2026年07月03日
- 1 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2016/07/01(金) 19:13:30 ID:1bfcR2jI0
- うにゅほと過ごす毎日を日記形式で綴っていきます
- ヤシロヤ──「うにゅほとの生活」保管庫
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- 909 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:14:50 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月16日(火)
- 月に一度の定期受診を終え、帰宅する。
- 「はふ……」
- あくびを噛み殺す。
- なんだかんだと完徹なのだった。
- 「◯◯、ねむそう」
- 「寝てないからな……」
- 「ねましょう」
- 「うーん」
- 「ねないの?」
- 「ちょっと、作業が……」
- 「おきてからで、いいきーする」
- 「そうなんだけどさ」
- とは言え、やる気があるときにしておくべきことでもある。
- 「……あとで、ねようね?」
- 「わかった」
- パソコンチェアに腰掛け、キーボードへと向かう。
- 当然ではあるが、俺が集中したいとき、うにゅほは膝の上に座らない。
- 猫みたいに邪魔をしてこないので、その点はありがたい。
- やがて、午後一時が近付き、目がしぱしぱするようになってきた。
- 「……あー、限界かも」
- 「ねよ」
- 「寝るかあ……」
- 「ねないとだめだよ」
- 「そうだな」
- 寝支度を整え、ベッドへと向かう。
- うにゅほもまた、隣のベッドに腰掛けた。
- 「××も、お昼寝の時間か」
- 「うん。ねないと、からだもたない」
- うにゅほは、遅寝早起きである。
- 足りないぶんの睡眠時間を昼寝で補っているのだ。
- 「じゃ、寝るかー……」
- 「おやすみー」
- 「おやすみ」
- CPAPを装着し、目蓋を閉じる。
- だが、いまいち眠れない。
- 神経が冴え渡っている気がする。
- 「──……すー」
- 俺は、うにゅほが寝入っているのを確認すると、PCの前へと戻った。
- 眠れないのだから、仕方がない。
- なお、あとでバレてうにゅほに怒られるのだった。
- 910 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:15:05 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月17日(水)
- 俺たちの散歩には、現在、大きく分けて二種類のルートが存在する。
- 幹線道路から田舎道に入るルートと、そのまま幹線道路沿いを歩くルートだ。
- 前者は高校の近くを通り、後者は広めの公園で折り返す。
- どちらを選ぶかは、幹線道路の交差点の信号機次第である。
- 「──あ、あかなった」
- 「なら、今日は公園のほうだな」
- 「はーい」
- 横断歩道を渡り、しばらく歩くと、チェーンのレストランの傍に二十四時間営業の無人販売所が姿を現す。
- 「あ!」
- 「あ?」
- 「どばいちょこ!」
- うにゅほが指差したのは、無人販売所の貼り紙だ。
- 「ドバイチョコ、入荷しました……」
- 「たべたい!」
- 「こんなとこで売ってるとは」
- 「びっくり」
- ドバイチョコとは、去年バズったドバイ発祥の板チョコのことだ。
- 内側に、カダイフという独特な食感の生地が入っている、らしい。
- 美味しいらしい。
- 「たべたいなー……」
- 「俺も食べたい。正直、気になる」
- 「ね!」
- 「とは言え、財布持ってないしな……」
- 「かえったら、かいいこ」
- 「……うーん」
- 「いきたくない?」
- 「帰ったらシャワー浴びるし、シャワー浴びたらもう出掛けたくない」
- 「……たしかに!」
- 「ほら、明日また大学病院行くだろ。帰りに寄ろうぜ」
- 「うりきれないかなー……」
- 「大丈夫──だとは、思う。バズったの、もう随分前だし」
- 「そか」
- ドバイチョコ。
- 本物かどうかはわからないが、近いものではあるだろう。
- どんな味がするか、楽しみである。
- 911 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:15:23 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月18日(木)
- 大学病院の受診日である。
- 午前九時に家を出て、支払いを終える頃には、既に午後一時を回っていた。
- 「やー……ッ、と! 帰れる!」
- 「ながかったねー……」
- 「診察待ちで一時間、支払い待ちでまた一時間。そりゃかかるわ」
- 「しはらいまちのときは、ほーるでまてるから、まだ」
- 「まだマシだな。マシってだけだけど」
- 「そだね」
- 愛車に乗り込み、クーラーを最大にする。
- 「あちー……」
- 「なつみたい」
- 「実際、夏みたいなもんだろ」
