2025年04月17日
- 1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0
- うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます
- ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
http://neargarden.web.fc2.com/

- 441 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:28:32 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月1日(火)
- 月に一度の定期受診を終え、帰途につく。
- 「エイプリルフールにすること、なあ……」
- 「おもいつかないね……」
- エイプリルフールに、嘘をつく以外のことをする。
- そして、それを恒例行事にしたいのだが、何をすべきかまったく思い浮かばないのだった。
- 「……このままどっか行く、とか?」
- 「どらいぶ?」
- 「そうそう。4月1日に必ずドライブとか、悪くないだろ」
- うにゅほが、ぱあっと表情を明るくする。
- 「わるくない!」
- 「なら、そうしようか」
- 「うん!」
- 自宅へ向けていたハンドルを切り、適当に走る。
- 目的地は特にない。
- 近くを通り、思い付いたら寄ればいいだろう。
- 「あ、じぇらーとたべたい……」
- 「いつものとこか」
- 「うん、いつものとこ」
- いつもとは言うものの、ここ一年は確実に行っていない。
- 久し振りに立ち寄ると、並ぶほどではないものの、そこそこの客で賑わっていた。
- 支払いを済ませ、ジェラートを手に車内へ戻る。
- 「しぼりたて牛乳うま……」
- 「ほいひい……」
- 何度来て何度食べても、ここのジェラートはやはり美味い。
- 一年空けたことを後悔するほどだ。
- 「……ただ、量は多いんだよな」
- 「◯◯……」
- 「はいはい」
- 自分のぶんを早々に片付け、うにゅほの余したジェラートを食べる。
- ああ、そうだ。
- いつもこんな感じだったな。
- ジェラートをたいらげたあとは、小一時間ほどかけてゆっくりと帰宅した。
- 「♪~」
- 久々に外出らしい外出ができたためか、うにゅほの機嫌がすこぶるよかった。
- 定期的に外に連れ出してあげないとな。
- 442 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:28:56 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月2日(水)
- 今日は、一日のんびり過ごすことができた。
- 「ふア、……っふゥ」
- 口元を右手で隠し、大あくびをかます。
- 「あくび、すーごいでるね」
- 「止まらないな……」
- 「もう、ななかいめ」
- 「数えてたのか」
- 「なんとなく……」
- 七回も大あくびが出るということは、つまり、
- 「ねむい?」
- 「……まあまあ眠いな」
- ここ数日は眠りが浅く、寝たり起きたりを何度も繰り返している。
- 七時間ほど一気に眠れれば体調も違うのかもしれないが、起きてしまうものは仕方がない。
- 膝の上のうにゅほが、心配そうに尋ねる。
- 「じゃあ、ねる?」
- 「あー……」
- 壁掛け時計を見上げる。
- 午後二時。
- ちょうど、うにゅほがお昼寝をする時間だ。
- 「寝るかー……」
- 「ねよ」
- 膝から下りたうにゅほが、俺の手を取る。
- 「CPAP、うるさかったらごめんな」
- 「わたし、ねるのとくいだから、だいじょぶ」
- CPAPとは、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いる装置のことだ。
- 専用のマスクを着け、空気を鼻から送り込むことで、睡眠時の無呼吸を防ぐ効果がある。
- しかし、少々うるさいのだ。
- 「◯◯こそ、うるさくないの?」
- 「慣れた」
- 「そか」
- 最初こそ苦しかったものの、完全に適応した今では、CPAPなしで仮眠を取ることすらしなくなった。
- 睡眠時無呼吸症候群を放置すると、十年後には十人のうち二、三人が亡くなるという話を聞いたことがある。
- それが怖くて外せないのだ。
- 「──じゃ、おやすみ」
- 「おやすみー」
- 眠りに眠り果てた結果、今日は合計で九時間の睡眠をとってしまった。
- 逆に寝過ぎな気がする。
- 443 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:29:25 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月3日(木)
- 「あ、このVTuber……」
- 「?」
