2022年01月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



172 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:07:41 ID:KDGZxq9M0

2022年1月1日(土)

「──……は、ふ」
あくびの止まらないうにゅほを膝に乗せながら、時刻を確認する。
「七時過ぎか」
「はつひので、みえるかな……」
「どうかな」
チェアから腰を上げ、カーテンを開く。
夜が白々と明けていた。
だが、
「……くもってる……」
「あー……」
顔を見合わせる。
「残念だったな……」
「……うん」
「頑張ったのにな」
うにゅほの髪を手櫛で梳きながら、軽く慰める。
「んー……」
眠いのか、かくんと首を傾けて、うにゅほが言った。
「でも、よふかし、たのしかったから……」
「たしかに」
「◯◯も、たのしかった?」
「楽しかったよ。俺にとって夜更かしは日常だけど、今日は××がいたからな」
「うへー……」
くすぐったそうに笑ったあと、また大きなあくびをする。
「さすがに寝ようか」
「うん……」
寝る前の歯磨きは、とっくの昔に済ませてある。
うにゅほが、自室の寝室側へ向かい、
「うしょ」
何故か俺のベッドに腰掛けた。
「どした」
「いっしょに、ねよ……」
「珍しいな」
「おしょうがつだもん……」
「まあ、いいけど。やたら寒いし」
それに、普段は揃うことのない就寝時間が、珍しく合っているのだ。
こんな機会は滅多にない。
「はい、枕」
「ありがと」
「奥行って」
「はーい……」
シングルベッドにふたりは狭いが、眠れないほどではない。
羽毛布団を引き上げると、うにゅほが俺の右腕を抱いた。
温かい。
いっそ熱いくらいだ。
「おやふみ……」
「ああ、おやすみ」
アイマスクを目元まで下げて、目を閉じる。
うにゅほと同衾するのは初めてではない。
だが、やはりどきどきはするものだ。
眠りが浅く、一日中ずっと生あくびを噛み殺すことになったのは言うまでもない。
なお、うにゅほは安眠できたらしく、元気いっぱいだった。
さすがである。








173 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:08:06 ID:KDGZxq9M0

2022年1月2日(日)

いぎたなく眠りに眠り果て、起床したのが午後三時のことだ。
「──…………」
「あ、おきた」
「生活サイクル、狂ってんなあ……」
呟きながら立ち上がる。
「なんか、変な夢見た」
「どんなゆめ?」
「えーと……」
まとまりのない夢を言語化するのには、すこし時間が必要だ。
「強風で屋根が飛んで、俺たちも飛ばされて、家の前の公園に落ちる夢……」
「えんぎわるそう……」
たしかに。
「で、今日の日記はこれで決まり、とか考えてた」
「それどこじゃないよ」
たしかに。
「解釈によっては、これが初夢なんだよな……」
「はつゆめ、きのうじゃないの?」
「大晦日から元日にかけてって説もあるし、元日から二日、あるいは二日から三日にかけてって説もあるみたい」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「でも、ふつう、きのうだよね。ことしはじめてのゆめだもん」
「だよな」
「◯◯、きのうのゆめ、おぼえてる?」
「さすがに覚えてないな」
「わたし、ちょっとおぼえてる」
「どんな夢だったんだ?」
「うーとね、◯◯の、たんじょうびのゆめ」
「もうすぐじゃん」
俺の誕生日は、1月12日である。
「それでね、◯◯とふたりで、かめをたべるの」
「亀……」
「かめは、ほんとはかめじゃなくて、なんか、すーごいおいしいものなの」
「亀……」
「しあわせなゆめだったな……」
「亀……」
ふたりで亀を食べるというビジュアルが強すぎる。
「うへー。また、いっしょにねようね」
「寝る時間が合ったらな」
「うん」
「あと、夏はダメ」
「なつはね……」
寝苦しいどころの騒ぎではない。
三が日は、明日まで。
生活サイクルを元に戻しておかなければ。







174 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:08:45 ID:KDGZxq9M0

2022年1月3日(月)

