代表です。
明日11/12(土)より、アニメ映画「この世界の片隅に」の全国公開が始まります。

先日のCOMITIA118の会場では本映画の片渕須直監督と原作のこうの史代さんを
ゲストにお迎えしてトークショーを行いました。
用意した200席はあっという間に埋まり、周りには立ち見の人たちの黒山の人だかりで、
お二人それぞれの作品に込めた熱い思いのトークに大いに盛り上がりました。

この光景を見ていて、ふと思い出したのは、
1997年に初めてこうの史代さんがコミティアに参加した時のこと。
もう20年近く前の話になります。

こうのさんはすでに4コマ誌でデビューしており、
連載された「街角花だより」を初めての同人誌にして参加したのですが、
見本誌で読んで、その「上手さ」に驚きました。

独特の味のある描線と大胆なコマ割、
キャラがしっかりと立って、判りやすいストーリー、
5Pというショート連載ながら毎回しっかりオチをつける技量。
まさに職人技を感じました。

早速すぐ次の回のティアズマガジンでインタビューを申し込んで、
紹介記事を書かせてもらいました。
初めてお会いしたこうのさんは小柄で柔らかな語り口ながら、
マンガに対する姿勢がしっかりしていて、とても頼もしかったのを覚えています。
この時をきっかけにこうのさんはコミティアのサークル参加の常連となり、
同人誌でも素敵な作品をたくさん発表してくれました。

そのこうのさんが当時1年間サークル参加を休み、執筆に集中したのが、
「夕凪の街」(週刊漫画アクション2003年9/30号掲載)でした。
広島の原爆をテーマに描いた作品で、静かに話題を呼び、
その後、続編の「桜の国」と合わせてコミックス化されて、
文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞新生賞のダブル受賞しました。
この時から「こうの史代」の名前は多くのマンガファンに知られるようになりました。

トークショーの前に、こうのさんとも少し思い出話をしたのですが、
20年前のコミティアに初参加した、まだ不安げだけれど強くしなやかな意思を持った若い作家が、
20年後の今日、こんなに大きな存在になっているとは想像もつかないことでした。
そのことにしみじみと深い感慨を覚えます。

勿論、現在のこうのさんの活躍も評価も、御本人の努力と研鑽の賜物ですが、
コミティアの存在が少しでもその役に立てたかもしれないことは何よりの喜びです。
20年前にこの稀有な才能に出会えたことに心より感謝します。


さて、あらためて映画の話をしましょう。

試写で観た映画「この世界の片隅に」は本当に素晴らしいものでした。
原作の世界観を2時間の映画のフレームの中にきっちり描いたのは片渕監督の情熱の故でしょう。
舞台となる呉の70年前の街並みや、往時の時代風俗や、日本の戦況の資料をていねいに調べ、
モノクロで描かれた原作マンガの風景を見事にカラーのアニメ映像で再現してくれました。

私はこの実際の風景を見たさに広島の呉市まで行きました。
コミティア事務所ブログ「呉市立美術館の『この世界の片隅に』展に行ってきました。」
そこには今と地続きの「この世界の片隅に」で描かれた風景が確かにありました。

この映画は企画段階から7年がかりで完成しました。
それだけの時間をかける必要があったことを画面は雄弁に語ります。
片渕監督にしか作れない質と熱をもった映像がそこにあり、
こうのさんの原作からしか生まれない物語の奥行きがそこに描かれる。
あらためてこの素晴らしい才能の出会いに感謝したいと思います。

そして多くの方がご存知のように、映画の大きな原動力となったのは、
昨年行われたクラウドファンデイングの成功です。
3300名を超えるサポーターから約4000万円の制作資金を集めたのは大きな話題となりました。
この力強いサポーターの存在もこの映画の完成に欠くべからざるものでしょう。
サポーター向けの試写会で片渕監督は「みんなの力で作った映画です」と語り、
大きな拍手を受けました。

その試写会で大きなスクリーンの上に描かれる物語を観ながら、
原作を読んで、これから何が起こるか知っている私は、
後半はボロボロ泣きっぱなしでした。

明日がついに待望の「この世界の片隅に」の全国公開の日です。
どうぞお近くの劇場まで足をお運びください。

そしてあなたの地続きでもある「この世界の片隅に」を感じてもらいたいと思います。