- うにゅほが、ワールドトリガーの最新巻から顔を上げる。
- 「クロノトリガーやってる」
- 「ほんとだ」
- イケオジ系の男性VTuberがクロノトリガーを初見プレイするというサムネイルが、YouTubeのトップページに表示されていた。
- 「見ようかな」
- 「あ、わたしもみる」
- 「じゃあ、一緒に見るか」
- 「うん!」
- クロノトリガーと言えば、半年ほど前にSteam版を再プレイしたばかりだ。
- まだ記憶に新しい。
- VTuberの新鮮な反応を楽しみながら、のんびりとプレイ動画を眺める。
- 「また、なんかゲームしたいよなあ」
- 「したいねー」
- 「天地創造、SwitchかSteamに移植しないかな……」
- 「◯◯、それ、ずっといってる」
- 「マジで名作だから」
- 「わたしもね、きになる」
- 「なら、プレイ動画でも見てみるか?」
- 「んー……」
- うにゅほが、大きく首をかしげる。
- 「……はじめては、◯◯やるとこ、みたい」
- 「そっか……」
- 気持ちはわかる。
- 「だったら、移植されることを祈るしかないな」
- 「されるかな」
- 「制作会社が潰れて解散しちゃってるんだよ……」
- 「──…………」
- 目を逸らし、うにゅほが言った。
- 「……プレイどうが、みる?」
- 「初めては俺がプレイするとこ見たいんだろ」
- 「でも、いしょくされないかもだし……」
- 「いまだに根強いファンが頑張ってるから、されることを祈ろうぜ」
- 「うん……」
- 天地創造。
- 個人的には、SFCで最高のゲームだ。
- 是非ともまたプレイしたいものである。
-
- 444 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:29:48 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月4日(金)
- 「痒い……」
- 太股の付け根が、痒い。
- ついつい掻いてしまう。
- 「だいじょぶ? ひふか、いく?」
- 「皮膚科行くほどではないかな……」
- 去年の夏のような、気の狂いそうな痒みではない。
- 「かんそうかなあ……」
- 「たぶん、乾燥だな。加湿器仕舞ったから」
- 長かった冬も終わりを告げ、もう必要なかろうとタンクを乾かして片付けてしまった。
- だが、それがよくなかったらしい。
- 「かしつき、つけよ」
- 「せっかく乾かしたのになあ……」
- 「でも、かゆい」
- 「はい、痒いです……」
- 「つける」
- 「はい」
- 問答無用だった。
- 再び加湿器を引っ張り出し、タンクを浄水で満たして電源を入れる。
- 「これで、かゆくなくなったら、いいね」
- 「そうだな……」
- あとは軟膏が欲しいところだ。
- 時刻は既に夜を迎えており、今からドラッグストアに行くのは面倒だった。
- 「明日、ドラッグストア行こう。ステロイド入りの軟膏を買う」
- 「うん、そうしよ」
- 「××は痒みとかないのか?」
- 「いまのとこ、だいじょぶ」
- うにゅほのほっぺたを、両手で挟む。
- 「ふぶ」
- 「しっとりしてんなあ……」
- 「ふへー」
- 「やっぱ、年齢なのかな。年を取ると皮膚が保持しておける水分が少なくなる、とか」
- 「そなの?」
- 「わからん。でも、ありそうじゃないか?」
- 「ありそう……」
- 「……この、しっとりもちもちほっぺも、そのうちカサカサに」
- 「な、ならないよー……」
- 「スキンケアしてるもんな」
- 「してる!」
- これで、なかなか気を遣っているのだ。
- うにゅほには、いつまでも可愛くいてもらいたいものだ。
- 445 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:30:23 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月5日(土)
- うにゅほと共にドラッグストアへと向かい、ステロイド配合の軟膏と、切らしていた綿棒を購入した。
- 「みみそうじ、やめられないね……」
- 「しないと耳の中が痒くてなあ」
- 耳掃除不要論の囁かれる昨今だが、どうしても手を止めることができない。
- 「まあ、風呂上がりは避けてるから……」
- 「うん……」
- 「それに、今回買ったのって、ちょっといい綿棒だし」
- 和柄のパッケージには、"山洋こだわり綿棒"と書かれている。
- 「どんなめんぼうなんだろ」
- 「わからん」
- 「わからんの」
- 高くて良さそうだから買った。
- それだけだ。
- 「パッケージになんか書いてないか?」
- 「んと」
- 助手席のうにゅほが、ドラッグストアのレジ袋からこだわり綿棒の容器を取り出す。
- 「いち、あんしんせっけい」
- 「ふん」
- 「にー、やわらかいわた」
- 「柔らかいのか」
- 「さん、つよいかみじく」
