【閲覧注意】


2 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:15:17 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「ねえ、一つ聞いてもいいかい?」

(゚、゚トソン「その言葉に答える義理はないです」

(´・_ゝ・`)「まぁ、なんとなく想像はつくけどね。でも、一応聞いておくよ」



(´・_ゝ・`)「――どうして、俺はこんなにお札まみれなんだい?」



(゚、゚トソン「動けないようにするためです」

(´・_ゝ・`)「いや、別に動けるけど。
      ……俺を動けないようにして、君はどうするつもりだったの?」




(゚、゚トソン「そうですね。杭でも打ってみましょうか」

3 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:15:51 ID:MEHWP0s6



790270


(゚、゚トソンひとでなしのようです(´・_ゝ・`)




.

4 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:16:41 ID:MEHWP0s6


(゚、゚トソン「気分はどうですか?」


(´・_ゝ・`)ゞ「そうだね、とりあえず痛いね」

(゚、゚トソン「それはよかった。苦労したかいがあります。
     それで、今にも死にそうですか?」

(´・_ゝ・`)「いや、別に」


〆(゚、゚トソン「……おかしいですね。私の研究によると効果があるはずなのですが」


(゚、゚トソン「杭ですよ、杭。
     ありがたい五芒星が描かれた、すごい杭なんですよ。
     吸血鬼ならこれで天国行き間違いなしです」


(´・_ゝ・`)「そんなよくわからないものと一緒にされても困るな。
      研究熱心なのはいいのだけどね、そろそろ抜いてくれないかい?」

5 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:17:34 ID:MEHWP0s6


〆(゚、゚トソン「……いやです」

(´・_ゝ・`)「……」

〆(゚、゚トソン「お断りします」


(´・_ゝ・`)「そんなつれない反応の君が好きだよ」

〆(゚、゚トソン「……」

(´・_ゝ・`)「君の目は本当に素敵だね。
      湖のような、青いまっすぐな目だ。俺は君のその目が好きなんだ」


(゚、゚トソン「帰ります」

(;´・_ゝ・`)「ちょっと待った、俺はこのままなの?」


(゚、゚トソン「そうですね。そのまま、くたばってください」

6 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:18:56 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(´・_ゝ・`)「やあ、トソン。
      そろそろこの杭を抜いてもらえないかい?」

(゚、゚トソン「嫌です」


(゚、゚トソン「今日は、ありがたいお札というものを買ってきました」

(´・_ゝ・`)「またお札かい?
      お札なら俺や柱にいっぱい貼ったじゃないか。まだ、満足できないのかい?」

(゚、゚トソン「効果がありそうなものは試す性分なんです」


ペタリ


(゚、゚トソン「貼ります。貼ります。貼ります。貼ります」

(´・_ゝ・`)「すごい数だね。高かったんじゃない?」

(゚、゚トソン「伯父の名前で買ってきました。あとで伯父がどうとでもしてくれるでしょう」


(´・_ゝ・`)「ああ、ミルナか。
      金ならいくらでもあるのだから、好きにつかえばいい」


(゚、゚トソン「言われるまでもなく、使ってきました。
     これがありがたいお経、お祓いのできる道具、霊力のある壺、神様っぽい像……」

7 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:19:28 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「……君のそのなりふり構わない姿は、本当に可愛らしいね」

(゚、゚トソン


ビチャッ


(;´>_ゝ・`)「これは……水かい? 冷たいじゃないか」


〆(゚、゚トソン「聖水は効果なし。
       とても残念です。次は海水と、神社の水あたりを行ってみましょうか」


(;´>_ゝ・`)「ちょっと、海水は傷にしみ」


〆(゚、゚トソン「せっかく買い込んできたんです。じゃんじゃん使いましょうじゃんじゃん」


バシャッ  バシャッ



(;´-_ゝ-`)(あー、お気に入りの着物がベタベタだ)

8 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:20:00 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(*´・_ゝ・`)「おや、この匂いはなんだい?」

(゚、゚トソン「今日は方針を変えて、料理など作っていました」

(*´・_ゝ・`)「手料理か。
       君の料理が食べられるなんて、夫婦になったみ」


(゚、゚トソン


(   ゝ )ニl=と(゚、゚トソン  サクッ



(゚、゚トソン「おっと、手が滑りました」

9 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:20:32 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「……なんで台所でもないのに包丁があるの?」

(゚、゚トソン「死にませんね」

(´・_ゝ・`)「刺さって血が出てるけどね」


(゚、゚トソン チッ


(゚、゚トソン「刺し方が足りなかったのでしょうか。
     やるからには、思いきりやらなければいけませんね」

(´・_ゝ・`)つ=lニフ グイッ


(´・_ゝ・`)「……」


(´・_ゝ・`)「危ないからこれは片付けておこう」

10 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:22:01 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「トソン、君の料理はとても美味しいね。
      杭が刺さってなければ、もっと美味しいのだけど……」

(゚、゚トソン「そうですか。もっと食べてください」

(´・_ゝ・`)「言われなくても食べるよ。
      なんていったって、君の手作りだ。こんなに珍しいことはないからね」

(゚、゚トソン「おかわりもありますよ」


(´・_ゝ・`)「頂こう。少しばかり変わった味だがとても美味いよ」

(゚、゚トソン「そうですか」

(´・_ゝ・`)「ところで、君は食べないのかい?
      せっかく作ったんだろう? 食べないのは勿体無い」



(゚、゚トソン「毒の入ったものを食べる趣味はありませんので」

11 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:23:03 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「……」


