2012年02月10日

日本の轍を踏むなと指摘した英紙はマユツバ

 橋下氏が錦鯉なんですって。どうして?

 野田総理はドジョウだけど、橋下氏はそれと大違いの錦鯉というのです。誰が言っているかと言えば、英国のフィナンシャル・タイムズだそうです。

 まあ、私も引っかかってその日本語訳の記事を読んでみたのですが、そもそもそんな表現を外国人が思いつくのでしょうか?

 だとしたら、書いた記者は日本人の記者であったのか?

 いずれにしても不自然な記事であるのです。

 欧州は、今緊縮財政にばかり目が言っているが、そんなことをしていると日本の轍を踏んでしまうぞ、と書いているらしいのですが、そんなこと本当にフィナンシャル・タイムズが言いたいのか?

 ただ、だからと言って私が、緊縮財政にばかり目が行くのがよくないという指摘を批判するのではないのです。今のようにギリシャ側に緊縮措置を押し付けることばかりしていても、なかなか展望は開けてこないでしょう。

 でも、日本を引き合いに出すのが不自然で仕方ないのです。

 というのも、日本がこれまでとんでもないほど緊縮財政に励んできたというのであれば、それならそれで分かるのです。現実はその反対です。何故なら、対GDPでみて世界一政府債務残高が高い国であるからです。

 そのことをもう10年以上も指摘してきたのはフィナンシャル・タイムズであるのです。フィナンシャル・タイムズをこれまで読んだことのある読者なら皆知っているのです。

 それに、いつも批判の矢面に立つのは、あの橋本総理の増税ですが、その増税にしても今の5%に消費税を引き上げただけの話です。

 一方、欧州の国では20%とか30%という消費税率は当たり前のようになっている訳ですから。日本の消費税率が欧州よりも高く、その結果、日本の経済の活力がなくなってしまったというのであれば、それなら説得力を持つでしょう。でも、現実は反対。つまり、消費税率がある程度の影響を与えるのはそのとおりだとしても、消費税率が全てではないのです。でなければ、スウェーデンなどの高成長ぶりを説明できないのです。

 確かに日本は、この20年間ほど名目GDPは伸び悩み、そして、ラリーマンの賃金もなかなか上がらない状況にあるのは事実であるのですが‥だからといって、経済の活力が本当に喪失してしまったのではないのです。何故ならば、ご承知のように企業には何百兆円という単位の内部留保が貯め込まれているからです。本当に橋本増税が長い間深刻な影響を与えているとしたら、企業がそのような内部留保を貯め込む余力などない筈です。

 ですから、どう考えてもこの英紙の指摘記事はおかしい! 不自然すぎる!

 それに、橋下氏が、緊縮財政をストップさせる役割を果たすことを期待する書き振りなのですが、橋本氏は、中学生が通学費を稼ぐためにアルバイトをするくらい結構なことではないか、と言うほどの人なのです。全然橋下氏がやっていることを理解しているとは思えない記事なのです。

 一体全体、何をこの記事は言いたいのでしょう?

 いずれにしても言えることは、欧州は、今日本のことなんか少しも考えていないということです。

 日本の轍? なんて思っているに違いないのです。


 フィナンシャルタイムズの記事だというが、どうも怪しいと思う方、クリックをお願い致します。
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columnistseiji at 16:28|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)バカもん 

海外とこんなに違う我が国のギリシャ報道

 また、欧州ではギリシャ問題で揉めています。ギリシャや欧州の人たちには悪いのですが、もういい加減にしてくれと言いたい気分です。

 世界で最も進歩的な欧州大陸の人々が、そして、ユーロという壮大な理想を追求するユーロ圏の人々がやっていることがこの程度なのですから‥

 いずれにしても、我が国の報道機関は、概ね「ギリシャ緊縮策合意」なんて報じているのです。

 我々はこれを信じていいのか? 如何にもこれで話がまとまったかのような雰囲気があるが、また騙されるのではないのか?

 で、海外の報道ぶりに当たってみると、全然ニュアンスが違うのです。米国の公共ラジオ放送のNPRにしても、それから英国のBBCにしても。

 先ずは、NPR

 タイトルは、Greek leaders fail to reach Debt Overhaul Deal

  ねえ、違うでしょう? 緊縮案の合意に失敗とあるのです。

 では、BBC

 Greece bailout: Eurozone ministers set new conditions

 まあ、このタイトルからだと即断はできないのですが‥しかし、次のように報じているのです。

 The plan agreed by the Greek government earlier this week includes 15,000 public-sector job cuts, liberalisation of labour laws, lowering the minimum wage by 22% and negotiating a debt write-off with banks.

「今週初めギリシャ政府によって合意された案には、15000人の公務員の削減、労働法の緩和、最低賃金の22%引き下げ、そして銀行団との債務削減の交渉が含まれている」

 But a key demand of the EU, IMF and European Central Bank was reform of the pension system, an issue that proved to be a stumbling block.

「しかし、EU、IMF及び欧州中央銀行が一番問題にしているのは年金制度の改革であって、それが障害になっていることが判明した」
 
 ここで、「ギリシャも日本と同じように‥」という表現が適切かどうかは別にして、ギリシャの目下の最大の課題は年金制度の改革なのだ、とか。

 年金制度の改革なんていっても分かりづらいのですが、要するに年金の支給額を大幅に引き下げるということなのです。

 日本の場合には、主に若者にしわ寄せが行こうとしているのですが、ギリシャの場合にはそうではない、と。全ての年金受給者が等しく犠牲を迫られようとしているのです。

 それにしても、何故今頃、年金問題が出てくるのでしょうね? ギリシャの懸案事項は、民間銀行側との債務削減率の合意にあったのではないのでしょうか? その話は決着がついたのでしょうか? 或いは、ギリシャ政府による資産売却計画が思い通りに進んでいないことではなかったのでしょうか?

 どうも釈然としないのです。この調子だと仮に年金問題にけりがついてもまた別の問題が出てくるのではないでしょうか。

 それにしても、今回発表されている最低賃金の22%引き下げという話も大変ショッキングであるのです。

 私思うのですが、最低賃金というのは、まさに生きて行く上で最低必要な賃金ですから、そう簡単に引き下げができるとは思えないのですが。つまり、政治家や官僚の給料を2割程度引き下げても、その人々が急に栄養失調になる訳でもないのでしょうが、最下層の人々の給料がそんなに下がることになれば、どうなるのか、と。

 いずれにしても、本日、また大規模なストライキが予定されているそうですが、これほどの荒療治に対して国民は黙っていないでしょう。

 もちろん冷静に考えて‥例えば、最低賃金や年金を引き下げても、それからしばらく経って物価自体が2割以上も下がることになれば、労働者の実質的な生活は維持できるのではないかという考えもあり得る訳ですが、実際にそうなるかどうかは不明で、また仮にそうなるとしてもそうなるまでに相当の時間がかかるでしょう。

 では、どうすればいいのか?

 だから私は、この際一時的にユーロから離脱するなり、第二ユーロを採用するなりすべきだと言っているのです。

 幾ら最低賃金の引き下げに反対する人でも、或いは幾ら年金の引き下げに反対する人でも、支払いがドラクマで行われるのであれば、IMFなどがギリシャに対し、年金などの引き下げを要求する必要もないからです。つまり、為替相場を反映して、価値の下がったドラクマで支払われるのですから、年金の引き下げは自動的に行われることになるのです。また、そうやって自動的な価値の引き下げが行われるので、国民や労働者たちは反対のしようがないのです。つまり、ストライキの対象がない、と。

 日本の報道機関も欧州勢に対し、ギリシャのユーロからの離脱を勧めたら如何でしょうか。


 

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2012年02月09日

円高に隠されたもう一つの意味

 最初に、このブログを今お読みになっている方の意見を聞きたいのですが‥

 「私の?」

 そう、イケメンの貴方の意見を聞きたいのです。

 今、国内における最大の関心事の一つは、増税にあると思うのです。本音で言えば、誰だって増税は嫌でしょう。では、仮に増税をしなければどういうことになるかと言うと‥益々借金を重ねると
いうことになるのです。2012年度予算の財源のおおよそ半分は、国債の発行、つまり借金で賄おうとしている訳ですが、増税を受け入れないということは、これからも大量の借金を続けることを意味しているのです。

 誤解のないように言っておきますと、確かに歳出面をバッサリ削ることができれば、借金を増やさなくても乗り切れることができるかもしれませんが‥そのためには、我々国民の側も、行政サービスの低下を受け入れなくてはなりません。

 ということで、幾ら増税が嫌いな人でも、同時に借金を続けるのもダメだと思う訳ですが‥でも、政治家の中には、こんなに景気が悪いのだから、国債を発行し続けてもやむを得ないという人もいるのです。

 ここでも誤解のないように言っておきますが、幾ら増税を考えている人でも、急に国債の発行を止めることができるなんて考えの人は、一人もいないのです。というよりも、少々増税したところで、これから先も相当量の国債の発行は必要不可欠であろう、と。

 ということは、「国債を発行し続けても止むを得ない」と言う表現とは裏腹に、そのようなことを言う政治家は、国債の増発のどこが悪いのだ、と主張しているようなものなのです。

 そのような政治家は「この景気の悪いときに‥」なんていう言い方をし、それはそれなりに結構説得力を持っているのです。だからこそ、あの小沢様も消費税増税には反対するのでしょう。そんなことでは選挙に負けてしまう、と。

 いずれにしても、我々日本人の頭の中には、増税を考える際のファクターとしてこれまで、「景気」「インフレ」「将来世代への負担転嫁」「財政破綻」というようなものしかなかったのです。つまり、主にそのようなことを比較衡量の上、増税に反対するとか賛成するとかの立場を決めればよかったのですが‥

 「ですが?」

 ここに来て、もう一つファクターが増えそうであるのです。

 「何、それ?」

 この1、2年ほど日本は急激な円高の局面にあるのですが‥円高とはどういうことであるのでしょう?

 「実力以上に円が買われている。投機筋が悪いのよ」

 投機筋云々の話は別にして、円を買う人が増えるから円高になる。それはそのとおりです。で、円を買うと、その多くは例えば日本国債に姿を変えることでしょう。私が何を言いたいかお分かりでしょうか?

 では、日本国債を一番買うのは誰か?

 まあ、誰が買うのか確信を持って言うことは難しいのですが、そのような金融資産を購入する力が一番ある国と言えば、貿易収支が大幅な黒字になっているところと決まったものなのです。

 ちょっと古い話になって恐縮なのですが‥1970年代にオイルショックというのが起きました。2度石油の価格が高騰することになり、それまで地味な存在でしかなかったアラブの国が一躍脚光を浴びることになり‥。

 で、その時、我が国を含め先進国側は心配をしたのです。アラブが油で儲けるのはいいが、そのお金が巧く循環しないことには世界経済が大混乱に陥ってしまう、と。これをオイル・マネーのリサイクリングと呼んだものなのです。

 つまり、アラブの国が石油の輸出でガンガン儲けるときには、アラブの国が例えば米国債などを沢山購入することになるのです。

 では、現在はどうなのでしょう? 言うまでもなく、今貿易で稼ぎまくっているのは中国。つまり、中国にマネーが集中する構図になっており、従って、その中国が米国債やユーロ建て国債や日本国債を購入する立場に立っているのです。

 円高とは、海外勢が円を買うから円高になる。そして、その海外勢の代表は中国ということになるのです。そして、この1、2年円高局面が続いている訳ですが、ということは、中国がガンガン日本国債を購入するようになっているのです。

 私の言いたいことがお分かりになりました?

 つまり、これから先、日本が借金体質を改めず、その一方で、中国が輸出を中心に高成長を続ければ、中国がもっともっと日本国債を保有するようになるのは必至だということです。

 で、国債の発行のどこが悪いといつも言っている人々に聞きたいのです。

 2011年の1年間で、中国は日本国債を約26兆円分購入し、そして、約31兆円分売却した、と。ネットベースでは約4兆円の売り越しになっており、2010年実績の10倍に膨れ上がっている、と。

 もちろん、中国としては、何も日本を支えるために日本国債を購入するのではなく、国債の売買によって利益を出すためである訳ですから、国債の市況次第で活発に売ったり買ったりするのです。でも、そうやって活発に売ったり買ったりされるから、日本の経済は大きなリスクに晒されることになるのです。

 ちょっと嫌ーな感じでしょ?

 結局、借金を続けるとそういう事になりがちなのです。これから先少子高齢化が益々進展し、そうなるとこれまでの蓄えも少しずつ食いつぶすことになるのです。つまり、これまでは国債の殆どを国内の投資家が保有していたのが、少しずつ海外の投資家の保有割合が増える、と。で、その海外の筆頭に中国が来るのです。

 どうしたらいいのでしょう?

 中国がやっているように、海外の政府が国債を取得することを日本政府の許可制にする?