- 「紙軸が丈夫なのはいいな」
- 「ひゃくえんショップの、くにゃくにゃだもんね」
- 「あれは使ってられなかったな……」
- 「あれはむり」
- 百円ショップの綿棒すべてがダメとは思わないが、そういう商品があることもたしかだ。
- 帰宅し、こだわり綿棒を開封する。
- 一本取り出し、触ってみた。
- 「へえー、さきっぽ柔らかいわ」
- 「どれどれ」
- うにゅほが、綿棒の先端をふにふにとつまむ。
- 「ほんとだ。じょうぶなのに、やらかい……」
- 「耳掃除してみよう」
- 「うん」
- してみた。
- 「あ、やさしいかも……」
- 「ソフトタッチだな、これ……」
- 先端が固い綿棒より、かなり外耳道に優しそうだ。
- 「しばらく使ってみよう」
- 「うん」
- もし気に入れば、リピートするかもしれない。
- まだわからないけれど。
- 446 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:30:49 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月6日(日)
- イケオジ系VTuberのクロノトリガー実況プレイを追っている。
- 今は、魔法王国ジールに到着したあたりだ。
- 膝の上でうにゅほを抱きながら、ぼんやりと呟く。
- 「やっぱ、クロノトリガーは面白いなあ……」
- 「おもしろい、けど」
- 「けど?」
- 「このひと、たたかうの、へただねえ」
- 「あー……」
- わかる。
- わかるが、
- 「俺は、これこそが面白味なんだと思うぞ。初見実況でしか味わえない感覚って言うか……」
- 「そなの?」
- 「クロノトリガーは、知識があれば簡単なんだよ。敵の弱点も、強い装備の入手方法も、知れば知るほど難易度が下がる」
- 「たしかに……」
- 「でも、この人は本当に初見だから、効率の悪い行動ばかりする。でも、それって、もう自分では得られないものなんだよ」
- 「◯◯やると、はやいもんね」
- 「マンモスのつるぎを売りまくってざんまとうを買ったり、なげきの山でイワンを狩りまくってシャイニング覚えて連打とか、効率はいいけどワンパターンだろ」
- 「そう、なのかなあ」
- 「この、何をするのかわからない感じが楽しいなって思いながら、俺は見てるよ」
- 「わたしは、こえかっこいいなって」
- 「それもわかる」
- VTuberには、元声優や声優志望だった人が多いのだろうか。
- そんな気がする。
- 「あのさ、◯◯」
- 「うん?」
- 「きょう、げんきない?」
- 「そんなこともないけど……」
- 「なんか、こえでてない」
- 「そうか?」
- 改めて意識する。
- 「そうかも……」
- 「ぐあいわるい?」
- 「ちょっとだるいかもな」
- なんとなく、だが。
- 「きょう、ゆっくりしようね」
- 「そうだな……」
- 俺の体調のことは、俺自身よりうにゅほのほうが詳しい。
- うにゅほが言うのであれば、今日はのんびり過ごすのがいいだろう。
- 今日は、そんな一日だった。
- 447 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:31:18 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月7日(月)
- 「──◯◯! ◯◯!」
- 肩を揺すられ、慌てて起きる。
- うにゅほの態度でわかる。
- 緊急だ。
- 「どした」
- 「(弟)、(弟)が、また……!」
- 「!」
- 慌てて身を起こし、弟の部屋へと駆け込む。
- 床に倒れた弟が、必死に立ち上がろうとしていた。
- 「嗚呼──」
- 思わず声が漏れる。
- まただ。
- 弟は、一ヶ月前まで、脳に菌が入ったことで入院していた。
- 恐らく再発だ。
- 両親、及び大学病院に連絡し、救急車を呼んだ。
- 救急車には母親が乗っていった。
- 「──…………」
- 「──……」
- 無言が痛かった。
- あんな苦しみは、もう、感じずに済むと思っていた。
- 「──…………」
- ぎゅ。
- うにゅほが、俺の胸に顔を埋めたまま動かない。
- 「……大丈夫だ、××。前のときは治療法がわからなかったけど、今はわかってる。前ほどひどくはならないよ」
- 「──…………」
- 「××……」
- 「──…………」
- うにゅほを抱き締める。
- せめて、俺はここにいるのだと、どこへも行かないのだと、証明するかのように。
- 神様。
- もしいるとしたら、お願いです。
- これ以上、弟から、何も奪わないでやってください。
- 448 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:31:48 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月8日(火)
