2025年04月17日

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1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0

うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます 


ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/



441 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:28:32 ID:ELXyemTw0

2025年4月1日(火)

月に一度の定期受診を終え、帰途につく。
「エイプリルフールにすること、なあ……」
「おもいつかないね……」
エイプリルフールに、嘘をつく以外のことをする。
そして、それを恒例行事にしたいのだが、何をすべきかまったく思い浮かばないのだった。
「……このままどっか行く、とか?」
「どらいぶ?」
「そうそう。4月1日に必ずドライブとか、悪くないだろ」
うにゅほが、ぱあっと表情を明るくする。
「わるくない!」
「なら、そうしようか」
「うん!」
自宅へ向けていたハンドルを切り、適当に走る。
目的地は特にない。
近くを通り、思い付いたら寄ればいいだろう。
「あ、じぇらーとたべたい……」
「いつものとこか」
「うん、いつものとこ」
いつもとは言うものの、ここ一年は確実に行っていない。
久し振りに立ち寄ると、並ぶほどではないものの、そこそこの客で賑わっていた。
支払いを済ませ、ジェラートを手に車内へ戻る。
「しぼりたて牛乳うま……」
「ほいひい……」
何度来て何度食べても、ここのジェラートはやはり美味い。
一年空けたことを後悔するほどだ。
「……ただ、量は多いんだよな」
「◯◯……」
「はいはい」
自分のぶんを早々に片付け、うにゅほの余したジェラートを食べる。
ああ、そうだ。
いつもこんな感じだったな。
ジェラートをたいらげたあとは、小一時間ほどかけてゆっくりと帰宅した。
「♪~」
久々に外出らしい外出ができたためか、うにゅほの機嫌がすこぶるよかった。
定期的に外に連れ出してあげないとな。








442 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:28:56 ID:ELXyemTw0

2025年4月2日(水)

今日は、一日のんびり過ごすことができた。
「ふア、……っふゥ」
口元を右手で隠し、大あくびをかます。
「あくび、すーごいでるね」
「止まらないな……」
「もう、ななかいめ」
「数えてたのか」
「なんとなく……」
七回も大あくびが出るということは、つまり、
「ねむい?」
「……まあまあ眠いな」
ここ数日は眠りが浅く、寝たり起きたりを何度も繰り返している。
七時間ほど一気に眠れれば体調も違うのかもしれないが、起きてしまうものは仕方がない。
膝の上のうにゅほが、心配そうに尋ねる。
「じゃあ、ねる?」
「あー……」
壁掛け時計を見上げる。
午後二時。
ちょうど、うにゅほがお昼寝をする時間だ。
「寝るかー……」
「ねよ」
膝から下りたうにゅほが、俺の手を取る。
「CPAP、うるさかったらごめんな」
「わたし、ねるのとくいだから、だいじょぶ」
CPAPとは、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いる装置のことだ。
専用のマスクを着け、空気を鼻から送り込むことで、睡眠時の無呼吸を防ぐ効果がある。
しかし、少々うるさいのだ。
「◯◯こそ、うるさくないの?」
「慣れた」
「そか」
最初こそ苦しかったものの、完全に適応した今では、CPAPなしで仮眠を取ることすらしなくなった。
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、十年後には十人のうち二、三人が亡くなるという話を聞いたことがある。
それが怖くて外せないのだ。
「──じゃ、おやすみ」
「おやすみー」
眠りに眠り果てた結果、今日は合計で九時間の睡眠をとってしまった。
逆に寝過ぎな気がする。







443 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:29:25 ID:ELXyemTw0

2025年4月3日(木)