 そんなことを今更、日本政府がする訳にはいかないのです。

 いずれにしても、中国が今後日本の債権者になるかもしれないというリスクについてじっくりと考える必要があるでしょう。



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columnistseiji at 11:27|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)為替 

2012年02月08日

専門家ほど誤解する外貨準備

 覆面介入なんて言葉が紙面に踊っている訳ですが‥なんだかな〜なんて感じです。

 「どうしてよ?」

 だって、そういう事も当然あり得る話であり、しかもこのニュースは、政府の記者発表を基にして書いたものだからです。つまり、特ダネでもなんでもない。当局も、為替介入について内緒にしておくわけにはいかないから定期的にこうして情報公開に応じており、その情報を基に今回大きく報じられているだけだからです。

 まあ、敢て言えば「覆面介入」という言葉が目新しく、その意味では読者の関心を引くと思い、記事にしているだけ。

 でも、本日言いたいのは、そんなことではないのです。問題は、現在の円高をどのように考えるかということなのです。

 果たして、我々日本人にとって一番居心地のいい円レートの水準があり、そして、それに向かって政府が介入することが適当であるのか、と。そして、仮に今、超円高の水準にあるとするならば、今後も積極的に為替介入をして、円安になるように努力することが適当なのか、と。

 実は、これらのことについて明確な答えはないのです。まず、そのことをしっかりと認識すべきなのです。しかし、政治家のなかには、円高のデメリットばかり強調する人々がおり、政府は円安にするためにありとあらゆることをすべきなのだ、と主張するのです。

 拉致問題担当の大臣も、そんなことを少し前までよく言っていました。

 先ず、適切な円レートの水準というものがあるのか?

 これは非常に難しい。というのも、業種によって、感じ方が全然違うからなのです。早い話、農業関係者にとっては、仮に1ドル=100円に戻っても、あるいは120円に戻っても、依然として円が高すぎることに変わりはないでしょう。それに輸入業者にしたら、円高になることは基本的にウエルカムだと。

 菅さんが財務大臣になったとき、経済界の言葉と言いながら、適切なレートは90円台の半ば位だと言ったことを憶えていますか? 憶えていますよね。そして、数年前、ドバイショックというのが起き1ドルが84円台を付けたとき、日本が大騒ぎしたのを憶えていますか? こっちの方は憶えていない
人が多いかもしれませんが‥

 で、昨日はトヨタが、1ドル=78円台でも利益が出る体質にすることに成功した、なんて言ったことをご存知でしょうか?

 つまり、ことほど左様に適切な円レートの水準というのは時の流れに応じて変わるものである、と。
そしてまた、業種や企業によっても異なるものである、と。

 だから、仮に為替介入を行うとしても、それが急激な為替相場の乱高下を防ぐために行うのであれば理屈もつく訳ですが、一定の水準に為替レートを誘導しようというのであれば、なかなかその正当性を証明するのが難しいということなのです。

 こんなことを言えば非難轟轟であるかもしれませんが、仮に日本の貿易赤字が定着してしまったというのであれば、円安への誘導も多少は理解されるのでしょうが、まだまだ貿易黒字が続くだろうというなかで円安誘導への理解を得るのは難しいと思った方がいいでしょう。

 まあ、それはそれとして‥

 私も日本人であるし、多くの政治家たちの考えていることや経済界の気持ちも分からないではないのです。何と言っても、この数年の円高への揺れ方が相当激しいものであるのは事実であるからです。これじゃ商売にならないよ、と。

 では、その上で話を進めたいと思うのですが‥だったら、少しでも円安の方向に持っていきたいと。極端な円安は別ですが、例えば1ドル=90円程度に戻すことができれば、にんまりとする輸出企業も多いと思うのですが、そのためにはどうすることが適当なのか?

 やっぱり介入を大々的に続けるべきなのか? 覆面でもなんでもいいから、どんどん介入をすべき
なのか?

 問題はそこにあるのです。

 為替介入にまつわる批判の第一は、協調介入であれば別だが、単独介入では効果がない、と。或いは、実際の為替取引額に比べ、介入の規模は限られるから効果はない、と。

 当局の肩を持つ訳ではありませんが、円高になると政府に対し何とかしろと言いつつ、いざ為替介入に踏み切っても、単独じゃ効果はないなんて、そんなことを評論家は言うのです。

 どうして欲しいの? それともただ批判がしたいだけ?

 いずれにしても、これらの説は、正しくもあり正しくもない。ただ、昔からそのようなことが言われているから、テレビに登場する評論家も同じようなことを言っているだけなのです。

 皆さんは、ミスター円という方をご存じだと思うのです。いつもニタニタと自信たっぷりに持論を述べる榊原教授。あの方、官僚出身なのですが、若い頃、埼玉大学の助教授をやっていたことがあり、その頃テレビ出演して、「為替介入の効果なんて知れている。大海の一滴みたいなものだ」なんて言っていたのですが、憶えています?

 もちろん、憶えている人は少ないでしょう。で、その榊原さんは、後年役所で為替担当の仕事に就き、ガンガン為替介入したことでも有名になったのです。まあ、だからこそミスター円なんて呼ばれているのでしょうが。

 いずれにしても、近年の経験から言えることは、介入をやったからと言ってなかなか円高の流れを変えるのは難しいということではないでしょうか。何故ならば、昨年、未曾有の規模の介入をしたにも拘らず依然として超円高水準にあるあらです。

 つまり、超短期的には市場にインパクトを与えることができても、流れを変えるのは相当に難しいのではないかと思われるのですが、だとしたら円高是正の方法は何もないということでしょうか?

 実は、方法なんていくらでもあるのです。早い話、こんなに沢山外貨準備を積み上げているので円高の流れを作ってしまうのです。

 外貨準備には、大きな誤解が付きまといます。

 素人は考えるのです。日本が輸出で外貨を稼ぐから外貨準備が増えるのだろう、と。でも、専門家はそのようには考えないのです、外貨準備は、日本政府が円売りドル買いの為替介入をする結果、増えるシステムになっているのだ、と。

 どちらが正しいのでしょうか?

 実は、どちらも正しいと言うべきなのですが‥狭い意味での外貨準備ということであれば、それは専門家が考えるとおり。つまり、政府の為替介入を主に反映して、外貨準備は増えたり減ったりするのだ、と。決してその時々の貿易収支を反映するのではない、と。

 専門家の頭の中がお分かりになったでしょうか?

 で、その専門家の考え方に従えば、円安にするためには、円を売りドルを買う為替介入をし、その結果、外貨準備を増やすことが必要になるということなのです。つまり、外貨準備を減らすなどもってのほかであると。外貨準備を減らすということは、政府の手持ちのドル資産を売却することであり、そうやってドルを売却し円を買えば、益々円高になってしまうではないか、と。

 ということで、円安待望論者からすれば、政府はもっともっと為替介入を行い、外貨準備を増やすことが必要になるという訳なのです。

 でも、これ、おかしいのではないでしょうか?

 素人の方なら、きっと分かるはずだと思うのです。専門的知識が頭に入っているからなかなか理解できない。

 今、日本政府は1兆3千億ドルを超える外貨準備を保有している訳なのですが‥その外貨準備を見た海外の投機家はどう思うことでしょう?

 海外の投機家が円高のシナリオを描くか、或いは逆に円安のシナリオを描いて、一儲け企てようとしていると仮定してみましょう。

 そのシナリオは、円高でもいいし円安でもいい。とにかく、もっともらしいシナリオを描き、そして市場の流れを自分たちの思う方向に誘導して一儲けができればいいと考えたとき、彼らの選びがちなシナリオはどちらになる可能性が大であるのか?

 彼らは、当然のことながら日本政府の外貨準備に目がいくことでしょう。つまり、日本は、中国に次ぐ巨額な外貨準備を有していることをどうしても意識しない訳にはいかないのです。

 あれだけ巨額の外貨準備を保有している日本政府に対し、円安シナリオで対抗できるのか、と。
日本政府は、仮に望ましくないほどの円安が起きれば、今手持ちの外貨を売り払うことによって円安を食い止めることができる、と。従って、その日本政府に対抗するためには、それ以上の軍資金を用意することが必要になるが、果たしてそれができるのか、と。

 逆に、円高シナリオで対抗する場合にはどうか? 円高シナリオというのは、ドル安シナリオという
ことでもある訳ですが、そのドル安を食い止めるには円をどんどん売りまくる必要があるのですが、
日本政府は、理屈の上では輪転機を回して幾らでも紙幣を発行することができるとは言いつつも、
財政法の制約や予算の制約があって、日本の円売り介入は限られている、と。それに日本による一方的な円売り介入には、常に米国の監視の目が光るので、日本も無制限に行うことはできないはずだ、と。

 もうお分かりになったと思うのです。

 日本が巨額の外貨準備を保有しているから、投機筋は、円安シナリオを選択することが難しいのです。つまり、今ある巨額の外貨準備を少しずつ売却し、政府の外貨準備が雀の涙ほどの水準にまで下がってしまうと、一転、円安の流れが起きやすくなるのです。つまり、貿易収支も赤字の日本が、外貨準備も底を突きそうだと知れば、投機筋は恐らく円安シナリオを作ることが予想されるのです。

 日本が本気の本気で円安を望むならば、逆の為替介入をすればいいということなのです。そうです、ドルを売り円を買い戻すことを分からないように進めるべきだ、と。

 なぜ、それを政府はやらないのでしょう?

 やっぱり、専門家的な発想で、外貨準備のことをよく理解していないからではないのでしょうか?

 確かに日々、ドルを売り円を買い続ければ、その分円高圧力がかかるという理屈は理解できる訳ですが、その結果ある日、海外の投機家は、日本政府の外貨準備がこんなにも減ってしまったのかと驚くでしょう。私には、その驚きの効果の方が遥かに大きいと思うのです。つまり、その驚きのせいでどんと円安に振れる、と。

 しかし、急激な円安には副作用が伴うので、この方法は、そこそこにとどめておくことが必要でしょう。


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columnistseiji at 11:11|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)為替 

2012年02月07日

年金の運命

 新しい年金制度を巡って、いろんな情報が流れているのです。例えば、50歳台後半以上の人は
払った分より多くもらえるが、50歳台前半以下の人はもらう分の方が払った額より少ない、と。具体的に言えば、27歳の人の年金の生涯収支は712万円の損失になるなんて。

 こんな話を聞かされ、若い世代の人はどう思うことでしょう?

 ガーン! 年金なんていうのは、自分が払う分よりももらう分が多いから有難味を感じる訳で、だからこそ国のために頑張ろうと言う気にもなるのですが‥自分たちが納めた分でさえ満足に確保されないとなると‥

 どうして? どうして? 何故、そんなに少ない額になってしまうの?

 で、説明を聞くと、養うべきお年寄り世代は増え続けるのに、現役世代の数は減りつつあるからだ、と。(それに、デフレを克服するためにゼロ金利政策をいつまでも強要し、その結果、超低レベルの利回りが長年続いていることも一つの理由であるのです)

 今、政府は、情報を隠して怪しからんなんて言われている訳なのですが‥で、政府の肩を持つ訳でもないのですが、何故情報を出すことを渋るのか?

 それは、余りにもショックが大きいからであるのです。こんな不都合な真実を若者たちに見せつけて、彼らはショックの余り暴動を起こすのではないのか、と。これじゃ選挙が戦えない、と。

 では、年金制度を破綻に追いやったのは誰の責任か?

 民主党が悪いのか? でも、民主党が政権を取ってまだ僅かしか経っていないのです。では、自民党が悪いのか、それとも旧厚生省が悪かったのか?

 確かに、それらの人々に責任があると言えばある。しかし、一番の大きな理由は、人口構造に大きな変化が生じたことであるのです。

 つまり、養われる人々の数と支える現役の人々の数の比率が大きく変化を遂げているのです。では、何故若者の数は減っているのか?

 それも政治家のせいなのか? 或いは旧厚生省が悪いのか? 何故子どもの数が減っているのか? 

 確かに子供の数は減っている。その主な原因は、夫婦の気持ちにあると思うのです。沢山産むのは大変だからとか。或いは、女性であっても、男に負けないように社会で活躍したいからとか。或いは、そもそも結婚の機会がなかったからとか。

 いずれにしても、そうやって子どもの数が減っていることまで、政治家のせいにするわけにはいかないのです。

 では、こうやって人口減少社会になってしまったからには、年金制度を維持することは不可能なのか?

 答えは、人口が増えようが減ろうが、人口数に影響を受けない年金制度を構築することも、全くできない相談ではない、と。

 どうするかと言えば、個人が積み立てた分だけ、それに利息相当分を上乗せして分割給付するような年金制度にすればいいだけのことなのです。つまり、自分が現役の間に積み立てた分とその利子だけを将来分割して受け取るような仕組みにすれば、人口が増えようと減ろうと関係がないのです。

 でも、問題は、いきなりそういう制度に切り替えることができないことにあるのです。何故ならば現に多くの高齢者が存在しており、その方々を養わなければいかず、その財源をどこから捻出するかという問題が別にあるからなのです。

 さあ、その財源、どこに求めるべきでしょう?

 結局、その財源は、主に現役世代が負担する税によって確保される以外に方法はなく、結局、名目は違っても、現役世代が負担することに違いはないということなのです。

 つまり、高齢者が多く存在し、その一方で若者が少ない時代には、どうしても若者一人ひとりに多くの負担がかかることになるのです。

 では、その問題はどうしても回避できないのか?

 実は、絶対に解決できない訳でもないのです。どういうことでしょう?

 皆さん、この先、日本の人口はどうなると思いますか?

 「どんどん減っていくのでしょう? 確か8千万人くらいになるとか‥」

 では、その先は? その先は、怖くて考えたくないということでしょうか? その先、さらに減って
5千万人を切ってしまうのか? では、その先は?

