2021年09月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



41 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:19:27 ID:PwVSYfuE0

2021年9月1日(水)

九月である。
九月になってしまったのである。
「まだ暑いけど、夏が終わったって感じ……」
「わかる……」
「夏が終わると、あとは下り坂って感じがする」
「くだりざか?」
「春と夏が上り坂で、秋と冬が下り坂」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「わかんないけど、わかるきーする」
わからないのか、わかるのか。
「あれだよね、あかいかんじ」
「赤?」
「なつは、あか」
「暑いから?」
「たぶん……」
「俺は、紅葉のせいで、秋が赤いイメージだな」
「あきは、しろかなあ」
「秋が白なのか……?」
「うん」
どうしてだろう。
「じゃあ、冬は? 俺は、冬が白なんだけど」
「ゆきで?」
「うん」
「わたし、くろ……」
「黒……」
「なんか、くろいイメージ」
「えーと、春は?」
「◯◯は?」
「まあ、ピンクかな。桜色」
「わたしも」
「そこは合致するんだ」
「おそろい」
春は桜色。
夏は赤。
秋は白。
冬は黒。
なんだか不思議なイメージだ。
季節を表す色って、人によってここまで違うのか。
うにゅほにとって世界がどう見えているのか、なんだか気になる午後だった。








42 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:19:49 ID:PwVSYfuE0

2021年9月2日(木)

「ぼんやり暑い……」
「ういー」
俺の膝の上で、うにゅほがガリガリ君を食べている。
「29.5℃だって」
「なかなかですね」
「……くつろいでますね」
「うん」
左の肘掛けに背中を預け、右の肘掛けに足を乗せている状態だ。
べつにいいけど、だらしない。
「◯◯、かぜつよくして」
「はいはい」
チェアをくるりと回転させ、爪先で扇風機の風速を切り替える。
「すずしーねえ……」
「エアコンもいいけど、扇風機もいいんだよな」
「いい」
「××は、どっちが好き?」
「うーと」
しばし思案する。
「せんぷうきのがすきだけど、エアコンないとしぬ……」
「扇風機は室温を下げるものじゃないからな」
「でも、すずしい」
「なんで涼しいと思う?」
「きかねつ?」
「正解」
「うへー」
「よく知ってるな」
「まえ、◯◯がいってた」
「そうだっけ」
言った気もする。
「他にも、ハッカ油で涼しくなるって方法もある」
「はっかゆ」
「ハッカから精製した油のことで、これに触れると涼しくなるんだ。ハッカ油を使った入浴剤なんかもある」
「ほー」
「使い過ぎると、真夏でも凍えるらしい」
「すごい」
「でも、これ、危ないんだよな……」
「とうししちゃう?」
「いや、熱中症になる。感覚を誤魔化してるだけで、本当に涼しくなったわけじゃないんだよ」
「うそなの?」
「ほら、メントールの入ったボディシートとか、触れるとスースーするだろ。あれの濃いやつだから」
「なるほど……」
「適量を超えて使うと、熱湯すら氷水に感じるらしいからな」
「え、こわい」
「なんか不健康な感じするよな……」
「うん……」
ハッカ油風呂、入ってみたいような怖いような。







43 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:20:11 ID:PwVSYfuE0

2021年9月3日(金)

「そう言えば、あれからアリ見ないな」
数日前、仕事部屋にアリが一匹出た。※1
警戒しているのだが、本当にただ迷い込んできただけなのかもしれない。
「いえのまわりね、しらべたの」
「どうだった?」
「まえ、かだんにすーあったしょ」
「縁石どけたら、うぞうぞいたよな」
「あそこにはいなかった」
「完全に駆逐したんだな……」
ダスキンの害虫駆除サービス、さすがである。
「ほかのとこもみたけど、あり、いっぴきもいなかったよ」
「てことは、ただの迷いアリだったのか」
「そうかも」
「よかった……」
ほっと胸を撫で下ろす。
「あり、ひどいもんね……」
「飛ばない、素早くない、気持ち悪くない。でも、大量に入ってくるからな」
「うん」
「単体じゃなくて集団だから、潰しても潰しても入ってくる。賽の河原で石積んでる気分」
「わかる」
「前回はなかったけど、精密機器に入られたら一発でアウトだ。そういう意味でも実害があるし、放置もできない」
「きをぬいては、いけない」
「その通り」
「いえのまわり、もっかいてんけんする?」
「しとこうか」
うにゅほと一緒に玄関を出て、家の周囲をぐるりと回る。
「たしかに、アリ一匹いないなあ……」
「いえのまえじゃなくて、しゃこのほうのかだんなら、ありいるよ」
「そうなのか」
我が家には花壇が三ヶ所存在する。
家の前、車庫の前、中庭だ。
車庫の前の花壇は家から十メートルほど離れているため、そこまでアリの被害を恐れる必要はない。
「怪しい動きがあれば、アリメツで殺そう」
「そうしましょう」
すべてのアリを駆逐したいわけではない。
家の中にさえ入ってこなければ、それでいい。
上手いこと棲み分けを行いたいものだ。