- 「たしかに」
- 「んじゃ、帰るか」
- 「あ、どばいちょこだよ」
- 「大丈夫、忘れてないって」
- 帰途につき、家の近くの無人販売所へと立ち寄る。
- 「たのしみー」
- 「俺も楽しみ。どんな味するんだろうな」
- 「うん!」
- 無人販売所には、変わらず"ドバイチョコ入荷しました"の貼り紙が貼られている。
- しかし、どこを探しても、ない。
- 「ない……」
- 「売り切れ、とか?」
- 「えー」
- 「ごめん、××。昨日買いに来たほうがよかったな」
- 「わかんないもん。しかたないよ……」
- 「まあ、そのうち──」
- 「あまぞんで、かお」
- 「Amazonで」
- 「わたし、もう、どばいちょこのくちになってるから」
- 「……まあ、いいか。帰って調べてみよう」
- 「うん」
- 「あと、普通にチョコ食べたいから、コンビニ寄っていい?」
- 「あ、わたしもたべたい」
- 「ドバイチョコじゃなくていいのか?」
- 「ないもん」
- その通りである。
- ファミリーマートでガルボを購入し、ふたりで食べながら帰宅する。
- ドバイチョコは、いちばん安いものでも二千円以上した。
- まあ、体験を買ったのだと、自分を納得させることにしよう。
- 912 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:15:47 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月19日(金)
- 「うーん……」
- うにゅほが窓の外を見上げる。
- 「……くもってる」
- 「曇ってるなあ」
- 「よほうは?」
- PCで天気予報を開く。
- 「低いけど、降水確率はあるな」
- 「こわいね」
- 「気持ちよく歩けないかもなあ……」
- 「あしたのあさは?」
- 「同じ感じ。ただ、濃霧注意報が出てるな」
- 「きり……」
- 「どうする?」
- しばし思案し、うにゅほが答える。
- 「◯◯のはんだんで、おこして」
- 「わかった。三時くらいに外に出て、確認してみるよ」
- 「おねがいね」
- 「散歩したいしなあ……」
- 「うん、したい。けんこうになりたい」
- 「せっかく習慣づいたんだしな」
- 「ねー」
- うにゅほが、俺の膝に腰を下ろした。
- 「◯◯、ひま?」
- 「暇っちゃ暇」
- 「ゆーちゅーぶ、みよ」
- 「見る見る」
- 「こうしんきてる?」
- 「待って」
- YouTubeを開く。
- 「いろいろ来てるな」
- 「あ、くそげーのやつきてる」
- 「ふたつ来てるな」
- 「どっちのくそげーからみる?」
- 「××が決めていいよ」
- 「どっちがいいかなー……」
- 「ホラゲーの人のも来てるぞ」
- 「ほんとだ」
- 「どれがいい?」
- 「なやむ……」
- 贅沢な悩みである。
- 明日の朝、晴れたら、うにゅほを起こして散歩に出掛けよう。
- 913 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:16:07 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月20日(土)
- ぽん、ぽん。
- 安らかな寝息を立てているうにゅほの肩を、優しく叩く。
- 「──××、散歩行くぞ」
- 「んに」
- ぱち。
- うにゅほが即座に目を覚まし、身を起こした。
- 「おはよー」
- 「おはよう」
- 「さんぽ?」
- 「散歩、散歩。快晴じゃないけど、晴れ間は見えるからさ」
- 「じゅうぶん!」
- 時刻は午前三時半。
- 早朝散歩の時間である。
- さっそく身支度を整え、家を出る。
- うにゅほが、俺のジーンズの尻ポケットからはみ出しているものを見て、小首をかしげた。
- 「あれ、さいふ?」
- 「無人販売所、寄ってみようかと思って。あそこ二十四時間だから」
- 「どばいちょこ、うってるかなー」
- 「売ってなくてもいいけどな。Amazonで買ったし」
- 「ねー」
- ふたり、歩き出す。
- 早朝の散歩は、相変わらず気持ちがいい。
- 件の無人販売所へと立ち寄ると、前回はなかった商品が目に付いた。
- 「これ」
- 「ドバイもちクッキー……?」
- ドバイチョコというより、単なるチョコ餅といった見た目だ。
- 「なんか、いんしょうちがう」
- 「韓国語書いてるし……」
- 「いちおう、かってみる?」
- 「そうだな。ふたつ──」
- 値段を確認する。
- 「……650円」
- 「え」
- 「ひとつ、650円」
- 「みっつで、あまぞんのかえる!」
- 「たっけえー……」
- 「……かう?」
- 「まあ、気にはなるし」
- 原材料名を確認すると、カダイフは入っている。
- ふたつ購入し、とは言えレジ袋もないので、手で持ちながら帰宅した。
- 牛乳を用意し、ドバイもちクッキーへと向き直る。
- 「きんちょうするね……」
- 「一個650円だからな……」
- 高い。
- あまりにも高すぎる。
- 開封し、ココアパウダーで指先を汚しながら、ドバイもちクッキーを囓る。
- ザクッ!