(゚、゚トソン「……何事もないですね」


(´・_ゝ・`)「おいしいよ」


(´・_ゝ・`) モグモグ



〆(゚、゚トソン「これもダメですか。残念です」


(´・_ゝ・`)「君のその冷たい反応と目、好きだよ」

12 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:23:51 ID:hlYZUqF.
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(゚、゚トソン「祓いたまえ、清めたまえ」


(´・_ゝ・`)「おや、料理はやめたのかい?」

(゚、゚トソン「効果があまり期待できなかったため、方針を変えました」

(´・_ゝ・`)「それは残念」


(´・_ゝ・`)「ところで君は何をしているのかい?」

(゚、゚トソン「お祓いというやつです」

(´・_ゝ・`)「お祓いか。気分がしゃんとして、いいよね」


(゚、゚トソン「気が変わりました。やめます」


(´・_ゝ・`)「……?」

13 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:25:33 ID:MEHWP0s6


(゚、゚トソン パラッ


(゚、゚トソン「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」

(´・_ゝ・`)「仏門に趣旨替えかい?
      まぁ、君なら坊主頭でも似合うとは思うけど……」

(゚、゚トソン「……」


(゚、゚トソン パラッ ペラッ


(゚、゚トソン「……天にまします我らの父よ」


(゚、゚トソン チラッ

14 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:26:29 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「何か期待しているみたいだけど、こういうのは信仰心がないと効果がないと思うよ」


(゚、゚トソン


(゚、゚トソン「……帰ります」


(´・_ゝ・`)「もう少し話していかないかい?
      トソンと過ごす時間はとても楽しいんだ」

(゚、゚トソン「……帰ります」


(´・_ゝ・`)「照れているのかい?」


(゚、゚トソン「私は、あなたが大嫌いです」

15 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:27:38 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(゚、゚トソン「……あなたはそもそも何なのですか?」

(´・_ゝ・`)「何なのと言われてもね。それこそ今更の気がするけど……。
      ちなみに、君には俺はどう見えているのかい?」


(゚、゚トソン「最低最悪の人でなし」


(´・_ゝ・`)「君がそう思うのなら、それでもいいよ」



(゚、゚トソン「……」

(´^_ゝ^`)


ガッ


(;´・_ゝ・`)「痛っ」

(゚、゚トソン「……私が聞きたいのは、あなたの正体です。
     正体さえわかれば、弱点もわかるはずなんです」

16 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:29:11 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「正体といってもね……」

(゚、゚トソン「あなたについているそれは、尾ですか?
     三指の尾の妖怪など聞いたことがありません」

(´・_ゝ・`)「ああこれ? 意外と重宝するよ」


(´・_ゝ・`)と(゚、゚トソン


(゚、゚トソン「その耳、形が変です。
     触った感じは動物……みたいです。何かの動物が化けているのですか?」

(´・_ゝ・`)「君に触られるというのは悪くないね。
      できればずっとこのまま、触っていてもらいたいものだ」

(゚、゚トソン「虫酸が走るので黙っていてください。気持ち悪い」

(゚、゚トソン「その目……瞳孔がないのですね」

(´・_ゝ・`)「さてと、どうだろうね。自分でもしかと見たことがないし、わからないよ。
      俺について詳しく知ろうなんてやつも、ここ数百年はいなかったし」


(゚、゚トソン「私だって知りたくありませんよ。あなたみたいなやつなんて」

17 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:29:46 ID:MEHWP0s6

(´-_ゝ-`)「そうかい。それは残念だ」


(゚、゚トソン「……」


(´・_ゝ・`)「じゃあ、今度は俺が君に質問をしてみようかな」

(´^_ゝ^`)「白無垢と、ドレスならどちが好き?」


(゚、゚トソン


ガッ


(;´ _ゝ `)「いだっ」

18 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:30:24 ID:MEHWP0s6

(;´・_ゝ・`)「ねえ、今、お腹の杭を思いっきり蹴ったよね?!」


ガンッ ガン


(゚、゚トソン「……知りません」


ガッ ガッ                 グリグリ



(;´・_ゝ・`)「ね、やめ。あだっ、痛っ」


ガン


(;´・_ゝ・`)「そろそろこの杭、抜いてくれないかい?」


(゚、゚トソン「……何で、死なないのでしょうか」

19 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:31:16 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(´-_ゝ-`)「……もうすぐ満月だね。ミルナとの約束の期日だ」


〆(゚、゚トソン「まだ時間はあります」


(´・_ゝ・`)「せっかく来てくれたのと思ったのに、研究かい? 君も熱心だね」

〆(゚、゚トソン「……必死にもなります」


(´・_ゝ・`)「研究に夢中になる君も素敵だけどね。俺としてはもっと君と話がしたいよ」


〆(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「ほら、その目で俺を見てくれないかな」


(´・_ゝ・`)「ここは君とミルナくらいしか来ないから、退屈なんだ」


〆(゚、゚トソン「一生、暇でいてください」

20 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:32:46 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「そういう冷たい君も好きだけどね」


(´・_ゝ・`)「……約束の日、早く来ないかな」


〆(゚、゚トソン


ゲシッ


(;´・_ゝ・`)「痛っ」


ゲシッ ガッ


(;´・_ゝ・`)「杭を蹴るのはやめてって。刺さってるんだよ? 体に」

〆(゚、゚トソン「そうですか」

(;´-_ゝ・`)「トソン、この杭はいつまでこのままなんだい?
       そろそろ君に蹴られるのも、悲しくなってきたのだけど」


(゚、゚トソン「あなたが死ぬまでです」

21 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:33:38 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・




(゚、゚トソン「……」



(゚、゚トソン「約束の、日」



(゚、゚トソン(……時間)



(゚、゚トソン(……このまま止まればいいのに)



.