※1 2021年8月30日(月)参照
 






44 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:21:00 ID:PwVSYfuE0

2021年9月4日(土)

ふと思い立ち、コメダ珈琲店へと立ち寄った。
「きっさてん、ひさしぶりだね」
「たしかにな」
「◯◯、ここきたことある?」
「あるにはあるけど、いつだったかな。随分前だと思う」
「なにがおいしいの?」
「味より、量がすごいってイメージだな」
「りょう」
「いや、味もいいんだろうけど、よく逆写真詐欺なんて言われてるんだよ」
「あ」
何かに思い至ったのか、うにゅほが小さく声を上げた。
「なごやの?」
「たしか、本社は名古屋だったかな」
「しってる、テレビでみた!」
「マジか」
「エビカツのサンド、すーごいおっきかった」
「うん、それ頼んでみようかと思って。エビじゃなくて、普通のカツだけど」
「おー」
「××、ひと切れ食べる?」
「わたし、それでおなかいっぱいになるきーする……」
「そうかも……」
座席に案内されたあと、メニューを開く。
「……写真では、そこまででもないんだけどなあ」
「ふつうにみえる」
「飲み物はどうする?」
「うーと」
しばし思案し、
「アイスココア、なまクリームのってるのかな」
「たぶん」
「ココアにするね」
「じゃ、俺もそうしようかな」
「おそろい」
「お揃いだ」
注文を済ませ、しばし雑談していると、まずアイスココアが届いた。
「──…………」
「──……」
でかい。
と言うか、高い。
標高三十センチくらいある。
「これ、生クリームじゃないぞ……」
「ソフトクリームだ……」
もはや、ちょっとしたパフェである。
ココアを頼んでパフェみたいなものが出てくるとは思わなかった。
「カツパン、大丈夫かな。覚悟はしてるけど心配になってきた」
「たべきれるかな……」
やがて届いたカツパンは、大きめの弁当箱ほどのサイズだった。
「……コメダ、すごいな」
「すごい……」
味は、どちらも美味しかった。
ただし、小腹を満たす用途で訪れるべき店ではない。
ガッツリ食事をとるつもりで来なければ、きっと後悔するだろう。
読者諸兄も御注意を。







45 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:21:24 ID:PwVSYfuE0

2021年9月5日(日)

起床し、ベッドから下りる。
「……腰が痛い」
「こしが」
「痛い」
「だいじょぶ……?」
「しばらくすれば治まると思うけど……」
俺は、もともと腰痛持ちだ。
しばらく前に整体に通って随分と緩和はしたのだが、やはり根治までは難しいらしい。
「こしもむ?」
「いや、まずは腰を伸ばさないと」
ベッドに背中を預け、足を下ろす。
「うぎぎ……」
「いたくない……?」
「……きつい」
「こしもむ?」
「待って、順番がある……」
「そなの?」
「揉んで効くのは筋だろ。まず骨格をだな」
「なるほど……」
思うさま腰を伸ばしたあと、うつ伏せに寝る。
「お願いできますか」
「はーい」
俺の太股を跨ぐように腰掛けたうにゅほが、俺の腰をぐいぐいと押す。
「どうですかー」
「気持ちいいでーす……」
気持ちは良い。
だが、うにゅほのマッサージでは、腰痛には無力だろう。
「ストレッチとかしないとなあ……」
「ようつうにきくやつ?」
「こういうのって、たいてい、痛み始めてからだと遅いんだけどな……」
「そだね……」
「まあ、しないよりは」
「したほういいね」
「××は、腰大丈夫か?」
「いたくないよ」
「痛くなると困るから、一緒にストレッチしようか」
「する」
「それがいい」
「◯◯も、いたくなくなったら、いいね」
「そう願う……」
あまりにひどくなるようなら、また整体へ行こう。