- カダイフのものらしき気持ちの良い歯ごたえが、前歯に響いた。
- 「ふんふん」
- 「ふんふんふん……」
- 「おいしい。そこそこ」
- 「……まあ、美味しいな。650円の味ではないけど」
- 「うん……」
- 「あと、ザクザク感ともちもち感が互いに邪魔し合ってる」
- 「わかる」
- 「650円かあ……」
- 明日届くらしいAmazonのドバイチョコは、値段相応の味がするのだろうか。
- 値段相応の味がしてほしいのだった。
- 914 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:16:25 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月21日(日)
- ドバイチョコが届いた。
- 「これが、どばいちょこ……」
- 「思ったより、でかいな」
- 「でかい」
- 「重いし……」
- 「おもい」
- 確認したところ、容量は190gだった。
- 板チョコ四枚分だ。
- 「──よし、割るぞ」
- 「うん」
- 開封したドバイチョコを、折れ目から割る。
- 中から、薄緑とベージュを混ぜたような色のカダイフが現れた。
- 「おー……」
- 「美味そう、だな」
- 「まえ、ゆーちゅーぶでみたかんじじゃ、ないね」
- 「冷蔵便で届いたからな……」
- 「あー」
- それぞれ1/4ずつのドバイチョコを手に、頷き合う。
- 「いただきます」
- 「いただきます」
- ──ザクッ!
- ドバイもちクッキーでも感じたカダイフの歯触りが、楽しい。
- 味はと言えば、かなりソルティで美味しかった。
- 「おいしい……!」
- 「ああ、普通に美味いわ。ざくざくだ」
- 「ねー」
- 「ドバイもちクッキー、あれで650円だからな……」
- 「こっちのが、あじも、こすぱもいいね」
- 「まったく、まったく」
- ようやく、本当の意味でドバイチョコを味わえた気がする。
- 「ところで、××」
- 「?」
- 「リピは?」
- 「りぴは、ないかな。おいしいけど、たかいし」
- 「ですよねー」
- 「です」
- 「ま、食べられてよかったよ」
- 「うん。それはおもった」
- ドバイチョコ、こんな味だったんだな。
- ドバイもちクッキーは反省してくれ。
- 915 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:16:45 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月22日(月)
- 「××、散歩行くぞー」
- 「に」
- うにゅほを優しく起こし、身支度を整える。
- 午前三時半。
- 早朝の散歩の時間だ。
- 「くもってるねー……」
- 「そうなんだよ。でも、ある程度は妥協しないと、しばらく晴れないみたいだから」
- 「ざんねん」
- とは言え、朝の空気はやはり気持ちがいい。
- 「さいふ、もってきてないの?」
- 「持ってきてないよ。必要ないし」
- 「そか」
- 「ドバイもちクッキー、また食べたいのか?」
- 「たかいから、いい」
- 「だよな」
- 「それなら、がるぼたべる……」
- 「わかる」
- 「こんびによるのも、たのしいかなって」
- 「楽しいけど、つい菓子パンとか買っちゃうしな。せっかくカロリー消費してるのに……」
- 「◯◯、だいえっとがてら、だもんね」
- 「××は痩せる必要ないからな」
- 「うん」
- むしろ、痩せ過ぎだ。
- 「ちゃんと食えよ」
- 「たべてるよ」
- 「そうなんだよな、食べてるんだよな……」
- 代謝が良いのは、若いからだろうか。
- そんな会話を交わしながら、朝の田舎道を行く。
- 4kmほどを踏破し、幹線道路の歩道を自宅に向かって歩いていたときのことだ。
- 不意に、軽自動車が傍に停車した。
- 軽く警戒しつつ様子を見ていると、運転していた中年女性が、気遣わしげに声を掛けてきた。
- 「──大丈夫? どこまで行くの?」
- 思わず、うにゅほと顔を見合わせる。
- 「え、っと。ウォーキングの最中なんですけど……」
- ハッとしたあと、ばつが悪そうに中年女性が答えた。
- 「あ、ごめんね! 困ってるのかと思って」
- なるほど。
- 俺たちは、トレーニングウェアなど着ていない。
- 普段着だ。