22 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:35:05 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(-、-トソン (弱点、わからなかった)


(゚、゚トソン (お札……効果があるかどうかわからない。効いてないのかも)


(゚、゚トソン (聖水効果なし。だめ元で買った道具やお経もだめ)


(゚、゚トソン (信仰心はありません。神様は、嫌い)


(゚、゚トソン (包丁も毒も効果なし)


(゚、゚トソン (杭。今のところ一番効果があるけど……
      ……効いてるのか、効いてないのかわからない)



(゚、゚トソン(時間が、ない)


〆(゚、゚トソン  カリ カリ カリ

23 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:35:37 ID:MEHWP0s6

カリ カリ カリ カリ
  ペラッ
         カカカカカ カリカリ


ゴシゴシ


〆( 、 トソン 

             カリカリカリ


〆( 、 トソン (早く、何とかしないと……)



ガリガリガリガリ  カリッ

24 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:36:32 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(゚、゚トソン ……

(´・_ゝ・`)「やぁ、トソン。少しだけひさしぶりだね」


(゚、゚トソン ……


(´・_ゝ・`)「その手に持っているものは、刀かな?
      随分と古式ゆかしいものを持って来たんだね」


(゚、゚トソン ……

25 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:37:08 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「それで、俺をどうするつもりなのかな?」




――ザッ



( 、 トソン「死んでください」



                               ザクッ


.

26 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:38:00 ID:MEHWP0s6


ピチャリ



( 、 トソン (血がいっぱい)


                    ピチャリ



( 、 トソン (……動かない。首、落とさなきゃ)



( 、 トソン (刀、重い……)

27 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:38:47 ID:MEHWP0s6


ギッ

         ミチッ

                          ミチッ


 グチュッ

          ハァツ

                  グチャッ


   ハッ

 
グチュリグチッギシッ メッ グチャゴリグチャグチャ              ベキリ

28 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:40:13 ID:MEHWP0s6


( 、 トソン ハァ ハァッ ハ


( 、 トソン「終わった。これ、で」


                                        ゴトッ



( 、 トソン「いくらあいつでも、首を落とせば……」

29 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:41:34 ID:MEHWP0s6




(´ _ゝ `)「――まぁ、普通はそうなんだけどね」




.

30 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:42:35 ID:MEHWP0s6


ジリジリと、何かが焦げる臭いがした。

ガランとしたお社に、ぼうと、強い明かりが灯る。


見回すと壁が、柱が――正確にはそこに貼られたお札が、燃えている。


目を鋭く刺す煙が、空気に混ざる。

吸った息が喉に焼き付いて、私を咳き込ませる。


ずるりと、嫌な音がした。

それから、ごとりと何かが落ちる音と、拾い上げるような音。


目を向けた先に、血にまみれた杭があった。

私がいつか用意した、見覚えのある杭。

そして、



揺れる空気の向こうで、男の体がうごめいた。

31 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:43:19 ID:MEHWP0s6

(゚、゚;トソン「――なんで」

(´・_ゝ・`)「どうしたんだい、トソン?
      とても顔色が悪いよ。それにとても疲れているみたいだ」

(゚、゚;トソン「なんで首。しゃべっ」


(´・_ゝ・`)「ああ、その表情はとてもいいね。
      いつものすました顔もいいけど、今の君はとても人間らしくていい」

(゚、゚;トソン「……なんで! なんでっ!」


(´・_ゝ・`)「首をくっつけるのはやはり大変だね。
      できればこれっきりにしてほしいものだ」

(゚、゚;トソン「首、落ちっ……血が……血が……」

32 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:43:51 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「せっかく君がくれたお札だったけどね。
      首をつなげるのに邪魔だから、焼いてしまったよ」


(゚、゚;トソン「やっ……なんで……なん」


(´・_ゝ・`)「それにこの杭も。君のお気に入りだったのに、ごめんね」


(゚、゚;トソン「ばけもの……いや」


(´・_ゝ・`)「おやおや、あまり興奮するのは良くないよ」


(´・_ゝ・`)つ(゚、゚;トソン スッ


(´^_ゝ^`)「ほら、いい子にして」



( 、 ;トソン「――嫌ぁぁぁぁっ!!!」


(´・_ゝ・`)「……」


(´・_ゝ・`)「……逃げられちゃったか。でもまあ、こんな時間もあと少しだ」

33 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:44:32 ID:MEHWP0s6






私は、きっと失敗したのだと思います。






.