 ずっとずっと人口が減って、日本人は絶滅危惧民族になってしまうのでしょうか? でも、多くの人はそうは思わないでしょう。どこかの時点で
減少がストップすることになるのではないか、と。また逆転するようなことになるのではないか、と。

 で、仮に、人口の減少がある時点でストップし、或いは逆に増えだすとなれば、今度は次第に若者一人あたりの負担が軽くなり始めるのです。

 問題を分かりやすくするために、人口が8千万人ほどまで落ち込んだ後、また人口が増えるパターンを描くことになったと仮定してみましょう。

 そうなるとまた、高齢者と現役世代の人口比率が、かつてのようになっているのではないでしょうか。つまり、高齢者が相対的に少ない人口構造になっている、と。で、そうなれば年金制度の維持は容易になることでしょう。

 であれば、そこまでの間、国債の発行かなにかでつなぐことによって負担の平準化を図ることが理論的に可能であるのです。但し、その場合には、将来いつかの時点で必ず人口が増え始めるという確信が持て、そして国債を引き受ける多くの投資家がいるという前提が必要にはなるのですが‥

 いずれにしても、そうやって人口構造に大きく影響を受ける筈の年金制度であるにもかからず‥かつて、旧厚生省の役人や政治家たちが年金制度をイージーに扱ってきたこと、そして国民も年金制度を深く考えてこなかったことに問題があるというべきなのです。

 こうして、年金の本質を正確に把握したうえで、建設的な議論を進めるべきではないのでしょうか。

 国会では、コーヒーを飲まない決意である‥なんてことを言わなくてもいいのです。国会でコーヒーを飲んでもいいですから、国民のためになる議論をすべきであるのです。



 人口が反転する日が来るのか、と不安に思っている人に朗報を!

 日本の人口がどんどん減っていって、最後は貴方一人になったとします。ああ何と寂しいことか。でも、そのとき、この日本全土はあなたの所有になるのです。

 でも、それじゃ寂しすぎるか?



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columnistseiji at 11:42|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)年金改革 

2012年02月06日

日本の支援を忘れ「軽」に難癖付けるビッグ3

 昨日の紙面にTPPの文字と軽自動車という文字が躍っていたので、またアメリカは言っているのか、なんて思ったのですが、改めて紙面をよく読むと、なんとアメリカは今までの主張を引っ込めたのだとか。

 まあ、その方がいいでしょう。というのも、アメリカの自動車業界の真意がどこにあるかは別にして‥我々日本人、特に地方都市に住む人々にとって軽自動車はなくてはならない存在であるからです。

 多分、東京に住む人々が田舎を訪れたときの驚きの一つは、軽自動車の多さではないでしょうか。例えば、大型スーパーの駐車場を眺めても、軽自動車ばっかりであるのです。勿論普通車も走ってはいるのですが、例えば旧城下町の地方都市なんて、道幅が狭くて軽じゃないととても不便でたまりません。

 何故旧城下町は、道が狭いのかって?

 それは、お殿様がいた遠い昔、道を狭くしておいて、敵からの攻撃を防ごうとした知恵なのだとか。

 いずれにしても、道が狭くて、例えお金持ちであっても軽の方が便利に見える地方都市の人々にとって、寝耳に水で、アメリカから軽自動車の制度を止めろなんて言われると、なんのこっちゃいな、と。

 本当に不合理なことばかりいうアメリカです。

 だいたい日本への輸出を伸ばしたいというのであれば、日本人のニーズをよく把握し、日本人が
欲しくなるような車を作るのが先決です。それに、お客様に対するおべんちゃらの一つや二つ。

 ああ、それなのに、それなのに。

 アメリカ様のやっていることはと言えば、お客様に向かって、お説教を垂れるようなことばかり。それで、どうしてアメリカの車が売れるでしょう?

 まあ、いずれにしても、「軽」を敵視したり日本にもっと車を売りつけようなんて作戦は、あまり効果がないと心得るべきでしょう。何故ならば、そもそも日本国内では、少子高齢化の進展で若者世代が急減しているために、自動車の売り上げが一貫して減少を続けているからなのです。

 それに‥アメリカに言いたい。

 確かにビッグ3が蘇ってよかったと。オバマ大統領も、ビッグ3を救済して、大変によかったなんて今思っているのです。で、調子に乗って大統領が言うのです。アメリカは、競争条件が公正であるならば、どんな国にも負けることはない。アメリカは、常に世界ナンバーワンだなんて。

 しかし、米国は負け続けてきた。だから慢性的な経常赤字に悩んでいる。特に近年は、中国との関係で大きな赤字を計上している。しかし、もし中国とフェアな条件で競争するならば、アメリカが負けるはずはない、と。

 で、そうやって大統領が大見栄を切ると、国民は大喜びするのです。

 そして、大統領は言うのです。今まで海外脱出をする企業を見逃してきたことがよくない。今後は、
国内に戻ってきた企業に対し、税制上の優遇装置を与える。こうして、米国の製造業が強化されることになるだろう、と

 確かに、企業が海外脱出することによって、米国の産業の衰退が加速化した面があるのです。そして、それと似たことを我が国も経験してきた、と。従って、空洞化というと、どうもマイナスイメージばかり付きまとうのです。

 でも、その空洞化にも2種類あることをご存知でしょうか?

 普通、空洞化と言えば、海外の、特に中国や東南アジアなどの安い賃金を求めて工場を移転することをイメージしがちなのですが、我が国から脱出した工場は、何も賃金が安い国にだけ移転していった訳ではないのです。というか、我が国よりも賃金が高いところにも移転していった、と。

 大統領は、米国の企業が海外に脱出していったことにより、米国の製造業が弱体化したと強調するのですが、その米国にわざわざ日本企業が進出していった事実をどう評価しているのでしょう。

 確かにビッグ3の車が売れる方が、トヨタの車が売れるよりも嬉しいと感じるのは分かるのですが、幾らトヨタの名前がついていても、米国に進出したトヨタが現地で多くの労働者を雇い、多くの経済効果をもたらしているのは事実なのです。

 そして、日本側とすれば、その分、日本人労働者の働く場は失われている、と。

 日本の自動車メーカーが例えば、東南アジアに進出するのは、安い賃金を求めてのことで、何も不自然なことではないのですが、では何故わざわざ賃金の高いアメリカに進出していったのか?

 それには、もちろんアメリカの圧力があり、アメリカのことを日本側が配慮したからに他ならないのです。長いお付き合いであるし‥それにアメリカも労働者たちも大変だし、と。

 しかし、繰り返しになりますが、そうなるとその分日本の労働者の働く場はなくなる、と。

 そこまで日本側はアメリカのことを配慮してきたのに‥しかし、お殿様気分のアメリカの自動車業界は軽がどうのこうのなんて、本当につまんないことに口を出しているのです。

 先日書きましたが、大統領を含め多くの専門家が、アメリカ人の労働者の生産性は中国の10倍あるから‥なんて主張に騙されているうちは、米国の製造業の復活はないと思うのです。




 本当にアメリカという国は他人から助けられていることを何とも思っていないのだよな、、と思った方、クリックをお願い致します。
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columnistseiji at 10:47|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)

2012年02月05日

中国の野望(IMF乗っ取り計画)

 中国の温家宝首相が、先週メルケル首相に向かってこんなことを言ったとか。

 China has no intention to buy the continent.

 どう思います?

 この文章を文字通り解釈すれば、大陸、つまり欧州大陸を買うつもりなど中国にはないということで、文句を付けようのない内容なのですが、そもそもそんなことを口に出すこと自体が大変恐れ多いというか。

 恐らくその台詞を聞いた欧州の政治家たちのなかには、一抹の不安を抱いている人々が多いでしょう。何と言っても西洋には黄禍論がありますから。

 ただ、温家宝首相の側に立って敢て弁明するとすれば、今欧州では、余りに中国に頼り過ぎる姿勢に対して警戒する向きが増えているために、中国としてはそのような気はないということをはっきりさせたかっただけだ、と。

 私は、でもね、と言いたい。

 これが日本人の場合であれば‥日本人というのは、戦争が終わった後、すっかり変貌を遂げ、戦略的にモノを考えることをしなくなったというか、ナイーブというか、だから例えば海外援助をするにしても‥開発プロジェクトにかかわる商社や建設会社等は別として‥割に純粋に考える傾向がある訳です。つまり、特別な見返りを求めることなしに大金を与えてしまう、と。もちろん大金を与えるとはいっても、大抵の場合は低利の融資という形にはなるのですが。

 いずれにしても、日本はそうやって特別な戦略を持たずに海外援助をしてきた。というよりもアメリカなどの意向に押されて‥或いは、アメリカの代わりにサンタクロースの役割を過去させられてきた訳なのですが、中国の場合には違うのです。

 中国は、未だ日本から借り受けた円借款の残高が相当残っているはずであるのに、ご存知のように大金をアフリカ大陸に投じているのです。理由はお分かりだと思います。エネルギーや鉱物資源確保のためであり、だからこそ対象国の政治的状況などにはかかわりなくお金をばら撒いているのです。

 で、そのような中国であればこそ、欧州の政治家たちのなかには、そのような中国に必要以上に
依存することに対する不安の声を挙げる者が出てきているのでしょう。

 日本人って忘れることが上手な民族です。では、西洋人はどうか?

 西洋人も日本人以上に忘れることが上手です。まだ20数年ほどしか経っていないのにです。天安門事件が起きたときに、米国や欧州は中国をあんなに厳しく批判したのに、です。今は、イランへの経済制裁が注目されている訳ですが、20数年前には中国に対する経済制裁が決議され、中国への融資などが厳しく制限され、そのため日本も巻き添えを食ったのです。

 でも、いち早くその態度を変えたのが欧州勢。何故かと言えば、中国との経済的関係を続けることが自国の利益につながることをよく承知していたからであるのです。あれだけ人権問題の重要性を訴えていた欧州勢が、知らん顔して中国との関係を再開していたのです。

 やっぱりお金なんですね。

 でも、黄禍論ではありませんが、心のどこかでは中国に対する警戒心があるのでしょう。

 ということで、温家宝首相は、大陸を買い取るつもりなどないと発言した訳ですが‥そして、それが仮に真意だったとして、では中国は何が欲しいのか?

 何が欲しいかなんて、口に出してはいけないのです。口に出すとなかなか実現しない。それに相手にすれば、本人が何を欲しがっているかなんてことは、次第に分かってくるものなのです。

 中国は、こう言うのです。IMFを通じた欧州支援を強化したいと思う、と。

 China is investigating and evaluating ways, through the IMF, to be more deeply involved in solving the European debt problem via ESM/EFSF channels.


 直接に欧州を支援するよりもIMFを通じた支援に替える理由は何か?

 中国は、例えばユーロ建て債券の投資額などについて、具体的な数字を公表してはいないのですが、かなりのユーロ圏諸国の国債を保有していると言われているのです。そして、その債券が暴落したことによって、かなりの痛手を被っている、と。プラスユーロ安にもなったからなのです。

 つまり、一つの理由は、ユーロ建ての国債を保有することには通貨リスクが伴い、そして既に為替リスクが現実のものになっているので、できれば為替リスクを負わない形の方が望ましい、と。

 しかし、それは真の理由ではないでしょう。

 では、本当の中国の狙いは何か?

 それは、中国のIMFに対するコントロール力を強化しよう、と。もっと言えば、IMFを自分のものにすることができないか、と。

 もちろんIMFは、世界各国が出資してできている組織であるので、中国が自分のものにすることなどできない相談ではあるのですが、しかし、IMFのトップの座である専務理事のポストを手に入れる
事はできない相談ではないのです。

 知っている人は知っており、知らない人は知らない‥当たり前か!

 世界銀行のトップはアメリカ人が占め、そして、IMFのトップは欧州出身者が占めるというのが、これまで不文律になっているのです。

 そして、今IMFのトップはフランスから輩出されているのですが、その座を中国は狙っているのです。本来であれば、主に出資金に応じて配分される投票権の拡大を狙いたいところですが、そちらの方は、最大出資者の米国の反対が当然予想されるので、実現は無理であろう、と。

 しかし、IMFのトップの座は、そもそも欧州勢の既得権益になっており、そしてその欧州勢が中国になら渡してもいいよと言えば、米国もなかなか反対はできないであろう、と。

 世界の国々が資金繰りに困り、最後の頼みとなるのがIMF。つまり、ある意味最も力を有しているのがIMFであり、そのIMFのトップの座を手に入れようとしているのです。

 もちろん、そんな要求を中国は口にすることはないでしょう。でも、薄々欧州勢も気が付き始めているのではないでしょうか。また、だからこそ警戒心も生まれる、と。しかし、アメリカや英国はユーロ救済の資金は出さないと言っている以上、頼りにできるのは中国だけということでしょう。

 私は、中国がIMFの専務理事のポストを取ることに何が何でも反対するという者ではありません。
但し、条件があります。

 それは隣国諸国との領土問題や、人権問題、環境問題などについて、もっと紳士的に振る舞うことができるようになってからの話だということなのです。

 



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columnistseiji at 11:04|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)中国 | ユーロ

2012年02月04日

米国の失業率(8.3%)、解釈のテクニック

 米国の株式市場が賑わっているようです。日本ではシャープやパナソニックなどの冴えない業績が発表されているのにも拘わらず。

 何故、米国の株価は上がったのか?

 いつもマーケットをウォッチしている人にとっては、「どうしてそんなこと聞くの?」なんて言われそうな質問なのですが、一般の方には難しい質問かもしれません。

 ヒントをあげましょう。今日は何日?

 「昨日が節分で、今日から春」

 昨日は、2月第1週の金曜日でした。

 「分かった。米国の雇用統計が発表になったんだ」

 はい、そのとおり。では、米国の12月の失業率はどのようになったというのでしょう。12月の失業率は8.3%となりました。

 では、この数値を知って、どうお感じになるでしょうか? 

