2022年05月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



300 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 03:59:01 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月1日(日)

両親が、無事に旅行から帰ってきた。
「……うへー、ほめられちゃった」
「そりゃ褒めるだろ。家事を完璧にこなしてるんだから」
炊事、洗濯、掃除を済ませ、気を利かせて風呂まで早めに沸かしていたのだ。
そんなもん、俺だって褒める。
「うちはもう、××がいないと回らないかもな」
「そかな」
「わりとそう」
「そかー……」
うにゅほが、はにかむように笑う。
「××さ、すごく成長したよな」
「せいちょう、してる?」
「してるしてる。最近、昔の日記をちょくちょく読み返してるんだけどさ」
「うん」
「なんか、使い古しの歯ブラシを大事に仕舞ってたりしてたぞ」
「えー……」
「覚えてる?」
「おぼえてないよー」
「まあ、十年も前のことだからな」
そう、十年だ。
うにゅほが我が家に来てから、もう十年が経つ。
時が経つのは、あまりに早い。
「おぼえてないこと、けっこうあるかも……」
「だからこそ、日記があるんだよ」
「にっき」
「日記を読めば、思い出せる。そのとき、何があったのか。何を考えていたのか」
「うん」
「××もiPhoneで書いてたろ。あれ、まだ続いてるか?」
「まいにちはかいてない……」
「でも、続いてるんだ。偉いな」
「◯◯のほうが、えらい」
「まあ、日記を欠かさず十年書き続けるのは、なかなか頑張ってる気はするな」
「うん」
「ともあれ、日記は写真と同じだ。読み返したとき、その日のことを思い出せる。少なくとも、その一助にはなるだろ」
「なるほどー……」
「まあ、十年分ともなれば、一から読み返すのはほぼ無理だけどな」
「なんびゃくまんもじ、だもんね」
「だな……」
我ながら、書きに書いたものだ。
最初から最後まで読んでいる読者諸兄が存在するのか、はなはだ疑問である。
まあ、自分のためのものだから、べつにいいのだけれど。








301 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 03:59:35 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月2日(月)

「◯◯ー……」
うにゅほが、情けない声を上げながら、自室へ戻ってきた。
その手には瓶がある。
「これ、あけてー」
「なにこれ」
「きのこ」
見れば、きのこの白醤油漬けであるらしかった。
「父さんは?」
「いない」
「……食べたいの?」
「たべたい」
「そっか」
ならば、頼り甲斐のあるところを見せてやらなければ。
「貸したまえ」
「はい」
うにゅほから瓶を受け取り、蓋に手を掛ける。
そして、
「──んぎッ!」
思いきり力を込めた。
だが、開かない。
アホほど固い。
「あかないねえ……」
「待った。絶対開ける」
「むりしなくても」
「開ける」
開けねばならぬ。
体勢を変えて幾度も挑戦するが、瓶の蓋はあまりに強固だった。
仕方がない。
「道具を使おう」
「どうぐ?」
「ガムテープが手元にないから、これで代用」
取り出したのはビニールテープだ。
これを適度な長さに取り、瓶の蓋に巻く。
「これで、摩擦係数が大きくなったはずだ」
「あく?」
「開ける」
ビニールテープを巻いた蓋を握り締め、時計回りに一気に回す。
「──だらッしゃあ!」
あれほど固かった蓋が、ようやく開いた。
「わ、ありがと!」
「どういたしまして……」
かなり疲れたが、それ以上の達成感が俺を包んでいた。
「きのこ、たべる?」
「食べる」
「あーん」
うにゅほの手ずから食べさせてもらったきのこの白醤油漬けは、勝利の味がした。







302 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 03:59:56 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月3日(火)