「──…………」
「……ひっ、ぐ……」
うにゅほが、ぐしょぐしょに濡れて丸まったティッシュで、まだ涙を拭っている。
日記外で進めていたOMORIを、先程クリアしたのだった。
「すごかったな……」
「……う、ん」
「とんでもないゲームだぞ、これ……」
おかげで、俺とうにゅほの情緒がぐしゃぐしゃだ。
分類すれば、たしかに鬱ゲーだろう。
だが、それだけではない。
喜び、悲しみ、怒り、恐怖──さまざまな感情に殴りつけられるような鮮烈な作品だった。
「はー……」
改めて膝の上のうにゅほを抱き締めなおし、髪の毛に鼻先を埋める。
「落ち着くー……」
「ふ、うぐ……」
「ほら、××も落ち着いて」
「ん……」
「深呼吸」
「は、……ふー……、ひっ。……すー……、ふー……」
「よしよし」
幾度も深呼吸を繰り返すにつれ、うにゅほの嗚咽が徐々に鎮まっていく。
「──落ち着いた?」
「うん……」
「すごい作品だったな……」
「すごかった……」
「××は、悲しいから泣いてたんじゃないもんな」
「……うん」
「感動したから?」
「わかんない……」
「そうだよな。感情、ぐちゃぐちゃになるよな」
「◯◯も……?」
「実は、君の後ろでずっと泣いてたよ」
「きづかなかった……」
「バレないように頑張ってたから」
「がんばんなくていいのに……」
「そこはほら、年上だから気取りたいんだよ」
「そか……」
ネタバレに配慮して、これ以上は語らない。
だが、OMORIという作品は、俺たちの心に深く刻まれた。
万人に勧められるゲームではないが、感情を揺さぶられたい方はプレイしてみてはいかがだろうか。
 






175 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:09:10 ID:KDGZxq9M0

2022年1月4日(火)

「──…………」
ぼけー、と時を過ごす。
OMORIの衝撃から、まだ抜けきれていないのだった。
それは、うにゅほも同じようで、
「──……」
本を開いたまま、ぼんやりと宙空を眺めている様子が時折目についた。
良い作品は、心を奪う。
奪われた心は、なかなか戻ってきてはくれないのだ。
「そう言えばさ」
「んー……」
「明日、千歳行く?」
千歳には、親戚が多く住んでいる。
年始の挨拶というやつだ。
「◯◯は、いく?」
「行かない」
「じゃ、わたしもいかない……」
「もしかしたら、お年玉もらえるかもよ」
「◯◯は?」
「俺は、あげるほうだし」
「じゃ、いい」
「そっか」
こういうとき、依存されてるなーと思う。
傍から見れば不健康なのかもしれないが、これはこれで悪くない。
俺だって、うにゅほに依存している。
互いに離れる気がないのであれば、相互依存はただの在り方のひとつであって、決して忌避すべき関係性ではないはずだ。
「じゃ、久し振りに家でふたりきりだな」
「そうかも」
「何をするってわけでもないけど、開放感でも味わいますか」
「ぐたいてきには?」
「リビングのテレビでYouTubeを見るとか」
「あ、たのしそう!」
「いつも通りのゆっくり解説でも、なんだか違って見えそうだろ」
「うん、みようみよう」
せっかくだ。
普段はできないこと、しにくいことを、幾つかしてみようと思った。







176 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:09:31 ID:KDGZxq9M0

2022年1月5日(水)

「行ってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
両親と弟を見送り、リビングのソファに腰掛ける。
窓の向こうへ視線を向けると、横殴りの雪が降っていた。
「……高速乗るだろうけど、大丈夫かな」
「しんぱいだね……」
心配は心配だが、送り出した時点でできることはない。
「ま、テレビでYouTubeでも見ますか」
「うん」
「何見たい?」
「うーと、よんけーのどうがみたいな」
「いいぞ」
リモコンを操作し、4K対応の風景動画を再生する。
65インチ有機ELテレビに映し出されたアルプスの山々は、震えるほどに美しい。
その奥行きに、テレビの中に入れそうな錯覚すら覚える。
「はー……」
「こういうの見てると、ますます外に出る理由がなくなるよな」
「そなの?」
「だって、自宅にいながらにして、こんな綺麗な風景が見られるんだぞ。しかも、世界中のいろんな場所を」
「あー」
「実際に行くことで得られる経験って、やっぱりあるけどさ。でも、ただ風景を楽しみたいだけなら、もうこれでいい」
「そうかも……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「世界中のさまざまな都市。さまざまな絶景。検索すれば、海の中にだって行ける。しかも無料で」
「かんがえたら、すごいね」
「だろ」
うにゅほを抱き締めたまま、ごろんと横になった。
「わ」
「じゃ、今度はイタリアにでも行きますか」
「いいねー」
うにゅほが、俺の胸に頭を預ける。
ソファで横になりながら、世界を旅する。
それは、なんだか、とても贅沢な時間のように思えた。
だが、そのひとときは、わずか三十分で終わりを告げた。
家族が帰ってきたのだ。
曰く、高速道路が通行止めになっていたとのこと。
自室へと引き返し、うにゅほと苦笑する。
「もうすこし楽しみたかったな」
「でも、ぶじでよかった」
「それは、まあ」
無理をして事故に遭うより、ずっといい。
それはそれとして、いつも通りの憩いの時間をゆったりと過ごす俺たちだった。