46 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:21:50 ID:PwVSYfuE0

2021年9月6日(月)

「フー……」
腕立て伏せを終え、立ち上がる。
久し振りに筋トレを始めたのだった。
「やっぱ、すげーなまってるわ……」
「まえ、もっとできたもんね」
「アホみたいに筋トレしてた時期と比べたらなあ」
凝り性なので、いざ始めると延々やり続けてしまう。
誰から見てもガチムチだった時期が、たしかにあった。
今はもう、見る影もないが。
「でも、いっきにやらないほういいよ。すこしずつ」
「それはそうなんだけど……」
「◯◯、なんでも、いきなりすごくやるから」
「──…………」
ぐうの音も出ない。
「◯◯、ちょうどいい、にがてだよね。きょくたん」
「はい……」
「なんでだろ」
「なんででしょう……」
自分でもよくわからない。
「よく、0か100か思考って、極端な考え方を戒める言い方があるんだけどさ」
「うん」
「俺は、思考や価値観はそうでもないんだよ。ただ、どうにも行動が極端になってしまう」
「わかる」
「いまさら矯正は難しいだろうなあ……」
「なおしたいの?」
「あー……」
どうだろう。
損をしたこともあるが、得をしたこともある。
どんな性格であれ、一長一短はあるはずだ。
他人に迷惑を掛けず、自分もさして困らないのであれば、このままでいい気もする。
「××は、直してほしい?」
「うーん……」
しばし思案したのち、うにゅほが答える。
「わたしがとめればいいし……」
「──…………」
「とにかく、きんとれ、きょうはここまで」
「はい……」
うにゅほに管理されている。
これはこれで悪くないと思ってしまうあたり、業が深いのだった。







47 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:22:21 ID:PwVSYfuE0

2021年9月7日(火)

「ぐぎ、ぎ……」
足が痛む。
腰が軋む。
腕が上がらない。
完全に筋肉痛なのだった。
「◯◯、だいじょぶ……?」
「大丈夫、では、ないかもしれない……」
ぎぎぎと階段を上がる。
「ロボットみたい」
「昨日、いきなり飛ばし過ぎたな……」
「はやめにとめたのに……」
「××の想定以上に、体がなまってたみたい」
最近、運動と言えば、エアロバイクを漕ぐ以外には何もしていなかったからなあ。
自室に戻り、ベッドに腰掛ける。
「あつ……」
襟元をパタパタさせて、シャツの中に空気を送る。
「ほてってる?」
「火照ってますね、これは」
「せんぷうき、もってくる?」
「いや、扇風機の前まで行くよ。普通に」
さすがに悪い。
のそりと腰を上げ、扇風機のスイッチを入れた。
さやかな風が火照った体を冷やしていく。
「はー……」
思わず吐息が漏れる。
うにゅほが憂い顔で言った。
「きんにくつう、わたし、なにもできないね……」
「いや、十分してくれたよ」
「?」
「昨日、止めてくれただろ。あれがなかったら、もっとひどかった」
「あー……」
「ありがとうな」
「……きょう、きんとれしちゃだめだよ?」
「しない。と言うか、無理……」
「よろしい」
筋肉痛が取れるまで、エアロバイク以外の運動は控えておこう。







48 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:23:03 ID:PwVSYfuE0

2021年9月8日(水)

「うぎ、ぐぎぎぎ……」
本棚の、視線の高さの段に手を伸ばす。
だが、腕が上がらない。
筋肉痛が、まだ治っていないのだ。
「まだいたい?」
「まだ痛いですね……」
「わたし、とる。なにとるの?」
「ギャグマンガ日和の十巻を……」
「はーい」
うにゅほが、本棚の奥の列から単行本を取り出す。
「はい」
「ありがとな」
うにゅほの頭を撫でようとして、
「ぎ」
思わず声が漏れた。
どこが痛いって、腕ではなくて胸筋が痛い。
骨格も、筋肉も、すべてが連動しているのだと改めて痛感する。
それでも無理に腕を上げようとすると、
「◯◯、そのまま」
うにゅほが膝を曲げ、俺の手のひらに頭を擦りつけた。
「これで、いたくないしょ」
「ああ……」
うにゅほの細い髪を、手櫛で梳く。
「なんか、悪いなあ……」
「なにが?」
「××の頭も満足に撫でられないし」
「なでてるし……」
「そうだけどさ」
自分が情けない。
「わたし、◯◯のおせわするの、すき」
「知ってる」
「◯◯、わたしにおせわされるの、きらい?」
「もちろん嫌いじゃないけど、悪いなって気分になる……」
「じゃ、おせわしたいから、されて。わたしがしたいの」
「……うん」
こんな感じで気を遣わせてしまうのが心苦しいんだよな。
だが、それを言ってもうにゅほを困らせるだけだ。
「じゃ、頼むよ。胸のところに湿布貼りたいんだ」
「はーい」
うにゅほが、意気揚々と湿布を取りに行く。
筋トレはほどほどにしよう、うん。