34 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:45:14 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(´・_ゝ・`)「今日はもう来ないんじゃないかと思っていたよ」

(゚、゚トソン「……」

(´・_ゝ・`)「随分と顔色が悪いね。大丈夫かい、トソン?」


(゚、゚トソン「……問題、ないです」

(´・_ゝ・`)「それは、よかった。とても心配していたんだよ。
      ――ああ、俺かい? 首ならこうして綺麗につながったよ」


(´-_ゝ-`)「君が嫌がると思ったから、ちゃんと着替えたし。この社も清めさせたんだ」


(*´-_ゝ-`)「呼び出された時の、ミルナの顔といったら。とても愉快だったよ」


(゚、゚トソン「……」


(´・_ゝ・`)「トソン。首を切り離すなんて大変だったろう?
      昨日はよく頑張ったね」

( 、 トソン「……」

35 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:46:03 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「……トソン?」

( 、 トソン「……どうして、死なないの?」

(´・_ゝ・`)「どうしたんだい? 急に」


( 、 ;トソン「やっと殺せたと思ったのに。やっと消えたと思ったのに。
      どうして? どうしてなの?!」

(´・_ゝ・`)「今日の君はお喋りだね。
      俺としては、君との会話はとても嬉しいものだからいいのだけど」


(゚、゚トソン「――あなたはどうやったら死ぬのですか?」

36 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:46:33 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「どうやったら死ぬの……ね。
      そういうことは普通、本人には聞かないものだよ。
      研究はもういいのかい? いろいろと熱心にやっていたけど」


(゚、゚;トソン「……」


( 、 トソン「……もう時間がないんです。
     あなたが私の目の前から消えるのなら、私はなんだってやります」


(´・_ゝ・`)つ(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「ほら、顔を上げて。せっかくの君の瞳が見えない」


(゚、゚;トソン「……」

37 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:47:55 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「……消えろ、か」


(´・_ゝ・`)「そうしてあげてもいいけど、無理だ」


(´・_ゝ・`)「ミルナは絶対に許さないよ。
      あいつは当主だ。一族全員の命を背負う義務がある。
      そして何より、あれは今の暮らしを愛している」

(゚、゚トソン「……っ」

(´-_ゝ-`)「ミルナだけではない。一族の者たちは絶対に君を許さない。
      君のために、金と地位を投げ捨てたいなどと言う者はどれくらいいるのかな」


(゚、゚トソン「……そんなもの」

(´・_ゝ・`)「金や地位なんて、なくてもいい? まぁ、それも真理だね。
      だけどだめだ。契約ははるか昔に取り交わされている」


(´・_ゝ・`)「君たち一族と俺は、契約の上に成り立っている。
      それを今更、違えることなんてできないよ」

38 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:50:30 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


私の先祖は人でなしだったらしい。
金とか、土地とか、栄誉とかそんなもののために、踏み込んではならない領域に手を出した。

そして、私の先祖は正体のわからないバケモノと手を組んだ。
そいつが富をもたらすために出した条件は二つ。


一つは己を神として祀り上げること。
そして、もう一つはそいつの定めたお役目を果たすこと。


人でなしの先祖は、その条件を受け入れた。
屋敷の一角に社を作り、よくわからないそれを神として祀り上げた。
家を栄えさせる。それだけのために、一族の女にお役目を押し付けた。


盛岡家に出で、満たす神。


神は約束の通り、盛岡家に繁栄をもたらし続けた。
一族は神のために、さまざまな貢物を捧げた。

盛岡家が栄えれば栄えるほど、その神は力を増していった。

39 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:51:39 ID:MEHWP0s6


出で満たす神様。


転じて、――でみたす様。


盛岡家に繁栄をもたらす、神様。



今、私の目の前にいる男は、そのでみたす様だ。



・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・

40 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:52:23 ID:MEHWP0s6


( 、 トソン「契約を――違えることは出来ない。なら……」


(´・_ゝ・`)「逃げる、かい?
      でも、それができないことは君が一番知っているだろう?」

( 、 トソン「……」

(´・_ゝ・`)「ミルナは逃さないよ。
      屋敷にいる使用人は、本当は何のためだと思う? 君を逃さないためだよ」


(´・_ゝ・`)「……それに」

41 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:52:55 ID:MEHWP0s6






(  _ゝ )「他の誰が認めても、俺が許さない」







.

42 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:53:33 ID:MEHWP0s6

( 、 ;トソン


(´・_ゝ・`)「そうだね、君が捕まるまで、盛岡の一族に不幸をもたらし続けようか。
      最初は……そうだね。裏の山が崩れる、というのはどうだろう?」

(゚、゚;トソン「や、山なんて崩れてしまえばいいのです」


(´-_ゝ-`)「随分と君らしくないことを言うんだね。
      俺がうっかり、その通りにしたらどうするんだい?」


( 、 ;トソン「~~勝手にすればいいでしょう!」


( 、 ;トソン


(>、<;トソン「――みんな、みんな滅んでしまえばいいんです!」

43 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:54:33 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「……君が言うならそうしようか。
      でもまぁ、いきなり山を崩すのも面白く無いから……そうだね」


(゚、゚;トソン「え?」


(´・_ゝ・`)「……ミルナの娘はまだ5つだったかな」


(´^_ゝ^`)「ミセリと言ったっけ。
      髪飾りの似合うかわいい子。君とも仲が良かったね。」


(´・_ゝ・`)「そうだな、流行病にしよう。
      いや、それとも君のお気に入りだ。もう少し悲劇的なほうがいいかな?」

(゚、゚;トソン「……やだ」


(´・_ゝ・`)「そうか。なら、ミルナの弟のところにでもしようか。
      順調に行けば来月に産まれる子がいたな。賢くなりそうな男の子」

44 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:55:21 ID:MEHWP0s6


(゚、゚;トソン「……やめて」


(´・_ゝ・`)「うん、気に入った。この子にしよう。
      今ここで殺してしまえば、将来ミセリと家督争いをする心配もないしね」

( д ;トソン「おねがい、やめて」


(´・_ゝ・`)「やだよ。やめてあげない」


( д ;トソン「おねがい、お願いだからっ!!!」


(´・_ゝ・`)「……」


(´^_ゝ^`)「――君が悪いんだよ」

45 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:55:53 ID:MEHWP0s6


( 、∩トソン


(´・_ゝ・`)「そろそろ、屋敷が騒がしくなる頃かな」


( 、 ;∩トソン

(´・_ゝ・`)「少しは落ち着いたかい?
      君があまりにも必死だから、俺もつい本気になってしまった。
      すまなかったね、トソン」


( 、 ;∩トソン「……ぁ」


(´・_ゝ・`)「だけどね、トソン。これは君が望んだことだよ。
      みんな、みんな滅んでしまえばいい――君はそう願った。
      だから、俺は君のかわりに、君が望む滅びをもたらした」

