PRESIDENT Oneline が「日本はギリシャのように破綻しない理由」と題した浜田宏一教授の意見を掲載しています。

 イエール大学の名誉教授であり、内閣官房参与でもある浜田氏。もちろん、アベノミクスの強力な支持者でもあるのですが…貴方はそんな浜田教授をどう思いますか?

 人は外見では判断してはいけないなんて言いますが…

 いずれにしても、では何故日本は財政破綻を心配する必要がないと浜田教授は言うのでしょうか。

 彼の考えを要約してみました。

1.政府の債務返済能力を判断するには保有する債務額だけではなく資産額も見なければならないが、日本政府は15年3月末で574兆円の金融資産を保有している。それを負債総額から差し引くと残った分はGDP比で130%弱と見かけほどは高くない。その他、保有する土地や官庁の建物などの資産も相当な額に上る。

2.日本は官民を合わせて見たとき、世界で最も多くの対外資産を持つ純債権国である。日本の対外純資産は14年末時点で366兆円と、24年連続で世界一である。

3.財務省は「政府債務というツケを次代に残すな」というが、債権もまた将来世代に移転される。

4.日本国債は円建てで発行されている。このため返済を求められれば、日銀がお金を刷ることによりすぐに返すことができる。

5.市場が日本国債が返済不能となることを心配しているのであれば、高い金利を約束しない限り誰も日本国債を買ってくれないはずであるが、日本国債の発行金利は10年国債で年率0.5%前後であり、それだけ日本国債はマーケットで信頼されていることを意味している。


 如何でしょう?

 先ず、日本政府は巨額の資産を保有しているという点。

 でも、そのような主張をするのであれば、財務省が毎年度、国(政府)としての貸借対照表を発表していることを忘れてはいけません。

 例えば2014年3月末時点で、国(政府の)の保有する資産が652.7兆円に対し負債が1143.1兆円。ということで、債務超過額は652.7兆円となっているのです。

 要するに、政府部門は既に多額の債務超過に陥っているのであるが、国民という債権者がお金を貸してくれるのでどうにか倒産をせずに済んでいるだけなのです。

 それに、574兆円も金融資産を保有しているなんて浜田教授は言っていますが、現預金の保有額は僅かに20兆円弱程度でしかないのです。その他、有価証券は130兆円ほど保有していますが、これも殆どは米国債であり、そう簡単に処分するにはいきません。

 念のために米国債をそう簡単に処分できない事情に触れておきますと…

 米国から怒られる?

 もちろん、そういったこともないではないのですが、100兆円ほどの米国債を急に処分するようなことになれば、急激なドル安円高を招く恐れがあるからです。というよりも、政府が何故多額の米国債を保有しているかと言えば、過去において円安に誘導するために為替介入した結果がこの多額の米国債になるからです。

 次に、日本は純債権国家であるという点ですが、しかし、問題は日本国が、国全体として破綻するかどうかではなく、政府部門の財政について論じている訳ですから、
国民の多くが容易に増税に応じない限り、幾ら国全体としては純債権国であるとしてもそのことは関係ないのです。

 それとも、そう簡単に国民は増税に応じると言うのでしょうか?

 というよりも、積極財政派の人々こそ、いつも増税に反対しているではありませんか?

 3番目の債権、或いは資産も将来の世代に移転されるという論拠についてはどうでしょうか?

 国債の債権者という地位についても将来の世代に移転されるというのは、そのとおり。しかし、それをいうのであれば、資産と負債を帳消しにすれば、政府部門の借金はちゃらになると言っているのと等しいと思います。

 しかし、実際に国債を保有している人々にとっては、そのようなことは全くの暴挙であることは論を待たないでしょう。というよりも、資産と負債を帳消しにすること自体が、日本の財政が破綻したことを意味していると言ってよいでしょう。

 4番目の日銀がどれだけでもお金を刷れるからという論拠も、それを言っちゃおしまいよ、というしかありません。

 つまり、呆れてしまって開いた口が塞がらない、と。この人は本気でそんなことを考えているのか、と。もし、それが可能であれば、最初から国債など発行せず、政府が政府紙幣を発行すれば幾らでも増税なしで必要な財源が確保できるのです。

 でも、そのようなことになったら、誰が政府紙幣などを受け取るものか、と。

 5番目の日本国債の金利は世界で一番低いではないかという議論は、これはある程度は説得力があるとも考えられる訳ですが、しかし、そうした日本国債の金利が極めて低い状況にあるのも、日本銀行が市場から大量に国債を買い入れるから現実になっているという事実を見逃してはいけません。

 こうしてみてくると、浜田教授の考えは殆ど説得力を有しないことが理解できると思うのですが…その浜田教授自身も、次のようなことを言っているのです。

 「もちろん、永遠に歳出が歳入を上回る状態は望ましくない。いずれは消費税率を上げるなどして、財政を均衡させなくてはならないが、問題はそのタイミングにある。この場合、景気を好転させ、日本経済を成長軌道に乗せてから税金を取るアベノミクスの立場と、EUがギリシャに押し付けているように、経済の状態とは関係なくまず税率を上げようとする立場の2つがある。どちらが正しいのだろうか。」


 いいでしょうか?

 浜田教授も、いずれは消費税を増税して財政を健全化する必要があると言っているのです。

 つまり、景気さえよくなれば増税など実施しなくても財政再建は可能だという、否、増税を実施すれば余計に財政は悪化すると言っている上げ潮派の考えとは違うということなのです。

 つまり、最低限度の理性はまだ備えていた、と。

 最後に私は浜田教授に聞いてみたいのですが、成長軌道というのは、日本の実質経済成長率がどれほどの水準に達することを意味するのでしょうか?

 例えば、実質成長率で2〜3%は最低必要だと言うのでしょうか?

 でも、だとしたら、それは人口が減少傾向にある我が国としては相当に難しいと思います。だって我が国の潜在成長率は今や1%を相当下回っているかもしれないからなのです。

 ということは、永遠に増税は嫌だということで、政府の借金は大きくなるだけなのです。



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