「うがー……!」
髪の毛をバリボリと掻きむしる。
進めても、進めても、作業が一向に終わらないのだ。
「◯◯、きゅうけいしよ」
「休憩、するかー……」
「しよ」
ふらふらとベッドに倒れ伏す。
時刻を確認すると、既に午後十時を回っていた。
「……二時から始めたから、もう八時間かあ」
「がんばりすぎ」
「どうせやらなきゃならないことなんだから、一気に終わらせたくて……」
「そうかもだけど……」
「××、膝枕してくれー……」
「はいはい」
うにゅほがベッドに上がり、女の子座りをする。
「いいよー」
「ありがとうございます」
うにゅほのふとももの合わせ目に頭を乗せる。
極端に肉付きが良いわけでもないが、やはり心地いい。
「はー……」
「このままねる?」
「さすがに悪いよ。足、痺れるだろ」
「さんじゅっぷんくらいなら……」
「じゃあ、十五分で」
「いいのに」
「あんまり負担かけたくないの」
「そか」
「じゃ、十五分で起こして」
「はーい」
アイマスクを装着し、目を閉じる。
贅沢な仮眠だ。
意識が徐々に沈んでいき、夢未満の荒唐無稽な想像が溢れ出す。
それが、心地良かった。
「──◯◯、◯◯」
ぺちぺち。
頬を優しく叩く感触で目を覚ます。
「あし、しびれた……」
「ごめん、ごめん。ありがとうな」
慌てて飛び起き、アイマスクを外す。
三十分以上が経過していた。
「──…………」
「──……」
「××さん」
「う」
うにゅほが目を逸らす。
だが、責めるはずもない。
「ありがとう」
そう告げて、うにゅほの髪を手櫛で梳いた。
「……うん」
うにゅほが、はにかむ。
優しい子だ。
 






303 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:00:35 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月4日(水)

「こしのひ」
「腰……」
カレンダーを見る。
今日は5月4日、みどりの日だ。
「たしかに、語呂合わせ的には腰の日だな」
「あるかな」
「どうかな」
何の日シリーズは久し振りだ。
さっそく検索をかけてみる。
「名刺の日」
「めいし?」
「五月は英語で?」
「めい!」
「Mayの4日で、名刺の日だ」
「これはすっきりパターン……」
「あとは、口臭の日とか」
「ふんふん」
「あ、面白いのがあったぞ。スターウォーズデー、だって」
「すたーうぉーず」
「知ってる?」
「なまえは」
「スターウォーズで、こんな台詞が出てくるんだ。"フォースと共にあらんことを"」
「ふぉーす……」
「まあ、超能力的なもの」
「ふうん」
「この台詞は、英語だと、"May the Force be with you "になる」
「あ、めいの、ふぉーすだ」
「その通り。Mayの4thで5月4日」
「おもしろい」
「わりと気が利いてるよな」
「うん」
「実は、スターウォーズ何作か見たことあるんだよな……」
「おもしろかった?」
「あんまり覚えてない」
「おぼえてないの……」
「絵描きながら、片手間に見てたからかな」
「そうかも」
「ほら、俺さ、一時期アホみたいに映画観てただろ。そのときの一本だよ」
「いちにち、いっぽんみてたね」
「名作でもなんでも、観過ぎるとよくないんだよな。もっと余韻を持たないと、一本一本の印象が薄くなる」
「なるほど」
「でも、最近あんまり観てないからな。なんか探しとくか」
「いっしょにみようね」
「もちろん」
「すたーうぉーずは、いいかな……」
「だろうなあ」
うにゅほ、SFとか興味なさそうだし。
何か、面白い映画はないかな。







304 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:00:59 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月5日(木)

