2年前、ポルトガルの首都リスボンは一日だけマドリードのものになった。リスボンで行われたUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦は史上初のダービーマッチとなり、マドリードに本拠を置く2チームが激闘を繰り広げた。92分はアトレティコが勝っていたのだが、ラストプレーともいうべきコーナーキックでセルヒオ・ラモスが同点ゴールを叩き込み、試合は延長戦に。気持ちが切れたアトレティコにレアル・マドリーは猛然と襲い掛かり、結果、延長戦だけで3ゴールを決めてレアル・マドリーがラ・デシマを達成した。
それから2年。このマドリードの両雄は再びヨーロッパ最高の舞台で合いまみえることとなった。舞台はかつてはフットボールの都と言われたミラノはサン・シーロ。きっと、ここでチャンピオンズリーグ決勝戦がダービーマッチになるとすれば、当然ミラノダービーをと多くのサッカーファンは望んでいただろうが、そもそもこの大会に参加できないくらいの体たらくを2チームが見せてしまっているから、もはやどうにもならない。ミラノ市民にとっては屈辱かもしれないが、サン・シーロでマドリードダービーが行われる。すなわち、今度はミラノがマドリードに征服されるのだ。
今シーズンのUEFAチャンピオンズリーグは強いチームが順当に勝ち上がってきた半面、早い段階から強豪チーム同士のマッチアップが多く行われた。アーセナルはいつも通りベスト16でバルセロナ相手に無残に散り、愛すべきユヴェントスはバイエルンとの死闘に敗れた。ユヴェンティーノとしては、来シーズンに希望が持てる敗戦だったのだが、負けてしまったのはとても悲しいことだった。
準々決勝ではマン・シティ対パリ・サンジェルマンというアラブ王族所有クラブ対決が実現し、本命視されたパリが早めにリーグ優勝を決めたことによるモチベーションの維持に苦しみ敗戦。かつてバイエルンが失敗したことをパリは繰り返してしまった。
優勝候補の本命と言われていたバルセロナはアトレティコ・マドリーとの同国対決。バルセロナの最強攻撃ユニットMSNをアトレティコの強固な守備陣がシャットアウト。僅差の勝利ではあったが、チャンピオンズリーグ連覇の難しさとアトレティコの狡猾さが目立つ内容だった。
そして準決勝。完全な実力差がついていたレアル・マドリー対マン・シティの試合はあくびが出るほどの凡戦。攻め手を欠くマン・シティにお付き合いしてだらっとした試合を繰り広げたレアル・マドリー。フラストレーションが溜まったクリスティアーノ・ロナウドは思わずクロスボールを手でつかんでダンクシュートを決めようとしてしまうほどだった。
それに対してバイエルン対アトレティコ・マドリーは名勝負となった。両ゴールキーパーがPKを1本ずつ止めるワンダフルな試合となり、最後の最後まで目の離せない試合に。結果的にはアウェイゴールをもぎ取ったアトレティコが決勝進出。マドリードの両雄が決勝進出したものの、対戦相手に恵まれたにもかかわらず、なぁなぁで試合をして試合内容に疑問を抱かずにはいられないレアル・マドリーに対し、激戦に次ぐ激戦を繰り広げて劇的に決勝進出を果たしたアトレティコ・マドリーということで、なんだか対照的な2チームの試合になった。
両チームの立ち位置は根本的には2年前からあまり変わっていない。レアル・マドリーは相変わらず出入りが激しい中でBBCユニットが結果を残しているし、アトレティコは毎年のように選手を引き抜かれているが、それに替わる選手が結果を残している。2年前のチャンピオンズリーグでブレイクしたクルトワ、ディエゴ・コスタ、フェリペ・ルイスの3人を一気にチェルシーに引き抜かれたにもかかわらず、その強さを維持しているのだから驚きである(フェリペ・ルイスは今シーズンからアトレティコに出戻り)。
ただ、現在のチーム状態と言うことを考えると2年前とは少し状況が違ってくる。レアル・マドリーは鳴り物入りで入ったハメス・ロドリゲスがチームにフィットせずに苦しみ、偉大だと思われたカシージャスは衰えを隠せずに愛すべきチームとケンカ別れする形でチームを離れた。そして、例によって監督を変えすぎである。2年前はアンチェロッティの横でアシスタントをしていたジネディーヌ・ジダンが監督になっているのだから面白い話。そのジダンとて、グアルディオラみたいな魔法使いと言うことでもなさそうだ。すでに戦術的限界を露呈し、つまらない守備サッカーを掲げるリアリストというこのチーム特有の批判を一部では受けている。
