突然ですが、貴方は日本銀行が好きですか、嫌いですか?

 まあ、そんなこと突然言われても、多くの人はどう答えていいものやらと、困ってしまうでしょう。

 「日本銀行券は大好きなんだけど‥」

 いずれにしても、世の中には日本銀行を叩くことが大好きな人々、しかも経済の専門家でありながら
日銀叩きが好きな人がいるのです。

 では、何故日銀をそれほど攻撃するのかと言えば‥日銀のやることは too little で too late だから、と。

 貴方も、そんな意見に賛同しますか?

 ただ、そうやって日銀を批判する人はいても、どういう訳か、日銀は嘘をついて国民をごまかしている、なんてことまで言う人はいないのです。

 つまり、そういう人々にとっては、日本銀行は怠慢ではあるけれど嘘つきではないのです。

 では、私は、どう考えるのか?

 私は、日銀はそれほど怠慢だとは思わないのです。というのも、やれる範囲で精いっぱいのことをやってきたのですから。だって、過去、禁じ手と言われた株の購入なんてことにまで手を出したことも
あるのです。

 でも、流石に日銀はケチャップの購入まではやっていないのです。

 ご存知ですか? 今はFRBの議長を務めるバーナンキ氏が、かつて日本銀行はケチャップでもなんでも購入して金融を緩和すべきだと言ったことを。

 私思うのですが、幾ら日銀の金融緩和措置がtoo little で too late だと言う人がいたとしても、日銀が本当にケチャップを大量に購入して市場に資金をばら撒くようなことをしたら、流石に「バカか?」と批判されると思うのです。そうですよね? そう思うでしょ?

 だから、幾ら日銀が景気を良くしたいと思い、そしてマネーを世の中にじゃぶじゃぶ放出したいと思っても、ケチャップやマヨネーズを日銀が買うようなことはできない、と。

 せいぜい国債や手形や社債やCPなどを買うこと位しかできないのです。

 だから私は言いたいのです。そこまで日銀を批判するのであれば、法律を改正して、ケチャップを日銀が購入できるような規定を作るのが先決ではないのか、と。

 でも、結局、ケチャップを日銀が購入することなど誰も賛成しないでしょうから(ケチャップのメーカーとそこに働く従業員は別として)、日銀としては、大変な努力をしているように格好をつけるしかないのです。

 つまり、本当は大した効果はないとは思いつつも、「量的緩和策を実施する!」なんて大見得を切ったり、と。

 はい、そこの貴方! 貴方は、日銀が過去実施した量的緩和策とはどういうものか説明できますか?

 そう、そのとおり! 市中銀行が日銀に保有する当座預金の残高をどんどん増やしていく政策です。

 では、何故日銀当座預金残高が増えると、金融が緩和されることになるのか?

 大胆に言えば、そんなのは嘘っぱちであるのです。でも、当時日銀は、とんでもない日銀バッシングの嵐にあって、とにかく何かをやらなければいけなかったのです。しかし、さればとてケチャップを買う訳には行かず、量的緩和策という大そうなタイトルの下で、日銀当座預金残高を積み増すことにしたのです。

 では、反応はどうだったのか?

 実は、正直言って、どんな効果があるかなんて財務官僚だって本当は分かっていなかったのです、多分。そして、日本のマスコミに至っては全く分かっていなかったのです。しかし、何も批判はしない。それはそうでしょう。効果があるかどうかよりも、何でもいいからやってくれというのが、当時の関係者の心境であったからです。折角日銀が深く反省をし量的緩和策を採用しようというのに、それを批判する理由はないだろう、と。当時、海外の専門家も、そうした日本の量的緩和策を批判する向きは殆どなかったと記憶しています。

 では、何故その時の量的緩和策には殆ど意味がなかったと言うのかと言えば、それは結局、日銀当座預金の残高をどれだけ積み増しても、それが通貨の流通量の増加につながる可能性が殆どなかったからです。

 しかし、皆錯覚をした。或いは、無理にそう思い込んだのです。マネタリーベースが増加すれば、マネーの流通量が恐増加するであろう、と。

 まあ、そうやって錯覚するのは、経済学の基礎をちゃんと学んでいないか、或いは自分の頭で納得がいくまで考えることをしないからです。

 普通は次のように思いますよね。

 マネタリーベースに一定の乗数をかけたものがマネーサプライになる、と。

 そして、そのマネタリーベースとは、キャッシュ(お札とコイン)と準備預金、つまり日銀当座預金によって構成されるので、そのうちの日銀当座預金を増加させれば、必ずマネーサプライの増加につながるであろう、と。

