだから信憑性はわからないけど、本当だったら切ないよな」
「せつないというか、ちょっと、ばか……」
「うん……」
調べてから制定しろ、としか言えない。
「××が馬鹿って言うの珍しいな」
「そかな」
「たまにしか聞かない」
「そんないわないかも」
「まあ、頻繁に言う人こそどうかと思うしな」
「それは、うん……」
「馬鹿って言ってみて」
「ばか?」
「伸ばして」
「ばかー……」
「そこじゃなくて」
「うと、ばーか……?」
「うーん……」
しばし思案し、
「違うな」
「なんなの」
「××はそのままでいいってことだよ」
「……?」
変わらない良さが、ここにある。

※1 2020年7月8日(水)参照
 






831 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:16:25 ID:W67Klhm60

2021年2月19日(金)

「ただいまー」
「おかえり!」
帰宅し、うにゅほの眼前で軽く両手を上げる。
「?」
ぽん。
うにゅほが、戸惑いながらもハイタッチを返してくれた。
その手に指を絡ませ、
「四連休になりました」
「おー!」
「いえー」
「いえー」
狭い廊下でくるりと回る。
「二月は楽だったな。四連休が二回もあるんだから」
「まいとしあればいいのにね」
「それは思う……」
もっと言えば、毎月あればいいとさえ思う。
「完全週休二日制って時点で恵まれてるんだけどさ」
「まえ、どようび、たまにしかやすみじゃなかったよね」
「ああ。昔は週休二日制だったからな」
「かんぜんじゃないほう」
「その通り」
完全週休二日制と週休二日制は、まったくの別物である。
前者が毎週二日間の休日を保証しているのに対し、後者は一ヶ月に一度でも二日休みの週があれば要件を満たしてしまう。
詐欺としか思えない言葉なのだ。
「休みを増やしたほうが、仕事の効率が良くなると思うんだけど」
「むずかしいね」
「もっと、社会全体で、"何もしない日"があってもいいと思わないか?」
「おみせとかは?」
「お店もやってない」
「コンビニも?」
「コンビニも」
「ふべん……」
「前の日に買い込んでおけばいいだろ」
「そだけど」
「日本全体、なんにもしない。年に一度くらい、そんな日があってもいい気がする」
「うーん……」
うにゅほはピンと来ていない様子だったが、そう思うのだ。
「……まあ、無理か」
「むりとおもう」
「じゃあ、××。週休三日制にして」
「できたらするけど……」
できたらビビる。
ともあれ四連休だ。
出掛けることはできないが、やるべきことは山とある。
ひとつひとつ片付けていこう。







832 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:16:58 ID:W67Klhm60

2021年2月20日(土)

──ゴリッ

「ぎッ!」
ダイエット用のチキンスティックをぼんやり食べていたところ、奥歯で舌の根元を思い切り噛んでしまった。
「ッ、でー……」
「◯◯、どしたの!」
「ひはかんら……」
「みして」
べ、と舌を伸ばし、噛んだ場所を指差す。
「ちーでてる……」
「わりと派手に噛んだからな……」
「どうしよう。ふく?」
うにゅほの手がティッシュに伸びる。
「いや、口の中だし……」
「そだね」
舌を拭いてもらうってシチュエーションも、なんだかよくわからないし。
「……嫌だな。絶対口内炎になるぞ」
「ビタミンびーつー、のまないと」
「今から飲んでおくか」
「うん」
サプリメントを三粒取り出し、口に含む。
「はい、おちゃ」
「ありがと」
錠剤を飲み下すと、すこし痛みが和らいだ気がした。
間違いなく気のせいだけど。
「顎の力って、けっこう強いよな」
「うん……」
「指とか甘噛みしても大して痛くないけど、それは無意識にストッパーが働いてるだけで……」
「したかむとき、ストッパーないもんね」
「だから、遠慮なくがぶりと行く。口の中ゴリッて鳴ったし」
「いたい、いたい」
うにゅほが口元を押さえる。
「痛くてちょっと食べれないし、いる?」
チキンスティックを差し出す。
「あ、たべる」
舌を噛んだせいで、食欲が失せた。
口内炎ダイエットと名付けよう。
絶対やりたくないけど。







833 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:17:42 ID:W67Klhm60

2021年2月21日(日)

