2021年12月02日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



123 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:09:48 ID:2ff2zivY0

2021年11月16日(火)

「◯◯、◯◯」
「んー」
「そろそろ、うもうぶとんだそ」
「昨夜寒かったもんな……」
「うん……」
十一月も中旬だ。
もう、冬と言って差し支えない。
「おとうさんとおかあさんは、もうだしたって」
「(弟)は?」
「しらない」
「寒がりだから、とっくに出してそうだな」
「そうかも」
重い腰を上げ、押し入れへと向かう。
「××は、夏布団のカバー外しておいて」
「わかった」
押し入れから羽毛布団とカバーをふたりぶん取り出し、自室へと運び込む。
「わ、すーごいもこもこ」
「これ、絶対あったかいわ」
去年も使っていた羽毛布団だが、夏布団と比べると質の違いが際立つ。
「ねるの、たのしみ」
「むしろ暑いかもしれない……」
「かも」
「じゃ、カバー掛けるか」
「うん」
布団カバーをベッドの上に敷き、羽毛布団を中に押し込んでいく。
「ふー」
「あとは、ずれ防止の紐かな」
「うん」
「じゃ、一緒に入ろう」
「わたし、みぎしばるね」
「俺は左で」
ふたり並んで上半身を布団カバーに押し込み、ずれ防止紐を結束していく。
手早く結んだあと、右を見る。
「──…………」
カバーを透かす明かりに照らされて、うにゅほが一所懸命紐を結んでいるのが見えた。
「なんかさ」
「?」
「よくわからないんだけど、青春感ない?」
「せいしゅん?」
「手出して」
「はい」
うにゅほが、こちらに手を差し出す。
その手に指を絡ませた。
「こう、狭いところでふたりきりって感じが」
「……ふふ」
くすりと笑って、うにゅほが繋いだ手に力を込める。
「そうかも」
「だろ」
しばらくのあいだ、布団カバーに頭を突っ込んだまま、他愛のないことを話し続けていた。
ちなみに、ずれ防止紐は、布団カバーを裏返せば簡単に結ぶことができます。








124 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:10:16 ID:2ff2zivY0

2021年11月17日(水)

視界の端を、かすかに横切るものがあった。
「──…………」
視線を向けると、それはもういない。
「……地味ーにストレスだな」
「こばえ?」
「そう」
「ずっといるねえ……」
数日前から、一匹の小バエを自室で見掛けるようになった。
手で潰そうにも、殺虫剤を噴射しようにも、まばたきのあいだに見失ってしまう日々が続いているのだった。
「実害があるわけじゃないんだけど、気になる」
「わかる」
「いてもいいから、視界に入るなよな……」
ぼやいても、小バエに通じるわけもない。
「あ、こんなのは?」
「作戦?」
「さくせん」
「聞こう」
「まどあけて、でかける」
「……なるほど。凍死させるわけだな」
「そう」
「頭がいい!」
「うへー」
「室温何℃なら何時間で死ぬとか、目安があればいいんだけど……」
小バエの生態を調べる。
「──小バエの成虫が活動できる気温は、約20℃以上なんだって」
「いまなら、すぐしぬかな」
「真冬なら確実だけど、今の時期はどうだろう。一時間程度だと、室温も下がりきらないだろうし……」
「きのう、◯◯のびょういんいくとき、あけてったらよかったね」
「たしかに」
だが、後の祭りである。
「なんか、適当に出掛ける用事を作って──」
そう言い掛けたとき、
「あ」
うにゅほが右手を目の前で握り締めた。
ゆっくりと手を開く。
手のひらに、小さな黒い点があった。
「しんだ」
「──…………」
「──……」
「よくやった!」
「うへー」
こうして、数日のあいだ俺たちを煩わせていた小バエは、無事に退治されたのだった。







125 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:10:41 ID:2ff2zivY0

2021年11月18日(木)

