ニュースをチェックしていたら「大企業の社外取締役義務付けへ」という文字が目に入りました。「政府・民主党は、25日、企業の不正を防いだり経営の透明性を高めたりするため、大企業には社外取締役を起用するよう義務づける方針を固めた」(日経)

 まあ、こういうことが報じられるのも‥  オリンパスや大王製紙の事件があったからでしょう。政府としても何か対策を打つ必要がある、と。

 しかし、そもそもコーポレート・ガバナンスの問題であるのに、いきなり政府・民主党がモノを言うこと自体に認識の誤りがあるというべきでしょう。何故民間会社のガバナンスの問題に政治家が口を出そうとするのか? 先ずは、当該会社の株主たちがよく考えるべき話ではないのか? だったら、株主総会をもっと充実させるようなことを考えたらどうなのか?

 それに、社外取締役を義務付けたからといって、本当に事故防止のために、もっと言えば、コーポレート・ガバナンスの充実強化のために役に立つものなのか、と。

 私は、そんなもの殆ど役に立たないという意見です。もちろん、社外取締役を任命すれば、それはそれなりに意味があるでしょう。しかし、事故再発防止の効果まで期待できるかといえば、それは困難であるのです。

 しかし、世間一般はそのようには考えず、社外取締役は会社内に緊張感をもたらし、結構な制度であると考えているようなのです。実際に、社外取締役或いは社外監査役を任命する会社が昔と比べ急増している訳ですから。

 今、10名の取締役で構成される取締役会があるとします。トップは取締役会長。この会社のオーナーであり、最近まで社長を務めていた人が高齢になったために、代表権を返上し、会長に就任した、と。そして、次が代表取締役社長。会長の息子が社長を継いでいる、と。そして、その下に代表権がある専務取締役が1人いて、そして、その下に常務取締役が2人いて、そのうちの1人が社長の叔父にあたる人だとしましょう。そして、その下に平の取締役が5人いる、と。

 10人の取締役のうち3人がオーナー一族の人間であり、一族以外の者は7人。しかも、その7人もこの会社一筋できた忠実なサラリーマン重役であるのです。

 こんな会社があったとしたら、粉飾決算が起きやすいというべきなのでしょうか? 或いは、社長が、会社から借金をするようなことが起きやすいというべきなのでしょうか?

 答えは、何とも言えない。それは、経営者や取締役の質の問題による、と。しかし、政府・民主党の案は、そもそも、役員のメンバーに部外者がいないような会社は、コンプライアンス上の問題が起こりやすいという前提を置いているのです。

 確かに、役員の全部、或いは殆どが会長や社長が養ってきたような人々であれば、会長や社長に
とっては怖いものなし。ですが、誰を取締役にするかは株主の問題であって、株主が会長や社長の独断専行を許さないような体制を築くことが先決であり、形だけ社外取締役を義務化したから、それで問題解決になる訳ではないのです。

 ただ、取り敢えず、法律で日本の大企業は、社外取締役の設置が義務付けられたと仮定しましょう。

 そのような場合、ワンマンの社長や会長は、どんな人を社外から招へいするでしょうか? 自分に苦言を呈する人を選ぶのか? しかし、自分に文句ばかりいうような人をわざわざお金を出して呼んでくるほどお目出度い人がいるのでしょうか? しかし、だからといって、見るからにゴマすりタイプやイエスマンを呼ぶこともないでしょう。 ということで、外見は紳士的で、業界や海外の事情にも精通し、そして、ときに厳しい発言もする(しかし、本気になって自分たちを糾弾するようなことは決してない)ようなタイプの人を探し出そうとやっきになるでしょう。つまり、イメージを大切にするということです。如何にも外部の風が入り、今までの淀んだ空気が浄化され、経営体制に変化が表れたことを演出しようとする訳です。

 しかし、今回のオリンパスや大王製紙の事件を見ても分かるように、仮に取締役会のなかの誰かがそうした不正な事実を告発しようとすれば、それは命がけの仕事にもなる訳です。決して生半可な
気持ちでは行うことなどできないのです。当然のことながらトップにもそれなりの責任が及ぶ、と。

 そんな大変な役割を、縁もゆかりもない外部の会社の人間に期待することができるのでしょうか?
また、仮に、誰かがそうした社外取締役に就任するように要請されたとして、そのような命がけの仕事をしようという気になるものでしょうか?

 社外取締役などになるのは、大抵は一流企業の著名な経営者か、或いは著名な弁護士、或いは
著名な公認会計士などに決まっているといってもいいのですが‥そのような社外取締役が、これまでオーナー経営者の不正を摘発したというような話は寡聞にして聞いたことがありません。

 むしろ、何かスキャンダラスな事件が起こった会社について調べてみたところ、結構有名な弁護士
などが社外取締役に名を連ねたりしているのが分かったりして‥そして、急に社外取締役を辞めてしまう‥なんていうケースが如何に多かったことか!

 要するに、屁のつっぱりにもならない、ということなのです。

 確かに、社外の者を新たに役員に登用するようなことをすれば、外部の空気がもちこまれることは
事実でしょう。しかし、だからといって、その1人か2人の社外取締役に大きな役割を果たすことを期待するのは大変に難しいのです。何故ならば、そうして新たに社外から取締役に選任されたものにとって、命がけの告発をするインセンティブが存在しないからなのです。

 例えば、客観的なデータを公表する任務を負わされた監査法人であっても、自分たちの報酬がその会社から出ているために言いたいことも十分に言えない事実があるのに、単に1取締役の立場で
そこまででしゃばったことをするなんて‥。もし、それが、自分が何十年と身を粉にしてきて働いてきた会社のためであれば、自分が首になろうとも‥そして、今の若い社長が責任を取らされることになろうとも、先代への恩義を感じればこそ‥という発想で、一石を投じるような行動に出ることも期待できないではないのですが。

 私は、監督官庁を含め社会の目が、粉飾決算などに対しもっと厳しいものにならないことには、こうした事件の再発を防ぐことは難しいと思うのです。オリンパスは、こんなに長い間、偽装の会計報告を世間や株主に行ってきた訳ですが‥内容を見れば分かる通り、監査法人や金融庁がその気になれば、見逃すような複雑な話ではない訳です。

 如何にも‥というような飛ばしであるからです。むしろ、それを粉飾と見抜けない方がどうかしているのです。ですから、社外から取締役をもってくるなんてことを義務化しないでも、金融庁や証券取引等監視委員会がもっと厳しく監視の目を常に光らせれば、こうした事件は起こりにくくなるのです。

 でも、当局の幹部連中にはそうした摘発のインセンティブが働いていないのが事実です。つまり、そうしたことを仮に摘発しても、それが必ずしもその役人の出世につながらないから、役人も本気になろうとしないのです。

 どうしても何かやるというのであれば、監査法人の収入源のあり方を抜本的に見直すことです。どうして監査対象の企業からお金をもらいながら中立な監査が確保できるなどと思うのでしょう。

 監査法人や公認会計士の収入源について手を付けようとしないことが、政治家の知識のなさとやる気にのなさの表れであるのです。





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