 9%台にあった頃を考えれば、少し改善したかの感があるのですが、日本人の我々からすれば
まだまだ高い水準であることは間違いありません。でも、マーケットは今回の雇用統計に反応した
というのです。

 「失業率が8.5%から8.3%に低下したのが好感されたということ?」

 正解と言いたいことろですが、正解ではありません。確かに8.3%に低下したのは事実であるのですが‥マーケットが好感した理由は、自分たちの予想値よりも公表された数値が良い内容であったからなのです。

 例えば、雇用者数の伸びについて、マーケットは良くて15万人程度の増加と予想していたのが、
実際には24.3万人になり、失業率についても、予想では前月並みの8.5%程度だと予想していたのが、0.2%ポイントも良い8.3%になったからだと言うのです。

 ということで、予想が良い方向に外れたためにマーケットは反応した、と。

 早速、オバマ大統領は

 The economy is growing stronger and the recovery is speeding up

 「経済は力強さを増し、回復のペースはスピードを上げている」と。
 
 では、今後の見通しはどうなのか? 少しは明るさを増すのか?

 でも、その辺のところになると、まだまだ弱気な見方の方が大勢であるのではないでしょうか?
先日も、FRBのバーナンキ議長は、ゼロ金利政策が長く続くであろうと見通しを修正したばかり
です。

 ということで、まだまだ弱気な見通しが強いということなのですが‥だとすれば、今後株価はどう反応する可能性が高まるのか?

 例えば、来月、失業率が8.2%と0.1%ポイント改善した場合、市場はどう反応するのか?

 答えは、期待が高ければ高いほどむしろ失望が大きいと。つまり、今後は速いスピードで雇用が改善するだろうという期待が強ければ、失業率が0.1%改善した程度ではそれほど反応しないか、
むしろ失望さえしてしまうでしょう。ところが、弱気の見方を続けたとすれば、0.1%ポイントの低下でも、また失業率は改善したと喜ぶでしょう。

 ということで、FRBが弱気の見通しを打ち出しているということは、むしろ今後の株式市場にとっては意外感を演出する重要なファクターになり、プラスの面もあるのです。

 この辺は、なかなか微妙だと思うのです。

 最後に一言。

 来月の失業率が、逆に上昇してしまったら、貴方はどう反応しますか?

 失業率が上がったということは、再び職探しを始めた人が増えたということで、喜ばしいことだなんて考えれば、貴方は大変プラス思考であるのです。

 「でも、単なる負け惜しみでは?」

 その時には、under-employment(パートタイマーで働いている人や職探しをしてない労働者を含む、広い意味の失業の概念)の数値を示し、「ほら、アンダー・エンプロイメントの数値は下がっている」と言えばいいのです。

 ということで、雇用の水準を知るのではなく、雇用の方向性を知るには、失業率よりもunder-employmentを見る方が的確であろうと思われるのです。






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columnistseiji at 10:56|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)雇用問題 

2012年02月03日

岩波書店のコネ採用宣言は良心の表れ?

う考えても不自然なのです。何がって、今回の岩波書店のコネ採用宣言のことです。

 普通、テレビのワイドショーなどは、批判が専門みたいなところがあるのに、どういう訳か今回の岩波書店のコネ採用宣言については大変寛容であるからです。

 それにまだあります。ネット上の反応は、岩波書店の側につくものばかりがやたらに目につくのです。コネで採用すると、面接を省略できていいではないかとか、コネで入った人はなかなか辞めないよとか。余り理由にならないものばかりを挙げているのです。とはいいつつも、最大の援護材料は、民間企業なのだから好きに採用して何が悪いのか、と。

 だいたいこのネットの世界というのは、大変にバイアスのかかったところで、朝日、毎日、NHKに加え岩波も批判の対象にこそなれ、擁護されることなど殆どなかったのに。そう思いません?何故、今回は岩波の肩を持つの?

 私は、何もコネがある人を採用してはいけないなどと言っているのではありません。問題は、コネがないというだけで何故入社の資格が与えられないのか、ということであるのです。

 仮に幾らコネがなくても、出版社の仕事が好きで非常に才能豊かな人がいたとして、そのような
人を採用しないことは、却って出版社自身の大きな損失になりはしないかと考えるのです。

 出版社は言うのです。何千人もの学生が押し寄せて、その中から優秀な人を探し出すのは大変な
ことだ、と。それだけでも時間と労力の節約になる、と。

 出版社の人は、人を見抜く才能がないと自ら告白しているようなものではないでしょうか?

 いずれにしても、テレビは今回のコネ採用に寛容な態度を示すのですが、それはひょっとしてテレビ局の入社試験もコネが大きくものをいうという現実があるからはないのでしょうか?

 だから、今更コネ採用の話などされても、「どこでもやっていることだし‥」というような反応しかないということでしょう。

 でも、こんなことで日本はいいのでしょうか?

 民間企業だからコネ採用のどこが悪いのか、と言う人に言いたい。

 例えば、トヨタやシャープや東京電力やどっかの大新聞社がコネのある人しか入社試験を受けることができません、なんてお知らせを出したとして、貴方はそれを認めるのか?

 電力会社なんかでもコネが横行しているなんて、知った風なことを言う人がいるのですが、仮に
コネ入社が100人のうちに数名いたとしても、それ以外の人はコネなしで入っているということを忘れてはいけません。

 一方、今回の岩波書店の宣言は、コネがなければ完全にシャットアウトだと言っているのです。

 おかしいでしょ?

 でも、ここで岩波書店の側にとって有利な推測もしてみましょう。

 それは、今回のコネ採用宣言の意図が、どんなに能力のある人であってもコネがなければうちの社は絶対に採用しないのだから、それだったら、最初からそれを学生に伝えておいた方が親切ではないのか、という一部社内の声があり、それを反映したのが今回のコネ採用宣言であるかもしれないということです。

 ただ、仮にそれが本当だとしても、出版社やマスコミ関係はコネが蔓延しているということの証拠にしかならないのです。

 果たしてこれでいいのか? こんなことで、日本経済は成長を続けることができるのか?

 敢て出版社側の立場で考えると、仮に有名作家にコネがある人を採用することによって、今まで
作品を書いてもらえなかった有名作家の仕事が取れるとすれば、その出版社には大変なメリットがあり、厳しい競争を勝ち抜くために大いに役に立つ、と。

 確かにそういうメリットはあるでしょう。

 しかし‥と言いたい。それだと、結局コネだけで仕事をするようなことになり、それで本当に会社は成長できるのか、と。

 そんなのをクローニー・キャピタリズムなんていうのではありませんでしたか?

 1990年代のアジア通貨危機の際、インドネシアがその典型として批判されたことを憶えている人も多いと思うのです。

 岩波書店や日本のテレビ界は、クローニー・キャピタリズムを信奉するというのでしょうか。






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columnistseiji at 14:55|この記事のURLComments(6)TrackBack(0)バカもん 

出版社の驕りの体質が表れた岩波のコネ採用

 己の未熟さを披露するようで恥ずかしいのですが、私は若い頃、岩波書店を信じきっていたのです。何といっても大出版社ですし、社会科学関係の古典と言われる書物が岩波文庫から沢山出版されていたからなのです。

 決して私を左翼とか思わないで下さい。それどころか私らの世代では、右翼と呼ばれることの方が、何か落第の烙印を押されたような雰囲気があったのですから。

 ところで、岩波書店のコネ採用に関心が集まっています。

 今時、そんなことをする会社があるのか? でも、本当はどうなのか? そう思って岩波書店の
サイトを覗くと、もう堂々と「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」と
赤字のゴシック体で書いてあるのです。

 この出版社一体何を考えているのでしょう?

 何故コネにこだわるのか? 常識的に考えたら、公募の方が優秀な学生が集まりそうなものなのに。

 私には、真意は分かりません。

 もしかして、この会社の重役の子息がこの会社に入社したいと考えているが、その子に劣等感を
抱かせないために、今年だけ全員コネ採用をしようとでも思っているのか?

 本当に何を考えているのか?

 でも、私には思い当たる節があるのです。それは出版社の驕りというものなのです。

 出版社と言えば、何の権力もなく、ただペンの力で自由と正義のために闘うというイメージがあったのですが‥でも昔はともかくとして、今の出版社は違うのです。儲かることが第一。つまり、売れることが第一。中身は関係ない。関係ないというよりも、新奇なものであり、タイトルが強烈であること。

 だから、通説を批判するような内容の方が却って読者の気を引くということもあり、とんでもない内容の本がやたらに出版されている状況にあるのです。人気のある作家は休む暇はなし。幾ら中身に新鮮味がなくなってもです。売れる限り、どれだけでも出版社から声がかかる。

 しかし、本を出したいと考える人は、何も売れっ子に限られません。特に団塊の世代が引退しつつある昨今。自費出版を含め、自分の本を出版したいと考える素人が多いのです。

 つまり、出版社には、私の本を出版して欲しいという企画が絶えず持ち込まれる状況にあるのです。でも、簡単に予想がつくように、ダイヤモンドの原石が見つかるようなことは本当に稀なのです。で、その一方で、出版社の社員は大変に多忙である、と。しかし、出版の話を進めるかどうかは出版社の社員の一存で決まると言ってもいい。

 お分かりですか? 出版社の社員というのは、本を出したいと考える人にとっては、お役人のような存在なのです。

 「原稿があるのですが、読んでいただけるでしょうか?」

 「忙しいのですよね」

 「きっと面白いと思います」

 「だったら置いていったら?」

 「いつお返事を頂けるでしょう?」

 「そんなこと分かんないよ。忙しいんだから」


 なんてことが日常茶飯事であるのです。

 つまり、岩波の今回の採用の件は、そうした驕りの体質が表れたというだけの話ではないのでしょうか。

 最後に一言。私、経済学部の学生が他の学部の学生と違って、余り勉強したがらないのは、岩波文庫の翻訳本の日本語訳が大変わかりくいことが一因では、と思っているのです。

 なにせ、とんでもない訳の本が出回っている訳ですから。

 ということで、私は、リカードの「経済学および課税の原理」を自分で訳しなおしてしまった実績があるのです。メルマガの読者には、無料で配布しているのですが。




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columnistseiji at 11:25|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)バカもん 

中国の為替自由化と日本の財政破綻確率の関係

突然ですが、我が国の財政破綻というか、そこまで行かなくても今後益々財政運営が厳しくなるのではないかという見通しについて、どう思いますか?

 こういう話になるから、幾ら増税は嫌だと思いつつも、ある程度は仕方がないな、なんて考える人がいるということなのですが‥でもその一方で、増税は絶対に認めるべきではない、なんて考えもあるのです。

 本日もまた繰り返しになるのですが、増税が必要であるかどうかは、主権者の国民が決めることができる訳でもなく、また政治家が決めることができる訳でもないのです。もちろん、形式的には国民の意思を反映し、議員が法律を成立させるということによって決定されるのはそのとおりなのですが、しかし実際に決定権を握っているのは、国債を大量に保有する投資家であると言っていいのです。

 つまり、金貸しが借金をしている人に対し、もっと節約しなさいよと言えば、借金をしている人は、その指示に従わざるを得ないということであり、また金貸しが、借金をしている人の両親がお金持ちであることを承知で気前よくお金を貸し続けるのであれば、借金をしている人は、どれだけでも贅沢ができるのと同じようなことなのです。

 ということで、金貸し、つまり国債の保有者の意志は絶対ということで、だからこそ財政当局は、投資家の意向が気になるのです。

 で、その投資家の代表格の大銀行が危機シナリオを示すということは、財政当局にとっては一面では都合のいいことでもあるのです。何故ならば、そうやって厳しめのことを言ってくれればこそ、国民の増税に対する理解も得やすくなるからなのです。但し、その一方で、不都合なこともあるのです。というのも、そうやって投資家が我が国の国債に対して警戒心を持つようになれば、なにかをきっかけとして国債価格の暴落が起きやすくなるからです。

 では、国債の価格が暴落すると、それは政府にとってどんな意味があるのか?

 国債の価格が低下するということは、国債の人気がなくなるということ。人気がないのだから、金利をもう少し上げてもいいのではないかという投資家の意向が反映されることになるのです。ですから、今は1%程度で済んでいる金利が、例えば、2%にも3%になってもおかしくないということなのです。

 もうお分かりだと思うのですが、国債の人気が落ちるということは、国債の利払い負担が増加する
ことを意味します。

 では、ここでミニテストをしてみましょう。いいですか?

 我が国の国債の発行残高は、今現在約700兆円あるとしましょう。

 で、突然、国債価格の暴落が起き、国債の利回りが現在の1%程度から2%へ上昇した場合、利払い負担はどの程度増えることになるでしょう?

 700兆円×0.01=7兆円  700兆円×0.02=14兆円

 「分かった。利払い費用は、7兆円から14兆円に増えるので、利払い費用がいっぺんに7兆円も
 増えるのよ」

 以上のように考えた人が多いのではないでしょうか?

 でも、上の考え方は正しくはないのです。何故ならば、700兆円というのは、これまでに発行した国債の市場流通分であって、それらの国債の金利が今更変わることはないからです。国債の流通利回りの上昇によって影響を受けるのは、これから発行される国債の金利であるのです。

 では、1年間にどれほどの国債が発行されているでしょう?

