2011年03月19日

超円高を引き起こしたもの

 福島原発のせいで、どんなニュースもかすんでしまいます。まあ、それも当然といえば当
然。我が国のマスコミは報道をやや控えているようですが、多くの外国人が日本から脱出す
るほど、今、日本は危機的状況にあるからです。

 原発にヘリコプターや放水車で水をかける光景など誰が想像したことでしょうか。こんなこと
になるのならば、そもそも水中に発電所を作っておけばよかったと思っている人がいるかもし
れません。

 いずれしても、こうして危機的な状況にあればこそ、みずほ銀行がシステム障害を起こして
も、その銀行を利用している人たち以外、人々は関心を示す余裕がないのです。そして、円
が76円台にまで急上昇したことさえ、じっくりとは報道することがなかったのです。

 それに、協調介入によって再び80円台に戻すことができたので‥、でも、相変わらず何故
円高なのだ、と思う人が多いのではないでしょうか?

 地震が起き、津波が襲い、そして、メルトダウンが起ころうとしているのに、何故円高? 
年か先に日本が復活していることがあるとしても、取り敢えずは円売りだろう、と。

 で、円高をもたらした原因について、今回いろいろ言われて訳なのですが‥、ご存知でしょ
うか?

 そうです、一つは、りパトリエーション。つまり、地震が起き、保険金の支払いなどのために
日本の保険会社が米国債を売却し、現金化する動きがでるのではないか、と。そうなれば、
円高が進むのではないのか、と。

 しかし、今のところはそのような動きが起きているとはとても思われないのです。そのような
動きがあるなら、当然日本の国債も売られて現金化されるでしょう。

 それが原因ではないとすれば、何が原因なのか?

 そこで言われたのが、外国の銀行が円資金の確保に動いたことが原因ではないのか、と。
確かに、ロンドンでは円金利が急上昇しているのです。
でも、それだけで、一気に76円台に
まで円相場を引き上げる力があるというのでしょうか。

 実は、この問題を考える時に、二つに分けて考えることが必要なのですが、お分かりでしょ
うか。先ずは、地震発生以降、円高が進んだ理由。そして、もう一つは、日本時間の3月17
日(木)の午前6時前後から一気に円高が進み76.25円を付けさせた理由。

 これあたかも、遠くから津波が押し寄せ、浜で波を見ていると、海面が5m以上は上昇して
いるなと思っていたら、湾に入るや否や、水位が20mも上がったような現象と似ている訳な
のです。

 次のグラフを見て下さい。

76円

(日経新聞、3月18日付)


 

 17日の早朝、NY市場で円が過去最高水準の79円75銭に並んだというニュースが流れた
かと思うと、あっという間に76円25銭を付けた訳なのです。でも、見て分かるように、その後
4時間ほどは円が下がり続け、そしてその後は、79円前後で推移するわけです。

 いっときますが、その時点では、まだ介入なんて行っていない訳です。内心は介入したいと
思っても、まだ「ととのいました」とは言えない状況だった訳です。

 では、何故、急に円が上がったと思ったら、また、急に下がったのでしょう。

 日本の早朝に当たる時間帯で、商いが薄かったからそういうことが起きたという解説があり
ます。あたかも、津波が湾や河口に入ると急に水位を上げるのに似ています。

 確かに商いが薄いと、価格は乱高下しやすくなるでしょう。では、そのとき、誰が円を買って
いたのか?

 さあ、誰でしょう?

 実は、円を買っていたのは、FX取引をやっていた個人投資家だったのです。

 今、貴方は、FX取引をやる個人投資家の多くは、ドル高円安に賭けているのでは、と思っ
たのではないでしょうか。

 確かに、そのとおりなのです。ミセスワタナベと呼ばれるような個人投資家は、円安を予想
する人が多く、通常は円高を予想する人は少ない訳です。また、だからこそ、円安を歓迎する
関係者、例えば、輸出業者や政治家などにとっては頼もしい存在でもあるわけです。この人
たちが円を売ってくれるから、その分円安になる筈だ、と。

 では、何故、その人たちは、17日の朝、円を買ったのか?