- 何かの理由で、朝っぱらから歩く羽目になっていると感じたのだろう。
- 「お気遣いありがとうございます」
- 「ありがとうございます」
- 「いえいえ!」
- 中年女性は、そのまま走り去っていった。
- 「びっくりしたー……」
- 「ウォーキングにしてるように見えないのかな」
- 「そうかも」
- 「でも、いい人だったな」
- 「うん、いいひと」
- なんとなく、心が温まる出来事だった。
- 916 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:17:07 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月23日(火)
- 「◯◯、◯◯」
- 「んー?」
- 「しんいちまんえんさつって、だれだっけ」
- 「あー……」
- 困った。
- パッと名前が出てこない。
- 「しん」
- 「しん?」
- 「新沢基栄……」
- 「しんざわもとえい?」
- 「……違うな」
- 「たぶん、ちがうとおもう」
- 「新沢、新沢」
- 「しんざわ」
- 小首をかしげていたうにゅほが、ハッと目を見開いた。
- 「しぶさわえいきち!」
- 「それだ!」
- とは言ってみたものの、違和感がある。
- 「……それか?」
- 「ちがう?」
- 「あ、わかった。渋沢栄一だ」
- 「えいいちかー」
- 「スッと出てこないの、ちょっと恥ずかしいな」
- 「そだね……」
- ふと思う。
- 「……新沢基栄って、誰だ?」
- 「しらないの?」
- 「知ってるから名前が出たはずだけど、思い出せない」
- 「しんざわもとえい。へんななまえ」
- 「調べてみるか」
- 「うん」
- 検索してみる。
- 「あ、奇面組の作者だ!」
- 「あー」
- 「何故奇面組の作者の名前が……」
- 「ふぁん?」
- 「奇面組は読んだけど、ファンでもない。そもそも、奇面組の作者を訪ねられて新沢基栄って答えられる自信がない」
- 「ふしぎだね……」
- 開いた引き出しの中に、別なものが入っている。
- 入れ間違ったわけでもないはずなのに、人間の記憶とは不思議なものだ。
- 917 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:17:29 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月24日(水)
- 「××、銀行行くぞー」
- 「はーい」
- 支度を整え、愛車に乗り込む。
- 「こんでないと、いいね」
- 「混んでると、一時間とか待たされるからな……」
- 「まつのはなれてるけど」
- 「慣れてても嫌なもんは嫌だな」
- 「それはそう」
- 「コンビニで朝メシ買っていい?」
- 「いいよー」
- ファミリーマートに立ち寄り、カフェオレと菓子パンを購入する。
- 「カロリー爆弾だ……」
- 「かしぱん、かろりーすごいもんね」
- 「勘弁してほしい」
- 「かわなかったらいいのに……」
- 「だって美味いから……」
- 「かろりー、おいしいんだね」
- 「困ったことにな」
- 板チョコを挟んだクロワッサンをカフェオレで流し込み、再び愛車を走らせる。
- 銀行へと辿り着いたのは、午前九時半のことだった。
- 「……こんでないね」
- 「よしよし」
- 番号札を取ると、二人待ち。
- これなら十分とかからないだろう。
- 思いのほか早く終わり、ほくほくしながら帰途につく。
- 「帰って寝るかな!」
- 「なんじかんくらい、ねたの?」
- 「二時間くらい」
- 「ねましょう」
- 「寝る寝る。睡眠は大切だからな」
- 「よろしい」
- 「××は、何時間くらい寝たんだ?」
- 「うーと、よじかんくらい」
- 「寝よう」
- 「わたしもねる……」
- 昼寝をしないと体が持たないふたりだった。
- 918 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:17:48 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月25日(木)
- 早朝の散歩を終え、帰宅する。
- 「ふいー」
- 「××、先にシャワー浴びな」
- 「ありがと!」
- 順繰りにシャワーを浴び、自室でくつろぐ。