日記を書こうとキーボードに向かい、ふと気が付いた。
「……書くことがない」
「?」
俺の独り言を聞き、うにゅほが顔を上げる。
「にっき?」
「そう」
「かくことないの……」
「ない」
「おひるのことは?」
「昼?」
「おひるごはんのこと」
「……今日、食べてないぞ」
「うん。たべてないって、かける」
「なるほど……」
したことではなく、しなかったことを書く。
新機軸ではあるまいか。
「そう言えば、今日は読書をしなかったな」
「なにもよまなかったの?」
「ネットばっかしてた」
「してたねえ」
「あ、そうだ。今週はジャンプが合併号だから、買いに行かなかったよな」
「ずっと、いえにいたもんね」
「家がいちばんだよ」
「ね」
「他に、何をしてないかな」
「うと……」
しばし思案し、うにゅほが答える。
「あつかったけど、まどあけなかった」
「暑いとは言え25℃くらいだったし、めんどくさかったから……」
「あ、そだ」
「うん?」
「◯◯の、まくらもとのほん、かたづけないと」
「……はい」
また、溜まってきてしまった。
なんとかしなければ。
「にっき、かけた?」
「書けた書けた。ありがとな」
「うん」
しなかっとことを書くと言うより、うにゅほとの会話をそのまま書いた感じだが、まあいい。
本日の日記はここまで。







305 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:01:23 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月6日(金)

「──…………」
暑い。
あまりにも暑かった。
温湿度計を覗き込むと、28.3℃。
窓を開けているにも関わらず、この室温なのだ。
「はちー……」
うにゅほが襟元をぱたぱたさせる。
「◯◯、あつい……」
「俺も……」
「せんぷうき、つける?」
「いや」
扇風機は涼しい。
だが、根本的な解決にはならない。
俺は覚悟を決めた。
「──エアコンを使おう」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「まだごがつだよ……?」
「五月だからなんだ。暑ければ、エアコンをつけたらいいじゃない」
「そだけど……」
「××が嫌なら」
「つかう、つかう」
うにゅほが立ち上がり、エアコンのリモコンを持ってくる。
「はい」
「よろしい」
俺は、エアコンに向けてリモコンの先端を突き出した。
指先に力を込めると、自室に電子音が響き渡る。
「これで、すずしくなるかな……」
「壊れてなければな」
「あ、まどしめないと」
「俺はこっち閉めるから、××は向こうな」
「はーい」
エアコンの効力は、あっと言う間に証明された。
「ふぶふいー……」
座椅子の上で、うにゅほがくてんとリラックスする。
「文明の利器、万歳だな……」
「ねー……」
「せっかくあるものだし、軽率に使っていこうぜ」
「うん」
今週末は暑くなるらしい。
また、エアコンの出番があるかもしれない。






306 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:01:49 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月7日(土)

いろいろと悩んだ結果、ICL手術を受けることにした。
ICLとは、有水晶体眼内レンズのことである。
要するに、目の表面ではなく、内側に挿入するコンタクトレンズだ。
角膜を不可逆的に削ってしまうレーシックとは異なり、元の状態に戻したければ、手術でレンズを取り出すことができる。
今日は、ICL手術のための適応検査を受けてきた。
「あ゙ー……」
検査のための目薬のせいで、何もかもが眩しく見える。
おまけに、手元の文字が非常に見えにくい。
老眼になったらこんな感じなのだろうか。
眼科でもらった患者への説明書きを顔から離して読んでいると、うにゅほが心配そうに尋ねた。
「めー、だいじょぶ……?」
「大丈夫、大丈夫。明日には治るってさ」
「そか」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「めーのしじつ、するんだよね」
「する」
「こわくないの……?」
「怖いけど、まあ、それ以上の効果が期待できるから」
「そなんだ……」
なにせ、子供のころから連れ添った眼鏡とおさらばできるのだ。
それがどれだけの解放感か、眼鏡をしたことがない人にはわからないだろう。
「眼鏡を掛けててよかったと思うことなんて、ほとんどない。せいぜい強風のときくらい」
「かぜからまもってくれる?」
「いや、大して」
「あ、ごみからまもってくれるかも」
「ないよりマシ、程度だな」
「ほかにはないの?」
「文句なら無数に出てくるぞ」
「そか……」
「××は、目を大切にな。成人後に視力が落ちることは、そうないって聞くけど」
「◯◯、いつめーわるくなったの?」
「最初に眼鏡を掛けたのは、小一のときかな……」
「──…………」
「──……」
「たいへんだったね……」
「ああ……」
だが、そんな日々ともおさらばだ。
もっとも、レンズが届くのがいつになるか、まだわからないのだが。







