NFSのコラム

 はじめまして、NFSです。NFSとは(名もなきフリーライター志望)の略です。将来、フリーライターとして興味ある分野に関するコラムを著名なメディアで活躍するための練習としてのコラムを載せていくブログです。  ネットという広大な海の片隅でかすかに聞こえる程度の独り言ですが、少しでも耳を傾けて何かを言っていただけるとありがたいです。

レアル・マドリー

 大好きな競馬の予想と回顧はG1レースを中心に載せていきます。また、基本的にサッカーコラムを多く載せていきます。芸能、政治、他のスポーツに関しては興味の強い事柄に関して載せていく方針です。

今度はミラノがマドリードに征服される日

 2年前、ポルトガルの首都リスボンは一日だけマドリードのものになった。リスボンで行われたUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦は史上初のダービーマッチとなり、マドリードに本拠を置く2チームが激闘を繰り広げた。92分はアトレティコが勝っていたのだが、ラストプレーともいうべきコーナーキックでセルヒオ・ラモスが同点ゴールを叩き込み、試合は延長戦に。気持ちが切れたアトレティコにレアル・マドリーは猛然と襲い掛かり、結果、延長戦だけで3ゴールを決めてレアル・マドリーがラ・デシマを達成した。
 それから2年。このマドリードの両雄は再びヨーロッパ最高の舞台で合いまみえることとなった。舞台はかつてはフットボールの都と言われたミラノはサン・シーロ。きっと、ここでチャンピオンズリーグ決勝戦がダービーマッチになるとすれば、当然ミラノダービーをと多くのサッカーファンは望んでいただろうが、そもそもこの大会に参加できないくらいの体たらくを2チームが見せてしまっているから、もはやどうにもならない。ミラノ市民にとっては屈辱かもしれないが、サン・シーロでマドリードダービーが行われる。すなわち、今度はミラノがマドリードに征服されるのだ。

 今シーズンのUEFAチャンピオンズリーグは強いチームが順当に勝ち上がってきた半面、早い段階から強豪チーム同士のマッチアップが多く行われた。アーセナルはいつも通りベスト16でバルセロナ相手に無残に散り、愛すべきユヴェントスはバイエルンとの死闘に敗れた。ユヴェンティーノとしては、来シーズンに希望が持てる敗戦だったのだが、負けてしまったのはとても悲しいことだった。
 準々決勝ではマン・シティ対パリ・サンジェルマンというアラブ王族所有クラブ対決が実現し、本命視されたパリが早めにリーグ優勝を決めたことによるモチベーションの維持に苦しみ敗戦。かつてバイエルンが失敗したことをパリは繰り返してしまった。
 優勝候補の本命と言われていたバルセロナはアトレティコ・マドリーとの同国対決。バルセロナの最強攻撃ユニットMSNをアトレティコの強固な守備陣がシャットアウト。僅差の勝利ではあったが、チャンピオンズリーグ連覇の難しさとアトレティコの狡猾さが目立つ内容だった。

 そして準決勝。完全な実力差がついていたレアル・マドリー対マン・シティの試合はあくびが出るほどの凡戦。攻め手を欠くマン・シティにお付き合いしてだらっとした試合を繰り広げたレアル・マドリー。フラストレーションが溜まったクリスティアーノ・ロナウドは思わずクロスボールを手でつかんでダンクシュートを決めようとしてしまうほどだった。
 それに対してバイエルン対アトレティコ・マドリーは名勝負となった。両ゴールキーパーがPKを1本ずつ止めるワンダフルな試合となり、最後の最後まで目の離せない試合に。結果的にはアウェイゴールをもぎ取ったアトレティコが決勝進出。マドリードの両雄が決勝進出したものの、対戦相手に恵まれたにもかかわらず、なぁなぁで試合をして試合内容に疑問を抱かずにはいられないレアル・マドリーに対し、激戦に次ぐ激戦を繰り広げて劇的に決勝進出を果たしたアトレティコ・マドリーということで、なんだか対照的な2チームの試合になった。

 両チームの立ち位置は根本的には2年前からあまり変わっていない。レアル・マドリーは相変わらず出入りが激しい中でBBCユニットが結果を残しているし、アトレティコは毎年のように選手を引き抜かれているが、それに替わる選手が結果を残している。2年前のチャンピオンズリーグでブレイクしたクルトワ、ディエゴ・コスタ、フェリペ・ルイスの3人を一気にチェルシーに引き抜かれたにもかかわらず、その強さを維持しているのだから驚きである(フェリペ・ルイスは今シーズンからアトレティコに出戻り)。
 ただ、現在のチーム状態と言うことを考えると2年前とは少し状況が違ってくる。レアル・マドリーは鳴り物入りで入ったハメス・ロドリゲスがチームにフィットせずに苦しみ、偉大だと思われたカシージャスは衰えを隠せずに愛すべきチームとケンカ別れする形でチームを離れた。そして、例によって監督を変えすぎである。2年前はアンチェロッティの横でアシスタントをしていたジネディーヌ・ジダンが監督になっているのだから面白い話。そのジダンとて、グアルディオラみたいな魔法使いと言うことでもなさそうだ。すでに戦術的限界を露呈し、つまらない守備サッカーを掲げるリアリストというこのチーム特有の批判を一部では受けている。

 その一方でアトレティコは選手を抜かれたとしても2年前とはなんら変わりないチーム状況だ。クルトワの代わりに入ったオプラクは今や世界が注目する若きゴールキーパーとなったし、ディエゴ・コスタの代わりとなったグリーズマンは走れてテクニックもあって点も取れるというチーム理想のストライカーに変貌した。チームのアイドルだったフェルナンド・トーレスはついにアトレティコに帰還し、シーズン後半になると重要なゴールを決めるようになり、エル・ニーニョ完全復活を印象づけている。
 そして、このチームのベンチには2年前と同じくドン・ディエゴ・シメオネが相変わらず今にも殴りかかりそうな顔をして座っている。2年前のファイナルでも敗色濃厚となったシメオネをおちょくったヴァランに殴りかかった様は有名となり、先日のバイエルン戦でも第4審判を殴ろうとしたがギリギリで理性を取り戻して隣にいたコーチを殴るというファイティングスピリットをむき出しにしているシメオネ。
 ただ、彼のサッカーは例によってシンプルで、積極的なプレスからのカウンターである。今シーズンのプレミアリーグで奇跡の優勝をなし遂げたレスターのスタイルにも似ているが、カードの少ない洗練されたプレスを見せるレスターとは違ってより時にはカードもいとわない暴力的なプレスだ。ただ、その様はもちろん、そこからの効果的なカウンターに恐れをなした相手は何も出来ることなく軍門に下る。そのすごみは2年前よりも増している。