177 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:10:01 ID:KDGZxq9M0

2022年1月6日(木)

伸ばした爪先を擦り合わせながら、うにゅほが呟いた。
「あしさむい……」
「靴下を履きなさい」
「えー」
「えーではなく」
冷え性の気があるにも関わらず、うにゅほは室内で靴下を履くのが嫌いである。
俺も好きではないので人のことは言えないが、さすがに寒ければ履く。
箪笥からうにゅほの靴下を取り、目の前に差し出した。
「ほら」
「やだ」
「やだじゃなくて」
「はかしてー」
うにゅほが、こちらに足先を突き出した。
「甘えっ子だなあ……」
「うへー」
仕方がない。
靴下の口を広げ、するすると履かせていく。
「はい、今度は右」
「はーい」
右足も同様に履かせ、よれた部分を整える。
「よし」
「ありがと」
「自分で履けよな……」
「はかしてもらいたかったの」
「履かせてもらった感想は?」
「おひめさまになったきぶん」
「お姫さま……」
靴下で?
「◯◯にしてもらうの、すき」
「はいはい」
だが、悪い気はしない。
「××姫。他にしてもらいたいことはありますか?」
「なにがいいかなあ……」
しばし思案したのち、うにゅほが言った。
「かみのけ、とかしてほしいな」
「了解」
愛用のつげの櫛で、うにゅほの髪をくしけずる。
この櫛は、何年も前の誕生日に、うにゅほにプレゼントしたものだ。
物持ちのよい子である。
「どうですか、お姫さま」
「よきにはからえー」
ごきげんだ。
しばらくのあいだ、うにゅほをお姫さま扱いして遊んだのだった。







178 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:10:24 ID:KDGZxq9M0

2022年1月7日(金)

「◯◯ー」
ひょこ。
うにゅほが肘掛けの下から顔を出した。
「どした」
「ほしいもの、ない?」
「欲しいもの……」
「うん」
「なんで急に?」
「だって、たんじょうび……」
「あ」
そうだった。
忘れていたわけではないが、意識の外だった。
「欲しいもの、欲しいもの──」
あるにはある。
あるが、
「ちょっと高いかも」
「おいくら?」
「三万円くらい」
「いいよー」
「いや、高いだろ……」
「わたし、おかねつかわないもん」
「それはそうだけど」
でも、三万だぞ。
いいのか。
「……あのね、◯◯」
うにゅほが半眼で口を尖らせる。
「◯◯も、おかあさんも、おとうさんも、なんでもかってくれるから、わたしおかねたまってるんだよ」
「それは、知ってるけど」
「◯◯のたんじょうびくらい、ちゃんとつかいたいよ……」
「──…………」
ああ、そうか。
俺たちは、うにゅほがお金を使う機会を、無意識に奪っていたのかもしれない。
「わかった。じゃあ、お願いしようかな」
「うん!」
うにゅほが、嬉しそうに頷く。
「それで、なにほしいの?」
「……キーボード」
「きーぼーど、すきだねえ」
「またか、とか思わないの?」
「ちょっとおもう」
「やっぱり」
「でも、ほしいんだもんね。わたしにまかせて」
「お願いします……」
さっそく楽天で注文し、あとは届くのを待つばかり。
うにゅほからの誕生日プレゼント、大切に使わせてもらおう。







179 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:10:47 ID:KDGZxq9M0

2022年1月8日(土)

