経済ニュースゼミ

小笠原誠治の、経済ニュースを通して世の中の動きを考察するブログです。地球温暖化阻止のために石油・石炭産出権取引を提唱します。産出権取引は排出権取引とは違います。みんな勘違いするのです。

カテゴリ: 賃金

 去る9月30日に経済財政諮問会議が開催され、そこで民間議員から「「しつこいデフレ」の状況にあり、賃金をジャンプさせ、賃上げ主導の物価上昇の実現が必要」との意見があったと報じられています。

 これ、かつてローソンの社長を務め、今はサントリーホールディングの社長をしている新浪剛史(にいなみたけし)氏の発言なのです。
 
 内閣府が公開している議事録から抜粋すると…
 
 「資料5、2ページをご覧いただきたい。先ほど伊藤議員からもお話があったが、継続的な賃金の上昇が、脱デフレの要であることを改めて強調したい。
 経済財政諮問会議では、継続的な賃金の上昇と可処分所得向上をデフレ脱却の最重要課題と位置づけ、その実現のために施策を強力に推進すべきである。賃金を年収ベースで3%上げていくことを目指し、その結果として、力強い消費経済を作り、そして、物価2%の上昇を実現していくことが重要である。」

 「7ページ、ご覧になっておわかりになるとおりである。私どもでは、本年も年収ベースで賃金を3%上げた。来年も年収が3%上昇となるような業績を目指して頑張っており、ぜひともそのような業績を達成したい。」

 「大企業が目線を高く持ち、年収ベースで賃金上昇3%を目指すという旗を絶対に降ろしてはいけない。率先して賃金上昇のモメンタムを作り、社会に醸成し、中小企業にも伝播させていく。こうした流れがデフレ脱却に大変重要である。」


 安倍総理や麻生副総理からしたら、なんと心強い発言でしょう。このような経営者ばかりであれば、我が国はとっくにデフレから脱却できている筈だと思っているかもしれません。

 確かに、多くの企業が賃上げに積極的になれば、家計の消費活動も活発になり、物価が上がりやすくなるでしょう。

 日銀の金融政策の効果が限定的であることが確認された今、金融政策以外の手段に頼りたくなる気持ちは分からないでもありません。

 しかし…

 冷静になってよ〜く考えてみてください。

 いいでしょうか?

 サラリーマンや政治家が何故物価を上げる政策を望んだのか?

 物価を上げることが究極の目的だったのでしょうか?

 そのとおりだという人もいるかも知れませんが、多くの人はそうではありません。そうではなく、毎年給料が上がらないどころか減っていく状況が続いていたものだから、どうにかして給料が下がらないようにして欲しい、できれば少しは上げて欲しいという声が大きくなっていたものだから、どうにかして賃上げを実現したいと考え、そのためには先ず物価を上げることが先決だとなったのです。

 もう一度言います。

 物価を上げることが究極の目的ではなかったのです。給料を上げることが究極の目的であり、しかし、物価が下がるような状況では給料が上がることは期待できないということで、物価を先ず上げようということになったのです。

 それなのに…この民間の議員は、賃上げをすれば物価は上がるなんてことを言っているのです。

 その発言が間違っているというのではないのです。賃上げが行われれば、物価は上がるでしょう。

 しかし、では、どうやって賃上げが行なわれやすくなるかと言えば…

 それが難しいのです!

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 それなのに、今頃、またそんな議論をやっているのです、この経済財政諮問会議とやらでは。

 ついでに、他の議員の気になった発言を紹介すると…

 先ず、黒田議員(黒田総裁)。

 「このような「総括的な検証」を踏まえ導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」である。新しい政策枠組みの内容は、大きく2点ある。

 第1に、金融市場調節によって長短金利の操作を行う、イールドカーブ・コントロールである。これにより、経済・物価情勢だけでなく、金融情勢も踏まえた上で、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために、最も適切と考えられる長短金利、すなわちイールドカーブの形成を促していく。金融市場調節方針としては、従来のマネタリーベース増加額目標にかえて、短期政策金利と長期金利操作目標を決定する。今回の金融市場調節方針では、短期政策金利はマイナス0.1%を維持し、10年物国債金利の操作目標は、概ね現状と同じゼロ%程度とした。

 第2に、オーバーシュート型コミットメントである。この下で、振れの大きい生鮮食品を除いた消費者物価の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。金融政策には効果が現れるまでに時間差があることを踏まえると、実際に2%を超えるまで金融緩和を続けるというのは、極めて強いコミットメントである。さらに、2%の実現に向けたモメンタムを維持するため、必要と判断すれば、躊躇なく追加緩和を実施する。」

 黒田総裁は、今回の緩和策の枠組み修正のポイントが2つあるとし、1つは、目標を従来のマネタリーベース増加額から長短金利の操作水準に変更したこと、そして今1つは、人々の物価上昇予想を強めるために、インフレ率が2%超となる状態が出現してもすぐにはマネタリーベースの拡大方針を撤回しないこと、だというのです。

 おかしいでしょう?