 「最近は、一般会計予算の財源の半分ほどが国債の発行によって賄われているというから、45兆円程度?」

 凄い! よくご存じですね。でも、正解ではありません。確かに新発債は44兆円程度なのですが、その他に借換債というのがあるのです。借換債とは、これまでに発行していた国債を借り換えるために発行する国債であるのです。

 「何故、国債を借り換えるの?」

 だって、国債の償還財源が確保できないので、改めて国債を発行してその償還財源を確保する必要があるのです。つまり、借金を支払うために借金をしている、と。

 「えー、そんなことをしているの? それは酷い! 何故、政府はそんなに酷くなっていることを国民に説明しないの?」

 確かに、そういう現実を国民によく説明すれば、増税の必要性が理解されるかもしれませんが、
その反面、余りに国民がそのようなことに過敏になると、それが国債に対する不信感を芽生えさせるかもしれないので‥果たして、財政事情の深刻さをどの程度国民に説明すべきかは大変微妙な問題であるからです。

 いずれにしても、2012年度に110兆円強の借換債を発行するということで、合計150〜160兆円の国債が発行されるということになります。そして、その国債の金利が仮に1%引き上げられるとすれば、1.5〜1.6兆円ほど利払いが増えることになるのです。

 ということで、国債の利回りが上昇しても、いきなりどーんと利払い負担が増えるという訳ではない
のですが、じわりじわりボディーブローのように効いてくるのです。で。そうやって利払い負担が増えると、またまた増税の必要性が高まる、と。

 「でも、結局、投資家としての銀行の方も魅力的な貸出先が見つからないので、だからこそ大銀行の国債保有高が増えているということなのでしょう? だから、多少国債に対する警戒心が生まれたとしても、国債を引き受けない訳にはいかないのでは?」

 問題はそこなのです。私も、三菱UFJなどが国債から何に乗り換えようとするのか、大変興味があるのです。

 では、そうやって高を括っていて大丈夫なのか? どうせ国内の投資家は、国債の他にはめぼしい投資物件がないではないか、と。

 この辺のところを如何に認識するかということが大切なのです。

 日本の大銀行は、優良な貸出先が限られているから国債でやむなく運用している、と。では、本当に乗換先はないのか?

 ここで、また貴方に質問をしてみたいと思います?

 もし、今後も中国が今までのような高い経済成長率を続け、その上、衣食足って礼節を知るではありませんが、大変紳士的な国になり‥つまり人権問題も、領土問題も今までとは違って柔軟に対応するようになり、そして著作権などにも最大限の配慮をし、その上資本取引の自由化、つまり為替の自由化にも本格的に取り組み、人民元レートの決定を完全に市場に任せるようになり、そして外国人による資本の移動も完全に自由にしたとしたら、その時、日本にはどのような影響を及ぼすというのでしょう?

 「ちょっと信じられないけど‥」

 ですから、仮定の話としてです。

 「でも、仮に中国がそのように自由で豊かで紳士的な国になったら、アジア人として私も嬉しい
よ。それに隣国が豊かになれば、日本にもおこぼれがあるし‥」

 多くの人がそう考えるでしょうし、私もそうなって欲しいと思うのです。

 でも、仮にそうなると、そんなに高い経済成長率を示し、そして益々人民元の価値が上がることが予想されれば、人民元建ての資産を保有したいと思う人が増えるのではないでしょうか? 例えば人民元建ての中国国債を保有したい、と。何故ならば、金利も高いし、人民元の価値が上昇することによって為替差益を狙うこともできるからなのです。それに、もうドルに次ぐ立派なハードカレンシーになっているからです。

 そんな美味しい話を大銀行が見逃すはずがありません。さっそく中国国債を大量に取得しようとするでしょう。しかし、そうなれば、その分日本国債の保有高が減少することになり、そしてそれによって日本国債の価格が低下するということが考えられるのです。そして、上に示した計算のように、政府の毎年の利払い負担がじわりじわりと増え、日本の財政事情が益々悪化するでしょう。

 中国には、立派な国になり、為替の自由化も進めて欲しいのですが、そうなると、我が国の財政にとっては思わぬ副作用もあるのです。



 
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columnistseiji at 10:25|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2012年02月02日

三菱UFJの危機シナリオの意味

 突然ですが、三菱UFJ銀行の危機シナリオというのをご存知でしょうか?

 実は、読者の方から「国債バブルで日本国債がデフォルトになるって本当ですか?」なんて質問があったのですが‥まあその質問が直接関係しているのかどうかは分かりませんが、ネットサーフィンをしていると「三菱UFJ銀の危機シナリオ」なる言葉に遭遇しました。

 一体、危機とは何を指しているのでしょうか?

 何と、三菱UFJ銀行は、数年先に日本国債の利回りが急上昇、従って国債の価格が暴落することを想定し、その場合の国債売却計画を練っていることが明らかになったと報じられているのです。

 三菱UFJ銀行と言えば、日本を代表する銀行の一つ。日本国債の保有者は、9割が国内投資家であって、また4割が国内の銀行だというのです。そしてその主要行の一つが三菱UFJ銀行であるので、その銀行がどのような意向を有しているかということは、国債の相場に多大な影響を持つと
言っていいのです。

 早速、ネットの世界では大きな反響を呼んでいるのです。あれほど、こんなに不景気なときに増税をするのは何事かと怒っていたような人たちも、このシナリオが明らかにされるや、日本国債が暴落することが当然であるように考えているようなのです。

 私は、常々、消費税増税の決定権者は投資家であると言ってきました。

 政治家がどんなことを言おうと‥或いは、国民がどれだけ増税に反対しようと、消費税増税を決定する権限を持っているのは、国債を保有している投資家である、と。投資家が国債に見向きもしなくなれば、財政は破綻してしまう訳であり、そうならないためには否が応でも増税が避けられない場合がある、と。その一方で、これまでのように幾ら政府債務残高の規模が対GDPで世界一だとはいっても、投資家がそれを容認している限り、増税を回避することも可能であるのだ、と。

 で、その投資家の代表とも言うべき大手銀行の一つが、ここに一つの意志を表明したということであるのです。

 今後数年たって、国債の価格が下落し‥つまり、国債の利回りが急騰するような時には、手持ちの国債を数兆円の単位で売却することを考えているのだ、と。

 もちろん、国債の利回りが上がるというのが、景気回復に伴うものであれば、経済全体にとっては大変うれしいことであるのですが、その場合でも保有する国債の価格が低下することによって銀行には多大の損失が発生するのも事実であるのです。ましてや、国債の価格の低下が、景気の回復とは関係がなく、単に日本国債に対する信用度が落ちたということで起きれば、大変な混乱を引き起こしてしまうでしょう。

 何といっても最大の国債の保有者である銀行の代表格みたいなところが、私は国債をうっぱらいます、と余りにも率直に言っているのです。

 まあ、何事も右へ倣えが大好きな日本社会のことですから、大手銀行が国債を売りに出せば、他にも同調者が出現し、そうなれば益々国債の価格を引き下げてしまうでしょう。今まで恐れてきたことが現実のものになってしまうかもしれないのです。

 さあ、こんな予想を突き付けられて、今まで増税に反対してきた評論家や政治家は、どう反論するのでしょう? まだまだ増税の時期ではなく、国債の増発で凌ぐべきだなどと言うことができるのでしょうか?

 ただ、このような展開になると、何かおかしいなと思う方がいるかもしれません。そうです、何か裏があるのではないか、と。三菱UFJの危機シナリオは、増税路線を支持するための助け舟なのではないか、と。

 確かに、その要素が全くないということは断言できないのですが、ただ投資家として、政府に財政の節度を乱さないで欲しいと考えているのも事実だと思うのです。いっぺんに財政を健全化することなど無理ではあろうが、だからといって、このまま国債の残高が増え続けるのも危険すぎる、と。何せ国債に対する信用が失われることによって一番被害を受けるのは現に国債を保有している自分たち銀行なのだから、と。

 まあ、私が急にこんなことを話し、大変驚かれた方もいらっしゃるとは思うのですが、念のために言っておきますと、マーケットの方、つまり国債の流通市場の方は、それほど反応していないのも事実でです。

 つまり、危機シナリオといっても、そんなもの本来どこの銀行でも考えているのではないか、と。そして、今すぐに国債を売却する必要もないし‥一体全体、国債から何に乗り換えたらいいのか、と。

 そもそも不況のためにいい貸出先が見つからず、そして優良な貸出先に見えるところは内部留保が厚く銀行からお金を借りようとはしないので、自分たちはせっせと国債を保有するようになったのではないか、と。

 確かに国債の利回りは低い。涙が出るほど低い。しかし、他に運用先がないではないか、と。仮に国債が危ないと感じ始めたとして、何に一体乗り換えるべきなのか、と。

 考えたら少し皮肉な話であるのです。景気が良くなくて、貸したい先が見つからないことが、国債が人気のある秘密だなんて。だったら、万一日本がバカ景気になって、貸出先がどっと増えたときに、財政破綻が起こるということなのでしょうか?

 

 大銀行が国債を売却するとなると、これはやばいな、と感じた方、クリックをお願い致します。
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columnistseiji at 12:22|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

やっぱりそうだった、日中国債持ち合いの意味!

 来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、昨年のことを言うと鬼はどうするのでしょう?

 やっぱり笑う? それとも怒る? それとも納得する?

 このブログを読んでいる貴方には納得してもらいたいと思うのです。

 突然ですが、昨年の12月、日本政府が中国と国債の持ち合いをするという計画を発表したのを憶えているでしょうか?

 何故そんなことをするのだろう、と多くの人が思ったのです。というか、中国嫌いな人からは非難ごうごう。

 で、私は言ったのです。これには深い意味があると。大人だし、外交という側面もあるので政府ははっきりとは言わないが、日本側の抗議を表しているのだ、と。要するに、中国が円を買い、日本国債を買うことが原因で超円高になってしまっているではないか、と。もう少し考えて欲しい、と。そうでなければ、日本政府も中国の国債を買うぞ、と。

 昨年12月26日、私は「日中国債持ち合いの本当の理由」と題して、そんなことを書いたのです。

 で、これに対して、多くの読者は共感の意を示してくれたのですが、正反対の反応を示す人もいたのです。

 果たして私の指摘は正当なものであったのか?

 その答えが、本日のWall Street Journal に出ているのです。

 When Japanese Prime Minister Yoshihiko Noda and his Chinese counterpart Wen Jiabao met in December, a deal by Tokyo to buy Chinese government bonds was hailed by the two as way to bring the major trading partners even closer together.

「野田総理が中国の温家宝首相と昨年12月に会ったとき、日本政府による中国国債の購入が、
両国の関係を緊密化するものとして取り上げられた」

 But there's more to the plan by Japan to buy up to $10 billion of Chinese bonds than meets the eye, some Japanese officials say, adding that it's in fact a reflection of their frustration with the unilateral and aggressive purchases of Japanese government bonds by China.

「しかし、日本政府による100億ドルを上限とする中国国債の購入にはそれ以上の意味がある、とある政府関係者は言う。それは、中国による一方的で攻撃的な日本国債の購入に関する不満を
反映している」


 この記事は有料の記事らしく、これ以上の内容を知りたいと思うなら、会員になる必要があるのですが、でも敢てこれ以上のことを知る必要もないでしょう。何故ならば上の文言にはっきりと「中国による一方的で攻撃的な日本国債の購入に関する不満」と記されているからです。

 最近の超円高の原因が、中国政府による円買いとセットになった日本国債の購入にあるかどうかは別として、少なくても政府関係者がそのように考えているということが、これで証明されたことに
なるのです。

 取り敢えず以上の事実をご報告しておきます。


 日本のマスコミは、少しもそんなことを報じていないぞ、と思った方、クリックをお願いいたします。
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columnistseiji at 09:24|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)中国 

2012年02月01日

損するかもしれないのにトリプルA

 本日は、先ず、本題ではないのですが言いたいことがあります。

 オセロの中島さん! はよー、戻ってこい! こけたらおきなはれ!

 みんなまっとるよ。

 ところで、年金のことを考え出すと気が滅入ります。果たして、今後年金制度を維持することができるのか、と。我々が社会人になったとき、何の説明もせず勝手に給料から天引きを始めたくせに、後になって支給年齢を先送りしたり‥まあ、それだけならまだ我慢もしなければいけないのでしょうが、そもそも年金制度が維持できるかどうか怪しくなっているからです。

 年金が支給されなくなったら、どうやって暮らしていくのか?

 でも、全然心配していない人もいるでしょう。まあ、自分が生きている間は持つであろうなんて。ということは、年代が下がれば下がるほど心配になる訳なのです。それに、現役世代は、高齢者を支える役割をさせられるので、そして現役一人あたりの負荷がどんどん重くなる訳ですから、掛け金が増えるか、増税が行われるかしかないことが容易に予想されるからなのです。

 今でも格差問題などで若者の生活が苦しいというのに‥なんて。

 本当に日本の将来には暗雲が圧し掛かっているのです。でも、本当は解決手段もあるのです。ただ、本日はそれについて詳しく話すことは致しません。もう少し機が熟してからがいいでしょう。

 ところで、そうやって年金のことが心配になると、ここは自分の力でどうにかしなければという気持ちが強くなろうというものです。政府なんか当てにできない。だったらお金を貯めておかないと、なんて。

 昨日中国について書きましたが、中国は、預金金利が物価上昇率に比べて低いためにお金の価値が目減りし、従って、人々はそのお金の価値の目減りが嫌になり闇金に手を出した、と。言ってみれば出資法違反の事件のようなものなのです。絶対に高利を保証しますから、出資しませんか?と。

 まあ、そうやって騙された人のことを批判するのは簡単であるのですが、日本でも騙される人が後を絶たないのです。

 日本の預金金利は、中国なんかよりももっともっと低い。というか、普通預金なんてしていても、預金金利はゼロ同然。そして、他行のATMで預金を引き出したりしていると、元本が増えるどころか減ってしまいます。

 何故、FX取引が盛んになったり、外貨預金が注目されるのか?