来客が帰り、伸びをする。
「はー……」
疲れた。
来客自体は嫌ではないし、さして迷惑というわけでもない。
ただ、疲れる。
「おつかれさま……」
自室に引っ込んでいた人見知りのうにゅほが、ねぎらいの言葉をかけてくれた。
「一人で暇じゃなかった?」
「うん、だいじょぶ」
「そっか」
たぶん、YouTubeでも見ていたのだろう。
「最近、ニコニコ見なくなったな」
「もじじゃま……」
「邪魔と捉えるか、賑やかと捉えるか」
「◯◯は、にぎやかっておもうの?」
「動画によるな。コメントがあることで面白くなる動画って、少なくないし」
「そかな」
「良くも悪くもみんなで見てるって感じが強い」
「それはわかる」
「でも、クソコメントのひとつで簡単に嫌な気分になれるからな……」
「それもわかる……」
実際、それが、ニコニコ離れした原因のひとつでもある。
「……しかし、眠いな」
「ねる?」
「いや、今からセッションがあって」
「そか」
俺の趣味はTRPGである。
セッションも頻繁に行っているので、うにゅほの反応も慣れたものだ。
「おわったら、ねないとだめだよ」
「終わったら日記書かないと」
「……にっきかいたら、ねないとだめだよ?」
「はい……」
圧に屈した。
日記を書いて、さっさと寝よう。







834 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:18:06 ID:W67Klhm60

2021年2月22日(月)

「猫の日だな」
「にゃー」
うにゅほが、招き猫のように、眼前の空気を掻いてみせる。
「──…………」
「……にゃ」
「──…………」
「なにかいってよー……」
「可愛い」
「……うへー」
「ちょろい」
「もー!」
「しまった、本音が」
「ひどい」
「可愛いってのも本音だけどな」
「……ほんと?」
「本当」
「うへー」
やはりちょろい。
「他にも記念日があるぞ」
「そなの?」
「おでんの日、とか」
「おでん……」
うにゅほが小首をかしげる。
「おでんのぐー、かんけいある?」
「関係ないかな」
「うと……」
一分ほど考え込んだのち、
「わかんない」
「まあ、わかんないよな」
「こたえ、こたえ」
「おでんを食べるとき、フーフーフーと息を吹き掛けるからだって」
「……うーん?」
納得行ってない顔だ。
「ふーふーするもの、ほかにもたくさんある……」
「たとえば?」
「グラタンとか」
「わかる」
「あんまんとかも、そうかも」
「あんまんは冗談じゃ済まないからな……」
何度舌を大やけどしたことか。
「あと、ふーふーふーより、ふーふーで、にがつふつかのほうがよさそう」
「そこは好みの範疇かな」
「そかな」
「重箱の隅をつつくと、難癖になりかねないし」
「そか……」
まあ、ちょっと思うけど。
なんだか記念日警察みたいになってきた気がするのだった。







835 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:18:32 ID:W67Klhm60

2021年2月23日(火)

「◯◯、こうないえんなおった?」
「治った治った」
「みして」
乞われるがまま、舌を伸ばす。
「ほんとだ……」
「噛んだの、たしか三日前だよな」
「たしか」
「もう治るんだな……」
「ビタミンびーつー、すごい」
口内炎にはビタミンB2。
読者諸兄も、是非試してみてほしい。
「××、暇だったら一緒に動画見よう」
「みる!」
うにゅほが、いそいそと、俺の膝に腰掛ける。
「なにみる?」
「何がいい?」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「みたいのあるから、さそったんじゃないの?」
「そういうわけでもない」
見せたいのは動画ではないのだ。
「てきとうにみましょう」
「はい」
YouTubeのホーム画面から、適当に面白そうな動画を拾う。
おすすめ動画を選抜するAIが優秀なのか、そうそう外れはない。
ちょっとしたことで技術の進歩を実感するのだった。
数本ほど動画を見て、うにゅほに尋ねた。
「何か気付かない?」
「え、なに?」
うにゅほが、きょとんと目をまるくする。
「今までとは明らかに違う箇所があります」
「ちがうかしょ……」
「当ててみよう」
「わからん!」
即答である。
もうすこし考えてみてほしかった。
「答えは──」
「──…………」
「じゃかじゃかじゃかじゃかじゃん!」
「!」
「てれー、てれれれー」
「まだ?」
「広告がない、でした!」
「あ」
思い当たる節があったのか、うにゅほがこくこくと頷く。
「いわれたら、なかった!」
「いいだろ」
「どうやったの?」
「YouTube Premiumにお試しで入ったんだよ。最近、YouTube見ること多くなったから」
「いいね、かいてき」
「もう広告のある時代には戻れない……」
「もどれなくなるの、はやい」
しかし、YouTube Premiumで動画を見ても、動画制作者に収益が発生するのだろうか。
その点だけが気にかかるのだった。







