2025年03月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



408 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:34:32 ID:8ivrO6a60

2025年3月1日(土)

「兄ちゃん、WindowsUpdateしたら──」
と、起きるなり弟から相談された。
一ヶ月ぶりにPCを起動し、WindowsUpdateを行ったところ、ワイヤレスイヤホンが接続できなくなってしまったらしい。
今回はかなりの難題で、解決に一時間半もかかってしまった。
「ほんまMicrosoft……」
ぶつぶつぼやきながら自室へ戻ると、うにゅほが尋ねた。
「また、うぃんどうずあっぷでーと?」
「まただよ、また。何度目だよ」
「あっぷでーと、しなきゃいけないの……?」
「しなきゃしないで、セキュリティリスクとかがな」
「そなんだ……」
しかし、PC歴二十年以上で、問題解決スキルだけは一人前の俺だからなんとかなっている事案が多すぎる。
普通の人は、どうしているのだろう。
「どうしてるんだと思う?」
「うと、かすたまーさーびす……」
「あー」
考えてみれば、まずは購入した店やメーカーに相談するのが自然だ。
「その発想は抜けてたな」
「ぬけてたんだ」
「だって、電話で解決できなければ、たいていはPC本体送れって言われるんだぞ。嫌じゃん」
「◯◯、ぱそこんないといきてけないもんね」
「その通り」
「だから、じぶんでかいけつできるようになったんだ……」
「そういうことだな」
「なるほどー」
「しかし、Twitterで検索したら阿鼻叫喚なんじゃないか。こんだけ問題が頻発するんだからさ」
「しらべてみる?」
「みよう」
Twitterで、"WindowsUpdate"と検索をかけてみる。
「……やっぱ、阿鼻叫喚だわ」
WindowsUpdateが終わらないだの、ブルースクリーンになっただの、あるあるネタが大量に投下されている。
大きなアップデートが来た翌日とか、さらにひどいのだろう。
「勘弁してほしいよなあ……」
「ねー」
だが、恐らくこの体質が変わることはない。
もう慣れたけどさ。








409 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:35:00 ID:8ivrO6a60

2025年3月2日(日)

「──そんで、(弟)と一緒に行ったんだよ。婆ちゃんに連れられて」
「ほおー」
うにゅほが、興味深げに何度も頷く。
ふと、話題が、小学生の頃の思い出話に舵を取ったのだった。
「懐かしいなあ、テルメ……」
「てるめ」
「なんか、プールと温泉が一緒くたになったようなとこだった記憶がある」
「わ、たのしそう」
「楽しかった気がする……」
「でも、へんななまえだね。てるめ」
「たしかに」
英語の響きではないような。
「"テルメ"──と」
膝の上のうにゅほを抱き締めるようにキーボードを叩き、検索する。
「あ」
「?」
「テルマエ……!」
「てるまえ、ろまえ?」
「そう! テルメって、テルマエのことだったのか!」
テルマエ。
ラテン語で、"温かい風呂"という意味だ。
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「なっとく」
「テルメがどういう意味かなんて初めて意識したけど、なんか、すげー腹落ちしたわ」
「いしきしてないことば、たくさんありそう」
「あるだろうな……」
そもそも疑問に思わなければ、意識の俎上に乗らない。
当たり前のものとして取り込んでいるわけのわからないものが、きっと、多くあるのだろう。
それらに陽を当てるためには、偶然に頼るしかないのだ。
「てるめ、てるめ」
「語感、気に入ったのか?」
「なんか、かわいい」
「そっか」
札幌テルメ。
今はシャトレーゼが買収したらしい。
行く機会は、もう、なさそうだ。






410 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:35:21 ID:8ivrO6a60

2025年3月3日(月)