 2年前のファイナルはレアル・マドリーが悲願のラ・デシマに対する執念が勝りビッグイヤーを獲得した。そこに至るまでの臨戦過程や国内状況にけが人の数もレアルに味方していた。
 しかし、今年の臨戦過程は完全にアトレティコ有利である。国内リーグの死闘は最後まで続いたが、最終節を前にして脱落したのはアトレティコ。この時点で1試合はゆとりを持って試合が出来るという休みのアドヴァンテージを得ている。そして、名将候補生だった2年前とは違い、シメオネは押しも押されぬ名将だ。方やジダンは初戦は新米監督。ここでも差がついている。チャンピオンズリーグを勝ち進む過程でもゆとりを持っていると言えば聞こえはいいが、内容が伴っていないレアルと違い、アトレティコは死闘を演じてきたが皆が納得する内容で勝ってきている。この2チームの対戦でアトレティコが有利の立場で決勝戦を迎えるなんていうのは恐らく初めてではないだろうか。
 もちろん、ビッグマッチへの経験値は両者同じようなものだし、攻撃ユニットの破壊力はレアルの方が優れている。バルセロナが誇るMSNの影に隠れがちだったCR7の逆襲というのも見てみたい気もする。選手として90年代最高の選手の1人だったジダンが名将になっていく様というのも見ていたい。ただ、今年は素直にアトレティコにタイトルを取らせてあげたいし、そうなるべきだと思っている。それが、現代サッカーのトレンドは全員守備全員攻撃であるということを世界に知らしめることになるのだから。
 
 最後に試合のポイントを1つ。シメオネがいつキレるとか気にはなるけれど、試合だけを考えると、フェルナンド・トーレスがゴールを決めるかどうかにあると思う。アトレティコの象徴たるこの選手が決めるかどうかで試合が決まると思っている。もちろん、レアルはトーレスを上手く抑えれば、後はCR7が何とかしてくれる。きっとそういう試合になるに違いない。
 両チーム共にプレスの度合いは違うかもしれないが、守備をしっかりとしてからカウンターということで、派手な試合美しい試合にはならないと思う。ただ、締まった試合にはなるし見所たっぷりの試合になることは間違いない。UEFAもFIFAも組織は腐っているし、一体誰が優勝チームにビッグイヤーを渡すのかなんて言う変な見所もある。インファンティノで本当にいいのなんて、折角の美しい試合内容に水を差すことも起こりうる。まぁ、ヨーロッパリーグもそうなんだけど、代表はピークが過ぎたとはいえ、クラブシーンはまだまだスペインの時代。スペインの世界征服への旅はまだまだ続くだろう。

 今回のコラムはここまで。この大一番が終わればいよいよEURO。大国同士のつぶし合いは見られないと思うが、これもまた見所たくさんの大会だ。まぁ、詳細は次回のサッカーコラムにて、。
 以前のコラムで書いたおとぎ話はついに完結した。レスター・シティは奇跡ともいえるプレミアリーグ優勝をなし遂げた。来シーズンはチャンピオンズリーグの舞台に第1シードチームとして参加する。まぁ新参者を嫌うUEFAのことだからスペインの2位チームで今年優勝できなかったチームとか、ドイツの黄色いチームとか、異動が大変なロシアのチームとかをぶつけたりするんでしょうが・・・。ただ、少しサッカーをかじればスターティングメンバーを暗唱できるあの11人がチャンピオンズリーグの舞台でどこまでやれるかは素直に見てみたい。もちろん、岡崎慎司がその舞台でどこまでやれるかも込みであるが。まぁ、これもその時が来たらまた書きましょう。今回のコラムは以上です。
 

今年のチャンピオンズリーグは波乱の可能性あり

 日本ではいよいよ2ステージ制となったJリーグが開幕。それに先んじて始まったACLのグループリーグではJリーグ勢の体たらくが目立つのだが、これをシーズン開幕前だからという言い訳で言いくるめてはならない。そんなことを言って4・5年が経つわけだから、ACLで結果を残したければそれに見合ったピークの持っていきかたをすればいい。それをやらないという事は、ACLを軽んじていると思ってもいい。そして、Jリーグがアジアの下等リーグになるのを指をくわえて待てばいい。そんな中で日本代表の新監督にヴァヒド・ハリルホジッチ氏が正式に就任した。詳細に関しては前回のコラムを参考に。
 さて、ヨーロッパサッカーはいよいよクライマックスに向けて走り出した。ラ・リーガとリーグ・アン以外の主要リーグは優勝チームがほぼほぼ決まってしまっており、後はチャンピオンズリーグ出場権争いを楽しむぐらいだ。そんな中でチャンピオンズリーグは決勝までの道のりがはっきりとする準々決勝が始まろうとしている。
 今年は順当の中にも波乱の匂いが少しだけ感じられるようになってきた。昨年みたいにグループステージを一位で抜けたチームだけが勝ち残るのも面白いが、ジャイアントキリングがサッカーの見どころである以上、波乱が起こるのもまた面白い。

 決勝トーナメント一回戦最大の波乱はやはりチェルシーの敗退だ。プレミアリーグでぶっちぎりの首位を走り、リーグカップも優勝しており、勢いに乗っている感のあったチェルシー。一方のパリ・サンジェルマンはあれだけのスター選手を抱えながらもリーグ・アンで首位を快走することが出来ずに、シーズン無冠の懸念もある。監督力という面でもモウリーニョとブランでは圧倒的な差があることは昨シーズンの対戦で明らかになっており、選手の足し算では互角かもしれないが、他の問題から決勝トーナメント一回戦一番の好カードは思いのほか差があると思われていた。
 しかし勝ち抜いたのはパリ・サンジェルマン。アウェーゴールを持ち帰ったチェルシーがホームで試合を有利に進めた。パリはイブラヒモビッチの不可解な退場があったにもかかわらず、これでパリが一致団結し執念で勝ちあがって見せた。
 確かに今シーズンのチェルシーはFAカップ然りニューイヤーのトッテナム戦など変な負け方をすることがたまにあった。ズマの台頭はあったものの、ケーヒル、テリーに守備を任せなければならないという選手層の薄さが主力に疲労をもたらしてしまったかもしれない。モウリーニョの2年目は安泰というジンクス通り、プレミアとリーグカップは獲得できたが、3年目は抜本的な改革をしていかないとビッグイヤーは取れないのかもしれない。