49 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:23:29 ID:PwVSYfuE0

2021年9月9日(木)

愛用しているヘッドホンの交換用ケーブルが届いた。
しばらく前に断線したため、注文しておいたのだ。
「しかし、二週間もかかるとはなあ……」
「おくるの、さぼってたのかな」
「いや、海外からの発送になってる。単に輸送に時間がかかっただけみたい」
「そんなにとおくから……」
「もともと、このヘッドホン自体が海外製品だからな。日本で交換用ケーブルを作ってないんだろ」
ケーブルを取り出す。
「4極のXLR端子使うの、初めてだなあ」
「ふといね」
「ごついな」
「おと、いいのかな……」
「前と変わらないんじゃないか。ケーブルで音質良くなるの、あんまり信じてないし」
「そなんだ」
ヘッドホンの左右にピンを差し込もうとして、
「……これ、どっちが右だと思う?」
「かいてないの?」
「片方に赤、片方に黒のテープが巻いてある」
「うーん……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「しらべる?」
「調べるか」
調べた。
「──こういうの、たいてい右が赤なんだってさ。RedはRightって覚えるといいらしい」
「わかりやすい」
赤のほうのピンを右に、残りを左に差し込み、XLR端子をDACアンプに挿入する。
「さ、ちゃんと聞こえるかな」
ヘッドホンを装着しようとして、
「──だッ!」
左手を滑らせ、イヤーパッドがこめかみを痛打した。
間抜けなわりに、それなりに痛い。
「わ、だいじょぶ?」
「大丈夫、大丈夫……」
こんなもの、大丈夫と言うしかない。
改めてヘッドホンを装着し、音楽を再生する。
音質は元の通りなのだろうが、この二週間を普通のイヤホンで過ごしていたため、とても素晴らしいものに感じられた。
「……うん、やっぱこれだな」
「わたしも」
「はいはい」
うにゅほの頭にヘッドホンを着ける。
「うん、やっぱこれだなー」
「言いたいだけだろ」
「うへー」
こうして、久し振りに音楽鑑賞に勤しむのだった。







50 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:23:53 ID:PwVSYfuE0

2021年9月10日(金)

「──……?」
まただ。
また、自室寝室側の常夜灯がついている。
「××、つけた?」
「つけてない……」
「俺も、つけてない」
「さいきん、よくついてるよね」
「ああ」
「わたし、◯◯がつけてるのかとおもってた……」
「俺も最初は××かと思ったけど、理由がないしな」
「うん」
常夜灯に気付くのは、決まって夕刻だ。
俺も、うにゅほも、自室にいない時刻である。
家族が部屋に入ってきて、常夜灯だけつけていくとも思えない。
となれば、
「自動点灯になってる、とか……」
「あー」
可能性としては、いちばんあり得るように思える。
「……でも、自動点灯機能なんてあったっけ?」
「うと」
うにゅほが、寝室側シーリングライトのリモコンを手に取る。
「じどうてんとう……」
「ある?」
「みる?」
「見る」
リモコンを受け取る。
明るさ調節、全灯、消灯、常夜灯、スリープタイマーだけのシンプルなリモコンだ。
「ない、とおもう」
「ないな……」
「スリープタイマーって、けすやつだよね」
「消すやつだな」
「つけるやつではない……」
「なんで勝手につくんだ」
「わかんない」
「……無意識につけてる、とか」
「たまになら、わかるけど」
「頻繁だもんな」
「だれかがつけてるのは、ないとおもう」
「だよな……」
謎は深まるばかりである。
真相がわかり次第、また日記にしようと思う。