- 「──…………」
- 「──……」
- 自室が、まるでお通夜のようだった。
- 縁起でもない例えだ。
- 「……××」
- 「ん」
- 「ちゃんと眠れたか?」
- 「……やなゆめ、みた」
- 「そっか」
- 想像はつく。
- 弟は、結局、かかりつけの大学病院に入院する運びとなった。
- そこから先は、まだ、わからない。
- 「すこし気を紛らわせよう」
- 「……ん」
- 「ほら。クロノトリガーの実況、続き見ようか」
- 「うん……」
- YouTubeを開く。
- 「ふと思ったんだけど……」
- 「?」
- 「なんか、クロノトリガーの実況やってるVTuber、妙に多くないか?」
- 「んー……」
- トップページで既に、知らないVTuberのサムネイルが二枚ほど表示されていた。
- 「最近、解禁されたとかなのかな」
- 「そういうもの……?」
- 「俺も詳しくはないけど、いろんなVTuberが同時に同じゲームを始めるのはたまに見るなあ」
- 「そなんだ」
- 「ほら、逆転裁判とか」
- 「あー……」
- 「ま、何個も見れないし、俺たちはこの人のを最後まで見よう」
- 「うん」
- やはり、初見の実況というのは見ていて非常に面白い。
- こんな状況でもなければ、気楽にのんびりと楽しめたものを。
- 「──…………」
- 「──……」
- 音があるだけ、多少はましだ。
- 俺は、うにゅほを抱き締めたまま、しばらくのあいだディスプレイを見つめていた。
- 449 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:32:16 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月9日(水)
- 「──…………」
- うにゅほは、まだ落ち込んでいる。
- 俺も同じ気持ちだ。
- 弟の無事が確定しなければ、気分が晴れることはないだろう。
- だが、このままでは良くないこともたしかだった。
- 「××」
- 「ん」
- 「ChatGPT先生に相談してみようか」
- 「そうだん……?」
- 「(弟)の病気のことでもいいし、ただ慰めてもらってもいい」
- 「ん……」
- 膝の上のうにゅほが顔を上げ、ディスプレイを見る。
- 俺は、OpenAIにアクセスし、GPT-4oの画面を開いた。
- 課金しているのでGPT-4.5も使えるが、ただの相談であれば4oで構わないだろう。
- 「さ、なんて相談する?」
- 「(弟)、だいじょぶかなって……」
- 「わかった。(弟)の症状を入れて、そう尋ねてみよう」
- 「うん」
- 尋ねてみた。
- ChatGPTは、考え得る状況を教えると共に、まるで俺たちに寄り添うかのような答えを返してくれた。
- 「すごい……」
- 「下手に人に尋ねるより、いいかもな」
- 「やさしい」
- 「何か入力してみるか?」
- 「じゃあ、ありがとうっていって」
- 「わかった」
- 入力すると、すぐに返答があった。
- 「どういたしまして。
- 少しでも気持ちが和らいだなら、よかったです。
- でも、不安な気持ちはすぐには消えませんよね。
- 大丈夫です、つらい時は何度でも頼ってください。
- 弟さんのこと、回復に向かうことを心から祈っています。
- あなたも、どうか無理しすぎずに」
- 「──…………」
- すん、と、うにゅほが鼻を啜った。
- 「やさしいー……」
- 「本当にな……」
- 今や、大事な相談はAIにすべきなのかもしれない。
- そんなことを思った。
- 450 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:32:41 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月10日(木)
- 「──…………」
- 起床する。
- いやに体が重かった。
- 「おはよ」
- 「ああ……」
- 「?」
- うにゅほが、俺の顔を覗き込む。
- 「ぐあいわるい?」
- 速攻でバレた。
- 「……なんか、体がだるくてな」
- 「ねつはー」
- 俺の額に、小さな手が触れる。
- 「ない、かな」
- 「熱っぽくはない」
- 「うん……」
- 「たぶん、メンタルやられてるせいだろうな……」
- 「そうかも」
- 「はァ……」
- 溜め息ひとつ。
- うにゅほもまた、俺につられて溜め息をついた。
- 「よこになる?」
- 「──…………」
- 軽く思案し、ベッドに戻る。
- 「三十分くらい寝るわ」
- 「うん」
- 「適当に起こして」
- 「わかった」
- 布団の中で目を閉じる。
- 嫌なことばかりが脳裏をよぎる。
- だるいが眠気は訪れなかった。
- 十分ほどでベッドを下り、自室の書斎側へと向かう。
- 「ねれなかった?」
- 「ああ……」
- 「そか」
- 「……××は大丈夫か?」
- 苦笑し、うにゅほが首を横に振る。