 というのも、第1のポイントとしてマネタリーベースの増加額を目標から外したと言いながら、第2のポイントとしてマネタリーベース拡大の方針は継続するなんて、どう考えても矛盾していることを言うからです。

 麻生議員(麻生副総理)は、次のように言います。

 「伊藤議員からしつこいデフレという表現があったが、歴史的には、1989年12月に3万8,900円だった株価が、8,000円台まで落ちて、この3年間でやっと1万6,000円まで戻ってきた。土地の価格も、六大都市の商業地で一時ピークである1991年の13%まで落ちたものがやっと戻りつつある。デフレが悪いのではなくて、デフレ不況が問題なわけで、デフレでも好況はあったのである。そこのところからいくと、先ほど新浪議員が言われたように、企業の一番の問題は、収益は間違いなく上がっているのに、それが投資に振り向けられていないことである。企業の収益が上がっていることは、資料を見ればはっきりしている。内部留保がこの3年間で73兆4,000億円も増えている。トータルで約380兆円の内部留保が積み上がっている一方、現金・預金等で220兆円ある。金利がつかないのに、現金・預金で何をするのかと言いたくなるが、それでまた法人税率を下げろと言うから、下げて何をするのかと、私はいつも企業の人に申し上げている。」

 いつもと同じようなことを言っていますね。

 耳にタコができたよ、と思っている人が多いのではないでしょうか?

 最後に安倍議長。

 「日本銀行は、「総括的な検証」を行った上で、金融緩和を強化するための新しい枠組みの導入を決定したところである。これは、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するためのものであると理解しており、歓迎したい。金融政策の意図と効果が市場関係者にしっかりと伝わっていくことを期待したい。」

 2%の物価目標をできるだけ早期に実現するためのものなのですって。

 どうして、長期金利をゼロ%に誘導すると、2%の物価目標が早期に実現できるようになるのでしょう?

 虚しい発言としか思えません。





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 安倍総理が最低賃金を年3%程度引き上げ、時給1000円を目指すと表明しました。

 なんと素晴らしいことか! これで消費も活気づき、景気の好循環が生まれる、とお考えの人も多いのではないでしょうか。

 本当にそうなればいいのですが…

 でも、実際にはそうはならない可能性の方が高いのです。

 というよりも、それで景気の好循環が生まれるのなら、ずっと昔からやっていた筈ですから。

 それに、経済学者で最低賃金制度を積極的に評価する人は少ないのです。

 では、何故最低賃金を引き上げてもプラスの効果をもたらすとは考えにくいのか?

 その問いに答える前に、誤解のないように一つだけはっきりさせておきたいと思います。

 もし、労働者を採用する企業側が、優越的な立場にあることを利用して不当に賃金を低く抑えているという事実があるのであれば、それなら最低賃金制度を大いに活用する余地はあるでしょう。

 その意味では、最低賃金制度の意味は大いにあるのです。

 しかし、そうではない状況ではどうでしょう? つまり、企業側にそれほどの余力がないのにも拘わらず最低賃金を一方的に引き上げるとどうなるのか?

 もちろん、法律に基づく制度であり、罰則もある訳ですから、従わざるを得ないのです。ですから、仮に企業側に余力があれば、賃金を引き上げることになるでしょう。

 では、その余力がない企業は?

 最低賃金を支払うことができなければ、労働者を解雇せざるを得なくなってしまうのです。

 最低賃金が上がっても、それだけの賃金は払えないからと企業側に言われたら元も子もないではないですか。

 そうでしょう?

 それに、そもそも最低賃金が適用されている労働者の数は300万〜400万人程度であるらしく、従って、現状で最低賃金が仮に24円程度(賃上げ率3%に相当)上がっても、その人たちの収入の増加額は1000億円程度にしかならないのです。GDPが500兆円として、0.02%分にしかなりません。

 誤解しないで下さいよ。0.02%にしか相当しないから上げる必要がないなんて言いません。そうではなく、上げたとしても、それで日本の景気が一気によくなるほどの効果はないと言いたいだけなのです。

 それに、そもそも近年、最低賃金がどのように推移しているかと言えば…まあまあの伸びを示していると言っていいでしょう。

 グラフをご覧ください。

最低賃金

 アベノミクスによってベースアップが実現したなんて言われていますが…アベノミクスがスタートする以前から最低賃金は着実に上がり出していたのです。

 2007年頃から着実に伸びているのがお分かりになると思うのです。

 では、労働者の生活水準は向上しているのか?

 でも、実際に聞こえてくることと言えば、生活は大変に苦しい、というようなことばかりではないですか。

 私思うのですが、本当に企業側に余裕がありながら低賃金を強いているというのであれば、最低賃金を引き上げることの効果は大きいと思うのですが…そうではなく、これ以上の賃上げにはなかなか応ずる余裕がないというのであれば、幾ら最低賃金を引き上げたところで実効性は伴わないと思います。

 まあ、罰則もあるので表面的には最低賃金を支払った形を取るでしょう。しかし、労働者に支払うことのできる財源が限られているとすれば、例えばサービス残業を強要したり、研修費というような名目で労働者からお金を取ったりして帳尻を合わせるだけの話ではないでしょうか。つまりブラック企業が増えるだけだ、と。

 安倍政権は、そのようなブラック企業については企業名を公表すると言っていますが、しかし、中小零細企業は対象外になっているのです。

 最低賃金を毎年3%引き上げ1000円を目指すと言うのであれば、安倍総理は、それだけの余裕が日本の産業界にあると考えているのでしょうか?

 そこのところを是非聞いてみたいものです。

 しかし、日本商工会議所の三村会頭は、「現実的な状況を踏まえてやってほしい」と不満の意を示していますよね。



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 4月の実質賃金が0.1%になったと報じられています。なんでも2年ぶりのプラスなのだとか。

 今まで散々、実質賃金はマイナス状態が続いているではないかと野党から指摘されていただけに、このニュースは現政権にとって明るいニュースに映っているのではないでしょうか。

 では、何故急に実質賃金は、マイナスからプラスに転じたのでしょうか?