「はい、これ」
うにゅほが手にした角皿に乗っていたのは、幾つかに切り分けられた薄い茶色の物体だった。
きな粉蒸しパン。
さすがにそろそろダイエットをせねばと、YouTubeで見たレシピをうにゅほに作ってもらったのだ。
「ありがとうな」
「うん。おいしいかなー」
「味見してないんだ」
「あじみはしたよ。でも、レンジにいれるまえだから……」
「なるほど」
「たべてみよ」
きな粉蒸しパンの真ん中あたりを取って、口へ運ぶ。
もぐり。
「──…………」
「──……」
「……なんか、豆腐臭いな」
「わたしも、そうおもう……」
主な材料は、きな粉と豆腐。
特に豆腐は150gも使うから、豆腐臭さが出てしまうのは仕方がないのかもしれない。
「レシピどおり、つくったんだけどな」
「元のレシピが豆腐臭かったんだろ」
「うん……」
決して食べられないわけではないが、さして美味しくもない。
そんな味だ。
「……うーん。あした、また、ちょうせんしていい?」
「いいけど、どうするんだ?」
「きなこふやす」
「……固くならないか?」
「そのぶん、ぎゅうにゅういれる」
「あー」
なるほど。
豆腐臭さはかなり低減できそうだ。
「きょうは、これでがまんしてね」
「我慢するってほどでもないよ。不味くはないし」
「あした、おいしいのつくる!」
「期待してます」
「はい」
きな粉蒸しパンは昼食になった。
きな粉と豆腐だけに、腹持ちは非常によかった。





411 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:35:40 ID:8ivrO6a60

2025年3月4日(火)

月に一度の定期受診から帰ったあとのことだ。
「できたよー!」
うにゅほが手にした角皿に、見た目は昨日と変わらないきな粉蒸しパンが乗っている。
「これが、レシピ改良版か」
「うん」
YouTubeのレシピ通りに作ると、豆腐の分量が多すぎて、豆腐臭さが全面に出過ぎてしまう。
そのため、きな粉の量を増やし、さらに牛乳を加えることにしたらしい。
「たぶん、おいしいとおもう」
「味見は?」
「ちんするまえは、した」
「どれ」
きな粉蒸しパンを一切れつまむ。
生地が、しっとりと濡れていた。
「いただきます」
「めしあがれ」
ぱくり。
「──あーあーあー、わかる」
「わかる?」
「改良されたの、わかるわ。昨日のより、随分美味しくなった」
「おー!」
うにゅほも、一切れ口へと運ぶ。
「うん、とうふくさくない。おいしい」
「これはアリだな」
「うん、あり」
ダイエットは、頑張ってはならない。
無理せずできることから始めなければ、必ずどこかで破綻し、リバウンドを食らう。
美味しいダイエット食は、頑張らないダイエットに不可欠なのだ。
「ありがとうな、××。これなら続けられる」
「うへー……」
「また作ってくれるか?」
「あした、またつくる!」
「手伝えることあったら、言えよ。材料を泡立て器で掻き混ぜるくらいはするからさ」
「うん。それだけたのむね」
「まかせとけ」
こうして、長い長いダイエット生活が始まるのだった。
痩せねば。





412 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:36:05 ID:8ivrO6a60

2025年3月5日(水)