「──……あれ?」
ふと気付く。
時刻は午後九時を回っていた。
「俺、今日何してたっけ……」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いつもどおりだったきーするけど……」
「そうだっけ」
「うん」
「なんか、気が付いたらこの時間で、今日の記憶があまりない……」
「うと、だいじょぶ……?」
うにゅほが、心配そうに、俺の額に手を当てる。
「ねつない」
「体調は悪くないよ」
「あたまとか、うった?」
「打ってないと思うけど……」
自信はない。
「なんか、ぼけーっと過ごしてたんだろうな」
「そうなのかな……」
「悪い、変に心配かけたよな。気にしないで大丈夫だから」
「なにかあったら、いってね」
「真っ先に言うよ」
「うん」
ようやく安心したのか、うにゅほが表情を緩ませる。
「それより、今日は何の日だと思う?」
「いい、いやのひ?」
「いや?」
「いやん」
「──…………」
ちょっと可愛い。
「……いまのなしね」
「はいはい」
「うーと、なんだろ」
「いいイヤホンの日、とかでもあるんだけどさ。かなりのすっきりパターンが紛れてたんだ」
「きになる」
「答え、言う?」
「いって」
「土木の日」
「どぼく?」
「土に木で、土木」
「──…………」
しばし思案したのち、うにゅほがはっとする。
「じゅういちと、じゅうはちだ!」
「その通り」
土木の二文字を分解すると、十一と十八になる。
「すっきりパターンだ……」
「だろ」
「こういうの、たくさんあればいいのにね」
「まったくだな」
世の中には、適当な記念日が多すぎる。
だからと言って困ることは一切ないのだけれど。
 






126 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:11:05 ID:2ff2zivY0

2021年11月19日(金)

「ンあー……」
ごろんごろん。
「だるい……」
「てんき、わるいもんね」
「低気圧来てますわ……」
耳を澄ませば、雨音が聞こえる。
「××、冬至っていつだっけ」
「うーと、クリスマスのまえくらいだったきーする」
「そうだっけ」
「たしか」
「じゃあ、まだまだ日が短くなっていくのか……」
気分がさらに落ち込んでいく。
「……そのうち、世界は闇に飲み込まれていくんじゃないか」
「やみに」
「極夜、みたいな」
「ずっとよるのやつだっけ」
「そうそう」
「ずっとひるのやつは?」
「白夜だな」
「びゃくやみたいに、せかいがひかりにつつまれることもあるし……」
慰めてくれているらしい。
「日はまた昇る」
「うん」
「でも沈む」
「……うん」
「やまない雨はない」
「そう」
「晴れ続けることもない」
「……うん」
「でも、そういうものだよな。否応なしに、物事は変わっていく」
「そだね」
「ほら、雨だって──」
耳を澄ませるまでもなく、雨足が強まる音がした。
雨がみぞれに変わったのか、窓ガラスを叩く音が乾き始める。
「……ンあー」
ごろんごろん。
「つらい……?」
「つらみ……」
「つらみ?」
「つらあじ……」
「つらあじ」
「××、膝枕して」
「うん」
しばしのあいだ、うにゅほの膝枕を堪能する。
そのときだけ、ほんのすこし気の休まる俺だった。







127 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:11:27 ID:2ff2zivY0

2021年11月20日(土)

久方振りに晩酌をした。
「あ゙ー……」
しばらくアルコールを摂取していなかったためか、やたらに頭が痛かった。
「まだ大して飲んでないのに……」
「だいじょぶ?」
膝の上のうにゅほが、心配そうにこちらを見上げる。
「大丈夫、大丈夫。ちょっと頭痛がするだけ」
「のむのやめよ。おとうさんにあげよ」
「……そうするか」
お酒なんて、無理をしてまで飲むものではない。
チューハイの缶を手に取ったうにゅほが、膝から下りる。
「おとうさんに、わたしてくるね」
「頼むよ」
目を閉じ、顔を上げる。
シーリングライトの光が目蓋を貫通し、視界が赤く感じられた。
しばらくして、
「あげてきたー」
「……なんか言ってた?」
「なさけねーっていってた」
父親らしい。
「ほんと、久し振りだからな。何ヶ月も飲んでなかった気がする」
「そだね」
「……なんで飲まなくなったんだっけ」
「おぼえてないの?」
「さっぱり」
「けんこうしんだんのけっか、わるかったんだよ」
「……あー」
思い出した。
「肉類とアルコールは控えめに、って書いてあったんだ……」
「それで、きんようびのばんしゃく、やめたんだよ」
「てことは、六月くらいからずっと飲んでなかったのか」
「ごかげつ」
「五ヶ月断酒すると、こんなにアルコールに弱くなるんだな。飲んでる最中に頭痛がしたのなんて、記憶にないくらい昔の話だぞ」
「もともと、たいちょうわるかったとか」
「そういうわけでもないと思うけど……」
自信はない。
「はい、むぎちゃ」
うにゅほが、冷蔵庫からペットボトルを取り出す。
「ありがとう」
「これからは、おちゃにしましょうね」
「はい……」
健康志向で生きていこう。