 今年の1月は-2.3%、2月も-2.3%、そして、3月は-2.7%と推移していたのが、4月にいきなり0.1%のプラスになったのです。

 実質賃金がプラスになったということは、物価上昇分を除いた正味の賃金が増加したということを意味します。

 では、現政権だけではなく、労働者たちもこのニュースを歓迎していいのでしょうか?

 まあ、ここで私がいきなり結論を述べると、また暗いことをいいやがってと言われそうなので、ご自分で判断して頂きたいと思います。

 次のグラフをご覧ください。

実質賃金指数

 1991年以降の実質賃金の推移を示したものです。

 ところで、賃金は、ボーナス月など季節要因によって金額が大きく変動する傾向があるので、そうした影響を除去する意味で、各年の4月の実質賃金指数だけをプロットしてあります。

 如何です?

 一番右端の値が、2015年4月の数値で、82.8。昨年4月の82.7よりも0.1%上昇したということで、今回大きく取り上げられている訳ですが…でも、改めて見てみると、1991年以降の最低水準(2014年4月の87.7)よりは僅かに回復したものの、その水準は極めて低いままなのです。

 勿論、底を打ったから、それだけでもマシだと言われればそれまでなのですが…でも、例えば、2011年、そして2012年と、2年間実質賃金はマイナスが続いた訳ですが、それでも最近の水準よりは3ポイントほども高い訳ですから、どちらの方がマシかは言うまでもないでしょう。

 それに、4月には実質賃金のマイナス幅が大きく縮小することは当然予想されていたので、今回、4月の実質賃金がプラスになったと言っても、それほど驚くべきことではないのです。

 何故かと言えば…昨年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられ、その結果、物価を2%ほど引き上げる効果がずっとあった訳ですが…その引き上げ効果も、今年の3月までのものでしかなかったからです。つまり、今年の4月を迎え、消費税増税の物価に与える効果が剥落したというだけなのです。

 で、そうして物価上昇率が3月末を境にガクンとおちたものだから、逆に、実質賃金の伸び率はその分かさ上げされたということなのです。

 しかし、物価上昇率に与える影響が剥落したとはいうものの、それで実質賃金指数が急に上昇する訳ではないので、労働者の生活がこれで急に楽になるというものではないのです。

 ということで、今回のニュースに大喜びする訳にはいかないのです。


 

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 昨日、厚生労働省が毎月勤労統計調査を発表したのですが、ご存知でしょうか?

 で、それによると2014年度の1人当たりの現金給与総額は、前年度と比べて0.5%増えたと言うのです。名目ベースで賃金が増加したの4年ぶりのことなのだとか。

 賃金が増えるということは何と嬉しいことか!

 では、物価上昇率を加味した実質賃金はどうなっているのでしょうか?

 実質でも増えていれば、もうこれは、アベノミクス、万歳!となるところですが…

 言うまでもなく、消費税の増税もあり…実質ベースでみると3%も減少しているのだとか。

 これでは、アベノミクス、万歳!どころか、どないなってんねん、と悪態の一つもつきたくなるというもの。

 で、以上のことについては、昨日ネットに流れていたニュースで知っていたのですが、今朝、改めて新聞を見て驚いてしまったのです。

 我が家は、日経新聞と長崎新聞を取っているのですが、こんなに扱いが違うのですから。

 次の記事のコピーをご覧ください。

賃金

 長崎新聞の方は、実質賃金3%減と大きな字が踊っているのです。

 では、日経新聞の方はどうか?

 これ、本当のベタ記事です。普通の記事の活字よりも字がさらに小さいのではないのでしょうか。

 で、こんな風にかいてあるのです。

 正社員の給与1%増、と。 そして、その隣には、昨年度、実質は3%減とも書いてあります。

 日経新聞のなんと正直なことか!

 安倍内閣に対する深い思いやりが察せられるのです。あくまでも給与が増えたことを強調したい、と。だから、労働者全体の賃金の伸び率を取り上げるのではなく、より高い伸び率を示した正社員の給与について取り上げたのでしょう。

 まあ、そこまでは許しましょう。どのような記事の構成にしようと、それは新聞社の自由。

 しかし、正社員の給与が1%と増と書いた隣に、実質は3%減と書けば、正社員の給与が実質では3%と減少したものと読者は勘違いするのではないでしょうか。

 でも、実質3%減となったのは、正社員の給与ではなく、労働者全体の賃金なのです。

 問題は他にもあるのです。それは、このような統計調査の結果を知った一般の人々は、安倍政権が盛んに賃金が上がったと言っている割には、2014年度はそれほど賃金が上がっていないのは何故なのだろうかと思うことが予想されるのに、その疑問に新聞社が少しも応えようとはしていないことです。

 もし、そのことに新聞社が気が付いているのであれば、私は、このようなベタ記事でお茶を濁すのではなく、何故厚生労働省の調査では、賃金の上昇率がそれほど高く出ないのかを読者に分かりやすく解説すべきだと思うのです。

 何故、こんなに賃上げ率が低いのか、と。

 今、私が言っているのは、実質についてではありません。正社員の名目値でさえ、賃金は1%としか上昇していないことについて言っているのです。

 何故なのでしょうか?

