経済ニュースゼミ

小笠原誠治の、経済ニュースを通して世の中の動きを考察するブログです。地球温暖化阻止のために石油・石炭産出権取引を提唱します。産出権取引は排出権取引とは違います。みんな勘違いするのです。

カテゴリ: 通貨

 本日、次のようなニュースに接しました。

 「1万円札、1億8千万枚増刷へ…」

 2016年度に印刷される1万円札の量が、前年度より1億8千万枚(1兆8千億円)多い、12億3千万枚(12兆3千億円)になることが決まったのだとか。

 実際、世の中に出回っているキャッシュの量も、2月は前年同月と比べて6.7%増の90兆3千億円となっており、その中でも1万円札は6.9%も伸びているというのです。

 お金をじゃぶじゃぶ市場の溢れさせ、マイルドなインフレを起そうという計画が着々と進んでいるということなのでしょうか?

 でも、そう思った方は、残念!

  実は、2年でマネタリーベースを倍増させるとか、年間80兆円のペースでマネタリーベースを増やすとかといった日銀の政策は、物価を上げるという意味では全然効果が出ていないのです。

 何故かお分かりなりますか?

 そ・れ・は…マネタリーベースは計画通りに増えているのですが、実際に世の中に出回るお金の量(マネーストック)はそれほど増えていないからなのです。

 「知らなかったのですか?」

 「知ってたわよ」

 「マネタリーベースは増えても、日銀当座預金口座に豚積みになっているのですよね」

 ということで、幾ら日銀が大量の国債を市中から買い上げても、その代金が日銀当座預金口座に豚積みになっているので、お金は世の中に回らない、と。

 また、だからこそ、それを世の中に回すためにマイナス金利が導入されたのです。

 しか〜し、上のニュースによれば、実際に世の中に出回っている現金(キャッシュ)は6.7%も伸びているというのです。

 これ、どのように理解したらよいのでしょうか?

 世の中に出回っているお金の量は、やっぱり増えているのでしょうか?

 でも、それが事実だとしたら、何故インフレにならないのでしょうか?

 グラフをご覧ください。

現金通貨

 青の線が現金通貨の対前年同月比を示しています。昨年の初め頃、4%を切っていた伸び率が昨年の10月には6%台に乗り、そして、その後も増え続けているのです。

 その一方で、預金通貨の伸びを見れば、昨年の5月から8月頃にかけて比較的高い伸びを示した後、低下傾向にあり、また、マネーストック(M1)の伸び率も概ね預金通貨の伸びと同じような動きを示しているのです。

 つまり、世の中に出回っている現金、例えば、1万円札や千円札の量は増えているものの、普通預金などの流動性預金はそれほどは増えていない、という現象が起きているのです。

 要するに、預金通貨の量がそれほど増えていないので、インフレ圧力が強まることはないのです。

 では、何故世の中に出回る日銀券の量は増える一方で、預金通貨の伸びはそれほどでもないという現象が起きているのでしょうか?

 その答えは、預金という形ではなく、1万円札などのキャッシュでお金を自宅に貯め込む「タンス預金」が増えているからだ、と言うのです。つまり、実際に消費活動が活発になるのに伴って現金需要が増えているのではなく…

 ・マイナンバー制度の運用が始まっても自分の資産を国に把握されないようにするため、現金で資産を保有する人が増えているから。
 
 ・マイナス金利の導入の影響で、預金を降ろす人が増えているから。
 
 というような事情で、現金需要が高まっているだけだからです。

 以上から分かるように、いずれにしても、日銀券の発行量が増えているといっても、それによって世の中に出回るお金(マネーストック)の伸び率はむしろ低くなっているのです。

 まあ、これでは消費も増える訳はありませんし、また、インフレ率が上がることも期待できません。

 マイナス金利の導入によって、それを支持する一部のエコノミストたちは、消費者の消費行動を促進すると考えた訳ですが…実際には、マイナス金利によって預金元本が減少することを恐れた消費者は、むしろ守りの姿勢に入ってしまい、益々消費を手控える結果になったということなのです。



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 政府紙幣の発行も悪くはないのではないか、と考える人々が世
の中に存在しているのは承知しています。

 この議論、何も2〜3年前に始まった訳ではありません。実はず
っと以前からあったわけです。国会で質問されたこともあるわけ
ですから。でも、専門家の間でこれが真剣に議論されたことはな
いと思います。それはこのアイデアが無理筋であるからです。

 しかし、皆さんのなかにも政府紙幣に発行は悪くはないと思う
けど‥、なんていう人がいるかもしれません。

 何故か?

 それは、やはり高橋洋一氏の影響だと思う訳です。

 政府紙幣を発行すれば、国債を発行する訳ではないので、国
の借金が増えるわけでもない。そして、その政府紙幣で財政出
動をすれば、需給ギャップを埋めることができ経済を回復軌道に
乗せることができる。運悪く少しばかりインフレになっても、今は
デフレこそが問題であるのだから、むしろインフレになっても歓迎
なのだ、と。

 そう言われると、大変にいいアイデアのようにも思えてくるので
すが‥

 そして、そういう考え方にころっと嵌ったのがあの政治評論家の
三宅さん。三宅さんがそう考える位ですから、一般の方が、そうし
た考え方になびいたとしても、それも無理からぬことかもしれませ
ん。

 でも、そんなにいいことずくめのアイデアであれば、何故一般の
の経済学者のなかには政府紙幣のアイデアを支持する人がいな
いのでしょうか。また、何故海外では、政府紙幣を発行することを
考えないのでしょうか?