「──よし、あとはこれをオーブンで焼くだけだな」
「うん!」
すっかり飽きてしまったオートミールをクッキーにする方法をYouTubeで見掛けたので、物は試しと作ってみることにした。
レシピは非常に簡単。
卵白と甘味料を混ぜたものにオートミールを絡ませ、150℃に予熱したオーブンで35~40分ほど焼くだけだ。
「おいしいかなー……」
「わからん。でも、美味しかったらまた作ろう。すげえ簡単だし」
「うん。すーごいかんたん」
オーブンを使うというハードルはあれど、それを乗り越えれば、きな粉蒸しパンより工程は少ない。
トレイをオーブンに入れ、焼き時間を35分にセットする。
生焼けのようであれば、追加で五分焼けばいい。
そんなことを考えながら自室に戻り、ふたりでのんびり時間を潰す。
「おーとみーる、さいきん、たべてなかったもんね」
「なんかな……」
もともとさほど美味しいものでもない。
たとえ好物でも、飽きれば食べたくなくなるものなのだ。
それを美味しく処理できるのであれば、今回のオートミールクッキーのレシピには価値がある。
時計を見上げ、伸びをする。
「さて、そろそろかな」
「やけたかな!」
階下の台所へ向かい、既に稼働を止めていたオーブンを開く。
「……焦げ臭いな」
「うん……」
見れば、真っ黒とは言わずとも、クッキングシートとの接地部分がかなり黒々としていた。
「35分でも長かったのか……」
「みじかめにしたのに……」
恐らく、動画で使っていた甘味料とは別のものを使用したためだろう。
「まあ、ここらへんは焦げてないから。美味しければ、今度は30分でやればいいさ」
「そだね」
焦げが少ない部分を剥がし、うにゅほと半分こして口へと運ぶ。
「──あ、悪くないじゃん。悪くないよ」
「ほんとだ!」
焦げてさえいなければ、ヘルシーなおやつとして活用できそうだ。
「これ、また作ろう」
「うん、つくろう。ナッツもまぜよう」
「混ぜたらクソ美味いだろうな……」
ただし、混ぜ過ぎには注意である。
これはあくまでダイエット用のお菓子なのだから。





413 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:36:23 ID:8ivrO6a60

2025年3月6日(木)

オートミールクッキーを、今度は焼き時間30分で焼いてみた。
「うーん、これでもすこし焦げるな……」
「にじゅうごふんとか、にじゅっぷんでもいいのかも……」
クッキングシートからクッキーを剥がし、サクリと一口食べる。
「あ、でも味はいいわ。焦げ味もないし」
「ほんと?」
「ほら」
うにゅほの口元にクッキーを差し出す。
さくり。
「うん、おいひ」
「な?」
「これなら、にじゅうごふんでよさそう」
「次からそうしよう」
「うん」
冷ましてザクザクになったオートミールクッキーを昼食にし、自室へ戻る。
「──……うっぷ」
「なんか、おなかいっぱい、かも……」
「俺も……」
今回使ったオートミールは150g。
俺が食べたのは三分の二ほどだから、おおよそ100g。
それを牛乳で流し込んだため、胃の中で膨れ上がってしまったらしい。
「たべすぎたね……」
「あの量でこの満腹感って、すごいな……」
「おーとみーる、すごい……」
「でも、今のところ、いちばん美味い食べ方だわ」
「わかる」
オーブンを使うのは少々面倒だが、入れてしまえばあとは放置で済む。
むしろ楽だ。
「ただ、つぎからは、つくるりょうへらそうね……」
「ああ……」
少量で異様に腹持ちの良いオートミールクッキー、読者諸兄も是非作ってみてほしい。
食べ過ぎにはご注意を。






414 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:36:45 ID:8ivrO6a60

2025年3月7日(金)

「……──ねっむ」
「!」
膝の上でくつろいでいたうにゅほが、こちらを振り返った。
「ねる?」
「悩む……」
「ねむいなら、ねたほういいよ」
「まあ、うん」
「ようじあるの?」
「用事あるって言うか……」
iPhoneを手に取り、睡眠管理アプリを開く。
「今日、もう八時間近く寝てるからさ」
「あー」
「寝過ぎでは、という」
「うーん……」
「どう思う?」
しばしの思案ののち、うにゅほが答える。
「ねむいのは、からだが、ねたいっていってるってことだから……」
「××は寝よう派か」
「◯◯は?」
「眠い派」
「ねむいは」
「寝よう派と眠い派の二派なら、寝るかあ……」
「うん」
うにゅほが、俺の膝から降りる。
「おやすみなさい」
「三十分で起こして」
「はーい」
自分のベッドに戻り、仮眠を取る。
「……◯◯?」
「うん?」
何か用だろうか。
「さんじゅっぷん、たったよ」
「えっ」
「え?」
「……俺、寝てた?」
「ねてたよ……?」
「マジか」
三十分、タイムスリップした気分だ。
よほど眠かったのだろう。
睡眠をとった記憶はないのだが、眠気はスッキリしていた。
やはり仮眠は大切である。