「──…………」
眠い。
閉じようとする目蓋をなんとかこじ開けながら、動画を見続ける。
「?」
膝の上のうにゅほが、こちらを振り返った。
「ねむいの?」
「……眠くない」
「ねむいでしょ」
「眠い……」
「ねる?」
「この動画、見たら」
「むりしないで」
「いや、××の邪魔したくないし……」
「むりしないで」
「……はい」
うにゅほが耳掛けイヤホンを外し、膝から下りる。
そして、俺の手を取った。
「ねましょうねー」
よろよろと立ち上がり、手を引かれるままベッドへと向かう。
介護されている気分だった。
「──…………」
マットレスと羽毛布団のあいだに体を滑り込ませる。
枕に後頭部を乗せると、うにゅほが肩まで布団を引き上げてくれた。
「はい、あいますく」
「ありがとう」
「しばらくしたら、おこす?」
「んー……」
軽く思案し、
「……この眠気だと、けっこう眠れそう。起こさなくていいよ」
「わかった」
アイマスクの下で目を閉じる。
呼吸を整え、意識を徐々に沈めていく。
夢の世界の尻尾を掴んだ気がした。
「──……?」
だが、眠れない。
十五分ほど挑戦してみたが、気付けば意識はすっかり冴えてしまっていた。
身を起こし、自室の書斎側へ戻る。
「あれ、どしたの?」
「眠れない……」
「ねむれないの……」
「いいや。さっきの動画の続き見よう」
「うん」
うにゅほを膝に乗せ、動画を再生する。
「──…………」
眠い。
閉じようとする目蓋をなんとかこじ開けながら、動画を見続ける。
「?」
膝の上のうにゅほが、こちらを振り返った。
「ねむいの?」
「……眠くない」
「ねむいでしょ」
「眠い……」
「ねる?」
「寝ようとしても、また眠れない気がする……」
難儀な体である。
結局、眠気に逆らわず、座ったままうとうとすることにした。
これはこれで気持ちいいが、起きたとき首が痛かった。







180 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:11:12 ID:KDGZxq9M0

2022年1月9日(日)

「◯◯……」
自室へ戻ってくるなり、不安そうな表情でうにゅほが俺の腕を取った。
「どした」
「ころな、またふえてきた……」
そう言えば、オミクロン株がどうとか言っていたっけ。
「どのくらい増えたんだ?」
全国で千人くらいだろうか。
「うーと、せんにんちょっと……」
予想通りだ。
「だいぶ増えたなあ」
「でね、ほっかいどうが、ひゃくにんちょっと」
「……北海道、だいぶ多くないか?」
「そう?」
「だって、全国の一割くらい担ってるぞ」
「?」
しばし小首をかしげたのち、うにゅほが納得したように頷いた。
「あ、せんにんちょっとはね、とうきょう」
「えっ」
東京で、千人?
「待って。全国では?」
「はっせんにん、くらい」
「……めちゃくちゃ増えてんじゃん」
「うん……」
「一気に増えすぎだろ」
「そうなの……」
年末年始くらいまでは終息ムードが漂っていた気がするのだが、まったくの気のせいであったらしい。
「年明け早々、縁起が悪いっつーか……」
「なるべく、でかけないようにしようね」
「そうだな」
元より引きこもり気味の俺たちだから、出掛けられないことは負担じゃない。
もし負担があるとすれば、それは不安だ。
「オミクロン株は症状軽いみたいだし、万が一があっても大丈夫だよ」
「そかな……」
「もちろん、万が一がないようにはするけどな」
「……うん」
うにゅほを抱え上げ、いつものように膝に乗せる。
すべての不安を拭い取ってあげたいが、それは難しい。
せめて、精一杯の気休めを。
そんなことを思いながら、うにゅほを慰めていた。







181 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:11:36 ID:KDGZxq9M0

2022年1月10日(月)