 さてパリは腐っても豪華メンバー勢揃いだ。代表のキーパーにはなれないが、シリグは抜群の安定感を持ち、ディフェンスラインはブラジル代表を勢揃いさせている。モッタ、ヴェラッティ、マテュイディのトリデンテは円熟のコンビネーションを見せ、カバーニが黒子に徹するだけの忠誠心はさすがの一言。そして、スーパーマン・イブラヒモビッチはいつだってスーパーマンだ。
 チェルシー相手にスタンフォード・ブリッジで勝てたのはイブラヒモビッチが退場してしまったことで、チームが一つになれたという見方もある。イブラヒモビッチは自身のキャリアが終わりに近づいていることもあり、今シーズンがビッグイヤー獲得のラストチャンスとも言われている。大兄貴にしてスーパーマンにビッグイヤーを。これを合言葉にパリ・サンジェルマンは決勝の舞台であるベルリンへと進撃を続ける。今やパリはチャレンジャーだ。これだけのチームがチャレンジャーなのだから、王者たちは怖いはずだ。

 チャンピオンズリーグ史上最大の波乱となったのは2003-2004シーズン。マドリー、ミラン、ユヴェントス、ユナイテッドといった当時のメガクラブが相次いで敗退し、ベスト4にはアウトサイダーが勢ぞろいした。決勝はのちに名将となる監督同士の対決。モウリーニョ率いるポルトと、デシャン率いるモナコの対決となり、モウリーニョ率いるポルトが優勝した。
 ポルトはそれからもチャンピオンズリーグの常連であり、決勝トーナメントには何度も進出している。今シーズンは組み合わせに恵まれたこともあり準々決勝に難なく進出。今シーズンはまだこの大会で負けていないという事で不気味な存在となっている。注目は何と言ってもバルセロナからレンタル中のテージョ。ボヤンやドス・サントスのように中途半端な選手になると思われたが、ポルトでは大車輪の活躍を見せている。今のテージョならばバルセロナに戻っても十分にやれる。といっても、南米最強3トップの控えだろうが。
 そして、2003-2004シーズンの準優勝だったモナコがそれ以来となる準々決勝進出を成し遂げた。ロシア系大富豪の気まぐれで多くの資本が投下され、ただでさえタックスヘイブンとなっているモナコに税金逃れのために多くの選手がやってきた。
 ハメス・ロドリゲス、ファルカオといったコロンビアの両巨頭はステップアップのため移籍してしまったが、逆に小さくまとまったソリッドなチームとなった。ベルギーの新星カラスコを筆頭に若い選手が多く勢いがある。それをまとめるモウチーニョにトゥラランといったベテラン勢がスパイスとして効いている。下馬評では圧倒的に有利といわれていたアーセナルを破っての突破だけあって、このチームは準々決勝進出チームの中で一番勢いがある。2003-2004シーズンで波乱の主役となった2チーム。あのときだって、準々決勝進出時には誰もが決勝に勝ち進むなんて思わなかった。この2チームが再び波乱を巻きこしたって何ら不思議ではない。

 波乱を起こしそうなチームの存在はもちろんなのだが、今シーズンのチャンピオンズリーグを面白くしそうなのは優勝候補に付け入る隙が多いという事だ。
 まずはレアル・マドリー。前年度チャンピオンは2014シーズンは公式戦22連勝という大記録を成し遂げて向かうところ敵なし。ディマリア、シャビ・アロンソといった昨シーズンのラ・デシマ達成の原動力となった選手はいなくなってしまったものの、ト二・クロース、ハメス・ロドリゲスといった彼らよりも若くて彼らと同じぐらいの力を持つ選手を獲得できたため、連覇も大いにありうると思われていた。
 しかし、2015年に入るとチームは崩壊の兆しをみせつつある。メンバー固定性の弊害が勃発し、ハメス・ロドリゲス、モドリッチがケガで戦線を離脱し、選手層が薄くなってしまった。これによって現存戦力もバテてしまった。
 また、シーズン2年目となったベイルは守備の放棄と語学の問題が浮上し、チーム内で浮いた存在となってしまっている。ロナウドはベイルと同等の扱いになっていることに嫌悪感を示しており、ベイル外しに加担している様子。結果、稀代の才能が戦力外になりつつある。現在、ラ・リーガでは首位をバルセロナに明け渡し、チャンピオンズリーグでは昨年は楽勝だったシャルケ相手に大苦戦してしまった。

 チームを率いるアンチェロッティに対する風当たりは日増しに強くなっており、即結果を求めるペレス会長はアンチェロッティをシーズン後に解任しようなんていう動きもある。まぁ、これに関しては第一希望だったクロップがシーズン終了後にドルトムントを離れそうだからという見方もあるのだが。
 チームを調整できるタイプのアンチェロッティではあるが、崩壊に向かいつつあるチームを立て直すことは難しい人だ。政権末期のミランでもチェルシーでも、会長の圧力にさらされると脆さを見せる監督だ。今までの事を考えると、今回もこの崩壊間近のチームを立て直すことは難しいと考えている。意外なことにリーグの優勝回数とチャンピオンズリーグの優勝回数がイコールというカップ戦マスターだ。だからこそ、日常の圧力であるリーグ戦で下手を打ちやすく、短期政権になりがちだ。果たして、世界一率いるのが難しいチームはいつもの混乱に陥るのだろうか。

 今のところ問題点は見えてこないバイエルン・ミュンヘン。しかし、ワールドカップから休みなくリーグを始めたドイツ代表勢がシーズン末まで高いパフォーマンスを維持できるのかという疑問もある。また、敵なしの国内リーグの事を考えると、昨シーズンのようにモチベーションを維持できないという懸念もある。
 ピッチ外に目を移すとグアルディオラとフロントの対立が起こり始めている。元来、口を挟まれるのを嫌うグアルディオラ。バルセロナではフロントの考え方が一致していたため、揉め事は起こらなかったがバイエルンでは口を出したがるレジェンドがいっぱいいる。彼らの余計な注文にグアルディオラがうんざりしていると言われており、シーズン終了後の退任なんて言う声もある。これがピッチに影響しなければいいが。
 今のところメガクラブの中で順調なのがバルセロナ。スアレスはすんなりとチームにフィットし、シャビをベンチに追いやりつつ、ラキティッチは後継者として機能しつつある。来シーズンは制裁の関係で選手獲得が出来ない以上、今シーズンは是々非々でビッグイヤーが欲しいところ。問題はいつものことだが、優勝争いがクライマックスまで続くラ・リーガの事を考えると疲労という問題が生じること。その時はベンチを暖めているシャビ・ペドロ・イニエスタといったラ・マシアの英雄たちに助力願うという事で。
 
