突然ですが、英国の首相の名を言って下さい。先日英国では政
権交代が起こりましたが、もう新しい首相の名前を言えるように
なったでしょうか?

 「顔なら分かるんだけど‥」

 顔が分かるだけでも大したものかもしれません。

 彼の名前は、デービッド・キャメロン。

 で、その新しく首相になったキャメロン氏は、早速ご挨拶まわり
にフランスやドイツを訪れているようですが‥、ドイツのメルケル
首相は、首脳会談後に「皆が強いユーロに興味をもっている」
と発言したと報じられています。

 「興味を持っている」とは一体どういうことなのでしょうか?

 強いユーロを支持するとか、強いユーロが望ましいとか、強い
ユーロは自分たちの利益になるというのであればよく分かりま
す。何故かといえば、今ユーロ安が起きているから。

 つまり、余りにも速いスピードでユーロ安が起きると、それはユ
ーロ圏にとっても望ましいことではない、と。ユーロの価値の低下
は、ユーロ圏の弱体を意味するからだ、と。

 これ、内心はドルが緩やかに弱くなるのを望みながらも、急激
にドル安が起こると資本の逃避が起きてしまうので、強いドルを
支持するとこれまで何度も発言してきたアメリカの考え方と共通
するものがあります。

 ドイツもフランスもそれ以外のEU加盟国も、内心ではもう少しユ
ーロ安が起きても、むしろウェルカムだ、と。そうなれば、輸出が
伸びるし‥、ただ、その一方であまりにも急激なユーロ安が起き
ると、信用不安を惹起してしまうから、それは回避しなければならない、と。

 いずれにしても、メルケル首相は、「興味がある」と本当に言っ
たのか? 
それに、「みんなが」というのは誰を指すのか? キャ
メロン首相との会談の後に言った訳ですから、英国も強いユーロ
に興味があると言ったのか?

 海外では、次にように報じられていました。


 Britain's new prime minister and Germany's
chancellor agreed Friday that a stable euro is in the
interest of all Europeans-even nonmembers-but
disagreed on how much regulation the markets can
stand.

「英国の新首相とドイツの首相は金曜日に、安定したユーロはユ
ーロ圏非加盟国も含めた全てのEU加盟国の利益であるというこ
とに合意したが、マーケットをどの程度規制すべきかという点に
ついては意見が分かれた」

 ははー、interest とあるのを興味と訳したということのようです
ね。でも、興味というよりも関心事であるとか、利益であると言っ
てもらわないと意味がよく伝わりません。

 次のような記事も見つけました。


 Prime Minister David Cameron said Britain needs the
euro to remain stable but ruled out EU treaty 
changes that would transfer any powers from London
to Brussels.

「デービッド・キャメロン首相は、ユーロが強くあり続けてくれるこ
とを英国は望んでいると述べたが、権限がロンドンからブリュッセ
ルへ移行させるようなEU規約の変更についてはあり得ないと否
定した」

‘Britain is not a member of the euro nor are we
likely to become a member of the euro, but we want
a strong and stable euro zone,’

「英国はユーロ圏の加盟国ではないし、またそうなりそうもない
が、強くて安定したユーロ圏を望んでいる」

‘That is where 50% of our trade goes and it is in our
interests that that takes place.’

「ここは我々の輸出の50%が向かい、強いユーロであることが
我々の利益になるのである」

 

 強いユーロを望むと言いながらも、このようにメルケル首相とキ
ャメロン首相では全然根拠が違うということが分かったと思うの
ですが、では、何故このようにユーロ安が起きているのか?

 その答えは、LIBORの急騰に表れているとみてよいでしょう。

 本日の日経のトップ記事は、「欧州、銀行間金利が上昇」とあり
ます。今年に入ってから3月中旬ごろまでは、3カ月ものLIBOR
は、ほぼ0.25%近辺で推移していたのですが、それ以降はぐん
ぐんと上昇し、今はほぼ0.50%にまで達しているというのです。

 何故、LIBORが上がるのか?

 LIBORというのは、インターバンクのお金の貸し借りにかかる
金利を指します。つまり、資金繰りに余裕のある銀行が余裕のな
い銀行に短期資金を融通してあげるマーケットにおいて、金利が
急騰しているのです。

 何故か?

 そうなのです。皆、あそこの銀行はギリシャとかどことかの国債
を沢山保有しているから‥なんて噂をし合って、疑心暗鬼になっ
てしまっているのです。そしてその結果、高い金利を提示してもら
わないとお金は融通できませんよ、ということになっているので
す。

 つまり、ユーロ安が起きているのは、欧州の銀行の経営内容に
懸念が発生していることの表れということでしょう。


 でも、ユーロが安くなれば、ヨーロッパの経済成長にはプラスに
働くことも事実であるのです。


 
 「強いユーロに興味がある」という訳は、分かりにくいぞと思った
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