最後の直線に入ったとき、圧倒的な一番人気だったブエナビスタは中山競馬場の短い直線では届かないような位置にいた。しかし、エンジンがかかると怒涛の追い込みで粘るヴィクトワールピサに襲い掛かってきた。それはまるで10年前の有馬記念におけるテイエムオペラオーのように思えた。

 出遅れ癖のあるペルーサのおかげでペルーサの馬券を買った競馬ファンも買わなかったファンもスタートにはいつものG1レース以上に注目したはずである。そして、スタート。ペルーサは出遅れなかった。その代わりにエイシンフラッシュとドリームジャーニーが出遅れてしまった。とりわけ、ドリームジャーニーはいくら追い込み脚質だといっても出遅れすぎである。
 レースはトーセンジョーダンが引っ張る形になった。好枠を引いた上に逃げ馬がいないレースである。三浦騎手は先行策ができるトーセンジョーダンの持ち味を最大限活かそうとした。それに中山競馬場でスローペースの競馬をさせたら右に出るものがいない横山典弘騎手が乗るオウケンブルースリが続いた。追い込み馬を先行させるのは横山騎手がよくやることなので驚くことではない。
 スローペースに業を煮やしたのが勝ったヴィクトワールピサに騎乗するデムーロ騎手である。向こう正面で一旦ペースを上げて先頭に踊り出た。結果的にはこのロングスパートが最後の粘りに活かされたわけである。スローペースに加えて直線の短い中山競馬場である。相手はブエナビスタただ一頭と考えるのならば、ロングスパートして粘りこむという作戦は有効的だった。レース後角居調教師は作戦通りだったと述べていたが、本当ならば今回の有馬記念は角居調教師の作戦勝ちである。あまたの名馬を手がけながら届かなかった有馬記念のタイトルを手に入れるに値する好判断だったと思う。
 考えてみれば、冒頭に述べた10年前の有馬記念も似たような展開だった。メイショウドトウは100点満点の騎乗でついにG1タイトルを手に入れたと思った瞬間、テイエムオペラオーの信じられない追い込みにハナ差屈した。しかし、今回の有馬記念でヴィクトワールピサは粘って見せた。皐月賞のみを勝った三歳馬が有馬記念を制したのは天馬トウショウボーイ以来だそうだ。
 ブエナビスタにはオペラオーやウオッカが持っていた他馬をはじき出すようなパワーがない。器用で抜群の切れ味をもつ馬であるが、完全マークされた展開を乗り越えるためにはパワーが必要だ。ここの差に彼女が勝ちきれない要因があると考える。そして、またひとつ父親と似ている点を作ってしまった。スペシャルウィークはグラスワンダーの強襲に三センチ屈した。そして、ブエナビスタは二センチ届かなかった。この親子は17戦目に有馬記念を迎えるという点も同じであった。そして、親子は同じく四歳時に僅差で有馬記念を取りこぼしてしまった。
 トゥザグローリーは三着に健闘した。波乱を巻き起こす三歳馬はルーラーシップだと考えていたためこれには驚いた。同じ有馬記念三着の経験がある両馬の母である。四歳で有馬記念三着だったエアグルーヴとは違い、五歳になって有馬記念三着を経験したトゥザヴィクトリーのほうが有馬記念に向いているということなのだろうか。古馬になっても一線級で活躍し、自在性のある競馬を見せた母のような活躍をして欲しい。
 ペルーサは先に述べたようにスタートが決まった。そして、四着に粘りこんでいる。古馬三冠レースに全て参加し、全てで掲示板に乗ったこの馬は強い。ゼンノロブロイの子どもだけにまだ成長しそうである。もしかしたら、来年の古馬戦線を引っ張っていくのはヴィクトワールピサでもローズキングダムでもなくてこの馬だと私は考える。
 
 予想は大惨敗。エイシンフラッシュはブエナビスタと一緒に外から伸びていたが、出遅れが痛かった。出遅れがなければと考えてしまう。JC 有馬記念と三歳馬が制したのは2001年以来である。最強世代といわれている1998年世代も三歳時にJC 有馬記念を制している。結果的にJC 有馬記念を制した今年の三歳世代もハイレヴェル世代だということには変わりない。来年の古馬G1で強い競馬を見せて欲しいものである。2001年世代は四歳になると故障馬が続出し、秋には三歳馬のシンボリクリスエスに蹂躙された。この世代には怪我なく走り史上最強世代といわれるようになって欲しい。
 今年の競馬も終わりです。年明けは金杯から予想を載せられれば載せていきたいと思います。偉そうなことばっか書いていますが、来年も私の予想をどのような形でもいいので少しでも読んでくれた方の参考になれればと思って書いていきます。今回のコラムは以上です。