 答えは…

 普段、マスコミが伝える賃上げ率には、定昇分が含まれていることが関係しているのです。どういうことかと言えば、定昇分は、個人としてみれば確かに賃金が増える要因にはなるのですが、労働者全体としてみたら、賃金が増える要因にはなり得ないからです。というのも、労働者全体では、1年たっても基本的には全体の平均年齢は上がらないからです。つまり、定昇分は、全体の統計には影響を及ぼさない、と。

 要するに、普段、新聞社などは定昇込みの賃上げ率を伝えることによって、賃上げ率をより高く見せているから、このようなギャップが生まれてしまうのです。

 お分かりになったでしょうか?

 いずれにしても、このベタ記事を見て、日経さんはなんと正直なと思わずにはいられなかったのです。




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 安倍政権が民間企業に賃上げを要請し続けていることはご承知のとおりです。そして、その結果、実質ベースではともかく、名目ベースでは賃金が上がり始めていることは事実です。

 労働者にとってはなんとありがたいことか!

 まあ私も、細かいことはともかく、そうやって少しでもムードが明るくなっているのであれば、それはそれで歓迎したいと思います。

 しかし、その安倍政権が今度は中小企業に対してまで賃上げを強要しているのだとか。

 どう思います?

 そこまで口を出すのは如何なものか、と。

 中小企業だって本当は労働者の賃上げに応じたい筈。でも、大企業からはコスト削減を求められるなどしてなかなかその余力がないのに、どうやれば賃上げが可能になるのでしょう?

 そこで、安倍政権としては、今度は大企業側に対して中小を余り苛めるなと要請をしているのだとか。

 やっぱり日本は、自由経済どころか、政府ががっちりと管理する計画経済であったということなのです。

 理屈はともあれ、確かに中小企業が賃上げに応じれば益々賃上げのうねりが大きくなり、そうなれば物価も上がり、デフレ脱却が可能になるかもしれません

 しかし…私は、言いたい!

 そもそも何故民間の賃金が上がらないどころか、毎年少しずつ下がるような状況に陥ったのか、と。

 どう思います?

 これに対して、リフレ派は、その責任は日銀にあったと主張するのです。日銀の緩和策が中途半端であったから、日本はデフレの悪循環に陥ってしまった、と。そして、労働者の賃金は上がるどころか低下し続けた、と。

 しかし、私は、そのような意見には与しません。

 違うのです。民間の賃金が低下した主な理由は、少子高齢化のせいで日本の経済成長率が低下したことと、公務員の給与を大幅にカットしたことが大きいのです。

 つまり、公務員の給与をカットしたことで、民間企業としては、従業員の給料をそれほど上げなくても人材確保が可能になり、賃上げの必要性が薄れた、と。

 私が、こんなことを言うと、「それは違う。公務員の給与が下がったのは民間企業の賃金水準が下がったからである」と反論をする人がいるかもしれません

 確かに、公務員の給与水準は、民間に準拠することが法律の建前となっています。しかし、過去10年間ほどの間において行われたことは事情が違うのです。日本の財政事情がより悪化し、どうしても増税が必要となったが、そのためには先ず官側が範を示す必要があるということで、公務員の給与が大幅にカットされたのです。

 そうでしょう?

 だから、民間企業の賃金水準を上げたいと思うのであれば、本当は公務員の給与を上げることが一番の圧力になるのです。だって、人材確保に努める必要のある民間企業としては、優秀な人材が集まらなければ企業経営などできないからです。

 しかし、官僚たちの人徳のなさなのか、なかなか公務員の給与を上げることに賛成する国民は少ないのです。

 これほどまでに財政事情が悪化したのも全て官僚が悪いからとされ、だから、あいつらの給料など下げて当然だというような感情論がまかり通るのです。

 そして、政治家としてもそのような声を無視することはできなかった、と。

 でも、そろそろ冷静に考え直してみたらどうでしょうか?

 えっ、でもまだ公務員の給料を上げるなんてことは認められない?

 では、公務員とは言っても、アルバイトさんの給料を上げるくらいのことをしてはどうでしょうか?

 それなら何も目くじらを立てるほどではないと思うのです。

 そうやって役所で働くアルバイトさんたちの給料が上がれば、自然と中小企業の賃金水準にも影響がある筈。

 いずれにしても、公務員の給与を一方で絞り続けている限り、賃上げのうねりが大きなものになることはないと確信します。

 それでも納得がいかないというのであれば、国会議員の歳費を削る代わりに、例えば若手の公務員の給与を上げることを認めて上げては如何でしょう?

 何故かと言えば、国会議員の歳費を幾ら下げようとも、その影響が民間企業の賃金水準に影響を及ぼすことは殆どないと思われるからです。



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 最近、安倍総理が盛んに総雇用者所得という言葉を使っているそうです。

 昨日の参議院の予算委員会でも、次のようなやり取りがあったとか。

 小川議員:「賃金は実質的に下がり続け、アベノミクスは破綻している」

 安倍首相:「消費税の引き上げ分を除けばプラスが続いている」、「実質総雇用者所得は増えている」

 小川議員:「実質総雇用者所得は下がっているじゃあないですか。総理、これはどういうことですか?」

 安倍総理:「それは消費税が3%上がったから」、「消費税の影響を除けば昨年12月はプラス。本年の速報値も2ヶ月連続でプラス」

 内容的には別にして、私は、総理がこれほどまでに専門的な事柄に関して言及しているのをみて、そのことに先ず驚きました。

 安倍総理の並々ならぬ熱意が窺がわれると言えばそのとおりでしょう。

 ただ、同時に私は、総雇用者所得って何? という疑問を持ちました。そのような数値が発表されているのか、と。

 雇用者報酬のことを意味するのだろうか? しかし、月毎の雇用者報酬など発表されてはいないし…

 などと思いながら調べてみると、分かりました。

 官邸が次のようなグラフを公表しているのです。

雇用者所得

 
 ふむふむ…総雇用者所得とは、毎月の現金給与総額に雇用者数を乗じたものである、と。

 な〜んだ、それだったら、そうと言ってくれればいいものを。

 でも、名目と言えども総雇用者所得がそんなに伸びているのか?