 というわけで優勝はバルセロナだと思う。そりゃユヴェントスに勝ってほしいが、ピルロ頼みの中盤の構成力ではヨーロッパを取るために必要な爆発力が足りない。パリには勢いがあってもここ数年で一番苦戦している国内の事を考えると、意外なところに落とし穴がありそう。少なくとも準々決勝1stレグはイブラヒモビッチが出られないので苦戦必至。
 その年ヨーロッパで一番強いクラブチームが勝つのがUEFAチャンピオンズリーグ。しかし、たまにはそこまでかなというチームが勝ったりするのがこの大会の魅力だ。それこそジョゼ・モウリーニョのような稀代の名将が出てくるのかもしれないし、メッシのような超新星が出てくるかもしれない。そういう楽しみを持っておくのもこの世界一ともいえるサッカー大会の楽しい見方という事で。

 今回のコラムはここまで。とりあえずバルセロナの優勝を予想してみたが、すべては組み合わせとクラシコ次第だと考えている。クラシコでレアル・マドリーが復活を印象付けるような強い勝ち方をすればマドリーの連覇もあり得るだろうし、バルセロナの失速も考えられる。
 ジョルジュ・メンデスの息がかかった選手をスタメンから外してスパーズ戦で大勝したユナイテッドが今の形を貫いてくれると来シーズンはヨーロッパで脅威になるチームになりそうだ。そしてそこそこいい選手を揃えてブンデスリーガで旋風を巻き起こしているヴォルフスブルグも来シーズンはヨーロッパでの戦いが楽しみなチーム。パリ相手に真っ向勝負をしているリヨン、マルセイユといったリーグアン勢も勢いがある。さすがに準々決勝に2チーム残っただけあってリーグアンには勢いがあるように思える。今シーズンもクライマックスではあるが、来シーズンのことも考えていきたい。今回のコラムは以上です。

見せかけの王者が淘汰される場所

 もう先週の話であるが、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦の組み合わせが決まった。グループステージの一位と二位が対戦し、同じ国のチームとグループステージで戦った相手とは戦わないという制限の中で組み合わせが決まる。だからなのか、毎年去年や一昨年に見たことがあるような組み合わせが再現されがちである。だからこそ、私みたいな陰謀論者は八百長だと言いたくなるわけであるが。
 今年は去年の決勝トーナメント一回戦と同じ組み合わせが二つ、準々決勝と同じ組み合わせが一つとやっぱり同じような組み合わせがある。

 パリ・サンジェルマンVSチェルシー ダヴィ・ルイスの意地を跳ね返すモウリーニョ

 セリエA選抜と言ってもいいパリ。だが、ここの所少し元気がない。JSPORTSでリーグ・アンの放映がなくなったからなのかもしれないが、パリの状況がなかなか掴めない。ただ、漏れ伝わる情報ではビエルサ・イズムが浸透したマルセイユの後塵に排しているということ。別に選手が減ったわけでもないのだが、どうもうまくいっていない様子。監督としての底を見せつつあるブラン体制も過渡期なのかもしれない。
 一方のチェルシーはまさにこの世の春。苦手ニューカッスルに無敗記録を止められたものの、それ以外は盤石。国内ではマン・シティの追い上げに苦しんでいるものの、選手層の厚さとケガ人の少なさが好調要因。モウリーニョ政権二年目は絶対にタイトルを取るというジンクスの名のもとに邁進している。

 とまぁ、ネオ金満クラブVS元祖金満クラブの対決であるが、昨年もやったのでだからどうしたというところ。ポイントは今シーズンにチェルシーからパリに移籍したダヴィ・ルイスか。
 攻撃性が売りのダヴィ・ルイスをモウリーニョはセンターハーフとして起用した。しかし、彼は元来センターバック。ただ、モウリーニョのフィロソフィーには合わなかった様子で移籍を決断。移籍先はパリ。代表でも名コンビを形成するチアゴ・シウバがいるチームだ。
 ダヴィ・ルイス自身、今シーズンにかける思いは強い。ワールドカップでは鮮烈なフリーキックをかましたものの、続くドイツ戦では集中を切らしてしまって悲劇の主役になってしまった。あれ以来、ダヴィ・ルイスの評価は少し下がってしまった。果たして、このチェルシー戦が自らの名声とプライドを取り戻す好機。強烈なフリーキックで一矢を報いることが出来るか。
 一応、ここがポイントかなと思ったのだが、昨年の試合ではいいところはなかったが、試合後にモウリーニョを驚かすなど器の大きさを見せたイブラヒモビッチがおそらくキャリア・ハイとしては最後の大舞台となるので大暴れにも期待したい。ただ、総合力、監督力ではチェルシーが圧倒的に有利。というか、チェルシーをプレミアの優勝本命としているし、ロンドンにチェルシーの試合も見に行くのでチェルシーに勝ってほしい。

 シャルケVSレアル・マドリー 今度こそ内田VSCR7

 昨年と同じこのカード。シャルケは一応ビッグイヤーを手に入れているディマッテオ監督を招聘した。グループステージ最終戦では内田の活躍もあって何とか突破。苦しいところを突破したこともあって、勝者の精神を手に入れたとみてもいいか。
 一方のレアル・マドリーは言わずもがなの絶対王者。現在のところ公式戦22連勝と向かうところ敵なし。後5連勝をすれば、伝説のヨハン・クライフ時代のアヤックスを超える公式戦連勝記録の世界記録を更新することになる。現在のマドリーに死角はないので、この記録は更新できるものとして期待している。
 
 どう考えてもレアル・マドリーが勝つと思うので、昨年と同じく内田篤人が世界一のドリブラーであるクリスティアーノ・ロナウドと戦うことに注目したい。内田自身もメッシ、ネイマール、リベリーは止められると思うし、実際に試合で止めてきたとコメントしている一方で、ロナウドはどうなるかわからない。だから戦ってみたいとコメントしている。
 昨年は内田のケガのために対戦は実現しなかった。その結果、ロナウドは自由自在にシャルケディフェンス陣を切り裂いてみせた。今年はそのリベンジ。内田がロナウドを止めることが出来れば、万が一もありうる。