836 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:19:02 ID:W67Klhm60

2021年2月24日(水)

豪雪の朝、轍を作りながら代車を駆る。
積雪にハンドルを取られ、各所では事故が多発し、職場からの一時帰宅がすこし遅くなった。
「ただいまー」
「おかえり、だいじょぶだった……?」
手指消毒をしたあと、うにゅほの頭をぽんと撫でる。
「俺は大丈夫だったけど、交通事故は二件くらい見たな」
「ゆき、すごいもんね……」
既に降り止んでこそいるものの、量が半端ではない。
今年に入ってから、一、二を争う豪雪ではないだろうか。
「でも、危なかったな。地吹雪でホワイトアウトしてさ」
ホワイトアウトとは、雪によって視界が白一色となり、何も見えなくなる現象のことだ。
「気付いたら真正面から対向車が来てて、慌ててハンドル切ったよ」
「──…………」
うにゅほの顔色が、当時の俺と同じくらい青くなる。
「あぶない!」
「本当だよ。コンテ調子悪いから、いま代車だろ。保険入ってないから……」
「ちがくて──」
「いや、わかる」
うにゅほの言葉を右手で押し止める。
「××は、俺の身を案じてくれたんだろ」
「……うん」
「大丈夫。俺も対向車も、すげー徐行してたから」
「そなの……?」
「だって、そんな状態でスピード出せないだろ」
「たしかに」
「仮に正面衝突しても、悪くてむち打ち程度だったろうな」
「けがしてる!」
「まあ、いくら徐行してても正面衝突は正面衝突だから」
「だめじゃん……」
「そうかも……」
考えてみれば、単独事故の倍の速度で衝突するのだから、事故の衝撃は四倍となる。
馬鹿にできたものではない。
「……気を付けるよ、マジで。あの道はしばらく通らないことにする」
「そうしてね」
「はい」
近道なのだが、仕方ない。
すこし早く出ればいいだけのことだ。
修理費用も大切だが、命ももちろん大切だ。
気を付けよう。
 







837 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:19:27 ID:W67Klhm60

2021年2月25日(木)

久し振りに青空文庫を開いた。
青空文庫とは、著作権が消滅した作品のテキストを公開しているインターネット上の電子図書館である。
宮沢賢治の作品など、あらかた揃っていて楽しい。
「なにみてるの?」
うにゅほが、ひょいとディスプレイを覗き込む。
「……むずかしいやつだ」
「難しくないよ」
「むずかしそう」
「難しくないって。高校の国語の教科書に載ってたやつだよ」
「そなの?」
「夏目漱石の、夢十夜」
「ゆめじゅうや」
「夏目漱石が見た夢を、十篇の掌編小説にしたものだ」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「◯◯、ゆめのはなし、すきだもんね」
「好き。つげ義春とか大好き」
ねじ式とか、ヨシボーの犯罪とか、たまらない。
「夢十夜の中でも、この第一夜が大好きでさ」
「へんなの?」
「いや、変じゃない。美しいんだ。俺は、この第一夜が、日本文学の中でいちばん美しい文章だと思う」
「そんなに」
「そんなに」
「きになる……」
「読んでみるか?」
「うん」
うにゅほを膝に乗せる。
「短いから、すぐに読めるよ」
「ほんとだ」
うにゅほが、口をつぐむ。
読み始めたのだ。
十分ほどして、
「……はー」
と、うにゅほが溜め息をついた。
「どうだった?」
「なんか、すごい。すごくきれい……」
「だろ」
「ほわほわする」
「わかる」
高校のとき、授業そっちのけで夢中で読んだものだ。
「だいにやは?」
「普通」
「ふつうなんだ……」
「悪くないけど、第一夜に比べるとな」
俺が、第一夜のことを好き過ぎるだけかもしれないけれど。
個人的には銀河鉄道の夜に匹敵する名作なので、読者諸兄も是非読み返してみてほしい。







838 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:19:52 ID:W67Klhm60

2021年2月26日(金)

