このブログでも何度も予想していたとおり、2013年の貿易収支が10兆円の大台を超えたとか。なんでも過去最大の11兆4745億円を記録したのだ、と。

 どう思います?

 因みに年間の貿易収支が赤字になりだしたのは2011年からで、2011年が2.5兆円の赤字、2012年が6.9兆円の赤字、そして2013年が11.4兆円の赤字と、赤字幅は拡大の一途を辿っているのです。

 何故、2011年に貿易収支は赤字に転落したのか?

 ご承知のように、原発の稼働が停止され火力発電に対する依存度が増えた結果、天然ガスの輸入が急増する一方で、地震と津波等の災害のためにサプライチェーンが寸断されて、輸出が減少したことが主な要因だと言っていいでしょう。それにあの頃、急激に円高が進みましたよね。そうして円高になったので輸出が益々奮わなくなってしまったのです。

 しかし、その円高もアベノミクスのスタートともに修正され、ここ数日は新興国の通貨安が起きた結果、若干円高に振れている面はあるものの、基調としてはこの1年間以上円安が続いているのです。

 では、こうしてもはや1年以上も円安が続いているというのに、どうして貿易収支は改善しないのか? 一気に黒字に戻ることが無理だとしても、何故貿易赤字の額は縮小しないのか?

 何故でしょう?

 それは、輸入は、円安のために輸入額でみればもろに影響を受けているのに、その一方、輸出は、円安になったことに伴い製品価格の引き下げを行い、輸出競争力を確保しようとしているのにも拘わらず、輸出数量の増加が思ったほどではないので、結果として、輸出額の伸びが輸入額の伸びを下回るような状況が続いているからなのです。

 寂しいものですよね。かつては年間の貿易黒字額が10兆円とか11兆円とかあったこともあるのに‥今は、逆に11兆円もの赤字を出しているのです。

 あれっ、変な顔をしていますね。私の言うことにご不満なのでしょうか?

 そうなのですよね。最近、いるんですよね。

 貿易赤字の何が悪いんだ、なんて言い張る人が。

 もっとも一般の方は、そんな風には考えない。貿易赤字は歓迎すべきことではない、と考える。

 では、何故貿易赤字は悪くないなんて言うのか? その前に、何時ごろからそんな考えが広まっているのか?

 実は、数年前からと言っていいのです。つまり、我が国の貿易収支が赤字に転落した頃から。

 誰がそんなことを言いだしたのか?

 あの高橋洋一氏などが言い始めたのです。

 いずれにしても貿易赤字が悪くないという論者の主張の共通点は、貿易収支や経常収支が赤字になるのであれば、その一方で資本収支は黒字になり、トータルすればゼロになる‥なんて。

 或いは、幾ら輸入が輸出を上回ろうと、輸入するのは、輸入の対象となる原材料や製品をその国の国民が欲するからそうなっているだけの話で、何故それが悪いのか、と。

 先ず、ここで気が付いて欲しいのは、貿易赤字が悪くないと言い張る人々は、経常収支が赤字になっても、同じように悪くないと言うことなのです。

 よく見受けられるように、幾ら我が国の貿易赤字が大きくなろうと、経常収支でみれば依然として黒字を維持しているし、今後も経常収支が赤字になる恐れはないので心配は要らないという論者とは、その論理的根拠が全く違うのです。

 経常収支が黒字であるから心配は要らないという人は、本当は貿易収支も黒字である方が望ましいと多分考えるのでしょうが、但し、物事はトータルで考えなければいけないから、まあ貿易赤字であっても経常黒字であるのであれば、よしとしようという考えなのでしょう。

 今、私がそんなことを言ったので、皆さんのなかには、だったらもっと大きな目で見て‥つまりトータルで考えればいいのではないか、と思った方がいるかもしれません。

 経常収支でみるよりも、資本収支を合わせて全てのトータルでみるべきだ、と。

 確かにそうなれば、誤差脱漏というテクニカルなことを抜きにすれば、プラマイゼロになる訳です。

 でも、そんなことを言いだすと、世界中のどのような国もプラマイゼロになる訳です。

 いいですか?

 ギリシャやキプロスや今再び関心を呼んでいるアルゼンチンだって‥そんなデフォルトを起こした経験のあるような国も、国際収支はトータルでみればプラマイゼロ。というよりも国際収支の統計は、そのような仕組みになっているというだけの話です。

 個々の企業のバランスシートにしたって同じなのです。どんな企業でも、資産の部と負債の部に資本勘定を加えたものはバランスが取れている訳です。

 貿易赤字のどこが悪いという主張は、バランスシートは左と右のバランスが取れているから、問題がないというのと同じようなものなのです。

 しかし、バランスシートが右と左でバランスが取れているのは、そのような仕組みにしているからだけなのです。

 貿易赤字が悪というのであれば‥或いは経常赤字が悪というのであれば、どうして米国は長い間、貿易収支と経常収支の赤字が続いているのに、経済成長を続けているのだ、なんて反論もなされるのです。

 確かに貿易収支が赤字でも、そして、経常収支が赤字でも経済が成長しない訳ではないのです。私もそれを否定することはありません。

 しか〜し‥

 そのような人々は、大事なことを忘れてしまっているのです。

 米国は中国のことが好きか、嫌いか?

 嫌いな人もいる反面、親中派もいるのです。ただ、軍事関係者などにしたら、中国は敵国みたいなものなのです。だから、沖縄に米軍基地が必要なのです。しかし、その米国も中国に気を使うことが多いではないですか?

 例えば、日中間の緊張の高まりに対しても、日本に対して、もう少しどうにかならないかと譲歩を迫る。つまり、靖国参拝なんかやめとけと言うのです。

 おかしいでしょう? 日米は同盟関係にあり、片や中国はある意味警戒すべき国であるにも拘わらずです。

 何故、そこまで中国に米国は気を使うか?

 それは、米国が中国から多額の借金をしているからなのです。つまり、中国が米国の国債を大量に保有している、と。だから、常に債権者たる中国に気を使わざるを得ないのです。

 だって、中国がその気になれば、米国の国債を一気に売却して、米国経済を混乱に陥れることが可能なのです。もちろん、そのような行動に出れば、中国にも損失が及ぶので容易にはそのようなことはできない。しかし、そうしたカードを中国が持っているのです。

 さらに、米国が、経常収支が赤字のまま経済成長を続けるときには、海外から大量の資金を調達しているために、経済成長の果実の一部を、そうして資金を提供してもらっている国々に配当として支払う必要があるのです。だから、見た目の経済成長どおりに米国人が潤う訳にはいかないのです。

 私が、貿易赤字になったことを心配するのは、それがいずれ経常赤字を招く恐れがあるからです。

 もちろん、国際収支統計の仕組みもちゃんと分かっているし、理屈の上では貿易赤字や経常赤字それ自体が悪いことを意味する訳ではないことも承知をしているのです。

 しかし、そうは言っても、経常赤字の国はいずれ他国に資金提供を仰ぐ羽目に陥ることになるのは容易に想像が付き、そして、他国に資金提供を仰がなければいけなくなると、様々な困難が生じる訳ですから。

 まあ、一般の方で騙される方は少ないと思うのですが‥貿易赤字のどこが悪いのか、なんて発言には注意をした方がいいのです。


 

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