- 午前三時過ぎに家を出たので、まだ五時にもなっていない。
- 「××、寝たら?」
- 「ねれないよー……」
- 「まあ、そうか。目が冴えることしかしてないもんな」
- 「あとで、おひるねするよ」
- 「そっか」
- うにゅほを膝に乗せながら、そんな会話を交わす。
- すると、
- 「あ!」
- 「どした」
- 「ぺんたぶ!」
- 「……?」
- デスクの上には、XP-Penの液晶タブレットが乗っている。
- 昔、絵を描いていた頃の名残だ。
- その液晶タブレットの映像が、激しく乱れていた。
- 「うわ」
- 「こわれた!」
- 「どうだろ……」
- うにゅほを下ろし、接続を確認する。
- 数回抜き差しすると、映像は元に戻った。
- 「……なおった?」
- 「うーん」
- どうなのだろう。
- だが、決心がついた。
- 「売ろう」
- 「うっちゃうの?」
- 「大層な液晶タブレットは、もう使わないよ。ずっと置物になってたし」
- 「そだけど……」
- 「代わりに、普通の板タブ買おう」
- 「いたたぶ?」
- 「液晶画面がついてないペンタブ。ペンタブでの作業は今でもたまにするし、でも液タブが必要なわけでもないから、それで十分だろ」
- 「なるほどー」
- 駿河屋で買取価格を調べると、12,000円。
- 対して、同じXP-Penの板タブは、たまたま安くなっていて5,500円だった。
- 「ほら、元が取れる」
- 「おー」
- 「ポイントもあるし、三千円くらいになるぞ」
- 「これも、だんしゃり?」
- 「かもな」
- 不要な高級品を、相応のものに置き換える。
- それはそれで悪くないものだ。
- 919 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:18:12 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月26日(金)
- 「◯◯、なんかきてたー」
- うにゅほが手にしていたのは、Amazonの大きめの紙袋だった。
- 「なんだろ」
- 「おぼえてないの?」
- 「いや、覚えてるよ。最近注文したのは、昨日の板タブくらいだけど──」
- 紙袋を開く。
- XP-Penの板タブの箱が出てきた。
- 「はっや」
- 「はやい!」
- 「絶対ダン箱で届くと思ってたわ」
- 「わたしも……」
- 「あと、思ったより小さい」
- 液晶タブレットの箱が死ぬほど大きかったため、印象が引きずられていたのだ。
- 「あけてみよ!」
- 「ああ」
- 板タブを開封していく。
- すると、思いのほか省スペースな、薄い板タブが現れた。
- 「へえー」
- 「懐かしいな、板タブ。でも、俺が持ってたのより、ずっとシュッとしてる」
- 「◯◯、むかしもってたの、もっとぶあつかったよね」
- 「覚えてるのか」
- 「おぼえてるよー……」
- そんな会話を交わしながら、セットアップを進めていく。
- 「──よし、こんなもんか」
- 「もうかける?」
- 「描けるぞ。××も試してみるか?」
- 「ためす!」
- CLIP STUDIOを起動し、うにゅほにチェアを譲る。
- 「じゃ、ドラえもんかくね」
- 「上手く描けるかな」
- うにゅほが、ペン先を板タブに触れさせる。
- すると、メインディスプレイ上で、カーソルが不器用に動き始めた。
- ディスプレイを凝視しながら、うにゅほがドラえもんの顔を描いていく。
- 「かけた」
- 「上手い上手い。上手いけど、なんかやたら線細いな……」
- 「なんか、ほそい」
- ふと、板タブに視線を落とす。
- 板タブの表面に、ドラえもんが刻まれていた。
- 「えっ」
- 「え?」
- うにゅほが俺の視線に気付き、板タブを見た。
- 「えー!」
- 「なんだこれ……」
- 「こ、こわした……?」
- 「いや、そんなこと──」
- 確認すると、すぐに真相が判明した。
- 「……これ、保護フィルムだわ」
- ドラえもんの刻まれたフィルムを剥がすと、その下から頑健な本体が現れる。
- 「びっくしした」
- 「俺もだよ……」
- とんでもない初期不良かと思った。
- ともあれ、板タブは普通に使えそうだ。
- 一から絵を描くわけでもないから、これで十分だろう。
- たぶん。
