米国の量的緩和策の規模縮小が、新興国経済に波紋を投げかけています。

 もとい、米国の量的緩和策の規模縮小が、新興国経済に波紋を投げかけているように報道されています。

 ものごとを単純化するのが好きなテレビ局。

 例えば、土曜日の朝放送される辛坊氏が司会をつとめるウェークアップでも、こんな風な言い方がされていたのです。

 「米国のFRBが量的緩和策の規模を縮小しているので、新興国に流れていた資金が還流し始め、新興国通貨が下落している。アルゼンチンの通貨が下落したのはそのためだ」
 
 少しばかり表現は違っているかもしれませんが、概ねそのような趣旨の説明をしていたのです。

 米国が市場に放出する資金量を絞り始めた。だから、新興国に向かっていた資金が逆流し始めた。その結果、新興国の通貨の価値は下落した。

 非常に単純化したストーリーで、頭に入ってきやすいです。

 でも、アルゼンチンに関しては、そのような単純な構図にはなっていないのです。というよりも、米国がどんな金融政策を採用しようと、アルゼンチンの通貨は下落する運命にあったと考えた方がいい。

 何故そうなのかはこのブログで既に説明しているので、本日は省略しますが‥テレビとしては、そのような細かいことを言い始めると、話が複雑になってしまう。だから真実ではなくても分かり易い話をしたがるのです。

 確かに正確ではあるが小難しい話をするならば、視聴者の多くはチャンネルを替えてしまうかも知れない。それに反し、正確さは欠いても分かり易い方が、視聴者は関心を示してくれる、と。

 いいのでしょうか、そんなことで?

 いずれにしても、今回の新興国ショックに関して、安倍総理や麻生副総理、それにアベノミクスを熱狂的に支持する人たちは、米国の量的緩和策の規模縮小についてどう考えているのでしょうか。何を考えているのかがよく分からない。

 別に、いちいち他国の金融政策にコメントする必要もないだろう、と言えないこともない。或いは、ひょっとしたら意見はあるものの、敢えて沈黙を守っている可能性がなきにしもあらず。

 しかし、どう考えても彼らは、FRBがテーパリングに着手したことをどう評価したらよいか分からない状態にあるのではないでしょうか。

 米国が量的緩和策の規模を縮小するというのであれば、本来であれば、麻生さんや安倍さんはどのように反応する筈だったのか? どうです? 直ぐに答えが思いつきますか?

 本来であれば、彼らは米国の決定を大歓迎した筈なのです。

 だって、そうでしょう? 特に麻生副総理などは、アベノミクスのスタートに当たって、今までは欧米が大量に資金を放出してきたから超円高が起きたのであって、それと同じようなことを日本がして、何が悪い、文句を言われる筋合いはないと言っていたからなのです。

 その米国が、今や市場に放出する資金の量を絞り込み始めている訳ですから、日本にとっては好都合なことではないですか?

 そうでしょう? 何故歓迎の意を表しないのか。

 安倍総理にしても、先日もダボスでアベノミクスについて自慢げに話していたではないですか。

 過去、日本が長い間、デフレから脱却できないでいたのは、バンカーに打ち込んだゴルファーが怖くてサンドウェッジを使うことができずにパターで打ち続いていたようなものだ、と。

 異次元の緩和策がサンドウェッジに当たるのでしょう? その考え方からしたら、米国が量的緩和策の規模を縮小することは日本にとって好都合であることは明らかです。
 
 しかし、実際にはテーパリングの影響で新興国通貨の下落が起きてしまい、そして、それが原因で円高に振れるようなことになっているので、訳が分からなくなっているのです。

 世の中に出回るお金の量に応じて、その国の通貨の価値は決まるという単純な発想をアベノミクスの支持者はするのです。

 だったら、何故今、米国は市場に放出する資金量を絞り込み始めたのに、ドルの価値が円に対して下がるようなことが起きるのでしょうか?

 私が、そのような質問をすれば、それはリスクオフに切り替わったからだと答える人が多いと思います。

 そうですよね、リスクがまた意識され始め、だから安全通貨の円に逃避する動きが表れているということですよね。

 しかし、それを認めるのであれば、通貨の価値は通貨量によって規定されるなんて言えないではないですか。

 それに、日本では、幾ら異次元の緩和策なんて言おうが、実際世の中に出回るお金の量がそれほど増えている訳ではないのです。日銀が放出した大量の資金の殆どは日銀当座預金に積まれたままになっているのですから。

 要するに、投資家がリスクを取るか取りたがらないかで円の価値が決まることがある、と。そうなれば、偶々時期が重なっているので分かり難いと思うのですが、アベノミクスで円を大量に市場に放出したから円安が起きたのではなく、ユーロ危機が落ち着き始めたので円高が修正され円安に向かったということが分かると思うのです。

 もちろん、投資家の心理的な要素も大きく作用するでしょうから、その意味でアベノミクスが相当の役割を果たしたことまで否定はしません。しかし、過去1年間において円高が修正されたということの少なくても半分の原因は、ユーロ危機が落ち着きを見せ始めたことにあると思うのです。

 いずれにしても、米国がテーパリングに着手すると株価を下げてしまうという意識が日本の政治家たちにも植え付けられているために、彼らも日本のメディアと同じように、米国が量的緩和策の規模を縮小するのは慎重にやってもらいたい、なんて思っているのでしょう。

 要するに、筋が一本通った自分の考えがないということなのです。




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