 今から9年ほど前の出来事ですが、日銀叩きが好きな竹中教授(当時は大臣)が、マネタリーベースは大きく増加しているのにマネーサプライが増加しないのは怪しからん、なんて嘆いて見せ、だから日銀のやることはtoo little too late だなんて言っていたのです。

 よーく考えてみて下さい。

 通常、日銀当座預金が増えた結果、マネーサプライが増えるなんてことはないのです。

 誤解のないようにもう少し詳しく言えば、例えば、日銀が世の中に出回るお金の量を増やそうと思い、市中銀行が日銀に保有する当座勘定にお金を振り込んだとしても、それが世の中に出回るのであれば、当座預金残高はまた元の最低水準に戻る筈です。だって、市中銀行が一般企業に融資をすれば、その当座預金を取り崩す必要があるからです。

 しかし、日銀はどういう訳か、日銀当座預金残高をベンチマークにしてしまったのです。

 つまり、それが間違い。日銀が、何が何でも市場にお金を溢れさせたいと考えるのであれば、日銀当座預金の残高をベンチマークにするのではなく、例えば一定期間におけるオペの量をベンチマークにすべきであったのです。

 しかし、さらに言えば、幾らオペの量を増やしたところで、それで金融の緩和が進む保証はないのです。

 早い話、今日銀はプレシャーを背に、未曾有の規模のオペを実施しているわけですが、しばしば札割れが起きるのです。つまり、幾ら日銀が、市中銀行が保有する国債などを購入したいと言っても、肝心の市中銀行が、「キャッシュは結構です」という態度を取ることが多いのです。

 何故そんなことが起きるのでしょう?

 折角、日銀が国債を購入してやると言っているのに、何故国債を買ってもらわないのか?

 もちろん、市中銀行の方も、手持ちの国債を日銀に買ってもらうことが得になるのであれば、それを売却するのです。例えば、国債を売却して得た資金を企業に対する融資として使用するのであれば、国債を買ってもらうでしょう。

 しかし、大抵の場合には融資案件が限られているから、だから最後の手段として国債を買っているのである訳ですから‥いくら日銀からオペに応じないかと誘いがあっても‥ねえ、そうでしょ?

 手持ちの国債を保有しておけば、一定期間ごとに利子収入が期待できるのに、当該国債を日銀に売却してしまえば、キャッシュとなってもはや利息を生むことがなくなります。つまり、市中銀行にとっては、日銀のオペに応じることが意味のないことというよりも、損になってしまうのです。

 では、そうやって市中銀行が日銀のオペを歓迎しなくなると、もうそれ以上は金融を緩和することはできないのか?

 でも、そんなことを幾ら正直に政治家に説明しようとしても、日銀はいい訳をしているなんて叩かれるだけの話なのです。ですから、何かをしなければいけない、と。

 日銀は、一体全体何をしたのでしょう?

 嫌がるオペに市中銀行を誘い出す手段とは?

 もし、市中銀行が日銀の当座預金から利子収入を期待することができたとしたら?

 先ほど私は言いました。国債を保有していれば、国債の償還期間に応じてそれ相応の利子が得られる、と。そして、日銀にその国債を売却してキャッシュを手にすると、利子を得ることはできなくなる、と。

 では、そうやって市中銀行が得たキャッシュを日銀の当座預金口座に預けさせ、その当座預金に利息をつけてやるとどうなるのか?

 普通は当座預金に利息など付かないのです。そうでしょ? いつ引き出されるか分からない預金にしかも当座預金を管理する費用がバカにならないのに、利息をつけてやるなんて‥。

 でも、大変高邁な理屈をつけて米連銀が当座預金に金利を付けるようなことをしたものだから‥
それを日銀も真似して、市中銀行の超過準備預金に対して利息をつけてやっているのです。

 で、そうやって当座預金でも利息がつくようになったものだから、短期国債を日銀に買い取ってもらっても、当座預金の利息の方が短期国債の利回りよりも高ければ、当然オペに応じることが利益になるのです。

 もう、お分かりになったと思うのですが、そうやって日銀が大規模なオペをどれだけやっても、結局、実体経済が活発化し、そして市中銀行がそうした動きに応じて貸し出しの姿勢を強めない限り、マネーの流通量が増えることなどないのです。

 こうした日銀の行為は、積極的に国民を騙す意図はないにしても、結局、一般社会を騙しているのと同じです。


 
 金融の仕組みは複雑で分かりにくい、と感じた方、クリックをお願い致します。
 ↓↓↓
 人気blogランキングへ