51 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:24:17 ID:PwVSYfuE0

2021年9月11日(土)

「はー……」
仕事を終え、腰を伸ばす。
ずっと前傾姿勢でいたため、すっかり腰が固まってしまっていた。
「しごと、おわった?」
「終わった終わった」
「たいへんだね、どようびなのに……」
「それは、うん……」
それも、他人の連絡ミスによる尻ぬぐいだ。
愚痴になるだけなので、うにゅほには言わないけれど。
「まあ、三時間くらいで終わってよかったよ。一日仕事になるかと思ってたから」
「はんにちでもたいへんなのに……」
「これも休日出勤って言うのかな。在宅だけど」
「さあー」
自分で言っておいてなんだが、わりとどうでもいい。
「こしもむ?」
「腰を揉むより、伸ばしたいんだよな……」
「のばす……」
「あ、そうだ」
「?」
ソファにうつ伏せになる。
「腰の上に座ってみてくれるか」
「え、いいの?」
「いいのいいの」
ソファが沈むことで、腰が伸びる。
気がする。
「じゃ、ゆっくりすわるね……」
「お願いします」
うにゅほが、俺の腰の上に、そっと腰掛ける。
腰に腰掛けるってわかりにくいな。
「お」
うにゅほの体重で、ソファが軋む。
「どう?」
「おー……」
腰は、伸びない。
思ったより、腰の部分だけ沈まなかったからだ。
だが、腰の上に適度な重みが乗っているのは、素直に心地良かった。
「しばらくこのまま……」
「はーい」
「テレビ見てていいよ」
「はい」
そのまま十分ほど、うにゅほの下敷きになっていた。
傍から見れば変態だったかもしれないが、腰の調子は良くなった。







52 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:24:41 ID:PwVSYfuE0

2021年9月12日(日)

「──…………」
舌先で、左上の奥歯を押す。
痛みが走る。
それも、かなりのものだ。
「どしたの……?」
苦虫を噛み潰したかのような俺の表情を見てか、うにゅほが心配そうに声を掛けてくれた。
「……歯が痛い」
「え、だいじょぶ?」
「ちょっと、大丈夫じゃないレベルで痛い……」
「むしば……?」
「虫歯、ではないと思う……」
虫歯の痛みは何度も経験している。
冷たいものがしみたりはしないし、そもそもの痛みの種類が異なる感じだ。
「押すと響くし、何もしなくても痛い。なんだこれ……」
「はいしゃさん」
「行きたいよ。行きたいけどさ……」
カレンダーに視線を向ける。
今日は、日曜日だ。
「◯◯、びょういんいけないひ、ぐあいわるくなる……」
「……うん」
ほんと、なんなんだろう。
神様に嫌われているのだろうか。
「歯医者は明日行くとして、だ」
「うん」
「とにかく今は、痛み止めだ。ロキソニン飲もう……」
「そんなにいたいんだ……」
「耐えられないほどでもないけど、かなり気が散るから」
ロキソニンを緑茶で飲み下す。
「なんでいたいんだろ……」
「こればっかりは、専門家に診てもらわないと」
言いつつ、調べるだけは調べてみる。
「……歯根膜炎、歯根嚢胞、根尖性歯周炎」
「──…………」
「名前だけで気が滅入ってくるな……」
「うん……」
「まあ、いいや。明日は歯医者だ。行きたくないけど、痛むよりまし」
「そうしようね」
完治までに、どのくらいかかるのか。
時間も金銭も、集中力さえ奪われていく。
病気なんて、ろくなことがない。







53 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:25:07 ID:PwVSYfuE0

2021年9月13日(月)