 その一因は、言うまでもなく預金金利が極めて低い水準にあるからです。これでは元本が殖えることを期待することはできない。その一方で、年金を当てにしていて大丈夫なのか、と。

 ところで、本日、経済紙に目を通していたら、次のような広告を目にしました。

 最終利回り 年6.02% 単利では年7.08%

 はい、そこの貴方! そうそうイケメンの貴方です。どう思います?

 「いきなり言われても‥ああ分かった。外貨建ての債券じゃないの?」

 正解! これは外貨建債券の話です。広告にも、為替リスクがありますよと、ちゃんと書いてあるのです。ただ、一般の人がそのことをそれだけ理解しているか? それに、この債券の仕組み、少しばかり複雑で一般の人が理解するには相当時間がかかると思うのです。

 この債券の最終利回りは年6.02%となっているので、では毎年6%ほどの利子が振り込まれるのかと思いきや‥なんとディスカウント債券とされているのです。ディスカウント債券?

 で、よくみると、売出価格は69.21%なのだ、と。

 分かります? つまり、額面100に対して69.21を振り込めばこの債券を購入することができるということなのです。

 ということで、この債券はゼロクーポン債なのか‥なんて思っていると、年利率は0.5%なんて書いてあるのです。どういう意味なのでしょうか?

 実は、この債券はゼロクーポン債ではないのです。ちゃんと0.5%の金利が支払われることになっているのです。

 つまり、この債券は、金利が0.5%の債券でありながら、当初の払い込みが額面の69.21%に過ぎないので、最終的な利回りは6.02%が確保されるというのです。

 ああ、ややこしや、ややこしや!

 もちろん、プロであれば全然ややこしいことはない。でも、一般の人にとっては、ややこしい。

 では、この債券に投資をすれば、最終的には約6%の利回りが保証されると考えていいのか?

 「だって、そうなのでしょう? ちゃんと6.02%と書いてあるのだから」

 しかし、我々日本人にとって確実に6.02%の利回りが保証されるというのであれば、どこの銀行や証券会社がそんな巧い話を、一般の人々に持ち込むでしょうか?

 だってそうでしょう? 日本の国債に投資しても、1%程度の利回りしか確保できないのに、他方、この債券は6%以上の利回りが保証されるのであれば、誰だってこの後者の債券を購入するでしょう。

 「分かった。その債券、発行者の信用度が低いのだ。つまり、リスクが高く、格付けが低い」

 ハイリスク・ハイリターンということでしょうか? リスクが高いから利回りも高い。だから、償還までに倒産するようなことがなければ高い利回りが確保できるが、倒産する恐れも多少あるからその分利回りを高くしているということでしょうか?

 しかし、そうではないのです。広告にはこう記されているのです。

 格付け  AAA(S&P)  Aaa(Moody's)

 お分かりになったでしょうか? つまりスタンダード・アンド・プアーズによっても、或いはムーディーズによっても、ともにトリプルAの格付けがつけられている最上級の債券であるのです。

 「日本の国債はトリプルAでもないのに、世界で一番利回りが低く、その一方で、この債券はトリプルAなのに、利回りが6%以上もあるのね。なんか変だな」

 そうなのですよね。もうこうなると、一般の人の頭の中はぐしゃぐしゃ!

 しかし、そこのところは「円建ての債券と外貨建ての債券では、単純に利回りを比較することが
できないのです」と専門家から言われると、一般の方は、「ああ、そう」というしかないのです。本当に分かったのでしょうか?

 でも、このブログを見るような方でしたら、多分お分かりになると思うのです。仮に円が将来的に価値が上がるとすれば、この外貨建て債券の償還元本は、円に交換したときに、大きく価値が下がることになろう、と。

 ということで、外貨建て債券に投資する場合には、もう何度も聞いて耳にタコができるほどでしょうが、この為替リスクというものを考慮に入れておかねばならないのです。で、為替リスクを考慮に入れるということは、とりもなおさず、通貨の違う利回りを単純に比較してはいけないということであるのです。

 しかし、この新聞広告は、年6.02%だということをどーんと打ち出して、一般の投資家の気を引こうとしている訳です。つまり、一般の人々の錯覚を利用している節が窺える、と。そして、さらに悪いことには、トリプルAがついているということも強調しているのです。

 普通、トリプルAということは倒産のリスクが最も小さい、信用度が最高の債券を意味する訳です。
つまり、その債券に投資して損をする確率は一番小さいであろう、と。しかし、今言ったように外貨建てであれば、損をする可能性が最も小さいなんてことは言えないのです。というよりも円建てで考えたら元本割れになったということなど日常茶飯事であるからです。

 でも、トリプルAがついているといって、ここでも錯覚を利用しているのです。

 トリプルAなのに逆に利回りが一番高いなんて、おかしいと思わなければならないのです。

 いずれにしても、この債券の発行体は何なのでしょう?

 実は、この債券は世界銀行が発行するもので、南アフリカランド建てだというのです。

 「じゃあ、この債券はお薦めではないの?」

 それは、償還期間の7年が経ってみないと何とも言えないのです。南アフリカランドに対し、そのとき円の価値が変わっていなかったり弱くなっていたら大儲けすることもあり、逆に円が強くなっていれば損をすることもあるでしょう。

 いずれにしても、為替リスクに関しては、トリプルAの格付けも何の意味もないことを肝に銘じておきましょう。

 


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columnistseiji at 11:00|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)為替 | 金利

2012年01月31日

中国のバブルはまだ弾けない!

 そこの貴方! そう貴方です。中国はバブルだなんて思っていませんか? そして、バブルである以上、破裂するのは当然だなんて。

 確かに上海などの大都会では、マンション価格の急落が起きていると言われるのですが‥でも、まだかつての日本のような状況にはなっていません。そして、アメリカで住宅バブルが弾けたときのようにも。

 中国人は依然として騒々しい、もとい、元気ですもの。バブルが弾けてしょんぼりしているのであれば、もう少し勢いも鈍るというものです。それに、例えばGDPの伸び率にもそれが反映されるでしょう。

 しかし、以前としてGDPの伸び率は高い。あんなに高い経済成長率を続けておいて、バブルが弾けたなんていっても‥

 但し、温家宝首相はこんなことを言っているのです。

 「(地方政府債務は)全般に安全で管理可能(にある)」

 何故今どき、中国の首相がそんなことを言うのでしょう?

 中国通の方ならもうご存知ですよね。そうなのです。中国の銀行が地方政府に貸し付けている(とはいっても、直接的には地方政府の子会社である地方融資平台に貸し付けている)債権が焦げ付いているのではないかと言われているのです。現に、元本の返済をできないでいる貸付金が増えているのだ、と。

 返済期限が迫っているのに返済することができない貸付金が大量に存在していて、銀行経営に深刻な影響を及ぼしているのではないかと心配されており、従って、そうした不安を一掃する意味で上記の首相の発言になったようなのです。

 でも、どうして地方政府はお金を返すこができないのか? どうしてでしょう?

 実は、地方政府が融資平台という子会社を通じて借りているお金の多くは、土地開発などのために使われているらしく、地方政府は安い価格で土地を収用し、そして土地を付加価値を高めた上で売り抜く、と。つまり、土地取引によってもたらされる収益で、借金の返済をするつもりでいるのですが、ご承知のように不動産の価格が上昇するときにはこのビジネスモデルは成功ですが、一旦価格が低下しだすと、アメリカの住宅バブルと同じで返済財源に支障を来し、いっぺんに不良債権になってしまうのです。

 「だったら、中国もバブルが弾けたんだ!」

 確かに、そういう表現ができるかもしれません。中国もバブルが弾けた、と。しかし、弾けたとはいっても、その規模はかつての日本や米国ほどではないのです。まだまだ傷は小さい、と。銀行の融資残高に占める不良債権比率も、まだ4〜5%にとどまるのではという見方もあるのです。不良債権の比率で言えば、例えば今から10年以上前の頃の方が遥かに高かった、と。

 ということで、温家宝首相の肩を持つ訳ではないのですが、まだまだコントロール可能な規模であり、これによって中国経済が墜落することはないであろう、と思うのです。

 中国がオリンピックを開催して4年。万国博覧会も開催し‥そして、多くの中国人が世界各地を訪れ‥その姿は日本のかつての農協を連想させるものですが、日本でバブルが弾けるのはまだまだ後のことだったのです。

 日本では、確か1975年前後から不況の色が強まってくるのですが、その直前はミニバブルの様相を呈していたのも事実です。土地の価格も上昇し、そして、就職戦線は売り手市場で、企業側は確保した学生に逃げられないようにと、内定を出した学生たちをハワイなどに連れて行ったりしていたものでした。今では信じられないできごとです。

 しかし、日本でバブルが弾けるのは、その後15年ほどが経ってからのことなのです。従って、私は今中国で起きている現象はミニバブルに過ぎず、本当のバブルは今暫く経ってから、つまり中国経済が米国経済を追い抜くころにやってくると思うのです。

 何と言っても、経済規模でアメリカを追い抜き世界一になれば、誰だって有頂天になるというものです。そのときになって本当のバブルが発生するでしょう。そして、その反動は予想もできないものに
なるでしょう。

 だから、まだバブルは弾けていないと認識すべきなのです。

 中国では、地方政府の債務問題の他にも、闇金が問題になっていると言います。この現象も日本で起きたことと同じですが、違う面もあるのです。暴利をむさぼる、つまり途方もない金利でお金を
融資するのは同じですが、闇金のお金の出所が、場合によっては一般人のへそくりであることも多いと言うのです。そして、そうやって出資したお金が返済されることがなく、庶民がデモを繰り広げたりするというのです。闇金ではありませんが‥日本では、出資法違反の事件がありました。

 で、何故中国の一般人が闇金に出資するかと言えば、金利が低くて、その一方で物価が高いので、お金の価値が目減りしてしまうからというのです。

 金融を緩和しすぎると思わぬ副作用があることにも注意すべきです。



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columnistseiji at 13:43|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2012年01月30日

米国人労働者の生産性が中国の10倍というのは眉ツバ

 来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、先週のことを言うと、鬼はどうするのでしょう?

 感心する、それとも怒る、それとも寝てしまう?

 先週、オバマ大統領の演説がありましたよね。どう思いました?

 私は、二つのことが印象に残っています。というよりも、よくよく考えていたら二つのことが気になったというべきでしょうか。

 一つは、オバマ大統領の中国叩きが再開したということです。

 まあ、どの位本気かどうかは別として、中国が貿易面でフェアではないことを訴え、中国に厳しく接するという態度を鮮明にし‥選挙民に訴える作戦のようなのです。そしてそのことは、ガイトナー財務長官の今回のダボス会議のスピーチでも感じられたのでした。

 ガイトナー財務長官と言えば、オバマ政権発足直前の時点では、中国が為替を操作していると大統領は信じていると発言し、当時注目を浴びました。もちろん、選挙民の支持を取り付けようとしたのだと思います。しかし、オバマ政権発足と同時に、ガイトナー財務長官の厳しいトーンは一転したのです。そして、中国を批判するよりも、むしろ中国に気を使うことが多くなったのです。

 ということで、今回オバマ大統領が中国を厳しく批判しているのも、ひとえに大統領選をにらんでのことだと思うのです。

 そして、もう一つ印象に残っていることがあります。それは、多くの人も同じように感じているかも
しれませんが、オバマ大統領が米国の製造業回帰に並々ならぬ熱意を示していることです。確かに、今米国のビッグ3が蘇り、なんとなく自信を取り戻した感のあるアメリカの製造業。税制などの
面で国内回帰企業に対し優遇装置を与えると、益々海外脱出組がアメリカに戻ってきるようになり、そうなれば雇用も回復するのではと期待したいのでしょう。

 日本の雰囲気で言えば、企業の海外脱出、つまり空洞化は避けて通れない現象だと思われるのに、では何故オバマ大統領は自信があるのかと言えば、最近、中国人労働者の人件費は急騰する傾向にあり、また、ストライキなどの問題もあり、トータルで考えると必ずしも中国移転が安くつくとは限らないということのようなのです。

 それに、もっと重大なことも言っているのです。オバマ大統領は、米国の労働者の生産性は中国の労働者の生産性の10倍あると言うのです。

 この発言、調べてみるとオバマ大統領の独自の考えというよりも、どうもアメリカの専門家の意見であるのです。

 確かに、米国の労働者の生産性が10倍も高いなら、幾ら中国人労働者の人件費が米国人の1/10であっても、安いことはなく、当たり前になってしまうのです。何故ならば、平均的米国人労働者が、平均的中国人労働者の10倍の働きをするのであれば、前者が後者の10倍の給与をもらっても当たり前であるからです。

 となれば、幾ら表面的に相当に安いように見える中国の人件費も、本当はそれほど魅力のあるものではないということで、それならば、また米国に戻って米国人労働者を雇うことにしようか、と。

 はい、そこの貴方! そうそう貴方です。このオバマ大統領というか、米国の専門家たちの意見を
どう思いますか?

 仮に、その主張が正当なものであって、そして日本人の労働者の生産性も、中国人労働者に比べこのように相当高いものであることが証明されたとしたら如何でしょうか?

 日本の企業も、海外脱出なんて馬鹿なことは止めた方がいいということなのでしょうか?

 でも、多くの企業は、本音としては実質的にも海外の労働者の人件費の方が安いと実感しているのです。もちろん、能率などを総合的に判断しての話です。そうでなければ、わざわざ海外に脱出することなどしないのです。

 ところで、貴方は、日本のサービス産業の問題点というのをご承知でしょうか?