「……?」
うにゅほが、俺の頬に指を伸ばす。
「いて」
頬に痛みが走る。
「あ、ごめん。できものできてて……」
「マジか」
卓上鏡を覗き込むと、左の頬の一部が赤く腫れ上がっていた。
「にきびかな」
「ニキビにしては大きいよな」
「うん」
「潰せるかな、これ」
トントンと指先でつつく。
それなりに痛い。
「つぶさないほう、いいとおもうけど……」
それはそうなのだが、気にはなる。
「……なんか、しこりが深いな。潰そうとしても潰れない気がする」
「ほっとこ」
「そうするか……」
「さびおもってくるね」
「いいよ。怪我ってわけでもないしさ」
「そう?」
だが、その判断は間違いだった。
「──…………」
左手で、できものに触れる。
つまんだり、こねたり、軽く潰してみようとしたりする。
気になって気になって、つい触れてしまうのだった。
「あんま、さわんないほうが……」
「そうなんだけど……」
だが、自分を律することは難しいものだ。
「……やっぱし、さびおもってくるね」
「お願いします……」
うにゅほが、頬にぺたりと絆創膏を貼ってくれる。
「はい」
「……なんか、わんぱく坊主に戻った気分だ」
「かおによくけがしたの?」
「いや、ぜんぜん。部屋で延々と本読んでるタイプだったし」
「あんましわんぱくじゃないね」
「わんぱくじゃなかったわ」
絆創膏を貼っても気になってしまう。
早く治ってくれればいいのだが。







182 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:12:00 ID:KDGZxq9M0

2022年1月11日(火)

「◯◯、とどいたよ!」
うにゅほが、大きなダンボール箱を、笑顔でこちらに差し出した。
「届きましたか」
「あけてあけて」
「もちろん」
ハサミを用い、厳重に封じられたダンボール箱を開いていく。
中身はもちろん、
「──REALFORCE、R3シリーズ!」
「おー」
「R3シリーズは、東プレ初の無線キーボードなんだ。ずっと欲しかったんだよ、無線のREALFORCE!」
「いまつかってるの、むせんだよね」
「HHKB HYBRID Type-Sだな。小さくて場所を取らないんだけど、キー配列に癖があるんだよ」
「そなんだ」
「特に、半角/全角キーが左上じゃなくて左下にあるのが──」
オタク特有の早口でしばし解説したあと、我に返る。
「……あ、ごめんな。あんま興味ないよな」
うにゅほが小首をかしげる。
「あるよ?」
「あるの?」
「だって、わたしがあげたプレゼントだもん」
言われてみれば、その通りだ。
「そうだ、言い忘れてた」
体ごとうにゅほに向き直り、丁寧に頭を下げる。
「ありがとう、××。大切に使わせていただきます」
「うん、たくさんつかってね」
「と、言うわけで」
開封し、REALFORCE本体を取り出す。
「おお、さすがに重いな……」
REALFORCEは、この重厚さがいいのだ。
PCとのペアリングを済ませ、キーボードを叩く。
静電容量無接点方式のスコスコとした打鍵感には、実家のような安心感がある。
「これこれ、この感じだよ」
「わたしも、うってみていい?」
「いいよ」
チェアを譲る。
うにゅほが、人差し指で、俺の名前を打ち込んだ。
「ほー……」
続いて、自分の名前を入力する。
「ふうん……」
「どうですか」
「いいー、の、……かな?」
「まあ、比較対象がないもんな」
五百円くらいのしなしなのメンブレンを一週間も使ったあとなら、感動ものの打鍵感なのだけれど。
「××のプレゼント、最高だぞ」
「……うへ」
うにゅほが照れ笑いを浮かべる。
十年くらい使おう、これ。
 







183 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:12:25 ID:KDGZxq9M0

2022年1月12日(水)

誰かの誕生日には、家族で行きつけのステーキハウスへ行く。
それが、我が家の慣習だ。
「ふいー……」
膨れた胃袋を抱え、ベッドに倒れ込む。
「◯◯、コートぬがないと」
「脱がせて」
「もー……」
「我、誕生日ぞ」
「はいはい」
うにゅほが、俺のコートを剥ぎ、ハンガーに掛けてくれる。
「それにしても、吹雪いてたなあ」
「ね」
吹雪と悪路のせいで、ステーキハウスまで普段の二倍以上の時間がかかったくらいだ。
「ゆきかき、しなくていいのかな……」
この冬、俺とうにゅほは、一度も雪かきをしていない。
父親がすべてやっているのだ。
「父さんがするって言うんだから、いいんじゃないか」
「でも」
「除雪機使うから、俺たちは邪魔くさいんだってさ」
「いってた」
「あの人、几帳面で完璧主義なところあるからな。人がやると文句言いたくなる性分だから、全部自分でやりたいんだよ」
「そか……」
「雪かきしたい?」
「したいのもあるけど、しんぱい」
「んー……」
しばし思案する。
どうするのが最善なのか。
父親は歯に衣着せぬ物言いをする人なので、邪魔と言うなら本当に邪魔だし、除雪はひとりで行いたいのだ。
だが、うにゅほはうにゅほで、そんな父親が心配で仕方がない。
家族のために無理をしていないか、本当はひとりで寂しいのではないか、そんなことを考えているのだと思う。
だから、
「雪かきを終えたら、父さんをねぎらってあげればいいよ」
「ねぎらう?」
「肩を揉んであげるとかさ」
「なるほどー」
「可愛い娘がマッサージしてくれるんだ。これで喜ばないはずないだろ」
「うん、わかった!」
一件落着、である。
俺の運動不足という問題はあるが、こちらはエアロバイクでなんとか対処しよう。