415 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:37:05 ID:8ivrO6a60

2025年3月8日(土)

「××、米粉ってある?」
「べいふん?」
膝の上でiPadをいじっていたうにゅほが、こちらを振り返る。
「米の粉と書いて、米粉」
「あー」
うんうんと頷き、答える。
「あるよ」
「なら、これ作ろうぜ」
「?」
超簡単、もちもち豆腐パン。
たった今、YouTubeで見ていたレシピだ。
「もちもち、なるかなあ……」
「わからんけど、美味しそうだぞ」
「おいしそうだけど」
最近、ダイエットのために、ローカロリーな菓子作りに挑戦している。
だが、レシピ通りに作っても、なかなか上手く行かない。
お菓子作りは難しいのだ。
「じゃあ、つくる?」
「作ろう」
「わかった」
階下へ向かい、材料を並べる。
豆腐、150g
米粉、75~90g
ベーキングパウダー、4g
お好みで甘味料
「俺が混ぜるから、××は耐熱容器にラップ張って」
「わたしのしごと、それだけ?」
「それだけ」
「それだけかー……」
なにせ、工程が少ない。
混ぜて容器に流し込み、600Wで三分間加熱するだけだ。
あっと言う間に完成し、あちあち言いながら耐熱容器から取り出す。
表面をぷにぷにとつつきながら、うにゅほの顔を見た。
「おお、わりと完成度高くないか?」
「おいしそう!」
「あとは豆腐臭くなければ……」
きな粉蒸しパンのときは、レシピ通りに作ると、豆腐の嫌な匂いが残ってしまった。
今回はどうだろう。
表面を軽くむしり取り、口へ運ぶ。
「──あ、これ美味いわ。最近作ったなかで、いちばん美味い」
「あー」
甘えるように開いたうにゅほの口に、豆腐パンを差し出す。
「!」
咀嚼しながら、うにゅほがうんうんと頷く。
美味しかったらしい。
「これいいな。これは神レシピだわ……」
「もいっこつくろ。ふたりだと、たりない」
「了解」
「こんどは、わたし、まぜるね」
「頼むわ」
もちもち豆腐パン、本当に美味い。
これはリピート確定である。





416 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:37:33 ID:8ivrO6a60

2025年3月9日(日)

一週間ぶんの薬を入れられる七角形のピルケースを愛用していたのだが、曜日の印刷がすっかり剥げてしまった。
そこで、同じ形の新しいピルケースを購入した。
届いたAmazonの紙袋を開く。
「あ、思ったよりでかいな……」
「ほんとだ」
「前のより、二回りはでかい」
「たくさんはいるね」
「たくさんは入れないから、べつにいいんだけど……」
大は小を兼ねる。
多少大きいからと言って、さして困りはしない。
「それより、商品名が面白いんだが」
「?」
袋に貼ってあったラベルを指差す。
「"ポータブル小さな箱"」
「ぽーたぶるちいさなはこ……」
「日本語おかしいな?」
うにゅほが、くすりと笑う。
「ふふ、おかしい」
「安心の中国製」
「やっぱし」
日本製であろうと中国製であろうと、ピルケースに貴賤はないだろう。
ちゃんと薬が入って、曜日がわかればそれでいいのだ。
「まえの、すてるの?」
「捨てる」
「そか……」
「ほら、見てくれよ。木、金、土なんて、もう読めないぞ」
「たしかに」
「と言うわけで、残念だけどボッシュートです」
うにゅほが小首をかしげる。
「ぼっしゅーと?」
「ほら、世界ふしぎ発見で」
「せかいふしぎはっけん……?」
「……え、知らない?」
「てれび?」
「テレビテレビ」
「みたことないかも……」
「マジか」
言われてみれば、子供のとき以来まともに見たことがないかもしれない。
うにゅほが知らないのも当然だ。
「……これが、ジェネレーションギャップ」
軽いダメージを受けるのだった。