 2014年中は、2%或いは3%を超える月も見られるのです。

 次の表をご覧ください。現金給与総額の伸び率が一番左側に掲載されています。

総雇用者所得の伸び率
(総務省のデータにより作成)

 如何でしょうか?

 ピンクの網掛けをした数値が、現金給与総額の伸び率を示しています。マイナスの月もあるし、最高に伸びた月でも2.4%に過ぎないのです。その一方で、雇用者数の伸び率は、概ね1%程度でしかありません。

 その程度しか雇用者が増えていないとすれば、「現金給与総額×雇用者数」の伸び率を見ても、現金給与総額をみても、それほどの違いがある筈がない…

 貴方もそう思いますか?

 でも、それは錯覚なのです。

 ここは愚直に実際に計算をしてみると分かるのです。

 右側の黄色の網掛けをした数値が、総雇用者所得の伸び率となるのです。

 結構な違いでしょう?

 ということで、確かに官邸が発表しているようなグラフになることは間違いがなさそうです。

 しかし、もう一度そのグラフを見てください。

 消費税増税の影響を除いた赤の実線が示す実質ベースの総雇用者所得の伸び率に注目してもらいたいのですが…アベノミクスがスタートする前の2012年の数値とそれほど大きな違いが生じている訳ではないのです。

 名目総所得が増えているのは間違いないとしても、実質ベースでは殆ど変化が生じていないということがこれで分かったと思うのです。


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 トヨタ自動車の労使交渉が15日、ベアを月額4000円とすることで事実上決着したと報じられています。

 トヨタ自動車の賃上げ交渉は、春闘の相場作りに大きく影響するだけに大きな関心が寄せられていたと言っていいでしょう。

 で、この決着についてどのように報じられているかと言えば、例えば読売新聞は、「定期昇給にあたる賃金制度維持分の7300円とあわせると、月額1万1300円の賃上げで、組合員平均の賃上げ率は3.2%となる」と説明しているのです。

 このような報道がまかり通るので、皆錯覚してしまうのです。

 3.2%も給料が上がるとはなんと嬉しいことか、と。今政府と日銀は、2%のインフレ率目標を掲げているが、3.2%も給料が上がるということは、実質1.2%も賃金が増えることになる、と。

 そう思いましたか、貴方も?

 私も、実際に給料が3.2%上がるというのであれば、それならトヨタ自動車と安倍政権を褒めてあげてもいいと思います。

 しかし、実際には賃金が3.2%上がる訳ではないのです、マクロで見た場合には。つまり、同じ年齢の従業員の賃金を比較した場合には、そうはならないということなのです。

 読売新聞の記事をよく読んでみて下さい。

 「定期昇給にあたる賃金制度維持分の7300円とあわせると」と書いてあるでしょう?

 つまり、労働者が1歳年を取った効果が含まれているということなのです。では、例えば、同じ30歳の労働者の賃金としてみた場合には、この定期昇給分を除いて考えないといけないので、賃金は単に4000円上がるに過ぎないのです。

 11300円上がって3.2%の賃上げ率であるということは、4000円だと1.1%にしかならないのです。

 如何です? 1.1%の賃上げで満足ができますか?

 安倍政権は、2%の物価上昇率を目指しているのでしょう? だということは、仮に2%のインフレ率の下で1.1%の賃上げが実現したとしても、実質的には0.9%ほど賃金は減少してしまうのです。

 言っときますが、この計算には消費税の増税効果を含んではいません。ということは、増税の効果も含めると、労働者の賃金はさらに2%ほど差し引かれることになるので、実質的に2.9%も少なくなってしまうのです。

 では、インフレ率は実際にはどの程度の水準で推移しているのか?


 最近3か月のインフレ率(総合指数)の推移をみていると、2014年11月、12月、そして2015年1月は、いずれも前年同月比2.4%の上昇となっているので、1.1%のベアでは、実質1.3%ほど賃金が減ったと同じ結果になるのです。もっとも、インフレ率2.4%のうちの2%分は増税によるものであるので、仮に増税がなかりせば0.4%のインフレ率の下で1.1%ほど賃金が上昇したことになり、実質的にも0.7%ほど賃金が上がった結果にはなるのですが…。

 ということで、増税がない状態で今回のようなトヨタのような賃上げが実施されたというのであれば、労働者にとっては恵の雨となったと言えるでしょうが…実際には増税が行われているので恵の雨とはなっていないのです。

 いずれにしても、このようなことを考えていると、労働者にとってはインフレ率は上昇しない方がありがたいということになるのですが、しかし、不思議なことに安倍総理と黒田日銀総裁は、2%のインフレ率実現を相変わらず目指しているのです。

 私は2%のインフレ目標など必要ないと思うのですが、リフレ派は今でもマイルドなインフレを起こした方がいいと思っているのでしょうか?