307 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:02:21 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月8日(日)

「ははのひだよー」
「母、の日……?」
カレンダーを見る。
五月の第二日曜日だった。
「母の日じゃん!」
「ははのひだよ?」
「ちょっと前に、母の日はまだまだ先だって話をした記憶が……」※1
「けっこうまえだとおもうけど……」
「マジか」
これが、年齢による時間感覚の差だろうか。
「おかあさん、ゴルフシューズほしいんだって」
「ほう」
「かいにいくから、おかねだしてって」
「欲しいもの決まってるなら楽でいいなあ」
「◯◯と、わたしと、(弟)で、さんとうぶんしよ」
「了解」
「◯◯も、いっしょにいく?」
「ゴルフのことわからんしなあ……」
うにゅほとふたりならどこにだって行くが、今回は母親がメインだ。
「そか……」
「女同士、××に任せるよ」
「はーい」
うにゅほが、赤いバッグを肩に提げる。
「いってくるね」
「行ってらっしゃい」
作務衣姿でうにゅほを見送る。
うにゅほと母親が帰宅したのは、ほんの一時間後のことだった。
母親が、機嫌よく、新しいシューズを見せてくれる。
「これ買っちゃった」
「はいはい、いくらだった?」
「二万円」
「……けっこうするなあ」
「ひとり六千円でいいわよ」
「万札しかないけど、お釣りある?」
「あ、わたしせんえんさつでだす」
「じゃ、××のぶんから四千円もらってと」
「ありがとうね、ふたりとも」
「ああ」
「ははのひ、おめでとう!」
個人的に、プレゼントは、選ぶのがいちばんの手間だと思う。
その点で言えば、今回はありがたかった。
母親が階下に消えてから、うにゅほが言った。
「よろこんでくれて、よかったね」
「だな」
ゴルフは、両親共通の趣味だ。
長く楽しんでほしいものである。

※1 2022年3月2日(水)参照







308 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:02:44 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月9日(月)

所用のため、札幌中心部へと車を走らせていた。
「なんか、喉渇いたな」
「わたしもー」
「コンビニあったら入ろうか」
「うん」
見える範囲にコンビニはないが、先に左車線へと移動しておいたほうがいいだろう。
車線を変更し、しばらくすると、左折しようとしている車が見えた。
「ん?」
何故か、左折の途中で停車している。
「邪魔くさいな……」
サイドミラーを見ると、後ろから何台か車が来ていた。
車線変更は難しそうだ。
「あれ?」
うにゅほが小首をかしげる。
「にだいいる」
「二台?」
言われて、車を注視する。
似た色合いだったので気付かなかったが、たしかに二台が並んで停車していた。
それも、密着している。
「……あれ、事故ってるんじゃないか?」
「そうかも……」
ようやく後続の車が途切れ、追い越し車線へと車線変更を行う。
横目で二台の車を見ると、やはり接触していた。
「ありゃー」
「けが、ないかな」
「接触事故みたいだし、悪くてムチ打ちじゃないかな」
「むち?」
うにゅほが、右手を軽く振る。
ムチを振るジェスチャーらしい。
「事故ったときに首を痛めることがあって、それなんだけど、なんでムチ打ちって言うんだろう」
「◯◯もしらないの?」
「おおよそのことは知らないからな?」
「そかなあ」
うにゅほは、俺のことを、歩くWikipediaか何かだと誤解している節がある。
「あとで調べておこうか」
「うん」
コンビニの駐車場で検索すると、追突事故の際に首がムチのようにしなることからその名が付けられたらしい。
「……そんなにしなるんだ」
「ちょっと怖いな……」
「じこ、しないようにしようね」
「だな」
元より安全運転のつもりではあるが、今日はそれ以上に気を付けて帰宅した。
交通事故は、恐ろしい。







309 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:03:09 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月10日(火)

