来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、先週のことを言うと、鬼はどうするのでしょう?
感心する、それとも怒る、それとも寝てしまう?
先週、オバマ大統領の演説がありましたよね。どう思いました?
私は、二つのことが印象に残っています。というよりも、よくよく考えていたら二つのことが気になったというべきでしょうか。
一つは、オバマ大統領の中国叩きが再開したということです。
まあ、どの位本気かどうかは別として、中国が貿易面でフェアではないことを訴え、中国に厳しく接するという態度を鮮明にし‥選挙民に訴える作戦のようなのです。そしてそのことは、ガイトナー財務長官の今回のダボス会議のスピーチでも感じられたのでした。
ガイトナー財務長官と言えば、オバマ政権発足直前の時点では、中国が為替を操作していると大統領は信じていると発言し、当時注目を浴びました。もちろん、選挙民の支持を取り付けようとしたのだと思います。しかし、オバマ政権発足と同時に、ガイトナー財務長官の厳しいトーンは一転したのです。そして、中国を批判するよりも、むしろ中国に気を使うことが多くなったのです。
ということで、今回オバマ大統領が中国を厳しく批判しているのも、ひとえに大統領選をにらんでのことだと思うのです。
そして、もう一つ印象に残っていることがあります。それは、多くの人も同じように感じているかもしれませんが、オバマ大統領が米国の製造業回帰に並々ならぬ熱意を示していることです。確かに、今米国のビッグ3が蘇り、なんとなく自信を取り戻した感のあるアメリカの製造業。税制などの面で国内回帰企業に対し優遇装置を与えると、益々海外脱出組がアメリカに戻ってきるようになり、そうなれば雇用も回復するのではと期待したいのでしょう。
日本の雰囲気で言えば、企業の海外脱出、つまり空洞化は避けて通れない現象だと思われるのに、では何故オバマ大統領は自信があるのかと言えば、最近、中国人労働者の人件費は急騰する傾向にあり、また、ストライキなどの問題もあり、トータルで考えると必ずしも中国移転が安くつくとは限らないということのようなのです。
それに、もっと重大なことも言っているのです。オバマ大統領は、米国の労働者の生産性は中国の労働者の生産性の10倍あると言うのです。
この発言、調べてみるとオバマ大統領の独自の考えというよりも、どうもアメリカの専門家の意見であるのです。
確かに、米国の労働者の生産性が10倍も高いなら、幾ら中国人労働者の人件費が米国人の1/10であっても、安いことはなく、当たり前になってしまうのです。何故ならば、平均的米国人労働者が、平均的中国人労働者の10倍の働きをするのであれば、前者が後者の10倍の給与をもらっても当たり前であるからです。
となれば、幾ら表面的に相当に安いように見える中国の人件費も、本当はそれほど魅力のあるものではないということで、それならば、また米国に戻って米国人労働者を雇うことにしようか、と。
はい、そこの貴方! そうそう貴方です。このオバマ大統領というか、米国の専門家たちの意見をどう思いますか?
仮に、その主張が正当なものであって、そして日本人の労働者の生産性も、中国人労働者に比べこのように相当高いものであることが証明されたとしたら如何でしょうか?
日本の企業も、海外脱出なんて馬鹿なことは止めた方がいいということなのでしょうか?
でも、多くの企業は、本音としては実質的にも海外の労働者の人件費の方が安いと実感しているのです。もちろん、能率などを総合的に判断しての話です。そうでなければ、わざわざ海外に脱出することなどしないのです。
ところで、貴方は、日本のサービス産業の問題点というのをご承知でしょうか?
サービス業の問題点といってもいろいろあるでしょうが、私が言いたいのは、近年、我が国の政府関係者が特に関心を示してきた問題です。
そうなのです。日本のサービス産業は、生産性が低いので、それを引き上げることが課題だなんてことが真剣に議論されてきていたのです。で、生産性を上げるためには、極力パソコンなどを活用して‥なんて。
まあ、私は、パソコンの活用を批判するものではないのですが‥だからと言って、何とかの一つ覚えみたいに何でもかんでもパソコンさえ導入し、ネットにつなげば、即生産性が上がるなんて考える単純さにいささか驚きを感じてしまうのです。
そんなことして、例えばどうして理髪店の生産性が上がるの? 顧客の名簿をパソコンで管理して、偶には営業用のはがきでも送る?