417 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:37:54 ID:8ivrO6a60

2025年3月10日(月)

「──××、××。すごいサイト見つけた」
座椅子で漫画を読んでいたうにゅほを手招きする。
「?」
のそのそと近付いてきたうにゅほを膝に抱き、ディスプレイを顎で示した。
「◯◯のひみつシリーズ、読み放題」
「!」
学研の、まんがでよくわかるシリーズ。
ずっと昔、図書館で借りては、うにゅほとふたりで読んだものだ。
「なつかしい!」
「懐かしいだろ」
「え、これ、ぜんぶよめるの?」
「軽く見たけど、全部ではないっぽい。半分くらいかな」
「でも、すごい!」
ひとしきり興奮したあと、うにゅほが我に返る。
そして、ひそりと声をひそめて言った。
「……これ、いいサイト?」
恐らく、合法非合法を問うているのだろう。
「学研のサイトだから、いいサイトだよ。心配御無用」
「ただでよまして、もうけ、だいじょぶなのかなあ……」
「それはわからんけど」
言われてみれば、多少気になる。
「さっそくだけど、なんか読んでみるか」
「うん!」
ページを繰りつつ、うにゅほが気になるひみつを探していく。
「ひかりふぁいばけーぶる、だって」
「読みたい?」
「よみたい」
「最初にこれか……」
意外と言うか、なんと言うか。
あるいは、絵柄の可愛さで決めたのかもしれない。
「だめ?」
「ダメじゃないよ。俺も気になるしな」
"光ファイバケーブルのひみつ"を、ふたりで読み進めていく。
画像はすこし小さめだが、普通に読むぶんにはまったく困らない。
「──おもしろかった!」
「光ファイバケーブルに無駄に詳しくなったな……」
「うん」
うにゅほが、ふと、小首をかしげる。
「としょかんで、たくさんかりてたの、どんくらいまえだっけ」
「ええと──」
日記を検索する。
「……十年前だな」
「じゅ!」
「俺も、××も、年食ったなあ」
「じゅうねん……」
あまりに長い時の経過に、思わず遠い目になる俺たちなのだった。





418 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:38:14 ID:8ivrO6a60

2025年3月11日(火)

「明日、大腸内視鏡かあ……」
憂鬱である。
「たべちゃいけないの、なんだっけ」
「けっこうあるぞ。野菜とか、キノコ類とか」
「……たべていいの、なに?」
「おかゆとか、素うどんかな」
「おかゆつくる?」
「おかゆでもいいけど、うどんなかったっけ。あれ食べたい」
「うん、わかった」
午後九時までに食事を終え、明日の朝には下剤を飲む。
面倒だが、三年ぶりの大腸内視鏡検査だ。
四年、五年と時間を空ければ空けるほど、大腸がんのリスクは高まっていく。
思い立ったら即検査すべきだ。
と言うわけで、思い立ったから検査をするのだが、それが面倒であることとは別問題である。
「明日、××も来る?」
「いくよー」
「なら、タブレット持ってきな。絶対暇だから」
「うん、わかった」
予約は午後四時半であるにも関わらず、三時半に来てほしいと言われている。
最低一時間の待ち時間があることに疑いの余地はない。
ふと下剤に視線を向ける。
今まで飲んだことのない下剤だ。
「クソ不味くて吐く羽目にならなきゃいいんだけどな……」
「まえ、いっかい、はいちゃったもんね……」
「××にも飲ませたかったよ」
「のみたくない……」
「医薬品だから飲ませないよ。ただの不味いものであれば、ともかく」
「……さるみあっき」
「マーマイトかベジマイト興味あるんだけど、一瓶がでかいんだよな……」
「かわないでね……?」
うにゅほの表情は切実だ。
すこし迷ったが、
「買わない、買わない。仮に買っても無理強いはしない」
「かったら、ぜったい、たべちゃうの!」
「……そっか」
好奇心には勝てないらしい。
マーマイトやベジマイトを持っている友人に食べさせてもらうしかないか。