自室で作業をしていると、皿を片手にうにゅほが戻ってきた。
「あじみしてー」
「味見?」
皿の上には、何やら薄い生地で具を巻いたような料理が乗っていた。
「とるてぃーや」
「トルティーヤ」
「きじあったから、つくってみた」
「おお……」
手作りトルティーヤなんて、初めてかもしれない。
「じゃ、いただくな」
「うん」
トルティーヤを手でつまみ、口の中へと放り込む。
トマトにレタス、アボカドを巻いたものに、チーズをかけて焼いてあるらしい。
素朴で美味しかった。
だが、
「……?」
なんだか固いものがある。
焦げたトルティーヤの生地が口蓋を引っ掻いているのかと思ったが、何かが違う。
「あれ?」
うにゅほが、皿を見て小首をかしげた。
「つまようじは……?」
「!」
口の中に指を突っ込む。
すると、細い棒状のものに触れた。
慌てて取り出すと、思った通り爪楊枝だった。
「わ、たべちゃってたの!」
「危ねえ……!」
もし飲み込んでいたら、とんでもないことになるところだった。
「ごめんね、わかりにくいとこにおいてた……」
「いや、俺が不注意だったよ……」
と言うか、気付け。
「うん、味は美味しかった。ありがとうな」
「よかったー」
「たくさん作ったの?」
「ちょっとだけ。こんど、またつくるね」
「楽しみにしてる」
「うん」
ほんと、爪楊枝を飲み込まずに済んでよかった。
マジで危ないので、読者諸兄も注意してほしい。







310 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:03:32 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月11日(水)

朝起きて、PCへと向かう。
「……あれ?」
マウスの調子がおかしい。
感度が悪い気がするし、サイドボタンも上手く効かない。
「壊れたかな……」
小さく呟くと、座椅子に腰掛けていたうにゅほが反応した。
「なにこわれたの?」
「マウス」
「まうす……」
「なんか、挙動がおかしいんだ。こんな壊れ方初めてだよ。ほら」
いま使っているマウスは、ロジクールのMX Master3である。
MX Master3にはサムホイールが実装されており、親指で回転させることで水平方向へのスクロールが可能となっている。
だが、
「右に回すと左に、左に回すと右にスクロールする。逆になってるんだ」
「へんなこわれかた……」
「あと、サイドボタンに設定してた機能が使えなくなってる」
「ふんふん」
「なんか、初期化されてる感じ……」
「せっていがおかしいの?」
「そうかも」
そう考え、ロジクール製のデバイスをカスタマイズするアプリケーションであるLogicool Optionsを起動した。
だが、開かない。
途中でフリーズしてしまう。
「……これが原因くさいな」
Logicool Optionsを再インストールし、改めて設定を行う。
すると、マウスは元通りに動くようになった。
「──よし、直った!」
「おー!」
うにゅほが、ぱちぱちと拍手をくれる。
「すごい」
「よかったよ、本体の故障じゃなくて」
「なんでこわれたんだろ」
「最近のPCって、"何もしてないのに壊れる"がよくあるからなあ……」
高機能になるということは、複雑になることと同義である。
壊れやすいのは仕方のないことだろう。
MX Master3の定価は、14,850円である。
買い替えずに済んで、本当によかった。







311 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:03:54 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月12日(木)

ICL手術の日取りが6月30日に決まった。※1
ICLとは眼球に直接挿入するコンタクトレンズのことである。
「思ったより早くレンズが届いたな」
「なんかげつもかかるかも、っていってたもんね」
「七月から、眼鏡が必要なくなるのか。楽しみだな」
うにゅほが、心配そうに尋ねる。
「……こわくないの?」
思わず苦笑してしまう。
「それ、何度も聞くなあ」
「だって」
「そう言えば、俺も、中学校ときの先生が目の手術をしたって聞いたとき、無理無理絶対無理って思ったっけ」
「わたしもむり……」
「なんか、年を取るごとに、そういうの大丈夫になってくるんだよな。手術はもちろん嫌だけど、すぐ終わるし──みたいな」
「すぐおわってもむり」
「××、目がよくてよかったなあ」
「うん……」
「目は財産だから、大事にするんだぞ」
「する……」
大事にしたからと言って悪くならないとは限らないのが怖いところではあるけれど。
「でも、正直、さっさとやっておけばよかったよ」
「そなの?」
「この眼鏡、いくらだったか覚えてる?」
「……じゅうまんえん?」
「そう」
「しじつ、ろくじゅうまんえん」
「今まで作ってきた眼鏡の代金と、コンタクトレンズの代金って、合わせればそれくらいは行くから」
「はー……」
「お金欲しいな……」
「いる?」
「××からはいらない」
「そか……」
くれって言ったら本当にくれるからな、うにゅほ。
自分のために使ってほしい。
ともあれ、眼鏡との付き合いもあと僅かだ。
名残惜しさは欠片もない。
さっさと手術したいなあ。