私は、何を言いたいのか?
実は、日本の労働問題の専門家も、そしてアメリカの産業問題の専門家も、生産性の意味をはき違えている恐れがあるのです。
まあ、難しい議論をする前に、そもそもアメリカ人の労働者が中国人の労働者の10倍も生産性が高いという主張をどう感じますか?
そんな話を聞かされると、アメリカ人なら、少しばかりおもはゆい、というか嬉しくなるでしょう。やっぱりアメリカはナンバーワンだ、と。
しかし、中国人は、その話をどのように感じるでしょう? 「中国人の労働者は、アメリカ人の労働者の1/10しか働かない? そんなバカな!」
では、中立の立場の日本人からすれば、その主張をどう評価すべきでしょう?
確かに、例えばビル・ゲーツだとかスティーブ・ジョブズなどのことを考えると、アメリカ人のなかには驚くべき才能を持った人がいるのは、そのとおりなのでしょうが‥しかし平均すると、それほどの違いはないのではないでしょうか? まあ、これが特殊な才能を要する労働者の場合であれば、生産効率が何倍か高いという事もあり得るでしょうが、例えば、パソコンを組み立てたり、シャツを製造したり、或いはバービー人形を作ったりする仕事において、アメリカ人は中国人の10倍も能率がいいなどということがあり得るのか?
答えは、ノー。
その一方で、実際の統計上の生産性という意味での米国人労働者の生産性が、中国人労働者の生産性の10倍あるというのは本当であるのです。
しかし、この場合の「生産性」の意味をよく理解する必要があるのです。
生産性とは、何でしょうか? 常識的な意味では、生産効率というか、能率というか、そういったことを意味する訳ですが、統計的に算出させる生産性とは、次のような式になっているのです。
労働生産性=生産量(付加価値)÷労働量(従業員数)
いいですか? 生産性は、生産量を投入労働量で割ったものということですから、1単位当たりの労働が生み出す生産量を指す訳ですが、注意しなければならないのは、その場合の単位当たりの生産量は、あくまでも付加価値で表示されるということなのです。付加価値とは、その単位当たりの生産物に幾らの価値が付くかということです。
つまり、中国人の労働者の場合には、ある製品を1日の労働によって10単位生産することができ、その一方で、アメリカの労働者の場合にも10単位生産することができても、中国人のその10単位の製品の価値が10ドルにしか過ぎず、他方でアメリカ人労働者が生産する10単位の製品には100ドルの価値がつくならば、アメリカ人労働者の生産性は、中国人の10倍になる訳です。
もちろん、その際、アメリカ人の生産する製品の品質などが大変優れている場合も考えられるのですが、全く同じ品質の製品しか作っていないことも考えられるのです。では、何故、アメリカ人の製品は中国製品の10倍の価値が付くのか? それは、アメリカの製品は、アメリカ人労働者の人件費が高いために、10倍の価格を付けざるを得ないだけのことなのです。
ということで、労働生産性と言う言葉は、実際の仕事の能率を示す場合もあり得るが、実際には、各国の労働者の人件費というか、所得を反映する場合が多いということに気が付く必要があるのです。
つまり、日本のサービス業の生産性が欧米に比べ低いというのは、何も日本のサービス産業に携わる人々の能率が悪いということではなく、単に稼ぎが少ないというだけかもしれないのです。
となれば、アメリカの労働者の生産性が中国に比べ10倍高いという事実は、少しも喜ぶべきことではないことが分かるのです。単にアメリカの労働者の人件費が高いから、生産性が高いという風に見えるだけかもしれないのです。
オバマ大統領が、その事実を知ったら、多分大変に落胆すると思うのです。
製造業を回帰させたいという気持ちに水を差す気はないのですが、楽観はできない言いたいのです。中国人の給与水準がもっともっと上がらないことには、米国の製造業の復活はないと言うべきでしょう。
平均的アメリカ人の能率が10倍も高いなんてことはないだろう、と思う方、クリックをお願い致します。
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先週、オバマ大統領の演説がありましたよね。どう思いました?