 でも、仮にそうだというのであれば、トヨタの今回の賃上げ程度では全然足りないということになるのです。

 2%のインフレ率目標を掲げながら、今回のトヨタの賃上げを褒め称えるのは全く矛盾しているのです。


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 昨日、厚生労働省が11月の現金給与総額を発表したのですが…ご存知でしょうか?

 「実質賃金が減り続けているの?」

 いえ、そんなことを言いたいのではないのです。もっとも実質賃金は減り続けていますが…

 「じゃあ、なにを言いたいの?」

 驚いてはいけませんよ。11月の名目賃金が前年同月と比べて低下したというのです。

 おかしくはありませんか? 今回の選挙戦でも、賃金はこんなに上がったと安倍政権は宣伝していたではないですか。

 いいでしょうか? 実質賃金について今言っているのではないのです。消費税も増税したことだし、実質賃金が下がったのは止むを得ないでしょう。しかし、名目賃金まで下がっているのですから、これは問題視する必要があると思うのです。

現金給与総額

 どう思いますか?

 では、メディアはどのように報じているのでしょうか?

 日経:「11月の現金給与総額、9カ月ぶり減少 所定内給与は0.2%増 」

 「厚生労働省が26日発表した11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比1.5%減の27万2726円と、9カ月ぶりにマイナスに転じた。基本給は6カ月連続で伸びたものの、ボーナスが27.0%減と大きく落ち込んだためだ。現金給与総額から物価上昇分を除いた実質賃金も前年同月比4.3%減と17カ月連続で減少した」

 ほほう、11月にボーナスを支給する企業がそんなにあるのですか?

 いずれにしても、所定内賃金はなかなか上がりにくいが、所定外賃金であるボーナスは上がりやすいと思っていたら、逆の結果が出ているということなのでしょうか?

 日経の記事は次のように続きます。

 「ボーナスの大幅減は統計集計の技術的な要因が影響している。厚労省によると、11月は賞与支給の開始月にあたるものの、速報段階では各企業のデータがそろわず低めの数字が出やすいという。確報値ではボーナスが上方修正されるため、現金給与総額の伸び率が変わる可能性が高い。」

 ほんまでっか?と言いたい。

 でも、それが本当だとしたら、何故もっとしっかりと調査をしないのでしょうか。

 それに、所定内給与は増えているとはいうものの、その増加率はたったの0.2%でしかないのです。そして、その一方で、11月の物価は消費税増税の影響分といわれれる2%分を除いて0.7%上昇している訳ですから、増税が行われていなかったとしても、労働者の実質収入は減少していることになるのです。

 さらに言えば、所定外給与も0.9%減少しているというのです。

 ということで、少し流れが変わっているのではと思いきや、「これまで景気回復に伴う需要増に既存社員の残業時間を増やして対応していたが、雇用増にシフトして対応しているため」(厚労省)という役所の説明まで紹介しています。

 しかし、一般的に言って正規職員は非正規職員より給料が高いのですから、正規職員にシフトしているのであれば、何故所定内給与がもっと上がらないのか? おかしいでしょう?

 まあ、11月の単月の数値だけみて名目賃金が減少し始めたと結論付ける訳にはいかないでしょうが、いずれにしても安倍政権や経団連が演出しているほど賃金は上がっていないと見た方が的確なのではないでしょうか。


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 安倍総理が、政労使の会議で年功序列型の賃金体系を見直すことを要請したと報じられています。

 どう思いますか?

 安倍総理は、年功序列型の賃金体系が見直されれば、子育て世代の賃金が上がるので好ましと考えているようなのですが…

 確かに若手の賃金が上がることは容易に想像できますが…そして、自分の能力に自信のある若手などのなかには、年功序列型の賃金体系の見直しを歓迎する人たちが多いかもしれませんが…でも、どうなのでしょうか?

 能力が劣る年配の労働者が可哀想だって、ですか?

 否、そうではないのです。それもありますが、能力のある年配の労働者も気の毒なのです。

 能力のある年配の労働者は、その能力に応じて高めの給与が支払われるのだから、何も気の毒なことはないと言いたそうですね。そうでしょう?

 でも、そのように考えたとしたら、既に経営者側のマジックにかかっているのです。

 よ〜く考えてください。

 仮に、入社後2、3年の若手の社員と、50歳代の年配の社員がいたとして、彼らは、能力や実績の観点から考えて、どのような処遇を受けていると言えるか?

 年功序列型の賃金体系の下では、若手は、能力や実績から判断したら不当に安い賃金しかもらえない一方で、年配の社員は、逆に割高な賃金をもらっているのです。

 でしょう?

 では、実力主義に移行したらどうなるのか?

 若手も年配も、能力や実績に応じた賃金を得ることになるのです。間違いないですよね。ですから、企業側からすれば、どちらの制度を採用しようとも損も得もないことになるのです。

 しかし、ここで思考を止めてしまってはいけません。

 というのも、年配の社員は、若手のときには割安の賃金をもらい、そして、年配になってからは、能力や実績に応じた賃金をもらうということになれば…

 あれれ、変でしょう?

 つまり、年配の社員は、若かりし頃の損失を取り戻すことができないのです。

 では、企業側にとっての損得勘定はどうなのか?