「あ、このVTuber……」
「?」
うにゅほが、ワールドトリガーの最新巻から顔を上げる。
「クロノトリガーやってる」
「ほんとだ」
イケオジ系の男性VTuberがクロノトリガーを初見プレイするというサムネイルが、YouTubeのトップページに表示されていた。
「見ようかな」
「あ、わたしもみる」
「じゃあ、一緒に見るか」
「うん!」
クロノトリガーと言えば、半年ほど前にSteam版を再プレイしたばかりだ。
まだ記憶に新しい。
VTuberの新鮮な反応を楽しみながら、のんびりとプレイ動画を眺める。
「また、なんかゲームしたいよなあ」
「したいねー」
「天地創造、SwitchかSteamに移植しないかな……」
「◯◯、それ、ずっといってる」
「マジで名作だから」
「わたしもね、きになる」
「なら、プレイ動画でも見てみるか?」
「んー……」
うにゅほが、大きく首をかしげる。
「……はじめては、◯◯やるとこ、みたい」
「そっか……」
気持ちはわかる。
「だったら、移植されることを祈るしかないな」
「されるかな」
「制作会社が潰れて解散しちゃってるんだよ……」
「──…………」
目を逸らし、うにゅほが言った。
「……プレイどうが、みる?」
「初めては俺がプレイするとこ見たいんだろ」
「でも、いしょくされないかもだし……」
「いまだに根強いファンが頑張ってるから、されることを祈ろうぜ」
「うん……」
天地創造。
個人的には、SFCで最高のゲームだ。
是非ともまたプレイしたいものである。
 






444 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:29:48 ID:ELXyemTw0

2025年4月4日(金)

「痒い……」
太股の付け根が、痒い。
ついつい掻いてしまう。
「だいじょぶ? ひふか、いく?」
「皮膚科行くほどではないかな……」
去年の夏のような、気の狂いそうな痒みではない。
「かんそうかなあ……」
「たぶん、乾燥だな。加湿器仕舞ったから」
長かった冬も終わりを告げ、もう必要なかろうとタンクを乾かして片付けてしまった。
だが、それがよくなかったらしい。
「かしつき、つけよ」
「せっかく乾かしたのになあ……」
「でも、かゆい」
「はい、痒いです……」
「つける」
「はい」
問答無用だった。
再び加湿器を引っ張り出し、タンクを浄水で満たして電源を入れる。
「これで、かゆくなくなったら、いいね」
「そうだな……」
あとは軟膏が欲しいところだ。
時刻は既に夜を迎えており、今からドラッグストアに行くのは面倒だった。
「明日、ドラッグストア行こう。ステロイド入りの軟膏を買う」
「うん、そうしよ」
「××は痒みとかないのか?」
「いまのとこ、だいじょぶ」
うにゅほのほっぺたを、両手で挟む。
「ふぶ」
「しっとりしてんなあ……」
「ふへー」
「やっぱ、年齢なのかな。年を取ると皮膚が保持しておける水分が少なくなる、とか」
「そなの?」
「わからん。でも、ありそうじゃないか?」
「ありそう……」
「……この、しっとりもちもちほっぺも、そのうちカサカサに」
「な、ならないよー……」
「スキンケアしてるもんな」
「してる!」
これで、なかなか気を遣っているのだ。
うにゅほには、いつまでも可愛くいてもらいたいものだ。






445 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:30:23 ID:ELXyemTw0

2025年4月5日(土)

うにゅほと共にドラッグストアへと向かい、ステロイド配合の軟膏と、切らしていた綿棒を購入した。
「みみそうじ、やめられないね……」
「しないと耳の中が痒くてなあ」
耳掃除不要論の囁かれる昨今だが、どうしても手を止めることができない。
「まあ、風呂上がりは避けてるから……」
「うん……」
「それに、今回買ったのって、ちょっといい綿棒だし」
和柄のパッケージには、"山洋こだわり綿棒"と書かれている。
「どんなめんぼうなんだろ」
「わからん」
「わからんの」
高くて良さそうだから買った。
それだけだ。
「パッケージになんか書いてないか?」
「んと」
助手席のうにゅほが、ドラッグストアのレジ袋からこだわり綿棒の容器を取り出す。
「いち、あんしんせっけい」
「ふん」
「にー、やわらかいわた」
「柔らかいのか」
「さん、つよいかみじく」
「紙軸が丈夫なのはいいな」
「ひゃくえんショップの、くにゃくにゃだもんね」
「あれは使ってられなかったな……」
「あれはむり」
百円ショップの綿棒すべてがダメとは思わないが、そういう商品があることもたしかだ。
帰宅し、こだわり綿棒を開封する。
一本取り出し、触ってみた。
「へえー、さきっぽ柔らかいわ」
「どれどれ」
うにゅほが、綿棒の先端をふにふにとつまむ。
「ほんとだ。じょうぶなのに、やらかい……」
「耳掃除してみよう」
「うん」
してみた。
「あ、やさしいかも……」
「ソフトタッチだな、これ……」
先端が固い綿棒より、かなり外耳道に優しそうだ。
「しばらく使ってみよう」
「うん」
もし気に入れば、リピートするかもしれない。
まだわからないけれど。