128 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:11:50 ID:2ff2zivY0

2021年11月21日(日)

膝の上のうにゅほを抱き締めながら、船を漕ぐ。
重い頭をふらふらさせていると、
「ねむいの?」
と、うにゅほが尋ねた。
「眠くない……」
眠いとき、反射的に否定してしまうのは何故なのだろう。
「ねむいでしょ」
「……眠い」
「ねよ」
「いや……」
ぎゅ、とうにゅほを抱き締め直す。
「うとうとしてるのも、気持ちよくて」
「かぜ、ひかない?」
「××があったかいし……」
「うーん……」
うにゅほが、しばし思案する。
「くび、いたくない?」
「すこしだけ」
「こしは?」
「今は大丈夫」
「なら、いいのかな……」
「マジで眠くなったら言うからさ」
「ん」
頷き、うにゅほがディスプレイへと向き直る。
画面では、ゆっくり霊夢と魔理沙が雑学を紹介していた。
「××、こういうの好きだよな」
「すき」
「俺も好きだけど」
「◯◯、いろんなことしってるもんね」
「雑学だの豆知識だのトリビアだの、そういう毒にも薬にもならないことばっかりだけどな」
「そかな」
「たまに披露して得意にはなれる、くらい」
「すごいとおもうけど……」
「専門で学んでる人たちのほうが、ずっとすごいんだぞ」
「んー……」
しばらく首をかしげたあと、うにゅほが言った。
「だれかよりすごい、じゃなくて。わたしは、◯◯は、すごいとおもう」
「──…………」
「じゅんばん、つけるものじゃないし……」
「……そうかも」
謙遜し過ぎたかもしれない。
「××もすごいぞ」
「え、どこが?」
「すごく可愛い」
「──…………」
うにゅほが小さく俯き、
「……うへ」
照れ笑いを浮かべた。
可愛い。
「なんか、目が冴えてきたな」
「◯◯も、どうがみよ」
「見る見る」
そんなことを言いつつ、五分後にはまた船を漕ぎ始める俺だった。
寝不足なのかな。







129 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:12:13 ID:2ff2zivY0

2021年11月22日(月)

「……最近、なんか、ずっと眠い」
「ずっと」
「冬だからかなあ……」
「ふゆ、ねむいもんね」
「××も?」
「なつよりは」
「そうなんだ。夏も冬も元気だって、勝手に思ってた」
「げんきはげんきだけど……」
「眠い」
「ねむい」
「……言われてみれば、膝の上でうとうとしてること多いか」
「うん」
「トイレ行きたくなったとき、困るやつ」
「おこしていいよ?」
「最終的には起こすけど、なんか悪い気がして」
「おこしてね」
「わかりました」
この場は素直に頷いておく。
「──でも、なんか嬉しいんだよな」
「うれしい?」
「××が膝の上で寝てると」
うにゅほが目をぱちくりさせる。
「そなの?」
「想像してみてくれ」
「はい」
うにゅほが目を閉じる。
「猫がいます」
「います」
「猫が、あなたの膝に乗りました」
「……のりました」
「くあ、とあくびをして、あなたの膝の上で眠り始めます」
「──…………」
「どう思いましたか?」
「うれしい」
「な?」
「わたし、ねこ?」
「どちらかと言えば犬だけど……」
「わん」
可愛い。
「こう、心の底から信頼されてる感じがするんだよな」
「しんらいしてる」
「知ってる」
「わたしも、◯◯が、ひざまくらでねてくれると、うれしいよ」
「信頼してるからな」
「しってる」
微笑み合う。
互いに全幅の信頼を置ける関係など、人生のうちでいくつ作ることができるだろう。
自分たちは、きっと、恵まれている。
そう思った。