 先ほど考えたように、企業側にとっては一見、損も得もないように見えるのですが…実はそれは錯覚なのです。

 つまり、企業側は、年配の社員に対しては、若かりし頃には割安の賃金を払っていた分、年配になったら割高の賃金を支払う義務があるのに、それを途中で打ち切る訳ですからその分が企業側にとっては得になるのです。

 でしょう?

 ですから、年功序列型の賃金体系を仮に改めるとした場合、既に入社済みの社員は例外扱いとするか、或いは過去の未払い相当分の賃金を支払う必要があるのです。

 そうでしょう?

 しかし、年功序列型の賃金体系を見直すことが必要であると主張している経営者側が、そうした例外を認めたり、未払い相当分の賃金を支払うなんてことはないでしょう。

 だって、少しでも得をしようとして賃金体系の見直しをしようとしている訳ですから。

 そのような抜け目のない資本家側の作戦に自ら加担する安倍総理!

 残業代ゼロ法案もそうですが、いろいろと理屈をつけても、結局は、労働者側への支払いを少しでも削ろうとしているだけの話なのです。


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 突然ですが、残業代ゼロ制度について、どのようにお感じになっているでしょうか?

 はっきり言って、残業代ゼロ制度に反対する人が圧倒的に多いと思うのですが、ただ、その一方で僅かながら残業代ゼロ制度に賛成する人々がいるのも事実でしょう。

■ 仕事の成果で評価するシステム
 仕事の時間ではなく、仕事の成果で評価されることがあってもいいのではないか、と。時間で評価すると、どうしてもだらだらとした仕事ぶりが改まらない、と。

 どう思います?

 私だって思うのです。本来であれば、仕事の成果に応じて賃金が支払われてもいいかもしれない、と。むしろその方が本筋であるだろう、と。

 しかし、問題は、誰が仕事の成果を客観的に、そして冷静公正に評価できるのかということなのです。例えば、営業担当職員のように、売上高とか契約数などの客観的数字で判断できるのであれば、誰も異議は唱えないでしょう。

■ 成果を判断することの難しい事務屋の仕事
 しかし、事務屋の仕事となると、なかなか難しい、と。

 それに、仕事の成果によって賃金が支払われることが適当であるとしても、それならそれで対象となる職員に対し、相当の自由度を与えないことには話にならないのです。

 そうでしょう?

 だって、どうやって仕事を遂行するかに関して、細かいことまで管理職が指示している一方で、仕事の成果がイマイチだなんて言われた日には堪ったものではないからです。

■ 終身雇用制度との関係をどう考えるのか
 それに‥仕事の成果によって報酬が支払われるべきだという考えが適当であるというのであれば、そもそも我々は終身雇用制度を抜本的に見直すべきだということなのでしょうか? そこまでのことを安倍政権が考えているというのであれば、まだ少しは話の筋が通るのです。

 しかし、終身雇用制度、つまり勤務年数が長くなればなるほど給料が少しずつ増える制度がおかしいのではないか、なんて今の政権が疑問を呈している訳ではないのです。

 だから、益々納得がいかないのです。

■ 自民党の考え
 ところで、この残業代ゼロ制度に関して、昨日のNHKの午前中の討論番組でも議論が行われていました。

 自民党の高市政調会長は、「日本の労働生産性は低い。個人のニーズに応じた働き方ができるよう大胆に変える必要がある」と言っていたのですが、納得が行きますか?

 私は、そもそも日本人労働者の生産性が低いという意見には与しません。そう言った意見が蔓延していることは十分に承知していますが‥しかし、そのような意見が正しいという証拠はないのです。というのも、各国の労働者の生産性をどうやって評価するのかと言えば、ただ各国の労働者に支払われる賃金を比べるだけの話で‥従って、例えば、各国の労働法制の違いなどによって労働者が相対的に恵まれた立場にある国の場合には、賃金としての取り分が多くなるためにそのような国は労働生産性が高く見えるだけのこともあるからです。

 要するに、極論すれば、どんなに真の意味の労働生産性が低かろうと、労働者に対して支払われる賃金が相対的に高い国の場合には、労働生産性が高く見え、その反対にどんなに真の意味の労働生産性が高かろうと、労働者に対して支払われる賃金が想定的に低い国の場合には、労働生産性が低く見えてしまうだけの話です。

 でも、本日は、そのような議論はひとまず棚に上げ‥仮に日本の労働生産性が低いとした場合にでも、何故残業代の支払いを止めたら労働生産性が高くなるというのでしょうか?

 例えば、労働現場の実態に何の変化もないなかで‥つまり、労働者たちの残業時間には何の変化もないなかで残業代がゼロになれば、労働者の取り分は減る訳で‥そうなると、労働者が生産した付加価値は減少し、労働生産性は低下してしまうでしょう。

 つまり、高市政調会長の言うことは一見もっともらしく聞こえるものの、全然論理的ではないのです。彼女が言いたいのは、例えば、一日、正規の給料として12000円、そして、残業代として4000円、合計1日当たり16000円稼ぐ人がいたとして、その人の残業代がゼロになっても、その人が正規の就業時間内に16000円分稼げば、その人の労働時間は少なくなるにも拘わらず、その人が稼ぐ1日当たりの給料は変わらないのだから‥というものだと思うのです。

 確かに、経営者側が、上のようなケースの場合に1日当たりの正規の給料を12000円から16000円に引き上げてくれるのであれば、労働者は残業を全くしないで、今までどおりの給料が稼げるわけですから、大変好ましいようにも見受けられます。

 しかし、残業なしで今までと同じ仕事をこなすためには、それこそ勤務時間中、冗談の一言も言うことなく、それこそわき目も振らずに仕事に集中することを余儀なくされるでしょう。従って、正規の就業時間が終了する頃にはへとへとになってしまうでしょう。

 それに、仮にそうやって残業なしで今までと同じ成果を上げることができたとして、経営者側は本当に給料を12000円から16000円に上げてくれるのでしょうか?