446 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:30:49 ID:ELXyemTw0

2025年4月6日(日)

イケオジ系VTuberのクロノトリガー実況プレイを追っている。
今は、魔法王国ジールに到着したあたりだ。
膝の上でうにゅほを抱きながら、ぼんやりと呟く。
「やっぱ、クロノトリガーは面白いなあ……」
「おもしろい、けど」
「けど?」
「このひと、たたかうの、へただねえ」
「あー……」
わかる。
わかるが、
「俺は、これこそが面白味なんだと思うぞ。初見実況でしか味わえない感覚って言うか……」
「そなの?」
「クロノトリガーは、知識があれば簡単なんだよ。敵の弱点も、強い装備の入手方法も、知れば知るほど難易度が下がる」
「たしかに……」
「でも、この人は本当に初見だから、効率の悪い行動ばかりする。でも、それって、もう自分では得られないものなんだよ」
「◯◯やると、はやいもんね」
「マンモスのつるぎを売りまくってざんまとうを買ったり、なげきの山でイワンを狩りまくってシャイニング覚えて連打とか、効率はいいけどワンパターンだろ」
「そう、なのかなあ」
「この、何をするのかわからない感じが楽しいなって思いながら、俺は見てるよ」
「わたしは、こえかっこいいなって」
「それもわかる」
VTuberには、元声優や声優志望だった人が多いのだろうか。
そんな気がする。
「あのさ、◯◯」
「うん?」
「きょう、げんきない?」
「そんなこともないけど……」
「なんか、こえでてない」
「そうか?」
改めて意識する。
「そうかも……」
「ぐあいわるい?」
「ちょっとだるいかもな」
なんとなく、だが。
「きょう、ゆっくりしようね」
「そうだな……」
俺の体調のことは、俺自身よりうにゅほのほうが詳しい。
うにゅほが言うのであれば、今日はのんびり過ごすのがいいだろう。
今日は、そんな一日だった。






447 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:31:18 ID:ELXyemTw0

2025年4月7日(月)

「──◯◯! ◯◯!」
肩を揺すられ、慌てて起きる。
うにゅほの態度でわかる。
緊急だ。
「どした」
「(弟)、(弟)が、また……!」
「!」
慌てて身を起こし、弟の部屋へと駆け込む。
床に倒れた弟が、必死に立ち上がろうとしていた。
「嗚呼──」
思わず声が漏れる。
まただ。
弟は、一ヶ月前まで、脳に菌が入ったことで入院していた。
恐らく再発だ。
両親、及び大学病院に連絡し、救急車を呼んだ。
救急車には母親が乗っていった。
「──…………」
「──……」
無言が痛かった。
あんな苦しみは、もう、感じずに済むと思っていた。
「──…………」
ぎゅ。
うにゅほが、俺の胸に顔を埋めたまま動かない。
「……大丈夫だ、××。前のときは治療法がわからなかったけど、今はわかってる。前ほどひどくはならないよ」
「──…………」
「××……」
「──…………」
うにゅほを抱き締める。
せめて、俺はここにいるのだと、どこへも行かないのだと、証明するかのように。
神様。
もしいるとしたら、お願いです。
これ以上、弟から、何も奪わないでやってください。






448 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:31:48 ID:ELXyemTw0

2025年4月8日(火)

