日本商工会議所の三村会頭(新日鉄住金相談役名誉会長)ら財界首脳が7日の年頭会見で、一段の円安を否定的に受け止める見解を示したと報じられています。

 先ず 三村会頭の発言。「円安になったら日本の株価が上がるのはおかしい」

 次に、経済同友会の長谷川代表幹事(武田薬品工業社長)。「あまり円安は歓迎できない」

 どう思いますか?

 私は、個人的には、余りに円安が進むのは歓迎できないとの考えなのですが‥しかし、ネット上では、こうした意見に対して大きな反発が巻き起こっているのです。

 円安を望んでいたのは経済界自身ではなかったのではないか、と。折角、アベノミクスの効果で円安がもたらされたのに文句を言うとは何事か、と。経済学の基本が分かっているのか、と。

 まあ、確かにかつては1ドルが90円台の半ば程度が望ましい、なんて言っていた経済界ですから、こうして円安がもたらされて、今更何を文句を言うのだろうか、という気がしないでもないのですが‥

 但し、ネットで匿名をいいことに、品のない批判というか、罵詈雑言を浴びせる人々に言いたい。

 批判するにしても、もう少し冷静に誰もが納得ができるような意見を述べたらどうなのか、と。

 別に私は三村会頭を弁護する気はないのです。というよりも、鉄鋼メーカーの立場上、地球温暖化対策に対して消極的な態度を取ってきた三村氏に対しては全くシンパシーを感じない訳ですが‥それでも、この方、確か東大の経済学部を首席で卒業した方でしょ?

 だから、そういう人に向かって経済学を知らないに違いないと言っても、全然的を得ていないのです。

 では、何故この二人は、これ以上の円安を歓迎しないと言ったのでしょうか?

 そんなの簡単なことではないですか!?

 要するに、自分たちにとってこれ以上の円安はプラスになるよりもマイナスになる影響の方が大きいからなのです。

 例えば、新日鉄住金の立場としては、円安になることによって海外のライバルメーカーとの関係で輸出競争力が向上する面があるものの、そもそも円安になれば原材料の調達費用が増大するというマイナス面があるからです。それに、そもそも円高対策の意味もあって海外進出を進めてきたことからすれば、円安はマイナスの効果の方が大きくなってしまうのでしょう。

 次に、経済同友会の長谷川会頭についても、武田薬品の社長の立場としては円安によって医薬品の輸出が伸びることが期待できる面があるものの、そもそも我が国の医薬品の輸出入については圧倒的に輸入超過の状態にあり、円安はプラスよりもマイナスに働く効果の方が大きいのです。その上円安になれば特許料の支払いも増大します。また、他の製造業と同じように我が国の製薬メーカーは海外にどんどん進出し、海外における生産比率が高まっているので円安は少しもプラスにならないのです。

 これで彼らが何故円安を歓迎しないかが分かったと思うのですが‥要するに、大企業の経営者たちは、日本対外国というようなものの見方をしていないのです。

 格好よく言えば、彼らはグローバルにものを見ている。つまり、国境など意味がない。大事なことは自社の儲けが増えるかどうか。

 それにもっと言えば、円安だとか円高だとか言う前に、彼らは、為替に関して一定の想定値を設けて事業計画を立てている関係上、その想定レートから大きく逸れることがあれば、事業計画自体を見直す必要に迫られてしまうのです。

 だから、簡単に言えば、当初は円安を歓迎していたものの、思いのほか円安が進み事業計画の練り直しを迫られているのでしょう。だから、彼らは、円安もほどほどにと言いたいのでしょう。

 それに、円安は、一般消費者にとってマイナスに影響することはもちろんのこと、生産者側においても、例えば燃料を大量に消費するような漁業者や運送業界はコストアップのために採算が取れにくくなっているのも事実です。

 にも拘わらず、アベノミクスの正しさを無条件で信じたがっている人々は、アベノミクスによってもたらされた円安が批判されると、今度は、そうした批判に対して倍返しの批判をする訳です。

 いいですか? 経済の現象なんて、全て良い結果だけを生むとか、全て悪い結果だけを生むとかということはなく、良い面もあれば悪い面もある訳です。

 それに、既に述べたように、企業経営者は、日本の利益というよりも自社の利益を優先する立場にあり‥その一方で、政治家たちは、飽くまでも国境の存在を前提として日本自身の利益を優先する。だから、そもそも企業経営者と政治家の意見が一致することなどあり得ないのです。

 ということで、経済界の中で、これ以上の円安は望まないという人々がいたとしても、それはそれで当たり前の話ではないのでしょうか。

 

 
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