46 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:58:30 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「そうだね、次はどうしようか」


( 、 ;∩トソン「……つ、ぎ」


(´・_ゝ・`)「そうだよ、トソン。
      この程度じゃどうして、滅びなんて言える?」


( 、 ;トソン「や」


(´・_ゝ・`)「子は宝だ。まずは、この宝から消していくことにしよう。
      次は、土地だ。土地を枯らそう、水を枯らそう。川には毒を流し、提を切ろうか。
      俺の力の及ぶ領域全てに災いをまこう。そうしたら、次は血族の命だ」


(゚、゚;トソン「やだ」

47 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:59:00 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「契約の放棄は死を意味する。君だけじゃない、血に連なるもの全員だ。
      君はミルナを、ミセリを、罪のない者たちを殺せと言っているのだよ?」


(;、;トソン「――あ」


(´・_ゝ・`)つ(;、;トソン


(´・_ゝ・`)「可哀想に、泣いてしまって。
      大丈夫だよ、君が約束を違えない限りはそんなことはしない」


(´・_ゝ・`)「わかるよね、トソン。いとしい君。君は、優しい子だ」


(;、;トソン


(´・_ゝ・`)「君は全てを犠牲にすることなんかできない。
      それができないのは、君が一番わかっているだろう?」

48 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:01:01 ID:MEHWP0s6

・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


盛岡の一族は、でみたす様を祀り続けた。


でみたす様に従えば、土地は肥え作物が実った。
山からは珍かなる宝が見つかった。


だけど、でみたす様は同時に災いももたらした。


でみたす様に逆らえば土地は枯れ、水は干上がった。
貢物が絶えた年は、赤子が死んだ。
社が壊れた年には、流行病が起き、山崩れが起きた。
でみたす様が求めた大切な役目が果たせなかった年には、本家の人間が全て病や事故で死に絶えた。


でみたす様は、従わぬものへ祟りをなす。
それがわかっていながら、一族はでみたす様を祀り続けた。


でみたす様は力をつけすぎていた。
でみたす様との契約を破ろうとする者には、ことごとく死がもたらされた。


かつて交わされた契約は、破ることができなくない絶対の掟になっていた。
一族はでみたす様に怯えながらも、崇め祀り続けるしかなかった。

49 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:01:47 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


/ ,' 3 「トソンお嬢様。
     ミセリお嬢様がお越しですが、お通ししてもよろしいですか?」


(゚、゚トソン「……」


/ ,' 3 「トソンお嬢様?」

(゚、゚;トソン「……! 通してください」


ミセ*゚ー゚)リ ヒョコッ


ミセ*゚ー゚)リ「トソンおねーちゃんー!!」

(゚、゚;トソン「ミセリ。あなた無事ですか? 怪我とか、してませんか?」

ミセ*゚ー゚)リ「どうしたのおねーちゃん? それより、あそぼー」


( 、 ;トソン「よかっ……た」

50 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:03:44 ID:MEHWP0s6

ミセ*゚ー゚)リ「おとーさんも、おかーさんもあそんでくれないの!
      ひどいでしょー、おねーちゃん」

(゚、゚トソン「そうなんですか?」


ミセ*゚ー゚)リ「みーちゃんは一人であそんでだって!
      おとーさんもおかーさんも、モナーおじさんたちとおはなししてるのにズルイよね!」

(゚、゚;トソン「モナー、叔父さん?」


ミセ*゚~゚)リ「赤ちゃんしんじゃったんだってー。
      ねぇ、おねーちゃん。しんじゃったら、あそべないの?」

( 、 ;トソン「……」

ミセ;゚д゚)リ「どうしたの、おねーちゃん?」


( 、 ;トソン「……ごめんなさい」

ミセ;゚ー゚)リ「おねーちゃんなかないで。
      ミセリだいじょうぶだから、ね?」


(;、;トソン「……ごめんなさい。ごめんなさい。ミセリごめんね」

51 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:04:59 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


( ゚д゚ )「……トソン」

(゚、゚トソン「……」

( ゚д゚ )「……わかって、いるな」

(゚、゚トソン「……伯父様」

( ゚д゚ )「モナーは怒っている。
     お前が役目を果たそうとしないから、祟りが起きたのだと……」

(゚、゚トソン「……」


( ゚д゚ )「お前には、本当にすまないと思っている。
     だけど、お前をかばい続けるのはもう限界だ」


(゚、゚トソン「……」


::( д )::「すまない、トソン。本当に……」


(-、-トソン「……」

52 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:06:04 ID:MEHWP0s6






――私は、きっと逃げられない。







.

