昨年の我が国の貿易収支が赤字になり、少し寂しい気持ちになっている方も多いと思います。

 で、貿易赤字が定着するのかという議論はおいておいて、もし仮に貿易赤字が定着するようであれば、我々日本人はどのように対応すればいいのでしょうか?

 貴方はどう思いますか?

 主に二つの答えが予想されるのです。

 「貿易収支が赤字であっても、所得収支で稼ぎ、経常収支では黒字をキープすれば問題はない」

 では、所得収支とは何か?

 所得収支とは、経常収支の一部であり、主に直接投資や証券投資などによりもたらされる配当や利子(支払い分を差し引いた収支)からなるのです。

 つまり、所得収支で稼ぐとは、海外に投資することによって配当や利子収入を得るということですから、上手に資金運用することがポイントになるのです。

 ということで、幾ら日本の輸出競争力が今後弱まり、貿易によって稼ぐことが難しくなっても、その代り、これまでの蓄えを上手に運用することによっていつまでも豊かな生活を維持することができるかも、と。

 「だけど、アメリカはこれからもゼロ金利を続けると言っているし‥」

 そうなのです。世界的な超低利の状態が長引くと、それにともない所得収支が落ち込みが懸念されるのです。それに、幾らこれまでの蓄えがあるといっても、高齢化の進展とともに蓄えの取り崩しが進むでしょうから、本源的な蓄えの源である貿易収支で稼がないことには、という気にもなるのです。

 とすれば、もう一度貿易黒字を維持できるような作戦を練るか、ということになるのですが‥いずれにしても、ここら辺りに大きな誤解があるようでならないのです。

 端的に言えば、貿易収支や経常収支の黒字は、いつまでもいつまでも黒字を維持することが可能なのか、ということであるのです。

 今見てきたように、貿易収支はともかくとして、経常収支の方は、いつまでもいつまでも黒字を維持してきたいと殆どの方が思っていると思います。

 経常収支の黒字がずっと続くということは、蓄えがどんどん増え続けるということなのです。丁度、今の中国がそのような状況にあると考えていいでしょう。アメリカとは正反対に、中国は毎年多額の経常収支の黒字を計上し、それを背景に着実に外貨準備を増やしていっているのです。

 確かに蓄えが増え続けることは、力強くもあり大変に嬉しい!

 では、中国の経常黒字はずっとずっと続くのか? 

 こんな質問をすると、中国以外のアジアの国がさらに追い上げてくるから‥というような答えが予想されるので、世界は米国と中国の二つしかないと仮定しましょう。

 米国は大変豊かな国であった。そして、中国は貧しい国であったが、安い人件費を武器に輸出で稼ぐようになった、と。そして、米国の経常赤字と中国の経常黒字が定着するようになった、と

 さあ、中国の経常黒字体質はいつまで続くのでしょう? そして、米国の経常赤字体質はずっと続くのでしょうか?

 ここまで来ると、気が付く人も多いと思うのです。

 幾ら中国人がドルを貯めこむのが大好きで、輸出で稼ぎまくっても、結局手にするのはドル紙幣。もちろんそのドル紙幣をもっていればこそ、アメリカで好きな買い物もでき、アメリカの高層ビルを買収することもできるのです。

 しかし、中国の経済発展がとことん進み、米国の経済と実質的にも肩を並べるようになると、中国人のドルに対する見方に変化が起きてくるでしょう。ドルが今までほどありがたいものには思えなくなってくる、と。幾らドルを保有していても、段々買いたいものも限られてくるようになる、と。で、そうなれば、ドルの価値は落ち、保有している大量の米国債の価値が大きく低下するでしょう。

 結局、大切にしてきた蓄えが、殆ど価値を持たないものになってしまうこともあり得るのです。そんな状態になったとき、中国は米国に輸出を続けようとするのか? 

 そんなことはないでしょう。米国が中国に対して提供できるものを持たないようでは、もはや中国も米国に対し貴重な労働の産物を手渡すことはなくなるでしょう。

 日本はよく、資源がない国だから‥と言われます。それはそのとおりです。そして、資源を購入するためには外貨が必要であって、その外貨を手に入れるには、何かを海外に売却することが必要であるのです。その何かが、昔は生糸であり繊維製品であったのが、鉄鋼に代り、自動車に代りとしてきたのです。

 ですから、最低限度の外貨は、これからも稼いでいくことが必要であるのはそのとおりなのですが、だからと言って必ずしも保有外貨の量を増やし続ける必要があるという訳ではないのです。それに幾ら保有外貨を増やし続けたつもりでも、それがドル建ての米国債などの場合には、過去経験してきたように、大幅な価値の下落が起こり得るので、決して安心することはできないのです。

 結局、富を生み出す能力、日本人が持っているポテンシャルを高める努力と工夫が求められると
いうことではないでしょうか? そのためには地道な努力も必要となるのです。




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