130 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:12:36 ID:2ff2zivY0

2021年11月23日(火)

数日ぶりに自室でカラオケをしていて、思ったことがあった。
「歌、上手くなりたいよな……」
うにゅほが、きょとんとする。
「◯◯、うまいとおもう」
「普通、普通」
「そかな」
「歌が好きなだけの素人だよ」
「わたしこそ、あんましうまくない……」
「声を出すことに慣れてきたからか、どんどん上手くなってきてる」
「うへー……」
「上手くなると、楽しいだろ」
「うん」
「だから、上手くなりたいなって」
「そか」
うにゅほが微笑む。
「わたし、おうえんするね」
「ありがとう」
「ほんとか、あるのかな」
「あると思うよ。ボイストレーニングの教材とか、探せばいくらでも」
「かう?」
「それもいいけど……」
思案する。
「……YouTubeとかに、良い動画ないかな」
「ありそう」
「探してみるか」
「そうしましょう」
YouTubeで"ボイストレーニング"と検索し、再生数の多い動画を開く。
「みおわったら、うまくなってるかも」
「それはすごいな」
軽く雑談をしながら動画に集中し、
「──…………」
開始一分で停止ボタンを押した。
「どしたの?」
「……ノリが、きつい」
「あー……」
YouTuberの悪いところ全部乗せみたいな、ハイテンションの寒いノリが無遠慮に心を折ってくる。
「終始この調子だと、さすがに無理だぞ……」
「べつのにする?」
「別のにしよう……」
幸い、ボイストレーニングの動画は腐るほど存在する。
ちょくちょく覗きながら、すこしずつ歌唱力をアップしていこうと思った。







131 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:13:04 ID:2ff2zivY0

2021年11月24日(水)

朝起きると、窓の外を雪がちらついていた。
「冬だこれ……」
「あ、おはよー」
「おはよう。冬だこれ」
「ふゆ、きたね」
「来てしまいやがりましたわね……」
ただでさえ気分が滅入るのに、雪かきまで課されるのだからたまらない。
「ゆき、すーごいふったとこ、あるんだって」
「どこ?」
「ほろかない」
「どこ?」
「どうほく……?」
「五十センチくらい?」
「ななじゅうななせんち……」
「え、やば」
うにゅほが半分埋まってしまう。
「ことし、ゆき、おおいかもだって」
「──…………」
「ゆきかき、がんばろうね」
「うん……」
今から憂鬱である。
「冬に、もっと魅力があればいいんだけどな」
「みりょく」
「だって、あまりにデメリットが多すぎるだろ。それを補って余りある魅力がないと、他の季節に勝てない」
「うーと、ゆき、きれい」
「新雪は綺麗だけど……」
「スキーができる」
「しないし」
「──…………」
「──……」
「ゆきかき……」
「それ、欠点なんだよね」
「もうない」
「それでも冬好きか!」
「わたし、はるも、なつも、あきもすきだし……」
「そうだった」
「あ、さむいのは?」
「寒いのも欠点だと思うけど」
「なつの、あついのは?」
「……風情だな」
「ふゆの、さむいのも、ふぜい」
うにゅほが、俺を抱き締める。
「くっついたら、なつより、きもちいいよ」
「──…………」
一瞬、冬も悪くないと思ってしまったあたり、俺は相当単純らしい。
まあ、いいか。







132 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:13:29 ID:2ff2zivY0

2021年11月25日(木)