その一方でアトレティコは選手を抜かれたとしても2年前とはなんら変わりないチーム状況だ。クルトワの代わりに入ったオプラクは今や世界が注目する若きゴールキーパーとなったし、ディエゴ・コスタの代わりとなったグリーズマンは走れてテクニックもあって点も取れるというチーム理想のストライカーに変貌した。チームのアイドルだったフェルナンド・トーレスはついにアトレティコに帰還し、シーズン後半になると重要なゴールを決めるようになり、エル・ニーニョ完全復活を印象づけている。
そして、このチームのベンチには2年前と同じくドン・ディエゴ・シメオネが相変わらず今にも殴りかかりそうな顔をして座っている。2年前のファイナルでも敗色濃厚となったシメオネをおちょくったヴァランに殴りかかった様は有名となり、先日のバイエルン戦でも第4審判を殴ろうとしたがギリギリで理性を取り戻して隣にいたコーチを殴るというファイティングスピリットをむき出しにしているシメオネ。
ただ、彼のサッカーは例によってシンプルで、積極的なプレスからのカウンターである。今シーズンのプレミアリーグで奇跡の優勝をなし遂げたレスターのスタイルにも似ているが、カードの少ない洗練されたプレスを見せるレスターとは違ってより時にはカードもいとわない暴力的なプレスだ。ただ、その様はもちろん、そこからの効果的なカウンターに恐れをなした相手は何も出来ることなく軍門に下る。そのすごみは2年前よりも増している。
2年前のファイナルはレアル・マドリーが悲願のラ・デシマに対する執念が勝りビッグイヤーを獲得した。そこに至るまでの臨戦過程や国内状況にけが人の数もレアルに味方していた。
しかし、今年の臨戦過程は完全にアトレティコ有利である。国内リーグの死闘は最後まで続いたが、最終節を前にして脱落したのはアトレティコ。この時点で1試合はゆとりを持って試合が出来るという休みのアドヴァンテージを得ている。そして、名将候補生だった2年前とは違い、シメオネは押しも押されぬ名将だ。方やジダンは初戦は新米監督。ここでも差がついている。チャンピオンズリーグを勝ち進む過程でもゆとりを持っていると言えば聞こえはいいが、内容が伴っていないレアルと違い、アトレティコは死闘を演じてきたが皆が納得する内容で勝ってきている。この2チームの対戦でアトレティコが有利の立場で決勝戦を迎えるなんていうのは恐らく初めてではないだろうか。
もちろん、ビッグマッチへの経験値は両者同じようなものだし、攻撃ユニットの破壊力はレアルの方が優れている。バルセロナが誇るMSNの影に隠れがちだったCR7の逆襲というのも見てみたい気もする。選手として90年代最高の選手の1人だったジダンが名将になっていく様というのも見ていたい。ただ、今年は素直にアトレティコにタイトルを取らせてあげたいし、そうなるべきだと思っている。それが、現代サッカーのトレンドは全員守備全員攻撃であるということを世界に知らしめることになるのだから。
最後に試合のポイントを1つ。シメオネがいつキレるとか気にはなるけれど、試合だけを考えると、フェルナンド・トーレスがゴールを決めるかどうかにあると思う。アトレティコの象徴たるこの選手が決めるかどうかで試合が決まると思っている。もちろん、レアルはトーレスを上手く抑えれば、後はCR7が何とかしてくれる。きっとそういう試合になるに違いない。
両チーム共にプレスの度合いは違うかもしれないが、守備をしっかりとしてからカウンターということで、派手な試合美しい試合にはならないと思う。ただ、締まった試合にはなるし見所たっぷりの試合になることは間違いない。UEFAもFIFAも組織は腐っているし、一体誰が優勝チームにビッグイヤーを渡すのかなんて言う変な見所もある。インファンティノで本当にいいのなんて、折角の美しい試合内容に水を差すことも起こりうる。まぁ、ヨーロッパリーグもそうなんだけど、代表はピークが過ぎたとはいえ、クラブシーンはまだまだスペインの時代。スペインの世界征服への旅はまだまだ続くだろう。
今回のコラムはここまで。この大一番が終わればいよいよEURO。大国同士のつぶし合いは見られないと思うが、これもまた見所たくさんの大会だ。まぁ、詳細は次回のサッカーコラムにて、。
以前のコラムで書いたおとぎ話はついに完結した。レスター・シティは奇跡ともいえるプレミアリーグ優勝をなし遂げた。来シーズンはチャンピオンズリーグの舞台に第1シードチームとして参加する。まぁ新参者を嫌うUEFAのことだからスペインの2位チームで今年優勝できなかったチームとか、ドイツの黄色いチームとか、異動が大変なロシアのチームとかをぶつけたりするんでしょうが・・・。ただ、少しサッカーをかじればスターティングメンバーを暗唱できるあの11人がチャンピオンズリーグの舞台でどこまでやれるかは素直に見てみたい。もちろん、岡崎慎司がその舞台でどこまでやれるかも込みであるが。まぁ、これもその時が来たらまた書きましょう。今回のコラムは以上です。