 実は、この人たちの多くは、円高が進むとしても、80円とか或いは過去最高水準の79円
75銭を超えることはないであろう、と踏んでいた訳です。

 で、ご存知の方も多いと思うのですが、FX取引では、顧客が一定の評価損を抱えたら自動
的に取引を手じまうようにされていることが多いのです。つまり、損失をそれ以上拡大させな
いための措置である訳です。

 つまり、この人たちは、そのとき意識して円を買った訳ではないのですが、自分たちが予め
設定していた注文が、円が一定のレートを超えて円高になったために自動的に執行されたと
いう訳なのです。

 つまり、79円75銭を突破したと同時に、個人投資家の大量の円買い注文が出され、そして
その時間帯は、まだ取引量が少ないときであったために、円を一気に76円25銭まで押し上
げ、そして、そうした売買が終了した後には、今度は円安に向けて動き始めたということなの
です。

 で、まあ、そうした急激な円高ドル安に、各国通貨当局は驚いてしまった訳なのです。一
体、何が原因であったのか、と。

 今回の協調介入を見て、我々日本人のなかには、海外がよく理解を示してくれたと感謝し
ている人が多いと思うのですが‥、実は、こうして協調介入に至ったのは、何も日本のことを
心配したからだけではないのです。特に米国はそうです。超円高は、超ドル安を意味します。
緩やかなドル安が続くことは、米国としては大歓迎です。それで、輸出を促進することが期待
できるからです。

 しかし、ドル安が急激に起こることは、どうでしょうか? 
日本は、地震や津波やメルトダウ
ンの悪影響だけではなく、超円高の悪影響も被らなければいけないのか、と悲鳴を上げたい
気持でいた訳ですが、アメリカ自身も、(とは言っても多くのアメリカ人は全く気が付いていな
いのですが)こんなに急激にドル安になって、米国は大丈夫なのかと心配になっていたので
す。つまり、それほど急激にドルが売られるということは、それほど急激な資本の逃避が始ま
った可能性があったからです。アメリカの経済は、海外からの資本がなければ支えることが
できない状況になっている訳ですが、その海外の資本がすっと引いてしまう、と。考えただけ
で恐ろしい。

 だから、簡単に協調介入が合意されたという訳なのです。

 では、今後も協調介入は行われるのか?

 そんなことはありません。介入は、3月18日の1回こっきりなのです。また、急激な円高が
起これば別ですが、緩やかにドル安円高が進むことを彼らは歓迎している訳ですから、今以
上に円安にもっていこうとして日本が介入を続けるとすれば、また、クレームが付くでしょう。

(注)G7の声明文にも、3月18日に日本とともに為替市場における協調介入に参加する、と
だけ書かれているのです。

 いずれにしても、今回、大損した個人投資家が大勢発生した訳です。




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columnistseiji at 08:22│Comments(1)TrackBack(0)為替 

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この記事へのコメント

1. Posted by hide   2011年03月22日 12:47
今回の災害の後、株暴落&円高の流れに関心を寄せていましたので、特に後者についての不審が審らかになりました!
株式市場でも、パニック売りが裁定売りを呼んだとか、円資金をスワップ取引に過度に依存している海外投資勢が急激な円高で資金ショートを起こし、手持ち株を叩き売ったとか聞くにつけ、平時には利益を上げる投資モデルや手法も非常時には仇となるものなのだな特に短期では、なんて考えたりするのですが、短期で大損した人があったということは、得をした人もあったわけで。レバレッジを効かせ、高度なシステムを駆使するプロフェッショナルな投資家よりも、こういう時は手持ち資金で安値を拾いに行った個人投資家が得をしたのかな。

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