184 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:12:46 ID:KDGZxq9M0

2022年1月13日(木)

「◯◯、あしつめたい……」
座椅子に腰掛けたうにゅほが、こちらへと爪先を伸ばす。
「こら! また靴下履かないで」
「うへー」
「履きましょう」
「はかしてー」
味を占めたらしい。
「どれ」
うにゅほの左足を手に取る。
冷たい。
見事に冷え切っていた。
「こんなんじゃ、靴下履いても冷たいだろ……」
「そうかも」
「まず、あっためないと」
爪先を、両手で挟む。
「あったかー……」
続いて、右足も同様に温める。
「いきかえる」
「死んでたんだ」
「しんでた……」
「道理で冷たいわけだな」
だが、両手では限界がある。
「ストーブつけて、当たろう。それから靴下だ」
「やだ」
「ええ……」
「ひとはだがいい」
甘えっ子モードに入ったらしい。
このモードのうにゅほは、ひたすらにめんどくさい。
可愛いけども。
「しゃーないな……」
作務衣の上衣の裾を、軽くめくる。
「ほら、ここに足入れな」
「うん」
うにゅほの足先が、するりと作務衣に入ってくる。
「◯◯、おなかぷにぷに」
「放り出すぞ」
「ごめんなさい!」
しばらく懐でうにゅほの足を温めたあと、靴下を履かせてあげた。
「◯◯、ありがと」
「足が冷える前に、さっさと靴下履こうな」
「……うへー」
あ、誤魔化した。
絶対履かないな、これ。







185 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:13:07 ID:KDGZxq9M0

2022年1月14日(金)

ドライヤーで髪を乾かし、綿棒で耳掃除をし、化粧水を顔につける。
これが、風呂上がりのルーティンである。
化粧水のために眼鏡を外したところ、階下から母親に声を掛けられた。
階段の上から二言三言交わし、自室に戻って化粧水を塗る。
そして、青ざめた。
「──……××」
「?」
「眼鏡、どこ……」
たまにやるのだ。
俺は、重度の近視である。
一度眼鏡を見失うと、自分で見つけることは困難なのだ。
「うーと」
うにゅほが、化粧水の片付けてある棚の付近に視線を向ける。
「あ、ここだ」
眼鏡は、下の棚に置かれていたらしい。
あっさりと見つけ、こちらへ差し出してくれる。
「はい」
「ありがとう……」
眼鏡を掛ける。
視界がクリアに広がった。
「嫌になるな。眼鏡がないと何もできない」
「ほんと、なんにもみえないんだね」
「ぼんやりと色がわかるくらいだからな。かなり近付かないと、文字とかは無理」
「どのくらいでよめるの?」
「えーと」
眼鏡を外し、左手首のアップルウォッチを顔に近付ける。
20cmほどまで近付けて、
「……ここで、ようやく文字が判別できる」
「おお……」
10cmほどまで近付けて、
「この距離で、やっとはっきり見える」
「めがねなくすの、しかたないね……」
「ひとり暮らしじゃなくてよかったよ、ほんと」
眼鏡が見つからなければ、記憶力と勘に頼って生活するしかない。
そして、数分前に置いた眼鏡の場所を忘れるくらいだから、その記憶力はお察しである。
眼内レンズでも入れようかなあ。
そんなことを考えてしまうのだった。







186 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:13:31 ID:KDGZxq9M0

2022年1月15日(土)