それから2年。このマドリードの両雄は再びヨーロッパ最高の舞台で合いまみえることとなった。舞台はかつてはフットボールの都と言われたミラノはサン・シーロ。きっと、ここでチャンピオンズリーグ決勝戦がダービーマッチになるとすれば、当然ミラノダービーをと多くのサッカーファンは望んでいただろうが、そもそもこの大会に参加できないくらいの体たらくを2チームが見せてしまっているから、もはやどうにもならない。ミラノ市民にとっては屈辱かもしれないが、サン・シーロでマドリードダービーが行われる。すなわち、今度はミラノがマドリードに征服されるのだ。
今シーズンのUEFAチャンピオンズリーグは強いチームが順当に勝ち上がってきた半面、早い段階から強豪チーム同士のマッチアップが多く行われた。アーセナルはいつも通りベスト16でバルセロナ相手に無残に散り、愛すべきユヴェントスはバイエルンとの死闘に敗れた。ユヴェンティーノとしては、来シーズンに希望が持てる敗戦だったのだが、負けてしまったのはとても悲しいことだった。
準々決勝ではマン・シティ対パリ・サンジェルマンというアラブ王族所有クラブ対決が実現し、本命視されたパリが早めにリーグ優勝を決めたことによるモチベーションの維持に苦しみ敗戦。かつてバイエルンが失敗したことをパリは繰り返してしまった。
優勝候補の本命と言われていたバルセロナはアトレティコ・マドリーとの同国対決。バルセロナの最強攻撃ユニットMSNをアトレティコの強固な守備陣がシャットアウト。僅差の勝利ではあったが、チャンピオンズリーグ連覇の難しさとアトレティコの狡猾さが目立つ内容だった。
そして準決勝。完全な実力差がついていたレアル・マドリー対マン・シティの試合はあくびが出るほどの凡戦。攻め手を欠くマン・シティにお付き合いしてだらっとした試合を繰り広げたレアル・マドリー。フラストレーションが溜まったクリスティアーノ・ロナウドは思わずクロスボールを手でつかんでダンクシュートを決めようとしてしまうほどだった。
それに対してバイエルン対アトレティコ・マドリーは名勝負となった。両ゴールキーパーがPKを1本ずつ止めるワンダフルな試合となり、最後の最後まで目の離せない試合に。結果的にはアウェイゴールをもぎ取ったアトレティコが決勝進出。マドリードの両雄が決勝進出したものの、対戦相手に恵まれたにもかかわらず、なぁなぁで試合をして試合内容に疑問を抱かずにはいられないレアル・マドリーに対し、激戦に次ぐ激戦を繰り広げて劇的に決勝進出を果たしたアトレティコ・マドリーということで、なんだか対照的な2チームの試合になった。
両チームの立ち位置は根本的には2年前からあまり変わっていない。レアル・マドリーは相変わらず出入りが激しい中でBBCユニットが結果を残しているし、アトレティコは毎年のように選手を引き抜かれているが、それに替わる選手が結果を残している。2年前のチャンピオンズリーグでブレイクしたクルトワ、ディエゴ・コスタ、フェリペ・ルイスの3人を一気にチェルシーに引き抜かれたにもかかわらず、その強さを維持しているのだから驚きである(フェリペ・ルイスは今シーズンからアトレティコに出戻り)。
ただ、現在のチーム状態と言うことを考えると2年前とは少し状況が違ってくる。レアル・マドリーは鳴り物入りで入ったハメス・ロドリゲスがチームにフィットせずに苦しみ、偉大だと思われたカシージャスは衰えを隠せずに愛すべきチームとケンカ別れする形でチームを離れた。そして、例によって監督を変えすぎである。2年前はアンチェロッティの横でアシスタントをしていたジネディーヌ・ジダンが監督になっているのだから面白い話。そのジダンとて、グアルディオラみたいな魔法使いと言うことでもなさそうだ。すでに戦術的限界を露呈し、つまらない守備サッカーを掲げるリアリストというこのチーム特有の批判を一部では受けている。
その一方でアトレティコは選手を抜かれたとしても2年前とはなんら変わりないチーム状況だ。クルトワの代わりに入ったオプラクは今や世界が注目する若きゴールキーパーとなったし、ディエゴ・コスタの代わりとなったグリーズマンは走れてテクニックもあって点も取れるというチーム理想のストライカーに変貌した。チームのアイドルだったフェルナンド・トーレスはついにアトレティコに帰還し、シーズン後半になると重要なゴールを決めるようになり、エル・ニーニョ完全復活を印象づけている。