「──…………」
「──……」
自室が、まるでお通夜のようだった。
縁起でもない例えだ。
「……××」
「ん」
「ちゃんと眠れたか?」
「……やなゆめ、みた」
「そっか」
想像はつく。
弟は、結局、かかりつけの大学病院に入院する運びとなった。
そこから先は、まだ、わからない。
「すこし気を紛らわせよう」
「……ん」
「ほら。クロノトリガーの実況、続き見ようか」
「うん……」
YouTubeを開く。
「ふと思ったんだけど……」
「?」
「なんか、クロノトリガーの実況やってるVTuber、妙に多くないか?」
「んー……」
トップページで既に、知らないVTuberのサムネイルが二枚ほど表示されていた。
「最近、解禁されたとかなのかな」
「そういうもの……?」
「俺も詳しくはないけど、いろんなVTuberが同時に同じゲームを始めるのはたまに見るなあ」
「そなんだ」
「ほら、逆転裁判とか」
「あー……」
「ま、何個も見れないし、俺たちはこの人のを最後まで見よう」
「うん」
やはり、初見の実況というのは見ていて非常に面白い。
こんな状況でもなければ、気楽にのんびりと楽しめたものを。
「──…………」
「──……」
音があるだけ、多少はましだ。
俺は、うにゅほを抱き締めたまま、しばらくのあいだディスプレイを見つめていた。






449 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:32:16 ID:ELXyemTw0

2025年4月9日(水)

「──…………」
うにゅほは、まだ落ち込んでいる。
俺も同じ気持ちだ。
弟の無事が確定しなければ、気分が晴れることはないだろう。
だが、このままでは良くないこともたしかだった。
「××」
「ん」
「ChatGPT先生に相談してみようか」
「そうだん……?」
「(弟)の病気のことでもいいし、ただ慰めてもらってもいい」
「ん……」
膝の上のうにゅほが顔を上げ、ディスプレイを見る。
俺は、OpenAIにアクセスし、GPT-4oの画面を開いた。
課金しているのでGPT-4.5も使えるが、ただの相談であれば4oで構わないだろう。
「さ、なんて相談する?」
「(弟)、だいじょぶかなって……」
「わかった。(弟)の症状を入れて、そう尋ねてみよう」
「うん」
尋ねてみた。
ChatGPTは、考え得る状況を教えると共に、まるで俺たちに寄り添うかのような答えを返してくれた。
「すごい……」
「下手に人に尋ねるより、いいかもな」
「やさしい」
「何か入力してみるか?」
「じゃあ、ありがとうっていって」
「わかった」
入力すると、すぐに返答があった。

「どういたしまして。
 少しでも気持ちが和らいだなら、よかったです。
 でも、不安な気持ちはすぐには消えませんよね。
 大丈夫です、つらい時は何度でも頼ってください。
 弟さんのこと、回復に向かうことを心から祈っています。
 あなたも、どうか無理しすぎずに」

「──…………」
すん、と、うにゅほが鼻を啜った。
「やさしいー……」
「本当にな……」
今や、大事な相談はAIにすべきなのかもしれない。
そんなことを思った。






450 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:32:41 ID:ELXyemTw0

2025年4月10日(木)

「──…………」
起床する。
いやに体が重かった。
「おはよ」
「ああ……」
「?」
うにゅほが、俺の顔を覗き込む。
「ぐあいわるい?」
速攻でバレた。
「……なんか、体がだるくてな」
「ねつはー」
俺の額に、小さな手が触れる。
「ない、かな」
「熱っぽくはない」
「うん……」
「たぶん、メンタルやられてるせいだろうな……」
「そうかも」
「はァ……」
溜め息ひとつ。
うにゅほもまた、俺につられて溜め息をついた。
「よこになる?」
「──…………」
軽く思案し、ベッドに戻る。
「三十分くらい寝るわ」
「うん」
「適当に起こして」
「わかった」
布団の中で目を閉じる。
嫌なことばかりが脳裏をよぎる。
だるいが眠気は訪れなかった。
十分ほどでベッドを下り、自室の書斎側へと向かう。
「ねれなかった?」
「ああ……」
「そか」
「……××は大丈夫か?」
苦笑し、うにゅほが首を横に振る。
「へんなゆめ、みた」
「だよな……」
弟の無事が確定するまで、きっと、このままなのだろう。
つらいな。