- 920 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:18:37 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月27日(土)
- 晴れていたので、昼間に散歩に出ることにした。
- 「なんか、ひさしぶりだね」
- 「最近、早朝散歩ばっかりだったからな」
- 「ねー」
- 早朝、誰もいない道を歩くのは気持ちいいが、昼間は昼間で──
- 「──風、強ッ!」
- 「うぶぶ」
- 吹き飛ばされそう、というのは言い過ぎだが、歩きにくいのは事実だ。
- 「これは、2kmコースかな……」
- 「そだね……」
- 散歩を続けるコツは、気持ちよく歩くことだ。
- 歩くことが苦行になるくらいなら、その日はさっさと帰ったほうがいい。
- 早めに道を折り返し、帰途につく。
- 「……やっぱし、あさのほうがいいかも」
- 「そうなのか?」
- 「ひざし、きになる。ひやけどめ、ぬったけど……」
- 「あー」
- 「ぬったのに、にきろでかえるのも、なんか」
- 「そうかもな……」
- やはり、早朝の散歩が正義なのだろうか。
- 自宅の前にある児童公園へと差し掛かったときのことだ。
- 何故か身長よりも長い謎の棒を持った少年たちが、俺たちに話し掛けてきた。
- 「あっちに、宝石があって!」
- 「宝石……?」
- 「──…………」
- 棒を警戒してか、人見知りが発動したのか、うにゅほが俺の背中に隠れる。
- 宝石。
- ガラスか何かを勘違いしているのだろうか。
- よくわからない。
- なので、
- 「そっかー」
- と、軽く頷き、うにゅほの手を引いてその場を離れた。
- 帰宅し、靴を脱ぐ。
- 「宝石って、なんだったんだろうな」
- 「わかんない……」
- 「まさか、本当に宝石が落ちてたり」
- 「あるかなあ……」
- 「ないと思う」
- 可能性はゼロではないが、ゼロに近いだろう。
- よくわからない出来事だった。
- 921 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:19:00 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月28日(日)
- 「晴れてるなあ……」
- 「はれてるねえ」
- 「どうする?」
- 「んー……」
- うにゅほが思案し、答える。
- 「かぜ、つよくない、なら?」
- 「窓から立ち木の様子でも見るか」
- 「うん」
- 両親の寝室から、眼前の児童公園を見下ろす。
- 立ち木は、さほど揺れていなかった。
- 「行くかー」
- 「いこっか」
- 本当は早朝がいいのだが、昨日は半端にしか歩けておらず、欲求不満だったのだ。
- 身支度を整え、家を出る。
- 普段通りのルートを辿り、交差点にて分岐する。
- 今日は信号機が「幹線道路を行け」と言ってきたので、仕方なく従うことにした。
- 中規模の公園をぐるりと回っていると、数羽のカラスが空を飛んできた。
- 「うわ……」
- なるべくカラスの真下にいないよう、位置取りを調整する。
- 「◯◯、からすきらい?」
- 「べつに嫌いじゃないけど……」
- 「なんか、むかし、からすがあみどにひっかかって、とってあげたのに、むれでおこられたんだよね」
- 「そのエピソードはたしかにあったけど、関係ないな」
- 「そなんだ」
- 「別のエピソードがある。大学時代の友達数名と遊んでたとき──」
- 「おんなのひと、いた?」
- 警戒モードに入っている。
- 「いや、男だけだったな」
- 「そか」
- 「で、そのうちひとりが手提げ鞄を持ってたんだよ」
- 「ふんふん」
- 「そしたら、カラスのフンが、手提げ鞄にホールインワンしてな……」
- 「すご」
- 「たぶん、わざとだと思うんだよ。だから、それ以来、カラスの下を歩くのが嫌でさ」
- 「それは、いやだね……」
- 「九分九厘、大丈夫だとは思うんだけどね」
- 「わたしもきをつけるね」
- 「ああ。せっかく新調した夏物、汚すわけにはいかないもんな」
- 「ねー」
- 俺たちは、トレーニングウエアのたぐいを着ていない。
- せいぜい5km、長くて6kmだし、わざわざ揃える必要もないだろう。
- ウォーキングがランニングになるのなら別だが、少なくとも今はその気はない。