そして、このチームのベンチには2年前と同じくドン・ディエゴ・シメオネが相変わらず今にも殴りかかりそうな顔をして座っている。2年前のファイナルでも敗色濃厚となったシメオネをおちょくったヴァランに殴りかかった様は有名となり、先日のバイエルン戦でも第4審判を殴ろうとしたがギリギリで理性を取り戻して隣にいたコーチを殴るというファイティングスピリットをむき出しにしているシメオネ。
ただ、彼のサッカーは例によってシンプルで、積極的なプレスからのカウンターである。今シーズンのプレミアリーグで奇跡の優勝をなし遂げたレスターのスタイルにも似ているが、カードの少ない洗練されたプレスを見せるレスターとは違ってより時にはカードもいとわない暴力的なプレスだ。ただ、その様はもちろん、そこからの効果的なカウンターに恐れをなした相手は何も出来ることなく軍門に下る。そのすごみは2年前よりも増している。
2年前のファイナルはレアル・マドリーが悲願のラ・デシマに対する執念が勝りビッグイヤーを獲得した。そこに至るまでの臨戦過程や国内状況にけが人の数もレアルに味方していた。
しかし、今年の臨戦過程は完全にアトレティコ有利である。国内リーグの死闘は最後まで続いたが、最終節を前にして脱落したのはアトレティコ。この時点で1試合はゆとりを持って試合が出来るという休みのアドヴァンテージを得ている。そして、名将候補生だった2年前とは違い、シメオネは押しも押されぬ名将だ。方やジダンは初戦は新米監督。ここでも差がついている。チャンピオンズリーグを勝ち進む過程でもゆとりを持っていると言えば聞こえはいいが、内容が伴っていないレアルと違い、アトレティコは死闘を演じてきたが皆が納得する内容で勝ってきている。この2チームの対戦でアトレティコが有利の立場で決勝戦を迎えるなんていうのは恐らく初めてではないだろうか。
もちろん、ビッグマッチへの経験値は両者同じようなものだし、攻撃ユニットの破壊力はレアルの方が優れている。バルセロナが誇るMSNの影に隠れがちだったCR7の逆襲というのも見てみたい気もする。選手として90年代最高の選手の1人だったジダンが名将になっていく様というのも見ていたい。ただ、今年は素直にアトレティコにタイトルを取らせてあげたいし、そうなるべきだと思っている。それが、現代サッカーのトレンドは全員守備全員攻撃であるということを世界に知らしめることになるのだから。
最後に試合のポイントを1つ。シメオネがいつキレるとか気にはなるけれど、試合だけを考えると、フェルナンド・トーレスがゴールを決めるかどうかにあると思う。アトレティコの象徴たるこの選手が決めるかどうかで試合が決まると思っている。もちろん、レアルはトーレスを上手く抑えれば、後はCR7が何とかしてくれる。きっとそういう試合になるに違いない。
両チーム共にプレスの度合いは違うかもしれないが、守備をしっかりとしてからカウンターということで、派手な試合美しい試合にはならないと思う。ただ、締まった試合にはなるし見所たっぷりの試合になることは間違いない。UEFAもFIFAも組織は腐っているし、一体誰が優勝チームにビッグイヤーを渡すのかなんて言う変な見所もある。インファンティノで本当にいいのなんて、折角の美しい試合内容に水を差すことも起こりうる。まぁ、ヨーロッパリーグもそうなんだけど、代表はピークが過ぎたとはいえ、クラブシーンはまだまだスペインの時代。スペインの世界征服への旅はまだまだ続くだろう。
今回のコラムはここまで。この大一番が終わればいよいよEURO。大国同士のつぶし合いは見られないと思うが、これもまた見所たくさんの大会だ。まぁ、詳細は次回のサッカーコラムにて、。
以前のコラムで書いたおとぎ話はついに完結した。レスター・シティは奇跡ともいえるプレミアリーグ優勝をなし遂げた。来シーズンはチャンピオンズリーグの舞台に第1シードチームとして参加する。まぁ新参者を嫌うUEFAのことだからスペインの2位チームで今年優勝できなかったチームとか、ドイツの黄色いチームとか、異動が大変なロシアのチームとかをぶつけたりするんでしょうが・・・。ただ、少しサッカーをかじればスターティングメンバーを暗唱できるあの11人がチャンピオンズリーグの舞台でどこまでやれるかは素直に見てみたい。もちろん、岡崎慎司がその舞台でどこまでやれるかも込みであるが。まぁ、これもその時が来たらまた書きましょう。今回のコラムは以上です。