 マンチェスター・シティVSバルセロナ シティの悲願、バルセロナの過渡期

 こちらもまた昨年と同じカード。昨年はバルセロナが格の違いを見せつける勝利を上げている。ただ、バルセロナは一時の圧倒的な強さを失っている。カンテラ育ちの選手を重用するティキ・タカ時代がすでに終わりを告げており、以前のような華やかさはもうない。そこにあるのはネイマール、メッシ、スアレスといった南米強豪国のスター選手を中心に据えた力任せの攻撃である。新加入のスアレスは出場停止期間があったために、まだフィットしていないが、徐々にチームに馴染みつつあり、この3人が織りなす攻撃が完成したら本当に怖い。
 一方のマン・シティ。プレミアリーグでは不安定さを見せていたが、徐々に安定してきており、チェルシーに何とか追いついてきた。例によって守備面ではコンパニ依存からは脱却できていないが、新加入のマンガラは高額な移籍金に見合う活躍をしており、コンパニがいなくても少しは何とかなるようになってきている。
 攻撃面では何と言ってもアグエロが絶好調。天下のバイエルンを相手としたグループステージ第5戦ではハットトリックの大活躍を見せて、チームをグループステージ敗退から救って見せた。今のところはケガをしているが、この大一番には間に合わせてくるはずだ。
 ヨーロッパの経験値で一歩リードしているバルセロナと、着実に経験を積んできているマン・シティ。バルセロナが力任せの攻撃に専念した結果、経験を手に入れたマン・シティが攻撃をいなして間隙を突く。そんなことも大いにありうる。勢いに乗る見せかけの勝者か。過渡期を迎えたかつての絶対王者か。この一番が今のヨーロッパを推し図る大一番になると考えているのだが。

 ユヴェントスVSドルトムント ユヴェントスが次なるステージに進むために

 半世紀も続く伝統だから仕方ないのだが、いくら経験値を積んでもヨーロッパでは勝てないのがユヴェントス。なんというかお高く留まっているイタリアの超名門だからこそ、死に物狂いの一番が多いヨーロッパの舞台では足元をすくわれがち。ということなのだろう。
 だが、今シーズンは一味違う。結果的には苦戦したものの、オリンピアコスとの戦いに競り勝って見せてグループステージを突破。これは台所事情の苦しいミランでヨーロッパを戦い、最低限の結果を残してきたアッレグリ監督の手腕によるものだろう。ユヴェンティーノの多くがコンテの後任にアッレグリという事に批判的であったが、私はアッレグリなら大丈夫と思っていたので想定していた結果だ。

 そんなユヴェントスの相手は香川真司所属のドルトムント。しかし、あの力強いドルトムントの姿はもうない。国内では不振続きで降格圏をさまよっている。とてもチャンピオンズリーグのグループステージで首位通過したチームとは思えないほどの迷走ぶりだ。
 昨シーズンも書いたのだが、ゲーゲン・プレッシングは勤続疲労を迎えつつある。ハイプレスをかけ続けるサッカーはハマれば強い。しかし、やり続けると選手の体を蝕んでいく。だからこそ、ドルトムントは野戦病院と化し、誰かがケガから帰ってくれば誰かがケガをするという状態だ。
 新加入の選手も必ずしもフィットせずに苦戦。香川も2年前とは勝手が違うチームにもがいており、クロップ監督もなにが正しいのかを見いだせずに苦悶している。今のチームに希望の光を照らしてくれる人はいない。

 ただ、ヨーロッパの経験値は本物。同じぐらいに経験豊かなアーセナルが苦戦するくらいにヨーロッパで戦うドルトムントは勇敢に見えるときがある。だからこそ、ユヴェントスにとってこの試合は分水嶺。手負いの虎を倒して初めて、ヨーロッパを制しに行くと声高に叫ぶことが出来るのだろう。仮に日本ではゴールデンウィークにあたる5月頭に行われるチャンピオンズリーグ準決勝まで勝ち進むことが出来るのであれば、私も喜んで愛すべきチームの雄姿を見るために馳せ参じよう。

 以下雑感・・・バーゼルVSポルト。なんだかどうでもいい試合。柿谷はベンチ外なので出番もないだろう。もし、出番があるのならそれで楽しみなのではあるが。いずれにしろ、勝ち上がったチームは列強チームの草刈り場必至。
 レヴァークーゼンVSアトレティコ。いつもここまでは来るレヴァークーゼン。ただ、そこから先にいつも行けないのは伝統。昨シーズンの強さを維持しているアトレティコには到底かなわない。
 アーセナルVSモナコ。ヴェンゲルにとっては自分の名声を高めさせた古巣との対戦。ただ、モナコはラッキーな形でグループステージを突破しており、チャンピオンズリーグの戦い方を知り尽くしているアーセナル相手では荷が重い。後は、2月恒例となっているアーセナルの主力離脱に一縷の望みを託すだけか。

 シャフタールVSバイエルン。混迷渦巻くドネツクから避難してサッカーを続けるシャフタール。なんだかんだでグループステージを突破するのはさすがというところ。東ウクライナに住まう一般民衆の希望となっていれば、平和という観点で考えればいい話。
 ただ、相手は神聖バイエルン帝国。今シーズンはシャビ・アロンソを実質トレードで獲得し、ボールを散らせるアンカーというグアルディオラが最も欲しかった選手を手に入れている。また、世界一の選手とも言うべきノイアーの天才的な飛び出し能力を最大限に使ったワンバックシステムもたまに用いて機能させている。システムの引き出しの多さは世界一。多分、この勢いのままにビッグイヤーに突き進んでいくだろう。問題は昨シーズンと同じでモチベーションを保てるか否か。

 今回のコラムはここまで。駆け足で書いてみた。毎年のことだが試合は2月3月。ケガ人の状態と国内リーグの状態と色々と読みが難しいのはいつもの話。
 ただ、パリ、マン・シティといった見せかけの金満チームには試練の試合となった。まぁ、プラティニはフランスびいきよりもファイナンシャル・フェアプレー遵守にシフトしたみたいだから仕方ないか。正義はいつもプラティニなんだから、そこに逆らってはいけない。
 懸案のトッテナムだが、何とか調子を上げてきている。これで年末年始に私が見に行く試合はマッチ・オブ・ザ・デイになってくれそうだ。いい限り。
 色々と気をもむ事案があるので書くのもこれだけ。有馬記念の予想をお楽しみに。今回のコラムは以上です。

