理研の調査委員会が「画像の捏造」を認定したことに対して、小保方氏が反発しました。

 へー、こんな風な展開になろうとは。

 見ている方としては面白いのですが、しかし、なんか泥仕合の様相、否、小保方氏が益々窮地に追い込まれるだけのような気がしてきました。

 しか〜し、世の中には小保方氏を支持する人がいない訳でもない。

 それに、こうして堂々と小保方氏が反論をした訳ですから、ひょっとしたら小保方氏を支持する人が増えるかもしれません。

 では、小保方氏は、どのように反論をしているのか? 

 「調査委員会の調査報告書を受け取りました。驚きと憤りの気持ちでいっぱいです。特に、研究不正と認定された2点については、理化学研究所の規定で「研究不正」の対象外となる「悪意のない間違い」であるにもかかわらず、改竄、捏造と決めつけられたことは、とても承服できません」
 
 「レーン3の挿入(改竄とされたDNA解析画像)について。
 Figure 1i(論文の画像)から得られる結果は、元データをそのまま掲載した場合に得られる結果と何も変わりません。そもそも、改竄をするメリットは何もなく、改竄の意図を持って、Figure 1iを作成する必要は全くありませんでした。見やすい写真を示したいという考えからFigure 1iを掲載したにすぎません」

 「画像取り違え(捏造とされた博士論文関連の画像)について。
 私は、論文1に掲載した画像が、酸処理による実験で得られた真正な画像であると認識して掲載したもので、単純なミスであり、不正の目的も悪意もありませんでした」

 さあ、如何でしょうか?

 ひょっとしたら、この小保方氏の主張に対して、彼女には少なくても「悪意」はなかったのではないかと同情したくなっている人がいるかもしれません。

 そのような人々は、「悪意」という文言を常識的な意味の「悪意」と理解しているのでしょう。そして、小保方氏自身も、一般的な「悪意」として理解しているのです。。

 では、悪意がなければ、単なるミスとして許されるのか? 

 理研の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」を見て見ましょう。

「(目的)
第1条  この規程は、独立行政法人理化学研究所(以下「研究所」という。)の研究者等による科学研究上の不正行為(以下「研究不正」という。)を防止し、及び研究不正が行われ、又はその恐れがあるときに、迅速かつ適正に対応するために必要な事項を定める。」

 第1条でこの規定の目的を定めています。つまり、研究不正が行われたような場合には、この規定によって事態に対処する、と。

 次に第3条の規定をみてみます。

「(研究者等の責務)
第3条 研究者等は、誇りと高い倫理性を保持し、次に掲げる事項をその研究活動に係る行動基準
としなければならない。
(1)研究不正を行わないこと。
(2)研究不正に加担しないこと。
(3)周りの者に対して研究不正をさせないこと。」

 このように研究者は、研究不正をしてはいけないと明確に規定されています。

 では、研究不正とはどのようなことを指すのか? 第2条に次のように規定されているのです。

「(定義)
第2条  この規程において「研究者等」とは、研究所の研究活動に従事する者をいう。

2  この規程において「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げ
る行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。

(1)捏造 データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること。
(2)改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
(3)盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること。」

 このように、研究結果の捏造や改ざんが研究不正に当たるとされている訳ですが、但し、「悪意のない間違い」は含まないともされています。

 では、悪意のない間違いとはどのようなことを意味するのでしょうか?

 私は、小保方氏や理系の学者は、この「悪意」の意味を正しく理解していないのではないかと想像します。

 つまり、彼女はこの「悪意」を一般的な意味で理解しているのです。日常的に使われる「悪意」という意味で。具体的に言えば、自己の研究成果を、事実とは反して真正なものと信じ込ませるために行ったような場合でなければ「悪意」はない、と。

 簡単に言えば、他人を騙すような目的がなければ「悪意」があるとは言えない、と彼女は考えているのでしょう。一方、彼女は、STAP細胞の存在を本当に信じており、だから、論文に掲載した写真が、実際の実験の結果を写したものでなくても、それがそんなに重大なことなのか、と言いたいのだと思うのです。

 しかし、そもそもこうした規定や法律などで使われる「悪意」は、法律用語として解釈しなければいけません。

 そして、法律用語としての「悪意」には、何ら倫理的な意味合いは含まれていないのです。。法律用語として「悪意」とともに、「善意」という言葉も使われますが、これにも倫理的な意味は含まれません。行為者が、ある事実について知っているか、知らないかを示すのが、「悪意」であり「善意」であるのです。従って、例えば、結果的に、誰かの論文を無断で引用したような場合、当該文章が他人の文章であることを知らずに、結果として無断引用してしまった場合などには「悪意」には該当しないのですが、しかし、それが他人の文章であるのを知っていて無断引用してしまえば、格別誰かを騙す意図がなくても、「悪意」として認定されてしまうのです。