- 922 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:19:22 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月29日(月)
- 「……病院行くかな」
- 「え」
- うにゅほが目をまるくする。
- 「なんの?」
- 「いや、なんか、ずーっと手が強張ってるんだよ。ここ一、二年くらい」
- 「ずーっと」
- 「いい加減、診てもらったほうがいい気がして」
- 「いこ!」
- 「行くんだって」
- 身支度を整え、愛車に乗り込む。
- 「なんでいわなかったの……」
- 「……言い訳していい?」
- 「いいよ」
- 「症状自体は大したことないんだ。ただ強張ってるだけだから、痛くもなんともないし」
- 「うん」
- 「すぐに治るかと思ってたんだけど、なかなか治らなくて」
- 「うん」
- 「病気とも思ってなかったから、言う理由もなくて」
- 「うん」
- 「気付いたら、年単位経ってた」
- 「いって?」
- 「はい……」
- 言い訳、失敗。
- 整形外科へと赴き、肘のレントゲンを撮る。
- 医師曰く、手の強張りの原因が手そのものにあることは、まずないそうだ。
- あるとすれば肘や首なのだが、首に自覚症状はまったくない。
- 肘のレントゲンにも異常はなく、結果として、経過観察を続けることになった。
- 「すっきりしないねー……」
- 「だなあ」
- 「でも、すーごいわるいことはなさそう。よかった」
- 「手の運動とかすべきかな。ぐーぱーぐーぱー」
- 「いっしょにしよ」
- 「ああ」
- 単に、異常にキーボードを叩くから、という可能性もなくはない。
- 良くも悪くもならなかったが、多少不安は取り除けた。
- それで満足しておこう。
- 923 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:19:43 ID:m8SzlbPI0
- 2026年6月30日(火)
- うにゅほの肩を、ぽんぽんと叩く。
- 「──××、散歩行くぞー」
- 「!」
- ぱ、と目を開いたうにゅほが、元気にベッドから起き上がった。
- 「おはよー」
- 「おはよう」
- 時刻は午前三時。
- 早めに散歩に出掛ければ、朝日で目を潰す心配もないというわけだ。
- 「はれてる?」
- 「晴れてはいないけど、雲は薄いよ。朝日は綺麗だと思う」
- 「そか!」
- 身支度を整え、ウォーキングシューズを履いて家を出る。
- すると、露出している肌に冷たいものが触れた。
- 「……霧雨?」
- 「ふってる……」
- 「マジか」
- 確認したときは、降っていなかったのに。
- 「これ、やめたほうがいいな」
- 「うん……」
- 「……ごめん、××。無駄に起こした」
- 「きにしないで。はやおきしただけ」
- 「早すぎるだろ」
- 「うへー」
- 仕方がないので、自室へ引っ込む。
- 「俺はいいけど、××はどうする? もっかい寝る?」
- 「めーさめちゃった……」
- 「そっか……」
- 「◯◯のせいじゃ、ないよ?」
- そうかもしれないが、どうしても責任は感じてしまう。
- 「じゃあ、朝までのんびりするか」
- 「しよう、しよう」
- なんだかんだと午前六時までうだうだしたあと、うにゅほは階下へ、俺はベッドへと向かった。
- あまりよく眠れなかった。
- 最近、長い睡眠が取れないんだよな。
- 924 :名前が無い程度の能力を持つVIP幻想郷住民:2026/07/03(金) 11:22:33 ID:m8SzlbPI0
- 以上、十四年七ヶ月め 後半でした
引き続き、うにゅほとの生活をお楽しみください
コメント一覧
1 Name 名無しさん 2026年07月03日 19:33 ID:gsgUpcD.0
管理人の家族を解放しろ
2 Name 名無しさん 2026年07月03日 21:15 ID:SLJbNaPl0
十年前は長門で画像検索すると艦これの画像ばかり出てハルヒファンが遠い目をしてたけど
今は戦艦の画像ばかり出てくる
もう艦これもオワコンかな
今は戦艦の画像ばかり出てくる
もう艦これもオワコンかな



































































