プレミア、リーガ、セリエA優勝予想

 欧州の移籍市場もようやくクローズ。例によってドタバタ移籍劇が繰り広げられたわけだが、近年は8月半ばにシーズンが開幕するのが一般化したため、開幕後に露呈した問題を対処するための補強をすることもできるようになった。だからこそのドタバタ劇なのだろうが。
 戦力がはっきりしたところでようやくリーグの勢力図が見えてきた。というわけで優勝予想コラムを書いていきたい。なお、いくらドルトムントががんばってもバイエルンの牙城は揺るぎようもないブンデスと、どうせパリが楽勝するリーグ・アンに関しては割愛したい。

 プレミアリーグ モウリーニョはいつだって盤石だ

 アディダスとシボレーとの新パートナーシップ契約によって溢れるほどの資金を手に入れたがために暴走を始めたユナイテッド。前線だけを厚くして、懸案事項のセンターラインの補強を怠る姿は10年前のレアル・マドリーのそれを思わせる。もっともプレミアリーグで優勝してきたチームではあるが、ギグスが監督として独り立ちするまでは混迷期が続くだろう。
 というわけで優勝争いは元祖金満クラブのチェルシーと二代目金満クラブであるマン・シティとの一騎打ち。共に今シーズンは余剰人員を整理し、懸案事項を補う補強が出来た。ただ、マン・シティはいよいよビッグイヤーを取るための戦いをしなければならない。デッドオアアライブの経験が乏しいこのチームが果たしてシーズン終盤までスタミナを維持できるのかといわれると少し気になる。というわけで、チェルシーを本命に。

 懸案だったのは世代交代とセンターフォワードの獲得。ランパード、アシュリー・コールが退団し、トーレスをお払い箱に押し込んだ一方で、ロンドンに帰ってきたがっていたセスクを獲得し、アトレティコからクルトワが戻ってただけなく、フェリペ・ルイスとジエゴ・コスタを獲得した。とりわけ、ジエゴ・コスタはモウリーニョが欲したボックストゥボックスで戦える選手だ。
 開幕直後からジエゴ・コスタは機能してみせており、大金に見合う結果を残しているとみていい。サイドからはワールドカップで活躍したアザールとシュールレが飛び込んでくる。中盤ではセスクがランパードに替わってゲームをコントロールする。確かにセンターバックの世代交代は進んでいないが、フェリペ・ルイスがフィットすれば、イバノビッチがセンターバックを務めればいい。それで事足りる。
 モウリーニョ政権も2年目となった。昨シーズンは自分の思い通りの補強が出来ない中でも、最低限の結果を残してきた。さすがはモウリーニョといったところだ。2年目のシーズンとなった今年は思い通りの補強を行い、世代交代を成功させた今シーズンのチェルシーは盤石だ。モウリーニョ・チェルシーは新たな王朝を築き上げ、まぐれで手に入れた3年前とは違って実力でビッグイヤーを掴みとったっておかしくない。

 二番手にはマン・シティ。3番手にはスアレスを売ったお金で複数選手を獲得したリヴァプール。選手層を厚くしたことで、チャンピオンズリーグとの併用であってもしっかりと戦えるだけのメンバーを整えた。優勝まではいけないまでもユナイテッドの体たらくを考えると、3番手は問題ないか。
 4位にはいつものアーセナル。サンチェスとドゥビシーの獲得に加えて、ウェルベックも獲得できたので、選手の質は向上した。年末年始とチャンピオンズリーグベスト16の戦いが行われる3月に調子を崩す悪癖がこれらの補強で払拭されれば逆転もありうるが、そう簡単には難しいか。来年に向けた礎となるシーズンと考えたい。

 リーガ・エスパニョーラ アンチェロッティなら大丈夫。だよね?

 リスボンを征服したマドリードの両雄に、メッシ ネイマール スアレスといった南米のクラックが勢ぞろいしたバルセロナによる3強争いによって争われるリーガの覇権。そんな中でも昨シーズンはヨーロッパを制したレアル・マドリーを優勝の本命としたい。
 昨シーズンはラ・デシマに全力を注いだマドリー。ラ・デシマこそ達成したものの、その代償をブラジルで支払った選手が多かったのは有名な話。まぁ、マドリーにとってはどうでもいい話。
 ラ・デシマ達成に尽力を尽くしたディマリアとシャビ・アロンソを放出し、ワールドカップで活躍したハメス・ロドリゲスとクロースを獲得。また、衰えてきたカシージャスに替わる選手として、これまたワールドカップで活躍したナバスを獲得するといったミーハーな補強を行った。

 ディマリアにシャビ・アロンソといったチームにバランスをもたらす選手を放出したのは気になるところ。その理由がペレス会長主導の元、ユニフォームの売れる選手を欲し、ユニフォームの売れない選手はいらないという原理主義に基づいているのだから変な話。
 だが、キャリアハイとなったディマリアと下り坂に向かうシャビ・アロンソを放出し、成長中のハメスとキャリアハイのクロースを獲得したのは、世代交代の観点から見れば理にかなった補強なのかもしれない。ともすれば、イジャラメンディが成長してくれれば、シャビ・アロンソの替わりは務まるとみていい。
 もっとも、ヴァランに続くセンターバックを獲得しなければならないと思ったりもする。乱闘王子ペペにセルヒオ・ラモスといったマドリー盤石のセンターバックは、ペレス会長が会長でないときに獲得した選手であり、ペレス会長がディフェンスの補強に興味がないのは明らか。ここが後々アキレス腱とならなければないが。
 昨シーズンよりも前がかりになり、バランスが欠けてしまっているきらいはある。それでも、レアル・マドリーという難しいクラブで就任一年目でビッグイヤーを掲げてみせたアンチェロッティの豪腕であれば、ねじ伏せてしまうかもしれない。と、信じたい。

 バルセロナはフィロソフィーを捨てて外様に頼る具合に。セスクを放出しラキティッチに賭け、ペドロをベンチに追いやってスアレスに賭けるという様は、あのグアルディオラ期の完璧なバルセロナとは程遠い。ルイス・エンリケは確かにバルセロナOBで名監督の可能性もある。しかし、癖の強いルイス・エンリケにアレルギー反応を起こしてもおかしくない。バルセロナが復活するとすれば、帝王学を学んだプジョールが監督になった時なのかもしれない。
 昨シーズンはリーガを獲得し、ビッグイヤーを掲げる寸前のところまでいったアトレティコ・マドリー。ジエゴ・コスタ、フェリペ・ルイス、クルトワをいずれもチェルシーに行ってしまったが、そのお金で放出選手の穴を埋める補強は出来た。マンジュキッチは計算できるし、グリーズマンは無限の可能性を持っている。
 問題は、今シーズンもチャレンジャーでいられるかどうかだ。アトレティコを率いるシメオネはチャレンジャーだからこそ強さを発揮できたとコメントしている。リーガを制し、ヨーロッパさえも征服できる力を持ったチームがいつまでもチャレンジャーでいられるとは思えない。追われる立場になった時に同じだけの強さを発揮できるのか否か。名将シメオネの真価が問われるシーズンになりそうだ。