歯医者に行ってきた。
帰宅すると、うにゅほがリビングでテレビを見ていた。
「ただいま」
「あれ、はやい……?」
「まあ、うん」
なにせ、三十分前に家を出たばかりなのだ。
「さいふ、わすれた?」
「いや」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「歯医者に行って、レントゲンを撮った」
「うん」
「最近のレントゲンって、現像せずにタブレットで確認できるんだな」
「そなんだ」
「で、だ」
「うん……」
思わずか、うにゅほが背筋を伸ばす。
「……なんでもなかった」
「?」
「なんの問題もなかった」
「……うん?」
「外から見ても、レントゲンで見ても、なにひとつ異常がなかった」
「どうして……?」
「俺も××と同じ気持ちだけど、そうだったんだよ……」
「あんなにいたかったのに」
「あんなに痛かったのに」
「みのがした、とか」
「腕の良い歯医者さんだし、それはないと思う」
「はー、いまは?」
「それが、実は今朝から痛くないんだよ」
「……すこしも?」
「すこしも」
「おしても?」
「押しても」
「かんでも……」
「噛んでも」
「なんだったの……?」
「わからん……」
何事もなかったと喜べばいいのかもしれないが、逆に怖い。
痛みには理由があるはずで、その原因もわからないうちに治まってしまっては、部屋の中で虫を見失ったような不安感がある。
「しばらく様子を見てくださいってさ」
「よかった、のかなあ……」
「わからん……」
ともあれ、できることもない。
せめて、いつもより長く歯磨きをしよう。







54 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:25:30 ID:PwVSYfuE0

2021年9月14日(火)

粒ガムを口に入れ、奥歯で噛む。
「──…………」
ひとつも痛くない。
「マジでなんだったんだろうな、あの激痛……」
「きのせいじゃないもんね」
「"気がする"で痛むこともあると思うけど、そのレベルじゃなかったから……」
「どのくらい、いたかったの?」
「……難しいな」
痛みには、わかりやすい単位がない。
"痛みの単位はハナゲ"だなんてジョークがあったけれど、定量化は難しいだろう。
「押せば痛い、噛めば痛い、何もしなくても痛いって言ったろ」
「うん」
「夢の中でも痛かった……」
「うわ」
うにゅほが、左の頬に手を当てる。
「ゆめでもいたいの、やだね……」
「××も、ちゃんと歯磨きするんだぞ」
「◯◯、ちゃんとはみがきしてたのに」
「してるんだけどな……」
今回の痛みは、歯磨きの巧拙とは無関係だろう。
「……まあ、しっかり歯磨きしておけば、虫歯は防げるから」
「うん」
「××さん、虫歯はないかな?」
「ないよ」
「本当かな」
「ない──と、おもうよ」
「アイス食べてもしみない?」
「しみない」
「しみない程度の軽い虫歯があるかもしれない」
「えー……」
「今度、歯医者行く?」
「……いかない」
「怖い?」
「こわい」
「じゃあ、ちゃんと歯磨きしような」
「してる……」
「知ってる」
「もー」
歯は大切だ。
虫歯とは関係なかったけれど、今後は歯磨きを普段より長めにすることに決めた。







55 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:26:02 ID:PwVSYfuE0

2021年9月15日(水)

ふと、思う。
「──××ってさ」
「?」
「健康だよな」
「うん」
「痛いとことか、ない?」
「ない、かなあ……」
「苦しいとこは?」
「ない……」
「快眠だし」
「うん」
「虫歯もない」
「たぶん……」
「可愛いし」
「うへー……」
「無駄毛ないし」
「うん」
「視力もいい」
「みえるよ」
「可愛いし」
「また」
「それに可愛い」
「──…………」
「おまけに可愛いもんな」
「……もー」
両頬に手を添えて、うにゅほが照れる。
「あと、髪もすべすべ」
「つづくの……?」
「肌もしっとり」
「──…………」
「爪も綺麗にしてるし」
「……うと」
「面倒見がよくて、優しいし」
「うー……」
「それに、働き者だ」
「なんなの……?」
うにゅほの顔が、ほんのり紅潮している。
「いや、××は健康だなと思って」
「そのあと」
「なんか褒めたくなって……」
「なんか」
「いつも思ってても、たまには言葉にしないとさ」
「……それは、そうかも」
「だろ」
「じゃあ、わたしも、◯◯のことほめるね」
「え」
「まずは──」
うにゅほの口からまろび出た俺への賛辞は、さすがに省略する。
こうも褒められると、なかなか照れるものである。






56 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/09/17(金) 03:26:59 ID:PwVSYfuE0

以上、九年十ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2021年09月17日 19:32  ID:70.KHXIO0
    コメント欄だけを読みに来るのはマナー違反。