 サービス業の問題点といってもいろいろあるでしょうが、私が言いたいのは、近年、我が国の政府関係者が特に関心を示してきた問題です。

 そうなのです。日本のサービス産業は、生産性が低いので、それを引き上げることが課題だなんてことが真剣に議論されてきていたのです。で、生産性を上げるためには、極力パソコンなどを活用して‥なんて。

 まあ、私は、パソコンの活用を批判するものではないのですが‥だからと言って、何とかの一つ覚えみたいに何でもかんでもパソコンさえ導入し、ネットにつなげば、即生産性が上がるなんて考える単純さにいささか驚きを感じてしまうのです。

 そんなことして、例えばどうして理髪店の生産性が上がるの? 顧客の名簿をパソコンで管理して、偶には営業用のはがきでも送る?

 私は、何を言いたいのか?

 実は、日本の労働問題の専門家も、そしてアメリカの産業問題の専門家も、生産性の意味をはき違えている恐れがあるのです。

 まあ、難しい議論をする前に、そもそもアメリカ人の労働者が中国人の労働者の10倍も生産性が高いという主張をどう感じますか?

 そんな話を聞かされると、アメリカ人なら、少しばかりおもはゆい、というか嬉しくなるでしょう。やっぱりアメリカはナンバーワンだ、と。

 しかし、中国人は、その話をどのように感じるでしょう? 「中国人の労働者は、アメリカ人の労働者の1/10しか働かない? そんなバカな!」

 では、中立の立場の日本人からすれば、その主張をどう評価すべきでしょう?

 確かに、例えばビル・ゲーツだとかスティーブ・ジョブズなどのことを考えると、アメリカ人のなかには驚くべき才能を持った人がいるのは、そのとおりなのでしょうが‥しかし平均すると、それほどの違いはないのではないでしょうか? まあ、これが特殊な才能を要する労働者の場合であれば、生産効率が何倍か高いという事もあり得るでしょうが、例えば、パソコンを組み立てたり、シャツを製造したり、或いはバービー人形を作ったりする仕事において、アメリカ人は中国人の10倍も能率がいいなどということがあり得るのか?

 答えは、ノー。

 その一方で、実際の統計上の生産性という意味での米国人労働者の生産性が、中国人労働者の生産性の10倍あるというのは本当であるのです。

 しかし、この場合の「生産性」の意味をよく理解する必要があるのです。

 生産性とは、何でしょうか? 常識的な意味では、生産効率というか、能率というか、そういったことを意味する訳ですが、統計的に算出させる生産性とは、次のような式になっているのです。

     労働生産性=生産量(付加価値)÷労働量(従業員数)

 いいですか? 生産性は、生産量を投入労働量で割ったものということですから、1単位当たりの労働が生み出す生産量を指す訳ですが、注意しなければならないのは、その場合の単位当たりの生産量は、あくまでも付加価値で表示されるということなのです。付加価値とは、その単位当たりの生産物に幾らの価値が付くかということです。

 つまり、中国人の労働者の場合には、ある製品を1日の労働によって10単位生産することができ、その一方で、アメリカの労働者の場合にも10単位生産することができても、中国人のその10単位の製品の価値が10ドルにしか過ぎず、他方でアメリカ人労働者が生産する10単位の製品には100ドルの価値がつくならば、アメリカ人労働者の生産性は、中国人の10倍になる訳です。

 もちろん、その際、アメリカ人の生産する製品の品質などが大変優れている場合も考えられるのですが、全く同じ品質の製品しか作っていないことも考えられるのです。では、何故、アメリカ人の製品は中国製品の10倍の価値が付くのか? それは、アメリカの製品は、アメリカ人労働者の人件費が高いために、10倍の価格を付けざるを得ないだけのことなのです。

 ということで、労働生産性と言う言葉は、実際の仕事の能率を示す場合もあり得るが、実際には、
各国の労働者の人件費というか、所得を反映する場合が多いということに気が付く必要があるのです。

 つまり、日本のサービス業の生産性が欧米に比べ低いというのは、何も日本のサービス産業に携わる人々の能率が悪いということではなく、単に稼ぎが少ないというだけかもしれないのです。

 となれば、アメリカの労働者の生産性が中国に比べ10倍高いという事実は、少しも喜ぶべきことではないことが分かるのです。単にアメリカの労働者の人件費が高いから、生産性が高いという風に見えるだけかもしれないのです。

 オバマ大統領が、その事実を知ったら、多分大変に落胆すると思うのです。

 製造業を回帰させたいという気持ちに水を差す気はないのですが、楽観はできない言いたいのです。中国人の給与水準がもっともっと上がらないことには、米国の製造業の復活はないと言うべきでしょう。

 

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2012年01月29日

被災地はバカ景気

 はい、そこの貴方! 日曜日なのにブログを見て頂き、ありがとう。

 ところで、質問なのですが、人手不足という言葉を聞いてどう思います?

 「人手不足ではなく、仕事不足じゃないの? 米国じゃ、オバマ大統領は雇用の創造にやっきだし、ユーロ圏も失業率が高くて大変みたいだし‥」

 では、日本ではどうなのでしょう?

 「日本だって、失業率こそ相対的に低いものの、実態はよくないのじゃないの? だって、円高で
企業は海外に出ていくし‥」

 だとしたら、やっぱり国内も仕事はないのでしょうか?

 しかし、だとしたら何故仕事不足が起きているのでしょう。市町村が公共事業を実施したくても、人手不足で発注できないのだとか。

 「そんなところがあるの? 何と幸せな‥」

 ところが、その一見幸せそうに見える地域は、一番かわいそうな地域であるのです。というのも、
人手不足が起きているのは、被災に遭った地域だからです。ガレキの処理など仕事は幾らでもあるものの、必要な作業員の確保が難しく、そして作業員の確保が難しいので人件費は高騰する、と。

 まあ、そういうことで、仙台の歓楽街は好景気の様相を呈しているというのです。ブランド物の売れ行きもいいし、タクシーのお客さんも増えている、と。

 「へー、そうなの?」

 実は、仙台などの被災地でバブル景気の様相を示しているという話は、これまでテレビなどでは余り報じられてこなかったのです。

 何故でしょう? 伝え方が難しいのでしょうね。被災地の人は大変だというイメージが壊れてしまうからとか、被災地の人々が景気がいいなら、むしろやっかみを買うことにはならないか、とか。

 いずれにしても、この先、被災地の経済はどうなるのでしょうか? 景気が回復することによって人々の生活も活気づき、そしてその効果が全国にも及ぶことが期待できるのでしょうか?

 もし、被災地の景気の良さが全国にまで及ぶことになれば、亡くなった方々にはお気の毒なのですが、経済の面に関しては少しは明るさを取り戻すということで、悪い話ではないのです。

 確かに、ガレキ処理には長い年月と莫大な予算が投じられ、その効果は大きいでしょう。つまり、被災地の土木事業にかかわる人々の懐は久しぶりに潤うことでしょう。そして、そうやって懐が潤うので消費も活発化しバブルの様相を呈するのです。問題は、それが更なる呼び水効果を生み出すかどうかであるのです。

 私は、楽観は許されないと思うのです。何故ならば、今は無限に思える瓦礫の処理も、いつかは終焉を迎えるからです。そうすると、市町村によっては、新たな街づくりなどの復興事業が継続するでしょうが、土木工事の全体量は少しずつ減少するのは確実であるからです。

 それに、大切なことを忘れてはなりません。

 土木工事の仕事が増えたお蔭で、歓楽街の売り上げは飛躍的に伸び、従って、そうした関係者は、如何にも景気がよくなったという気持ちになるのですが‥果たして、日本の富は増えているのか? と。

 確かに土木工事は増えました。しかし、その土木工事によって、例えば、その地域の土地の価値が昔に比べて増したということではないのです。例えば、荒野を開拓することによって農地にすることができたり、市街地を造成することに成功すれば、新たな価値を創造したと言えるのでしょうが、ガレキの処理というのは、ずたずたに破壊された自分たちの町を元の状態に戻す一歩に過ぎないからです。もちろん、そのための土木事業に対し、国や地方自治体からお金が支給される訳ですが、そのお金も、国や自治体の税金や借金によって賄われているに過ぎないのです。

 ケインズの経済学を信じる人からすれば、まあ、それでも景気回復のためには大切なことなのだと主張するでしょう。何故なら、ケインズは、単に地下深く穴を掘らせ、そして再び埋め戻すような仕事でも経済回復のためには有用なのだと真面目に主張したからです。

 でも、単に穴を掘ってまたそれを埋める仕事に国がお金を支給するのであれば、それは単に、生活補助を与えるのと何ら違うところはないのです。何故、そんな行為が景気を回復させるのか?
単に、誰かの富を貧乏な労働者たちに再分配しただけではないのか、と。

 しかし、乗数効果があるからとか‥分かったようなことを言うのですよね。

 私は、そのような説を殆ど信じません。真の経済の回復は、自分たちの生産能力を高めるまでは実現しない、と。確かに生産能力を高めるために、需要を喚起することが重要な役割を果たすことがあるにしても、です。需要面だけでは解決することはないのです。やっぱり、本当に富を生産し、そしてそれが再生産されるプロセスをしっかりと打ち立てるまでは、経済の自立回復は期待されないのです。

 別に冷や水をかけるつもりはないのですが‥今の被災地のバカ景気を支えているのは、税金と借金に違いない訳ですら、その税金と借金の分だけ被災地の景気がよくなっても、それは当然というものなのです。

 そうした被災地の景気がよほどの税収をもたらすようになれば別ですが、そのような事態になるまでは、余りぬか喜びしない方がいいと思うのです。

 



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columnistseiji at 11:11|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)景気 

2012年01月28日

イラン、強気の原油輸出禁止法案の意味

 先日のEUのイラン産原油輸入禁止決定を受けて、イランが対抗手段を打つのでないかと報じられています。

 対抗手段と言えば、もちろんホルムズ海峡の封鎖? なんて思っていませんか。イラン自身がそう言明しているからなのです。

 でも、ホルムズ海峡の封鎖となれば、米国や英国が黙っている訳にはいかなくなってしまうのです。実際ホルムズ海峡が封鎖され、原油の流通に大きな混乱がもたらされると、途方もない損害が
世界経済にもたらされてしまうでしょう。

 ですから、オバマ大統領もそのことに関して、先日、イラン側に書簡を送ったばかりです。軽率なことをするなよ、と。そんなことをすれば、米国として黙って見過ごす訳にはいかないのだから、と。

 それに、アメリカとしては今、戦争などする気もないし、そのための費用を賄えない状況であるのです。アメリカの今の最大の課題は、経済を立て直し、雇用を回復させること。未だに8%台の失業率をなんとしても、あと2%程度は下げたいと思っているでしょう。そのような見通しが立たなければ決して大統領選に立ち向かうことはできない、と。

 では、どうやって雇用を回復させるかと言えば、先日の一般教書演説のとおり。アウトソーシング
からインソーシングへ。つまり、海外移転の流れを逆転させる。再び国内回帰を促す。そして、そのためには国内回帰する企業に税制上の優遇措置を施す。或いは、大規模な公共事業を実施する。
エネルギー政策を見直す。

 ただ、そのためには莫大な資金が必要となる訳です。しかし、ご承知のとおり、今米国は、財政再建に向かって無駄の削減に努めているところ。一体そのようなお金がどこから出てくるのか?

 その答えが分かっている人は、一般教書演説をよく聴いていた人でしょう。

 そうなのです。オバマ大統領は、国防費を大幅に削減し、それによって浮いたお金の半分を経済の立て直しに利用したいと言っているのです。

 私は何を言いたいのか?

 つまり、今、米国はイランと事を荒立てる余裕などないということです。だからお願いだからホルムズ海峡を封鎖するようなことはしてくれるな、と。イランだって、それは本意ではないだろう、と。

 ただ、イラン側からすれば、そんなことをオバマ大統領が言う位なら、何故、イランに対して制裁など課すのか、と。

 まあ、この辺のところが、なかなか理解しずらいところであるのです。

 イランとぶつかりたいなんて思っていないのに、何故イランを刺激することをするのか、と。しかし、米国からすれば、刺激しているのはイラン側だ、と。

 ねえ、分かりずらいでしょう?

 どっちも刺激しているようにも見え‥しかし、大切なことを忘れてはいけません。

 確かに、イランが核開発をすることによって、イランから米国は刺激を受けているのですが、一番刺激されているのは、米国というよりもイランのすぐそばに位置するイスラエルであるのです。イスラエルは、イランの核開発を大変深刻に受け止めている、と。何故それが分かるかと言えば、イスラエル自身が、イランの核開発は自国の存立を脅かすものだと言っているからです。つまり、イスラエルはいつでもイランを攻撃できる態勢を整えている、と。

 極東の我々から見れば、なんとぶっそうなことか。

 イスラエルとイランの間には、大変な緊張関係が発生しているのです。そして、それを米国は察知して、その緊張が戦争に発展しないようにと気を使っているのです。それに、イスラエル側からは何かと支援や影響を受けている米国ですから。次の大統領選のことも考えなければいけませんし。

 ということで、どうにかイスラエルを宥めたい米国としては、イスラエルに成り代わってイラン側に
核開発の中止を求めたい、ということなのでしょう。

 でも、それはイスラエルと米国の論理であって、イランとしては、核開発こそ自国の独立を守る手段であると考えているのでしょう。何故、自分たちが核開発を止めなければいけないのか?イスラエルでさえ、核を保有しているから強気の態度でいられるではないのか、と。

 つまり、イランは核開発を止めることなど考えていないということでしょう。しかし、だからと言ってイランとしても、戦争までする気はない。だから、ホルムズ海峡の封鎖を実際にやるつもりはないかもしれない。しかし、米国やEUから経済制裁を突き付けられたままにしておくこともできない、と。何らかの対抗措置が必要である、と。

 そこで出てきたのが、逆制裁というやつであるのです。イランからの原油の輸入を禁止するという
のであれば、自分たちの方から、原油輸出禁止を叩きつけてやろうではないか、と。

 EUのなかでも例えばイタリアなどはイラン原油の輸入に大きく頼っている訳ですから、それが、いきなり輸入ができなくなれば、イタリア経済にとっては大変な打撃になるはずです。それでいいのかと、逆にイランは脅かしをかけようというのです。

 ただ、いずれにしてもそうやってイランが逆制裁を掛けるとなれば、もはやホルムズ海峡を封鎖する必要もなくなるのです。何故ならば、そもそもイランが原油の輸出を止めてしまえば、イランの顔は立つ、と。

 そして、イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性が小さくなれば、当然のことながら米国などが
軍事的に反応をする必要もなくなるということで、ドンパチの可能性はなくなる訳です。そして、そうなればイランとしては、今まで通り核開発を進めようという魂胆であるのです。

 問題は、そういう事の進展をイスラエルがどう考えるかということなのです。

 事の本質は、イランにあるというよりも、イスラエルにあると考えた方が理解しやすいかもしれない
のです。

 英国や米国は、歴史的経緯を踏まえて、中東の平和実現のためにもっと本気で働く必要があるのではないでしょうか?