 セリエA それでも僕はアッレグリを信じる

 ユヴェンティーノである以上、ユヴェントスを信じないわけにはいかない。サンチェスもファルカオも獲得できなかったのは非常に残念だが、ビダルもポグバも残留してくれたので、戦力ダウンがなかっただけましと考えるべきか。詳細は以前のコラムで書いたのでそちらを参照して頂きたい。ただ、モラタもエヴラもそんなに必要な選手とは思えないのだが。
 アッレグリはユヴェントスのイズムを引き継ぐに足る監督ではないという疑問符もある。だが、斜陽のミランを率いて結果を残してきた戦術家はコンテの築き上げた王朝に上積みを与えられる監督だと考えている。後は癖があり勝者の味を知るベテラン勢を引き付けられるのかだ。アッレグリはモウリーニョタイプの俺様監督であるだけに、揉め事が起きないという保証はない。それでも僕はアッレグリを信じたい。

 新GMの元、効果的な補強をここ数年を行ってきたローマはいよいよトッティ依存から脱却できそうだ。ヨーロッパとの兼ね合いをもできる選手構成を手に入れた。チャンピオンズリーグでは死の組に入ったこともあり、グループリーグ敗退の可能性は高い。だからこそ、セリエAで優勝争いが出来る。
 ビルバオとの死闘に敗れたナポリはモチヴェーションが問題。メンバーは揃っており、ベニテス政権も2年目で戦術も浸透してきている。スクデット奪取に目標を切り替えられれば、逆転もありうるがミランに足元をすくわれるなんて考えたりもして。

 先週のコラムでも書いたが、ミランは好調だ。日本人としては本田が活きる形としてシステムを4-2-3-1に変えてくれればなおよいのだが、別にローテーションも使いながらという形でもいいから、メネズ エルシャーラウィ 本田 トーレスの攻撃陣を使いこなせれば、スクデットだってありうる。ヨーロッパを戦わなくてもいいミランは旋風を起こすに足る。
 方やインテルはラベッシ獲得に失敗。懸案であった前線の補強はなされなかった。コバチッチやイカルディの成長に期待するのだろうが、高望みしすぎと考える。ヨーロッパリーグもあるので、現状維持が出来れば万々歳。

 今回のコラムはここまで。次回のコラムではアギーレ体制がスタートした日本代表のフレンドリーマッチの様子を見ていきたい。
 バイエルン帝国健在と書いたものの、香川が入ったドルトムントは選手層がぐっと増した。バイエルン勢がワールドカップの疲労に苦しむようならば、まさかまさかもありうるということは付け加えておきたい。
 まったくもってやりきれないこともある。せっかくお布施を払っているのだから、御利益の一つ二つはあってもいいものだ。ただ、当たり前のご利益はあっても、心底うれしいご利益は全くない。余計なことをしてくれなければいいものを。このままだと熱が冷めていったりもする。今回のコラムは以上です。

大博打を打ったシメオネ 的確に弱点を突いたアンチェロッティ

 ファン・カルロス国王もリスボンに駆け付けたチャンピオンズリーグファイナルはやはり、スペインによるリスボン侵略としか見えなかった。ピッチを躍動すべきポルトガル人は一人はケガのためベンチを温め、一人は先発出場の役目を果たせずに途中交代をし、もう一人は最後の最後で見せ場があったものの、110分ぐらいは大した活躍が出来なかった。エスタディオ・ダ・ルスの主はヨーロッパの決勝で勝てない呪いに囚われている。ポルトガル人のリスボン市民のプライドを取り戻す舞台は、再来月のマラカナンとなることを願うしかないか。

 史上初のダービーマッチとなったチャンピオンズリーグファイナル。ブックメーカーのオッズはレアル・マドリー有利を予想していたが、直近のリーガを制したアトレティコの勢いと今シーズンのリーガではアトレティコに分があったことから、チームの格なんて当てにならない五分の勝負になると予想されていた。
 先発メンバーから異常な注目を集める決勝戦。レアル・マドリーのポイントは出場停止となったシャビ・アロンソの代役は誰なのか、ペペとマルセロはケガから復帰できるのかという点。アトレティコのポイントはジエゴ・コスタ、アルダはケガから復帰できるのかという点であった。
 フタを開けてみるとシャビ・アロンソの代役は予想されたイジャラメンディではなく、ボールイータータイプのケディラ。ペペとマルセロは間に合わず、それぞれヴァラン、コエントラオが代役にあてられた。そして、驚いたのはアトレティコ。間に合うとされたアルダが間に合わず、間に合わないとされたジエゴ・コスタを先発出場させてきたのだ。
 
 そんなジエゴ・コスタであったが、出場時間はわずか9分。ピッチ上に倒れ込むでもなく颯爽とピッチを後にしていき、アドリアン・ロペスと交代していった。この交代劇にはさまざまな意見がある。
 私はシメオネのギャンブルだったと思える。そして、シメオネはそのギャンブルに勝ったとみている。間に合わないとされた絶対的エース。彼がピッチに立つことで、レアル・マドリー側としてはアトレティコお得意のカウンターに試合開始早々から餌食になってしまうことを恐れてしまう。結果、試合の入りはアトレティコが主導権を握ることになった。
 一方のレアル・マドリーはボールの出しどころとなるべきところがなく、BBCに効果的なボールが供給される機会が非常に少なかった。ケディラの起用はアトレティコのカウンターの芽を摘む役割だったのだろうが、ペースを掴んだアトレティコは中央でボールの取り合いをせずに、サイドからボールを奪ってカウンターという戦術を取ったため、ケディラの存在は消えてしまった。
 レアル・マドリーが思い通りの試合を進められていないのは明らかで、UEFAの国際映像がたびたび出場停止でピッチに立てずベンチにも座れずにスーツを着て試合の趨勢を見守るシャビ・アロンソを盛んに映し出していた。不安そうにピッチを見つめるシャビ・アロンソの姿からもレアル・マドリーの苦境が想像できた。