53 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:06:43 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(゚、゚トソン「……」


人目が途絶えたところを見計らって、戸棚から小瓶を取り出した。


山に生える青い花。その根を乾燥させて作った小瓶の中身。
いつか料理に入れたことを、思い出す。
でみたす様は美味しいといっていたが、きっとおいしいものなんかじゃないのだろう。


(-、-;トソン「……」


水と一緒に飲み干した。
口に走るしびれは、やがて苦しみとともに私の命を奪うだろう。


( 、 トソン「もっと早く、こうしていればよかったです」


なかなか踏み出さなかったのは、きっと自分がかわいかったからだ。
それでも、 もう、    いい




                        これで、 ぜんぶ おわる



        から


.

54 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:07:33 ID:MEHWP0s6














.

55 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:08:04 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(´・_ゝ・`)「――おはよう、トソン」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「ミルナが動かない君を連れて駆け込んできた」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「明日は、約束の満月だ」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「最後の夜が近づくとこういうことが起こるから、ミルナには目を離すなと言っていたのだけれどもね」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「可哀想に、ミルナも真っ青になっていたよ。
      娘の――ミセリの命だけは助けてくれと言っていたな」

(´・_ゝ・`)「ああなっては当主の威厳の欠片もないね。
      でもまあ、そちらの方が人間らしくて面白いのだけど」

(゚、゚トソン「……ミセリは。伯父は」

56 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:08:54 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「ようやく口を聞いてくれたかと思ったら、それか。
      気分はどうだい? 毒を抜いて、治療はしたけれどもう大丈夫かい?」

(゚、゚;トソン「ミセリは関係ないのです。伯父だって悪くない!」

(´・_ゝ・`)「君がそういった感情を向けるのは、俺だけにして欲しいのだけど。
      ……まあ、それだけ話せるなら体も大丈夫だね」

(゚、゚;トソン「二人はどうなったのです?」

(´-_ゝ-`)「無事だよ。かわいそうだったから、今回は見張り役だけにしておいた。
      ミルナはあれでも俺の孫だからね。それに、君を育てた働きもある」

(゚、゚;トソン「……見張り役?」

(´・_ゝ・`)「君をお嬢様と呼ぶ奴がいただろう?
      守るふりをして、じっと君を見張ってきた役立たずが」


              / ,' 3


(゚、゚;トソン「……荒巻の、お爺さん?」

57 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:10:19 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「自死は契約に反すると、君は知らなかったのかい。
      本当に死んでいたら、あの老人程度では済まなかったよ」

(、 ;トソン「……」

(´・_ゝ・`)「確かめてくるかい? 葬式はまだのはずだよ」

(、 ;トソン「……そんな。そんな」

(´・_ゝ・`)「可哀想に。また死んでしまったね、君のせいで」

(、 ;トソン「荒巻の……お爺さん、が」



(´・_ゝ・`)「ああ。でも、本当にかわいそうなのは君か」

(、 ;トソン「……」


(´・_ゝ・`)「――君は本当に死程度で逃れられると思っていたの?」


(、 ;トソン「……っ」


(´^_ゝ^`)「俺は君が死んだとしても、また捕まえるよ。
      何度でもだ。死んだって、俺は君を見つけられる」

58 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:11:55 ID:MEHWP0s6

(、 ;トソン「……私、は」

(´・_ゝ・`)「トソン、かわいそうに」


(´・_ゝ・`)「契約の破棄は出来ない。
      君は、ミセリやミルナの死を本気で望んでいない。だから、君は逃げることができない。
      自死することもギリギリまでためらった」

(、 ;トソン「……」


(´・_ゝ・`)「そして、君は俺を殺すことも出来なかった。
      残された時間を全て使って、俺を殺すための研究をしてきたのにね」

(゚、゚;トソン「ならっ……っ、あなたが勝手に死んでください!
      死んでください! 私は、あなたに死んで欲しいのです!」


(´・_ゝ・`)「そう必死にならなくても、俺だっていつかは死ぬよ。
      ……まぁ、君が死ぬよりも先の事になるだろうけど」

( 、 トソン「困ります! 今すぐ、死んでもらわないと困るのです」

59 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:12:31 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「どうして?
      何も命をとろうというわけではない。君が従うだけで盛岡が栄えるのだ。安いものじゃないか。
      君がお役目を果たせば、誰も死なない。君が心を痛めることはないんだよ」


(>、<;トソン「そうじゃない!」


(´・_ゝ・`)「なぜ、君は嫌がるんだろうね。
      これまでにも君のようなお役目はいたけど、ほとんどの者は素直に従ったよ」


(゚、゚;トソン「……嫌です」


(´・_ゝ・`)「聞き分けのない子だね。そんなに嫌なのかい?」

60 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:13:18 ID:MEHWP0s6


(゚、゚;トソン「嫌です。嫌なんです」



(゚、゚トソン「……だって、あなたが死なないと」



(゚、゚;トソン「わたしはっ、      の」



( 、 ;トソン「お嫁さんになってしまうっ――」



.