 「イランは、原油輸出を禁止することによって、外貨収入が途絶えないの?」

 まあ、中国などに原油を輸出すればいい、或いは、一時的な措置なので特に支障は生じないと考えているということでしょう。

 
 どさくさに紛れてイランの原油を買い叩こうとしている中国って何?
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columnistseiji at 10:30|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)中東 

2012年01月27日

経常収支黒字がいつまでも続かない理由

 昨年の我が国の貿易収支が赤字になり、少し寂しい気持ちになっている方も多いと思います。

 で、貿易赤字が定着するのかという議論はおいておいて、もし仮に貿易赤字が定着するようであれば、我々日本人はどのように対応すればいいのでしょうか?

 貴方はどう思いますか?

 主に二つの答えが予想されるのです。

 「貿易収支が赤字であっても、所得収支で稼ぎ、経常収支では黒字をキープすれば問題はない」

 では、所得収支とは何か?

 所得収支とは、経常収支の一部であり、主に直接投資や証券投資などによりもたらされる配当や利子(支払い分を差し引いた収支)からなるのです。

 つまり、所得収支で稼ぐとは、海外に投資することによって配当や利子収入を得るということですから、上手に資金運用することがポイントになるのです。

 ということで、幾ら日本の輸出競争力が今後弱まり、貿易によって稼ぐことが難しくなっても、その代り、これまでの蓄えを上手に運用することによっていつまでも豊かな生活を維持することができるかも、と。

 「だけど、アメリカはこれからもゼロ金利を続けると言っているし‥」

 そうなのです。世界的な超低利の状態が長引くと、それにともない所得収支が落ち込みが懸念されるのです。それに、幾らこれまでの蓄えがあるといっても、高齢化の進展とともに蓄えの取り崩しが進むでしょうから、本源的な蓄えの源である貿易収支で稼がないことには、という気にもなるのです。

 とすれば、もう一度貿易黒字を維持できるような作戦を練るか、ということになるのですが‥いずれにしても、ここら辺りに大きな誤解があるようでならないのです。

 端的に言えば、貿易収支や経常収支の黒字は、いつまでもいつまでも黒字を維持することが可能なのか、ということであるのです。

 今見てきたように、貿易収支はともかくとして、経常収支の方は、いつまでもいつまでも黒字を維持してきたいと殆どの方が思っていると思います。

 経常収支の黒字がずっと続くということは、蓄えがどんどん増え続けるということなのです。丁度、今の中国がそのような状況にあると考えていいでしょう。アメリカとは正反対に、中国は毎年多額の経常収支の黒字を計上し、それを背景に着実に外貨準備を増やしていっているのです。

 確かに蓄えが増え続けることは、力強くもあり大変に嬉しい!

 では、中国の経常黒字はずっとずっと続くのか? 

 こんな質問をすると、中国以外のアジアの国がさらに追い上げてくるから‥というような答えが予想されるので、世界は米国と中国の二つしかないと仮定しましょう。

 米国は大変豊かな国であった。そして、中国は貧しい国であったが、安い人件費を武器に輸出で稼ぐようになった、と。そして、米国の経常赤字と中国の経常黒字が定着するようになった、と

 さあ、中国の経常黒字体質はいつまで続くのでしょう? そして、米国の経常赤字体質はずっと続くのでしょうか?

 ここまで来ると、気が付く人も多いと思うのです。

 幾ら中国人がドルを貯めこむのが大好きで、輸出で稼ぎまくっても、結局手にするのはドル紙幣。
もちろんそのドル紙幣をもっていればこそ、アメリカで好きな買い物もでき、アメリカの高層ビルを買収することもできるのです。

 しかし、中国の経済発展がとことん進み、米国の経済と実質的にも肩を並べるようになると、中国人のドルに対する見方に変化が起きてくるでしょう。ドルが今までほどありがたいものには思えなくなってくる、と。幾らドルを保有していても、段々買いたいものも限られてくるようになる、と。で、そうなれば、ドルの価値は落ち、保有している大量の米国債の価値が大きく低下するでしょう。

 結局、大切にしてきた蓄えが、殆ど価値を持たないものになってしまうこともあり得るのです。そんな状態になったとき、中国は米国に輸出を続けようとするのか? 

 そんなことはないでしょう。米国が中国に対して提供できるものを持たないようでは、もはや中国も米国に対し貴重な労働の産物を手渡すことはなくなるでしょう。

 日本はよく、資源がない国だから‥と言われます。それはそのとおりです。そして、資源を購入するためには外貨が必要であって、その外貨を手に入れるには、何かを海外に売却することが必要であるのです。その何かが、昔は生糸であり繊維製品であったのが、鉄鋼に代り、自動車に代りとしてきたのです。

 ですから、最低限度の外貨は、これからも稼いでいくことが必要であるのはそのとおりなのですが、だからと言って必ずしも保有外貨の量を増やし続ける必要があるという訳ではないのです。それに幾ら保有外貨を増やし続けたつもりでも、それがドル建ての米国債などの場合には、過去経験してきたように、大幅な価値の下落が起こり得るので、決して安心することはできないのです。

 結局、富を生み出す能力、日本人が持っているポテンシャルを高める努力と工夫が求められると
いうことではないでしょうか? そのためには地道な努力も必要となるのです。




 理屈はそうかもしれないけど‥でも、外貨を稼ぎたい、と思う方、クリックをお願い致します。
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columnistseiji at 11:16|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)国際経済 

2012年01月26日

輸出立国は終わりか?

 昨年の我が国の貿易収支が約2兆5千億円の赤字となったことが発表され、内外の注目を集めています。

 何と1980年以来の出来事なのだとか。気の早い方は、これで日本の輸出立国としての立場も終わるのかとか、日本はビジネスモデルを変えるべきなのではないか、なんてことを言っているのです。

 ただ、いずれにしても、貿易赤字のニュースには一抹の寂しさが伴うのです、日本人としては。

 しかし、それが事実だとすれば、海外からみればこの日本の貿易収支赤字のニュースはどのように映るのでしょう? なんて思っていると、ウォールストリートジャーナルが「輸出立国 日本の時代の終わり」なんて書いたのだ、とか。

 やっぱり「他人の不幸は蜜の味」なのか? 海外のメディアがそんな風に扱っているのかと思うと、日本人として益々寂しくなるというものです。


 では、ウォールストリート・ジャーナルはどんな風に報じているのでしょう。

End of Era for Japan's Exports

「日本の輸出時代の終わり」

For decades, Japan used the combination of manufacturing might and an export-oriented
trade policy to shower markets around the world with its cars and consumer electronics
and semiconductors.

「何十年もの間、日本は、製造技術と輸出志向政策の組み合わせによって、世界の市場に自動車と電気製品と半導体の雨を降らせてきた」

No longer.

「しかし、それも終わりである」

The Japanese government is expected to announce Wednesday that the country recorded
its first annual trade deficit since 1980. If the yen remains strong and global demand weak, economists warn that Japan could run trade deficits for years to come.

「日本政府は水曜日に、同国が1980年以来初めて貿易赤字になることを発表するとみられている。
もし円高がこのまま続き、世界的な需要が弱いままであれば、日本はこの先も貿易赤字を記録することがあり得ると、エコノミトたちは警告する」


 まあ、ここまでの内容であれば、確かにタイトルこそ刺激的ではあるものの‥それほど反応しなくても、とも思うのですが‥こんなことも書いてあったのです。

It is an ominous development for Japan. If the trade deficits continue, Japan could change from a steady provider of capital to a net borrower. The country could eventually struggle to finance a debt burden that is already bigger than Italy's as a percentage of its economy. While the yen is sky-high now, it will eventually plunge if Japan keeps running trade deficits. A weak yen would help Japanese manufacturers but would take a toll on an economy increasingly dependent on imports.

「それは日本にとって不吉な事態の進展である。もし、貿易赤字が続けば、日本は資本輸出国から
最終的にはネットの資本輸入国になることがあり得る。そうなると、今でさえイタリアよりも対GDP比で大きな債務を抱える日本が、借金返済のために苦労することにもなり得る。今は超円高である一方、貿易赤字が続けば円は下落するであろう。円安は、日本の製造業者たちを助けるであろうが、益々輸入に頼ることになる経済にとっては重石となるであろう」


 日本人としては、何かここのところに引っかかるのです。つまり、ユーロ危機で取り沙汰されているイタリアなどと比べられる箇所です。

 ただ、私としては、このような報道に余り驚く必要はないと思うのです。というか、理屈はそのとおり。ただ、このウォールストリートジャーナルの記事も、そのような事態が直ぐに訪れるなんてことは少しも言っていないのです。貿易赤字がずっと続けば、将来いつかはそんなことになることもあり得る、と。

 それに、そもそも多くの日本人は錯覚しているのではないでしょうか?

 それは、貿易黒字がいつまでもいつまでも続くなどということは理屈としてあり得ないということです。

 問題を単純化するために、世界が二つのブロックに分かれていたとします。AブロックとBブロック
です。Aブロックは、製造業の技術が進んでいて、貿易収支が黒字基調にあり、その反対にBブロックは、その分赤字基調にある、と。

 で、Aブロックの人々は思うのです。自分たちのブロックは資源に乏しいから、製品輸出で食っていくしかない、と。それに輸出で稼ぐと、お金持ちになれて嬉しい、と。

 では、Aブロックの貿易黒字が未来永劫続き、Bブロックの貿易赤字が未来永劫続くことがあり得るのか?

 そのようなことは決してない。何故ならば、Bブロックの方も、何かAブロックが欲しがるものを代わりに提供しないことには、Aブロックからの輸入を続けることができないからです。お金を渡せばいいと思われるかもしれませんが、そのお金の価値が、貿易赤字を原因にどんどん落ち続ける訳です
から、Aブロックとしては、Bブロックのお金に少しずつ価値を見出さなくなってしまうです。

 でも、現実の世界では、日本はずっと貿易黒字を続けてきたし、そして、同じような路線を中国が
歩んでいる、と。そして、その一方では何十年もアメリカが貿易赤字を続けているものだから、多くの人々はそれが当たり前だと錯覚をしているのです。つまり、いつまでもそのような状態が続くであろう、と。

 繰り返しになりますが、そのようなことは決してありえない!

 つまり、今の状態は、もっともっと長い目でみたら‥つまり、100年とか200年のタイムスパンでみれば、ほんの一時的な現象に過ぎないということであるのです。今は、中国がまだ貧しいから、ドルを有難がるだけの話です。中国のドルの準備高がいつまでも増え続けると思いますか? この先、10年とか20年というのであれば、それもあり得るかもしれません。しかし、もし中国の経済力が米国並みになる日がくるとすれば、その時にはもはやドルをありがたがらなくなるでしょう。そうなれば、当然のことながら中国の貿易黒字も頭打ちになるのです。何故ならば、中国が有難いと思うモノやサービスをアメリカが余りもっていないとすれば、中国からの買い物を続けることができなくなるからなのです。

 ということで、輸出立国が仮に終わりになるとしても、それだけのことを過大評価するのは間違っているのです。貿易赤字が固定化するのは危険ですが、貿易収支がトントンであれば何も問題はないのです。もちろんアメリカのように貿易赤字が構造的なものになると大変危険であるのですが。

 但し、日本はアメリカとは違うのです。円は、基軸通貨でもありません。だから、日本の経済力が
仮に相対的に今後も落ち続けるとすれば、それに伴い円安も急速に進むことでしょう。そして、そうなれば当然輸出力も維持できる、と。

 いずれにしても、私は、輸出立国のビジネスモデルを直ちに修正すべしという考えには賛成できないのです。
それは、喩えるならば、歌番組が減ったので、歌手が漫才でもやろうかと言うことと同じで
す。幾らテレビで歌番組が少なくなっても、歌手が簡単に漫才で食っていける訳はないのです。つまり、日本も、勢いは衰えても、一番得意とするところが製造業であるならば、それを続けていくべきであるのです。
レパートリーを変えてもいいでしょう。でも、いきなり変えて、それで良くなるかは大変疑問であるのです。


 過度に心配する必要はないのです。これからも得意な分野で頑張ればそれでいいのです。

 
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columnistseiji at 10:46|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)国際経済