 逆にそのように解釈しなければ、幾ら他人の論文を無断引用したって、自分には悪意がなかったからという言い訳が成り立ってしまうのです。

 彼女は自ら、実際に研究過程で撮影された写真を使わず、博士論文で使用した写真を掲載したと認めています。何故そんなことをしたのか? その方が画像が鮮明であり、説得力を有すると思ったからです。

 確かにこの行為だけからは、彼女に、一般的な「悪意」があったとは認められないかもしれません。しかし、彼女は、その写真が博士論文で使用した写真と認識して今回の論文に掲載したのですから、法律用語としての「悪意」があったことは間違いないのです。

 ということで、第三者の立場から客観的に判断した場合、小保方氏の主張には説得力を感じることはないのです。


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 追記 (4月13日)

 読者の方から、次のような指摘を受けましたので、掲載させて頂きます。


 

小笠原誠治 様

 

はじめまして。杉本と申します。突然のメールで失礼いたします。

貴ブログにて『理系は「悪意」の意味が分かっていない!(STAP論争)』(2014/04/07)の記事を拝読いたしました。

STAP記事の関連リンクで、たまたまタイトルに惹かれて読ませていただいた次第です。

 

法律用語としての悪意の解釈について、冒頭から「なるほど、なるほど」と読み進めていき大変勉強になりました。しかし、残念ながら最後の結論で明らかに事実を間違えて伝えておられます。またその結果、大きなミスリードが生じていることに気づきました。

軽く読み流すべきだったかもしれませんが、朝日新聞サイトからリンクされる貴ブログは影響力も大きいかと思われます ので、180度間違った結論を導いていらっしゃることに少なからず罪を感じます。大変おこがましいとは思いますが、訂正されたほうがよろしいかと思い、以下、指摘させていただきます。

 

まず事実を間違えていると思われるのは以下の2段落です。

 

*****

 

 彼女は自ら、実際に研究過程で撮影された写真を使わず、博士論文で使用した写真を掲載したと認めています。何故そんなことをしたのか? その方が画像が鮮明であり、説得力を有すると思ったからです。

 

*****

 

 確かにこの行為だけからは、彼女に、一般的な「悪意」があったとは認められないかもしれません。しかし、彼女は、その写真が博士 論文で使用した写真と認識して今回の論文に掲載したのですから、法律用語としての「悪意」があったことは間違いないのです。

 

*****

 

ところが同じ記事の冒頭では、大前提となる小保方氏サイドの反論文(?)から以下を引用し、「真正な画像であると認識していた」という主張を紹介されています。

 

 「画像取り違え(捏造とされた博士論文関連の画像)について。

 私は、論文1に掲載した画像が、酸処理による実験で得られた真正な画像であると認識して掲載したもので、単純なミスであり、不正の目的も悪意もありませんでした」

 

このコメントをもとに、悪意の有無について論じていらっしゃるわけ ですが、なぜ結論では「博士論文の写真と認識していた」ということになっているのでしょうか。

この記事の掲載後ではありますが、4/10の小保方氏会見でも、画像を間違えた経緯を本人が説明していました。膨大な枚数の画像、パワポ資料を繰り返しアップデートしたことによる混乱、元画像を辿らなかったなど、稚拙さ・杜撰さに呆れるばかりの弁明ですが、博士論文の画像と認識したうえで見栄えがよかったから使用したとは認めていませんでした。

上記2段落は明らか間違った記述であり、ミスリードとはいえないでしょうか。

 

さらに、「そこに嘘がある。知っていて使ったんだろう?」という推測をはさむならばまだ文脈も通るのですが、大前提を誤認していらしゃるの で結論は180度異なります。

小保方氏の主張をそのまま当てはめると、

『彼女は、その写真が博士論文で使用した写真と認識せずに今回の論文に掲載したのですから、法律用語としての「悪意」がなかったことは間違いないのです。』

という結論になりませんか。

 

ということで、おかしな文章だなぁと気づく人も少なくないとは思いますが、結論だけ読んでそのまま受け取ってしまう人も多いだろうと危惧しています。「そうか、博士論文の画像と知っていて使ったのか。それは法律的にも悪意と認められるし、やっぱり捏造だったのだ」と、悪気もなく友人知人に吹聴したり、自分のブログにコピペして悪意のない間違いを拡散するかもしれません。「法律的に悪意がある のだから犯罪者だ」などと言いだすバカもいるかもしれません。

極端にいえば、間違った論文も、間違ったブログも、悪意の有無にかかわらず同罪です。

 

なお私は小保方ファン等ではありませんし、STAP記事を執拗に追っているものでもありませんので、このメールも偏執的なクレームとは受け取らないでください。

悪意の有無については理研の内規、いわば雇用の問題に過ぎず、裁判でしか意味をなさないと考えています。

ただ、繰り返しになりますが、目に余る間違いでしたので指摘させていただきました。間違いの連鎖は断ち切ってほしいものです。

ご検討いただければ幸いです。

 

杉本