※1 2022年5月7日(土)参照







312 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:04:21 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月13日(金)

「◯◯、あした、こしかいしゅうだよ」
「マジか」
「ジャンプよまないと」
「だな……」
積み上げていた四冊のジャンプに手を伸ばす。
週刊少年ジャンプをこの年になっても買い続けているのだが、どうにも読むのが億劫だ。
古紙回収の前日に一ヶ月ぶんをまとめて読むのが習慣になってしまっている。
「昔は、毎週月曜日を楽しみにしてたんだけどなあ」
「そだねえ」
「やっぱ年かな……」
うにゅほが小首をかしげる。
「とし、かんけいあるの?」
「ジャンプのターゲット層からどんどん離れていくだろ」
「それはそうかも」
「だから、楽しめなくなってるのかなって」
「うーと……」
しばし思案し、うにゅほが恐る恐る言う。
「わたしも、かも……」
「××も、ジャンプ楽しめてないのか?」
「まえよりは」
「そうなんだ……」
「うん」
「──…………」
「──……」
「……ジャンプ、面白くなくなってない?」
「そんなきーする……」
「最近、やたら読み切り多いし」
「ひとつか、ふたつ、いつもあるよね」
「暗黒期なのかもなあ……」
「そうかも」
考えてみれば、面白い漫画は面白い。
感性が鈍麻しているわけではないのだ。
好きな連載だけは読んでから積んでいるのだし、その他の漫画を読むことを義務化しているから億劫なのだろう。
でも、好きじゃない漫画も、いきなり化けることがあるからなあ。
既に少年ではなくなった俺と、元より少年ではないうにゅほは、それでもジャンプを購読し続けるのだった。







313 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:04:42 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月14日(土)

「だっるう……」
体が重い。
腰が痛い。
理由はわかりきっていた。
iPhoneで睡眠管理アプリを開く。
「……十時間寝てる」
「ねたねえ」
「死ぬほど寝た。なんならまだ眠い」
「ねすぎてねむいのかな」
「だな……」
あくびを噛み殺し、両手を天井に向けて大きく伸びをする。
「……やっぱ、二度寝するんじゃなかった」
「にど?」
「正確には三度寝ですね……」
「すいみん、たいせつだけど、ねすぎもよくないもんね」
「ほんとだよ。やっぱ、六時間くらいが調子いいみたい」
「わたしも、そんくらいかなあ」
「××は何時間寝てるんだ?」
「うーとね」
うにゅほが、自分のiPhoneを取り出す。
「ろくじかん、さんじゅうよんふん」
「ちょうどいいな」
「ちょうどいい」
「調子いいか?」
「ちょうしいい」
むん、と、ない力こぶを作ってみせる。
「腕細いなー」
「そう?」
「足も細い」
「そかな」
「××、全体的に細いもんな」
「◯◯がふといのかも」
「……それはある」
だいぶ太ったし。
「でも、ダイエット中だから……」
「わたしもしようかな」
「この世から消え去る気か?」
「きえないよー……」
「これ以上、どこを細くしようって言うんだ」
「どこってこともないけど」
「じゃあ、なんで?」
「◯◯がしてるから……」
「あー……」
付き合ってくれようとしているのか。
「ありがたいけど、××は応援に徹してくれ。体に悪いよ」
「わかった」
そんなことを言わせないよう、さっさと痩せてしまいたいものだ。
努力あるのみ、である。