私は、二つのことが印象に残っています。というよりも、よくよく考えていたら二つのことが気になったというべきでしょうか。
一つは、オバマ大統領の中国叩きが再開したということです。
まあ、どの位本気かどうかは別として、中国が貿易面でフェアではないことを訴え、中国に厳しく接するという態度を鮮明にし‥選挙民に訴える作戦のようなのです。そしてそのことは、ガイトナー財務長官の今回のダボス会議のスピーチでも感じられたのでした。
ガイトナー財務長官と言えば、オバマ政権発足直前の時点では、中国が為替を操作していると大統領は信じていると発言し、当時注目を浴びました。もちろん、選挙民の支持を取り付けようとしたのだと思います。しかし、オバマ政権発足と同時に、ガイトナー財務長官の厳しいトーンは一転したのです。そして、中国を批判するよりも、むしろ中国に気を使うことが多くなったのです。
ということで、今回オバマ大統領が中国を厳しく批判しているのも、ひとえに大統領選をにらんでのことだと思うのです。
そして、もう一つ印象に残っていることがあります。それは、多くの人も同じように感じているかもしれませんが、オバマ大統領が米国の製造業回帰に並々ならぬ熱意を示していることです。確かに、今米国のビッグ3が蘇り、なんとなく自信を取り戻した感のあるアメリカの製造業。税制などの面で国内回帰企業に対し優遇装置を与えると、益々海外脱出組がアメリカに戻ってきるようになり、そうなれば雇用も回復するのではと期待したいのでしょう。
日本の雰囲気で言えば、企業の海外脱出、つまり空洞化は避けて通れない現象だと思われるのに、では何故オバマ大統領は自信があるのかと言えば、最近、中国人労働者の人件費は急騰する傾向にあり、また、ストライキなどの問題もあり、トータルで考えると必ずしも中国移転が安くつくとは限らないということのようなのです。
それに、もっと重大なことも言っているのです。オバマ大統領は、米国の労働者の生産性は中国の労働者の生産性の10倍あると言うのです。
この発言、調べてみるとオバマ大統領の独自の考えというよりも、どうもアメリカの専門家の意見であるのです。
確かに、米国の労働者の生産性が10倍も高いなら、幾ら中国人労働者の人件費が米国人の1/10であっても、安いことはなく、当たり前になってしまうのです。何故ならば、平均的米国人労働者が、平均的中国人労働者の10倍の働きをするのであれば、前者が後者の10倍の給与をもらっても当たり前であるからです。
となれば、幾ら表面的に相当に安いように見える中国の人件費も、本当はそれほど魅力のあるものではないということで、それならば、また米国に戻って米国人労働者を雇うことにしようか、と。
はい、そこの貴方! そうそう貴方です。このオバマ大統領というか、米国の専門家たちの意見をどう思いますか?
仮に、その主張が正当なものであって、そして日本人の労働者の生産性も、中国人労働者に比べこのように相当高いものであることが証明されたとしたら如何でしょうか?
日本の企業も、海外脱出なんて馬鹿なことは止めた方がいいということなのでしょうか?
でも、多くの企業は、本音としては実質的にも海外の労働者の人件費の方が安いと実感しているのです。もちろん、能率などを総合的に判断しての話です。そうでなければ、わざわざ海外に脱出することなどしないのです。
ところで、貴方は、日本のサービス産業の問題点というのをご承知でしょうか?
サービス業の問題点といってもいろいろあるでしょうが、私が言いたいのは、近年、我が国の政府関係者が特に関心を示してきた問題です。
そうなのです。日本のサービス産業は、生産性が低いので、それを引き上げることが課題だなんてことが真剣に議論されてきていたのです。で、生産性を上げるためには、極力パソコンなどを活用して‥なんて。
まあ、私は、パソコンの活用を批判するものではないのですが‥だからと言って、何とかの一つ覚えみたいに何でもかんでもパソコンさえ導入し、ネットにつなげば、即生産性が上がるなんて考える単純さにいささか驚きを感じてしまうのです。
そんなことして、例えばどうして理髪店の生産性が上がるの? 顧客の名簿をパソコンで管理して、偶には営業用のはがきでも送る?