帰宅後しばらくして、ふとあることを思い出した。
「そう言えば、家の前の公園にきつねがいたよ」
「え、ほんと?」
「本当」
そんな意味のない嘘、ついていたら虚言癖である。
「まだいるかな」
「いないと思うけど……」
両親の寝室へと向かううにゅほの後を追い、窓から公園を見下ろす。
「ゆき、すごいね」
「会社の同僚、家から出られなかったって」
「え、どうしたの?」
「どうしようもない。休んでた」
「そりゃそっか……」
「もし出られても、道がない。スタックしちゃうよ」
「すたっく、タイヤうごかなくなるやつだよね」
「そうそう」
「なったらどうするの……?」
「シャベルがあれば雪を掘るし、なければ通り掛かりの人に手伝ってもらうかな」
「とおりがからなかったら?」
「そのときはJAFに数万貢ぐしか……」
「おかねかかる……」
「車の中で夜を明かすよりましと思えば」
「そだけど」
雑談を交わしながら、公園の隅から隅までを目視で確認する。
だが、きつねの姿はなかった。
「いないねー……」
「まあ、いないだろうな。見たの昨日だし」
「え」
うにゅほが、目をまるくしてこちらを振り返る。
「きのうなの……?」
「昨日だよ」
「どうして、いまいったの?」
「ふと思い出して……」
「もー!」
うにゅほが、ぷりぷりと頬を膨らませる。
「でも、いないとも限らないし」
「そだけど」
「期待させちゃったな。ごめん」
「いいけど……」
許してくれた。
良い子だ。
「つぎみたら、すぐいってね」
「わかった」
我が家の周辺では、きつねは比較的珍しい。
たくましく生きてほしいと思った。







839 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:20:17 ID:W67Klhm60

2021年2月27日(土)

どこへも行けないコロナ禍の午後、優雅に昼寝をぶっこいていたときのことだ。

──ビキッ!

「ウッ!」
鋭い痛みが右肋骨下に走り、俺は思わず目を覚ました。
「◯◯……?」
漏れ出た声が聞こえたのか、うにゅほが書斎側からこちらを覗き込む。
「いッ、つ……」
「え、どしたの!」
「わかんない、なんか、あばらの下の筋が痛い……」
「つった?」
「そんな痛み……」
「きゅうきゅうしゃ!」
「早い早い」
うにゅほの頭を撫でて、身を起こす。
「つ──」
だが、それすら容易にはできない。
痛みが走る。
「筋を痛めたっぽいけど、なんて寝ててなるんだ……」
「だいじょぶ?」
「動かなければ大丈夫そう」
「そか……」
「せっかく、夢で××といちゃいちゃしてたのに」
「……うへー」
うにゅほが、照れたように笑う。
「痛みが走った瞬間、××に拳銃で撃たれたことになったけど」
「えー!」
「××、ひどい」
「しらないよ……」
「そりゃそうだ」
「もー」
「とりあえず、ロキソニンテープでも貼って様子を見ようか」
「うん」
現状、痛みは好転も悪化もしていない。
このまま痛みが和らがないようなら、月曜日にでも病院へ行くことにしよう。
 






840 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:20:42 ID:W67Klhm60

2021年2月28日(日)

「◯◯、あばらどう?」
「んー……」
右肋骨下を軽く押す。
「痛いは痛い。でも、昨日ほどじゃないかな」
「よかったー……」
うにゅほが、ほっと息を吐く。
「姿勢によってはまだ痛むけど、昨日みたいに動けば即激痛ってわけじゃないし」
「なんなのかな」
「わからない。そもそも何科に行けばいいんだ、これ」
「そっか、なにかとかあるもんね」
「普通に考えれば整形外科だけど、筋を痛めたとも限らないし」
うにゅほが小首をかしげる。
「すじじゃないの?」
「調べたんだけど、位置的に胆嚢かもしれない」
「たんのう……」
「胆汁を溜めておく場所だな。そこに石ができると、痛むことがあるらしい」
「え、だいじょぶ……?」
「すぐさまどうこうってわけじゃないけど」
「すぐさまじゃないと、どうこうなの……?」
うにゅほの表情が、見る間に曇っていく。
しまった。
「いや、そういうわけじゃないって。胆嚢って決まったわけじゃないし……」
「でも、あやしい」
「仮に胆石症だとしても、治療法はいくらでもあるから。薬で溶かせるらしいし」
「──…………」
うにゅほが、値踏みするような視線をこちらへ向ける。
「……かくしてること、ない?」
「ないない」
「ほんとかな……」
鋭い。
嘘はついていないが、隠していることは確かにある。
胆嚢炎、胆管炎の場合、最悪手術で胆嚢を摘出する必要があるのだ。
もっとも、それらは脂汗が出るほど痛むそうなので、可能性としては低いと思うけれど。
「胆嚢か、筋か。とりあえず内科にでも行ってみようかな」
「わたしもいく」
「そっか」
きっと、止めても来るだろう。
「……へんなびょうきじゃなかったらいいね」
「うん……」
何事もなければ痛むはずもないけれど、無理を承知で何事もありませんように。
 






