選挙戦に突入して、各党の党首がテレビに出演して意見を闘わせています。

 安倍総理は言います。「物価が上がれば、必ずそれ以上賃金が上がる。但し、賃金が上がるのには時間がかかる」

 物価が上がれば、賃金が上がる可能性が大きくなるのはそのとおりでしょう。

 しかし、何故賃金が物価以上に上がると言えるのでしょうか? その根拠は何か? 

 そこのところを国民に納得が行くように説明することができれば、安倍総理に対する支持率はさらに上がると思うのです。否、支持率が上がるだけではなく、支持の質に大きな違いが表れるでしょう。つまり、国民が心底アベノミクスを支持するようになるでしょう。

 しかし、いつものことながら根拠を示すことはありません。細かい話になると、リフレ派は、それは世界の常識だ、みたいなことを言って議論を避ける。

 リフレ派にとっては常識かもしれないが、国民は分かっていないのです。何故説明できないのか?

 但し、我々は、総理が何を考えているか想像することはできる。

 総理は、景気がよくなれば、企業の求人活動が活発になり、そして、求人活動が活発になるということは雇用市場がタイトになるということだから、自ずから賃金は上がると考えているのかもしれません。多分、そういうことでしょう。

 確かに、景気がよくなってモノの売れ行きが好調になるならば、それに合わせて企業は生産を増やすでしょうから、そうなれば求人は増え、いずれ賃金は上がるかもしれません。

 しかし、問題は、物価が上がると何故景気がよくなるかということなのです。

 物価が2%上がったとします。そして、それに合わせて企業の売り上げも2%上がったとします。確かに、そのときに企業は儲かったような気になるかもしれません。しかし、自社の製品価格が2%上がった結果、売り上げが2%伸びたというのであれば、金額ベースで売り上げが伸びただけの話であり‥つまり、数量ベースでみれば売り上げは伸びていないのです。

 そうして生産数量が増えないのに、どうして企業は採用を増やそうとするでしょう?

 話は少し脱線しますが、安倍さんは自虐史観が嫌いです。いつまでも日本が反省ばかりする必要はない。日本が悪いという証拠がどこにあるのか、と。まあ、そう言いたい気になるのは分からないでもありませんが‥

 しかし、その安倍さん自身が、経済のことになると、途端に日本の過去の政策を自虐的にしか見ない。つまり、過去日本がやってきた金融政策は間違いだらけだと決めつける。

 本当に、それほど過去の金融政策は間違っていたのか?

 百歩譲って、確かに過去の金融政策に十分ではないことがあったにしても、しかし、政治家がやってきたことや役人がやってきたことは、それ以上に間違っていたことも多かったのではないのか?

 私は、公共事業が悪だと言うつもりはさらさらありません。しかし、そうではあっても、どれだけ無駄な公共事業を実施してきたことか? その証拠は、財政当局がちゃんと調査済みであるのです。塩爺が大臣だった時に、ちゃんと調査をしているのです。

 にも拘わらず、全ての責任がデフレを放置した日銀にあると主張する。確かに、名目GDPが増えない状況、そして、賃金が増えない状況がもう10年以上も続いているのはそのとおりです。

 でも、その間、国民の暮らしは、そんなに極端に悪化したのでしょうか?

 私は、安倍さんの話を聞いていると、イソップ童話の鹿の話を思い出してしまうのです。水面に映った自分の立派な角にうっとりとする反面、自分の細い脚は何と貧相なのかと考え違いする鹿の話がありました。憶えていますか?

 しかし、その一見貧相に見える脚のお陰で、鹿はライオンの追撃から一時、逃れることもできた訳ですが、逆にその立派に見えた角が木の枝に引っかかってしまったために、ライオンに捕まってしまいます。
 
 安倍さんは、物価が毎年僅かに低下する極めてマイルドなデフレを、貧乏神のように思ってしまった。そんなデフレを一掃するならば、日本経済は強靭な体質になる筈だ、と。

 しかし、海外の安い労働力が存在する以上、否、それだけではなく、新卒の採用にしても、外国人の学生を採用することがもはや珍しいことではなくなってしまった以上、そう簡単に賃上げを期待することができないことは、明らかなのです。だって、幾ら日本人の学生が、初任給を上げないと入社しないと言ったって、優秀な外国人がいっぱいいるからです。

 仮に、思惑どおり景気がよくなって求人が増えるような状況になったとしても、日本の大手企業はもはや日本の学生、或いは日本の労働者にだけに声をかける訳ではないのです。多くの外国人も雇用の対象になっているのです。つまり、世界中から労働力が供給されるようになっている訳ですから、雇用市場がタイトになってその結果賃上げが起こることはまず期待できないと思っていた方がいいでしょう。

 では、そうして賃上げを期待することが困難な状況のなかで、どうやって労働者は過去、救われてきたかと言えば‥ズバリ、物価が上がることなく、逆にマイルドに低下することによって労働者の生活水準が維持されてきたのです。

 新卒者の初任給は、長い間20万円程度で変わりはありませんが、その20万円の持つ意味はどのように変わったのか?

 初任給が変わらない一方で、仮にマイルドなインフレが起きていたとすれば、労働者の生活水準は確実に落ちていたでしょう。しかし、初任給に変化はなくても、マイルドなデフレが起きたのでむしろ生活水準は上がったのです。
 例えば、ノートパソコンの価格について考えてみて下さい。ウィンドウズ95が発売になった1995年当時、今よりも遥かに性能が劣るパソコンが何十万円もしていたではありませんか? 薄型テレビは登場もしていなかった。その薄型テレビもどれだけ安くなったか。携帯電話もしかり。つまり、労働者が保有するモノは確実に豊富になり、性能も向上している。

 にも拘わらず、名目の賃金が増えないと言って、或いは名目GDPが減ったと言って、日本人が貧乏になったかの如く吹聴する政治家たち。これこそが自虐的と言うべきでしょう。

 何かが間違っているとしか思えません。

 

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