「ただいまー」
「んが」
自室で昼寝をしていたところ、うにゅほが意気揚々と帰宅した。
「どうだった……?」
「すごかった」
「いくらした?」
「うーと」
数秒思案し、うにゅほが答える。
「よんひゃく、ごじゅうまんえん」
「……けっこうしたな」
「うん」
「オプションたくさんつけたろ」
「そうでもないとおもうけど……」
父親が、恐らく人生で最後となる新車を購入したのだ。
うにゅほは付き添いである。
「なんて車だっけ」
「まつだの、しーえっくすふぁいぶ」
「母さんと揉めてたけど、結局何色にしたんだ?」
「しろ」
「ああ、白になったんだ」
「いいしろだよ」
「そっか」
「◯◯も、きたらよかったのに……」
「眠くて」
「ならしかたない」
「それに、買えば嫌ってほど見るし乗るしなんなら洗うわけだから……」
「たしかに」
ベッドから下りて、伸びをする。
「それで、いつ届くんだ? 来週くらい?」
「らいねんの、しがつくらい」
すこし驚く。
「……随分かかるんだな」
「こうじょう、たいへんみたい」
「ああ、半導体不足で」
「ふゆ、のれないね」
「冬に新車乗り回すの怖いし、良かったかもしれないな」
「へこんだりしたら、おとうさん、きげんわるくなるもんね……」
「だな」
免許は七十歳で返納すると言っているから、あとほんの数年だ。
最後の新車を楽しみきってほしいと思った。





133 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:13:56 ID:2ff2zivY0

2021年11月26日(金)

きな粉とすりゴマをヨーグルトに入れて食べるのが好きだ。
「◯◯、いれすぎなきーする……」
「これくらいが美味いんだよ」
ぐるぐると掻き混ぜると、ヨーグルトがペースト状になった。
「……入れすぎたかも」
「でしょ」
ひとくち食べる。
「粉っぽい……」
「わたしの、すこしあげるね」
うにゅほが、自分の深皿から、まだ何も混ぜていないヨーグルトを分けてくれる。
「ありがとな」
「いえいえ」
改めて混ぜると、粉っぽさはだいぶ軽減された。
「××は、きな粉とゴマ混ぜないの?」
「まぜるけど、ちょっとだけ」
そう言って、スプーンにすり切り一杯ずつを入れる。
「少なくない?」
「すくなくないよ、ふつうだよ」
「山盛り入れよう」
「◯◯みたいになるし……」
「ですね」
きな粉とすりゴマを入れると、ヨーグルトの酸味が薄れ、より甘く感じる。
酸味が好きという人には推奨できない食べ方だ。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
ヨーグルトをぺろりとたいらげ、食器を洗おうと腰を上げる。
「あ、わたしあらうね」
「いいの?」
「うん」
うにゅほが、ふたりぶんの食器を手に、台所へ向かう。
いい子だ。
そんなことを思いながら、うにゅほの小さな背中を眺めていると、
「わ! ◯◯、きて!」
「どした」
すこし慌ててそちらへ向かう。
「みて、まわってる!」
シンクに視線を落とす。
そこには、シャワーの水圧によって、深皿のふちをなぞるようにくるくる回るスプーンの姿があった。
「おー、止まらない……」
「ずっとまわってる」
「たまたまこうなったの、すごいな」
「でしょ」
うにゅほが得意げに胸を張る。
「さ、あらいましょ」
俺に見せて満足したのか、うにゅほがあっさりとスプーンを取り上げた。
なんとなく、幸せだと思った。







134 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:14:22 ID:2ff2zivY0

2021年11月27日(土)

「──…………」
最近、もう、ずっと眠い。
放っておくと、いつまででも寝てしまう。
「眠れないのと寝過ぎるの、どっちがいいのかな……」
「ねれないよりは……」
「まあ、そうか」
健康には良いのかもしれない。
だが、可処分時間がガンガン目減りしていくのはメンタルに悪い。
「どうして、こう、中間がないかねえ……」
バランスを取るというのは、俺にとって、恐ろしく難しいことらしい。
「きょう、なんじかんねた?」
「えーと」
アップルウォッチとiPhoneで睡眠時間を確認する。
「まだ八時間半だけど、これから増える予定……」
なにせ、眠い。
「なにかしたら、ねむけさめるかな」
「うーん……」
俺の眠気って、粘着質でしつこいんだよな。
だが、何もしないよりはましだろう。
「眠気、覚ましてみるか」
「うん」
「なにする?」
「なにしよう」
「ノープランでしたか」
「はい……」
「体を動かす系のがいいのかな」
「えあろばいく、こぐ?」
「漕ぐか」
うにゅほが、チェアの左隣に設置したエアロバイクに跨がる。
俺が漕ぐのは、デスクの下に仕込んだ小型のものだ。
「おへやサイクリング、たのしいよね」
「ひとりで漕ぐより、ずっとな」
雑談を交わしながら、エアロバイクを漕ぎ続ける。
軽く汗ばんできたころ、
「ねむけ、どう?」
「あー……」
天井を見上げる。
「さっきよりは、まあ」
眠いは眠いが、今すぐベッドに駆け込むほどではない。
「よかったー」
「このまま続けてみるか」
「うん」
小一時間ほどエアロバイクを漕いだ結果、
「──……んが」
ほどよい疲れに微睡む俺なのだった。