419 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:38:39 ID:8ivrO6a60

2025年3月12日(水)

今日は、大腸内視鏡検査を受けてきた。
朝の六時に起床し、ボトルに入った下剤を飲む。
「──ぉえッ」
不味い。
ただ不味いだけではない。
舌が、痺れる。
「まずい……?」
「ヤバい」
「やばい」
「水で薄めよう……」
配布されていたプラコップで下剤を二倍に薄め、再び口をつける。
これでもきつい。
だが、飲めないほどではなくなった。
「……これ二本を、二時間かけて飲むのか」
「がんばって……」
「頑張る……」
腸内を空っぽにした数時間後、俺たちは、大腸内視鏡検査を行う病院へと車を走らせた。
「じゃあ、行ってくるから」
「がんばってね……」
待合室でうにゅほと別れ、小一時間ほどで検査を終える。
「……ただいま」
早朝から不味い下剤を飲まされ、肛門から大腸を覗かれ、すっかり疲弊しきっていた。
「ぽりーぷ、あった?」
「一個だけあった。そんなに大きくないやつ」
「そか!」
「入院しなくていいのが嬉しいよな……」
「ほんと、ほんと」
俺離れできないうにゅほは、たったの一泊でも死ぬほど寂しがる。
「二年後もここで受けようか」
「そうしよ」
「……でもなあ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「下剤がな、不味すぎるんだよな……」
「そんなに……?」
「正直、舐めてみてほしかった」
医薬品だし、絶対にさせないけど。
「きになってきた……」
「××も受けるか?」
「ま、まだうけない!」
大腸内視鏡検査は、三十代になってからで構わないだろう。
女医が診てくれる病院、探さないとな。





420 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:39:10 ID:8ivrO6a60

2025年3月13日(木)

昨日、大腸内視鏡検査のおかげで睡眠不足だったせいか、今日は眠くて仕方がなかった。
「うぐあー……」
「まだねむい?」
「眠気は、ある。あるけど、さすがにな……」
本日の睡眠時間、9時間53分。
確実に寝過ぎである。
時刻も既に夜を迎え、夕食も入浴も済ませている。
仮眠をとるには少々遅すぎるだろう。
「ねむかったら、いってね」
「言ったらどうなる?」
「どく」
俺の膝の上が、うにゅほの定位置だ。
まあ、仮にどかなかったとしても、うにゅほを抱えてベッドへ向かうのだけど。
「!」
うにゅほが、不意に目をまるくする。
「どした」
そして、俺の膝の上からあっさりと降りた。
「といれー」
「ああ、トイレか」
「うん」
ててて、と自室を出て行くうにゅほを見送り、ぐッと背筋を伸ばす。
ポリープを切除したばかりだから、一週間ほど運動はNGだ。
運動はダメでも、ストレッチは良いのだろうか。
そんなことを考えていると、
「──わああ!」
部屋の外から、うにゅほの悲鳴が轟いた。
「?」
様子を見に行くべきか、行かざるべきか。
逡巡していると、部屋の扉が開いた。
「びっくししたー……」
「どうしたんだ?」
「わたし、といれからでたしゅんかん、(弟)、へやからでてきた……」
「あー」
トイレの扉と、弟の部屋の扉は、完全に向かい合っている。
タイミングが合致すれば、たしかに驚くかもしれない。
「(弟)、へやのでんき、けしてでてきたから……」
「それは声出るわ……」
「ね」
「(弟)もビビってたろ」
「わたしのこえに、びっくししてた」
「ははっ!」
なんとも微笑ましい出来事だ。
そんなことを言うと、驚いた当人たちは不服そうな顔をするだろうけれど。






421 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:39:35 ID:8ivrO6a60

2025年3月14日(金)