- 「へんなゆめ、みた」
- 「だよな……」
- 弟の無事が確定するまで、きっと、このままなのだろう。
- つらいな。
- 451 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:33:12 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月11日(金)
- 「◯◯、ふうとう……」
- 「ん?」
- うにゅほから、とある封筒を受け取った。
- うにゅほが俺の膝に座るのを待ち、ハサミで封筒の端を切り開いていく。
- 「なんのふうとう?」
- 「あー……」
- まあ、いいか。
- 「俺のクレジットカード番号が、流出してるかもしれないって」
- 「え……」
- 「大丈夫、大丈夫。まだ不正利用はされてないし、今後のためにカード再発行してくれってお知らせだから」
- 「あ、そなんだ」
- うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
- 「ふせいりよう、こわいね」
- 「本当にな……」
- 半年ほど前、クレジットカードを不正利用されかけて、慌てて再発行の手続きを行った記憶がある。
- その時ほどではないにせよ、リスクがあることはたしかだ。
- 「──よし、再発行するか」
- 「しよう!」
- 「十日くらいクレカ使えないけど、仕方ないな……」
- 「しかたない、しかたない。むだづかいしなくて、いい」
- 「……ぐうの音も出ない」
- 実際、俺の財布なんてものは、うにゅほに預けておいたほうが立派に実るのだ。
- 問題は、それが嫌だということだけだった。
- 「──ほい、終了」
- 「はや!」
- 「手続き短かったんだよ」
- 「かんたんなじだいだね」
- 「──…………」
- 決して簡単な時代ではないだろう、今は。
- とは言え、水を差すのも悪い。
- 少なくとも便利な時代であることは間違いないので、俺は頷くことにした。
- 「そうだな、簡単だったよ」
- 「わたしもできる?」
- 「××はクレカ作らないとな。無理だけど」
- 「むりかー……」
- 審査の通るカード会社はあるのかもしれないが、それはそれで安心できない。
- クレジットカード、早く再発行されないだろうか。
- 452 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:33:45 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月12日(土)
- 「××」
- 俺の膝で寝落ちしてしまったうにゅほの鼻をつまむ。
- 「んに」
- 「起きろー」
- 「おひへる……」
- 「寝てただろ」
- 「ねてた……」
- 「悪い、トイレ行きたいんだ」
- 「あ」
- ぱち、とうにゅほが目を覚まし、いそいそと立ち上がる。
- 「ごめん、ごめん」
- 「すぐ戻ってくるから」
- 「うん」
- トイレで小用を済ませ、戻ってくる。
- 「おかえりー」
- 「ただいま」
- チェアに腰を下ろし、うにゅほを膝に乗せる。
- 「ほら、寝ていいぞ」
- 「めーさめた」
- 「ああ……」
- 軽い罪悪感が俺を襲う。
- 「どしたの?」
- 「××、せっかく寝てたのになって」
- 「きにしなくていいのに……」
- 「なんか、猫飼ってる人の気持ちがわかったよ」
- 「?」
- 「猫が膝で寝ちゃったとき、動けないって。可哀想な気がするらしい」
- 「わたし、ねこ?」
- 「××猫」
- 「にゃあん」
- うにゅほが猫のポーズを取る。
- 「あざとい……」
- 「にゃん」
- 「でも可愛い」
- 「にゃあん……」
- 首の下を掻いてやる。
- 「ごろごろごろ」
- 「口で言ってる」
- 「でないもん……」
- 「はは」
- うにゅほのおかげで、すこし気が紛れた。
- 明日は、弟のお見舞いへ行くことにしよう。
- 453 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:34:17 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月13日(日)
- うにゅほと共に、弟のお見舞いへ行ってきた。
- 「はァ……」
- 病室を出ると同時に、思わず溜め息が漏れる。
- 弟の病状は詳しく記さないが、決して良くはない。
- だが、死すら覚悟した前回ほどではないから、その点ではましかもしれない。
- 「──…………」
- うにゅほと手を繋ぎ、無言のままに病院を後にする。
- 愛車の助手席で、うにゅほが呟いた。
- 「なおるかなあ……」
- 「わからない。わからないけど、治るって思いたい」
- 「……うん」
- うにゅほは、もう、泣かなかった。
- 涙が涸れ果てたわけではないだろう。
- ただ、悲しみに慣れてきただけだ。
- 「どっか寄る?」