135 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:14:44 ID:2ff2zivY0

2021年11月28日(日)

「あっ」
いつものように日記を書こうとして、ふと気付く。
「?」
「日記をつけ始めてから、十年経ってた」
「おー」
「三日前に……」
「わすれてたんだ」
「忘れてました」
「◯◯、きねんびとか、ちゃんとおぼえてるのに」
「初めて日記を書いた日とか、記念日でもなんでもなくない?」
「そうかも……」
「ちょうど十年だから、なんだってこともないし……」
「でも、じゅうねんつづくの、すごいね」
「それは、我ながら思う」
ものぐさな自分が、よく十年間も日記を続けられたものだ。
「つぎは、にじゅうねん?」
「どうだろ」
明日のことは、明日にならなければわからない。
不意に日記をつけるのが面倒になる可能性もなくはないのだ。
だが、
「……なんだかんだ、十年後も書いてる気がするなあ」
「にじゅうねんめも、わすれてそう」
「あり得る」
うにゅほの言葉に苦笑する。
一年続いたから二年とか、千回続いたから二千回とか、目標を持って日記を書いたことなどない。
なんとなく毎日書いてたら、十年続いてしまっただけだ。
案外、こういった近視眼的なメンタリティのほうが、物事は長く続けられるのかもしれない。
「しかし、眠い……」
「ねむいの」
「眠い」
「ねよ」
「まだ日記書いてないし」
「いちにちくらい、かかなくていいきーするけど……」
「書かないと、なんか気持ち悪くてさ。風呂入ってないみたいな感覚」
「あ、それはだめだ。きもちわるい」
「だろ」
「じゃあ、かいたらねようね」
「はーい」
さっさと書き終えて、寝よう。
 







136 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:15:07 ID:2ff2zivY0

2021年11月29日(月)

「いいにくのひ」
カレンダーに視線を向ける。
「あー」
たしかに。
「ステーキ肉安売りしてそう」
「してそう……」
「してた?」
「きょう、かいものいってない」
「そっか」
ふと気付く。
「いい服の日でもあるんじゃないか?」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「ふく、やすいかな」
「安いかも」
「ほか、なにかある?」
「調べてみるか」
「うん」
調べてみた。
「いい文具の日、だって」
「あー」
「いいフグの日でもある」
「ぷくぷくって、ふぐなのかな」
「マリオの?」
「うん」
「元ネタはフグじゃないか、たぶん。それっぽい見た目だし」
「だよね」
「クリボーはなんだと思う?」
「くり?」
「キノコだよ」
「きのこなの?」
「その通り」
「あるいてるけど……」
「スーパーキノコなんて滑ってるだろ」
「のこのこは?」
「ノコノコは亀だろ、さすがに」
「でも、こうらとれるよ」
「取れるな」
「かめのこうらって、ほねだよ。ろっこつだよ」
「……よく知ってるな」
「こうらとれたら、しぬ。だから、のこのこ、かめじゃないとおもう」
「亀じゃないとしたら、なんだろう」
「やどかりのいっしゅ」
「……あー」
ちょっとわかる。
「でも、甲殻類ではないだろ。見るからに爬虫類だぞ」
「くりぼーも、きのこにみえないもん。のこのこだって、やどかりだよ」
「その理屈なら亀でいい気もするけど……」
「やどかりなの」
「はい」
こうして、ノコノコはヤドカリということになった。
変なとこ頑固なうにゅほである。