 最初に言いたいと思います。

 もし、我々人間が、安易な方向に流れることがなければ‥、も
し、誘惑に負けない強い意志を持っているのであれば‥、もし、
自分たちのことよりも将来のことを心配するように志が高けれ
ば‥、そのときには政府紙幣を発行しても大きな問題は起こらな
いかもしれません。

 その意味では、政府紙幣の発行が理屈としておかしいと言って
いるのではないのです。しかし、人間の歴史を振り返り、我々が
どういう行動を取りがちであるかということを学習した後には、政
府紙幣の手段などなかなか採用できないということなのです。何
故ならば、政府紙幣の発行を認めれば、恐らく破綻に辿りつくで
あろうと予想されるからです。

 政府紙幣の発行も悪くはないではないかと思っている人にお聞
きしたいと思います。

 そもそも日本銀行は何故存在しているのでしょうか? 何故、
世界の国々は中央銀行を設立して、中央銀行に通貨の発行権を
与えているのでしょうか。

 それは、政府が通貨の発行権を握っていると、ついつい通貨を
多めに発行してしまい、インフレを招きやすくなってしまうからで
す。

 金や銀が通貨の役割を果たしていた時代を考えてみましょう。
そういう状態では、誰も通貨の発行権を独占的に保有していると
は言えません。何らかの手段で金や銀を沢山保有している人が
通貨を沢山保有していると言えるだけのことで、政府は通貨をコ
ントロールすることはできません。

 しかし、一度、金貨や銀貨、あるいは大判や小判を政府が発行
するようになると、事態は変わってくるのです。つまり、地金の金
や銀は幾ら価値があるとは分かっていても、コインの形をしてい
ないと、それが本物かどうかも見分けがつきにくく、価値の判定も
難しい、と。だから、政府が通貨を発行できるようにしよう、と。

 で、そうしたコインや大判小判の発行権を政府が持つようにな
ると、今度は、そうしたコインや大判に含まれる金の含有量につ
いて、政府が決定する権限を有するようになるのです。

 つまり、同じく1ポンドと呼ばれるコインでも、最近は金の量が少
ないぞ、という事態が生じてくるということです。

 で、政府の借金が積み上がるというのは、歴史上何度も繰り返
していることで、その度に、政府は金貨に含まれる金の含有量を
減らすような手段を採用してきたと。そうやって金貨を発行するの
であれば、少ない金で幾らでも金貨が製造できる、と。これが政
府通貨というものです。

 結果、何が起きたでしょうか?

 いうまでもなくインフレという事態です。では、何故インフレが起
きるのか?

 金の含有量を減らしたからなのか?

 そう思う方がいるかもしれませんが、それは正解ではありませ
ん。もし、それが正解であるのであれば、不換紙幣が流通する現
在、何故インフレが起きないか説明がつかないからなのです。

 インフレが起きたのは、金の含有量とは直接の関係はありませ
ん。ただ、1ポンドに含まれる金の含有量が少なくて済むというこ
とは、沢山の金貨を以前よりも簡単に発行することができること
になるのです。つまり、世の中の供給に対して、需要が急増する
要因をそれによって起こしたということなのです。

 特に戦争中などには、供給が限られているのに、しかし戦争遂
行のため通貨の発行が急増しがちのですが、そうやって通貨が
増加し、その結果、需要を抑えることができないので、インフレが
起きてしまうのです。

 いずれにしても、そうした経験を踏まえ、各国は中央銀行の制
度を有しているというわけなのです。

 ですから、そうした歴史をよく承知している人からいえば、中央
銀行の存在を認めつつ、政府紙幣の発行を言いだすことがとて
も奇妙に見えるというわけです。だから、専門家の間ではまとも
な議論になり得ない、と。

 でも、高橋氏などは、そうした過去の出来事について余り知らな
い人を対象に、政府紙幣を発行すべきだと主張し、そして、皆さ
んのなかにも、政府紙幣の発行はいいかもと考える人がいると
いうことです。

 ここで、もし、今から政府紙幣を発行したらどうなるかを考えて
みたいと思います。

 来年から、日本銀行はもはや紙幣を発行することを止めて、代
わりに政府が紙幣を発行することにしたとしましょう。

 紙幣は、極端に言えば、紙とインクさえあれば、どれだけでも印
刷ができますので、極めて安いコストでお金を作ることが可能で
す。ということは、今山のように溜まった国債残高も、償還期が来
るたびにお札を刷れば、どんどん返済することが可能である、
と。日本はたちまち財政再建が可能になるでしょう。そして、つい
でに言えば、お札を刷ることが幾らでも可能であるので、皆が嫌
いな税金を徴収することをしなくても国家財政の運営が可能に
なるのです。毎年度の予算規模が90兆円どころか、倍の180兆
円になろうとも、簡単にお札を刷って対応が可能です。それに国
民も税金を徴収されることがないので、大変ハッピーになるわけ
です。