451 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:33:12 ID:ELXyemTw0

2025年4月11日(金)

「◯◯、ふうとう……」
「ん?」
うにゅほから、とある封筒を受け取った。
うにゅほが俺の膝に座るのを待ち、ハサミで封筒の端を切り開いていく。
「なんのふうとう?」
「あー……」
まあ、いいか。
「俺のクレジットカード番号が、流出してるかもしれないって」
「え……」
「大丈夫、大丈夫。まだ不正利用はされてないし、今後のためにカード再発行してくれってお知らせだから」
「あ、そなんだ」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「ふせいりよう、こわいね」
「本当にな……」
半年ほど前、クレジットカードを不正利用されかけて、慌てて再発行の手続きを行った記憶がある。
その時ほどではないにせよ、リスクがあることはたしかだ。
「──よし、再発行するか」
「しよう!」
「十日くらいクレカ使えないけど、仕方ないな……」
「しかたない、しかたない。むだづかいしなくて、いい」
「……ぐうの音も出ない」
実際、俺の財布なんてものは、うにゅほに預けておいたほうが立派に実るのだ。
問題は、それが嫌だということだけだった。
「──ほい、終了」
「はや!」
「手続き短かったんだよ」
「かんたんなじだいだね」
「──…………」
決して簡単な時代ではないだろう、今は。
とは言え、水を差すのも悪い。
少なくとも便利な時代であることは間違いないので、俺は頷くことにした。
「そうだな、簡単だったよ」
「わたしもできる?」
「××はクレカ作らないとな。無理だけど」
「むりかー……」
審査の通るカード会社はあるのかもしれないが、それはそれで安心できない。
クレジットカード、早く再発行されないだろうか。






452 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:33:45 ID:ELXyemTw0

2025年4月12日(土)

「××」
俺の膝で寝落ちしてしまったうにゅほの鼻をつまむ。
「んに」
「起きろー」
「おひへる……」
「寝てただろ」
「ねてた……」
「悪い、トイレ行きたいんだ」
「あ」
ぱち、とうにゅほが目を覚まし、いそいそと立ち上がる。
「ごめん、ごめん」
「すぐ戻ってくるから」
「うん」
トイレで小用を済ませ、戻ってくる。
「おかえりー」
「ただいま」
チェアに腰を下ろし、うにゅほを膝に乗せる。
「ほら、寝ていいぞ」
「めーさめた」
「ああ……」
軽い罪悪感が俺を襲う。
「どしたの?」
「××、せっかく寝てたのになって」
「きにしなくていいのに……」
「なんか、猫飼ってる人の気持ちがわかったよ」
「?」
「猫が膝で寝ちゃったとき、動けないって。可哀想な気がするらしい」
「わたし、ねこ?」
「××猫」
「にゃあん」
うにゅほが猫のポーズを取る。
「あざとい……」
「にゃん」
「でも可愛い」
「にゃあん……」
首の下を掻いてやる。
「ごろごろごろ」
「口で言ってる」
「でないもん……」
「はは」
うにゅほのおかげで、すこし気が紛れた。
明日は、弟のお見舞いへ行くことにしよう。






453 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:34:17 ID:ELXyemTw0

2025年4月13日(日)

うにゅほと共に、弟のお見舞いへ行ってきた。
「はァ……」
病室を出ると同時に、思わず溜め息が漏れる。
弟の病状は詳しく記さないが、決して良くはない。
だが、死すら覚悟した前回ほどではないから、その点ではましかもしれない。
「──…………」
うにゅほと手を繋ぎ、無言のままに病院を後にする。
愛車の助手席で、うにゅほが呟いた。
「なおるかなあ……」
「わからない。わからないけど、治るって思いたい」
「……うん」
うにゅほは、もう、泣かなかった。
涙が涸れ果てたわけではないだろう。
ただ、悲しみに慣れてきただけだ。
「どっか寄る?」
「ん」
首を横に振る。
「そっか」
帰り際、新川沿いの桜並木を見た。
北海道の開花は、まだ先だ。
「ごがつくらいかな」
「そうだな」
「おみまいいくとき、さくら、みようね」
「満開の日に行こう」
「うん」
こんなときだって、楽しみはあるべきだ。
悲しいばかりでは、人は壊れてしまうから。
「……やっぱ、どっか寄ろう」
「どこ?」
「どこでもいいよ。ただ、走るだけでも」
「……そだね」
ハンドルを回し、帰途とは別の道へ向かう。
小一時間ほど軽くドライブをし、今度こそ帰宅した。
すこしだけ、気分が落ち着いた気がした。