 そこが信じられないのです。そのような企業は存在したとしてもほんの一握りの存在と言っていいでしょう。

 個人のニーズに応じた働き方と内職のシステム
 高市氏は、「個人のニーズに応じた働き方ができるよう大胆に変える必要がある」とも言います。私も、それに関しては特に異論はありません。しかし、そのことと残業代を支払わないということは必ずしも必然の関係にある訳ではないのです。

 それに、そのような各人のニーズに応じた仕事のシステムは、昔から日本にも存在しているのです。そうなのです。内職がまさに各人のニーズに応じた、しかも成果に応じて対価を支払うシステムであるのです。仕事の時間など決まっている訳ではなく‥従って、残業代など支払われる筈もない。報酬は、ただどれだけの仕事を仕上げたかによるのです。

 であれば、残業代ゼロが適用される労働者を増やすのは、内職従事者を増やすようなものでしかないのです。

■ 企画・開発の仕事に関する評価の困難性
 いずれにしても、内職の場合には、仕事の成果が誰の目から見ても客観的に計測が可能である場合に限られます。しかし、その一方で、安倍総理が推し進めようとしている残業代ゼロ制度は、企画・開発などの仕事が念頭にあるのだとか。

 確かに新商品の企画や開発といった仕事であれば、仕事の時間数と仕事の完成度、或いは満足度が必ずしも一致するものではないでしょう。しかし、そういった仕事に対する評価は、誰がどうやって下すことができるというのでしょうか?

 たとえ会社のトップが気に入るような企画書を書き上げることができたとしても‥それが成功を収めるかどうかはまた別。それに、そういった仕事に従事する職員たちが、全て自分の判断と裁量に応じて動くのであれば、その結果に対して自分たちが責任を負うのも当然であるかもしれませんが‥しかし、それらの職員が管理職の地位にないとすれば、当然に管理職の指示に従って動かざるを得ないのですから、その仕事の結果について自分たちだけの責任を求められるのは筋が通らないのです。

■ 管理職であることが残業代ゼロのメルクマール
 つまり、そもそも自分たちの判断で自由に仕事をする権限がない職員に対して、成果に応じた賃金しか支払わないというのは矛盾した制度であるとしか言えないのです。

 そして、そのことについてよく考えて行くと‥だから、管理職には残業代を支払わず、そして、残業代を支払うかどうかの線引きが、管理職の立場にあるかどうかであることの意味が分かってくるのです。

■ 田村厚生労働大臣の発言
 さて、本日、私が一番言いたい話は今から述べることです。

 高市政調会長が残業代ゼロ制度を支持する一方で、田村厚生労働大臣が次のように述べたと報じられています。

 「課長手前の課長代理は、いろいろな仕事をしていて成果が測れない。時間で測るべきだ」

 さあ、如何でしょうか?

 田村大臣のこの発言は何を意味するのでしょうか?

 課長手前の課長代理は、いろいろな仕事をしていて成果が測れないと言っています。

 恐らく、この発言に関しては、残業代ゼロ制度を猛烈に批判する人々も首をかしげるのではないでしょうか? 田村厚生労働大臣がそのように残業代ゼロ制度に消極的な意見を述べてくれるのは有難いが、しかし、課長代理のする仕事は成果が測れないものなのか、と。

 しかし、もし、それが本当であるとしたら、課長代理のボーナスは全員一律でなければならないのでしょうか?

 これは誰が考えてもおかしいと言わざるを得ないのです。

 さらに言えば、田村大臣が、課長代理は残業代ゼロの対象から外すべきだというのであれば、課長代理の下の係長や係員はなおさら残業代ゼロの対象から外すべきなのでしょうか?

 それとも、係長や係員は、課長代理と違って仕事の中身が一定であり成果を測りやすいので残業代ゼロの対象にしてもよいと言いたいのでしょうか?

 どうもはっきりしないのです。

■ 厚生労働省の立場
 いずれにしても、田村厚生労働大臣は、安倍政権が推し進めようとする残業代ゼロ制度に関して、閣僚の立場にありながらも消極的な意見を述べたということなのです。

 何故敢て安倍総理に逆らうようなことを言ったのでしょうか?

 それは、そもそも残業代ゼロ制度を打ち出すということが旧労働省の存在の否定するようなものだからなのです。

 企業が優越的な立場を利用して労働者に対し不利な労働条件を押し付けようとするのを何とか阻止して労働者のために働くのが旧労働省の存在意義であるのです。そして、今、その旧労働省の存在を軽視するような動きに安倍総理が出ているので、こうして田村厚生労働大臣は旧労働省の役人の代弁をしているのです。

 いずれにしても、厚生労働省も残業代ゼロ制度に真っ向から反対している訳ではありませんが、その対象になるのは、為替リーダーなどの年収2千万円以上の人々に限るなどと言っているので、実質的には残業代ゼロ制度に反対しているのと同じであるのです。


 
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