61 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:14:58 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


子孫代々に続く繁栄をもたらそう。


――ただし、約束を守るなら。


でみたす様は、盛岡の最初の当主に言いました。
でみたす様は、当主に二つの条件を出しました。

一つは、己を神として祀ること。
もう一つはでみたす様の定めたお役目を果たすこと。


盛岡家にかされたお役目。
それは、でみたす様が定めた娘を、妻として捧げることでした。


でみたす様は定めた娘に、印をつけました。
印のある娘は十五になると、お役目としてでみたす様に捧げられました。


そして、それは私も同じ。


――私は、やがてでみたす様に捧げられる生贄だ。

62 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:15:47 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・



(´・_ゝ・`)「お嫁さんか。そう言うと存外に可愛い響きだね」

::( 、 ;トソン::「……なんで、私なのですか」


(´・_ゝ・`)「それは君に印があるからだよ」



(´・_ゝ・`)つ( 、 ;トソン::


(´・_ゝ・`)「君のその目。湖のように美しい青い瞳。これが印だ」

( 、 ;トソン::


(´・_ゝ・`)「ああ」


(´・_ゝ・`)「こんなに震えてしまって、可哀想に」

63 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:16:53 ID:MEHWP0s6

( 、 ;トソン::「どうして……」


(´-_ゝ-`)「君がどうしてと言うのなら、少しだけ話をしようか……」


(´・_ゝ・`)「俺がまだ何者でもなかった頃、一人の女を見つけた」


( 、 ;トソン「……」


(´-_ゝ-`)「きれいな髪の、色の白い女だった。
      まっすぐとこちらを見る目が印象的だったよ」


(´・_ゝ・`)「女は美しい見目をしていた。でも、それ以上に魂が良かった。
      青い、湖のような魂の色。
      ――俺はどうしてもその女が欲しくなった」


(´・_ゝ・`)「だから俺は言ったのだ。あの女を寄越せと。
      女を捧げ神として祀るのならば、盛岡の血族は永遠に栄えるようにしてやろう」

64 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:17:29 ID:MEHWP0s6


(゚、゚;トソン「……私は、関係ない」


(´・_ゝ・`)「関係はあるよ、一番最初の女は君だ。
      俺は手に入れた女の魂に印をつけて、盛岡の血族に産まれてくるように輪廻を歪めた」



(´・_ゝ・`)「印は、目にした。
      あのまっすぐな目に、美しい魂の色が映るようにと」


(´・_ゝ・`)「最初のお前は空といった。次は、緋糸、愁、来雨、久都……。
      君の曽祖父の代では、貞子という名だった。あの子は弱かったが、空に似たまっすぐな目をしていた」


(゚、゚トソン「……」

65 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:19:09 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「みんないい娘だった。
      俺が惹かれた魂の色は、何度生まれようと変わらずにあった。
      盛岡の家などどうでもよかったが、娘の魂とあの目はとても良かった」


(´・_ゝ・`)「そして、都村。君が産まれた」

( - トソン「……」


(´・_ゝ・`)「君は貞子と同じで、体がそう強くはなかったね。
      いや、貞子の血と魂を引き継いだからこそと言うべきか」


( - トソン「やめて」

                                              キ ミ
(´・_ゝ・`)「君が死んだ時はとても悲しかった。だけどね、都村は俺に新しいトソンを残してくれた」


(´・_ゝ・`)「トソン。愛しい俺の――」




( д トソン「もうやめて!」

66 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:20:26 ID:MEHWP0s6







「――おとうさんっ!!」





.

67 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:21:13 ID:MEHWP0s6

・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


でみたす様に最後に差し出された女は、私の母だった。


都村。


私と同じ名前をした、私の母。
曾祖母と同じく体の強くなかった母は、私を産み落とすと同時に息絶えた。



産まれた赤子――私は、黒い瞳だった。


私はお役目には選ばれなかった。
だけど、年を経るうちにその瞳は母と同じ青へと染まっていった。


今でも思い出す。
瞳の色が変わっていく、恐怖。
私が私ではないものに変わっていく、恐れ。

両目を潰そうとした手は、伯父によって止められた。


でみたす様が次に選んだのは私。
母の次の花嫁として選ばれたのは、でみたす様と母の血をつぐその娘だった。

68 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:21:48 ID:MEHWP0s6


でみたす様の定めたことは、一族にとって絶対だ。


違えれば、一族が死に絶える。
当主である叔父は、でみたす様に従えと言った。
曽祖父であり父でもある人でなしの神へ嫁げと、叔父は言ったのだ。

そして、私はお役目を果たすことになった。


十五になってから、最初に迎える満月。
――明日の晩。

それが叔父の定めた、約束の日。


私の婚礼の日だ。

69 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:23:47 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


( - トソン「……おかしい。あなたは、おとうさんはおかしい」


( 、 トソン「なんで、私をお嫁にするなんて言うんですか。
     なんで死なないんですか、なんで人間じゃないんですか」


(´・_ゝ・`)「おとうさん、か」

( - トソン「……っ」


(´・_ゝ・`)「そう呼ばれたのは、随分久しぶりな気がするね。
      ここ最近の、あなたというのも良かったが。うん、悪くない」


(´・_ゝ・`)「……」


(´-_ゝ-`)「――なんで、と言ったか」

70 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:24:51 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「都村が死んだとき、俺はまた何年も待つのかと思った。悲しかった。
      だから俺は、君の魂を産まれたばかりの赤子に移した」


(゚、゚トソン「……」

(´・_ゝ・`)「流石に無理かと思ったが、君は大きく育ってくれたよ。
      君は黒い瞳だった。都村の魂を持っていても君は、都村ではなった」


(´・_ゝ・`)「俺は次の君を待とうと思った」


(´・_ゝ・`)「だけど、それは間違っていた。
      どんな形で引き継がれたとしても、君はやはり君だったんだ」


(´・_ゝ・`)「君のその目が、青く染まった時。俺は歓喜した。
      俺の愛しい魂は失われずにここにある。俺の願いは届いたのだ」

71 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:25:31 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「トソン。愛しい都村。
      明日になれば、君は俺の花嫁だ。血も、肉もすべてが俺のものになる」