「いいこのひ」
カレンダーを見る。
「あー、1月15日で」
「うん」
うにゅほが、こちらに頭を差し出す。
「──…………」
気付かなかったふりをして、キーボードを叩く。
「手洗いの日でもあるらしい」
「てあらい?」
「いい手、の語呂合わせだって」
「て……」
「指が五本で、手ということらしいですよ」
「じゃどう!」
「あと、今日は上元の日なんだって」
「じょうげん?」
「季節の移り変わりを表す雑節、三元のひとつ」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「──…………」
「──……」
「いいこのひ」
うにゅほが頭を差し出す。
「いい囲碁の日でもあるらしいんだけど、それ11月15日だよなあ」
「うん……」
「同じ理由でいちごの日でもあるらしい」
「いいいちご?」
「ああ」
「じゅういちがつじゅうごにちなきーする……」
「だろ」
「──…………」
「──……」
「いいこのひ……」
「はいはい」
うにゅほの頭に手を置き、髪を梳くように撫でる。
「いい子いい子」
「……もっとはやくなでてほしかった」
「意地悪してみた」
「もー」
なでり、なでり。
「でも、いい子って年でも」
「きんく!」
「はい」
うにゅほの機嫌を窺うように、しばらく頭を撫で続けていた。







187 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/01/16(日) 21:14:21 ID:KDGZxq9M0

以上、十年二ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2022年01月17日 19:13  ID:emEVV..M0
    フィンランドの小学生が考えた議論のルール
    1. 他人の発言をさえぎらない
    2. 話すときは、だらだらとしゃべらない
    3. 話すときに、怒ったり泣いたりしない
    4. わからないことがあったら、すぐに質問する
    5. 話を聞くときは、話している人の目を見る
    6. 話を聞くときは、他のことをしない
    7. 最後まで、きちんと話を聞く
    8. 議論が台無しになるようなことを言わない
    9. どのような意見であっても、間違いと決めつけない
    10. 議論が終わったら、議論の内容の話はしない
    幻想郷の少女達の議論
    1. 他人の発言をさえぎる
    2. だらだらとわかりにくい解説
    3. すぐ怒る
    4. わからないことがあったら適当に誤魔化す
    5. 話を聞かない
    6. 話を聞かない
    7. 最後まで、きちんと話を聞かない
    8. 相手の主張を台無しにしようとする
    9. どのような意見であっても、すぐに間違いと決めつける
    10. 異変が終わると、東方ファンが渦中のキャラを笑いものにする


  • 2  Name  名無しさん  2022年01月17日 19:18  ID:uHgqp3Pd0
    早くセックスしろ


  • 3  Name  名無しさん  2022年01月17日 19:19  ID:pqUR.9Qi0
    親の顔より見たうにゅほ


  • 4  Name  名無しさん  2022年01月17日 19:51  ID:o0ecwdu50
    普通に全然面白くないのだが


  • 5  Name  名無しさん  2022年01月17日 19:52  ID:QDAtYtRe0
    人類が滅んだ後次の地球の支配者がこれ見つけて困惑してそう


  • 6  Name  名無しさん  2022年01月17日 20:36  ID:wmKfHRsZ0
    1000年後の大学入試の古文でこれが取り扱われてネット上で怪文書扱いされてそう


  • 7  Name  名無しさん  2022年01月17日 20:41  ID:jjfEnLCK0
    不変不動の十年やな


  • 8  Name  名無しさん  2022年01月17日 21:16  ID:mfY6wuvw0
    大した運動もしてないし体力も意識の高さもねぇのにアップルウォッチなんて買ってんじゃねーよタコスケ


  • 9  Name  名無しさん  2022年01月17日 23:03  ID:G7MCAKGr0
    もういい
    休め!


  • 10  Name  名無しさん  2022年01月18日 03:30  ID:H.JeMqXC0
    どうあがいても怪文書


  • 11  Name  名無しさん  2022年01月18日 04:13  ID:Fmb84bbq0
    >>6
    なワケないだろ(呆



  • 12  Name  名無しさん  2022年01月18日 15:05  ID:hDeNpvSZ0
    今年もよろしくお願いします(適当


  • 13  Name  名無しさん  2022年01月19日 20:28  ID:nTaDzKXl0
    HHKBって配列自由に変えられるよな?


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