ホワイトデーである。
「はい、××」
「ありがと!」
渡し、受け取る。
実にあっさりとしたものだ。
それも当然、楽天で届いたものを配達員から受け取ったのは、うにゅほなのだ。
「ね、あけていい?」
「いいぞ」
うにゅほが、大事そうに小箱を開けていく。
出てきたのは、お高めのマカロンだった。
「わ、まかろんだ」
「マカロン好きだろ」
「うん!」
「バレンタインデーではかなり無理言ったしな。高いやつだぞ」
「おおー……」
うにゅほが目をきらめかせる。
「だいじにたべるね!」
「そうしてくれ」
ふと、とあることを思い出した。
「そう言えば、お菓子言葉なんて知ってるか?」
「おかしことば」
「そう」
「はなことばみたいな……」
「マカロンのお菓子言葉って、なんだろうな」
「しらべてみよう」
調べてみた。
「──あなたは特別な人、か」
「うへ」
にまりと笑ううにゅほが、つんつくと俺を指で突いてくる。
「知らなかったんだって!」
「でも?」
「……まあ、合っては、いる」
「うへへへ」
つくつんつん。
「くすぐったいっつの!」
照れ隠しに終始した一日だった。
あなたは特別な人。
その通りだけど、しらふじゃ小っ恥ずかしくて言えないっての。






422 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:40:21 ID:8ivrO6a60

2025年3月15日(土)

うにゅほと雑談を交わしていた。
「きょうのおひるねー、くるくるごはんだったよ」
「美味かった?」
「おいしかった!」
ふと思う。
「……くるくるごはんって、うち以外で通じるのか?」
うにゅほが、ぱたぱたと右手を振る。
「つうじるよー……」
「根拠は?」
「わかんないけど」
勘のようだ。
そもそも読者諸兄は、くるくるごはんと聞いて何を思い浮かべるだろうか。
答えは簡単、卵かけご飯のことである。
卵かけご飯ならば卵かけご飯と呼べばいいものを、我が家では何故かくるくるごはんという呼称が定着している。
くるくるごはん。
本当に、そのように呼ばれてるのだろうか。
俺は、サブディスプレイで開かれていたブラウザを用い、"くるくるごはん"で調べてみた。
出るわ出るわ。
しかし、それは卵かけご飯のことではなかった。
移動こども食堂の名前だったのだ。
「……やっぱないな」
「じゃ、じゃあ、くるくるごはんってなに……?」
「わからん。我が家独特の呼び方かもしれない」
「えー……」
ショックだったらしい。
くるくるごはんなどと言い出したのは、誰が最初なのだろうか。
迷宮入りの事件なのだった。




423 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/03/16(日) 18:41:27 ID:8ivrO6a60

以上、十三年四ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2025年03月17日 20:17  ID:MTm8FzA70
    散々やめろって言われても無法者には通じない
    そりゃロシアも戦争やめないよな


  • 2  Name  名無しさん  2025年03月17日 21:43  ID:XGL.Aji80
    20年間清掃員として働いただけで女共に馬鹿にされる世の中で
    13年間ペド日記を書き続けたこどおじが馬鹿にされてるのは至極当然なんだろう


  • 3  Name  名無しさん  2025年03月18日 01:45  ID:66A.n7iE0
    ここでこんなもんまとめられても目障りなだけ
    東方スレでもなんでもないし


  • 4  Name  名無しさん  2025年03月18日 02:18  ID:ax.xqKxM0
    東方のキャラを装ってるだけの○ナニー妄想日記


  • 5  Name  名無しさん  2025年03月18日 03:44  ID:fSeOeQ0s0
    自分のブログで書く分には好きにすればいいけど、ここに引用されてるのは意味分からん


  • 6  Name  名無しさん  2025年03月18日 09:30  ID:cPsO.bzr0
    コメントだけ見に来てる


  • 7  Name  名無しさん  2025年03月18日 12:22  ID:vqq1XlPA0
    >>6
    ※も何も面白くないやん


  • 8  Name  名無しさん  2025年03月21日 15:27  ID:lA20x9wi0
    5 観測所の管理人が書いているのかな


  • 9  Name  名無しさん  2025年03月21日 23:01  ID:qKowhCWG0
    管理人の家族を解放しろ


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