私は、何を言いたいのか?
実は、日本の労働問題の専門家も、そしてアメリカの産業問題の専門家も、生産性の意味をはき違えている恐れがあるのです。
まあ、難しい議論をする前に、そもそもアメリカ人の労働者が中国人の労働者の10倍も生産性が高いという主張をどう感じますか?
そんな話を聞かされると、アメリカ人なら、少しばかりおもはゆい、というか嬉しくなるでしょう。やっぱりアメリカはナンバーワンだ、と。
しかし、中国人は、その話をどのように感じるでしょう? 「中国人の労働者は、アメリカ人の労働者の1/10しか働かない? そんなバカな!」
では、中立の立場の日本人からすれば、その主張をどう評価すべきでしょう?
確かに、例えばビル・ゲーツだとかスティーブ・ジョブズなどのことを考えると、アメリカ人のなかには驚くべき才能を持った人がいるのは、そのとおりなのでしょうが‥しかし平均すると、それほどの違いはないのではないでしょうか? まあ、これが特殊な才能を要する労働者の場合であれば、生産効率が何倍か高いという事もあり得るでしょうが、例えば、パソコンを組み立てたり、シャツを製造したり、或いはバービー人形を作ったりする仕事において、アメリカ人は中国人の10倍も能率がいいなどということがあり得るのか?
答えは、ノー。
その一方で、実際の統計上の生産性という意味での米国人労働者の生産性が、中国人労働者の生産性の10倍あるというのは本当であるのです。
しかし、この場合の「生産性」の意味をよく理解する必要があるのです。
生産性とは、何でしょうか? 常識的な意味では、生産効率というか、能率というか、そういったことを意味する訳ですが、統計的に算出させる生産性とは、次のような式になっているのです。
労働生産性=生産量(付加価値)÷労働量(従業員数)
いいですか? 生産性は、生産量を投入労働量で割ったものということですから、1単位当たりの労働が生み出す生産量を指す訳ですが、注意しなければならないのは、その場合の単位当たりの生産量は、あくまでも付加価値で表示されるということなのです。付加価値とは、その単位当たりの生産物に幾らの価値が付くかということです。
つまり、中国人の労働者の場合には、ある製品を1日の労働によって10単位生産することができ、その一方で、アメリカの労働者の場合にも10単位生産することができても、中国人のその10単位の製品の価値が10ドルにしか過ぎず、他方でアメリカ人労働者が生産する10単位の製品には100ドルの価値がつくならば、アメリカ人労働者の生産性は、中国人の10倍になる訳です。
もちろん、その際、アメリカ人の生産する製品の品質などが大変優れている場合も考えられるのですが、全く同じ品質の製品しか作っていないことも考えられるのです。では、何故、アメリカ人の製品は中国製品の10倍の価値が付くのか? それは、アメリカの製品は、アメリカ人労働者の人件費が高いために、10倍の価格を付けざるを得ないだけのことなのです。
ということで、労働生産性と言う言葉は、実際の仕事の能率を示す場合もあり得るが、実際には、各国の労働者の人件費というか、所得を反映する場合が多いということに気が付く必要があるのです。
つまり、日本のサービス業の生産性が欧米に比べ低いというのは、何も日本のサービス産業に携わる人々の能率が悪いということではなく、単に稼ぎが少ないというだけかもしれないのです。
となれば、アメリカの労働者の生産性が中国に比べ10倍高いという事実は、少しも喜ぶべきことではないことが分かるのです。単にアメリカの労働者の人件費が高いから、生産性が高いという風に見えるだけかもしれないのです。
オバマ大統領が、その事実を知ったら、多分大変に落胆すると思うのです。
製造業を回帰させたいという気持ちに水を差す気はないのですが、楽観はできない言いたいのです。中国人の給与水準がもっともっと上がらないことには、米国の製造業の復活はないと言うべきでしょう。
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