841 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/03/01(月) 20:21:33 ID:W67Klhm60

以上、九年三ヶ月め 後半でした

引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2021年03月02日 19:34  ID:Zqvn7gWM0
    定期的深淵定期


  • 2  Name  名無しさん  2021年03月02日 19:39  ID:K0BXeGMY0
    止まるんじゃねぇぞ…💃


  • 3  Name  名無しさん  2021年03月02日 19:50  ID:AdkRQ0rl0
    もう3月でしたか


  • 4  Name  名無しさん  2021年03月02日 19:55  ID:Ukho.lm00
    東方キャラ198人って多すぎるな
    日本の人口をざっと1億3000万人だと仮定して198人が住んでいる計算になる


  • 5  Name  名無しさん  2021年03月02日 20:04  ID:LnScF.hL0
    コメ定期


  • 6  Name  名無しさん  2021年03月02日 20:04  ID:62YdsU570
    深淵を覗くとき深淵を覗いているのだ


  • 7  Name  名無しさん  2021年03月02日 20:06  ID:xfQ.077P0
    これで来月も生活できる


  • 8  Name  名無しさん  2021年03月02日 20:17  ID:W1gjzkqa0
    このまま200年、300年と続いてたら笑う


  • 9  Name  名無しさん  2021年03月02日 20:18  ID:OgKNgl4g0
    >>7
    今月じゃないのか…


  • 10  Name  名無しさん  2021年03月02日 20:23  ID:aG2D1qpz0
    継続こそ無力なり定期


  • 11  Name  名無しさん  2021年03月02日 20:30  ID:7UWUhMRj0
    コメ欄直行大喜利定期


  • 12  Name  名無しさん  2021年03月02日 21:00  ID:r.g2quqe0
    早く管理人の家族を解放しろ


  • 13  Name  名無しさん  2021年03月02日 21:07  ID:PZy5i9Kk0
    2011年からやってるのか
    神霊廟よりは新しくて輝針城よりは古い


  • 14  Name  名無しさん  2021年03月02日 21:07  ID:.rC3...50
    深淵を覗きに来た(覗いてない)


  • 15  Name  名無しさん  2021年03月02日 21:10  ID:S3r9Sm7X0
    勇気出して読んでみたけど後になって「狐見たのは昨日の話」って告げてくるのうにゅほじゃなくてもすげーイライラする


  • 16  Name  名無しさん  2021年03月02日 21:29  ID:i32J.OSx0
    10周年フィナーレに向けて誰かカウントダウンしてやれ


  • 17  Name  名無しさん  2021年03月02日 22:15  ID:PLlJ2R4.0
    今はわからんけど両親出てくるのが実際普段親以外まともに会話していないであろう感が滲みでて辛かったわ。完全に二人だけの世界ならこっちも割りきれるけどさ


  • 18  Name  名無しさん  2021年03月02日 23:21  ID:lG2htH8z0
    なんか…安心する


  • 19  Name  名無しさん  2021年03月02日 23:30  ID:WCJ4ZwKs0
    仕事の話題なら上司や同僚や部下がどういう人か話すはずだし、彼女の話題なら彼女の友達や仕事の話も出てくるのが自然なのに、そういったことを書かないのは作者が学校でも会社でもずっと周りと馴染めず一人ぼっちだったからそういう発想に繋がらないんじゃないかと過去に考察されてた
    改めて思い返すとコロナ以前もずっと家の中でどういうゲームやっただとか動画見ただとかいう話ばかりだったのは色々と察するべきなんだろうな


  • 20  Name  名無しさん  2021年03月03日 00:02  ID:Ci5eDRfy0
    この記事読んでる人いたんだ…


  • 21  Name  名無しさん  2021年03月03日 02:08  ID:yxf2gel60
    探偵東風谷早苗の続きあくしろよ


  • 22  Name  名無しさん  2021年03月03日 07:05  ID:7HoJkjpW0
    ネクロノミコン定期


  • 23  Name  名無しさん  2021年03月03日 09:16  ID:uye1huWC0
    >>19
    うにゅほ考察班は草


  • 24  Name  名無しさん  2021年03月05日 00:43  ID:jGO8Q8Pp0
    このシリーズ見るたびに時の流れを実感する。


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