 消費税もゼロ、所得税もゼロ、法人税もゼロなのです。

 税金のない社会、何と素晴らしいことか。

 この結果、どういう事態になるでしょうか。

 国民は、全く税金を徴集されることはない、と。それどころか、
年金も医療費も国が肩代わりしてくれる、と。

 しかし、そんな状態になったら、確実に需要だけが膨れ上がる
事態になるでしょう。何故なら、税金は徴収されることはなく、そし
て、所得が少なくなったら幾らでも国助けてくれるから、何も心配
することはなく買い物ができるからなのです。

 国民は、欲しいものは何でも購入する一方で、まじめに働こうと
する人の数は急減するかもしれませんので、供給が需要に追い
つくことは難しいでしょう。そして、その結果は、酷いインフレが起
きると。

 ただ、私がこういうことを言うからと言って、政府紙幣の発行は
必ずインフレを招くというものでもないのです。それは、我々が厳
しいルールを設け、そして、それをどんなことがあっても守ること
ができるのであれば、インフレを起こすことなく政府紙幣の発行を
続けることができるのです。

 では、そのルールとは何か?

 それは、GDPの増加に応じて、政府紙幣の発行量を増加させ
るということです。そして、国の歳出予算はGDPの増加分の一定
割合に抑えるということです。もし、そのルールが守られるのであ
れば、政府紙幣の発行には歯止めがかかるわけですから、そし
て、政府紙幣の発行量はGDPの増加とペースを合わせることに
なるので、インフレが起きにくくなるということです。つまり、もし、
毎年度の政府支出が、GDPの規模のごく一部に収まるのであれ
ば、税金を徴収することなく国家運営が可能であるということな
のです。

 しかし、我々はそのような厳しいルールを守ることができるとい
うのでしょうか?

 それは、いろんな誘惑が起きる訳ですから。

 例えば、地震や大水害が起きれば、すぐに政府に支援をお願
いしたい、と。政府が紙幣を発行すれば何とかなるではないか、
と。そしてまた、100年に一度と言われたリーマンショックのよう
なことが再び起こり、そうなれば、ここは政府紙幣を発行すべき
だ、となるのが必至なのです。

 そして、そうして例外扱いを認めていると、そして、仮に例外扱
いを認めても、それほどのインフレになることもなければ、人間と
いうもの、次第に傲慢になるというものです。つまり、インフレにな
る恐れもないのであれば、もっと政府紙幣を発行して困っている
人を助けるべきだ、という議論が強くなると思うのです。来年は選
挙の年だから、例外として制限を超えて政府紙幣を発行すべき
だという政治家も増えると思うのです。

 だから、当然のことながらインフレに至る、と。

 以上で、私の言いたいことが分かって頂けたかも、と思うのです
が‥

 それでも、「インフレが起きても、今はデフレで困っているのだか
らいいではないか」といって、納得をしない人もいるかもしれませ
ん。

 では改めて聞きたいと思います。

 仮に政府紙幣の発行とか、国債の増発でインフレが起きたとし
て、今の経済問題は解決するのか、ということです。

 確かに、物価が下がるという事態は解消できる訳ですが、それ
で国民の生活は豊かになるのか?

 そんなことはありません。物価が下がるということがなくなり、従
って、給料も下がりにくくなり、或いは給料が上がることも期待で
きるわけですが、その代わり物価の上昇が激しく、国民の生活が
楽になるとは限らないのです。

 デフレからの脱却が何よりも大切だと主張する人には、共通し
て見られる勘違いがあります。

 それは、彼らは、物価が下がる状態が続くと、モノの購入を先
延ばしにし、従って景気が悪くなり、反対に物価が上がる状態が
続くと、モノの購入を急ぎ、従って景気がよくなると考えがちなと
ころです。

 本当に物価が下がり続けるといつまでもショッピングを延長す
るのか?

 そんなことはありません。もし、そうだとすれば、多くの日本人
は今でも薄型テレビの更なる値下がりを期待して、購入を先延ば
ししていなければならないことになりますが、それは事実に反しま
す。
 
 さらに、物価が上がるとモノの購入を急ぐようになると言います
が、それもおかしいのです。確かにハイパーインフレのようなこと
になれば、モノの購入を急ぐという現象も見られるでしょうが、通
常は、幾らモノの値段が上がるからといって、では、毎月買う食
品の量が増えるかといえば、そんなことはないのです。

 恐らく、インフレになるとモノを買うというよりも、貨幣価値の下
落による影響を回避すると言う意味で、金を買うとか、米国の国
債を買うとか、外貨預金にシフトするとか、円資産からの逃避が
始まるだけの話であるのです。

 つまり、政府紙幣の行きつく先は、円資産からの逃避だ、という
ことなのです。

 その時、政府紙幣は見向きもされなくなり、誰も政府紙幣を受
け取らなくなる事態が想像されるということです。

 だから、政府紙幣の発行は無責任だ、というのです。


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