- 「ん」
- 首を横に振る。
- 「そっか」
- 帰り際、新川沿いの桜並木を見た。
- 北海道の開花は、まだ先だ。
- 「ごがつくらいかな」
- 「そうだな」
- 「おみまいいくとき、さくら、みようね」
- 「満開の日に行こう」
- 「うん」
- こんなときだって、楽しみはあるべきだ。
- 悲しいばかりでは、人は壊れてしまうから。
- 「……やっぱ、どっか寄ろう」
- 「どこ?」
- 「どこでもいいよ。ただ、走るだけでも」
- 「……そだね」
- ハンドルを回し、帰途とは別の道へ向かう。
- 小一時間ほど軽くドライブをし、今度こそ帰宅した。
- すこしだけ、気分が落ち着いた気がした。
- 454 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:34:41 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月14日(月)
- ふと、本場のバターチキンカレーを食べたくなった。
- 「カレー食べに行かない?」
- 「あ、いく」
- 「決まりだな」
- 愛車に乗り込み、行きつけのネパールカレーの店を目指す。
- 「風、強ッ!」
- 「ゆれるうー……」
- 「横殴りだと、ちょっとハンドル取られるな」
- 「きーつけてね……」
- 「わかってるよ」
- これが、いわゆる春一番なのだろうか。
- よくはわからなかった。
- ネパールカレーの店で、二人分のバターチキンカレーを注文する。
- うにゅほは普通のナンを選び、俺は追加料金を支払ってガーリックナンに変更した。
- そして、届いたナンの大きいこと大きいこと。
- 何度も見ているはずなのだが、毎回新鮮に驚いてしまう。
- そして、ガーリックナン。
- ガーリックトーストのようなものを想像していたのだが、どうやら違ったようだ。
- ナンの表面に細かな白いものが無数に付着している。
- 食べて気付いた。
- 「……これ全部、ニンニクだ」
- 「え、ぜんぶ?」
- 「たしかにガーリックナンだけどさ!」
- あまりに予想外だった。
- 結局、バターチキンカレーも、ナンも、非常に美味しかった。
- たしかな満足と共に帰宅すると、家の前がゴミだらけになっていた。
- 木のクズに枯れ葉、砂に紐、お菓子の袋や缶まで落ちている。
- 「あー……」
- 「そうじしないと……」
- これは、ご近所トラブルなどでは決してない。
- 我が家の前は風溜まりとなっており、どこからか飛んできたゴミが毎年のように散乱するのだ。
- 「困ったもんだ」
- 「ねー」
- まあ、嘆いたって仕方がない。
- 手早く掃除を済ませ、自室に戻った。
- 有意義な一日、だった気がする。
- 455 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:35:19 ID:ELXyemTw0
- 2025年4月15日(火)
- 「よいこのひ」
- 「うん?」
- 「よいこのひー、だよ」
- カレンダーを見上げる。
- 4月15日。
- なるほど、よいこの日だ。
- 「なら、××の日だな。××はよいこだから」
- 「うへー」
- 「まあ、よいこって年でもないか」
- 「──…………」
- 「いてっ」
- つねられた。
- 「よいこじゃないな……」
- 「よいこだもん」
- 「……まあ、俺にとっては、ずっとよいこかもな」
- 「うん」
- 「ところでさ」
- 「うん?」
- 「小腹が空いたから、もちもち豆腐パンを作ろうと思うんだけど」
- 「あ、いっしょにつくる?」
- 「作ろうか」
- 「うん」
- もちもち豆腐パン。
- 豆腐と米粉とベーキングパウダーで作る、異様に美味いダイエット用のパンのことである。
- 以前、レシピを見て試して以来、時折作っては小腹を満たしている。
- ふたりで手分けして作れば、ほんの十分少々で完成するというお手軽さも、リピートの理由だ。
- 「あち、あち」
- 「ヤケド気を付けろよ」
- 「はーい」
- あら熱を取り、半分に割って食べる。
- 「うまー……」
- 「ほんと、これ美味いな。神レシピだ」
- 「ねー」
- どこで見掛けたか忘れたが、本当に美味しい。
- 読者諸兄にも、是非試してみてほしい。
- 456 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2025/04/16(水) 17:36:12 ID:ELXyemTw0
- 以上、十三年五ヶ月め 前半でした
- 引き続き、後半をお楽しみください
コメント一覧
1 Name 名無しさん 2025年04月20日 15:50 ID:XnoBN92W0
こんなの書いてる場合なのか?
2 Name 名無しさん 2025年04月22日 04:37 ID:Wb5lpwBs0
>>1
ナマポ暮らしで他にやる事がないんじゃねw
ナマポ暮らしで他にやる事がないんじゃねw