  • 2  Name  名無しさん  2021年09月17日 19:34  ID:RNg.ehVn0
    管理人の家族を解放しろ


  • 3  Name  名無しさん  2021年09月17日 19:37  ID:bToT5spx0
    管理人の両親を解放しろ


  • 4  Name  名無しさん  2021年09月17日 19:38  ID:H.MSbC7A0
    此所のコメントだけ見るようになってはや2年か……


  • 5  Name  名無しさん  2021年09月17日 19:41  ID:uz7Tt4tW0
    早くセックスしろ


  • 6  Name  名無しさん  2021年09月17日 19:45  ID:3rTSUmDb0
    至急 助けてくれ道具屋店主だ

    その日は古くからの馴染みである魔法使いが店に訪ねにきていた。最近見つけたBOSEのBluetoothスピーカーで一緒に音楽を聴いたんだ。そのあと淫夢動画が見たくなり、魔法使いに別れを告げたあと店の奥にある自分の部屋で動画を再生した。すると音が出ないので音量を上げたりしていると魔法使いが部屋に来て怒りはじめた。店頭にあるスピーカーで大音量で流れてしまったようだ。しかもタブレットの画面まで見られてしまった。運の悪いことに動画の内容は課長こわれるで台詞のおまんこがこわれるーなどを聞かれてしまったそうだ。これはお笑い番組だよ。と言い訳したが生憎無修正で信じて貰えず明日病院へ相談にいくと言っている。どうしたらいいだろうか?このままだと一生ホモだと思われてしまう。

    補足
    皆さんありがとう。
    あのあと魔法使いが病院で性同一性障害について教えられたらしくそういう事情なら見てもしょうがない、理解が無くて悪かったと涙目で謝ってきてどうしたらいいのかわからなくなったよ...
    ネタだって何度言ってもわかって貰えないので(確かに僕も淫夢を知らなければ無修正のホモビみてネタだって言われても絶対信じないだろう)ホモとして生きていくしかないみたいだね(絶望)


  • 7  Name  名無しさん  2021年09月17日 20:06  ID:FrVlRO6R0
    管家開!管家開!


  • 8  Name  名無しさん  2021年09月17日 20:07  ID:wMZ2UXr10
    フフッ…わかんねぇだろ。俺もわかんない。


  • 9  Name  名無しさん  2021年09月17日 20:36  ID:skL.Nlxz0
    ほなお人形さん片づけるで


  • 10  Name  名無しさん  2021年09月17日 20:59  ID:MGczXyX00
    作中にマスクや手洗いの描写がなく、作者が入院患者か施設で生活しているという説が現実みを帯びたな


  • 11  Name  名無しさん  2021年09月17日 21:07  ID:T77w1WxW0
    ほとんど同じことしか書いてないのが“ガチ”っぽくてキツい
    これがよつばとのパロディみたいなノリで書かれてるの嫌じゃね…?


  • 12  Name  名無しさん  2021年09月17日 22:15  ID:4z8mNUSx0
    内容はともかく、同じことを10年近く続けるのって凄いと思うんだよね…
    内容はともかくさ


  • 13  Name  名無しさん  2021年09月17日 23:49  ID:ZSjGhdt00
    >>12
    それを狂気と言う


  • 14  Name  名無しさん  2021年09月18日 00:32  ID:CcvWT31k0
    >>1
    何でバレたし


  • 15  Name  名無しさん  2021年09月18日 02:39  ID:GO8RlR8D0
    この文章全部読んだら頭おかしなるで


  • 16  Name  名無しさん  2021年09月18日 09:14  ID:AzAZGjY00
    毎回コメントだけ見に来てるけどさ
    ちゃんと読んでるっぽいやつが居るの驚きだわ


  • 17  Name  名無しさん  2021年09月18日 12:02  ID:UnCXx0mX0
    まだつづいてたのか


  • 18  Name  名無しさん  2021年09月18日 13:02  ID:z0vH.n7Y0
    この日記が十年目に達した時、かの国が経済破綻しそう


  • 19  Name  名無しさん  2021年09月18日 13:26  ID:8AgekcID0
    もうすぐ10年で俄然興味が湧いてきたという


  • 20  Name  名無しさん  2021年09月18日 13:55  ID:fdkoxilF0
    ネクロノミコン


  • 21  Name  名無しさん  2021年09月18日 14:04  ID:fdkoxilF0
    日本四大奇書
    「ドグラ・マグラ」
    「虚無への供物」
    「黒死館殺人事件」
    「うにゅほとの生活」


  • 22  Name  名無しさん  2021年09月18日 19:20  ID:Qkf7yLzv0
    糖質


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