137 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:15:28 ID:2ff2zivY0

2021年11月30日(火)

「◯◯、きてー」
「はいはい」
重い腰を上げ、階下のうにゅほの元へと向かう。
「どした」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「おぼえてないの?」
「何が?」
「うと……」
うにゅほが、玄関から外へ出る。
「出掛けるの?」
「きて」
そのまま、導かれるように庭へと向かう。
そこには愛犬の墓石があった。
「あ──」
そうだ。
今日は、コロの命日だったんだ。
「わすれてた?」
「忘れてた……」
「そか……」
うにゅほが、物言いたげに手を合わせる。
俺も、それにならった。
「──…………」
「──……」
「なんかさ」
「うん」
「悲しみが癒えるのって、寂しいな」
「……うん」
「悲しくて、つらくて、あんなに泣いたのに……」
今はもう、命日すら忘れかけている。
嬉しい日は覚えていられても、悲しい日は記憶から抜け落ちてしまうのかもしれない。
「あのね」
「うん?」
「わたしがしんだら、かなしい?」
「──…………」
想像したくもない。
「あのね、へんなこというね」
「うん」
「◯◯が、ずっとかなしいと、うれしいな……」
「──……」
「あとね、けっこんしなかったら、うれしい」
「そっか」
うにゅほの頭を、ぽんと撫でる。
「俺のほうが先に死ぬから大丈夫」
「えー!」
「ずっと悲しんでくれな」
「しなないで……」
「同じ言葉を返しましょう」
「うん……」
今はまだ、死ぬ予定はない。
悲しみは、未来の自分たちに託しておこう。






138 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2021/12/01(水) 02:16:27 ID:2ff2zivY0

以上、十年め 後半でした

引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:01  ID:t9E1FIDL0
    うわでた


  • 2  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:03  ID:J8c.KR5S0
    十周年おめでとり


  • 3  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:07  ID:Wa13aSDL0
    十周年すげぇ


  • 4  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:07  ID:pRv5TenZ0
    10周年おめでとうセックスしろ


  • 5  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:14  ID:1YKvrQLk0
    10年間これ書き続けてんのか…


  • 6  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:15  ID:CgDru1gP0
    読んだことはないけど、10年って凄いな…


  • 7  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:18  ID:5AU.VfE.0
    なあ、お前と飲むときの話題はいつもうにゅほだな。
    一番最初、お前と飲んだ時からそうだったよな。
    俺が貧乏浪人生で、お前が20万再生稼ぐ動画主だったとき、話してもらったのがうにゅほだったな。
    「俺は、毎日日記を更新してるぜ。ファンが五月蝿くてしょーがねーから」
    お前はそういって笑ってたっけな。

    俺が大学出て入社して毎日仕事漬けだったとき、お前は30万再生だって胸を張っていたよな。
    「毎日動画編集で休みもないけど、コメントがすごいんだ」
    「ニコニコの視聴者どもにこうしてコメントさせてやって、言うこと聞かせるんだ」
    「観測所の管理人も、記事書いてる俺に頭上がらないんだぜ」
    そういうことを目を輝かせて見せつけたのも、うにゅほだったな。

    あれから十年たって、こうして、たまにお前と飲む時もやっぱりうにゅほだ。
    ここ何年か、こういうゲームのキャラについて話すのはお前と一緒の時だけだ。
    別に2次元が悪いという訳じゃないが、ニコニコのコメントは色付の汚水みたいなもんだ。
    中身の無い、単調な雑言は、毒を見ているような気がしてならない。
    なあ、別に女が釣れるコンテンツでなくたっていい。
    もう少し金を出せば、ネットでなく、本物の名誉が手に入るコンテンツを、いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺達は?
    でも、今のお前を見ると、お前が未だに千再生そこらの動画を出し続けてる所を見ると、俺はどうしても「もっといい趣味持とうぜ」って言えなくなるんだ。
    お前が職場で孤立してるの聞いたよ。お前が1年近く家族以外と話せてないのも知ってたよ。観測所で、若い読者達に馬鹿にされて、管理人の家族の誘拐犯扱いされて、それでも必死に卑屈になって日記続けているのもわかってる。
    だけど、もういいだろ。
    十年前と同じゲームで、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。
    そんなのは、ネットで浮かれているガキ共だけに許される慰めなんだよ。