 試合はカシージャスのミスからアトレティコが流れそのままに先制点を決めた。後半開始早々も決定機はアトレティコに訪れ、アトレティコがいたずらに時間を使わせる展開に。
 これではまずいとアンチェロッティはケディラとコエントラオを下げて、イスコとマルセロをピッチに送り出した。ゴールが必要な場面で必要なのは、ボールを相手ゴールに近づかせること。ケディラではボールを前に出せず、イジャラメンディではボールが捕られてしまう。そこで、イスコを投入することでドリブルを中心にボールを前に出していくことにした。それに加えて、サイドバックにはより前に出ていくマルセロにすることで推進力をチームにもたらせた。
 これは、結果的に試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたディマリアが2列目から効果的なドリブルでチャンスを作り出していたことに遠因する。BBCのスピードではなく、ディマリアの細かいドリブルがアトレティコには効果的だった。追い込まれた試合展開の中でアンチェロッティは、しっかりとアトレティコの弱点を分析していた。

 小刻みなドリブルで仕掛けてくるレアル・マドリーの攻撃によって、アトレティコの守備はジワリジワリと消耗していった。しかも、逃げ切るために必死になっているため消耗のスピードは速い。だからこそ、最後の最後に脚が止まってしまい、90分の中では最後のチャンスであったレアル・マドリーのコーナーキックでアトレティコの守備陣はセルヒオ・ラモスのマークに付ききれなかったのだと考える。
 さすがに追いつかれてしまったアトレティコと追いついたレアル・マドリーでは勢いに圧倒的な差があったため、延長戦に入ると流れは完全にレアル・マドリー。アトレティコとしてはなんとかPK戦まで持ち込めばもしかしたらもあったかもしれないが、交代枠を使い切っている以上、流れは変えられない。レアル・マドリーが決勝ゴールを入れて、悲願のラ・デシマを手繰り寄せた。

 一気に名将の階段を駆け上がったシメオネと監督として数多の名声を手にしてきたアンチェロッティの対決となった今回のチャンピオンズリーグ決勝戦。監督としての経験値も選手の絶対的な能力差を覆すためにシメオネはボール奪取に重きを置く戦術を完成させて、試合の入りを自分の流れに引き寄せるための大博打を打った。大博打に成功し、この一戦を互角の勝負に持ち込んだシメオネはさすがだ。
 勝負を見極める目はすでに世界的な名将。選手の大量流出といっても、4人も5人も抜かれるわけではないのだから、今シーズン開幕時に見せたような効果的な補強を行うことで、来シーズンもリーガでは優勝争いに食い込めるだろう。ただ、チャンピオンズリーグとなると、昨シーズンのドルトムントのように勤続疲労にさいなまれるとみている。そこで、大きく落ち込まなければ、シメオネは真のメガクラブだったりアルゼンチン代表監督も務められるはずだ。

 方やアンチェロッティ。若き名将のギャンブルを受け止める一方で受け流す策をしっかりと思いつき、結果を残すのは本物の名将だからこそできること。ミラン監督就任以降は革新的な戦術で一世を風靡し、率いるチーム全てでタイトルを掲げてきた優勝請負人だ。監督として掲げたビッグイヤーの数は3度。現役の監督では最多の数となる。モウリーニョのようなカリスマ性もグアルディオラのような革新性もない。粛々と仕事をこなすアンチェロッティは彼ら二人よりは目立たないが彼らよりも結果を残す名将だ。
 そんなアンチェロッティの副官としてさかんにこの試合でもカメラが抜かれていたのがジネディーヌ・ジダンだ。フランスの英雄はユヴェントス時代にアンチェロッティの下でプレーをしていた。最もジダンを効果的に使っていたとは思えないが、ジダンはアンチェロッティの下で監督学を学んでいる。あまり派手に喜ばない師に替わってラモスの同点ゴールもベイルの逆転ゴールも大喜びしていたジダン。彼がアンチェロッティのフィロソフィーを受け継いで監督としてチャレンジをしていくはずだ。
 意外なことにアンチェロッティにはまだ著名な弟子がいない。モウリーニョはリヴァプールのロジャースやゼニトのヴィラス・ボアスみたいな弟子がおり、グアルディオラには今は亡きビラノバや今度バルセロナを率いるルイス・エンリケが弟子筋にあたる。ジダンがアンチェロッティの著名な弟子一号になることを期待したい。

 選手個々人の技量というよりかは監督の戦術に注目が集まった気がするUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦。今年はボールを前へ前へと運ぶ推進力がヨーロッパの頂点に立った。それに立ち向かったボールを喰らう戦術も最先端の戦術として、トレンドになっていくはずだ。こちらのほうがゲーゲン・プレッシングよりは疲れないだろうし。
 そして、チャンピオンズリーグには劣るものの、サッカー戦術見本市とされるワールドカップが開催される。果たして、シメオネ的戦術やアンチェロッティ的戦術が早速ワールドカップで代表チームが採用することはあるのだろうか。それとも、この二つを上回る革新的な戦術が披露されるのか。ワールドカップもチャンピオンズリーグも確かに主役は選手である。だが、監督目線で戦術を発見するのもサッカーの別の見方であり、面白い見方だ。
 正直言って、アトレティコはゲームを作るアルダが怪我で出場できず、フィニッシャーのジエゴ・コスタが満足にプレーできない状況であって選手の質としては魅力がなかった。レアル・マドリーもまた同じで、ロナウドはケガ明けでコンディションが芳しくなく、ベイルも徹底マークで行き場を失っていた。唯一輝いたのがディマリアということで、かろうじてこちらの方が選手の質としては魅力的であったが、好調期のレアル・マドリーと比べると数枚も劣るデキだった。
 だからこそ、監督と戦術に注目しなければならない決勝戦になったとみている。それはそれで、いつもと違ったチャンピオンズリーグ決勝戦の見方が出来たことは非常に満足である。

 今回のコラムはここまで。このコラムでは今年は最高のチャンピオンズリーグになると思っていた。それにふさわしい準々決勝の死闘だったし、準決勝は前評判を覆すような圧倒的な差でマドリードの両雄が決勝に勝ち上がってきた。決勝戦は派手な試合ではなく、サッカーに詳しくない人は眠くなるような試合かも知れない。しかし、剣豪同士がつばぜり合いをするような試合は非常に飽きのこない見ごたえ十分の試合であった。
 こういう試合を面白いと思える人が一人でも多く日本人で出てきてくれれば、日本のサッカー民度も上がるのだが。いかんせん、日本のサッカーはワーキャー言う代表戦と代表選手が大正義になっているため、この壁を乗り越えるのは少し難しいか。今回のコラムは以上です。
 
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