(; ;トソン「……なぜ母を、そのまま死なせてくれなかったのですか。
      なぜ私に、母と同じ役目を負わせるのですか!!!」


(´・_ゝ・`)「なぜ、死にゆく愛しい人を手放さなければならないの?」



人でなしが、心の底から不思議だという様に笑った。



(´・_ゝ・`)「トソン。いとしい私の都村」


人でなしが、人でなしの言葉を告げる。
人ではないそれには、父が娘を犯す異常が、罪がわからない。

72 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:26:32 ID:MEHWP0s6

私の母は、でみたす様の妻だ。
私の曽祖母もまた、でみたす様の妻だ。
その前の先祖にも、前の前の祖先にも、でみたす様の妻となった女達の血が流れている。


私の半分は人でなしの血で出来ていて、残りの半分も人でなしの血でできている。


この血が流れているかぎり、きっと私はどこにも逃げることなど出来ない。
それがおぞましくって。だから私は、殺してしまいたかった。


(゚、゚トソン「人でなし」

(´・_ゝ・`)「はじめから、人ではないよ」

(゚、゚トソン「大嫌い」

(´・_ゝ・`)「俺は君を愛しいと思っているよ」


私の父であり、曽祖父であり、何代も前の先祖であるそれが笑う。
仕方のない子だねと、なだめるように。
それはなんでもない父親のように笑って、人でなしの言葉を吐く。

73 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:27:27 ID:MEHWP0s6

(゚、゚トソン「私を放して」

(´・_ゝ・`)「俺は君を捕まえたつもりはないよ。
      放す気もこれっぽっちもないんだけどね」

(゚、゚トソン「逃して」


(´・_ゝ・`)「君がどうしてもと望むのなら。
      君の一族を殺して、災いを振りまいて、そして、君も殺そうか?」


人でなしが笑う。
獣のような耳、三つ指の尾、瞳孔のない真っ暗な瞳がこちらを見据える。


(´・_ゝ・`)「そうしたら俺は、産まれ落ちる新しい君を迎えに行こう」

( 、 トソン「いやだ」

(´・_ゝ・`)「次はどんな君だろう。
      今の君や、これまでの君たちように、まっすぐな目をしているといい」

74 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:28:19 ID:MEHWP0s6

( 、 トソン「やめて」

(´-_ゝ-`)「それなら未来の話をしよう」


夢見るように人でなしは笑う。
私の言葉は、届かない。
それでも私は、聞き分けのない子供のように泣き叫ぶ。


(´・_ゝ・`)「君の産む子は、どんな子だろうね。
      男でもいいが、女のほうがずっといい。君みたいなまっすぐな目をした娘だ」

(、;∩トソン「聞きたくない」


(´・_ゝ・`)「その子の魂は、どんな色をしているだろうね。
      君のような、青い湖の色をしていればいい」

( 、; トソン「やだっ!!!」

(´・_ゝ・`)「――君はいつもそう言うね」


唇が落とされる。
冷たい感触が、ぞわりと私の皮膚を撫でる。
背に回される太い手と、三指の尾。
私を覗きこむ瞳は、真っ暗な光の見えない目だ。

75 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:28:55 ID:MEHWP0s6

ぱさりと、髪が落ちた。


(´-_ゝ-`)「トソン。いとしい魂を持つ、俺の娘。
      俺の末裔にして、最も濃い血を引き継ぐ子よ」

(、 川「……嫌だ」


(´・_ゝ・`)「もし君が望むのなら。
      俺の力が続く限り、その生命が続くようにしてもいい」


(- ;川「……嫌だ」


(´・_ゝ・`)「トソン、愛しい娘。
      空の魂を引き継ぐ、一番新しい君」

76 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:29:38 ID:MEHWP0s6



もう何も聞きたくなくて、私は目を閉じた。



.

77 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:30:36 ID:MEHWP0s6






                   「愛しているよ」





.

78 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:31:07 ID:MEHWP0s6


・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・



かみさま。


人でなしの、いでみたすかみさま。でみたす様。


わたしのおとうさん。



もしあなたが本当に、かみさまならば。



魂のかけらも残さずに



わたし、を



.

79 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:31:47 ID:MEHWP0s6




殺してください。







(゚、゚トソンひとでなしのようです(´・_ゝ・`)        了



80 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:34:05 ID:???
スレタイミスしました→(゚、゚トソン人ひとでなしのようです(´・_ゝ・`)
(゚、゚トソンひとでなしのようです(´・_ゝ・`) が正しいスレタイです

気づいたらこうなっていた。大いに反省したい

81 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:34:35 ID:???
おおお乙

82 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 02:01:02 ID:???
凄く好みだ
おつ

83 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 03:24:45 ID:???
ドツボにハマるくらい引き込まれた。デミトソとは珍しいなと思ったが初代の目の持ち主はあの人か…乙

84 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 03:39:46 ID:???
>>83
え 誰ヨダレよ

85 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 04:05:15 ID:???
ケータイが反旗を翻して「もしかして」が抜けてた。「もしかしてあの人か」って打ちたかったんだ…髪をおろしたトソンがある女性AAに見えて…ごめん…ごめんよ…

86 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 09:06:28 ID:???

なかなか人でなしだった

87 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 09:35:13 ID:???
面白かった
まさかこの絵がこんなホラーな話になるとは

88 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 13:06:08 ID:N31DJudA
ぞくぞくした


89 :ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 15:23:01 ID:lyvMsWYs
おつ