  • 8  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:21  ID:I61vZ8.g0
    本人のサイトに10年前の奴読みに行ったら対話形式じゃなくて驚いた。
    この10年で文章力退化してんじゃん。。。


  • 9  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:29  ID:JNz2jxTn0
    ヒエ~ッwww


  • 10  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:37  ID:dTl.Ms1K0
    10年!?


  • 11  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:51  ID:xxC5tuvH0
    やだこわい…


  • 12  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:52  ID:bknlIo8L0
    読む気は全くしないけど凄い


  • 13  Name  名無しさん  2021年12月02日 19:58  ID:AVFl9DJq0
    誰にも迷惑かけてないし本人が幸せならそれでいいけどさぁ…


  • 14  Name  名無しさん  2021年12月02日 20:00  ID:qoacr2Ve0
    だれもお楽しみじゃないし早く締めろ


  • 15  Name  名無しさん  2021年12月02日 20:03  ID:YbQBTRfE0
    同じ毎日更新で10年以上続いているのに
    チルノの絵日記との差が激しい


  • 16  Name  名無しさん  2021年12月02日 20:05  ID:Klqgot9O0
    おめでとう!
    それしか言葉がない


  • 17  Name  名無しさん  2021年12月02日 20:13  ID:Jt7qg6kz0
    おめでとう
    でっていう


  • 18  Name  名無しさん  2021年12月02日 20:21  ID:SO21.QnF0
    闇の扉が開かれた・・・

    恐怖の大王が降ってくるぞ・・・


  • 19  Name  名無しさん  2021年12月02日 20:43  ID:mXp8De1k0
    中身読んだこと無いけど同じような文章を10年書き続けられるのは才能だと思うの


  • 20  Name  名無しさん  2021年12月02日 20:50  ID:e9UQ6uAb0
    おめでとう
    継続って大切やなぁ


  • 21  Name  名無しさん  2021年12月02日 21:02  ID:.tue7MyQ0
    一つのことを10年間続けられるのは実際凄いと思う


  • 22  Name  名無しさん  2021年12月02日 21:07  ID:7DPffZhE0
    引き続くなks


  • 23  Name  名無しさん  2021年12月02日 21:12  ID:KU1QOOVv0
    ワンチャンコピペしても気付かない説


  • 24  Name  名無しさん  2021年12月02日 21:32  ID:E.Jgph3o0
    >>7
    これマジ?


  • 25  Name  名無しさん  2021年12月02日 21:44  ID:.X4.xe6x0
    続くのか・・・


  • 26  Name  名無しさん  2021年12月02日 21:48  ID:8S4Nw24Q0
    ぶっちゃけのべりすとに作者の脳内設定ぶちこんで出力すればあと100年は続けられるんじゃねえか


  • 27  Name  名無しさん  2021年12月02日 23:17  ID:DOpVrjAj0
    継続は力なり。
    ただし、うにゅほを覗いてな。


  • 28  Name  名無しさん  2021年12月02日 23:50  ID:S9GiRYZx0
    >引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください

    引き続くな


  • 29  Name  名無しさん  2021年12月03日 01:09  ID:.gWQMTZg0
    >>24
    某白〇木屋コピペの改変だと思う
    かなりアレンジ利かせてるが



  • 30  Name  名無しさん  2021年12月03日 03:58  ID:vodksnwD0
    ヒェ記念カキコ


  • 31  Name  名無しさん  2021年12月03日 06:24  ID:dTcmyO900
    時の流れを感じる


  • 32  Name  名無しさん  2021年12月03日 23:31  ID:BqoTaJ3Z0
    引き続くのか・・・・(怖


  • 33  Name  名無しさん  2021年12月05日 09:27  ID:3WgGjVrW0
    はよヤってくれ


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