314 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:05:05 ID:fUUT/Wo.0

2022年5月15日(日)

「──……うッ」
気持ちが悪い。
理由はわかりきっていた。
ゲーム酔いだ。
「かお、あおいよ……?」
「うん……」
「ずっとやってるけど、なんのゲーム?」
「……タンブルウィードって知ってる?」
「しらない」
「西部劇とかで転がってる、これ」
言いながら、画面を指差す。
「あ、これか」
「このタンブルウィードを操作して、サボテンを倒すゲーム」
「──…………」
「──……」
「たのしいの……?」
うにゅほのリアクションも当然だ。
いまの説明だけを聞いて楽しそうと感じるのは、なかなか特殊な感性の持ち主だと思う。
「サボテンを倒すたびに、ポイントが手に入る」
「うん」
「ポイントを使って、タンブルウィードを強化することができる」
「ふんふん」
「最初は転がることしかできなかったんだけど──」
マウスとキーボードを操作し、段差を利用してタンブルウィードを跳躍させる。
空中でダッシュを繰り返すと、擬似的な飛行すら可能だ。
「いまは、こんなこともできる」
「おー」
「サボテンだって一撃だし、モンスターも倒せるぞ」
「つよい」
「やり過ぎたおかげで、完全に酔っちゃったけど……」
「きゅうけいしよ」
「そうだな……」
タンブルウィードが自動で転がるモードにし、ウィンドウを切り替える。
「……はー」
「ようまでしなくても……」
「なんか楽しくて」
「なんか、あれみたい」
「あれ?」
「くりっかーげーむ」
「ぽいな」
「◯◯、そういうのすきだもんね」
「わりと……」
クッキークリッカーも、通常プレイで行き着くところまではやり尽くした感がある。
質の良いクリッカーゲーム、あるいはそれに準ずるゲームはあるまいか。







315 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2022/05/16(月) 04:05:39 ID:fUUT/Wo.0

以上、十年六ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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  • 1  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:02  ID:hjw98IX.0
    早くお前の制御棒をうにゅほの炉心に入れてやれ

    もうメルトダウン寸前だってよ


  • 2  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:04  ID:nn6NlOM10
    今月のしのぎ


  • 3  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:06  ID:Or2weUMN0
    どっかの茜ちゃんがやってたゲームやん


  • 4  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:14  ID:R0.cNgR10
    これを商標登録する人は流石にいなそう


  • 5  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:15  ID:h65jqzSR0
    うにゅほトルティーヤに爪楊枝入れて殺人未遂してて草


  • 6  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:19  ID:6IEiI5Tw0
    管理人の家族を解放しろ


  • 7  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:25  ID:XYUX4sj10
    なんか今回の読みやすい
    自分が読めるようになっただけなのかも知れんが…


  • 8  Name  名無しさん  2022年05月17日 19:45  ID:0zRarcVl0
    最近東方のGoogle検索数が増えまくってるみたいだが、たまたまこのページにたどり着いちまったらどうすんだよ


  • 9  Name  名無しさん  2022年05月17日 20:02  ID:UUjpE54b0
    本スレも※欄も普通につまらんなぁ
    何の意味があってコレまとめるのだか



  • 10  Name  名無しさん  2022年05月17日 20:03  ID:AeAeEqms0
    柚葉はこれ登録していいからゆっくり返せ


  • 11  Name  名無しさん  2022年05月17日 20:36  ID:YjayWR.g0
    0秒で読める記事


  • 12  Name  名無しさん  2022年05月17日 23:53  ID:OmyKMEn40
    早くセックスしろ


  • 13  Name  名無しさん  2022年05月18日 04:21  ID:kvCM9Dhn0
    内容はある意味怖いんだけどさ、更新されなくなった時の方が違う意味で怖いっていうか


  • 14  Name  名無しさん  2022年05月18日 09:36  ID:wPmd8YOe0
    このイラストは作者本人が書いてるんか?


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