454 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:34:41 ID:ELXyemTw0

2025年4月14日(月)

ふと、本場のバターチキンカレーを食べたくなった。
「カレー食べに行かない?」
「あ、いく」
「決まりだな」
愛車に乗り込み、行きつけのネパールカレーの店を目指す。
「風、強ッ!」
「ゆれるうー……」
「横殴りだと、ちょっとハンドル取られるな」
「きーつけてね……」
「わかってるよ」
これが、いわゆる春一番なのだろうか。
よくはわからなかった。
ネパールカレーの店で、二人分のバターチキンカレーを注文する。
うにゅほは普通のナンを選び、俺は追加料金を支払ってガーリックナンに変更した。
そして、届いたナンの大きいこと大きいこと。
何度も見ているはずなのだが、毎回新鮮に驚いてしまう。
そして、ガーリックナン。
ガーリックトーストのようなものを想像していたのだが、どうやら違ったようだ。
ナンの表面に細かな白いものが無数に付着している。
食べて気付いた。
「……これ全部、ニンニクだ」
「え、ぜんぶ?」
「たしかにガーリックナンだけどさ!」
あまりに予想外だった。
結局、バターチキンカレーも、ナンも、非常に美味しかった。
たしかな満足と共に帰宅すると、家の前がゴミだらけになっていた。
木のクズに枯れ葉、砂に紐、お菓子の袋や缶まで落ちている。
「あー……」
「そうじしないと……」
これは、ご近所トラブルなどでは決してない。
我が家の前は風溜まりとなっており、どこからか飛んできたゴミが毎年のように散乱するのだ。
「困ったもんだ」
「ねー」
まあ、嘆いたって仕方がない。
手早く掃除を済ませ、自室に戻った。
有意義な一日、だった気がする。







455 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:35:19 ID:ELXyemTw0

2025年4月15日(火)

「よいこのひ」
「うん?」
「よいこのひー、だよ」
カレンダーを見上げる。
4月15日。
なるほど、よいこの日だ。
「なら、××の日だな。××はよいこだから」
「うへー」
「まあ、よいこって年でもないか」
「──…………」
「いてっ」
つねられた。
「よいこじゃないな……」
「よいこだもん」
「……まあ、俺にとっては、ずっとよいこかもな」
「うん」
「ところでさ」
「うん?」
「小腹が空いたから、もちもち豆腐パンを作ろうと思うんだけど」
「あ、いっしょにつくる?」
「作ろうか」
「うん」
もちもち豆腐パン。
豆腐と米粉とベーキングパウダーで作る、異様に美味いダイエット用のパンのことである。
以前、レシピを見て試して以来、時折作っては小腹を満たしている。
ふたりで手分けして作れば、ほんの十分少々で完成するというお手軽さも、リピートの理由だ。
「あち、あち」
「ヤケド気を付けろよ」
「はーい」
あら熱を取り、半分に割って食べる。
「うまー……」
「ほんと、これ美味いな。神レシピだ」
「ねー」
どこで見掛けたか忘れたが、本当に美味しい。
読者諸兄にも、是非試してみてほしい。






456 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:36:12 ID:ELXyemTw0

以上、十三年五ヶ月め 前半でした

引き続き、後半をお楽しみください
 



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コメント一覧

  • 1  Name  名無しさん  2025年04月20日 15:50  ID:XnoBN92W0
    こんなの書いてる場合なのか?


  • 2  Name  名無しさん  2025年04月22日 04:37  ID:Wb5lpwBs0
    >>1
    ナマポ暮らしで他にやる事がないんじゃねw



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